(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通常動作時の圧力の低下が達成された場合に前記膜体が前記リミタに当接するように、前記圧力の低下の閾値が該通常動作時の圧力の低下に等しい、請求項1に記載の搾乳器。
通常動作時の圧力の低下が達成された場合に前記膜体が前記リミタから離隔されるように、前記圧力の低下の閾値が該通常動作時の圧力の低下より大きい、請求項1に記載の搾乳器。
前記チェンバは前記膜体の変形に先立ち及び/又は変形の間に前記膜体が当接する側壁を有し、前記テクスチャ加工面仕上げを有する前記表面が前記側壁及び/又は該側壁に接触し得る前記膜体の部分により形成される、請求項1に記載の搾乳器。
【背景技術】
【0002】
搾乳器は、ユーザの胸部から乳汁を抽出するための良く知られた装置である。搾乳器は、乳児又は幼児が自身で乳房から乳を絞り出すことができない場合、又は母親が乳児又は幼児から離されている場合(例えば、仕事で乳児から離れている場合)に使用することができる。乳汁を絞り出すための搾乳器の使用は、少ない乳供給量の女性における乳生成を刺激及び増加させるために使用することもできる。
【0003】
搾乳器は、養育している母親の乳房からの乳汁の絞り出しを促すために真空を利用する。当該装置のポンプ動作は乳頭から収集容器へ乳汁を取り出し、圧力及び/又は周波数は母親の好みに調整することができる。
【0004】
搾乳器システムは、一般的に、絞り出しユニットとして働く搾乳器と、該搾乳器を動作させる動作ユニットとを有している。上記絞り出しユニットは、ユーザの乳房が収容される漏斗と、絞り出された乳汁が収集される容器とを有している。上記動作ユニットは、モータにより駆動される真空ポンプを有している。これら動作及び絞り出しユニットは、互いに分離することができると共にチューブにより接続することができる。他の例として、上記動作ユニットは上記絞り出しユニットに取り付けられる。
【0005】
使用時において、真空ポンプは漏斗に収容された乳房に真空を供給する。一構成例において、漏斗内の真空は間接的に生成される。真空ポンプにより発生される圧力の減少は、絞り出しユニットのチェンバ内に収容された膜体(ダイヤフラムとしても知られている)に作用し、該膜体は変形可能であって漏斗内に圧力の低下を生じさせる。従って、真空が乳房に付与され、このことが、乳汁が絞り出されることを可能にする。
【0006】
乳房に周期的な圧力差が付与される搾乳器システムを提供することは既知である。このような構成においては、動作ユニットに圧力解放弁が配置される。所望の圧力低下が達成された後、上記膜体に作用する真空が解除されるのを可能にするために上記弁は開放される。当該真空の圧力が解放されると、上記膜体は元の位置に変形して戻り、ユーザの乳房に作用する真空が減少される。該弁を周期的に開放及び閉塞することにより、乳房に対する周期的な圧力プロファイルが達成される。
【0007】
しかしながら、上記構成の1つの問題は、上記弁が開き損なうと、真空ポンプが前記膜体に作用する圧力を減少させ続けるので、ユーザの乳房に作用する真空が増加し続けることである。従って、ユーザの乳房に作用する真空がユーザに対して不快さを生じさせ得、及び/又は安全限界を越え得る。更に、長時間の及び増加された真空は、真空ポンプに対して損傷を生じさせ得ると共に、ユーザが該真空ポンプから乳房を外すことを妨げ得る。
【0008】
前記チェンバ内のダイヤフラムの運動が雑音(キーキー音等)を発生させ得ることも知られている。この雑音は、典型的に、上記可撓性膜体が前記チェンバの内壁に接触し、該内壁上を移動し、又は該内壁から離れることにより生じる。このような雑音は、母親がくつろぎ得ることを妨害し得、従って、乳汁の絞り出しを保証するために要する催乳反射が影響を受け得る。
【0009】
ヨーロッパ特許出願公開第EP0123269号公報は、分割膜体を押すピストンを備えた搾乳ポンプを開示しており、上記膜体はロール膜として設計され、ハウジング面と、ネジで取り外すことが可能な透明蓋体との間に張設されている。吸引チューブ接続部は、二次側空気用ボア、並びに二次側空気及び吸引の正確な設定のための掛止調整ナットを備えている。上記分割膜体、蓋体及び吸引チューブ接続部は、取り外し、清掃し、消毒することができる。上記ピストンは、バネ上に支持されており、駆動シリンダチェンバ内で吸引空気及び弾性により作動される。
【0010】
他の例示的な搾乳器は、国際特許出願公開第WO2012/034238号公報、同第WO99/44650号公報、ドイツ国実用新案登録出願公開第DE202009017571号公報及び米国特許出願公開第2011/071466号公報から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述した問題を実質的に軽減又は克服する搾乳器及び/又は搾乳器システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、チェンバと、前記チェンバ内に収容可能であり、該チェンバを第1及び第2空間に分離する膜体であって、前記第2空間に圧力の低下を発生するために前記第1空間における圧力の低下に応答して前記チェンバ内で変形可能な膜体と、前記膜体の変形を制限するための前記チェンバ内のリミタ(制限部)とを有する搾乳器が提供され、前記膜体は前記チェンバ内において、該膜体が前記リミタから離隔される中立状態と、前記チェンバの前記第1空間において該膜体に所定の圧力の低下が印加される動作状態との間で自由に変形し、前記リミタは、前記第2空間における圧力の低下が閾値に等しいか又は該閾値を超える場合に該第2空間における前記圧力の低下を制限するために、前記膜体が該リミタに当接して前記チェンバ内における該膜体の変形を制限するように構成される。
【0013】
この構成の利点は、膜体の変形を制限することにより第2空間における圧力低下が制限され、このことがユーザの乳房に作用し得る真空に対する制限を可能にすることである。従って、ユーザに対する長時間の又は増加された真空による不快さ又は負傷を防止することができる。上記膜体の過大伸張による該膜体の損傷も防止することができる。
【0014】
前記リミタは、前記第2空間における圧力の低下が閾値に等しいか又は該閾値を超える場合に前記チェンバ内における前記膜体の変形を制限するように構成することができる。
【0015】
前記閾値は、通常動作時の圧力の低下が達成された場合に前記膜体が前記リミタに当接するように、該通常動作時の圧力の低下に等しくすることができる。
【0016】
この構成は、通常の動作の間に前記第2空間において発生される最大の圧力の低下が、前記膜体及びチェンバにより制御されることを可能にする。
