特許第6207566号(P6207566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コアテツクスの特許一覧

特許6207566溶液中における(メタ)アクリル酸の重合方法、得られるポリマー溶液およびそれらの使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207566
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】溶液中における(メタ)アクリル酸の重合方法、得られるポリマー溶液およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20170925BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08F2/38
   C08F20/06
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-204314(P2015-204314)
(22)【出願日】2015年10月16日
(62)【分割の表示】特願2015-532490(P2015-532490)の分割
【原出願日】2013年9月23日
(65)【公開番号】特開2016-41815(P2016-41815A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年10月19日
(31)【優先権主張番号】1259043
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513197585
【氏名又は名称】コアテツクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マルク・シュオ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチアン・ジャックメ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・モンゴワン
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−516017(JP,A)
【文献】 米国特許第06596899(US,B1)
【文献】 特表2008−508384(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/095466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
C08F 20/00 − 20/70
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の順で行われる工程a)〜c):
a)水、および硫酸銅、硫酸鉄およびこれらの化合物のブレンドからなる群から選択される水溶性金属塩系触媒を合成反応器に導入する工程、
b)反応器を少なくとも60℃の温度に加熱する工程、
c)以下の化合物
b1)重合される(メタ)アクリル系モノマー、
b2)少なくとも1種の式(I)の化合物
【化1】
(式中、
・Xは、Na、KまたはHを表し、
・Rは、炭素原子数1から5のアルキル鎖を表す。)、
b3)重合開始剤系
を連続的に同時に反応器に導入する工程
を含み、式(I)の化合物と(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が0.15から2.5%の間である、溶液中における(メタ)アクリル酸ポリマーの無溶媒調製方法によって得られ、ポリマーが8,000g/mol未満の分子量および2から3の間の多分散度IP指数を有し、硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマーと全(メタ)アクリル酸ポリマーとの間のモル比率(mol/mol)が、NMRで測定して0.1%未満であることを特徴とする、(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液。
【請求項2】
未重合の(メタ)アクリル系モノマーを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定して2重量%未満の量で含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
副生成物であるCSを、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析で測定して0.1%未満の量で含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
副生成物であるCSを、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析で測定して0.05%未満の量で含有することを特徴とする、請求項3に記載の溶液。
【請求項5】
副生成物であるCSを、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析で測定して0.01%未満の量で含有することを特徴とする、請求項3に記載の溶液。
【請求項6】
無機材料の粉砕助剤および/または共粉砕助剤としての、請求項1から5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用。
【請求項7】
無機材料粒子を溶液中に分散させるための、請求項1から5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用。
【請求項8】
無機材料の懸濁液を調製するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸のラジカル重合の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、新規なラジカル重合法、この手法によって得られるポリマー、および産業におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合法では、従来、連鎖移動剤、フリーラジカル源および場合によって触媒を、重合されるモノマーの少なくとも1種の溶媒中で接触させることが必要である。
【0003】
重合方法が関係する場合の主な目標は、意図される用途に適した分子量を有するポリマーを得ることにある。本発明の目的は、分子量8,000g/mol未満、例えば約6,000g/molのポリマーを得ることにある。
【0004】
種々のラジカル重合法が存在する。
【0005】
