(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207597
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】高温バッテリーないし高温電解槽の温度調節システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20170925BHJP
C25B 15/02 20060101ALI20170925BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20170925BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20170925BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20170925BHJP
H01M 10/6565 20140101ALI20170925BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20170925BHJP
G05D 23/00 20060101ALI20170925BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
H01M10/633
C25B15/02 302
H01M8/04 J
H01M8/04 T
H01M8/04 Z
H01M8/04 N
H01M10/615
H01M10/6565
H01M10/6556
G05D23/00 D
!H01M8/12
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-515449(P2015-515449)
(86)(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公表番号】特表2015-528176(P2015-528176A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】EP2013059900
(87)【国際公開番号】WO2013185994
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】102012209698.1
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】レンク、ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】トゥレメル、アレクサンダー
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−120334(JP,A)
【文献】
特開2010−212099(JP,A)
【文献】
特開2008−311140(JP,A)
【文献】
特開2008−218236(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0013913(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0000789(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0220516(US,A1)
【文献】
米国特許第03917520(US,A)
【文献】
特開平08−148190(JP,A)
【文献】
特開2010−057292(JP,A)
【文献】
特開2009−117086(JP,A)
【文献】
特開2008−204764(JP,A)
【文献】
再公表特許第2006/022362(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
C25B 15/02
G05D 23/00
H01M 8/04
H01M 8/04701
H01M 10/615
H01M 10/6556
H01M 10/6565
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの空気配管系(2)を介して、少なくとも300℃の高温空気が化学反応を行うためのプロセスガスとして供給される高温バッテリー(5)ないし高温電解槽(5)の、時間的に変化する負荷状態と作動状態のもとで行われる温度調節のための調節システム(1)であって、前記空気配管系(2)の相異なる2箇所(01、02)で温度を測定すべく構成された少なくとも2つの温度センサー(10、11)と、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側で前記空気配管系(2)に接続され、前記時間的に変化する負荷状態と作動状態のもとで変化する空気の質量流量を熱的にコンディショニングするための少なくとも1つの第1コンディショニングユニット(20)と、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)から排出された高温空気を前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側に配置された1つの箇所に還流してこの空気配管系(2)に再び供給する1つの還流配管(30)とを有する調節システム(1)において、前記調節システム(1)が前記複数の温度センサー(10、11)により測定された複数の温度に基づいて前記第1コンディショニングユニット(20)を調節する調節システム。
