特許第6207533号(P6207533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207533アニオン性酸化多糖類を使用するケラチン繊維の保護および修復方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207533
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】アニオン性酸化多糖類を使用するケラチン繊維の保護および修復方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20170925BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20170925BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61Q5/04
   A61Q5/12
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-560391(P2014-560391)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-512884(P2015-512884A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013054720
(87)【国際公開番号】WO2013132062
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】1252149
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】61/642,602
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ナウェル・バグダドリ
(72)【発明者】
【氏名】グウェンナール・ジュゴー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ジルベール
【審査官】 森井 隆信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/150198(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/074143(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02944967(FR,A1)
【文献】 特開2005−343902(JP,A)
【文献】 米国特許第04452261(US,A)
【文献】 特開平06−287110(JP,A)
【文献】 特開平06−279227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 5/04
A61Q 5/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工的に着色されていないケラチン繊維の処理方法であって:
(i)化粧料として許容される媒体中に1種または複数種の以下の式(I)
P−(CHO)(COOX) (I)
{式中:
Pは、イヌリンから選択される多糖類鎖を表し、
Xは、水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、アンモニア水に由来するイオン、有機アミン、ならびに、塩基性アミノ酸から選択され、
m+nは、1以上であり、
mは、1個または複数個のアルデヒド基での前記多糖類の置換度(DS(CHO))が0.001〜2の範囲に含まれるような値であり、
nは、1個または複数個のカルボキシル基での前記多糖類の置換度(DS(COOX))が0.001〜2の範囲に含まれるような値である}
で表されるアニオン性酸化多糖類を含む化粧料組成物を前記繊維に塗布する工程と、
(ii)前記ケラチン繊維を加熱する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記加熱工程が、45℃〜250℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱工程が、45℃〜180℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱工程が、80℃〜180℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ケラチン繊維を加熱する工程が、ストレートアイロンにより80℃〜180℃の範囲となり得る温度で行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
人工的に着色されていない増感したケラチン繊維で行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ケラチン繊維の美容処理方法の前に行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ケラチン繊維の人工着色が起こらない美容処理方法中におよび/またはその後に行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ケラチン繊維の永久的再整形方法中に行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケラチン繊維を修復するために行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ケラチン繊維を保護するために行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工的に着色されていないケラチン繊維、特に、毛髪などのヒトケラチン繊維の美容処理方法であって、1種または複数種の酸化多糖類を使用し、ケラチン繊維の温度を上昇させる方法に関する。本発明は、特に、人工的に着色されていないケラチン繊維の保護および修復方法に関する。