有機溶媒、例えば、イソプロパノールなどの第二級アルコールを用いる方法について先ず述べ得る。これらの方法は、揮発性有機化合物(VOC)を発生するため、現在のところ満足のいくものではない。一方で、反応の最後にこれらの溶媒を除くことが必要であり、このことは、ポリマー調製の産業的プロセスをより複雑なものとする。一方で、これらの溶媒の健康および環境への影響は、非常に有害であることが知られており、そのため、これらが生成することを避けようという試みがなされている。最後に、精製(蒸留)後でさえも、微量の溶媒がポリマー溶液中に依然として残存している。
【0006】
水中で行い揮発性有機化合物を発生しない、ポリアクリル系ポリマーの他の合成方法が存在する。
【0007】
これらの方法においては、例えば、触媒および連鎖移動剤の役割を果たす硫酸銅のみならず、開始剤の役割を果たす過酸化水素も用いられ得る。それにもかかわらず、分子量8,000g/mol未満、例えば約6,000g/molのポリマーを得るためには、相当な量の触媒を添加する必要があり、これによって、相当な量の汚染性の副生成物が生じる。
【0008】
あるいはまた、チオ乳酸または別のメルカプタンRSHが追加の連鎖移動剤として用いられるが、この場合もやはり、分子量8,000g/mol未満、例えば約6,000g/molのポリマーを得るためには、相当な量のチオ乳酸、すなわち、より一般的には移動剤を添加する必要がある。
【0009】
さらに別の方法では、過酸化水素またはラジカル発生剤の存在下で、化学式NaPOの次亜リン酸ナトリウムを連鎖移動剤および酸化還元剤として用いる。これは、多量の次亜リン酸ナトリウムを必要とする、リンの画分がポリマー中でグラフトされるおよびリンの他の画分がプロセス水中にリン酸塩として見出されるこという大きな欠点を有する。これは、第一にポリマーを用いる際に欠点となり、第二に環境汚染物質を構成する。
【0010】
様々なラジカル重合法の中から、モノマーのリビング重合(live polymerization)を可能にするRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)タイプの制御されたラジカル重合についても述べることができる。RAFTによるリビング重合の原理が、文献WO98/01478に記載されている。連鎖移動剤および重合されるモノマーが最初に、ラジカル発生剤と共に反応器に入れられるので、この方法は、成長鎖の官能性の交換を引き起こす(Macromolecules、2012年7月10日、第15巻、第13号、5321−5342頁)。フリーラジカル源をその後添加し、加熱し、期待される分子量のポリマーが得られるまで反応を継続する。このような方法によれば、所望の分子量のポリマーが得られるように反応条件を正確に制御することが確かに可能である。このような方法は、ポリマーをある特定の用途に特に効果的なものとする低い多分散度IP指数(多分子指数とも呼ばれる)を有するポリマーを得ることも可能にする。それにもかかわらず、この文献に記載されているアクリル酸の転化率は非常に低い。
【0011】
文献WO02/070571およびWO2005/095466については、硫黄含有(sulphurous)連鎖移動剤による制御されたアクリル酸のラジカル重合法について記載しており、これは、得られるモノマーの優れた転化率をもたらす。
【0012】
文献WO2006/024706は、RAFTタイプの方法により得られるアクリル酸ポリマー、およびこれらのポリマーの様々な使用について記載している。
【0013】
より具体的には、文献WO02/070571は、特に、ジベンジルトリチオカーボネート(II)を含めた、タイプ(I)のトリチオカーボネート化合物について記載している。文献WO2005/095466およびWO2006/024706については、タイプ(III)の水溶性トリチオカーボネートについて非常に詳細に記載している。これらの化合物の式を以下に示す。
【0014】
【化1】
(式中、Rはアルキルまたはアリール鎖を表し、それらは置換されていてもよく置換されていなくてもよい)
【0015】
【化2】
【0016】
文献WO2005/095466およびWO2006/024706に記載されている優先的な実施形態によれば、XおよびR’基において、
・Xは、NaまたはHを表し、
・R’は、炭素原子数2から4のアルキル鎖を表す。
【0017】
RAFTタイプの制御されたラジカル重合を実行し、期待される分子量および満足のいくIP指数を有するポリマーをそうして得るために、反応溶媒中に、利用可能な量の連鎖移動剤を導入すること、換言すると、重合される各鎖が連鎖移動剤によって機能化されるような量の連鎖移動剤を添加することが重要である。さらに、重合が開始されるとき、すなわち、重合反応器が加熱されラジカルが生じるときに、この連鎖移動剤が既に利用可能であることが重要である。これは、相当な量の連鎖移動剤が、RAFTタイプの制御されたラジカル重合法において用いられる必要があるということを示唆している。
【0018】
RAFT重合から生じるあらゆる利点にもかかわらず、このような量の連鎖移動剤の使用は、いくらかの欠点を有する。
【0019】
第一に、連鎖移動剤は高価な製品であるということが立証されており、このことは、得られるポリマーのコストに著しい影響を持つ。
【0020】
さらに、文献WO02/070571、WO2005/095466およびWO2006/024706に記載されているように、硫黄含有連鎖移動剤を用いると、そのようなRAFTタイプの制御されたラジカル重合法の結果として生じるポリマーは、その主鎖中に、連鎖移動剤またはその残基の一部を有することが観察される。これは、NMR分析によって特に明らかにされ得る。したがって、例えば水酸化ナトリウムNaOHを用いて、この方法の結果として生じた生成物を加水分解することが必要であり、これは、この方法において追加の工程を構成することになる。さらに、これらの化合物の画分は、CSおよびHSタイプの遊離硫黄含有副生成物に分解され、最終的なポリマー水溶液およびプロセスの流出水において見出され、これらは、人間および環境に負の影響を有し得るということに我々は留意する。さらに、ポリマーの使用中に水溶液中にこれらの硫黄含有副生成物が存在することによって、気体の放出が起こり、これは人間にとって有害となる。これは、ポリマーが無機材料の分散助剤または粉砕助剤として用いられる場合、例えば、炭酸カルシウムCaCOを粉砕する場合に特に当てはまる。
【0021】
化学式CSである硫化炭素は、生殖機能にダメージを与えやすい特に毒性のある生成物である。化学式HSである硫化水素は、悪臭のある酸性ガスで、水生生物にとって非常に有害であり、また、吸い込むと死に至る場合がある。メルカプタンは硫化水素と同じ欠点を有することもまた注意すべきである。規制当局は、比較的低い濃度割合である場合も含めて、このような副生成物を含みやすいポリマー溶液における副生成物の厳密な等級付けを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第98/01478号