【0017】
前記閾値は、通常動作時の圧力の低下が達成された場合に前記膜体が前記リミタから離隔さるように、該通常動作時の圧力の低下より大きくすることができる。
【0018】
この構成は、前記第2空間における(従って、ユーザの乳房における)真空が許容できないレベルに到達することを防止する。従って、当該搾乳器の他のフィーチャ(例えば、空気解放弁又はモータ制御)の故障があった場合における前記第2空間の過度の圧力を防止することができる。更に、前記膜体が通常動作の間に前記リミタに衝突することが防止される。
【0019】
前記膜体は、該膜体が前記チェンバ内に収容された場合に前記リミタから離れるようにバイアスをかけることができる。この構成は、前記第1空間内の圧力低下が解除された場合に前記膜体が自身の中立位置に戻るために要する力を減少させることができる。
【0020】
前記膜体における前記チェンバの第1空間に露出される面は、該膜体が変形する場合に該膜体の変形を制限すべく前記リミタに当接するように構成される。
【0021】
前記リミタは前記チェンバの壁であり得る。従って、如何なる追加の部品を設けることも要せずに、該チェンバ自体の構成を利用することが可能となる。組み立ての容易さも最大限に発揮される。
【0022】
前記リミタは、前記チェンバの壁から延びる1以上の突起(隆起)を有することができる。この構成の利点は、上記リミタをチェンバと一体的に形成することができることである。従って、追加の部品は必要とされない。
【0023】
前記リミタは、前記チェンバの前記第1空間内にあるものとすることができる。
【0024】
前記チェンバは上部及び下部により形成され、前記リミタは該上部の少なくとも一部により形成することができる。
【0025】
前記リミタ及び/又は前記膜体は、前記膜体が前記リミタに当接した場合に空気が沿って流れることができる1以上のチャンネル(溝)を画定することができる。従って、前記膜体が前記リミタに接触させられた場合に、前記チェンバへの及び該チェンバからの空気の流れの一層良好な制御を行うことができる。
【0026】
当該搾乳器は、前記チェンバの表面から延びる1以上の突起を更に有することができ、前記1以上のチャンネルは該1以上の突起により画定される。このことは、上記又は各突起が、前記膜体が前記チェンバの表面に向かって引き寄せられた場合に、空気が沿って流れることができるチャンネルを容易に形成することができることを意味する。
【0027】
前記リミタは1以上のリブであり得る。従って、これらリブは、前記又は各チャンネルに沿って空気が流れることを可能にしながら、前記膜体の変形を制限する機能を果たすことができる。
【0028】
前記1以上のチャンネルは、前記チェンバの表面に形成することができる。従って、これらチャンネルは製造の間において容易に形成することができる。
【0029】
前記1以上のチャンネルは、前記チェンバの表面に形成されたポートまで延びることができる。このことは、前記膜体が前記リミタに引き付けられた場合に、該膜体と前記チェンバの表面との間の空気が上記ポートまで流れることができることを意味する。更に、上記膜体は、上記表面に形成されたポートに引き寄せられた場合に、栓として働くことが防止される。
【0030】
前記1以上のチャンネルは、前記チェンバの表面に形成された前記ポートから実質的に放射状に遠ざかるように延びることができる。従って、チェンバの表面に近接した空気の流れを容易に制御することができる。
【0031】
前記膜体に接触し得る前記チェンバの表面及び/又は前記チェンバに接触し得る前記膜体の表面は、前記膜体が前記チェンバに接触し、該チェンバに沿って移動し又は該チェンバから離れる際に発生される雑音レベルが最小にされるように、テクスチャ加工面仕上げを有することができる。この構成は、当該可撓性膜体の表面が前記チェンバの表面に接触し又は該チェンバの表面から離れることにより発生される雑音レベルを低減するように作用する。上記テクスチャ加工面仕上げは、前記膜体及びチェンバが互いに接触する表面積を減少させるように作用する。
【0032】
一実施態様においては、前記膜体に接触し得る前記チェンバの表面がテクスチャ加工面仕上げを有し得る。この構成によれば、該テクスチャ加工面は当該チェンバを形成するシェル(殻体)の堅さにより容易に形成される。
【0033】
他の実施態様においては、前記チェンバに接触し得る前記膜体の表面がテクスチャ加工面仕上げを有し得る。
【0034】
前記チェンバは、前記膜体の変形に先立ち及び/又は変形の間に前記膜体が当接する側壁を有し、前記テクスチャ加工面仕上げを有する前記表面は該側壁及び/又は該側壁に接触し得る前記膜体の部分により形成される。従って、当該膜体が押し付けられる、該膜体の周囲に延びる上記側壁の周面に接触する該膜体の表面の表面積は最小になる。
【0035】
当該表面は、約Ra1.6μmの算術平均粗さ(Ra)を持つテクスチャ加工面仕上げを有することができる。
【0036】
当該表面は、Ra0.8μmより大きな算術平均粗さ(Ra)を持つテクスチャ加工面仕上げを有することができる。
【0037】
上記構成の1つの利点は、Ra0.8μmより大きな算術平均粗さ(Ra)を有することが、前記チェンバの表面上を運動する前記膜体の表面により発生される雑音を減少させるということである。
【0038】
当該表面は、Ra3.2μmより小さな算術平均粗さ(Ra)を持つテクスチャ加工面仕上げを有することができる。該構成の1つの利点は、Ra3.2μmより小さなテクスチャ加工面仕上げを有することが、前記膜体が前記チェンバの表面上を運動する際の該膜体の過度の摩耗を制限するということである。
【0039】
更に他の実施態様において、前記膜体に接触し得る前記チェンバの表面及び前記チェンバに接触し得る前記膜体の表面は、共にテクスチャ加工面仕上げを有することができる。
【0040】
このような構成において、上記チェンバの表面及び上記膜体の表面は、各々、Ra0.4μmより大きな算術平均粗さ(Ra)を持つテクスチャ加工面仕上げを有することができる。該構成の1つの利点は、テクスチャ加工面仕上げを有する各表面が、前記膜体の表面が前記チェンバの表面上を移動し、該チェンバの表面に接触し又は該チェンバの表面から離れることにより発生される雑音を最少化するために必要とされる算術平均粗さ(Ra)を最小にすることである。
【0041】
本発明の他の態様によれば、チェンバと、前記チェンバ内に収容可能であり、該チェンバを第1及び第2空間に分離する膜体であって、前記第2空間に圧力の低下を発生するために前記第1空間における圧力の低下に応答して前記チェンバ内で変形可能な膜体と、前記チェンバにおける前記膜体が変形した場合に当接する面と、を有する搾乳器が提供され、この面は前記膜体が該面に当接した場合に空気が沿って流れることができる1以上のチャンネル(溝)を画定する。
