(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207586
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】逆F型アンテナ及び車載用複合アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20170925BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20170925BHJP
H01Q 9/40 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q1/38
H01Q9/40
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-501536(P2015-501536)
(86)(22)【出願日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2014054382
(87)【国際公開番号】WO2014129632
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年8月21日
【審判番号】不服2016-16760(P2016-16760/J1)
【審判請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-33021(P2013-33021)
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】工藤 茂樹
【合議体】
【審判長】
大塚 良平
【審判官】
吉田 隆之
【審判官】
中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−86335(JP,A)
【文献】
特開2010−81500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アース部材と、
前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、上端が前記平板部と電気的に結合し及び下端が前記アース部材と電気的に結合すると共に該アース部材から垂直に立ち上がり、かつ、前記平板部の長手方向へ折り曲げられる短絡部と、前記平板部の同一水平面において前記短絡部と反対側の端部の側で該平板部の長手方向と直交する方向に延出する突出部とを有する第1アンテナ部材と、
一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含む第2アンテナ部材と、を備え、
前記第2アンテナ部材は、前記アース部材と前記平板部との間に、前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置されることを特徴とする逆F型アンテナ。
【請求項2】
前記アース部材、前記短絡部及び前記平板部は、1枚の導体板により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆F型アンテナ。
【請求項3】
前記アース部材、前記短絡部及び前記平板部の少なくとも1つに、前記第2アンテナ部材を所定の位置に固定するための固定部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆F型アンテナ。
【請求項4】
第2アンテナ部材は矩形状の基板であり、前記固定部に固定されることを特徴とする請求項3に記載の逆F型アンテナ。
【請求項5】
アース部材と、
前記アース部材と電気的に結合した状態で該アース部材から垂直に立ち上がる短絡部と、前記短絡部と電気的に結合した状態で前記短絡部の上端から前記アース部材に対して平行に延びる平板部と、前記平板部の同一水平面において該平板部の長手方向と直交する方向に延出する突出部とを有する第1アンテナ部材と、
一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に前記平板部と電気的に結合する導体パターンを含む第2アンテナ部材と、を備え、
前記第2アンテナ部材は、前記アース部材と前記平板部との間に、前記突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置される逆F型アンテナと、
衛星からの電波を受信するアンテナユニットとを備える車載用複合アンテナ装置であって、
前記アンテナユニットは、前記突出部及び前記平板部の外側において、前記突出部及び前記平板部のそれぞれの縁端の近傍に搭載されていることを特徴とする車載用複合アンテナ装置。
【請求項6】
前記アース部材、前記短絡部及び前記平板部は、1枚の導体板により構成されていることを特徴とする請求項5に記載の車載用複合アンテナ装置。
【請求項7】
前記アース部材、前記短絡部及び前記平板部の少なくとも1つに、前記第2アンテナ部材を所定の位置に固定するための固定部が設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の車載用複合アンテナ装置。
【請求項8】