【特許文献2】国際公開第2002/070571号
【特許文献3】国際公開第2005/095466号
【特許文献4】国際公開第2006/024706号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Macromolecules、2012年7月10日、第15巻、第13号、5321−5342頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的の1つは、ポリマーを合成する際、また、特に無機材料の粉砕に、ポリマー溶液が用いられる際にも、人間および環境へのリスクを減らすべく、硫化炭素または硫化水素タイプの副生成物をほとんど伴わないポリマー水溶液を提供することができる方法を提案することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、ポリマーの調製方法を提案することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、分子量が8,000g/mol未満、例えば7,000g/mol未満の(メタ)アクリル酸ポリマーの調製方法を提案することにある。
【0027】
本発明の別の目的は、無溶媒での、すなわち揮発性有機化合物を発生しない、ポリアクリル系ポリマーの調製方法を提案することにある。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、本方法に関連するコストを制御しながら、満足のいくIP指数を有するポリマーを作製する方法を提供することにある。
【0029】
本発明の別の目的は、重合反応物質に由来する硫黄またはリン原子を主鎖中に有さず、それにもかかわらず低い分子量を有するポリマーを作製する方法を提案することにある。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、硫黄およびリンを含む反応物質の使用に関連する、プロセス水における汚染物質の量を減じることにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者らは、驚くべきことに、溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを調製するための無溶媒調製方法であって、前記ポリマーが、8,000g/mol未満の分子量および2から3の間の多分散度IP指数を有し、前記方法が、
a)水および場合によって水溶性金属塩系触媒を、合成反応器に導入する工程、
b)反応器を少なくとも60℃の温度に加熱する工程、ならびに
c)以下の化合物
b1)重合される(メタ)アクリル系モノマー、
b2)少なくとも1種の式(I)の化合物
【0032】
【化3】
(式中、
・Xは、Na、KまたはHを表し、
・Rは、炭素原子数1から5のアルキル鎖を表す。)、
b3)重合開始剤系
を連続的に同時に反応器に導入する工程
を含み、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が0.1から2.5%の間である、方法を発見した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実際に、本発明の方法は、分子量が8,000g/mol未満、例えば7,000g/mol未満、例えば約6,000g/molのポリマーを提供することを可能にする。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ポリマーは、500g/molを超える、例えば1,000g/molを超える分子量を有する。
【0035】
このようにして得られたポリマーの水溶液は、例えばこの溶液の中和といった、いかなる処理の要求も負わずに、硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマーと全(メタ)アクリル酸ポリマーとの間のモル比率(mol/mol)が、NMRおよび拡散スペクトロスコピーまたはDOSY法で測定して0.1%未満であるポリマー純度の程度が得られることを特徴とする。
【0036】
DOSY(拡散秩序化スペクトロスコピー:Diffusion Ordered SpectroscopY)は、ブレンド中の有機化合物の構造を、前もっての物理的分離なしで決定することができる2次元NMR技術である。分子は、それらの自己拡散係数Dによって、すなわち、それらの流体力学的半径によって区別される。これは、各NMRシグナルを係数Dへ相関付ける目印を示す2−Dマップという結果として現れ、これは、ブレンドのそれぞれの化合物のNMRスペクトルを分離することを可能にする。
【0037】
表現「硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマー」は、例えば以下の式:
【0038】
【化4】
を有する中央トリチオカーボネート構造を含むポリマー、または例えば以下の式:
【0039】
【化5】
を有するチオール鎖末端を含むポリマーを意味する。
【0040】
本発明の方法は、(第一に、式(I)の化合物の使用量のために、第二に、合成反応器への反応物質の導入順序のために)RAFTタイプのラジカル重合法ではなく、したがって、ポリマー水溶液を得ることが可能であり、この水溶液は、有利なことに、第一に、RAFTタイプのラジカル重合法に従って得られたポリマー溶液より少ない硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマーを含み、第二に、この方法によって得られた溶液は、RAFTタイプのラジカル重合法に従って得られたポリマー溶液より少ないHSまたはCSタイプの反応副生成物を含む。得られたポリ(メタ)アクリル系ポリマーの多分散度指数は、RAFTタイプのラジカル重合法を用いて得られたものに比べて高いが、本発明の方法に従って得られたこうしたポリマー水溶液は、RAFTタイプのラジカル重合法によって得られた溶液より高程度の純度を有する。この高程度の純度は、従来の方法を用いることを通じてまたは精製技術によって得られなかったものであり、したがって、本発明によるポリマー水溶液は、先行技術のポリマー水溶液との関係において新規であると認識されるべきものである。
【0041】
このように、本発明の方法は、得られるポリマーの汚染を減じることが可能であり、汚染性CSまたはHSタイプの副生成物の生成を減じることも可能である。その理由は、式(I)の化合物と重合されるモノマーとの間の質量比率が、0.1から2.5%の間の値まで減じられることにある。
【0042】
本発明の方法は、本発明の主な技術的課題の1つ、すなわち、分子量8,000g/mol未満、例えば6,000g/mol未満のポリマーを調製する方法を提供することを解決することもできる。
【0043】