【請求項2】
前記調節システム(1)がさらに前記還流配管(30)に接続された第2コンディショニングユニット(21)を有し、この第2コンディショニングユニット(21)は流れ発生器として構成され、この還流配管(30)の中の高温空気を流れによって付勢するのに適しており、前記調節システム(1)がさらにこの第2コンディショニングユニット(21)を前記複数の温度センサー(10、11)により測定された前記複数の温度に拠って調節することを特徴とする請求項1に記載の調節システム。
【請求項3】
1つの第1温度センサー(10)が前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側でその前方の第1箇所(01)に配置され、他の1つの第2温度センサー(11)が前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の下流側でその後方の第2箇所(02)に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の調節システム。
【請求項4】
1つの第1温度センサー(10)が前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側でその前方の第1箇所(01)に配置され、他の1つの第2温度センサー(11)が前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の内部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の調節システム。
【請求項5】
少なくとも3つの温度センサー(10、11、12)が配置され、第1温度センサー(10)は前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側でその前方の第1箇所(01)に配置され、第2温度センサー(11)は前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の下流側でその後方の第2箇所(02)に配置され、第3温度センサー(12)は前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の内部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の調節システム。
【請求項6】
前記第1コンディショニングユニット(20)が、前記空気配管系(2)の中の前記空気に熱を供給するのに適した加熱装置として構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の調節システム。
【請求項7】
前記第1コンディショニングユニット(20)が、前記空気配管系(2)の中の前記空気に流れを付勢するための流れ発生器として構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の調節システム。
【請求項8】
前記調節システム(1)が、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側で前記空気配管系(2)に接続された少なくとも2つのコンディショニングユニット(20、21)を有し、1つのコンディショニングユニット(20)は前記空気配管系の中の空気に熱を供給するのに適した加熱装置として構成され、また、1つのコンディショニングユニット(21)は空気配管系の中の空気に流れを付勢するのに適した流れ発生器として構成されており、この調節システム(1)が複数の温度センサー(10、11)により得られた温度差に拠って前記2つのコンディショニングユニット(20、21)を調節することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の調節システム。
【請求項9】
前記2つのコンディショニングユニット(20、21)が1つの構造部品として形成され、この構造部品において1つの直列接続構成となるようにすることを特徴とする請求項8に記載の調節システム。
【請求項10】
前記調節システム(1)がさらに第2還流配管(31)を有し、この第2還流配管(31)は前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)から排出された高温空気を、前記空気配管系(2)の、前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)の上流側に配置された1つの箇所に還流することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の調節システム(1)。
【請求項11】
前記第2還流配管(31)が前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)から排出された前記高温空気を1つの熱交換器(35)に導き、この熱交換器(35)は、この高温空気が前記高温バッテリー(5)ないし前記高温電解槽(5)に供給される前に、前記空気配管系(2)内の前記高温空気を加熱すべく構成されていることを特徴とする請求項10に記載の調節システム。