第2アンテナ部材は矩形状の基板であり、前記固定部に固定されることを特徴とする請求項7に記載の車載用複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域帯、簡単な構成且つ低コストである逆F型アンテナ及び逆F型アンテナを有する車載用複合アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトさ、製造の容易さ及び比較的低コストであるが故に、逆F型アンテナは、携帯電話等の移動体通信に広く用いられている。
【0003】
また、近年では、携帯電話アンテナは多周波帯域を共用する機能が求められており、逆Fアンテナを基本的な構成とするアンテナが提案されている。例えば、特許文献1には、電気的に逆Fアンテナのグランド板等の接地部材に接続される金属部材と、金属部材と容量結合する程度の間隔を開けて形成されたスロットによって分離された付加的な金属部材とを備え、信号フィードラインが付加的な金属部材に供給される構造を有する逆F型アンテナが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基板表面又は内部にパターンとして形成されるパターンアンテナを使用して小型広帯域化されたパターンアンテナを提供することを目的として、給電ライン及び接地導体部を備える基板に設けられるパターンアンテナが開示されている。特許文献2に開示されたパターンアンテナは、基板の各表面に接地導体部を備え、基板の第1表面に設けられ、接地導体パターン及び給電導体パターンが形成される逆F形状の第1アンテナパターンと、基板の第2表面に設けられ、接地導体パターンが形成される接地導体パターンを有する逆L形状の第2アンテナパターンとを有し、導体パターンの少なくとも一つが台形状に形成されることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献3には、2周波以上の多周波に対応できる小型且つ安価な多周波アンテナを提供することを目的として、単周波用放射電極の電極端から折り返し状に第2の放射電極を延出させ、その電極端から該電極端とは逆方向に指向するように形成された構造の放射電極エレメントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4169696号
【特許文献2】特許第3630622号
【特許文献3】特開2004−128740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたような逆Fアンテナ、特許文献2に記載されたようなパターンアンテナ及び特許文献3に記載されたような放射電極エレメントを車載用のアンテナ装置として利用する場合、車内空間の大きさ、配置位置及び取り付け位置等の制約があり、所望の特性を得られないという問題があり、小型化には限界があった。
【0008】
また、GSM/W−CDMA対応モデルの場合、大きく分けて低周波帯(810〜960MHz)及び高周波帯(1710MHz〜2170MHz)に対応させる必要があるが、従来構造のアンテナ装置では、全ての周波数帯で所望の特性を得ることができないという問題がある。
【0009】
このような問題に鑑みて、本発明は、車内空間の大きさ、配置位置及び取り付け位置等の制約に対しても十分に対応可能であって、高バンド幅、簡単な構成且つ低コストである逆F型アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る逆F型アンテナは、アース部材と、アース部材と電気的に結合した状態で該アース部材から垂直に立ち上がる短絡部と、短絡部と電気的に結合した状態で短絡部の上端からアース部材に対して平行に延びる平板部と、平板部の同一水平面において該平板部の長手方向と直行する方向に延出する突出部とを有する第1アンテナ部材と、一方の縁端部に給電部を有し他方の縁端部に向けて幅広となると共に平板部と電気的に結合する導体パターンを含む第2アンテナ部材と、を備え、第2アンテナ部材は、アース部材と平板部との間に、突出部と反対側の縁端に対して所定の距離をおいて配置されることを特徴とする逆F型アンテナである。すなわち、導体パターンは、平板部或いは突出部で受信された信号が流れる程度に、平板部に直接結合若しくは容量結合しつつアース部材から電気的に絶縁されるように、上面視において平板部の領域内に配置されている。
【0011】
また、本発明の実施の形態に係る逆F型アンテナは、アース部材、短絡部及び平板部が、1枚の導体板により構成されていても良い。
【0012】
また、本発明の実施の形態に係る逆F型アンテナは、アース部材、短絡部及び平板部の少なくとも1つに、第2アンテナ部材を所定の位置に固定するための固定部が設けられていても良い。
【0013】
また、本発明の実施の形態に係る逆F型アンテナは、第2アンテナ部材が矩形状の基板であり、固定部に固定されるように構成されていても良い。
【0014】
また、本発明の実施の形態に係る車載用複合アンテナ装置は、前記のいずれかの構成を有する逆F型アンテナと、衛星からの電波を受信するアンテナユニットとを備え、アンテナユニットが、突出部及び平板部の外側において、突出部及び平板部のそれぞれの縁端の近傍に搭載されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施の形態に係る逆F型アンテナは、嵩高を低くしながらも良好な特性を得ることができ、また、第2アンテナ部材の位置を移動させることによって、低周波帯の特性を維持しつつ高周波帯の特性を向上することができる。