【0042】
このことは、上記膜体が上記面と接触した場合に該面と該膜体との間における空気の流れを制御することができることを意味する。更に、空気が上記面により閉じ込められることが回避され、膜体が該面に対して栓として作用することが制限される。
【0043】
本発明の他の態様によれば、チェンバと、前記チェンバ内に収容可能であり、該チェンバを第1及び第2空間に分離する膜体であって、前記第2空間に圧力の低下を発生するために前記第1空間における圧力の低下に応答して前記チェンバ内で変形可能な膜体と、前記膜体に接触し得る前記チェンバの面及び/又は前記チェンバに接触し得る前記膜体の面であって、前記膜体が前記チェンバに接触し、該チェンバに沿って移動し又は該チェンバから離れる際に発生される雑音レベルが最小となるようにテクスチャ加工面仕上げを有する面と、を有する搾乳器が提供される。
【0044】
本発明の他の態様によれば、請求項1ないし14の何れか一項に記載の搾乳器を有する搾乳器システムが提供される。
【0045】
上記搾乳器システムは、前記第1空間において圧力の低下を発生するように構成された真空ユニットを更に有することができる。
【0046】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施態様から明らかとなり斯かる実施態様を参照して解説されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施態様を、例示のみとして、添付図面を参照して説明する。
搾乳器システムが
図1に示されている。該搾乳器システム1は、搾乳器(絞り出しユニットとしても知られている)2と、動作ユニット3とを有している。
【0049】
搾乳器2及び動作ユニット3はチューブ4により接続される。チューブ4は、搾乳器2と動作ユニット3との間の流体の伝達を行う。チューブ4は、搾乳器2と動作ユニット3との間の電気的接続を行うためにも使用することができる。例えば、該チューブは、当該搾乳器と動作ユニットとの間において動作信号及び電力を供給することができる。
【0050】
搾乳器2は、本体部5、漏斗6及び収集容器7を有している。収集容器(又は容器)7は、ユーザの乳房から絞り出された乳汁を収集するもので、哺乳瓶又は袋の形態をとる。収集容器7は本体部5にネジ止めにより取り付けられる。もっとも、クリップ(図示略)等の他の取り外し可能な取付手段を使用することもできると理解される。
【0051】
乳房収容漏斗6は本体部5から延びている。漏斗6はユーザの乳房を収容するように構成されている。漏斗6は口部8及び喉部9を有している。口部8はユーザの乳房を受け入れるように外側端部において開いており、漏斗6は該外側端部から喉部9に向かって収束し、乳房が収容される中空凹部を形成する。
【0052】
本体部5は上記漏斗6を収集容器7に流体的に接続する。該本体部5を経て漏斗6の乳房収容空間から収集容器7へと流体通路10(
図2参照)が形成される。本体部5は外側シェル(殻体)から形成される。該本体部5は漏斗6と一体的に形成されている。しかしながら、漏斗6は着脱可能にすることもできると理解される。本構成において、本体部5はポリプロピレンから形成されている。もっとも、他の好適な材料も使用することができると理解される。
【0053】
動作ユニット3は、コントローラ(図示略)、電源(図示略)、モータ(図示略)及び真空ユニット(図示略)を有している。上記真空ユニットは、真空経路における圧力低下を発生させ及び解除するように構成される。上記コントローラは、動作ユニット3の構成部品の動作を制御する。上記圧力低下を発生する手段及び該圧力低下を解除する手段は別個の部品であるが、該圧力低下を発生する手段及び該圧力低下を解除する手段は一体に形成することもできることが理解される。特に、本実施態様では、上記真空ユニットは真空ポンプ(図示略)及び圧力解放弁(図示略)を有する。上記真空ポンプは圧力低下手段として作用する。上記圧力解放弁は圧力低下を解除する手段として作用する。
【0054】
上記真空ユニットは、真空経路における圧力低下を発生して搾乳器2を動作させるように構成される。即ち、該真空ポンプは真空を発生する。該真空ポンプは、搾乳器2の本体部5に形成されたチェンバ12(
図2参照)にチューブ4を介して流体的に接続される。該真空ポンプは、一般的に、モータ(図示略)により動作される。
【0055】
前記解放弁は、上記真空ポンプにより発生された真空を解除するために周期的に開くように構成される。該弁を周期的に開放及び閉塞することにより、周期的な圧力プロファイルが実現される。該圧力解放弁(図示略)はソレノイド弁とすることができる。該圧力解放弁(図示略)の動作は前記コントローラにより制御される。本実施態様では別体の搾乳器及び動作ユニットが設けられているが、他の実施態様においては、収集容器、漏斗、真空ポンプ、電気モータ及び電源等の当該搾乳器システムの構成部品を単一の本体内に収容することもできる。例えば、前記動作ユニットの構成部品は当該搾乳器の前記本体部内に組み込むことができ、別個の動作ユニットの必要性を取り除くようにする。
【0056】
図2及び
図3を参照すると、チェンバ12は本体部5に形成されたものとして示されている。チェンバ12は流体通路10に沿って形成されている。即ち、チェンバ12は、漏斗6と収集容器7との間の流体通路10と流体的に連通する。該チェンバ12は真空ポート13を有している。該真空ポート13は、動作ユニット3における真空ポンプ(図示略)と連通する。チューブ4を真空ポート13に、該チューブと流体的に通じるように取り付けることができる。従って、前記真空ポンプは該ポート13を介してチェンバ12内の圧力低下を生じさせることができる。真空ポート13はチェンバ12の上端に形成されている。
【0057】
チェンバ12は、基部14、側壁15及び上壁16を有している。側壁15は、基部14と上壁16との間に延びている。側壁15はチェンバ12の周りに周方向に延在している。チェンバ12は本実施態様では概ね円柱状であるが、該チェンバ12の形状及び寸法は様々であり得ることが理解される。基部14、側壁15及び上壁16は、チェンバ12の内側表面を画定している。上壁16を通って、前記ポート13への入口18が形成されている。基部14には前記流体通路10への開口19が形成されている。
【0058】