【請求項12】
前記熱交換器(35)が前記第1コンディショニングユニット(20)の上流側で前記空気配管系(2)に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの配管系を介して高温空気が供給される高温バッテリーないし1つの配管系を介して高温空気が供給される高温電解槽の温度調節のための調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温バッテリーにも高温電解槽にも、適切な作動温度を与えるために、十分な熱が供給されなければならない。例えば、或る高温バッテリーでは、特許文献1に記載されているように、効率的な運転を保証する為には、バッテリーセルを少なくとも700℃の温度レベルにまで加熱することが必要である。同様に、高温電解槽にも、効率的な電気化学的なガス分解を進捗する為には、例えば特許文献2に記載されているように、熱を供給する必要がある。両装置の効率は、例えばこれら装置内において必要なイオン流動を決定する作動温度により著しい影響を受ける。
【0003】
この場合、必要な熱は少なくとも部分的に、高温バッテリーないし高温電解槽に供給される高温空気流により供給される。この高温空気の温度レベルは、高温バッテリーないし高温電解槽の作動温度レベルに達する必要はないが、本質的な熱寄与を達成することができるようにするために、十分に高い必要がある。ここで高温空気とは、周囲温度レベルを超える温度レベルを有する熱的にコンディショニングされた空気を意味する。
【0004】
本発明においては、高温バッテリーないし高温電解槽の作動温度は少なくとも300℃、好ましくは少なくとも650℃である。特に、これらの温度は、少なくとも部分的に固体電解質燃料電池(SOFC)ベースで作動する高温バッテリーまたは高温電解槽を目的どおりに運転するに十分な高さでなければならない。この場合、通常は少なくとも650℃の温度が必要である。
【0005】
同様な作動条件が、固体電解質燃料電池(SOFC)として構成された高温燃料電池の技術分野で知られている。例えば特許文献3に記載されているように、この種の高温燃料電池に1つの空気配管系を用いて、加熱された空気が供給される。ここでは、この加熱は、高温燃料電池に供給された空気が1つの熱交換器と1つの適切な加熱装置とによってコンディショニングされるように行われる。この熱交換器から空気に放出されたエネルギは部分的に、消費された空気を高温燃料電池から排出して熱交換器に導く還流配管から取り出される。こうして、高温燃料電池から排出された高温空気の量に応じて、多量のあるいは少量の熱を熱交換器によって高温燃料電池の熱循環路に再び供給することができ、これによって総合熱損失を小さく保つことができる。さらに、再循環を高めることによって、燃料電池上で生じる温度勾配を減少することができる。空気流に与えられた熱エネルギの総量の調節は、最終的に高温燃料電池に十分な総熱量を供給できるようにするために、付加的な外部の熱入力を決める調節システムにより行われる。
【0006】
しかし、高温燃料電池とは異なって、高温バッテリーないし高温電解槽の運転は通常は、異なり、且つ、時間的に変化する負荷状態と作動状態のもとで行われるので、高温バッテリーないし高温電解槽に時間的に変化する熱エネルギを供給することが不可欠である。高温電解槽において電気エネルギを吸収するプロセスステップは通常は吸熱性であり、このことから熱供給が必要となる。これとは逆に化学的エネルギを放出するプロセスステップは通常は発熱性である。高温電解槽の運転が、両方の運転態様が交互に実施されるように行われる場合には、変化する熱供給が必要になる。同様に高温バッテリーも2つの異なる作動状態、すなわち、電気エネルギを吸収する吸熱性の充電状態と電気エネルギを放出する放熱性の放電状態、で運転することができる。これにより、ここでも、両方の作動状態が交互に選択される場合には、変化する熱供給が必要である。
【0007】
さらに、高温バッテリーないし高温電解槽は、再生可能で変動するエネルギ源(風力エネルギ、太陽エネルギ)からの余剰エネルギを吸収するために設置することができる。このことから吸収されるべき出力の絶え間ない変化が生じ、これが作動状態の変化をも惹き起こす。
【0008】
しかし、異なる運転状態では一般に、空気供給における互いに異なる質量流量が必要となる。このことから、高温バッテリーないし高温電解槽の運転は、一般的に唯一の特定された作動状態しか持たない高温燃料電池の運転とは原理的に異なる。
【0009】
