(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207526
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】レトルト滅菌可能で開封容易なフィルム押出し用シール
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20170925BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20170925BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D81/24 J
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-550463(P2014-550463)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-507565(P2015-507565A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】US2012071825
(87)【国際公開番号】WO2013101931
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】61/580,815
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ビロード
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・パーキンソン
(72)【発明者】
【氏名】シャオソン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ダブリュ・ガーネット
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0063821(US,A1)
【文献】
特開平11−192679(JP,A)
【文献】
特開2008−284706(JP,A)
【文献】
特開2000−202958(JP,A)
【文献】
特開2009−154332(JP,A)
【文献】
特開2004−358683(JP,A)
【文献】
特表2009−511367(JP,A)
【文献】
特表2012−523324(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0151932(US,A1)
【文献】
特表2004−527395(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152387(WO,A1)
【文献】
特開平09−327889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 67/00−79/02
81/18−81/30
81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルムであって、
a.熱密封可能な第1の外側層であり、前記第1の外側層の95重量%〜100重量%の第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーが、プロピレンモノマー、ならびに、随意に、エチレンとC4〜C8アルファオレフィンとからなる群から選択される1つまたは複数のコモノマーに由来し、前記第1のポリマーが、少なくとも125℃の融点を有する第1の外側層、
b.前記第1の外側層に隣接する内側部分であり、(i)前記内側部分の5重量%〜60重量%の弾性プロピレン系ポリマー;(ii)プロピレン、ならびにエチレンおよびC4〜C8アルファオレフィン群から選択される1つまたは複数の更なるコモノマーに由来する、前記内側部分の30重量%〜70重量%のランダムコポリマー;および(iii)高圧低密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンと、エチレンアクリル酸コポリマーと、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマーと、それらの組み合わせとからなる群から選択される第2のポリマーであって、前記内側部分の10重量%〜60重量%の第2のポリマーを含む内側部分;および
c.前記内側部分が前記第1の外側層と第2の外側層との間に封入されるように配置されている第2の外側層であり、前記第2の外側層が、ホモポリマーポリプロピレンと、ランダムコポリマーポリプロピレンと、インパクトコポリマーポリプロピレンと、それらの混合物とからなる群から選択される第3のポリマーを含む第2の外側層を少なくとも含むフィルム。
【請求項2】
前記内側部分が、前記内側部分の5重量%〜10重量%のホモポリプロピレンを含む(ただし、内側部分に含まれる成分の含有量の合計は100重量%を超えないこととする)、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記弾性プロピレン系ポリマーが、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび230℃にて決定される2g/10分〜25g/10分のMFR、および0.850g/cm3〜0.890g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ランダムコポリマーが、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび230℃にて決定される0.5g/10分〜5g/10分のMFR、および0.90g/cm3〜0.902g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ホモポリプロピレンが、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび230℃にて決定される0.5g/10分〜10g/10分のMFRを有する、請求項2に記載のフィルム。