本実施態様において、チェンバ12は、互いに取り付け可能な下部20及び上部21を有している。しかしながら、他の実施態様では下部及び上部20及び21を一緒に形成することもできることが理解される。下部20は基部14及び側壁15の下部を画定する。上部21は上壁16及び側壁15の上部を画定する。下部20は、前記漏斗6及び前記流体通路10を形成する前記本体部5の一部と一体的に形成されている。上部21はキャップであり、該キャップは下部20から取り外し可能である。上記キャップが下部20に取り付けられると、当該チェンバが閉じた空間として形成される。他の構成も可能であることが理解される。例えば、上記下部及び漏斗は分離可能にすることができる。
【0059】
チェンバ12の上壁16は内側表面を有している。本構成において、上壁16の該内側表面はドーム状である。しかしながら、該チェンバの上壁16に関する他の構成も考えられることが理解される。上記内側表面のプロファイルは、変形された状態における前記膜体の形状に対応し得る。このことは、当該搾乳器2の動作の間における一貫性のある圧力低下を保証する。
【0060】
膜体22はチェンバ12内に収容される。該膜体(ダイヤフラムとしても知られている)22は可撓性である。膜体22はチェンバ12を第1空間23及び第2空間24に分離する。第1空間23は真空ポート13と流体的に通じている。従って、前記真空ポンプは該第1空間23内でも圧力低下を発生することができる。第2空間24は、漏斗6の乳房受容空間と収集容器7との間の流体通路10と流体的に通じている。従って、後に明らかとなるように、第2空間24において圧力低下が発生された場合、該流体通路10においても圧力低下が発生される。該流体通路10には一方向弁28が配置される。該一方向弁は、圧力低下を発生させるために収集容器7から空気を抜く必要性を回避すると共に、該容器と本体部5との間に密閉された境界を設ける必要性も回避する。
【0061】
前記膜体22の外縁(リム)25は前記下部及び上部20及び21の間に取り付け可能である。上部21が下部20に取り付けられた場合、上部21は下部20に少なくとも部分的に重なる。膜体22の外側リム25は下部及び上部20及び21の重なり合う部分の間に受け入れられる。かくして、該膜体22はチェンバ12内に固定的に取り付けられる。このことは、該膜体22がチェンバ12内で定位置に保持されることを意味する。
【0062】
膜体22はシリコーンから形成される。しかしながら、該膜体22は他の適切な材料から形成することもできると理解される。
【0063】
該可撓性膜体22は所定の形状を有している。本構成において、膜体22は、中立位置において、実質的に椀状の配置状態を有している。即ち、該膜体22は、チェンバ12内に収容されているが、変形されていない場合、実質的に椀状の配置状態を有する。しかしながら、該膜体22は椀状の配置状態に限定されるものではなく、他の形状を有することもできることが理解される。
【0064】
本実施態様において、膜体22は下面26及び上面27を有する。本実施態様において、該膜体22は、チェンバ12内における該膜体22の一方の側に印加される圧力の低下に応答して変形する際に反転するよう構成されている。しかしながら、他の実施態様では、該膜体22は反転しなくてもよいことが理解される。例えば、他の実施態様において、当該膜体は、該膜体22がチェンバ12内に収容された場合に平面的形状を有するように形成することもできる。
【0065】
搾乳器2が組み立てられる場合、膜体22はチェンバ12内に収容される。外側リム25は、チェンバ12を形成する下部及び上部20及び21の間に配置される。本実施態様において、チェンバ12の下部20と重なり合う上部21の下側端部30は、当該膜体22におけるチェンバ12内で変形することができる区域の縁部を画定する。
【0066】
当該膜体は、初期には、チェンバ12内で中立(又は非変形)状態である。この位置において、膜体22の下面26はチェンバ12の表面(例えば、側壁15の下部)に近接するが、該表面から僅かに離隔されて位置される。該膜体の中立位置において、膜体22の下面26はチェンバ12の表面に接して位置することもできる。膜体22は、
図4では、変形されていない状態で図示されている。
【0067】
前記真空ポート13は前記チューブ4に、第1空間23が前記動作ユニット3と、従って前記真空ポンプ(図示略)と流体的に連通状態となるように、流体的に接続される。ユーザは自身の乳房を、ユーザの乳頭が漏斗6の首部9内に受け入れられた状態で該漏斗6と乳房との間に流体的密閉が形成されるように、漏斗6の口部8を介して挿入する。
【0068】
次いで、ユーザは当該搾乳器システムを動作させる。前記コントローラは搾乳器を動作させるためのユーザ入力に応答して前記真空ユニット(図示略)を動作させる。
【0069】
上記真空ユニットは、チューブ4を介しての流体的連通により、チェンバ12の第1空間23に圧力低下を発生させる。チェンバ12の第1空間23に真空状態が生成されると、膜体22は、チェンバ12内の第1空間23と第2空間24との間の圧力差により該チェンバ12内で変形させられる。従って、膜体22は第1空間23の方向に変形する。即ち、該膜体22はチェンバ12の上壁に向かって膨張する。
【0070】
膜体22が変形するにつれて、該膜体は第1空間23の方向に引き込まれる。従って、該膜体22の膨張がチェンバ12の第2空間24における圧力低下を生じさせる。乳房は漏斗6の口部8内に収容され、該口部に対して流体的密閉を形成するので、漏斗6の首部9、流体通路10及びチェンバ12の第2空間24の間に閉じた系が形成される。従って、第2空間24内に圧力低下が生じるように膜体22がチェンバ12内で変形すると、流体通路10及び漏斗6内に真空が発生される。この真空は、ユーザの乳房に作用して、漏斗6内に収容されたユーザの乳頭からの乳汁の絞り出しを生じさせる。膜体22の真空動作中の状態が
図5に示され、該図において膜体22は第2空間24内に(従って、ユーザの乳房に)真空を発生するように変形している。
【0071】
通常の動作の間において、前記コントローラは、所定の圧力が達成された際に第1空間23における圧力低下を解除するために、前記真空ユニット(図示略)の圧力解放弁を動作させる。第1空間23における真空が解除された場合、膜体22は中立位置に戻るように付勢される。即ち、膜体22は、該膜体の両側に生成される圧力差によりチェンバ12の第2空間24の方向に移動することによって中立位置に戻るよう付勢される。また、膜体22は、該膜体の弾性により中立状態に向かって収縮され得る。このことは、チェンバ12の第2空間24における(従って、ユーザの乳房における)真空が解除されるようにする。次いで、コントローラは上記圧力解放弁を閉じ、前記真空ポンプにより第1空間23において圧力低下が再び発生され、膜体22は第1空間23の方向に膨張させられる。一実施態様において、当該膜体は変形するにつれて反転する。しかしながら、他の実施態様では、該膜体は反転しない。