高温バッテリーないし高温電解槽に時間的に変化する空気の質量流量を供給しなければならない場合には、特許文献3に記載されているような熱的なコンディショニングは、十分に効果的には運転できないことが分かった。すなわち、そのような状況では、外部熱源による多量の熱エネルギの供給によってのみ満たすことができる多量の熱を空気流に供給する必要がある。この場合、還流配管からの熱の注入だけでは熱的に十分に有利ではないことが分かった。さらに、多量の空気流を急速に加熱するためには、その調節速度が不十分であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009057720.3号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第12163588号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0013913A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の課題は、1つの配管系を介して高温空気が供給される高温バッテリーないし1つの空気配管系を介して高温空気が供給される高温電解槽の温度調節のための調節システムであって、従来技術の諸欠点を回避する調節システムを提案することにある。特に、空気供給における質量流量が変化する場合にもエネルギ効率の良い運転が可能でなければならない。さらに、高温バッテリーないし高温電解槽への時間的に変化する質量流量の供給が可能でなければならず、その際に、この質量流量の熱コンディショニングは相対的にエネルギ効率よく行われなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のこれらの課題は請求項1による調節システムにより達成される。
【0013】
本発明のこれらの課題は特に、1つの空気配管系を介して高温空気が供給される高温バッテリーないし1つの空気配管系を介して高温空気が供給される高温電解槽の温度調節のための調節システムであって、以下に述べる調節システムにより解決される。すなわち、この調節システムは、前記空気配管系の相異なる2箇所で温度を測定すべく構成された少なくとも2つの温度センサーと、前記高温バッテリーないし前記高温電解槽の上流側で前記空気配管系に接続され前記空気を物理的にコンディショニングするための少なくとも1つの第1コンディショニングユニットと、前記高温バッテリーないし前記高温電解槽から排出された高温空気を前記空気配管系の、前記高温バッテリーないし前記高温電解槽の上流側に配置された1つの箇所に還流してこの空気配管系に再び供給する1つの還流配管とを有し、前記調節システムが前記複数の温度センサーにより測定された複数の温度に拠って前記第1コンディショニングユニットを調節する。
【0014】
ここで留意すべきは、本発明によればこの空気配管系は空気供給管ならびに空気排出管の全ての部分を含むことである。この空気配管系はさらに、高温バッテリー内部ないし高温電解槽内部の高温空気搬送管に適した複数の部分を含む。
【0015】
したがって、請求項1による本発明の調節システムは、高温バッテリーないし高温電解槽から排出された高温空気の少なくとも一部が空気配管系に還流され、そして再び供給され、この供給が高温バッテリーないし高温電解槽の上流側に配置された1つの箇所において行われるように構成されている。したがって、高温バッテリーないし高温電解槽に供給される空気流には、熱エネルギだけでなく、温度がコンディショニングされた高温空気も与えられる。これによって、この空気流はその熱含有量だけでなく、その質量流量も変化する。
【0016】
同時にこの空気流はその化学組成も変わることがある。というのは、高温バッテリーないし高温電解槽から排出された高温空気はその組成についても、すなわち、その個別の分圧についても変化しうるからである。そこで、例えば、高温バッテリーないし高温電解槽から排出された高温空気中の酸素が多くなったり、時には少なくもなる可能性がある。再循環された高温空気を例えば新鮮空気と混合することによって、高温バッテリーないし高温電解槽に再び供給された空気中の酸素含有量を調整することができる。しかし、これによって、高温バッテリーないし高温電解槽での電気化学プロセスの効率が、濃度依存性があるので、影響を受けることがある
【0017】
本発明による調節システムはさらに、複数の温度センサーで測定された複数の温度に拠って調節される少なくとも1つのコンディショニングユニットを備えている。ここでこのコンディショニングユニットは、空気流をその熱含有量についてのみ、あるいは、その質量流量についてもコンディショニングするのに適している。同様に、熱含有量と質量流量を同時にコンディショニングすることも可能である。これら複数の温度センサーは空気配管系の相異なる複数の箇所で空気温度を測定するので、両方の温度を比較することによってこのコンディショニングユニットの適切な運転変更を行うことができる。こうして、運転変更が、得られた温度差への反応として、この調節システムにより発動される。
【0018】
高温バッテリーが例えば充電状態で運転される場合には一般的に、先ずは第1に充電状態を可能とするために、高温度レベルの空気の供給を増加する必要がある。高温バッテリー中で熱エネルギが消費されるので、この高温バッテリーから排出される高温空気流は、この高温バッテリーに流入する空気流よりも低い温度レベルを有する。しかし、放電状態中は挙動が異なる。放電状態中は高温バッテリー自身が熱を発生し、この熱を空気流に伝達し、この熱は高温空気流によって高温バッテリーから排出される。
【0019】
放電状態中には高温バッテリーへの供給は、供給される空気流による少ない熱注入で済む。しかし、高温バッテリーが放電状態から充電状態に切り替えられる時には、高温バッテリー内に存在する熱は引き続き高温空気流により適切にこれから排出され、続いて行われる供給後に再度この空気配管系に注入される。この場合、時々、空気の質量流量の変更が必要である。