【請求項6】
前記第2のポリマーが、高圧低密度ポリエチレンであり、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび190℃にて決定される0.5g/10分〜35g/10分のMI、および0.915g/cm3〜0.932g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】
前記第2のポリマーが、高密度ポリエチレンであり、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび190℃にて決定される0.5g/10分〜10g/10分のMI、および0.94g/cm3〜0.96g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
前記第2のポリマーが、エチレンアクリル酸コポリマーまたはエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーであり、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび190℃にて決定される0.5g/10分〜10g/10分のMI、および前記エチレンアクリル酸コポリマーまたはエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーの3重量%〜20重量%のコモノマー含有量を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
前記第1の外側層が、前記第1の外側層の0.1重量%〜5重量%の弾性プロピレン系ポリマーを更に含み、前記弾性プロピレン系ポリマーが、前記内側部分に使用される1つまたは複数の弾性プロピレン系ポリマーと同じであってもよく、または異なっていてもよい、請求項1に記載のフィルム。
【請求項10】
前記第1のポリマーが、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび230℃にて決定される0.5g/10分〜5g/10分のMFR、および0.90g/cm3〜0.902g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記第3のポリマーが、ASTM D1238に準じて2.16kgおよび230℃にて決定される0.5g/10分〜5g/10分のMFRを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項12】
前記第2の外側層が、エチルビニルアルコールまたはポリアミドから構成される障壁構造を更に含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項13】
前記障壁構造が、別々の層として同時押出される、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記内側部分に加えて、1つまたは複数の非表面層を更に含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項15】
前記第1のポリマーがポリプロピレンである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項16】
レトルト滅菌応用に使用するための請求項14に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年12月28日に出願された米国特許仮出願第61/580,815号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリオレフィンに基づく、熱密封可能でレトルト滅菌可能である開封容易なシールに関する。また、本発明は、熱密封可能でレトルト滅菌可能な開封容易なシールを製作および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱密封可能で開封容易なフィルムは、例えば食品を含む容器を一時的に密封するために広く使用されている。使用に際して、消費者が可剥性フィルムを破る。熱密封可能な可剥性フィルムが顧客に受け入れられるためには、多くの特徴が求められる。
【0004】
熱密封可能なフィルムは、加熱して密封することができなければならない。典型的な密封プロセス中に、フィルムの裏側層または網状層が、密閉噛合い部等の加熱表面と直接接触する。したがって、フィルムの裏側層から熱が伝わり、内側シーラント層が融解および融合して、密封が形成される。したがって、一般的に、裏側層は、フィルムの裏側層が実質的に融解せず、したがって加熱表面に固着しないように、内側シーラント層よりも高い融解温度を有する。
【0005】
