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特許6207621高成形性超高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207621
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】高成形性超高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20170925BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20170925BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C22C38/00 301U
   C22C38/06
   C21D9/46 F
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-542138(P2015-542138)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公表番号】特表2016-503458(P2016-503458A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】CN2013071711
(87)【国際公開番号】WO2014075404
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】201210461631.4
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鐘 勇
(72)【発明者】
【氏名】王 利
(72)【発明者】
【氏名】馮 偉 駿
(72)【発明者】
【氏名】熊 偉
(72)【発明者】
【氏名】職 建 軍
(72)【発明者】
【氏名】胡 広 魁
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034716(JP,A)
【文献】 特開2006−283130(JP,A)
【文献】 特開平01−184226(JP,A)
【文献】 特開2010−235988(JP,A)
【文献】 特開2012−012642(JP,A)
【文献】 特開2012−041611(JP,A)
【文献】 特開2011−184758(JP,A)
【文献】 特開昭64−079322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分の重量百分率が、
C:0.15〜0.25wt%、
Si:1.40〜1.80wt%、
Mn:1.50〜3.00wt%、
P≦0.015wt%、
S≦0.012wt%、
Al:0.03〜0.06wt%、
N≦0.008wt%であり、
残部がFe及び不可避的不純物であり;
鋼板の室温組織が、フェライト10%〜30%+マルテンサイト60〜80%+残留オーステナイト5〜15%であり、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%である高成形性超高強度鋼板。
【請求項2】
前記鋼板成分において、C含有量が重量百分率で0.18〜0.22%である、請求項1に記載の高成形性超高強度鋼板。
【請求項3】
前記鋼板成分において、Mn含有量が重量百分率で1.8〜2.3%である、請求項1に記載の高成形性超高強度鋼板。
【請求項4】
前記鋼板成分において、重量百分率でP≦0.012%、S≦0.008%である、請求項1に記載の高成形性超高強度鋼板。
【請求項5】
下記の工程を含む、請求項1〜のいずれに記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
1) 溶錬、鋳造
前記成分で溶錬し、ビレットを鋳造し;
2) ビレットを1170〜1230℃に加熱して保温し;
3) 熱間圧延
最終圧延温度が880±30℃で、巻取り温度が550〜650℃であり;
4) 酸洗、冷間圧延
冷間圧延の変形量が40〜60%であり、鋼帯を形成し;
5) 連続焼鈍
860〜920℃で焼鈍し、冷却速度3〜10℃/sで690〜750℃に徐冷して、材料にフェライトが得られるようにする。そして、冷却速度≧50℃/sで240〜320℃に急冷して、オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態する。そして、360〜460℃に再加熱し、100〜500s保温し、最後に室温に冷却する。最終的に、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%であり、成形性が優れ、低反発特性を有する超高強度冷間圧延鋼板が得られ、前記超高強度冷間圧延鋼板の室温組織は、フェライト10%〜30%+マルテンサイト60〜80%+残留オーステナイト5〜15%である。