【0016】
また、本発明の実施の形態に係る車載用複合アンテナ装置は、携帯電話用アンテナとGPS用アンテナを一体化した場合であっても、携帯電話用アンテナによる信号の送受信が妨げられること無く、GPS用アンテナを含まない場合と同じ効果を得ることができる。更には、第2アンテナ部材の位置により、所望の周波数に応じた微調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る逆F型アンテナの側面図であり、(b)は逆F型アンテナの上面図であり、(c)は逆F型アンテナの正面図である。
【
図2】
図1に記載の本発明の一実施形態に係る逆F型アンテナの正面図である。
【
図3】(a)は本発明の一実施形態に係る車載用複合アンテナ装置の低周波帯(810〜960MHz)の特性を示すグラフであり、(b)は高周波帯(1710〜2170MHz)の特性を示すグラフである。
【
図4】(a)は本発明の一実施形態に係る車載用複合アンテナ装置の正面側斜め上から見た組み立て斜視図であり、(b)背面側斜め下から見た組み立て斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る車載用複合アンテナ装置の概略断面図である。
【
図6】(a)は本発明の一実施形態に係る逆F型アンテナの低周波帯(810〜960MHz)の特性を示すグラフであり、(b)は高周波帯(1710〜2170MHz)の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明のアンテナは、2つ又は3つの周波数帯で動作できるように設計されている。その1つの使用例としてバンドをカバーするための890〜960MHz、1710〜1880MHz、及び1920〜2175MHzのマルチバンド電話アンテナが挙げられる。
【0020】
本発明のアンテナは、第二世代携帯電話(2G)規格であるGSM(Global System for Mobile Communications)(登録商標)の無線アクセス方式だけでなく、第三世代携帯電話(3G) 規格であるW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、すなわち、第三世代携帯電話(3G)の無線アクセス方式にも対応可能である。
【0021】
[マルチバンド・アンテナ]
図1(a)に示すように、第1の実施形態の逆F型アンテナ100は、導電性のアース部材1、平板部21及び短絡部3が一体的に構成された第1アンテナ部材2を有している。尚、本実施形態において、アース部材1、平板部21及び短絡部3は単一の金属板から成形加工されて一体不可分に連続しているが、それぞれ別個の部品として形成され、金属導線等を用いて互いに導通性を有するように構成しても良い。或いは、アース部材1、平板部21、短絡部3及び第2アンテナ部材と一体的に形成しても良い。
【0022】
図1(a)に示すように、アース部材1及び平板部21はいずれも板状に形成されており、平板部21は、短絡部3の上端から、アース部材1に対して水平に延出しており、アース部材1との間に、後述する第2アンテナ部材4が設けられている。
【0023】
平板部21における短絡部3との接続部位と反対側の端部近傍には、平板部21の長手方向と
直交する方向に向けて延出させた突出部22が設けられている。平板部21及び突出部22は、同一水平面にアース部材1とほぼ等間隔となるように設けられる。
【0024】
突出部22は、第1周波数の無線信号を送受信するアンテナの一部であって、平板部21の一方の端部近傍から
図1(b)のような上面視においてパッチアンテナユニットPを覆うことのない位置に、メアンダ状に折り返されて形成されている。
図1(a)〜(c)に示された点線の枠は、逆F型アンテナ100と比較したときのパッチアンテナユニットPの大きさ及び配置位置を模式的に示したものである。
【0025】
また、第2アンテナ部材4を固定するために、平板部21に基板固定部23a及び23bを形成しても良い。基板固定部23a及び23bは、第2アンテナ部材4を固定する箇所に、平板部21の一部を折り曲げて規制片とすることによって形成することができる。また、平板部21の一部を折り曲げる代わりに、第2アンテナ部材4を固定する箇所に、樹脂等で形成された凸状の
規制片を設けることにより、基板固定部23a及び23bを構成することができる。或いは、第2アンテナ部材4を固定する箇所に塗布された接着剤によって基板固定部23a及び23bを形成しても良い。
【0026】
第2アンテナ部材4は、短絡部3と同程度の高さを有しており、アース部材1及び平板部21の間に、アース部材1、平板部21及び短絡部3のいずれに対しても垂直になるように設けられている。第2アンテナ部材4は、ガラスエポキシ基板等の絶縁性基板42とその表面に形成された導体パターン41とを有する。
【0027】
導体パターン41は、平板部21に対して略平行に近接する上側縁端部41aと、アース部材1に対して略平行に近接し且つ上側縁端部41aよりも短い給電部41bとを有する。給電部41bは同軸ケーブル43の芯線43aに接続され、同軸ケーブル43のアース43bはアース部材1と接触している。