更に、密封しようとする包装が、食品、特に非冷蔵食品を含有することを目的とする場合、製品が許容される保存寿命(例えば、少なくとも6か月間)を有するには、シールは、レトルト滅菌作業に耐えることが可能であるべきである。典型的なレトルト滅菌プロセスでは、密封包装は、包装のサイズに応じて、212°F〜275°Fの温度に20〜60分間または最長100分間もさらされる。レトルト滅菌プロセス中に、包装内で気体が発生し、圧力が非常に上昇する。レトルト滅菌系を超過加圧して、包装内圧力との均衡を支援してもよいが、結局のところ、包装がレトルト滅菌中に加圧されることにかわりはない。したがって、容器を密封するために使用されるフィルムは、内部圧力の増加および高温に耐えるように十分に強靱でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような耐圧性が必要とされているため、レトルト滅菌応用に使用されるシールは、典型的には、平均的な手の力を使用して室温で開封することが難しい。レトルト滅菌応用の条件に耐えることができ、しかも消費者が手で容易に開封することのできる熱密封可能なフィルムがあれば望ましい。シールを破るのに必要な力は、「シール強度」または「熱シール強度」と呼ばれ、ASTM F88−94に準じて測定することができる。所望のシール強度は、具体的な最終使用者の応用によって様々である。シリアル用ライナー、スナック食品包装、クラッカーチューブ、およびケーキミックス用ライナー等の可撓性包装に応用する場合、求められるシール強度は、一般的に1インチ当たり約1〜9ポンドの範囲である。例えば、開封が容易なシリアル箱用ライナーの場合、一般的に、1インチ当たり約2〜3ポンドの範囲のシール強度が指定されるが、具体的な目標値は、個々の製造要件によって様々である。可撓性包装応用に加えて、密封可能な可剥性フィルムは、日用品(例えば、プディング等のスナック食品)および医療デバイスの蓋等の剛性包装応用にも使用することができる。典型的な剛性包装は、1インチ当たり約1〜5ポンドのシール強度を有する。シール層は、蓋にあってもよく、または容器にあってもよく、または両方にあってもよい。
【0007】
熱密封可能なフィルムの別な望ましい特性は、十分な「ホットタック」である。フィルムは、加熱表面との接触および/またはレトルト滅菌プロセスから取り出された後、室温に冷却される。内側シーラント層は、室温に冷却される前に、そのシール完全性を維持することができるべきである。接着剤またはシーラント層が、まだ暖かいかまたは溶融状態にある間にシールの変形に抵抗することができる能力は、一般的に「ホットタック」と呼ばれる。良好なシールを形成するために、密閉可能な可剥性フィルムのホットタックは、十分であるべきである。
【0008】
また、迅速な包装ライン速度の保証を支援する低い熱密封開始温度、および圧力および温度等のプロセス条件の変動を受容することができる幅広い密封ウィンドウを有することが望ましい。また、幅広い密封ウィンドウは、熱感受性製品の高速包装を可能にすると共に、包装または充填速度の変化にある程度の許容性を提供する。
【0009】
熱密封可能なフィルムの更なる望ましい特徴には、低摩擦係数および良好な酷使耐性が含まれる。低摩擦係数は、シーラント層が、製造包装装置で滑らかにかつ効率的に加工され得ることを保証し、特に垂直型充填密封包装に重要である。例えば、形が不規則で堅いシリアルによる裂目および穿刺に耐えるシリアル箱用ライナーには、良好な酷使耐性および靭性が求められる。更なる特徴には、味および芳香性能、および障壁または透過特性が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある多層フィルムが、上述の目標の1つまたは複数を達成し、したがって、特にレトルト滅菌応用に好適であることが見出された。多層フィルムは、熱密封可能な第1の外側層を含む。第1の外側層は、95%〜100%(第1の外側層の重量に対して)の第1のポリマーを含み、第1のポリマーは、プロピレンモノマー、ならびに随意で、エチレンとC
4〜C
8アルファオレフィンとからなる群から選択される1つまたは複数のコモノマーに由来する。第1のポリマーは、少なくとも125℃の融点を有するべきである。多層フィルムは、第1の外側層に隣接する内側部分を更に含む。内側部分は、単層であってもよく、または幾つかの層を含んでいてもよい。内側部分の少なくとも1つの層は、弾性プロピレン系ポリマー(「EPBP、elastomeric propylene based polymer」)を含む。更に、内側部分の少なくとも1つの層は、高圧低密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンと、エチレンアクリル酸コポリマーと、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマーと、それらの組合せとからなる群から選択される第2のポリマーを含む。第2のポリマーは、同じ層にEPBPと共に存在してもよく、または別の層に存在してもよい。また、内側部分は、随意に1つまたは複数の更なる層を含んでいてもよいことが企図される。それらの層は、EPBPまたは第2のポリマーを含有していてもよく、またはしていなくともよい。多層フィルムは、内側部分が第1の外側層と第2の外側層との間に封入されるように配置されている第2の外側層を更に含む。第2の外側層は、ホモポリマーポリプロピレンと、ランダムコポリマーポリプロピレンと、インパクトコポリマーポリプロピレンと、それらの混合物とからなる群から選択される第3のポリマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のある実施形態の理論的バースト凝集破壊機序を模式的に示す図である。
【
図2】本発明のある実施形態の理論的バースト剥離機序を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語「ポリマー」は、本明細書で使用される場合、同じタイプかまたは異なるタイプかに関わらず、モノマーを重合させることにより調製されるポリマー性化合物を指す。したがって、一般用語のポリマーは、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常使用される用語「ホモポリマー」、ならびに2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0013】