【請求項6】
工程2)において、ビレットを1170〜1200℃に加熱することを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項7】
工程3)において、熱間圧延巻取り温度が550〜600℃であることを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項8】
工程5)において、焼鈍温度が860〜890℃であることを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項9】
工程5)において、焼鈍の後に、700〜730℃に徐冷することを特徴とする、請求項又はに記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項10】
工程5)において、280〜320℃に急冷することを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項11】
工程5)において、急冷の後に、390〜420℃に再加熱し、100〜300s保温することを特徴とする、請求項又は10に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項12】
860〜920℃で焼鈍する保温時間が80〜120sであることを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項13】
240〜320℃に急冷する際の冷却速度が50〜100℃/sであることを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【請求項14】
急冷した後に、360〜460℃に再加熱する際の速度が5〜10℃/sであることを特徴とする、請求項に記載の高成形性超高強度鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間圧延鋼板、特に高成形性超高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法に関するものであり、超高強度冷間圧延鋼板は、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%であり、優れた塑性、低反発特性を有する。
【背景技術】
【0002】
車は、重量が10%減少する毎に、燃料消費を5%〜8%節約できるとともに、COの温室効果ガス及びNO、SOなどの汚染物質の排出を相応的に低減できると推測される。中国が所有するブランドの乗用車の重量は、国外の同じレベルの車より約10%重く、商用車の重量の差が更に大きい。車用鋼板は、車体の主要原材料として、車体重量の約60〜70%を占める。従来の鋼板の代わりに、強度が590〜1500MPaであるレベルの高強度及び超高強度の鋼板を大量に使用するのは、車の「軽量化と省エネ、安全性の向上、及び製造コストの低減」を実現する最適な材料解決策であり、低炭素社会を築くのに意義が大きい。従って、鋼板強度の向上及び鋼板厚さの低減は、近年の鋼板の発展傾向になる。中には、相変強化を主とする先端的な高強度車用鋼の開発及び適用は、既に世界中の各大手鋼鉄会社が研究している主流課題になった。
【0003】
従来の超高強度鋼は、マルテンサイト、ベイナイトなどの高強度相構造によって高強度を実現できるが、それとともに塑性及び成形性能が明らかに低減される。マルテンサイト又はベイナイトの組織に一定量の残りのオーステナイトを導入するのは、高強度及び高塑性材料を実現する有効的な技術アプローチである。例えば、TRIP鋼は、フェライト、ベイナイト及び残りのオーステナイトからなり、その強度及び塑性のいずれも高いが、このような相構造はその強度の更なる向上を制限する。よって、ベイナイトの代わりに、マルテンサイトを主要な強化相とするのが重視されるようになった。
【0004】
中国特許CN102409235Aは、高強度冷間圧延変態誘起塑性鋼板及びその製造方法を公開した。当該鋼板の成分は、C:0.1%〜0.5%、Si:0.1%〜0.6%、Mn:0.5%〜2.5%、P:0.02%〜0.12%、S≦0.02%、Al:0.02%〜0.5%、N≦0.01%、Ni:0.4%〜0.6%、Cu:0.1%〜1.0%、残部がFeである。その加工方法は、(a)成分条件を満す溶鋼を熔練して、ビレットを鋳造する;(b)圧延:加熱温度が1100〜1250℃、保温時間が1〜4h、圧延開始温度が1100℃、圧延終了温度が750〜900℃、巻取り温度が<700℃、熱間圧延板厚が2〜4mm、冷間圧延累積圧下量が40%〜80%である;(c)連続焼鈍:焼鈍温度が700〜Ac3+50℃、保温時間が30〜360s、冷却速度が10〜150℃/s、時効温度が250〜600℃、時効時間が30〜1200sであり、更に冷却速度5〜100℃/sで室温に冷却する。当該発明の鋼板は、降伏強度が380〜1000MPa、引張り強度が680〜1280MPa、伸び率が15〜30%である。当該発明は、引張り強度1000MPaのレベルで約20%の伸び率を達成でき、優れた総合的な性能を持つものである。しかし、当該発明の鋼には、Cu、Niなどの合金元素を多量に添加する必要が有り、材料のコストを大幅に増加したので、コストの要求が極めて重要である車分野への適用が大きく制限される。
