【文献】
Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.,2000年,Vol.48, No.5,p.1519-1528
【文献】
JOSEPH N CONTESSA,BREAST CANCER RESEARCH AND TREATMENT,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,2006年 1月 1日,V95 N1,P17-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
第一の態様によれば、本発明は、放射線治療と組み合わせた、過剰増殖性疾患の治療のためのHER−3阻害剤の使用に関する。
【0009】
HER−3阻害剤と放射線療法の組み合わせの治療は、HER−3阻害剤または放射線療法のいずれか単独での治療による利点を超える相乗効果を導く。
【0010】
本発明によるHER−3阻害剤は、タンパク質レベルまたは核酸レベルで作用し得る。核酸レベルで作用する阻害剤の例は当業者に公知であり、アンチセンス分子、RNAi分子および/またはリボザイムを含む。
【0011】
タンパク質レベルで作用する阻害剤の例は、抗HER−3抗体またはその抗原結合性フラグメント、および、足場タンパク質である。抗HER−3抗体またはそのフラグメント、特にその抗原結合性フラグメントである阻害剤は、本発明の好ましい実施態様を表す。本発明によれば、用語「抗体フラグメント」は、前述の抗体の任意の部分、好ましくはそれらの抗原結合または可変領域を含む。
【0012】
本明細書において用いられる、「足場タンパク質」は、抗体様の結合活性を有するタンパク質、または抗体、すなわち、抗HER−3抗体を表す。本発明の文脈内で、本明細書において用いられる用語「足場タンパク質」は、アミノ酸の挿入、置換または欠失の許容度が高い露出表面領域を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。本発明により用いることのできる足場タンパク質の例は、黄色ブドウ球菌由来のプロテインA、オオモンシロチョウ由来のビリン結合タンパク質、または他のリポカリン、アンキリンリピートタンパク質、およびヒトフィブロネクチン(Binz and Pluckthun,Curr Opin Biotechnol,16,459−69でレビューされている)である。加えて、抗体様の結合活性を有する足場タンパク質は、足場ドメインを含むアクセプターポリペプチドから誘導することができ、アクセプターポリペプチドを含む足場ドメインにドナーペプチドの結合特異性を与えるために、ドナーポリペプチドの結合ドメインをグラフト化することができる。
【0013】
本発明による抗HER−3抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体またはそれらの抗原結合フラグメントであってよい。モノクローナル抗体の使用が特に好ましい。当業者はそのような抗体の生産方法を知っている。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Millstein(Nature,1975;256:495−497)の方法のような任意の適切な方法により生産してよい。
【0014】
本発明による抗体フラグメントは、好ましくは、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、または単鎖抗体分子である。「Fabフラグメント」は、抗体ヒンジ領域由来の1または複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において、少数の残基が付加されている点が、「Fab’フラグメント」とは異なる。「F(ab’)
2フラグメント」は、元来、「Fab’フラグメント」のペアとして生産され、それらの間にはヒンジシステインを有する。本発明によれば、「Fvフラグメント」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。
【0015】
本発明により用いられる抗体は、好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体型であってよい。
【0016】
ヒト化型の抗体はさらに好ましい実施態様を示し、ヒト化またはCDRグラフティングのような当技術分野で知られている方法に従って生産してよい。ヒト化抗体を生産するための代替法は当技術分野でよく知られており、例えば、EP 0 239400およびWO90/07861に記載されている。ヒト抗体は、異種抗体、例えばミューリンまたはラットの可変および/または定常領域を保有する抗体に関する特定の問題を回避する。モノクローナルヒト化抗HER−3抗体は、本発明の特に好ましい実施態様を表す。
【0017】