本発明の方法は、溶媒、例えば、イソプロパノールなどの第二級アルコールまたは揮発性有機化合物(VOC)を発生するおそれがある他のいかなる溶媒も使用しない方法である点にも留意されたい。
【0044】
本発明の方法は、産業上合理的な反応時間内に高い転化率をもたらすという利点も有する。本発明による方法の一実施形態によれば、工程c)の反応時間は、4時間未満である。
【0045】
本発明の方法の工程c)は、以下の式(I):
【0046】
【化6】
の化合物の少なくとも1種を用い、式(I)中、
・Xは、Na、KまたはHを表し、
・Rは、炭素原子数1から5のアルキル鎖を表す。
【0047】
表現「炭素原子数1から5のアルキル鎖」は、メチル鎖、エチル鎖、プロピル鎖、イソプロピル鎖、ブチル鎖、tert−ブチル鎖、鎖またはペンチル鎖を意味する。
【0048】
本発明によれば、前記連鎖移動剤と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.1から2.5%の間である。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.15から2.1%の間である。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.15から1.5%の間である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、前記式(I)の化合物は、化合物(IV)であり、すなわち、XがNaを表しRがCHを表す化合物(I)であり、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.1から1.75%の間である。
【0052】
本発明の別の実施形態によれば、前記式(I)の化合物は、化合物(IV)であり、すなわち、XがNaを表しRがCHを表す化合物(I)であり、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.15から1.5%の間である。
【0053】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、前記式(I)の化合物は、化合物(IV)であり、すなわち、XがNaを表しRがCHを表す化合物(I)であり、前記式(I)の化合物と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.15から0.5%の間である。
【0054】
構成成分は、合成反応器に「連続的に」、すなわち、一定速度で、または変化してもよいが導入が中断されることのない速度で、導入される。
【0055】
構成成分はまた、合成反応器に「同時に」導入される、すなわち、様々な構成成分が、同時期に導入される。
【0056】
本発明の方法の一実施形態によれば、構成成分は、合成反応器に「比例的に」導入される、すなわち、合成反応器に導入されるブレンドの各構成成分の割合は、反応時間にわたって、ブレンド中の他の構成成分に対して一定を保つ。
【0057】
表現「重合される(メタ)アクリル系モノマー」は、本発明の方法の目的が、専らアクリル酸のみからなるポリマー(アクリル酸のホモポリマー)もしくは専らメタクリル酸のみからなるポリマー(メタクリル酸のホモポリマー)あるいはアクリル酸およびメタクリル酸のブレンドからなるポリマー(アクリル酸−メタクリル酸コポリマー)のいずれかを作製することにあるということを意味する。最後の事例においては、本発明の一態様によれば、アクリル酸とメタクリル酸との間のモル比は、1:100から100:1の間、例えば、1:1から100:1の間、または1:1から50:1の間で変動し得る。
【0058】
表現「重合開始剤系」または「重合活性剤系」は、モノマーの重合を開始することができる系を意味する。従来、これは、フリーラジカルを発生する化合物からなる。
【0059】
本発明の一態様によれば、重合開始剤系は、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ヒドロペルオキシドおよびこれらの化合物の少なくとも2種のブレンドからなる群から選択される。
【0060】
本発明の別の態様によれば、重合開始剤系は、過酸化水素Hである。
【0061】
本発明の一態様によれば、水溶性金属塩系触媒は、硫酸銅、硫酸鉄およびこれらの化合物のブレンドからなる群から選択され、本方法の工程a)において合成反応器へ導入される。
【0062】
さらに、本発明の別の態様によれば、前記水溶性金属塩系触媒と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.01から3%の間、例えば0.5%から2.5%の間である。
【0063】
本発明の別の態様によれば、前記の少なくとも1種の式(I)の化合物は、ジプロピルトリチオカーボネート(DPTTC、CAS No.6332−91−8)、またはその塩、例えば下記式(IV)で表されるその二ナトリウム塩(ジプロピオン酸ナトリウムトリチオカーボネート、CAS No.86470−33−2)である。
【0064】
【化7】
【0065】
ポリマーは、概して、2つの指数/大きさ/値:
・多分子性IP指数(別名で多分散度PDとも称する)および
・重量での分子量
によって特徴付けられる。
【0066】
多分子指数は、ポリマー中の種々の高分子(macromolecule)の分子量の分布に対応する。全ての高分子が同一の長さ(したがって、同一の分子量)のものであれば、この指数は1に近くなる。逆に、高分子が異なる長さ(したがって、異なる分子量)のものであれば、IP指数は1より大きくなる。ポリマーが無機材料の効果的な分散助剤または粉砕助剤を構成するためには、一般的に、IP値が可能な限り1に近付くように試みられる。例えば、この効果は、作製された懸濁液の粘度のためにこの懸濁液の取扱い、移送またはポンプ輸送が不可能になることなく、水中で分散または粉砕され得る、無機材料の量によって測られる。
【0067】
本発明によれば、説明する本方法によって得られた溶液中のポリマーは、8,000g/mol未満の分子量および2から3の間の多分散度指数IPを有する。
【0068】
分散スペクトロスコピーと組み合わせたNMR分析は、本発明によるポリマー鎖の末端における式(I)由来の単位の存在の可能性を浮き彫りにすることができる。NMR法および分散スペクトロスコピーは、当業者に公知である。
【0069】
NMRスペクトル(1Dおよび2D)は、例えば、TXI(1H/13C/31P)5mmプローブが備え付けられたBruker AV 500スペクトロメーターを用いて作成することができる。試料を、重水中に溶解し、水のシグナルのプレサチュレーションを伴うH−NMRおよび13C−NMRにおいて試験する:1Dおよび2D試験(単純長距離H/13C相関)。
【0070】
本発明の一態様によれば、反応条件は、重合されるモノマーの転化率が99%を超えるような条件である。
【0071】