【0072】
真空は乳房に対して間隔を開けて供給される。即ち、圧力低下は周期的に発生される。真空が達成された後、該真空の圧力は、一時的に開放される圧力解放弁の使用により解放される。真空の圧力が解放されるにつれて、前記膜体はオリジナルの状態に戻るよう変形する。このように、搾乳器2は乳房から乳汁を絞り出すために周期的な圧力プロファイルを用いる。
【0073】
通常の動作において、真空は各ポンプ動作周期の後に上記解放弁を開くことにより解除される。該圧力解放弁は、機械式の弁又は電気機械式の弁(例えば、ソレノイド弁)とすることができる。しかしながら、他の理由により、例えば上記解放弁が開き損なったか又は該弁の入口が詰まったことにより、真空が解除されなかった又は部分的にしか解除されなかった場合、前記真空ユニットは第1空間23内の圧力を低減し続ける。このことは、膜体22が通常の真空状態のものを越えて変形し続けるようにさせる。
【0074】
即ち、真空が解除されない場合、第1空間23における圧力低下は前記所定の圧力低下を越えるであろう。従って、該膜体22はチェンバ12内で通常動作の状態のものを越えて膨張させられる。この膜体22の更なる変形は、チェンバ12の第2空間24内の一層大きな圧力低下を生じさせるので、ユーザの乳房における真空は許容されないレベルに到達し得る。即ち、ユーザの乳房において発生される真空が、ユーザに対して不快さを生じさせ又は負傷を負わせ得る。
【0075】
本実施態様において、前記上壁16は、膜体22に対して圧力低下が、前記第2空間における(従って、乳房における)圧力が正常な動作閾値に等しいか又は該閾値を超えるように、印加された場合に、チェンバ12内での当該膜体22の変形を制限するために該膜体22が当接し得るリミタ(制限器)として働く。即ち、膜体22はチェンバ12内において中立状態(
図4参照)と、チェンバ12の第1空間23において該膜体22に所定の圧力低下が掛かる動作状態(
図5参照)との間で自由に変形する。前記上壁16は当該チェンバの表面を形成している。更に、該上壁16は膜体22がチェンバ12内に収容されている場合に該チェンバ12の第1空間23内で露出されている。チェンバ12は、膜体22が変形された状態にあり、且つ、前記第2空間における圧力が通常の動作圧力である場合に、上記上壁16が当該膜体の上面27から離隔されるように構成される。しかしながら、該上壁16は、膜体22が印加された圧力に応答して変形された状態にある場合に該膜体の上面27に近接して位置され、前記第2空間における圧力の低下が閾値を超えたなら、該膜体22の上面27が該上壁16に当接する(
図6参照)ように構成される。
【0076】
膜体22が上壁16に当接して位置する場合、該上壁16は膜体22の更なる変形を防止する。このことは、第2空間24における更なる圧力低下が防止されることを意味する。何故なら、膜体22が第2空間から離れる方向へ更に膨張することが不可能になるからである。従って、ユーザの乳房に印加される真空は、前記閾値を超えることが防止される。
【0077】
幾つかの事例では、第2空間において達成することができる圧力低下は漏斗6の口部8に収容される乳房の大きさに依存して僅かに変化し得ることが理解される。このような構成において、前記閾値は単一の値ではなく、通常の動作閾値に等しいか又は該通常の動作閾値を越える圧力低下範囲であることが理解される。該圧力低下範囲は、安全性限界からの安全距離であるとして決定することができる。
【0078】
第2空間における閾値の圧力低下が満足されるか又は超過された場合に前記膜体が位置するリミタを設けることにより、実施態様は、正常な解放機構が故障した場合でさえも搾乳器漏斗で発生する過度に高い真空を回避することが可能になる。このような実施態様は、所望の真空レベルに一層迅速に到達することができる強力なポンプが、真空が各サイクルの終わりで正しく解除されない場合に当該搾乳器漏斗に高い真空が発生される危険性を伴わずに、使用されることを可能にすることができる。
【0079】
上述した実施態様において、チェンバの上壁は当該搾乳器の通常の動作の間において膜体の上面から離隔され、従って該上壁が膜体の変形を制限することがないように構成されている。この構成の利点は、チェンバの第1空間において一貫性のある気流が達成され、膜体が上壁のポートに対して栓を形成することが回避されることにある。
【0080】
しかしながら、他の構成では、上記上壁は通常の動作条件の間において上記膜体の変形を制限するように構成することもできる。即ち、前記チェンバは、上記膜体が当該搾乳器の通常の動作サイクルの間において上記上壁に当接して位置することを保証するように構成することができる。このような構成において、上記上壁は、当該チェンバの第2空間において通常動作の圧力低下に到った場合に上記膜体の変形を制限するように構成される。従って、該上壁は当該搾乳器の動作の間において達成可能な最大真空度を制御するように作用する。このことは、乳房における最大圧力低下が通常の動作閾値を越え得ないことを意味する。
【0081】
上記実施態様においては、上記上壁は、閾値である圧力低下が超過された場合に前記チェンバにおいて上記膜体が当接するリミタとして使用され、従って真空解除機構が故障した場合においても、ユーザの乳房において発生される真空を制限するようになっているが、他の構成例も可能であると理解される。他の一構成例においては、当該膜体の変形を制限するために、該膜体が当接して位置し得るリブ等の隆起が上記上壁から延びるようにする。代わりに、膜体の変形を制限するために該膜体が当接して位置し得るインサートがチェンバ内に収容されるようにする。該インサートは、前記上部に取り付け可能にすることができるか、又は該上部と前記下部との間に、これら上部及び下部が合体される際に取り付け可能にすることができる。
【0082】
上記リミタは、上記チェンバに跨がって延在し、上記膜体が変形した場合に該膜体の変形を制限するために該膜体が当接し得るエレメントにより形成されることも可能である。
【0083】
当該搾乳器システムの他の態様を、
図7を参照して説明する。この態様の搾乳器システムのフィーチャは、
図1、
図2、
図4及び
図6を参照して上述した搾乳器システムの何れかにおいて、又は上述したシステムのフィーチャを含まない如何なる従来の搾乳器システムにおいても実施化することができる。一般的な構成は上述したので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0084】
搾乳器の上部50が
図7に示されている。
図7に示される搾乳器におけるチェンバの上部50は、
図2ないし6に図示したチェンバの上部と類似しており、