さらに好ましい実施態様によれば、抗体は、HER−3の細胞外ドメインに対して向けられる。抗HER−3抗体は、好ましくは、HER−3の細胞外部分の少なくとも1つのエピトープと相互作用する。エピトープは、好ましくは、アミノ末端ドメインであるドメインL1(AA19−184)、2つのシステインリッチドメインであるドメインS1(AA185−327)およびS2(AA500−632)、または、2つのシステインリッチドメインが隣接するドメインL2(328−499)に存在する。また、エピトープは、制限されないが、L1とS2の部分を含むエピトープなど、任意のドメインの組み合わせに存在してもよい。
【0018】
用いられる抗HER−3抗体は、エフェクターおよび/または標識基に結合されてよい。該当するカップリングおよび/または標識化技術は当業者に公知である。そのようなエフェクターおよび/または標識基は、薬物ターゲッティング、イメージング用途および/または診断用途で付けてよい。
【0019】
本明細書において用いられる用語「標識基」は、検出可能なマーカー、例えば、放射標識アミノ酸または標識アビジンにより検出可能なビオチニル部分をいう(例えば、蛍光マーカーに結合するストレプトアビジン、または、光学的方法または比色法により検出可能な酵素活性)。標識基の適切な例は、限定されないが、以下を含む:放射性同位体または放射性核種(例えば、
3H、
14C、
15N、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、または二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。特定の態様では、立体障害の可能性を減らすために、標識基は、様々な長さのスペーサーアームによって付けられることが望ましい場合がある。
【0020】
あるいは、本発明により用いられる抗HER−3抗体は、エフェクター基に結合されてよい。本明細書において用いられる用語「エフェクター基」は、細胞傷害基、例えば、放射性同位体または放射性核種、毒素、治療基、または当技術分野で知られている他のエフェクター基をいう。適切なエフェクター基の例は、放射性同位体または放射性核種(例えば、
3H、
14C、
15N、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I)、カリケアマイシン、ドラスタチンアナログ、例えばアウリスタチン類、および、化学療法剤、例えば、ゲルダナマイシンおよびメイタンシン誘導体(DM1を含む)である。特定の態様では、立体障害の可能性を減らすために、エフェクター基は、様々な長さのスペーサーアームによって付けられることが望ましい場合がある。
【0021】
HER−3の阻害に加えて、さらに好ましい実施態様によれば、該当するエフェクター基、例えば上記に概説される放射性同位体または放射性核種で抗HER−3抗体を標識化することにより、放射線治療を行なう、または支持することが可能である。
【0022】
さらに、本発明により用いられるHER−3阻害剤、および特に、本発明により用いられる抗HER−3抗体は、HER−3へのその結合により、HER−3が仲介するシグナル伝達が減少することでさらに特徴付けられ得る。本発明によれば、HER−3が仲介するシグナル伝達の減少は、例えば、細胞表面から少なくとも部分的にHER−3分子の消失をもたらすHER−3の下方制御により、または、細胞表面上のHER−3の、実質的に不活性型での安定化、すなわち、非安定化型と比べてより低いシグナル伝達を示す型での安定化により、引き起こされ得る。あるいは、HER−3が仲介するシグナル伝達の減少はまた、リガンドまたは別のHERファミリーメンバーのHER−3への結合、GRB2のHER−2への結合、またはGRB2のSHCへの結合に影響を及ぼすことにより、例えば減少させるか阻害することにより、受容体チロシンリン酸化、AKTリン酸化、PYK2チロシンリン酸化またはERK2リン酸化を阻害することにより、または、腫瘍侵襲性を減少することにより、引き起こされ得る。あるいは、HER−3が仲介するシグナル伝達の減少はまた、他のHERファミリーメンバーとの二量体を含むHER−3の形成に影響を及ぼすことにより、例えば減少させるか阻害することによっても、引き起こされ得る。一例は、とりわけ、HER3−EGFRタンパク質の複合体形成の減少または阻害であり得る。
【0023】
本発明により用いられる好ましい抗HER−3抗体は、PCT/EP2006/012632に記載される。
【0024】
特に好ましい実施態様によれば、抗体は、(a)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH1;(b)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH2;および(c)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH3からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む重鎖アミノ酸配列、