残存モノマー(アクリル酸またはメタクリル酸)の量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価することができる。この方法において、ブレンドを構成する構成成分は、固定相へ分離され、UV検出器によって検出される。検出器が較正された後、アクリル系化合物に対応するピークの面積から、残存(メタ)アクリル酸の量を得ることができる。
【0072】
この方法は、解説書「Chimie Organique Experimentale」(有機化学実験)、M.Chavanne、A.Julien、G.J.Beaudoin、E.Flamand、第2版、Editions Modulo、第18章、271−325頁に特に記載されている。
【0073】
本発明の別の態様によれば、反応条件は、重合されるモノマーの転化率が99.5%を超えるような条件である。この場合、残存モノマーの量は、0.5%未満または5,000ppm未満である。
【0074】
本発明の別の態様によれば、反応条件は、重合されるモノマーの転化率が99.7%を超えるような条件である。この場合、残存モノマーの量は、0.3%未満または3,000ppm未満である。
【0075】
本発明の一態様によれば、本方法の工程b)により、反応器は少なくとも80℃の温度、例えば95℃の温度に加熱される。
【0076】
本発明の別の態様によれば、本方法は、工程c)の重合の後に、反応副生成物の除去工程を含まない。
【0077】
本発明はまた、(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液であって、本発明による方法によって得られ、前記ポリマーが8,000g/mol未満の分子量および2から3の間の多分散度IP指数を有し、硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマーと全(メタ)アクリル酸ポリマーとの間のモル比率(mol/mol)が、NMRで測定して0.1%未満であることを特徴とする、水溶液に関する。
【0078】
本発明の一態様によれば、このポリマー溶液は、未重合の(メタ)アクリル系モノマーを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で決定して2重量%未満の量で含有する。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、このポリマー溶液は、未重合の(メタ)アクリル系モノマーを0.3重量%未満の量で含有する。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、このポリマー溶液は、未重合の(メタ)アクリル系モノマーを0.1重量%未満の量で含有する。
【0081】
本発明の一態様によれば、このポリマー溶液は、副生成物であるCSを、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析で決定して0.1重量%未満の量で含有することを特徴とする。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、このポリマー溶液は、副生成物であるCSを、0.05重量%未満、すなわち500ppm未満の量で含有する。
【0083】
本発明の別の実施形態によれば、このポリマー溶液は、副生成物であるCSを、0.01重量%未満、すなわち100ppm未満の量で含有する。
【0084】
さらに、別の実施形態によれば、このポリマー溶液は、副生成物であるCSを、50ppm未満の量で含有する。
【0085】
本発明の一態様によれば、この溶液は、副生成物であるHSを、ガスクロマトグラフィーおよび質量分析で決定して0.01重量%未満の量で含有することを特徴とする。
【0086】
最後に、本発明は、本発明によるポリマー水溶液の種々の使用に関する。
【0087】
本発明は、特に、無機材料の粉砕助剤および/または共粉砕助剤としての、本発明による(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用に関する。
【0088】
表現「無機材料」は、天然のまたは合成の炭酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、タルク、石こう、石灰、マグネシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、三酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、シリカ、マイカ、およびこれらの充填剤間のブレンド、例えば、タルク−炭酸カルシウム、炭酸カルシウム−カオリンブレンド、またはさらに炭酸カルシウムと、水酸化アルミニウムもしくは三酸化アルミニウムとのブレンド、もしくは合成または天然繊維とのブレンド、または無機共構造物、例えば、タルク−炭酸カルシウムもしくはタルク−二酸化チタン共構造物、またはこれらのブレンドからなる群から選択される無機材料を意味し、その中でも、前記無機材料は、天然もしくは合成の炭酸カルシウム、またはタルク、またはそれらのブレンドから優先的に選択され、その中でも、前記無機材料は、天然もしくは合成の炭酸カルシウムまたはそれらのブレンドからより優先的に選択される。
【0089】
本発明はまた、溶液中で無機材料の粒子を分散させるための、本発明による(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用に関する。
【0090】
一実施形態によれば、本発明による方法によって得られた(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液は、溶液中で炭酸カルシウムの粒子を分散させるために用いられる。
【0091】
本発明はまた、無機材料の懸濁液、例えば炭酸カルシウム懸濁液を調製するための、本発明による(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液の使用に関する。
【実施例】
【0092】
以下の各実施例において、本発明によるポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定している。
【0093】
かかる技術は、検出器が備えられたWATERS(商標)商標の液体クロマトグラフィー装置を用いる。この検出器は、WATERS(商標)商標の屈折率測定による濃度検出器である。
【0094】
この液体クロマトグラフィー機器は、分析されるポリマーの種々の分子量を分離するため、当業者によって適宜選択される立体排除カラムが備え付けられている。液体溶離相は、1N水酸化ナトリウムでpH9.00に調整され、NaHCO3を0.05M、NaNO3を0.1M、トリエタノールアミンを0.02M、NaN3を0.03%含有する水性相である。
【0095】