【0020】
本発明によれば、充電状態の初期にこの空気流を、熱的にも質量流量に関しても、高温バッテリーから排出された高温空気によって有利にコンディショニングすることができる。この場合、高温空気により高温バッテリーから排出された熱は充電状態の進行につれて減少して行く。この熱量が減少する範囲内で、高温バッテリーに供給される高温空気流を、可変の熱供給によって熱的にコンディショニングすることができる。しかし、同時に、必要な場合には質量流量のコンディショニングも可能である。
【0021】
高温バッテリーに、異なる作動状態において異なる熱含有量の空気流ならびに異なる質量流量の空気流も供給しなければならないのと同様に、高温電解槽にも異なる作動状態において異なる熱量ならびに異なる質量流量の空気を供給しなければならない。
【0022】
こうして例えば先に述べた従来技術から知られている高温電解槽の実施形態のように、この種の高温電解槽を複数の異なる作動状態で運転することができる。この場合、或る作動状態では、相対的に強化された熱エネルギの供給と、適合され変更された質量流量の供給が必要となる。
【0023】
しかし、特にこのような切り替え状態では、すなわち、変更中の作動状態では、一般的に、温度レベルと質量流量の変更が不可欠である。したがって、質量流量の有利なコンディショニングの場合にも、空気流の効率の良い熱的なコンディショニングを同時に達成するために、本発明による調節システムを使用すると有利である。
【0024】
本発明の有利な1実施形態によれば、第1コンディショニングユニットを、得られた温度差に拠って調節することもできる。すなわち、この場合には、この調節システムは調節値として2つの異なる温度を処理するのではなく、ただ1つの調節値、すなわち、温度差をシステム調節のために使用することができる。この場合、この温度差は1つの電子的な比較回路により有利に得ることができる。
【0025】
他の有利な実施形態によれば、この調節システムは還流配管に接続された第2コンディショニングユニットを有し、この第2コンディショニングユニットは流れ発生器として構成されており、この還流配管の中の高温空気を流れによって付勢するのに適しており、この調節システムは、さらに、この第2コンディショニングユニットを複数の温度センサーにより測定された複数の温度に拠って調節する。この還流配管に接続された第2コンディショニングユニットにより、熱エネルギの還流と同時に質量流量の変更も可能となる。これによれば、特に、空気流の熱含有量と質量流量の変更が必要になる場合に、第2コンディショニングユニットの適切な調整によって、目的に合うように対応することができる。例えば、高温バッテリーないし高温電解槽に、より高い熱量と共に同時により多量の質量流量を供給しなければならない場合に、これをこの還流配管における増大された高温空気流により達成することができる。
【0026】
1つの実施形態によれば、この第2コンディショニングユニットはインジェクターおよび/またはエジェクターとして、特にガス噴射ポンプとして実施することができ、あるいは他の実施形態ではコンプレッサーポンプとして実施することができる。さらに、この第2コンディショニングユニットを、測定された複数の個々の温度値ではなく、1つの温度差によって調節することも可能である。
【0027】
この実施形態の別の展開により、この還流配管は、還流配管における質量流量の的確な変更を可能にする複数の適切な調整装置を備えることができる。これらの調整装置は例えば弁として実施することができる。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態によれば、1つの第1温度センサーが空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の上流側でその前方の第1箇所に配置され、他の1つの第2温度センサーが空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の下流側でその後方の第2箇所に配置されている。したがってこの調節システムにより、これらの測定点の間に生じる温度フィールドに基づいて、上流側に設けられている複数のコンディショニングユニットの適切な調節が可能となる。同様に、この還流配管に接続されている1つのコンディショニングユニットを適切に調節することも可能である。この場合、高温バッテリーないし高温電解槽の前方と後方の温度測定により、高温バッテリーないし高温電解槽の内部における温度分布についてのそれ以上の知見は不要であり、その結果、特に簡単な調節が可能となる。
【0029】