または、(a)〜(c)のCDRのうちの1つと少なくとも90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の相同性を示す重鎖アミノ酸配列を含む。
【0025】
さらに好ましい実施態様によれば、抗体は、(d)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL1;(e)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL2;および(f)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL3からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む軽鎖アミノ酸配列、
または、(d)〜(f)のCDRのうちの1つと少なくとも90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の相同性を示す軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0026】
本発明のさらに別の実施態様では、抗体は、
(a)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH1;
(b)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH2;および、
(c)配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230に示すCDRH3、
からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む重鎖アミノ酸配列、および、
(d)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL1;
(e)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL2;および、
(f)配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232に示すCDRL3、
からなる群より選択されるCDRの少なくとも1つを含む軽鎖アミノ酸配列、
を含む。
【0027】
さらに好ましい実施態様によれば、抗体は、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。
【0028】
さらに好ましい実施態様によれば、本発明により用いられる抗HER−3抗体は、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230からなる群より選択される重鎖アミノ酸配列を含む。
【0029】
さらに好ましい実施態様は、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232からなる群より選択される軽鎖アミノ酸配列を含む抗HER−3抗体の使用に関する。
【0030】
さらに別の好ましい実施態様によれば、本発明により使用される抗HER−3抗体は、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34、36、40、42、46、50、54、60、62、66、70、74、78、80、84、88、92、96、100、104、108、112、116、120、122、126、130、134、138、142、146、150、154、158、162、166、170、174、178、182、186、190、194、198、202、206、210、214、218、222、226および230からなる群より選択される重鎖アミノ酸配列;および、配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、38、44、48、52、56、58、64、68、72、76、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、124、128、132、136、140、144、148、152、156、160、164、168、172、176、180、184、188、192、196、200、204、208、212、216、220、224、228および232からなる群より選択される軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0031】
特に好ましい実施態様は、配列番号42の重鎖アミノ酸配列および配列番号44の軽鎖アミノ酸配列を含む抗HER−3抗体、または、配列番号54の重鎖アミノ酸配列および配列番号56の軽鎖アミノ酸配列を含む抗HER−3抗体、または含む配列番号70の重鎖アミノ酸配列および配列番号72の軽鎖アミノ酸配列を含む抗HER−3抗体に関する。