【0002】
毛髪は、一般的に、光や悪天候などの外的環境因子の作用により、ならびに、ブラッシング、コーミング、染色、ブリーチ、パーマネントウェーブおよび/または縮毛矯正(relaxing)などの機械的または化学的処理により、損傷し、脆化する。
【0003】
従って、毛髪は、これらの様々な要因により損傷し、時間が経つにつれ、特に、脆弱な領域が、より詳細には端部が、乾燥する、粗くなる、脆くなる、または艶がなくなることがある。
【0004】
従って、これらの欠点を克服するために、常法として、毛髪を適切にコンディショニングし、それに十分な美容特性、特に、滑らかさ、光沢、柔軟性、扱い易さ、明るさ、自然な感触、および良好な解けやすさなどの特性に関して十分な美容特性を付与する組成物を使用するヘアケア製品が用いられる。従って、これらの組成物は、長持ちする方法で毛髪を保護し、修復し、美容的に変化させるという目的を有する。
【0005】
これらのヘアケア組成物は、例えば、コンディショニングシャンプー、コンディショナー、マスクまたはセラムであってもよく、幾分粘稠なゲル、ヘアローション、またはケアクリームの形態であってもよい。
【背景技術】
【0006】
既知の方法として、特に、侵襲的な処理により損傷したケラチン繊維の修復に、コンディショニング剤として使用される、単糖類などの還元糖を含むケア組成物が使用される。
【0007】
実際、米国特許出願公開第2002/0193264号明細書は、C〜C単糖類から選択される少なくとも1種の糖を前記繊維に塗布し、ケラチン繊維の加熱工程を行うケラチン繊維のコンディショニング方法を記載している。
【0008】
同様に、米国特許出願公開第2002/0172653号明細書は、特定のC〜C単糖類から選択される糖を前記繊維に塗布する工程と、ケラチン繊維を加熱する工程とを含む、ケラチン繊維のコンディショニング方法を開示している。
【0009】
しかし、還元糖の使用後に熱処理を行うと、望ましくないケラチン繊維の変色が起こるという欠点がある。
【0010】
さらに、還元糖は、特に、シャンプーの作用で容易に分解し、その結果、繊維に付与された美容特性が持続しない。従って、ケラチン繊維は、長持ちする方法で保護されず、修復されず、または美容的に変化しない。
【0011】
さらに、染色の分野では、人工的に染色、特に、酸化染色または直接染色により人工的に染色されたケラチン繊維の色を保護するための1種類以上の酸化多糖類の使用が、仏国特許出願公開第2944967号明細書から既知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、既存の方法の欠点がない、即ち、ケラチン繊維の変色を引き起こすことなく長持ちする方法でケラチン繊維をコンディショニングできる美容処理方法を、人工的に着色されていないケラチン繊維で行うことが切実に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は本発明により達成され、本発明の対象は、特に、人工的に着色されていないケラチン繊維、特に、毛髪などのヒトケラチン繊維の美容処理方法であり、本方法は:
(i)化粧料として許容される媒体中に1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む化粧料組成物を前記繊維に塗布する工程と、
(ii)ケラチン繊維を加熱する工程と、
を含む。
【0014】
本発明の処理方法により、ケラチン繊維の変色を引き起こすことなく長持ちする方法でケラチン繊維を修復する、保護する、および美容的に変化させることが可能となる。換言すれば、酸化多糖類は熱処理を行っても、変色を引き起こすことなく、繊維に対する修復、保護および美容的変化作用を示す。
【0015】
従って、本方法により、ケラチン繊維を十分コンディショニングすることが可能となる。
【0016】
特に、本発明の方法により処理された毛髪は、手触りが比較的柔軟であり、縮れの存在が認められないため、整った状態を維持する。従って、毛髪は、きちんと並び、真っ直ぐで、解け易いため、櫛通りが良い。
【0017】
処理後、毛髪は重さ(laden)がなく、自然で清浄な感触を有する。
【0018】
より詳細には、本発明の方法により処理された毛髪は、構造的に強化され、従って、脆性が低下し、抵抗性が向上する。
【0019】
さらに、毛髪に付与される美容特性は、持続性があり、特に、洗浄に対する持続性がある。そのため、長持ちする方法で毛髪を保護する、修復するおよび美容的に変化させることができる。
【0020】
従って、本処理方法には、染色方法、縮毛矯正方法および/またはパーマネントウェーブ方法の前処理として行い、ケラチン繊維をこれらの処置から美容的に保護することができるという利点がある。換言すれば、本方法は、前述の美容処理方法の前にケラチン繊維の美容特性を保つために行うことができる。
【0021】