図1に示されたもののような搾乳器システムにおいて使用するために設けられる。該搾乳器の上部50は、下部(
図2参照)に取り付けることができる。しかしながら、他の実施態様では、該上部50はチェンバを形成するために対応する下部と一体的に形成することもできると理解される。該上部50は当該チェンバの上壁51を画定する。該上部50は、当該チェンバの側壁の一部52も画定する。該上部50は、当該チェンバの下部に取り付けることが可能なキャップである。該キャップが上記下部に取り付けられた場合、チェンバが閉じた空間として形成される。
【0085】
上記チェンバの上壁51は内側表面53を有している。本構成例において、上壁51の内側表面53はドーム状である。しかしながら、該チェンバの上壁51に関しては他の構成も考えられると理解される。
【0086】
上部50はポリプロピレンから形成されている。しかしながら、該上部50は、例えば他の剛性材料等の他の適切な材料から形成することもできると理解される。
【0087】
チェンバ12の上部50は真空ポート55を有する。該真空ポート55は、当該搾乳器システムの動作ユニットにおける真空ポンプ(図示略)と連通する。該真空ポート55にはチューブ(
図1参照)を、該チューブと流体的に通じるように取り付けることができる。従って、上記真空ポンプは該ポートを介して当該チェンバに圧力低下を生じさせることができる。該真空ポート55は上部50を貫通して形成される。該真空ポート55は、上壁51の表面53を経て形成される。
【0088】
上記内側表面53には細長い凹部56が形成されている。該長尺凹部56はチャンネル(溝)として働く。これらチャンネルは、自身に沿った空気の通過を可能にする。5本の長尺凹部が図示されているが、長尺凹部の数は様々であり得ると理解される。
【0089】
各長尺凹部56は、基部と、該基部と上記内側表面53との間に延びる側壁とを有する。これら長尺凹部は断面がアーチ状であり得る。各長尺凹部56は前記ポート55と通じている。
【0090】
当該搾乳器を組み立てる際に、上部50が下部に取り付けられると共に、チェンバ内に膜体が収容される。該膜体及びチェンバ内における該膜体の配置は先に詳細に説明したので、ここでは詳細な説明は省略する。上記膜体が、当該チェンバにおける第1空間と第2空間との間の圧力差により該チェンバ内で変形される場合、該膜体は上壁51に向かって膨張する。従って、該膜体の膨張は当該チェンバの第2空間における圧力低下を生じさせ、前記漏斗内に位置するユーザの乳房に対して作用するように真空が発生される。かくして、該真空はユーザの乳頭からの乳汁の絞り出しを生じさせるように作用する。
【0091】
真空が達成された後、該真空の圧力は一時的に開放される圧力解放弁により解放される。真空の圧力が解放されるにつれて、前記膜体は自身のオリジナルの状態に戻るように変形する。このように、当該搾乳器は乳房からの乳汁の絞り出しのために周期的な圧力プロファイルを用いる。
【0092】
しかしながら、上記膜体がチェンバの上壁51に向かって変形すると、該膜体は該上壁51に接触するようになる。前述したように、このことは該膜体の変形を制限し得るので、当該チェンバから吸い出すことができる空気の体積を制限することになる。
【0093】
前記長尺凹部56により形成されたチャンネルは、上記膜体と上壁51の表面との間に位置する空気がポート55へと流れることを可能にする。これらチャンネルは、上記膜体がポート55上で栓として作用する前に、当該チェンバ内の全ての空気が該チェンバから排出されることを可能にする。即ち、上記膜体は、該膜体の一部が上壁51の表面から隔てられている間に、上記ポートに引き寄せられ、該ポートを塞ぐことを防止される。該膜体が当該チェンバの第1空間における圧力低下の早期の段階で栓として働いた場合、より少ない体積の空気しか該チェンバの第1空間から排出されず、従って、該膜体の変形が制限され、このことは、ユーザの乳房において一層少ない体積の減少しか発生させない。
【0094】
上記チャンネル又は樋は、上壁51の表面53と当該膜体との間の全体積領域からポート55への空気のチャンネルを形成する。従って、空気の閉じ込めが防止される。
【0095】
上述した構成の利点は、上記チャンネルが、各真空サイクルにおいて一貫した体積の空気が当該チェンバの第1空間から引き出され、これがユーザの乳房において一貫した圧力の低下が形成されることになることを保証することである。
【0096】
同様に、真空の解除に際して、上記チャンネルは上記膜体と上壁51との間に真空が形成されることにより該膜体が上壁51の内側表面に貼り付くことを防止する。従って、該膜体は弛緩された状態へと完全に戻ることが可能にされる。その結果、続くサイクルにおいて、該膜体は中立状態から開始することになる。
【0097】
上述した実施態様において、チャンネルはチェンバの表面に形成された凹部により形成されているが、斯かるチャンネルは他の構成により形成することもできることが理解される。一代替構成例においては、上壁51の内側表面上にリブ(図示略)が形成される。これらリブ(図示略)は上壁51から立ち上がる。前記膜体が該リブに当たって位置すると、各リブに沿ってチャンネルが形成され、該チャンネルは上壁51の内側表面と当該膜体の表面との間に空気の通路を形成する。他の突起又は複数の突起を使用することができることも理解される。
【0098】
上述した実施態様において、前記チャンネルは平行な側壁を有するものとして示されているが、これらチャンネルの構成は、これに限定されるものではないと理解される。例えば、1以上のチャンネルは、これらチャンネルの側壁が当該チャンネルの中央部において互いに広がる花弁状の構成を有するように形成することができる。他の例として、1以上のチャンネルは、外縁から互いに発散又は収束する側壁を有することもできる。
【0099】
上述した構成例において、チャンネルは前記ポートから実質的に放射方向に延びるものとして示されているが、上記又は各チャンネルは他の構成を有することもできると理解される。例えば、上記又は各チャンネルは前記チェンバの上壁を廻る螺旋状構成を有することもできる。
【0100】
当該搾乳器システムの更なる態様を、
図8を参照して説明する。この態様の搾乳器システムのフィーチャは、
図1、2、4及び6を参照して上述した搾乳器システムの何れかにおいて、又は上述したシステムのフィーチャを含まない如何なる従来の搾乳器システムにおいても実施化することができる。
【0101】
搾乳器101が
図8に示されている。該搾乳器101は
図1に示した搾乳器と類似しており、