【0032】
特に、抗HER−3抗体は、U1−1抗体、U1−2抗体、U1−3抗体、U1−4抗体、U1−5抗体、U1−6抗体、U1−7抗体、U1−8抗体、U1−9抗体、U1−10抗体、U1−11抗体、U1−12抗体、U1−13抗体、U1−14抗体、U1−15抗体、U1−16抗体、U1−17抗体、U1−18抗体、U1−19抗体、U1−20抗体、U1−21抗体、U1−22抗体、U1−23抗体、U1−24抗体、U1−25抗体、U1−26抗体、U1−27抗体、U1−28抗体、U1−29抗体、U1−30抗体、U1−31抗体、U1−32抗体、U1−33抗体、U1−34抗体、U1−35抗体、U1−36抗体、U1−37抗体、U1−38抗体、U1−39抗体、U1−40抗体、U1−41抗体、U1−42抗体、U1−43抗体、U1−44抗体、U1−45抗体、U1−46抗体、U1−47抗体、U1−48抗体、U1−49抗体、U1−50抗体、U1−51抗体、U1−52抗体、U1−53抗体、U1−55.1抗体、U1−55抗体、U1−57.1抗体、U1−57抗体、U1−58抗体、U1−59抗体、U1−61.1抗体、U1−61抗体、U1−62抗体、または、前記抗体のうちの1つの、少なくとも1つの重鎖または軽鎖を有する抗体からなる群より選択される。特に好ましいのは、抗体U1−49(配列番号42/44)、U1−53(配列番号54/56)およびU1−59(配列番号70/72)、または、前記抗体のうちの1つの、少なくとも1つの重鎖または軽鎖を有する抗体である。抗体U1−59が特に好ましい。
【0033】
本発明により治療される疾患は、過剰増殖性疾患である。この過剰増殖性疾患は、好ましくは、がん、特に扁平上皮細胞がんである。
【0034】
本発明により好ましく治療されるがんの例は、乳がん、胃腸がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、肺がん、腎臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、膀胱がん、グリオーマ、メラノーマ、精巣がん、軟組織肉腫、頭頚部がん、HER−3を発現または過剰発現する他のがん、および、腫瘍転移形成からなる群より選択される。
【0035】
特に好ましい実施態様によれば、がんは、肺の、頭部および/または頚部の、扁平上皮細胞がんである。
【0036】
本発明による放射線治療は、好ましくは、温熱療法、体外照射療法、近接照射療法および/または放射性同位体療法から選択される。当業者は、どの種類の放射線治療、および、特に、どの種類の放射線源が、治療される特定の患者に用いられるべきか、決定することができる。
【0037】
体外照射放射線療法は、放射線療法の最も一般的な型である。内部放射線療法(近接照射療法)と対照的に、体外照射放射線療法は、体の外側から放射線を腫瘍に向ける。用いられる電圧は当業者により決定されてよく、とりわけ、治療されるべき腫瘍の種類に依存する。例えば、キロ電圧のX線は皮膚がんおよび表面構造の治療に用いてよく、一方で、メガ電圧のX線は深部腫瘍(例えば、前立腺、肺または脳)の治療に用いてよい。X線および電子ビームはとりわけ体外照射放射線療法に最も広く用いられる源であるが、陽子線などの、より重い粒子線を用いてもよい。
【0038】
上記にすでに概説されるように、近接照射療法は、内部放射線療法としても知られている。それは、治療を要する部位の内側または近隣に放射線源が置かれる放射線療法の形態である。近接照射療法では、放射線源は、がん性腫瘍側に直接的に正確に置かれる。これは、放射線が制限された局部にのみ作用することを意味し、X線照射の放射線療法に勝る利点を提供する。例えば、周囲の健康組織への不必要な損傷の可能性を減らしながら、非常に高い照射量の限局的な放射線で腫瘍が治療され得る。近接照射療法に用いられる放射線源の例は、
125I/
103Pd、
90Yおよび選択的内部照射療法(SIRT)を含む。SIRTは、注入などすることのできるミクロスフェアの使用を含む。そのようなミクロスフェアは、レジンまたはガラスで作ることができる。ミクロスフェア内部には、イットリウム−90などの放射線源を置くことができる。既に使用されているミクロスフェアの例は、ThereSphereおよびSIR−Spheresであり、それらは球体あたりの放射能と塞栓効果が異なる。もちろん、放射線源に連結させた任意のさらなる適切なキャリアを使用することも考えられる。近接照射療法で用いる医薬品のさらなる例は、SAVI、MammoSite、Contura、ProxcelanおよびI−Seedを含む。
【0039】
放射性同位体療法は、標的療法のさらなる形態を示す。標的化は、同位体の化学的特性に起因し得る。放射性同位体は、例えば、注入または経口摂取により送達されてよい。治療に用いられる放射性同位体の例は、ヨウ素−131、ルテチウム−177およびイットリウム−90、ストロンチウム−89およびサマリウム−153を含む。