本発明の処理方法は、ケラチン繊維の人工的着色を引き起こさない美容処理方法の後処理として行うこともできる。
【0022】
特に、本処理方法は、前記繊維を修復するために、ブリーチ方法、縮毛矯正方法および/またはパーマネントウェーブ方法の後処理として行われる。
【0023】
本発明の方法にはまた、前記繊維を修復するために、ケラチン繊維の人工的着色を引き起こさない美容処理方法中に行うことができるという利点もある。
【0024】
本発明の処理方法は、単糖類を使用する同一の方法とは異なり、毛髪の着色を引き起こさない。
【0025】
さらに、一般的に熱により起こる、特に、繊維にストレートアイロンを使用する場合に起こるケラチン繊維の表面状態の悪化が、酸化多糖類を用いると、単糖類を用いた場合と比較してはるかに低減する。
【0026】
さらに、本発明の処理方法により毛髪内部の結合(cohesion)を強化することが可能となることが分かった。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および実施例を読めば、より明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的では、「人工的に着色されていないケラチン繊維」という表現は、直接染色法に従って、または酸化染色法により染色されていないケラチン繊維を意味する。
【0029】
特に、本発明の処理方法は、ブリーチ、縮毛矯正またはパーマネントウェーブを行った繊維などの、人工的に着色されていない損傷したケラチン繊維で行うことができる。
【0030】
換言すれば、本発明の処理方法は、好ましくは、人工的に着色されていない増感した(sensitized)ケラチン繊維で行われる。
【0031】
本発明の目的では、「洗浄」という用語は、通常はシャンプーなどの洗剤組成物である、すすぎ落とすタイプの水性組成物をケラチン繊維に1回以上塗布することを意味する。
【0032】
酸化多糖類は、アニオン性である。
【0033】
アニオン性酸化多糖類は、5個以上の炭素原子、好ましくは6個以上の炭素原子、より詳細には6個の炭素原子を含み得る単糖類単位で構成されている。
【0034】
アニオン性酸化多糖類は、1個または複数個のアルデヒドと1個または複数個のアニオン性基とを含む。
【0035】
これらのアニオン性基は、好ましくはカルボキシル基またはカルボン酸基である。
【0036】
本発明のアニオン性酸化多糖類は、下記の式(I):
P−(CHO)(COOX) (I)
{式中:
Pは、5個の炭素原子または5個より多くの炭素原子、好ましくは6個または6個より多くの炭素原子、より詳細には6個の炭素原子を含む単糖類から構成される多糖類鎖を表し、
Xは、水素原子、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属、アンモニア水に由来するイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび3−アミノ−1,2−プロパンジオールなどの有機アミン、ならびに、リシン、アルギニン、サルコシン、オルニチンおよびシトルリンなどの塩基性アミノ酸から選択され、
m+nは、1以上であり、
mは、1個または複数個のアルデヒド基での多糖類の置換度(DS(CHO))が0.001〜2、好ましくは0.005〜1.5の範囲に含まれるような値であり、
nは、1個または複数個のカルボキシル基での多糖類の置換度(DS(COOX))が0.001〜2、好ましくは0.001〜1.5の範囲に含まれるような値である}
で表すことができる。
【0037】
「本発明の多糖類の置換度DS(CHO)またはDS(COOX)」という用語は、全ての繰り返し単位のアルデヒド基またはカルボキシル基として酸化された炭素の数と、多糖類を構成する要素である単糖類の数(予備酸化により開環したものも含む)との比を意味する。
【0038】
CHO基およびCOOX基は、6個の炭素原子を含む糖類単位の特定の炭素原子、例えば、C位、C位またはC位の炭素原子の酸化中に得ることができ;好ましくは、酸化は、CおよびCで、より詳細には、開環した可能性がある環の数で0.01%〜75%、好ましくは、開環した可能性がある環の数で0.1%〜50%起こり得る。
【0039】
Pで表される多糖類鎖は、好ましくは、イヌリン、セルロース、デンプン、グアーガム、キサンタンガム、プルランガム、アルギネートガム、寒天ガム、カラギーナンガム、ゲランガム、アラビアゴム、キシロースおよびトラガカントガム、およびこれらの誘導体、セロビオース、マルトデキストリン、スクレログルカン、キトサン、ウルバン(ulvan)、フコイダン、アルギネート、ペクチン、ヘパリン、ヒアルロン酸またはこれらの混合物から選択される。
【0040】
より優先的には、多糖類鎖は、イヌリンまたはデンプンから選択される。
【0041】
さらにより優先的には、多糖類鎖はイヌリンである。
【0042】
「誘導体」という用語は、前述の化合物の化学修飾より得られる化合物を意味する。それらは、前記化合物のエステル、アミド、またはエーテルであってもよい。
【0043】
酸化は、当該技術分野で既知の方法により、例えば、仏国特許第2842200号明細書、仏国特許第2854161号明細書、または論文「Hydrophobic films from maize bran hemicelluloses」、E.Fredonら著、Carbohydrate Polymers 49,2002、1〜12頁に記載の方法により行うことができる。別の酸化方法は、論文「Water soluble oxidized starches by peroxide reaction extrusion」、Industrial Crops and Products 75(1997)45−52―R.E.Wing,J.L.Willetに記載されている。これらの酸化方法は、簡単に行うことができ、効率的で、毒性副生成物または除去が困難な副生成物を生成しない。