「融解強度」は、関連技術では「融解張力」とも呼ばれ、本明細書では、ASTM D1238−Eに記載されているもの等の標準的可塑度計のダイスを通過する際に、その融点を超える温度で切断速度に達する前に融解強度が頭打ちになるホールオフ速度で融解押出物を引き出すのに必要な応力または力(歪みセルを装備した巻き上げドラムにより適用される)を意味すると定義され、定量化される。融解強度値は、本明細書ではセンチニュートン(cN)で報告されており、190℃にてGottfert製Rheotensを使用して決定される。
【0014】
本発明は、レトルト滅菌応用に使用される熱シールに特に好適な多層フィルムに関する。多層フィルムは、熱密封可能な第1の外側層を含む。第1の外側層は、95%〜100%(第1の外側層の重量に対して)の第1のポリマーを含み、第1のポリマーは、プロピレンモノマー、ならびに随意に、エチレンとC
4〜C
8アルファオレフィンとからなる群から選択される1つまたは複数のコモノマーに由来する。そのような第1のポリマーは、ホモポリマーポリプロピレンであってもよいが、より好ましくは、プロピレン由来ユニットおよび0.1%〜10%のエチレン由来ユニットおよび/または4個〜8個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルファ−オレフィンモノマーのランダムコポリマーである。コモノマーの量の範囲は、触媒選択(シングルサイト、メタロセン、ポストメタロセン、チーグラー・ナッタ等)を含む重合法に部分的に依存すると考えられる。第1のポリマーは、0.5g/10分〜25g/10分(ASTM D1238、2.16kg、230℃に準じて決定される)、より好ましくは2g/10分〜1g/10分の融解物流速(「MFR、melt flow rate」)を有するべきである。選択される特定のMFRは、インフレーションフィルム法、押出コーティング法、シート押出法、またはキャストフィルム法等の目的製造方法に部分的に依存すると考えられる。第1のポリマーは、0.890g/cm
3〜0.902g/cm
3の密度(ASTM D−792に準じて決定される)を有していてもよい。第1のポリマーは、少なくとも125℃、より好ましくは少なくとも130℃または135℃の融点(下述のDSC法により決定される)を有するべきである。
【0015】
第1の外側層は、随意に、最大5%(第1の外側層の重量に対して)の弾性プロピレン系ポリマーまたは「EPBP」を含有していてもよい。EPBPは、少なくとも約50重量%のプロピレン由来ユニット、およびプロピレン以外のコモノマー、好ましくはエチレンに由来する少なくとも約5重量%のユニットを有する少なくとも1つのコポリマーを含む。好適な弾性プロピレン系ポリマーには、国際公開第03/040442号および国際公開第2007/024447号に教示されているプロピレンに基づくプラストマーまたはエラストマー(「PBPE」、propylene based plastomer or elastomer)が含まれる。これら文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明での使用に特に興味深いのは、反応器級のPBPEを含む、3.5未満の分子量分布を有するEPBPである。用語「反応器級」は、その分子量分布(MWD、molecular weight distribution)または多分散性が、重合後に実質的に変更されていないポリオレフィン樹脂を指す。用語「分子量分布」または「MWD」は、重量平均分子量対数平均分子量の比(M
w/M
n)と定義される。M
wおよびM
nは、従来のGPCを使用して、当技術分野で公知の方法により決定される。好ましいEPBPは、約90ジュール/gm未満、好ましくは約70ジュール/gm未満、より好ましくは約50ジュール/gm未満の融解熱(国際公開第2007/024447号に記載のDSC法を使用して決定される)を有すると考えられる。好ましいコモノマーエチレンが使用される場合、EPBPは、EPBPの重量に対して、約3%〜約15%のエチレン、または約5%〜約14%のエチレン、または約7%〜約12%のエチレンを有する。
【0016】
好ましいエチレンコモノマーの代わりにまたはそれに加えてEPBPに使用することができる他のコモノマーには、C
4〜20α−オレフィン、C
4〜20−ジエン、およびスチレン化合物等が含まれる。好ましくは、コモノマーは、エチレン、および1−ヘキセンまたは1−オクテン等のC
4〜20α−オレフィンの少なくとも1つである。好ましくは、コポリマーの残りのユニットは、エチレンのみに由来する。プロピレンに基づくエラストマーまたはプラストマー中のエチレン以外のコモノマーの量は、少なくとも部分的には、コモノマー、およびコポリマーの所望の融解熱の関数である。コモノマーがエチレンである場合、典型的には、コモノマー由来ユニットは、約15重量%以下のコポリマーを含む。エチレン由来ユニットの最低量は、典型的には、コポリマーの重量に基づき、少なくとも約3重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約9重量%である。ポリマーが、エチレン以外に少なくとも1つの他のコモノマーを含む場合、好ましい組成物は、約3〜20重量%のエチレンを有するプロピレン−エチレンコポリマーとほぼ同じ範囲にある融解熱を有すると考えられる。
【0017】