図1に示されたもののような搾乳器システムにおいて使用するために設けられる。搾乳器101は、チェンバ103が内部に画定される本体部102を有している。チェンバ103は、ユーザの乳房を受け入れる漏斗105と収集容器106との間の流体通路104に沿って形成される。該チェンバ103は真空ポート107を有している。該真空ポート107は、前記実施態様において説明した動作ユニットと類似する動作ユニット内の真空ポンプと連通する。従って、該真空ポンプはチェンバ103に圧力低下を生じさせることができる。真空ポート107はチェンバ103の上端部に形成される。
【0102】
膜体110がチェンバ103内に収容される。該膜体(ダイヤフラムとしても知られている)110は可撓性である。該膜体110は、チェンバ103を第1空間111及び第2空間112に分割する。第1空間111は、前記真空ポート107と流体的に連通する。従って、前記真空ポンプにより該第1空間111内に圧力低下が発生される。第2空間112は、漏斗105の乳房収容空間と収集容器106との間の流体通路104と流体的に連通する。
【0103】
第1空間111に圧力低下又は真空が発生された場合、膜体110は変形し、該第1空間111の方向に引き込まれる。従って、膜体110の該変形により、チェンバ103の第2空間112に圧力低下が発生される。前記漏斗の口部に乳房が収容されている場合、該漏斗105に圧力低下が形成され、これがユーザの乳房に作用して、該乳房から乳汁を絞り出させる。
【0104】
チェンバ103は、基部120、側壁121及び上壁122を有している。側壁121は基部120と上壁122との間に延在している。該側壁121はチェンバ103の周りに周方向に延びている。チェンバ103は、互いに取り付け可能な下部及び上部123及び124から形成される。下部123は、基部120及び側壁121の下部を画定する。上部124は上壁122及び側壁121の上部を画定する。膜体110の外縁は、上記上部124と下部123との間に取り付けることができる。かくして、該膜体110はチェンバ103内に固定的に取り付けられる。このことは、該膜体110がチェンバ103内で定位置に保持されることを意味する。
【0105】
真空ポート107は上壁122を介してチェンバ103と連通する一方、流体通路104は基部120を介してチェンバ103と連通する。基部120、側壁121及び上壁122は、チェンバ103の内側表面を画定している。
【0106】
本実施態様において、上記チェンバを形成する本体部102はポリプロピレンから形成されている。可撓性膜体110はシリコーンから形成されている。しかしながら、チェンバ103及び膜体110は他の適切な材料から形成することができることも理解される。
【0107】
可撓性膜体110は所定の形状を有している。本構成例において、膜体110は中立位置において(即ち、第1空間111における減圧により変形されていない場合)実質的に椀状の配置状態を有している。該膜体110は下面125及び上面126を有する。膜体側壁の自由端から唇部127が延びている。しかしながら、該膜体は他の形状を有するように形成することもできることが理解される。本構成例の場合、上記唇部127は、チェンバ103を形成する底部123と上部124との間に取り付けられる。本実施態様において、該膜体110は、変形すると反転する。しかしながら、他の実施態様では、該膜体110は反転しないことも理解される。
【0108】
前記側壁121はテクスチャ加工された表面を有している。即ち、上記チェンバの表面の少なくとも1区域はテクスチャ加工面を有している。本実施態様において、側壁121の下部はテクスチャ加工面を有するように構成されている。該テクスチャ加工面は、側壁121の下部の表面の全体に、又は該表面の或る区域のみにわたって延びることができる。該区域は、上記側壁における当該膜体110と接触する区域を有することができる。該テクスチャ加工面は、上記チェンバ表面の全て又は一部をカバーすることができる。例えば、上記チェンバの周に沿って延び、各々が表面テクスチャを有する一連の繰り返しパターンが存在し得る。
【0109】
上記テクスチャ加工面は、Ra 0.8μm〜Ra 3.2μmの範囲の算術平均粗さ(Ra)を持つテクスチャ加工面仕上げから形成される。完全に滑らかな(即ち、光沢)仕上げは、結果として、当該可撓性膜体110により高いキーキー音が発生され、該膜体110がチェンバ103内で変形される場合に当該チェンバの表面に貼り付くことになることが分かった。
【0110】
また、大きな粗さ(例えば、Ra 3.2μmより大きい)は、膜体110が上記表面上で動く際に該膜体の一層大きな摩耗を生じ得ることも分かった。従って、Ra 0.8μm〜Ra 3.2μmの範囲内の表面仕上げが、前記表面に対する膜体110のたわみにより生じる雑音を最少にすると同時に、該表面による膜体の摩耗も最少にする。
【0111】
一実施態様において、テクスチャ加工面を有する当該表面は、Ra 1.6μmの算術平均粗さ(Ra)を有する。この値の算術平均粗さを持つ表面は、当該搾乳器の使用の間に最小の雑音しか生じないと同時に、膜体の摩耗も最少にすると判断される。
【0112】
上記テクスチャ加工面は型内テクスチャ加工により形成される。即ち、該テクスチャ加工面は、本体部102を形成するための工具にテクスチャを加えることにより形成される(例えば、放電加工テクスチャ)。他の例として、上記テクスチャ加工面は上記本体部の作製の後に、例えばサンドブラスト加工により形成される。該テクスチャ加工面を形成する他の方法も使用することができる。
【0113】
当該搾乳器が組み立てられる際に、膜体110はチェンバ103内に収容される。膜体110の下面125は、チェンバ103の表面に近接するが、該チェンバの表面(例えば、側壁121の下部)から僅かに離隔されて配置される。この場合、該膜体110は中立(又は変形されていない)位置にある。他の例として、膜体110の下面125は、該膜体の中立位置において、チェンバ103の表面に接して位置させることもできる。
【0114】
搾乳器101が動作された場合、第1空間111に圧力低下が発生され、従って膜体110は変形される。膜体110が変形し始める場合、該膜体110は、チェンバ103の表面に接触させられるか、又は最初はチェンバ103の表面に接しているかの何れかである。チェンバ103の表面のうちの、膜体110と接触するようになる区域はテクスチャ加工面を有するように構成される。
【0115】
膜体110が更に変形させられる場合、該膜体110がチェンバ103の第1空間111における圧力の減少により変形させられるにつれて、該膜体110の下面125は側壁121の表面から離れるように及び/又は該表面にわたって引き出される。同様に、膜体110の下面125は、該膜体110がチェンバ103の第1空間111における圧力低下の解除により自身の中立位置に戻される際に、側壁121の表面に向かって及び/又は該表面にわたって移動される。