【0044】
これらの酸化方法中に使用され得る過酸化物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過炭酸塩または過ホウ酸塩、過酸化アルキル、過酢酸、または過酸化水素であってもよい。過酸化水素は、容易に入手でき、厄介な副生成物を生成しないため、特に好ましい。
【0045】
反応媒体中の過酸化物の量は、多糖類の1グルコース単位当たり0.05〜1モル当量、好ましくは0.1〜0.8モル当量である。添加と添加の間、反応媒体を撹拌したまま、過酸化物を何回かに分けて逐次添加することが好ましい。
【0046】
酸化方法中に、1種類のフタロシアニン、またはフタロシアニンの混合物、例えば、コバルトフタロシアニンと鉄フタロシアニンとの混合物を触媒として使用してもよい。触媒の量は、所望の置換度に依存する。一般に、少量、例えば、多糖類の100グルコース単位当たり0.003〜0.016モル当量に相当する量が好適である。
【0047】
本方法は、粉末状の多糖類を、少量の水に溶解した触媒と、および過酸化物と接触させることにより行うこともできる。この方法は、「半乾燥」法と称される。
【0048】
本方法は、過酸化物の存在下で反応押出により行うこともできる。
【0049】
より優先的には、多糖類は、イヌリン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、グアーガム、カルボキシメチルグアーガム、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キシロース、キサンタンガム、カラギーナンガム、セロビオース、マルトデキストリン、スクレログルカン、キトサン、ウルバン、フコイダン、アルギネート、ペクチン、ヘパリンおよびヒアルロン酸、またはこれらの混合物の酸化により得られる。
【0050】
優先的には、多糖類は、イヌリンまたはデンプンの酸化により得られる。
【0051】
優先的には、多糖類は、イヌリンの酸化により得られる。
【0052】
一実施形態によれば、多糖類は、過酸化水素の存在下で反応押出法を行うことによる、イヌリンの酸化により得られる。
【0053】
酸化の前後の多糖類鎖の質量平均分子量は、好ましくは400〜15,000,000、さらにより好ましくは500〜10,000,000、より詳細には500〜50,000g/molの範囲である。
【0054】
本発明にとりわけ好ましい多糖類は、式(I){式中:Pは、イヌリンまたはデンプンに由来するポリマー鎖を表し、mは、1個または複数個のアルデヒド基での多糖類の置換度(DS(CHO))が0.005〜2.5の範囲に含まれるような値であり、nは、1個または複数個のカルボキシル基での多糖類の置換度(DS(COOX))が0.001〜2の範囲に含まれるような値である}に対応するものである。
【0055】
さらにより好ましくは、Pは、イヌリンに由来するポリマー鎖を表し、mは、1個または複数個のアルデヒド基での多糖類の置換度(DS(CHO))が、0.01〜1の範囲に含まれるような値であり、nは、1個または複数個のカルボキシル基での多糖類の置換度(DS(COOX))が、0.01〜2の範囲に含まれるような値である。
【0056】
酸化多糖類は、化粧料組成物中に、組成物の全質量に対して、0.01質量%〜10質量%の範囲の含有率で、好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲の含有率で存在してもよい。
【0057】
本発明の組成物の化粧料として許容される媒体は、例えば、水で構成されても、または水と化粧料として許容される少なくとも1種の有機溶媒との混合物で構成されてもよい。挙げることができる有機溶媒の例には、エタノールおよびイソプロパノールなどのC〜C低級アルコール;ポリオールおよびポリオールエーテル、例えば、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびモノメチルエーテル、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0058】
好ましくは、化粧料組成物は、酸化多糖類を含む組成物の質量に対して、水を50質量%〜99.5質量%含む。
【0059】
本発明の組成物のpHは、一般的に2〜11、好ましくは3〜10、さらにより好ましくは4〜8である。後述のものなどの追加の酸性化剤または塩基性化剤を使用することによりpHを適合させる。
【0060】
挙げることができる追加の酸性化剤には、例えば、無機酸または有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸または硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸、および乳酸、ならびにスルホン酸がある。
【0061】
追加の塩基性化剤に関して、それが存在する場合、それは、第一級、第二級、または第三級アミン官能基と、1個または複数個のヒドロキシル基を有する1個または複数個の直鎖または分岐鎖のC〜Cアルキル基とを含む、塩に変換されていない有機アミンから選択することができる。