【0005】
日本特許JP2005−232493は、高強度及び高成形性能を有する冷間圧延鋼板の成分及びプロセスを公開した。その材料成分は、C:0.02〜0.25%,Si:0.02〜4.0%,Mn:0.15〜3.5%、残部がFeである。その材料の組織は、フェライトとマルテンサイトとの両相であり、そのうち、フェライトの含有量が30〜60%である。残りのオーステナイトの含有量が1.0%未満である。熱間圧延板の巻取り温度が500℃であり、冷間圧延の後に900〜950℃に加熱して、640℃に徐冷したのち、350℃に急速冷却し、最後に室温まで冷却する。上記プロセスによって、降伏強度が約850MPa、引張り強度が約1000MPa、伸び率が14%の鋼板が得られる。当該発明の鋼成分が簡単で、コストが安い。しかし、14%程度の伸び率は、車用高強度鋼の成形性にとってまだ不十分である。
【0006】
中国特許CN200510023375.0は、低炭素低ケイ素冷間圧延相変塑性鋼及びその製造方法を公開した。当該発明の低炭素低ケイ素冷間圧延相変塑性鋼は、その組成成分及び重量百分率が、C 0.1〜0.2%、Si 0.1〜0.5%、Mn 0.5〜2.0%、Al 0.5〜1.5%、V 0.05〜0.5%、及びS、P、Nが微量で、Feが残部である。処理された低炭素低ケイ素冷間圧延相変塑性鋼は、優れた塑性を有し、その引張り強度が650〜670MPaであり、伸び率が32.5〜34%である。当該発明は、引張り強度が低いので、車用超高強度鋼の性能要求を満たさなく、そして、一定量のCrを添加する必要が有り、コストの制御要求が非常に厳しい車用鋼として適切ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、高成形性超高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法を提供することであり、当該冷間圧延鋼板は、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980MPa以上、伸び率が17〜25%であり、優れた成形性及び低反発特性を有し、車の構造部品及び安全部品に適用できる。
【0008】
上記目的を達成できるために、本発明の技術方案は、以下のものである。
現在、高強度鋼に関する製造方法が多くあるが、これらの発明は、要求を満たす鋼板の強度及び成形性能を確保するために、多くの場合は、従来の炭素マンガン鋼の成分の基に、大量のCr、Nb、Bなどの合金元素を加入することにする。これは、鋼材の生産コストを増やすだけではなく、製品の製造可能性を低下させ、溶錬、連続鋳造などのプロセスの生産難度を増やす可能性もある。C、Si、Mnは、鋼鉄における最も有効的な、コストが低い強化元素である。従来の炭素マンガン鋼の基に、成分−プロセス−組織−性能の総合的な最適設計によって、従来の車用鋼板により良い総合的な性能を実現することは、極めて有利な車用高強度鋼板の解決方案である。
【0009】
本発明は、普通の炭素マンガン鋼成分設計を採用し、Si、Mnなどの合金元素が材料相変行為に対する影響規律を十分に利用して、最適化された焼入れ−分配技術によって材料の最終組織を細かく制御して、超高強度及び高塑性を合せ持つ優れた性能を達成し、性能が優れ、コストが低い超高強度鋼板製品が得られる。
【0010】
具体的に、本発明の高成形性超高強度冷間圧延鋼板は、その成分重量百分率が、C:0.15〜0.25%、Si:1.00〜2.00%、Mn:1.50〜3.00%、P≦0.015%、S≦0.012%、Al:0.03〜0.06%、N≦0.008%であり、残部がFe及び不可避的不純物である。鋼板の室温組織は、フェライト10%〜30%+マルテンサイト60〜80%+残りのオーステナイト5〜15%であり、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%である。
【0011】
前記鋼板成分において、C含有量が重量百分率で0.18〜0.22%であることが好ましい。
【0012】
前記鋼板成分において、Si含有量が重量百分率で1.4〜1.8%であることが好ましい。
【0013】
前記鋼板成分において、Mn含有量が重量百分率で1.8〜2.3%であることが好ましい。