【0040】
本発明に従って用いることができる放射線治療および/または放射線治療は、放射線の単一線量または分割線量に基づいてよい。もちろん、放射線治療の持続時間を変えることも可能である。持続時間は、治療される腫瘍の場所、治療される腫瘍サイズ、および患者の健康状態に依存し得る。
【0041】
本発明による、HER−3阻害剤と放射線療法および/または治療との組み合わせは、HER−3阻害剤と放射線療法での同時の治療、および、時間的に交互の組み合わせを企図している。好ましい実施態様によれば、治療される腫瘍細胞は、放射線治療の前にHER−3阻害剤により放射線増感化される、すなわち、HER−3阻害剤が、放射線治療/療法の前に投与される。
【0042】
本発明は、さらなる化学療法化合物のようなさらなる活性化合物、例えば、ドキソルビシン、シスプラチンまたはカルボプラチンなどの細胞傷害性薬物、サイトカイン、または、抗悪性腫瘍薬などと組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明の別の態様は、細胞の放射線感受性の調節のためのHER−3阻害剤の使用に関する。
【実施例】
【0044】
(材料および方法)
<細胞培養および薬剤>
5つのヒト肺がん細胞株(NCI−H226、H292、H358、H520およびA549、および5つの結腸直腸がん細胞株(Caco2、SW48、LS180、LovoおよびHCT116)をATCC(Manassas,VA,USA)より購入して、1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むRPMI1640またはDMEM(Mediatech Inc.,Manassas,VA,USA)中の10%ウシ胎児血清(FBS)中に保った。5つの頭頸部がん細胞株(UM−SCC1、UM−SCC4、UM−SCC6、UM−SCC11A、およびUM−SCC1483細胞)をミシガン大学から取得し、1%ヒドロコルチゾンで補充されたDMED中の10%FBS(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)中に保った。
抗HER−3抗体U1−59を用いた。
【0045】
<細胞増殖アッセイ>
細胞を96穴プレートに播いて、複数回用量のU1−59に72時間曝露した。細胞増殖を、Cell Counting Kit−8(Dojindo Molecular Technologies,Gaithersbury,MD,USA)により調べた。
【0046】
<クローン原性アッセイ>
規定数の細胞を、6穴の組織培養プレートの各ウェル中に播いた。細胞が付着する時間(6時間)を与えた後、U1−59またはビヒクルコントロール(PBS)を規定濃度で加えた。4時間後に、プレートを、2、4、6、8Gyの照射量で照射した。播いてから10〜14日後、コロニーをクリスタルバイオレットで染色して、少なくとも50細胞を含むコロニーの数を判定し、生存率を計算した。U1−59単独により産生される細胞毒性に標準化後、生存曲線を作成した。示されるデータは、少なくとも3つの非依存性実験による平均±SDである。
【0047】
<細胞周期の分析>
細胞をU1−59(20μg/ml)とともに48時間インキュベートして、その後、6Gyの放射線を照射した。24時間後、細胞をトリプシン処理してPBSで洗浄し、90%エタノールに固定して4℃で一晩保管した。遠心分離によりエタノール除去後、細胞をPI染色バッファー(50μg/ml PI、100μg/ml Rnase A、0.1%Triton X−100)で染色した。細胞をFACSCaliburフローサイトメーターによりソーティングした(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)。ヒストグラム解析をFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.,Ashland,OR,USA)で行なった。
【0048】
<アポトーシス>
アネキシンV/PIキットを用いてアポトーシスを検出した。処理に続いて、100μlの染色バッファー中に1×10
5細胞を含む細胞懸濁液を、5μlのアネキシンVおよびPIとともにインキュベートした。FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)により細胞をソーティングした。FlowJoソフトウェアで集団解析を行なった。
【0049】
<イムノブロッティング分析>