他の実施形態では事情が異なる。この場合には、第1温度センサーは空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の上流側でその前方の第1箇所に配置され、もう1つの第2温度センサーは高温バッテリーないし高温電解槽の内部に配置されている。高温バッテリーないし高温電解槽の内部で測定された複数の温度に基づくこの調節は、これらの装置内部でのプロセスについてのさらなる知見を必要とするが、しばしば、この知見によってこれらのコンディショニングユニットの的確な、ないしは、時間的により速い調節を行なうことができる。これによって特に、高温バッテリーないし高温電解槽の内部において運転変更中に変化する温度状況をより良好に考慮に入れることができる。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも3つの温度センサーが配置され、第1温度センサーは空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の上流側でその前方の第1箇所に配置され、第2温度センサーは空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の下流側でその後方の第2箇所に配置され、第3温度センサーは高温バッテリーないし高温電解槽の内部に配置されている。したがって、この調節システムには少なくとも3つの温度値が提供され、これにより、複数のコンディショニングユニットの有利で、且つ、運転状態に適切に対応した調節が可能となる。特に、運転状態が変更される時には、空気配管系の複数の異なる温度値の知見により、進行中のプロセスの詳細な知見を得ることが可能になり、これによって、複数のコンディショニングユニットの有利な調節が可能となる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1コンディショニングユニットが、空気配管系の中の高温空気に熱を供給するのに適した加熱装置として構成されている。調節状態に応じて、この調節システムはこの空気配管系の中の空気流に、より多い、または、より少ない熱を与える。
【0032】
別の実施形態によれば、この第1コンディショニングユニットを、この空気配管系の中の空気に流れを付勢するための流れ発生器として構成することもできる。流れへの付勢は、特に、可変に行われる。こうして、例えば質量流量を高める要求に対しては、この流れ発生器は、空気流がより強く付勢されるように調節される。ここで指摘すべきは、流れを付勢する時には、空気は熱的なコンディショニングを受ける必要がないことである。すなわち、この実施形態では、空気配管系に導入される新鮮空気に流れを付勢するだけで十分であり、その後で熱的なコンディショニングが行われる。
【0033】
この流れ発生器を用いて、この空気配管系の中の空気の酸素含有量を有利な方法で調整することもできる。例えば、再循環された高温空気に対する新鮮空気の量あるいは割合を変えることができる。すなわち、高温バッテリーないし高温電解槽から排出される高温空気中の酸素が時折、多くなったり、少なくなったりするので、再循環された高温空気と新鮮空気とを混合することにより、高温バッテリーないし高温電解槽に再び供給される空気の酸素含有量を調整することができる。しかし、これによって、高温バッテリーないし高温電解槽における電気化学プロセスの効率も影響を受ける。例えば、高温バッテリーの放電状態では、より多い酸素含有量は時間的により速い放電を生じさせ、その結果、例えば、より高いエネルギ密度を提供することができる。
【0034】
本発明の特に有利な他の実施形態では、この調節システムは、高温バッテリーないし高温電解槽の上流側で空気配管系に接続された少なくとも2つのコンディショニングユニットを有するように構成されている。この場合、1つのコンディショニングユニットは、空気配管系の中の空気に熱を供給するのに適した加熱装置として構成され、また、1つのコンディショニングユニットは、空気配管系の中の空気に流れを付勢するのに適した流れ発生器として構成されており、この調節システムは、複数の温度センサーにより得られた温度差に拠って両方のコンディショニングユニットを調節する。代案として、複数の温度センサーにより得られた温度差に拠って一方の調節も実施可能である。したがって、本発明により、この調節システムによって、空気配管系内の質量流量の調整と、これとは独立した高温空気の熱含有量のコンディショニングとを、同時に行うことが可能となる。こうして、両方の物理的パラメータを適切に、且つ、互いに相対的に独立して調整することができる。これにより、高温バッテリーないし高温電解槽のそれぞれの運転変更に対してより速く対応することができる。さらに、第1コンディショニングユニットと第2コンディショニングユニットの調節をエネルギが最適化されるように行うことが可能である。この場合、例えば、さらなる制御量として、得られた複数の温度値という制御量に加えて、第1コンディショニングユニットと第2コンディショニングユニットの時間的なエネルギ消費量をこの調節システムで考慮することができる。
【0035】
この実施形態の展開として、これらの2つのコンディショニングユニットを1つの構造部品として形成し、特に、この構造部品において1つの直列接続となるように構成することができる。これにより製造コストが大幅に低減される。
【0036】