図2に示すように、本実施形態において、導体パターン41は、接続部23において平板部21に半田付けされているが、半田付けされる長さ或いは電気的に接触する長さは特に限定されず、平板部21に電気的に結合していれば良い。従って、導電パターン41と平板部21と半田付けで接続する代わりに、第2アンテナ部材4を固定した際に、平板部21と上側縁端部41aとが容量結合するように互いを近接させても良い。
【0028】
導体パターン41は、上側縁端部41aが平板部21に電気的に結合していれば良く、上側縁端部41aの形状は特に限定されない。例えば、上側縁端部41aのいずれか1箇所のみが平板部21に半田等で接続され、上側縁端部41aの他の箇所が平板部21に接触しない形状であっても良い。
【0029】
また、導体パターン41は、アース部材1から電気的に絶縁される箇所に設けられ、
図4(a)、(b)に示されるように同軸ケーブル43に接続される。
【0030】
逆F型アンテナ100のゲイン特性を向上するために、導体パターン41は、上側縁端部41aの長さが給電部41bよりも幅広くなるように形成されることが好ましい。そのため、本実施形態において導体パターン41は略台形状に形成されているが、上側縁端部41aの長さが給電部41bよりも長い限り、そのパターン形状は、略台形に限定されない。例えば、給電部41bを同軸ケーブル43と電気的に接続が確保できる程度の最小限の大きさにしても良い。
【0031】
また、上側縁端部41a及び給電部41bの形成位置は、それぞれ、突出部22を上面視した際の突出部22の真下にあっても良く、或いは突出部22を上面視した際に突出部22の外側に形成されていても良い。但し、これらは、第2アンテナ部材4を上面視した際に、平板部21の縁端に対して所定の距離をおいて配置される。また、給電部41bの形成位置は、受信対象の周波数帯を考慮して決定される。
【0032】
[車載用複合アンテナ装置]
逆F型アンテナ100は、GPS等の衛星からの電波を受信するアンテナユニットに近接して配置することができ、このように配置しても、逆F型アンテナ100による信号の送受信が妨げられること無く、GPS用アンテナを含まない場合と少なくとも同程度の効果を得ることができる。
図4(a)、(b)に、実施形態の逆F型アンテナ100と、GPS衛星からの電波を受信するパッチアンテナユニットPとを有する車載用複合アンテナ装置の組み立て斜視図を示す。
【0033】
本実施形態の車載用複合アンテナ装置は、
図1(a)〜
図1(c)に示される位置に、GPS等の衛星からの電波を受信するパッチアンテナユニットPと、逆F型アンテナ100が配置されるように、外枠体51が形成されている。
【0034】
本実施形態の車載用複合アンテナ装置は、
図4(a)、(b)に示すように組み立てることが可能である。まず、逆F型アンテナ100をネジ62等の固定具を用いてベース52上に固定し、そしてパッチアンテナユニットPを、接着性を有するクッション材61を用いて、逆F型アンテナ100に近接するようにベース52上に固定する。
【0035】
外枠体51を用いて、逆F型アンテナ100及びパッチアンテナユニットPを覆い、外枠体51の位置決めをした後、ネジ62等の固定具を用いて、外枠体51をベース52上に固定する。
【0036】
図3(a)は、
図5に示される本実施形態の車載用複合アンテナ装置の低周波帯(820〜960MHz)の特性を示すグラフであり、
図3(b)は高周波帯(1710〜2170MHz)の特性を示すグラフである。尚、本実施形態の構造を有する逆F型アンテナは、
図2に示されるように上側縁端部41aと平板部21とをハンダ等で直接結合されている。
【0037】
図3(a)及び(b)の「内側」の曲線のグラフは、第2アンテナ部材4が平板部21の真下スペースのうち、パッチアンテナユニットPに最も近い位置に配置されている場合における、第2アンテナ部材4の特性を示すグラフである。また、
図3(a)及び(b)の「中央」の曲線のグラフは、第2アンテナ部材4が
図5において実線で示される位置、すなわち、平板部21の両縁端の略中央に配置されている場合における、第2アンテナ部材4の特性を示すグラフである。また、
図3(a)及び(b)の「外側」の曲線のグラフは、第2アンテナ部材4が平板部21の真下スペースのうち、パッチアンテナユニットPに最も遠い位置に配置されている場合における、第2アンテナ部材4の特性を示すグラフである。
【0038】
図3(a)及び(b)の「内側」及び「中央」の曲線のグラフは、いずれも、第2アンテナ部材4がアース部材1と平板部21との間に、突出部22と反対側の平板部21の縁端(以下、「平板部21の外側縁端」ともいう。)に対して所定の距離をおいて配置されている場合における、第2アンテナ部材4の特性を示すグラフである。
【0039】
これに対して、
図3(a)及び(b)の「外側」の曲線のグラフは、第2アンテナ部材4がアース部材1と平板部21との間に、平板部21の外側縁端に配置されている場合における、第2アンテナ部材4の特性を示すグラフである。
【0040】
まず、