【0062】
1〜3個の同一のまたは異なるC〜Cヒドロキシアルキル基を含む、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンなどのアルカノールアミンから選択される有機アミンが、特に好適である。
【0063】
このタイプの化合物の中で、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−ジメチルアミノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールおよびトリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンを挙げることができる。
【0064】
次式:
【化1】
(式中、Wは、ヒドロキシル基またはC〜Cアルキル基で任意選択により置換されたC〜Cアルキレン残基であり;Rx、Ry、RzおよびRtは、同一であってもまたは異なってもよく、水素原子またはC〜Cアルキル基、C〜Cヒドロキシアルキル基もしくはC〜Cアミノアルキル基を表す)
を有する有機アミンも好適である。
【0065】
本発明の組成物は、本発明の多糖類と異なるアニオン性ポリマー、本発明の多糖類と異なるノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーまたは両性ポリマー、揮発性または不揮発性であり、有機変性したまたは有機変性していない直鎖、分岐鎖または環状のシリコーン、C10〜C181,2−アルカンジオールまたはC〜C24脂肪酸モノエタノールアミンもしくはジエタノールアミンから誘導される脂肪アルカノールアミドなどの起泡剤(foam synergists)、パール化剤、乳白剤、染料または顔料、香料、鉱油、植物油または合成油、ワックス、C〜C50脂肪アルコール、オキシアルキレン化脂肪アルコール、ビタミン、プロビタミン、紫外線遮断剤、フリーラジカル捕捉剤、フケ防止剤、抗漏脂剤、脱毛防止剤、防腐剤、pH安定剤、およびこれらの混合物、ならびに化粧料分野で通常使用されるその他の任意の添加剤から選択される1種または複数種の添加剤を含むこともできる。
【0066】
好ましくは、本発明の組成物は、シリコーン、油、および化粧料として許容される溶媒から選択される1種または複数種の添加剤を含むこともできる。
【0067】
本発明の組成物は、前述の組み合わせの他に、粘度調整剤を含有することもできる。
【0068】
当業者は、本発明の組成物の特性を損なわないように、任意選択による添加剤およびその量を慎重に選択するであろう。
【0069】
本発明の組成物は、好ましくは液体である、即ち、25℃でRheomat RM 180粘度計を用いて100s−1の剪断速度で測定した場合、10〜6000cpsの範囲の粘度を有する。これらの組成物は、任意選択により増粘したローション、クリーム、ムース、またはゲルの形態であってもよい。組成物が霧状の形態またはムースの形態で塗布されるように、組成物は様々な形態で、特に、ボトル、ポンプディスペンサーボトル、またはエアゾール容器に包装することができる。
【0070】
前述のように、本発明の処理方法は、ケラチン繊維を加熱する工程を含む。
【0071】
ケラチン繊維を加熱する工程は、45℃〜250℃の範囲の温度で、より詳細には80℃〜180℃の範囲の温度で、特に180℃で行うことができる。
【0072】
加熱工程は、その時間の全部または一部、熱を発生させる任意の装置を使用して、特に、ヘアスタイリング用フード、ヘアドライヤー、ストレートアイロンもしくはカールアイロン、または赤外線照射装置により行うことができる。
【0073】
穏やかな加熱を行うために50℃〜75℃の範囲の低温で作業することが望ましい場合、1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む組成物を濡れた毛髪に塗布し、その後、フード下で50℃〜75℃の範囲の温度で乾燥させ、その熱を、例えば、15〜30分間維持する。
【0074】
比較的強い加熱を行うために高温で作業することが望ましい場合、1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む組成物を濡れた毛髪に塗布し、毛髪をフード下、周囲温度で乾燥させ、毛髪をコーミングした後、ストレートアイロンを、40秒間毛束に沿って数回連続的に通過させることにより使用する。
【0075】
好ましくは、ケラチン繊維を加熱する工程は、ストレートアイロンにより80℃〜180℃の範囲となり得る温度で行われる。
【0076】
好ましくは、加熱工程は、毛髪をフード下に50℃〜75℃の範囲の温度で放置した後、ストレートアイロンを80℃〜180℃の範囲の温度で使用する工程を含んでもよい。
【0077】
一実施形態によれば、本発明の処理方法は、化粧料として許容される媒体中に1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む組成物をケラチン繊維に塗布する第1の工程と、前記繊維を優先的には45℃〜250℃の範囲の温度で、特に、70℃〜180℃の範囲の温度、例えば、80℃で加熱する第2の工程とを含む。
【0078】
別の実施形態によれば、本発明の処理方法は、化粧料として許容される媒体中に1種または複数種のアニオン性酸化多糖類をケラチン繊維に塗布する第1の工程と、繊維を水ですすぐ第2の工程と、その後、前記繊維を優先的には45℃〜250℃の範囲の温度で、特に100℃〜180℃の範囲の温度で加熱する第3の工程とを含む。