本発明のEPBPは、任意のプロセスにより調製することができ、拘束幾何触媒(CGC、Constrained Geometry Catalyst)、メタロセン触媒、および非メタロセン金属中心へテロアリールリガンド触媒により製作されるコポリマーを含む。これらコポリマーには、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、およびグラフトコポリマーが含まれるが、コポリマーは、好ましくはランダム配置である。例示的なプロピレンコポリマーには、Exxon−Mobil製VISTAMAXX(商標)ポリマー、およびDow Chemical Company製VERSIFY(商標)プロピレン/エチレンエラストマーおよびプラストマーが含まれる。
【0018】
本発明のプロピレンに基づくエラストマーまたはプラストマーの密度は、ASTM D−792に準じて測定すると、典型的には、1立方センチメートル当たり少なくとも約0.850グラム(g/cm
3)であり、少なくとも約0.860であってもよく、また、少なくとも約0.865であってもよい。好ましくは、密度は、約0.89g/cc未満である。一般的に、密度が低いほど、曇り度はより低い。
【0019】
本発明のプロピレンに基づくエラストマーまたはプラストマーの重量平均分子量(M
w)は、幅広く様々であってよいが、典型的には、約10,000〜1,000,000である(最小または最大M
wに対する唯一の制限は、実用的な観点により設定されるものであることが理解される)。可剥性シールの製造に使用されるホモポリマーおよびコポリマーの場合、最小M
wは、好ましくは約20,000、より好ましくは約25,000である。
【0020】
本発明のプロピレンに基づく弾性ポリマーの多分散性は、典型的には約2〜約5である。一般的に、曇り度を低くするには、多分散性の幅が狭い物質を使用することが好ましい。「幅の狭い多分散性」、「幅の狭い分子量分布」、「幅の狭いMWD」、および類似の用語は、重量平均分子量(M
w)対数平均分子量(M
n)の比(M
w/M
n)が、約3.5未満であり、約3.0未満であってもよく、また約2.8未満であってもよく、また約2.5未満であってもよいことを意味する。
【0021】
本発明の第1の外側層に使用されるEPBPは、理想的には、0.5g/10分〜25g/10分、好ましくは約1g/10分〜15g/10分、より好ましくは2g/10分〜10g/10分のMFRを有する。プロピレンおよびエチレンおよび/または1つまたは複数のC
4〜C
20α−オレフィンのコポリマーのMFRは、ASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)に準じて測定される。
【0022】
本発明の多層フィルムは、第1の外側層に隣接する内側部分を更に含む。内側部分は、ミクロ層を含む単層または多層を含んでいてもよい。内側部分の少なくとも1つの層は、上述のようなEPBPを含む。更に、内側部分の少なくとも1つの層は、高圧低密度ポリエチレンと、高密度ポリエチレンと、エチレンアクリル酸コポリマーと、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマーと、それらの組合せとからなる群から選択される第2のポリマーを含む。第2のポリマーは、同じ層にEPBPと共に存在していてもよく、または別の層に存在していてもよい。いかなる特定の理論にも束縛されないが、第2のポリマーをEPBPと同じ層に含むことにより、
図1に示されているようなバースト凝集破壊機序がもたらされ、第2のポリマーを別の層に含むことにより、
図2に示されているようなバースト剥離破壊機序がもたらされると考えられる。
【0023】
内側部分に使用される第2のポリマーは、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンアクリル酸または(メタ)アクリル酸コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される。用語「高圧低密度ポリエチレン」は、「LDPE」、「高圧エチレンポリマー」、または「高度分岐ポリエチレン」とも呼ばれる場合もあり、過酸化物等のフリーラジカル開始剤を使用して(例えば、米国特許第4,599,392号を参照。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)、14,500psi(100MPa)を超える圧力のオートクレーブまたは管型反応器中で部分的にまたは完全にホモポリマー化またはコポリマー化されることを意味すると定義される。LDPEが存在する場合、0.5g/10分〜35g/10分、より好ましくは2g/10分〜10g/10分のメルトインデックス(ASTM D1238、2.16kg、190℃に準じて決定される)、および0.915g/gm
3〜0.935g/cm
3、好ましくは9.915g/gm
3〜0.930g/gm
3の密度(ASTM D−792に準じて決定される)を有する。用語「高密度ポリエチレン」または「HDPE」は、本発明の目的では、0.940g/cm
3を超える密度を有する直鎖ポリエチレンを指す。好ましいHDPEは、0.5g/10分〜10g/10分、より好ましくは2g/10分〜10g/10分のメルトインデックスを有する。エチレンアクリルコポリマー(「EAA」、Ethylene acrylic copolymer)またはエチレン(メタ)アクリル酸コポリマー(「EMAA」、ethylene (meth) acrylic acid copolymer)は、それぞれエチレンアクリル酸またはメタクリル酸に由来するコポリマーを指す。好ましいEAAまたはEMAAコポリマーは、3重量%〜20重量%のカルボン酸コポリマー由来ユニットを含む。好適なカルボキシル含有ポリマーには、Dow Chemical Companyが、PRIMACOR(商標)という商品名で販売しているものが含まれる。
【0024】