詳細な手法において、第一の工程により、重合溶液を、GPCの液体溶離相に対応するGPC可溶化溶媒中に、乾燥割合で0.9%に希釈し、ここへ、フローマーカーまたは内部標準としての役割を果たすジメチルホルムアミド0.04%を添加する。その後、0.2μmフィルターを適用する。その後、クロマトグラフィー装置(溶離剤:1N水酸化ナトリウムでpH9.00に調整され、NaHCO3を0.05M、NaNO3を0.1M、トリエタノールアミンを0.02M、NaN3を0.03%含有する水性相)に100μLを注入する。
【0096】
液体クロマトグラフィー装置は、流量が0.8ml/分に設定されたイソクラティックポンプ(WATERS(商標)515)を含む。クロマトグラフィー装置はオーブンも含み、オーブン自体に、以下のカラムシステムが直列で収められている:寸法が長さ6cmおよび内径40mmのプレカラムGUARD COLUMN ULTRAHYDROGEL WATERS(商標)タイプ、ならびに寸法が長さ30cmおよび内径7.8mmのリニアカラムULTRAHYDROGEL WATERS(商標)タイプ。また、検出システムは、屈折率測定による検出器RI WATERS(商標)410タイプからなる。オーブンは、60℃の温度に加熱され、屈折率計は45℃の温度に加熱される。
【0097】
クロマトグラフィー装置を、供給業者POLYMER STANDARD SERVICEまたはAMERICAN POLYMER STANDARDS CORPORATIONに対して認証された、異なる分子量のポリアクリル酸ナトリウム粉末である標準物質によって較正する。
【0098】
ポリマーの多分散度IP指数は、数平均分子量Mnに対する質量平均分子量Mwの比である。
【0099】
残存モノマーの量は、当業者に公知の従来技術を用いて、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。
【0100】
[実施例1]
この実施例の目的は、ジプロピオネートトリチオカーボネート塩(DPTTC)の使用を通じた本発明による(メタ)アクリル酸ポリマーの調製を例証することにあり、前記DPTTC塩と前記(メタ)アクリル系モノマーとの間の質量比率(重量/重量)は、0.1から2.5%の間(本発明)またはこの範囲の外(本発明外)である。
【0101】
試験1−先行技術
この試験は、RAFTタイプの制御されたラジカル重合によるポリマーの調製方法を例証するものである。
【0102】
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられたガラス製合成反応器に、水328g、29%のDPTTC連鎖移動剤94g(すなわち、100%DPTTCが27gまたは0.092mol)を加える。
【0103】
温度が95℃に達するまで加熱する。
【0104】
2時間かけて、100%アクリル酸328g(すなわち4.558mol)、およびアクリル酸と同時に、フリーラジカル源、この事例においては、水76gに溶解した過硫酸ナトリウムNa4g(すなわち0.017mol)、および水76gに溶解したメタ重亜硫酸ナトリウムNa1.15g(すなわち0.006mol)を注ぐ。
【0105】
温度を2時間維持し、その後、水46gで希釈した過酸化水素130Vの3.2gを注入することによって、それを処理する。
【0106】
その後、媒体を、撹拌しながら、水48gで希釈した50%水酸化ナトリウム381gで中和する。
【0107】
最後に、ブレンドを、95℃のまま、水15gに溶解した過硫酸ナトリウム7.83gからなる溶液および過酸化水素5.59gの溶液で処理し、その後、煮沸(cooking)を95℃で1時間再び行った後、周囲温度まで冷却する。
【0108】
試験2−先行技術
この試験では、用いられるDPTTC連鎖移動剤の量を10分の1に減じながら、試験1の条件を再現する。
【0109】
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられたガラス製合成反応器に、水328g、14%のDPTTC連鎖移動剤19g(100%DPTTCが2.7gまたは0.0092mol)を加える。
【0110】
温度が95℃に達するまで加熱する。
【0111】
2時間かけて、100%アクリル酸328g(すなわち4.558mol)、およびアクリル酸と同時に、フリーラジカル源、この事例においては、水76gに溶解した過硫酸ナトリウムNa4g(すなわち0.017mol)および水76gに溶解したメタ重亜硫酸ナトリウムNa1.15g(すなわち0.006mol)を注ぐ。
【0112】
温度を2時間維持し、その後、水46gで希釈した過酸化水素130Vの3.2gを注入することによって、それを処理する。
【0113】
その後、媒体を、撹拌しながら、水48gで希釈した50%水酸化ナトリウム381gで中和する。
【0114】
最後に、ブレンドを、95℃のまま、水15gに溶解した過硫酸ナトリウム7.83gからなる溶液および過酸化水素5.59gの溶液で処理し、次いで、煮沸を95℃で1時間再び行った後、周囲温度まで冷却する。
【0115】
試験3−先行技術
この試験は、文献WO2005/095466における実施例2の試験2に対応する。
【0116】
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水150g、14.4%のDPTTC連鎖移動剤20.31g(すなわち、100%DPTTCが2.92g)および100%アクリル酸50gを加える。その後、フリーラジカル源、この事例においてはV501を0.4g加える。温度が95℃に達するまで加熱する。次いで、温度を2時間維持した後、周囲温度まで冷却する。
【0117】
その後、媒体を50%水酸化ナトリウム55gで中和する。
【0118】
試験4−本発明の範囲外
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0119】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0120】
・14%DPTTC二ナトリウム塩1.91g(すなわち100%DPTTCが0.27g)を水31.1gに希釈した原液
・水9.4gに希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0121】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0122】
試験5−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0123】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0124】