図3(a)のグラフによると、低周波帯(820〜960MHz)において、「中央」のグラフの方が「内側」のグラフよりも周波数特性が高いが、約890MHzの周波数を境界にして周波数が大きくなるに従って、周波数特性が緩やかに漸近してゆくことが示されている。これに対して、「外側」の周波数特性のグラフは、約890MHzの周波数を境界にして、周波数が大きくなるに従って負の傾きが大きくなり、約910MHzの周波数近傍を境界にして周波数特性が他のグラフに対して相対的に低くなり、「内側」及び「中央」の周波数特性との差が大きくなって行くことがわかる。
【0041】
また、
図3(b)のグラフによると、1710〜約1860MHzにおいて、「外側」のグラフの方が「中央」のグラフよりも周波数特性が高いが、「外側」の周波数特性のグラフは、約1860MHzの周波数近傍を境界にして周波数特性が他のグラフよりも相対的に低くなり、約1890MHzの周波数を境界にして、周波数が大きくなるに従って負の傾きが大きくなり、「内側」及び「中央」の周波数特性との差が徐々に大きくなって行くことがわかる。
【0042】
図3(a)及び
図3(b)のグラフに示されるように、一部の周波数領域において、「外側」の周波数特性は、「中央」又は「内側」の周波数特性よりも高くなるが、所定の周波数を境にして悪化する傾向が強くなることがわかる。これに対して、第2アンテナ部材4がアース部材1と第1アンテナ部材2との間に、平板部21の外側縁端から所定の距離をおいて配置されている場合、平板部21の外側縁端に配置されている場合と比較して、周波数特性が低減される傾向を有しているので、性能が優れていることが分かる。
【0043】
尚、
図3(a)及び
図3(b)のグラフに示されるように、低周波帯(810〜960MHz)において、「中央」のグラフの方が「内側」のグラフよりも周波数特性が高いのに対し、高周波帯(1710〜2170MHz)において、「内側」のグラフの方が「中央」のグラフよりも周波数特性が高い。そこで、優先する周波数帯域に応じて、平板部21の真下スペースのうち、平板部21の外側縁端を除く箇所に、第2アンテナ部材4を適宜配置することによって、優先する周波数帯域以外の周波数帯域における特性を著しく損なうこと無く、優先する周波数帯域における特性を調整しても良い。
【0044】
図6(a)、(b)は、
図5に示される本実施形態の車載用複合アンテナ装置からパッチアンテナユニットPを外した以外、
図5と同様の構造を有する電話単体アンテナ装置に関し、低周波帯(810〜960MHz)及び高周波帯(1710〜2170MHz)における周波数特性をそれぞれ測定した結果を示すものである。
【0045】
図3(b)及び
図6(b)を比較すると、1800MHz台で、「外側」のグラフの周波数特性が「中央」のグラフの周波数特性よりも悪化して、他の周波数特性のグラフよりも低くなるという点において、共通している。
【0046】
図3(a)及び
図6(a)を比較すると、約830MHz〜約930MHzの周波数領域において、「中央」、「内側」及び「外側」のグラフの周波数特性はいずれも接近しており、ほぼ同等の周波数特性を有しているが、「外側」の周波数特性のグラフは、約890MHzの周波数を境界にして、周波数が大きくなるに従って負の傾きが大きくなり、約900MHzの周波数を超えると周波数特性が他のグラフに比べて相対的に低くなり、「内側」及び「中央」の周波数特性との差が大きくなって行くことがわかる。
【0047】
図3(b)及び
図6(b)によれば、高周波帯(1710〜2170MHz)において、「内側」のグラフの方が「中央」のグラフよりも周波数特性が高いが、いずれのグラフも、1800MHz台以降の周波数領域において、「外側」のグラフの周波数特性よりも良好な特性が得られているので、
図3(a)及び(b)、
図6(a)及び(b)の結果を総合的に検討すると、第2アンテナ部材4は、平板部21の真下のスペースのうち、平板部21の外側縁端以外の位置に配置されることによって、良好な性能を発揮することができる。
【0048】
また、低周波帯(810〜960MHz)において、第2アンテナ部材4がアース部材1と平板部21との間に、平板部21の外側縁端以外の位置に配置されている場合、第2アンテナ部材4の性能は大きく変化することは無い。そこで、優先する高周波側における周波数帯域に応じて、平板部21の真下スペースのうち、パッチアンテナユニットPに最も遠い平板部21の縁端部分、すなわち、平板部21の外側縁端を除く箇所に、第2アンテナ部材4を適宜配置することによって、優先する周波数帯域における特性を調整しても良い。
【0049】
第2アンテナ部材4を平板部21の外側縁端からどれだけ内側に移動させるかは、ターゲットとする周波数によって調整することができる。この場合、優先する周波数帯域以外の周波数帯域における特性を著しく損なうこと無く、優先する周波数帯域における特性を調整しても良い。
【符号の説明】
【0050】
1・・・アース部材
2・・・第1アンテナ部材
3・・・短絡部
4・・・第2アンテナ部材
21・・・平板部
22・・・突出部
23・・・接続部
41・・・導体パターン
41a・・・上側縁端部
41b・・・給電部
42・・・絶縁性基板
43・・・同軸ケーブル
43a・・・芯線
43b・・・アース
51・・・外枠体
52・・・ベース
100・・・逆F型アンテナ
P・・・パッチアンテナユニット