EPBPが、少なくとも1つの層に第2のポリマーと混合されている実施形態の場合、EPBPは、その層の5重量%〜80重量%、好ましくは30%〜80%、より好ましくは40%〜80%を構成することが好ましい。第2のポリマーは、その層の10重量%〜95重量%、好ましくは15%〜80%、より好ましくは20%〜60%を構成することが好ましい。幾つかの実施形態では、好ましくはその層の30重量%〜70重量%、より好ましくは40%〜70%、更により好ましくは50%〜70%の量のランダムコポリマーポリプロピレン樹脂、および/または好ましくはその層の5重量%〜10重量%の量のホモポリマーポリプロピレンを更に含むことが好ましい場合がある。
【0025】
EPBPおよび第2のポリマーが別々の層に存在する実施形態の場合、各層は、任意の添加剤と共に、本質的に、純粋なEPBPまたは純粋な第2のポリマーからなることが好ましい。そのような実施形態では、不混和性相を生成する混合形態は関与せず、したがって、製造プロセスのわずかな変化による変動は、最小限に抑えられる。本発明のこの実施形態のフィルムの内側部分は、わずか2つの個別の層を含んでいてもよいが、また一連のミクロ層を含んでいてもよいことが企図される。「ミクロ層」は、n個の反復ユニットを含む配列を指し、各反復ユニットは、一方の層がPBPEを含み、他方の層が第2のポリマーを含み、その結果生じる構造が、式[(a)(b)]
nを有する、少なくとも2つのミクロ層(a)および(b)を含む。「n」は、ミクロ層押出機のマルチプリケータ供給ブロックにより規定される。また、反復ミクロ層配列は、随意に、1つまたは複数の更なる反復層である層(c)および(d)等、または一般的に封入層と呼ばれる非反復層を含んでいてもよい。全体的な厚さは、古典的なインフレーションフィルムまたはキャストフィルムと同様に、例えば25〜200ミクロンであってもよい。個々の層の比は、フィルムの所望の特徴に応じて調整することができるが、典型的には、A/B、A/C、およびB/Cの比は、0.2〜0.8の範囲であり、封入層(存在する場合)対ミクロ層フィルムの反復部分の比は、典型的には、0.025〜0.8である。本発明の多層フィルムは、内側部分が第1の外側層と第2の外側層との間に封入されるように配置されている第2の外側層を更に含む。用語「封入する」は、本明細書で使用される場合、平坦な表面を参照し、内側部分の縁部もまた、第1の外側層および第2の外側層により封入されている必要はないことが理解されるべきである。
【0026】
第2の外側層は、ホモポリマーポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン、およびインパクトコポリマーポリプロピレン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される第3のポリマーを含む。第1のポリマーに関して記載されている好ましい特性は、第3のポリマーに適用可能であり、実際、第3のポリマーは、第1のポリマーと同一であってもよい。一般的に、第3のポリマーのMFRは、0.5g/10分〜35g/10分(ASTM D1238、2.16kg、230℃に準じて決定される)、より好ましくは2g/10分〜10g/10分であるのが好ましい。選択される特定のMFRは、インフレーションフィルム法、押出コーティング法、シート押出法、またはキャストフィルム法等の目的製造方法に部分的に依存すると考えられる。
【0027】
随意に、本発明の多層フィルムは、更なる機能性を提供する1つまたは複数の更なる層を含有していてもよい。例えば、エチレンビニルアルコールポリマーまたはポリアミドポリマーを含む層を加えて、更なる構造安定性および/または障壁特性を提供することができる。
【0028】
第1の外側層は、30ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン以下の厚さを有することが好ましい。第1の外側層の厚さは、バーストを開始するのに必要な力を決定する。したがって、より薄いフィルムは、バースト開始に必要な力がより少ないと考えられる。バーストが開始されれば、フィルムは、理論的には、上述のような凝集破壊または剥離機序のいずれかにより開封容易になると考えられる。しかしながら、より薄いフィルムは、レトルト滅菌プロセス中に、より破損しやすくなることも理解されるべきである。したがって、第1の外側層の厚さは、これら特性の適切なバランスを達成するために最適化されるべきである。
【0029】
フィルムは、合計で200ミクロン未満の、より好ましくは150ミクロン未満の厚さを有することが好ましい。
【実施例】
【0030】
本発明の有用性を実証するために、一連の多層フィルムを、表Iに記載の樹脂を使用して製作した。
【0031】
実施例
【表I】
【0032】
以下の試験方法を使用して、表2に報告されている値を決定する。
曇り度(%)は、ASTM D1003−11に準じて決定する。
熱密封開始温度(HSIT)(℃)は、ASTMF2029−00に準じて、その結果生じた熱密封曲線を視覚的に調査することにより決定し、密封強度曲線が2N/15mmを超えて上昇する温度を決定する。
バーストピーク強度(N/15mm)は、ASTM F2029−00に準じて、その結果生じた密封曲線を視覚的に調査することにより決定し、密封温度範囲全体にわたってピーク密封強度を決定する。
剥離プラトー強度(N/15mm)は、ASTM F2029−00に準じて、その結果生じた密封曲線、密封曲線のその後(ピーク後)の部分を視覚的に調査することにより決定し、密封強度変化が、範囲全体にわたって2N/15mm未満である温度範囲を決定する。
密封ウィンドウ(℃)は、ASTM F2029−00に準じて、その結果生じた密封曲線を視覚的に調査することにより決定し、密封強度が全て2N/15mmを超える温度範囲を決定する。
【0033】
【表II】
【0034】
【表II2】
【0035】
【表III】