処理に続いて、バッファー(50mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、0.1% Tween−20、10%グリセロール、2.5mM EGTA、1mM EDTA、1mM DTT、1mM PMSFおよび10μg/mlのロイペプチンおよびアプロチニン)で細胞を溶解した。標準的なブラッドフォード吸光度分析を用いてタンパク質を定量化した。等量のタンパク質をSDS−PAGEにより分画した。その後、タンパク質をPVDF膜に移して、適切な一次抗体とのインキュベーションにより分析した。HRP−コンジュゲート二次抗体とのインキュベーションおよびECL化学発光検出システムにより、タンパク質を検出した。NIH ImageJプログラムを用いてウェスタンのバンドの濃度測定をした。本試験で用いた抗体は以下であった:HER3、AKT、MAPK、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−コンジュゲートヤギ抗ウサギIgGおよびヤギ抗マウスIgGは、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz,CA,USA)より購入した。p−HER3(Tyr1289)、p−AKTおよびp−MAPKは、Cell Signaling Technology(Beverly,MA,USA)より取得し、α−チューブリンはCalbiochem(San Diego,CA,USA)より取得した。
【0050】
<免疫蛍光アッセイ>
およそ2×10
3細胞を、4穴のガラスチャンバースライド(Nalgene Nunc,Naperville,IL,USA)に播いた。48時間後、細胞をPBSで3回洗浄して、室温で15分間、2%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を氷冷100%メタノール中で10分間、−20℃でインキュベートして、0.3% Triton X100溶液を含むPBS中、5%の正常血清で、室温で1時間ブロッキングして、p−HER3またはλ−H2AX抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。次に、細胞を、0.3% Triton X100および1% BSAを含むPBS中で、FITCがコンジュゲートされた適切な二次抗体とともに2時間インキュベートした。ProLong gold with DAPI(Invitrogen)を用いてスライドをマウントした。共焦点顕微鏡または蛍光顕微鏡により写真を取り込んだ。
【0051】
<マウス異種移植片モデル>
無胸腺ヌードマウス(4〜6週齢;雄)を、ハーランラボラトリーズ(Indianapolis,IN,USA)から取得した。動物の全手順および維持は、ウィスコンシン大学の施設ガイドラインに従って行なった。0日目に、マウスの背横腹に左右両側に細胞を注入した(2×106細胞)。腫瘍が想定量に達した時点で、マウスを、1)IgG、2)U1−59、3)放射線照射、または、4)組み合わせで、単回量または分割量で処理した。デジタルキャリパーにより測定して、式(π)/6×(大直径)×(小直径)により計算した。
【0052】
<免疫組織化学>
異種移植片腫瘍を中性ホルマリン中に固定して、パラフィン中に包埋した。
免疫組織化学染色を、PCNA、p−MAPK、p−AKT、p−S6およびγ−H2AXについて行なった。要するに、検体を脱パラフィンして通常どおりに再水和して、続いて、ウォーターバス中で、98℃で15分間、シトレートバッファーによりアンチジーン修復して、3%過酸化水素中で10分間インキュベーションして、3%BSAブロッキングを30分間行なった。染色は以下のとおりに行なった:推奨される抗体希釈剤中に希釈した一次抗体中で、4℃で一晩インキュベーションして、ビオチン化二次抗体中で室温で30分間インキュベーションして、Dakocytomation Liquid DAB+Substracte Chromogen Systemを用いてペルオキシダーゼを視覚化して、ヘマトキシリン中で対比染色して、通常どおりに乾燥および洗浄して、カバーガラスをマウントした。
【0053】
<統計解析>
異種移植片腫瘍増殖をグラフ化して、GraphPad Prism 5(GraphPad,San Diego,CA)を用いて解析した。
【0054】
(結果)
HER3は様々な固形腫瘍細胞株で発現される。
ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)は、HERファミリーにとって重要な二量体化パートナーであり、発がんシグナリングパスウェイを活性化する。多くの固形腫瘍におけるその過剰発現は、予後不良につながっている。
図1Aにおいて、我々は、HER3およびp−HER3の両方の発現について、非小細胞肺がん(H226、H292、H358、H520およびA549)、結腸直腸がん(Caco2、SW48、LS180、LovoおよびHCT116)および頭頸部扁平細胞がん(SCC1、SCC6、SCC11A、SCC38およびSCC1483)由来の15細胞株を特徴づけた。HNSCCおよびNSCLC細胞株の両方が活性化HER3を含み、HER3が、それらの腫瘍形成表現型を亢進し得ることを示す。