・14%DPTTC二ナトリウム塩34.31g(すなわち100%DPTTCが4.80g)を水34.31gに希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0125】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0126】
試験6−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0127】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0128】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩3.35g(すなわち100%DPTTCが0.70g)を水31gに希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0129】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0130】
試験7−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0131】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0132】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩6.695g(すなわち100%DPTTCが1.4g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gに希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0133】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0134】
試験8−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0135】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0136】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩10.04g(すなわち100%DPTTCが2.1g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gに希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0137】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0138】
試験9−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0139】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0140】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩13.39g(すなわち100%DPTTCが2.8g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0141】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0142】
試験10−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0143】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0144】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩16.7g(すなわち100%DPTTCが約3.5g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0145】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0146】
試験11−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0147】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0148】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩20.1g(すなわち100%DPTTCが4.2g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0149】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0150】
試験12−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0151】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0152】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩23.43g(すなわち100%DPTTCが4.9g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0153】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0154】
試験13−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0155】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0156】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩26.78g(すなわち100%DPTTCが5.6g)を水31gで希釈した原液
・水9.4gで希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gで希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0157】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0158】
試験14−本発明
機械式撹拌システムおよびオイルバスタイプの加熱システムが備え付けられた合成反応器に、水213.4g、硫酸鉄七水和物0.27gおよび硫酸銅五水和物0.32gを加える。
【0159】
媒体を95℃に加熱し、その後、以下の要素を同時に連続的に2時間かけて添加する。
【0160】
・20.9%DPTTC二ナトリウム塩33.476g(すなわち100%DPTTCが7g)を水31gに希釈した原液