【0014】
前記鋼板成分において、重量百分率でP≦0.012%、S≦0.008%であることが好ましい。
【0015】
本発明鋼の化学成分設計において、
C:鋼における最も基本的な強化元素であり、オーステナイトの安定化元素でもあり、オーステナイトにおいて、C含有量が高いと、残りのオーステナイトの分率及び材料性能の向上に有利である。しかし、C含有量が高すぎると、鋼材の溶接性能を劣化させる。よって、C含有量は、適切な範囲に制御する必要がある。
【0016】
Si:炭化物の形成を抑制する元素であり、Siは、炭化物への溶解度が極めて小さくて、炭化物の形成を有効的に抑制し、又は遅らせることができ、分配過程においてカーボンリッチなオーステナイトの形成に寄与し、残りのオーステナイトとして室温まで保留される。しかし、Si含有量が比較的に高いと、材料の高温塑性を低減し、溶錬、連続鋳造及び熱間圧延のプロセスに起こる欠陥の発生率を増大させる。よって、同様にSiの含有量を適当な範囲に制御する必要がある。
【0017】
Mn:オーステナイトを安定化させる元素である。Mnの存在は、マルテンサイトの変態温度Msを低下させ、残りのオーステナイトの含有量を増加させる。また、Mnは、固溶強化元素であり、鋼板強度の向上に寄与する。しかし、Mn含有量が高すぎると、鋼材の焼入れ性が高すぎることになり、材料組織の精密制御に有利ではない。
【0018】
P:Siの作用と類似し、主として固溶を強化し、炭化物の形成を抑制する作用、及び残りのオーステナイトの安定性を向上させる作用を発揮する。Pの添加は、溶接性能を明らかに劣化させ、材料の脆性を増加させる。本発明では、Pを不純物元素として、できるだけ低いレベルに制御する。
【0019】
S:不純物元素として、その含有量をできるだけ低いレベルに制御する。
Al:Siの作用と類似し、主として固溶を強化し、炭化物の形成を抑制する作用と、残りのオーステナイトの安定性を向上させる作用を発揮する。しかし、Alは、Siの強化効果より弱い。
【0020】
N:本発明では特に制御する必要がない元素である。Nが介在物の制御に対する不利影響を低減するために、溶錬の際にN含有量をできるだけ低いレベルに制御する。
【0021】
本発明の高成形性超高強度冷間圧延鋼板の製造方法は、下記の工程を含む。即ち、
1) 溶錬、鋳造
上記成分で溶錬し、ビレットを鋳造する。
【0022】
2) ビレットを1170〜1230℃に加熱して保温する。
3) 熱間圧延
最終圧延温度が880±30℃で、巻取り温度が550〜650℃である。
【0023】
4) 酸洗、冷間圧延
冷間圧延の変形量が40〜60%であり、鋼帯を形成する。
【0024】
5) 焼鈍
冷間圧延の変形量が40〜60%であり、860〜920℃で焼鈍し、冷却速度3〜10℃/sで690〜750℃に徐冷して、材料に一定比例のフェライトが得られるようにする。そして、冷却速度≧50℃/sで240〜320℃に急冷して、オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させる。そして、360〜460℃に再加熱し、100〜500s保温し、最後に室温に冷却する。最終的に、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%であり、成形性が優れ、低反発特性を有する超高強度冷間圧延鋼板が得られる。
【0025】
工程2)において、ビレットを1170〜1200℃に加熱することが好ましい。
工程3)において、熱間圧延巻取り温度が550〜600℃であることが好ましい。
【0026】
工程5)において、焼鈍温度が860〜890℃であることが好ましい。
工程5)において、放射加熱手段で還元性雰囲気下連続焼鈍を制御し、炉内のH含有量を10〜15%とすることが好ましい。
【0027】
工程5)において、700〜730℃に徐冷することが好ましい。
工程5)において、280〜320℃に急冷することが好ましい。
【0028】
工程5)において、急冷の後に、390〜420℃に再加熱し、180〜250s保温することが好ましい。
【0029】
工程5)において、860〜920℃で焼鈍する保温時間が80〜120sであることが好ましい。
【0030】
工程5)において、240〜320℃に急冷する際の冷却速度が50〜100℃/sであることが好ましい。
【0031】
工程5)において、急冷した後に、360〜460℃に再加熱する際の速度が5〜10℃/sであることが好ましい。
【0032】
本発明は、熱間圧延高温加熱炉で保温し、C及びNの化合物が十分に溶解することに寄与する。巻取りは、低い巻取り温度を採用し、細かい析出物を得ることに寄与する。
【0033】