【0055】
U1−59は、HER3の基礎活性および放射線照射により誘導されるHER3の活性化を阻害することができる。
HER3は、内因性チロシンキナーゼ活性を欠く。しかしながら、ヘレグリン(ニューレグリン−1)などの多様なリガンドに結合する際に、HER3は、他のHERファミリーメンバー受容体とヘテロ二量体を形成して、細胞の増殖および生存に強く影響を与える様々なシグナリングパスウェイの活性化を開始することができる。U1−59は、結合してHER3発がんシグナリングパスウェイを不活性化する、完全にヒト化されたモノクローナル抗体である。
図1Bでは、我々は、様々なHNSCCおよびNSCLC細胞株を上昇量のU1−59で処理すると、HER3およびAKTの両方の活性化をうまく阻害することができることを示す(
図1B)。加えて、イムノブロッティングおよび免疫蛍光分析を用いて、我々は、HNSCC細胞株SCC6およびNSCLC細胞株H226の放射線治療は、HER3の活性化型を増加させることを見いだした(
図2A、
図2C、
図2D、および
図2F)。また、放射線治療後の一過的なHER3活性化は、SCC6およびH226細胞株の両方において、ERKおよびAKTの両方の活性化の増加も伴った(
図2Aおよび
図2D)。
図2Bおよび
図2Eでは、我々は、放射線照射により、SCC6およびH226細胞株の両方において、放射線治療の24時間後および48時間後の両方で、HER3、AKT、およびERKの継続的な活性化をもたらすことができることを示す。我々は続いて、放射線治療の前に、U1−59で24時間、SCC6またはH226細胞株を事前にインキュベーションすると、放射線により誘導されるHER3、ERK、およびAKTの活性化を防止することができることを示す(
図2A、
図2C、
図2D、および
図2F)。加えて、U1−59は、放射線治療後24時間および48時間の両方で、HER3、ERK、およびAKTの活性化の継続的な阻害を導くことができた(
図2Bおよび
図2E)。まとめると、これらのデータは、放射線治療の前にU1−59で細胞を事前にインキュベーションすると、放射線により誘導される細胞生存および増殖パスウェイの活性化を防止することができることを示唆する。
【0056】
U1−59は、インビトロで、HNSCCおよびNSCLC細胞株を放射線増感化することができる。
図2では、我々は、U1−59が、放射線により誘導されるHER3の活性化および後に続く下流のエフェクターERKおよびAKTを防止することができることを示し、したがって、我々は、U1−59がHNSCCおよびNSCLC細胞株の両方の放射線感受性を高めることができると仮説を立てた。第一に、我々は
図3Aおよび
図3Fにおいて、U1−59が、SCC6およびH226細胞株の両方の増殖を用量依存的な様式で阻害することができることを示す。放射線と組み合わせたU1−59のインビトロでの効果を評価するために、我々は、クローン原性分析を「材料および方法」に記載のとおりに行なった。我々は、U1−59で4時間、SCC6およびH226細胞の両方を事前インキュベートして、続いて、指示照射量で放射線を細胞に当てた。
図3Bおよび
図3Gに示すように、U1−59は、放射線曲線の傾斜を増大させ、SCC6およびH226細胞の両方に対する、放射線に応じたU1−59の増感効果を示した。コントロール曲線は、U1−59処理無しで放射線に曝された。
【0057】
U1−59は、インビトロで、放射線治療と組み合わせて、細胞周期の停止およびアポトーシスを促進することができる。
我々はさらに、U1−59はまた、HNSCCおよびNSCLC細胞株の、放射線により誘導される細胞周期の停止およびアポトーシスも亢進させ得ると仮説を立てた。これを調べるために、我々は、SCC6およびH226細胞の両方をU1−59で48時間事前インキュベートして、続いて、6Gyの放射線に曝した。放射線を照射して24時間後に、我々は、細胞周期の段階分布およびアポトーシスのレベルをPIおよびアネキシンV染色により分析した。
図3Cおよび
図3Hに示すように、コントロール細胞と比較して、U1−59で事前に処理した細胞はG1期停止を示し、一方で、放射線により処理した細胞はG2期停止を示した。我々は、いずれかの処理でS期の減少を観測する。G1期の細胞は放射線治療により感受性であり、一方でS期の細胞はより抵抗性であることが良く知られている。したがって我々は、U1−59とともに事前インキュベートして放射線処理した細胞において、アポトーシスが実際に亢進されることを、アネキシンV染色を介して示し(
図3Dおよび
図3I)、これは、U1−59により誘導されるG1期停止が、SCC6およびH226の両方の放射線感受性を促進した可能性があることを示唆する。加えて我々はさらに、放射線照射の前にU1−59で事前に処理されたSCC6およびH226細胞での、DNA二本鎖切断レベルの亢進を、γ−Η2ΑΧ染色を介して示す(
図3Eおよび