・水9.4gに希釈した過酸化水素130Vの35.3g、および
・水31gに希釈したアクリル酸279.9g
煮沸を95℃で1時間30分続ける。
【0161】
媒体を50%水酸化ナトリウム250gで中和する。
【0162】
【表1】
【0163】
[実施例2]
この実施例の目的は、先行技術のポリマー溶液または本発明によるポリマー溶液を用いて、種々の試料のイソプロパノール、硫化炭素および硫化水素の含有量を例証することにある。
【0164】
種々の試料の分析は、検出器としてのAgilent G2577Aマススペクトロメーターに連結されたAgilent G1530ガスクロマトグラフィーを用いて行う。Agilent G1888ヘッドスペースを用いて注入を行う。分析物(analyze)の溶離を可能にする30m×0.25mm×1μmのAgilent HP5カラムを用いる(5%フェニルおよび95%メチルシロキサン相)。分析は、そのままの試料2グラムで行う。定量化は、標準添加法によってなされる。
【0165】
試験1−ポリマー溶液
3つの合成を行う。
【0166】
・イソプロパノール中での重合方法を用いて調製されたポリアクリル系分散剤;Mw=5,500;IP=2.4
・上記の実施例1の試験1に従い(後処理なし)、連鎖移動剤としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が8.23%に等しく用いて、RAFTタイプの制御されたラジカル重合法を用いて調製されたポリアクリル系分散剤;Mw=5,065;IP=1.5、および
・上記の実施例1の試験8に従い、式(I)の化合物としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が0.75%に等しく用いて、本発明による方法を用いて調製されたポリアクリル酸のポリマー溶液;Mw=5,040;IP=2.5
試料1、2および3をそれぞれ得る。
【0167】
これらの試料の分析の結果を、以下の表1に記載する。
【0168】
【表2】
【0169】
試料1、すなわち、イソプロパノールを用いた先行技術の方法を用いて調製されたポリアクリル系分散剤の分析は、高い残存イソプロパノール含有量(2,000ppm)を示している。試料2、すなわち、RAFT法によって得られたポリアクリル系分散剤の分析は、それらの毒性のために大きな欠点を構成する硫酸含有副生成物であるHSおよびCSのかなりの含有量を示している。
【0170】
試料3、すなわち、本発明による方法を用いて調整されたポリアクリル酸ポリマー溶液の分析は、イソプロパノール、HSおよびCS含有量が検出できないことを示している。ポリマー合成中であるが、また、とりわけ無機材料の粉砕のためのポリマー溶液の使用中における、人間および環境へのリスクは、このようにして実質的に減じられる。
【0171】
試験2−炭酸カルシウム懸濁液
76%粗カルサイト濃度(Omya)から、それぞれ以下の分散剤を1.1重量%(乾燥/乾燥)含有する3種の炭酸カルシウム懸濁液を調製する。
【0172】
3つの合成を行う。
【0173】
・イソプロパノール中での重合方法を用いて調製されたポリアクリル系分散剤;Mw=5,500;IP=2.4
・上記の実施例1の試験1に従い(後処理なし)、連鎖移動剤としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が8.23%に等しいように用いて、RAFTタイプの制御されたラジカル重合法を用いて調製されたポリアクリル系分散剤;Mw=5,065;IP=1.5、および
・上記の実施例1の試験8に従い、式(I)の化合物としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が0.75%に等しいように用いて、本発明による方法を用いて調製されたポリアクリル酸のポリマー溶液である分散剤;Mw=5,040;IP=2.
試料4、およびをそれぞれ得る。
【0174】
試験3−炭酸カルシウムの粉砕のためのポリマー溶液の使用
この試験は、無機材料、より詳細には炭酸カルシウムの粉砕助剤としての種々のポリマー溶液の使用を例証するものである。76%粗カルサイト濃縮物(Omya)から、それぞれ以下の作用剤を0.6重量%(乾燥/乾燥)含有する3種の炭酸カルシウム懸濁液を調製する。
【0175】
3つの合成を行う。
【0176】
・イソプロパノール中での重合方法を用いて調製されたポリアクリル酸ポリマータイプの作用剤;Mw=5,500;IP=2.4
・上記の実施例1の試験1に従い(後処理なし)、連鎖移動剤としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が8.23%に等しく用いて、RAFTタイプの制御されたラジカル重合法を用いて調製されたポリアクリル酸ポリマータイプの作用剤;Mw=5,065;IP=1.5、および
・上記の実施例1の試験8に従い、式(I)の化合物としてのジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)を、前記DPTTC化合物とアクリル酸モノマーとの間の質量比率(重量/重量)が0.75%に等しいように用いて、本発明による方法を用いて調製されたポリアクリル酸のポリマー溶液;Mw=5,040;IP=2.5
VERACビーズ(φ0.6−1.0mm)2,850gを含有する、Dyno MILLタイプ、KDL Pilote 1.4Lタイプの粉砕機を用い、粉砕助剤の用量を、粉砕の期間中に連続的に添加することによって1.1重量%まで増加させる。
【0177】
約80%の粒子が1μm未満の球相当粒径(equivalent spherical diameter)を有する76%濃度に精製された懸濁液が得られるまで、粉砕を続ける。
【0178】
実験全体にわたって、懸濁液の温度は55℃未満に維持する。スラリーを含有するビーカーは、揮発性化合物が大気中へ放出されるのを制限するため、アルミニウムフィルムで覆う。
【0179】
試料は、空気を含有し得る空隙容積が残らないようにフラスコに充填して保存される。
【0180】
試料および9をそれぞれ得る。
【0181】
結果
試料4から9の分析の結果を、以下の表2に記載する。
【0182】
【表3】
【0183】
試料8および9、すなわち、本発明による方法を用いて調製されたポリアクリル酸ポリマー溶液を含有する炭酸カルシウム懸濁液の分析は、粉砕前および後に、イソプロパノールおよびCS含有量が検出できないことを示している。無機材料の粉砕のためのポリマー溶液の使用中における人間および環境へのリスクは、このようにして実質的に減じられる。しかしながら、粉砕中にイソプロパノール含有量の低減が観察され(試料4と5との差)、これは、VOCの放出を示唆している。粉砕中にCS含有量の低減も観察され(試料6と7との差)、これは、炭酸カルシウムの粉砕中にCSが放出されたことを示している。