【0079】
その後、ケラチン繊維を水ですすぎ、および/または、洗浄し、風乾または乾燥手段で乾燥することができる。
【0080】
好ましくは、ケラチン繊維を加熱する工程は、ストレートアイロンにより180℃の温度で行われる。
【0081】
本発明の処理方法は、機械的張力をかけてケラチン繊維を整形するのと同時に行うことができる。
【0082】
このような機械的張力下での整形は、例えば、カーラー、カールアイロン、スチームアイロンまたはストレートアイロンにより:
(a)酸化多糖類を含む組成物の塗布前中に、および
(b)ケラチン繊維を加熱する工程の前に、
行うことができる。
【0083】
特定の一実施形態によれば、毛髪を予め濡らしてもよく、毛髪はローラーなどの張力手段に巻き付けられる。前記ローラーは、優先的には、直径2〜30mmである。また、毛髪を巻く時、式(I)の化合物を塗布しても、またはさもなければ、カーラーが、例えば、フォーム製である場合、カーラーに含浸させてもよい。
【0084】
ケラチン繊維に張力をかける工程は、任意の手段で、例えば、ゴムバンド、クリップ、櫛、髪留めまたはヘアリボン(hair ties)で、あるいは、通常の円筒状のカーラーまたはローラー、および「チューリップ」型のカーラーで行うことができる。カーラーは、例えば、米国特許第5992425号明細書に記載のものなどのフォーム製のものであってもよい。この場合、フォームローラーに、前述の式(I)の少なくとも1種のポリマーを含む化粧料組成物などの毛髪用製品を含浸させることができ、それにケラチン繊維の束を巻き付け、この束の巻き付けられた長さ全体にわたり製品がコーティングされるようにする。「チューリップ」型のカーラーは、細長い軸部からなり、張力手段は、直径2〜30mmのカーラーである。
【0085】
好ましくは、本処理方法は、ケラチン繊維の美容処理方法の前に、その間に、および/またはその後に行うことができる。
【0086】
特に、本処理方法は、ケラチン繊維の染色方法、縮毛矯正方法および/またはパーマネントウェーブ方法の前に行うことができる。
【0087】
変形形態として、本処理方法は、ケラチン繊維の人工着色が起こらない美容処理方法中におよび/またはその後に、特に:
(a)ケラチン繊維のパーマネントウェーブ方法または縮毛矯正方法中におよび/またはその後に、および
(b)ケラチン繊維のブリーチ方法の後に、
行うことができる。
【0088】
好ましくは、本処理方法は、ケラチン繊維の人工着色が起こらない美容処理方法中に行われる。
【0089】
一実施形態によれば、本発明の処理方法は、ケラチン繊維のブリーチ方法の後に行われる。
【0090】
ケラチン繊維のブリーチ方法は、前記繊維に、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸塩、過ホウ酸塩および過硫酸塩などの過酸塩、ならびにペルオキシダーゼおよび二電子オキシドレダクターゼまたは四電子オキシドレダクターゼなどの酵素から選択される1種または複数種の酸化剤を含み得る組成物を塗布することにより行うことができる。過酸化水素の使用が、特に好ましい。
【0091】
組成物中の酸化剤の含有率は、組成物の0.1質量%〜10質量%、好ましくは組成物の全質量に対して0.5質量%〜6質量%とすることができる。
【0092】
好ましくは、酸化剤と混合物した後の組成物のpHは、5〜10.5、好ましくは6〜10である。
【0093】
組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、アミンまたはアルカノールアミンなどのアルカリ剤を含むことができる。
【0094】
別の実施形態によれば、本発明の処理方法は、ケラチン繊維の永久的再整形方法の前、その間、またはその後に行われる。
【0095】
永久的再整形方法は、次の工程:
(i)化粧料として許容される媒体中に1種または複数種の還元剤を含む還元組成物をケラチン繊維に塗布し、整形するのに十分な時間、付着したまま放置する工程と、
(ii)形状を固定するのに十分な時間、酸化組成物を塗布する工程と、
を行うことを含む方法である。
【0096】
永久的再整形方法の工程(i)で使用される還元剤は、チオグリコール酸およびチオ乳酸、これらの塩およびこれらのエステルなどのチオール、システイン、システアミンおよびこれらの誘導体、亜硫酸塩および亜硫酸水素塩、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムの亜硫酸塩および亜硫酸水素塩、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0097】
より優先的には、チオール化還元剤は、チオグリコール酸およびチオ乳酸またはこれらの塩、さらにより優先的にはチオグリコール酸である。
【0098】
還元剤は、還元組成物中に、還元組成物の全質量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲の含有率で、好ましくは0.5質量%〜15質量%の範囲の含有率で存在し得る。
【0099】
一般的に、この組成物の媒体は、水、または水と化粧料として許容される1種または複数種の溶媒との混合物を含む。還元組成物中に使用され得る、化粧料として許容される溶媒は、染料組成物の場合に使用されるものに対応し得る。
【0100】
溶媒含有率は、より詳細には、還元組成物の全質量に対して20質量%以下である。
【0101】