本発明の他の実施形態によれば、この調節システムがさらに第2還流配管を有するように構成されており、この第2還流配管は高温バッテリーないし高温電解槽から排出された高温空気を、空気配管系の、高温バッテリーないし高温電解槽の上流側に配置された1つの箇所に還流する。ここで、この第2還流配管は高温バッテリーないし高温電解槽から単独に引出すことができるし、あるいは、第1還流配管または空気配管系から分岐配管として分岐することもできる。この第2還流配管は第1還流配管と同じ箇所で空気配管系に合流することができ、第2還流配管の中を案内される空気流を空気配管系に供給することができる。この場合、第2還流配管により、運転状態変更への対応時のフレキシビリティに関してより改善された構成が可能となる。この第2還流配管が、第1還流配管が空気配管系に合流する第1箇所とは異なる箇所で空気配管系に合流すると、このフレキシビリティは特に改善される。これにより、この空気配管系には、複数の異なる箇所に、異なる熱エネルギ量と高温空気とを供給することができる。
【0037】
この観点での別の実施形態では、この第2還流配管が、高温バッテリーないし高温電解槽から排出される高温空気を1つの熱交換器に導くように構成されており、この熱交換器はこの空気流が高温バッテリーないし高温電解槽に供給される前に、空気配管系におけるこの空気流を加熱すべく構成されている。したがって、空気配管系の中の高温空気のコンディショニングは単に熱的にのみ行われ、空気配管系における高温空気の質量流量には同時には影響を及ぼさない。これにより、異なる運転条件下におけるフレキシビリティと調節の多様性とがさらに向上する。
【0038】
この実施形態の別の展開によれば、この熱交換器は第1コンディショニングユニットの上流側で空気配管系に接続されている。この第1コンディショニングユニットが加熱装置として構成されている場合には特に、空気配管系におけるエネルギ効率の良い熱的コンディショニングを行うことができる。というのは、熱交換器が提供できない熱量差だけをこの第1コンディショニングユニットによって供給すればよいからである。
【0039】
以下に本発明を個別の実施形態を基に詳細に説明する。しかし、請求項に記載した本発明の普遍性が減縮されるものではない。
【0040】
以下に述べる諸実施形態における個々の特徴について、それら単独でも、また、ここに記載された諸特徴との組み合わせにおいても、権利を請求するものである。特に、これらの個々の特徴のそれぞれの組み合わせについてここに権利請求する。
【0041】
さらに、図に示された諸実施形態は単に模式的なものであり、本発明の実現を妨げるものではないことを付言しておく。当業者であれば、その一般的な専門知識を基に本開示事項により実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】ここでは請求項に記載しない調節システムの1実施形態を示す図。
【
図2】本発明による調節システムの第1実施形態の模式的接続図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1はここでは請求項には記載しない調節システム1の1実施形態を示す。ここで、この調節システム1は高温バッテリー5ないし高温電解槽5に高温空気を供給するための1つの空気配管系2を有する。この空気配管系2の中の空気をコンディショニングするために、1つの第1コンディショニングユニット20、1つの熱交換器35および1つの第3コンディショニングユニット22が設けられている。第1コンディショニングユニット20はここでは、空気配管系2の中の空気を熱的にコンディショニングするための加熱装置として形成されている。第1コンディショニングユニット20の上流側に熱交換器35が設けられ、これは同様に、空気配管系2内にある空気を熱的にコンディショニングするために形成されている。熱交換器35は、高温バッテリー5ないし高温電解槽5から排出された高温空気流から熱エネルギを吸収し、この熱エネルギを高温バッテリー5ないし高温電解槽5に供給される空気流に伝達するために設けられている。この場合、熱交換器35は、空気配管系2の中の高温空気流の質量流量を変化させずに、熱的なコンディショニングだけを可能とする。
【0044】
さらに、熱交換器35の上流側に、流れ発生器として形成された第3のコンディショニングユニット22が配置されている。この流れ発生器22はこの空気配管系の中の空気に流れを付勢し、したがって、質量流量の変化を可能にする。空気配管系2の中の空気流の適切なコンディショニングを達成するために、1つの調節ユニット3が第1コンディショニングユニット20および第3コンディショニングユニット22の運転状態を調節する。ここで、この調節は第1温度センサー10および第2温度センサー11で測定された温度値に拠って行われる。これらの温度値の測定は、高温バッテリーないし高温電解槽5の前の第1箇所01および高温バッテリーないし高温電解槽の後の第2箇所02でそれぞれ行われる。
【0045】
図2は本発明による調節システムの第1実施形態を示す。この調節システム1は同様に、高温バッテリー5ないし高温電解槽5に1つの空気配管系2を介して高温空気を供給することを可能とする。しかし、
図1に示された実施形態と比べると、高温バッテリー5ないし高温電解槽5から排出される高温空気は、熱的コンディショニングのために熱交換器に還流されるのではなく、空気配管系2への還流後、全量がこの空気配管系に供給される。この場合、空気配管系2内の空気流の熱含有量も質量流量もコンディショニングされる。
【0046】