【0116】
膜体110がテクスチャ加工面に接触し、該テクスチャ加工面に沿って移動し又は該テクスチャ加工面から離れる際に該膜体110とチェンバ103の表面との間に形成される接触面積は最小にされる。従って、膜体110及びチェンバ103の表面が互いに対して移動することにより発生される雑音が最小になる。例えば、ガーガー音又はキーキー音が低減される。この雑音は、膜体が変形する際にチェンバの内側表面上に貼り付き又は該内側表面上でスリップすることにより、及び/又は該膜体が変形する際に自身に対して貼り付き及びスリップすることにより生じる貼り付き/スリップ現象により生成される。斯かる効果は、顕微鏡的規模で擦れることにより生じ得る。テクスチャ加工面仕上げが当該膜体及び/又はチェンバの表面上になされた場合、減少された表面積により、膜体110とチェンバ103の表面との間の貼り付きが少なくなる。
【0117】
チェンバの一部がテクスチャ加工面を有する1つの利点は、膜体とチェンバの表面との間の接触面積の減少が、該膜体とチェンバとの間に生じる摩擦を最少にするということである。従って、膜体をチェンバ内で運動させることが一層容易になる。このことは、膜体をチェンバ内で変形させると共に、該膜体を中立位置に戻すために、より少ないエネルギしか必要とされないことを意味する。
【0118】
上記実施態様において、テクスチャ加工面は基部と膜体との間の側壁の下部に形成されているが、該テクスチャ加工面は、更に又は代わりに、膜体と上壁との間の側壁の上部に形成することもできると理解される。この構成は、膜体と側壁の上部との間の接触により生成される如何なる雑音も最少にする。
【0119】
上記実施態様において、テクスチャ加工面はチェンバの側壁上に形成されるが、該テクスチャ加工面は、膜体の変形の間において該膜体が接触し又は離れる本体部の如何なる表面上にも形成することができることが理解される。特に、前記基部及び/又は上壁もテクスチャ加工面を有することができる。
【0120】
上述した実施態様において、テクスチャ加工面仕上げはチェンバの表面上に形成されているが、該テクスチャ加工面は、更に又は代わりに、膜体の表面に形成することもできる。この構成は、膜体の表面とチェンバの表面との間の接触面積を低減させるという同一の効果を有する。該テクスチャ加工面は、膜体の下面の全体若しくは一部上に、及び/又は該膜体の上面の全体若しくは一部上に形成することができる。
【0121】
上述した実施態様において、前記真空ユニットには、真空経路に圧力低下を発生させる手段及び該真空経路内の圧力低下を解除する手段の別個の手段が設けられるが、これらは統合することができると理解される。他の実施態様において、該真空ユニットはピストンチェンバ又はシリンダに滑動可能に収容されたピストンを有する。該ピストンは往復動エレメントとして働く。該ピストンは当該チェンバ内で流体密閉体を形成する。上記ピストンチェンバは真空経路の一部を形成する。該ピストンは、例えば、クランクシャフト及びモータにより往復動的に作動される。該ピストンがピストンチェンバに沿って引き込まれると、該ピストンの動きは、上記真空経路内に圧力低下を発生するように作用する。従って、ユーザの乳房において真空が生成される。該ピストンが戻りの行程で反対方向に移動すると、上記チェンバ内の圧力低下は解除される。しかしながら、例えば上記ピストンが詰まるか又は上記モータが故障すると、該ピストンは上記真空経路内の圧力低下を解除しない。即ち、当該真空ユニットは該真空経路における圧力低下を解除し損なうようになる。このような事態が発生した場合、上記真空経路に設けられた漏れ開口が、該真空経路における圧力低下の制御された解除を可能にする。
【0122】
上記実施態様において、当該搾乳器システムが組み立てられ、ユーザの乳房が漏斗内に収容された場合、上記真空経路は上記ピストンとユーザの乳房との間に形成されることが理解される。上記真空ユニットは、前記動作ユニット内に配置され得るか、又は当該搾乳器内に収容することができる。
【0123】
他の実施態様において、上記真空ユニットは前記膜体と該膜体を機械的に変形させる手段とにより形成される。該膜体は往復動エレメントとして働く。例えば、モータにより往復動的に移動可能なロッドを、変形可能な膜体に取り付けることができる。このような構成によれば、上記膜体の中立状態からの変形は上記真空通路に圧力低下を発生させる。次いで、該膜体の中立状態への戻りは、上記真空経路における圧力低下を解除する。この実施態様において、上記真空経路は、当該搾乳器システムが組み立てられ、ユーザの乳房が漏斗内に収容された場合、該膜体とユーザの乳房との間に形成されることが理解される。しかしながら、例えば上記モータの故障により上記膜体が中立状態に戻らない場合、該膜体は上記真空通路における圧力低下を解除しないであろう。即ち、当該真空ユニットは上記真空経路における圧力低下を解除することに失敗するであろう。このような事態が起きた場合、上記真空経路に設けられた漏れ開口が、該真空経路における圧力低下の制御された解除を可能にする。上記膜体は、前記実施態様において説明した膜体とすることができるか、又は別途配置される他の膜体とすることができる。
【0124】
上記2つの実施態様においては、上記圧力低下は中立位置に戻るピストン又は膜体により解除されるので、圧力解放弁は必要とされないことが理解される。
【0125】
尚、“有する”なる用語は他の構成要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではないことが分かる。また、単一のプロセッサは、請求項に記載された幾つかの品目の機能を満たすことができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も、当該請求項の範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0126】
本出願において請求項はフィーチャの特定の組み合わせに対して記載されているが、本発明の開示の範囲は、現在何れかの請求項に記載されているものと同一の発明に関するか否かに拘わらず、且つ、親発明と同一の技術的問題の何れか又は全てを軽減しているか否かに拘わらず、ここに明示的若しくは暗示的に開示された如何なる新規なフィーチャ又はフィーチャの如何なる新規な組み合わせ、又はこれらの如何なる一般化されたものをも含むと理解されるべきである。また、出願人は、本出願の又は本出願から派生する何れかの他の出願の審査等の間において新たな請求項が上記のようなフィーチャ及び/又はフィーチャの組み合わせに対して記載されるかも知れないことを付記しておく。