還元組成物は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤などの一般的な添加剤を含むこともでき、これらの中で、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、オキシエチレン化アルキルフェノール、脂肪酸アルカノールアミド、オキシエチレン化脂肪酸エステル、およびまたヒドロキシプロピルエーテル型のその他のノニオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0102】
還元組成物がこのタイプの添加剤を含有する場合、その含有量は、還元組成物の全質量に対して、一般的に30質量%未満、好ましくは0.5質量%〜10質量%である。
【0103】
還元組成物は、増粘したもしくは増粘していないローション、クリームもしくはゲルの形態であっても、または他の任意の好適な形態であってもよい。
【0104】
放置時間は、一般的に3〜30分、好ましくは5〜15分である。
【0105】
永久的再整形方法の工程(ii)で使用される酸化組成物は、通常、1種または複数種の酸化剤、一般的には過酸化水素水溶液、アルカリ金属臭素酸塩、過酸塩またはポリチオン酸塩、さらにより優先的には、過酸化水素水溶液を含む。
【0106】
酸化組成物のpHは、一般的に2〜10である。
【0107】
放置時間は、一般的に3〜30分、好ましくは5〜15分である。
【0108】
より優先的には、本発明の処理方法は、ケラチン繊維の永久的再整形方法中に行われる。
【0109】
特定の一実施形態によれば、還元組成物は、ケラチンのジスルフィド結合を還元するために塗布され、前記塗布前、塗布中、または塗布後にケラチン繊維に機械的張力をかけ、その後、還元組成物を一般的には5〜60分間、好ましくは5〜30分間作用させる。
【0110】
次いで、1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む化粧料組成物を前記ケラチン繊維に塗布する。
【0111】
次いで、放置時間の全部一部、45℃〜250℃、好ましくは80℃〜180℃の範囲となり得る温度で加熱することにより、頭髪に熱処理を施す。実際には、この操作は、ヘアスタイリング用フード、ヘアドライヤー、丸形もしくは平形のアイロン、赤外線照射装置または他の標準的な加熱機器を使用して行うことができる。
【0112】
特に、加熱手段と頭髪の整形手段の両方として、45℃〜250℃、好ましくは80℃〜180℃の範囲の温度で加熱するアイロンを使用することができる。
【0113】
次いで、ケラチンのジスルフィド結合を再形成するための酸化組成物を、巻かれたまたは巻かれていない毛髪に塗布し、一般的には2〜15分の時間、放置する。
【0114】
パーマネントウェーブを行うことが望ましい場合、ケラチン繊維に張力をかけるために、好ましくはカーラーなどの機械的手段を使用し、毛髪整形手段の前、その間、またはその後に、好ましくは毛髪整形手段の後に還元組成物を塗布する。
【0115】
毛髪の縮毛矯正方法または直毛化方法の場合、還元組成物を毛髪に塗布した後、歯の大きい櫛を用いて、櫛の背を用いて、手で、またはブラシを用いて毛髪を真っ直ぐにする操作により、毛髪をその新しい形状に固定するための機械的再整形を毛髪に施す。5〜60分、好ましくは15〜45分の放置時間が一般的に実施される。
【0116】
60℃〜220℃、好ましくは120℃〜200℃で加熱するストレートアイロンを使用して、毛髪の直毛化の全部または一部を行うこともできる。
【0117】
変形形態として、永久的再整形方法は、1種または複数種のアルカリ剤を含む、pHが少なくとも10のアルカリ性化粧料組成物を塗布した後に行われる、直毛化または縮毛矯正による永久的再整形方法であってもよい。
【0118】
特に、化粧料として許容される媒体中に1種または複数種のアルカリ剤を含む、pH10以上のアルカリ性化粧料組成物をケラチン繊維に塗布すると同時にそれらを真っ直ぐに伸ばし、整形するのに十分な時間付着したまま放置する。
【0119】
アルカリ剤は、組成物のpHが少なくとも10超、好ましくは10〜14、より好ましくは12〜14となるような量の、無機または有機水酸化物型のアルカリ剤から選択される。
【0120】
より詳細には、水酸化物型のアルカリ剤は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、遷移金属、特に、IIIB族、IVB族、VB族およびVIB族の遷移金属の水酸化物、ランタニドの水酸化物またはアクチニドの水酸化物、水酸化アンモニウムおよび水酸化グアニジン、またはこれらの混合物から選択される。
【0121】
このような化合物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化亜鉛、水酸化セリウム、水酸化ランタン、水酸化アクチニウム、水酸化トリウム、水酸化アルミニウム、水酸化グアニジンおよび水酸化第四級アンモニウムを挙げることができる。
【0122】
特定の水酸化物、より詳細には水酸化グアニジンは、前駆体、即ち、接触させると化学反応により水酸化グアニジンを生成する少なくとも2種の化合物の形態であってもよいことに留意されたい。従って、例として、アルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化カルシウムと、炭酸グアニジンとの組み合わせを挙げることができる。
【0123】