図3J)。概して、これらのデータは、放射線と組み合わせたU1−59の亢進した抗腫瘍効果を示す。
【0058】
放射線照射と組み合わせたU1−59は、HNSCCおよびNSCLCマウス腫瘍異種移植片において、抗腫瘍効果を有することができる。
U1−59と組み合わせた放射線療法の有効性をさらに評価するために、我々は、SCC6、SCC1483およびH226細胞株を無胸腺マウスに接種した。腫瘍が100〜200mm
3に達した時点で、腫瘍を単一線量および分割線量の両方の放射線照射に振り分けた。単一線量治療群では、異種移植片マウスは、IgG、U1−59(8mg/kg)、放射線(XRT16GyまたはXRT10Gy)または両方の組み合わせが与えられた(
図4A)。分割線量治療群では、異種移植片マウスは、IgG、U1−59(100μg/マウス)、放射線(指示照射量で1週間に2回)、または組み合わせが与えられた(
図4B)。合計3つの異種移植片モデルは、単一線量で治療されたマウスまたはIgGコントロールで治療されたマウスと比較して、単一線量または分割線量の放射線照射のいずれかとU1−59を組み合わせて治療した両方の場合に、腫瘍体積の著しい減少を示した。したがって、U1−59および単一線量または分割線量の放射線照射のいずれかで治療した異種移植片の両方とも、カプランマイヤー生存曲線分析を介して表されるように、明らかな延命効果を示す。
【0059】
U1−59が、インビボで、HER3の活性化を効率的に阻害することができることを検証するために、我々は、各治療群由来の様々な腫瘍からタンパク質を分離して、HER3の全ておよび活性化型の両方についてウエスタンブロット分析を行なった。
図5Aでは、我々は、U1−59単独、または、単一線量の放射線と組み合わせたU1−59で治療したマウスから分離した腫瘍は、HER3活性化レベルがより低いことを示す。SCC1483およびH226異種移植片モデルでは、U1−59で治療された腫瘍もまた、より少量のHER3タンパク質を含み(
図5A)、それは、インビトロでU1−59処理されたこれらの細胞株においては見られないものであった。加えて、
図5Aでの各異種移植片モデルから分離された2つの腫瘍のうち少なくとも1つは、単一線量の放射線照射に対して明らかなHER3活性化を示し、それはU1−59で治療された腫瘍では阻止された。
図5Bでは、我々はさらに、分割線量の放射線と組み合わせてU1−59で治療された腫瘍もまた、活性化レベルおよび全レベルが減少したHER3を含み;分割線量の放射線によるHER3活性化もまた同様に、U1−59により阻害されたことを示す。まとめると、単一線量または分割線量の放射線照射のいずれかと組み合わせたU1−59で治療した異種移植片腫瘍の両方とも、コントロールまたはいずれかの治療単独と比較して、腫瘍体積が著しく減少して明らかな増殖遅延を示し、これは、HER3発現の、活性化レベルおよびトータルレベルの両喪失が、HNSCCおよびNSCLC腫瘍を放射線増感化し得ることを示唆する。
【0060】
放射線照射と組み合わせたU1−59は、インビボにおいて、細胞生存シグナルの活性化を防止してDNA損傷を亢進させることができる。
放射線治療と組み合わせたU1−59の増殖阻害効果をさらに分析するために、我々は、腫瘍治療されたSCC6におけるERK、AKT、S6キナーゼ、およびγ−H2AXの活性化を、免疫組織化学により分析した(
図6)。我々は、U1−59および単一線量の放射線の両方で治療したSCC6細胞は、下流エフェクター分子ERK、AKT、およびS6キナーゼの活性化レベルを、より低くすることができることを示す。加えて、U1−59で治療された腫瘍は、PCNA陽性細胞のレベルの減少を示した。最終的に、U1−59および放射線の両方で治療したSCC6腫瘍において、γ−H2AXのレベルの増加が見られた。概して、これらのデータは、放射線照射と組み合わせたU1−59は、DNA損傷を亢進することに加えて、細胞生存および増殖パスウェイを効率的に阻害することができることを示す。これらのデータは、インビボにおける、放射線治療と組み合わせたU1−59の抗腫瘍効果の亢進に関する機構的証拠を提供する。
【0061】
これらの実験の結果は、単一線量または分割線量の放射線を用いた試験において、U1−59と放射線の組み合わせは、腫瘍増殖に対して強い影響を与えたことを示す。腫瘍分析は、放射線治療がHER3をインビボで活性化し、そして、U1−59がこの活性化を抑止することができることを示した。まとめると、インビトロおよびインビボでの我々の知見は、放射線と組み合わせたU1−59は、細胞周期の進行を遅延させ、アポトーシスが増加して、そしてDNA損傷が増加することにより、細胞および腫瘍の増殖に影響を与えることを示す。これらの知見は、HER3が、放射線療法に応じて重要な役割を果たし得て、それの活性の阻害は、ヒト腫瘍において強力な治療効果となり得ることを示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】