この還流は第1還流配管30を介して行われ、この第1還流配管は第2コンディショニングユニット21と接続されている。この第2コンディショニングユニット21は流れ発生器として形成されており、この流れ発生器が第1還流配管内の還流された高温空気の流量を決める。この流れ発生器21は運転状態に応じて、より多量の、あるいは、より少量の高温空気流をこの還流配管30により再循環することができる。こうして、高温バッテリー5ないし高温電解槽5に供給された高温空気の量を、熱含有量も質量流量も、時間的にコンディショニングすることができる。高温バッテリー5ないし高温電解槽5から排出される高温空気が還流した後、この高温空気は空気配管系2内で他の空気と混合される。この場合、他の空気は例えば、新鮮空気でもよいし、既にコンディショニングされた空気でもよい。
【0047】
高温バッテリー5ないし高温電解槽5に供給される空気流を付加的にさらに熱的にコンディショニングできるようにするために、さらに1つの第1コンディショニングユニット20が設けられ、この第1コンディショニングユニット20は空気配管系2の中の空気流を加熱装置として熱的にコンディショニングする。
【0048】
第1コンディショニングユニット20も第2コンディショニングユニット21および第3コンディショニングユニット22と同じく1つの調節ユニット3によって操作され、この調節ユニットは調節値として第1温度センサー10と第2温度センサー11の測定値を使用する。第1温度センサー10により、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の上流側の第1箇所01の高温空気の温度が測定される。第2温度センサー11は、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の下流側の第2箇所02の温度を測定するように構成されている。
【0049】
高温バッテリー5ないし高温電解槽5から排出された高温空気の、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の上流側の空気配管系2への還流を調節することによって、エネルギ効率がよく、同時に、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の運転状態の変更時における諸要求事項に関しても有利な高温空気の再循環を行うことができる。特に、質量流量と熱含有量とを同時に変化させることが求められる運転状態変更時に、高温バッテリー5ないし高温電解槽5に供給された空気流をこうして有利にコンディショニングすることができる。
【0050】
図3は本発明の他の実施形態を示す。これが
図2に示された実施形態と異なるのは単に、調節ユニット3が3つの温度センサー10、11、12を有し、これらが空気配管系2の複数の異なった箇所で温度測定を行うことにある。この場合、
図2の実施形態と同様に、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の上流側の1つの箇所01で第1温度センサー10により温度が測定される。これに加えて、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の下流側の第2箇所02で第2の温度が第2温度センサー11により測定される。さらにこれに加えて、第3の温度センサー12によって第3箇所03で温度が測定される。この第3箇所は高温バッテリー5ないし高温電解槽5内に配置されている。この場合、この第3箇所は、この実施形態で行われているように、空気配管系2内に配置することができる。しかし、基本的には、空気配管系2の外部の、高温バッテリー5ないし高温電解槽5の他の箇所で温度測定することも可能である。
【0051】
図4は本発明の他の実施形態を示す。これが
図2に示された実施形態と異なるのは単に、第2還流配管31が設けられていることにある。この第2還流配管31は第1還流配管30の分岐管として構成されている。この第2還流配管31は還流された高温空気の或る決められた割合を、この空気配管系において第1コンディショニングユニット20と第3コンディショニングユニット22との間に接続された熱交換器35に供給する。この熱交換器35はこの空気配管系2の中の空気を熱的にコンディショニングするのに適している。すなわち、第1還流配管30が空気配管系2に供給された空気流の熱的なコンディショニングと共に、質量流量のコンディショニングも可能としているのに対し、この第2還流配管31は単に熱的なコンディショニングだけを可能とする。この実施形態では、第1還流配管30にも、第2還流配管31にも、複数の適切な調整装置、例えば、複数の弁、を備えることが可能である。同様に、第2還流配管31にもう1つの第4のコンディショニングユニット(ここでは図示されていない)を接続することも可能である。この第4のコンディショニングユニットは流れ発生器として構成することができる。
【0052】
他の複数の実施形態が従属請求項に示されている。
【符号の説明】
【0053】
1 調節システム
2 空気配管系
3 調節ユニット
5 高温バッテリーないし高温電解槽
01 第1箇所
02 第2箇所
10 第1温度センサー
11 第2温度センサー
12 第3温度センサー
20 第1コンディショニングユニット
21 第2コンディショニングユニット
22 第3コンディショニングユニット
30 第1還流配管
31 第2還流配管
35 熱交換器