通常の酸洗及び冷間圧延プロセスを採用する。焼鈍プロセスは、連続焼鈍を採用し、温度は、比較的に高い焼鈍温度を採用し、均質化のオーステナイト組織を形成して、鋼強度の向上に寄与する。その後に、一定量のフェライトが得られるように、冷却速度<10℃/sで690〜750℃に徐冷して、鋼の塑性の向上に寄与する。その後に、MとMの間にある温度に急冷して、オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態し、鋼強度の向上に寄与する。そして、360〜460℃に再加熱し、100〜300s保温して、炭素がマルテンサイトとオーステナイトとの中に再分配され、安定性が高いカーボンリッチなオーステナイトが形成され、最終組織に一定量の残りのオーステナイトが得られ、加工硬化能力及び成形性能の向上に寄与する。鋼板の最終組織は、フェライト+マルテンサイト+残りのオーステナイトからなる。高Si設計を採用したので、鋼に形成されたマルテンサイトが分配過程でほとんど分解しなく、最終に所要の組織形態を得ることを保証できる。
【0034】
本発明の鋼は上記のように処理された後、降伏強度600〜900MPa、引張り強度980〜1150MPa、伸び率17〜25%が得られる。また、分配した後に、マルテンサイトにおけるC含有量が低下するので、マルテンサイトの冷間変形際の擬弾性を低下させ、本発明の鋼の反発性を顕著に改善させた。
【0035】
本発明は、従来の技術と比べて、以下の効果がある。
中国特許CN201010291498.3は、高強度連続焼鈍冷間圧延変態誘起塑性鋼板を公開した。当該鋼板は、引張り強度1000MPaのレベルで約20%の伸び率を達成でき、優れた総合的な性能を持つものである。しかし、当該発明の鋼には、Cu、Ni、Crなどの合金元素を多量に添加する必要があり、材料のコストを大幅に増加したので、コストの要求が極めて重要である車分野への適用が大きく制限される。
【0036】
日本特許JP2005−232493は、高強度及び高成形性能を有する冷間圧延鋼板を公開した。当該鋼板の成分が簡単で、コストが安い。しかし、14%程度の伸び率は、車用高強度鋼の成形性にとってまだ不十分である。
【0037】
米国特許US6210496は、冷間圧延高強度高成形性鋼を公開した。当該発明は、引張り強度が低いので、車用超高強度鋼の性能要求を満たさなく、そして、一定量のCrを添加する必要が有り、コストの制御要求が非常に厳しい車用鋼として適切ではない。
【0038】
本発明の有益効果:
本発明は、適切な成分設計によって、通常の熱間圧延及び冷間圧延プロセスの条件下で、連続焼鈍によって超高強度冷間圧延鋼板を生産し、如何なる高価な合金元素の添加も必要としなく、Mn含有量を適切に向上するとともに、特有の連続焼鈍プロセスを組み合わせるだけで、強度を大幅に向上することができ、かつ、優れた塑性を保つことができる。そして、特別な生産装置を必要としなく、生産コストが低い。
【0039】
本発明の鋼は、溶錬、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、調質圧延を経て、車の安全構造部品に好適に適用でき、特に、形状が複雑で、成形性能に対する要求が高い車両構造部品及び安全部品、例えば、サイドドアビーム、バンパー及びBピラーなどの製造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の鋼で製造された車のBピラー(厚さ2.0mm)を示す。
図2】本発明の鋼と、商業用980MPaレベルの二相鋼(DP980)との反発特性の比較(厚さ:いずれも1.2mm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施例に基づいて本発明を更に説明する。
表1は、本発明鋼の実施例の化学成分を示した。溶錬、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍及び調質圧延を経て製品を得た。その焼鈍プロセス及び力学性能は表2のように示した。表2から分かるように、本発明は、適切なプロセス配合によって、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%である超高強度冷間圧延鋼板を得ることができる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
本発明鋼は、特に形状が複雑で、成形性能に高い要求がある車両構造部品及び安全部品、例えば、サイドドアビーム、バンパー及びBピラーなどの製造に適用できる。
【0045】
図1図2を参照して、図1は本発明鋼で製造された車のBピラー(厚さ2.0mm)である。図1から分かるように、本発明の鋼は優れた成形性能を有する。
【0046】
図2は本発明の鋼と、商業用980MPaレベルの二相鋼(DP980)との反発特性の比較(厚さ:いずれも1.2mm)である。図2から、同様な成形プロセスにおいて、本発明鋼の反発量はDP980より顕著に低下することが分かる。
図1
図2