有利には、水酸化物型のアルカリ剤の量は、組成物の質量に対して、0.5質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜8質量%である。
【0124】
特に、本発明の美容処理方法は、人工的に着色されていないケラチン繊維の保護および/または修復方法であって:
(i)化粧料として許容される媒体中に1種または複数種のアニオン性酸化多糖類を含む化粧料組成物を前記繊維に塗布する工程と、
(ii)ケラチン繊維を加熱する工程と、
を含む方法である。
【0125】
本発明の説明として、以下の実施例を記載する。
【実施例】
【0126】
A部
実施例で示される量は、質量パーセンテージとして表される。
【0127】
I.試験した酸化多糖類
化合物1は、論文「Water soluble oxidized starches by peroxide reactive extrusion」、R.E.WingおよびJ.L.Willett著、Industrial Crops and Products 7,1997、45〜52頁に記載の反応押出法を行うことによる、Inutec N25の名称でOrafti社により販売されているイヌリンの酸化により製造された。Clextral社により販売されているBC21型の同時回転二軸スクリュー押出機、および酸化剤として過酸化水素水溶液を使用した。
【0128】
化合物1:水中で、イヌリン78質量%と過酸化水素水溶液1.57質量%とを混合した混合物の反応押出により得られる酸化イヌリン;反応押出後の自発的pHは3.8である。得られた化合物1のカルボニル含有率は、1.23%(w/w)、カルボキシル含有率は0.17%(w/w)である。
【0129】
【表1】
【0130】
組成物(A)、(B)および(C)のpHは、約3.4である。
【0131】
III.手順
各組成物を、非常に増感した毛髪束(SA=45%)に、毛束1グラム当たり組成物10mlの割合で、30分間40℃で塗布する。
【0132】
次いで、毛束の水分を絞った後、フード下、10分間60℃で乾燥させる。
【0133】
毛束をコーミングした後、ストレートアイロンを180℃の温度で使用し、40秒間、毛束に沿って5回連続的に通過させる。
【0134】
IV.結果−美容特性
シャンプー後に各組成物(A)〜(D)で処理を行った後、毛髪束の美容特性を観察し、評価する。
【0135】
毛束の美容的感触および扱い易さ、ならびに櫛通りの良さを特に評価する。
【0136】
【表2】
【0137】
次いで、シャンプー後に毛髪束をその美容特性(柔軟で心地よい美容的感触、扱い易さ、櫛通りの良さおよび抵抗性)により分類した。
【0138】
【表3】
【0139】
本発明の方法により処理された毛束は、シャンプー後に、比較的良好な美容特性を有する。
【0140】
従って、美容特性の持続性が改善される。
【0141】
V.比色測定
5.1 各組成物(A)〜(D)について前述した処理(手順−第III部)の前後にKonica−Minolta CM2600D分光測色計(正反射光を含む、光源D65、視野角10°)を使用して、毛髪束の色をCIE L系で評価する。
【0142】
処理前後の毛髪束の色合いの変化DEは、処理前後に測定した値Lに基づいて算出され、次式:
【数1】
から得られる。
【0143】
この式中、L、aおよびbは、未処理の増感した毛髪束で測定された値を表し、L、aおよびbは、各組成物(A)〜(D)について処理を行った後の増感した毛髪束で測定された値を表す。
【0144】
VI.結果
【0145】
【表4】
【0146】
本発明の処理方法により処理された毛髪束は、変色しない。
【0147】
VII.乾燥摩擦特性の評価
7.1手順
毛髪の摩擦係数の測定値は、2本の毛髪を通す2つの穿孔されたTeflon製端片を有するガラス板で構成された摩擦ベンチを使用して求める。
【0148】
11.0グラムのステンレス鋼製スレッドを板上で調節し、走査速度は20Hz/秒とし、移動速度は2.0rpmとする。測定は、繊維の両方向(毛根から端部への方向と端部から毛根への方向)で、温度25℃、相対湿度45%で行う。
【0149】
7.2結果
【0150】
【表5】
【0151】
本発明の処理方法により、毛髪の乾燥摩擦係数をさらに低減させることが可能となることが分かる。
【0152】
このような摩擦係数の低下は、多糖類の濃度と共に増大することが分かる。
【0153】
B部
後述する組成物で示される量は、質量パーセンテージとして表される。
【0154】
I.試験される酸化多糖類
化合物1は、A部(A部.I)と同様に、Orafti社によりInutec N25の名称で販売されているイヌリンの酸化により製造された。
【0155】
II.試験される組成物
【0156】
【表6】
【0157】
組成物(C)、(E)および(F)のpHは、約C=7;E=3.02;F=6.33である。
【0158】
III.手順
手順は、A部(A部.III)で行ったのと同一である。
【0159】
IV.比色測定
毛髪束の色を、各組成物(C)〜(F)について前述した処理(手順−III部)の前後に、Konica−Minolta CM2600D分光測色計(正反射光を含む、光源D65、視野角10°)を使用して、CIE L系で評価する。
【0160】
処理前後の毛髪束の色合いの変化DEは、処理前後に測定した値Lに基づいて算出され、前述の式(i)から得られる。
【0161】
V.結果
【0162】
【表7】
【0163】
本発明の方法で処理された毛髪束(毛束3’)は変色しないが、フルクトースで処理された毛髪束(毛束4’)はかなり変色する。