【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、高成形性超高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法を提供することであり、当該冷間圧延鋼板は、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980MPa以上、伸び率が17〜25%であり、優れた成形性及び低反発特性を有し、車の構造部品及び安全部品に適用できる。
【0008】
上記目的を達成できるために、本発明の技術方案は、以下のものである。
現在、高強度鋼に関する製造方法が多くあるが、これらの発明は、要求を満たす鋼板の強度及び成形性能を確保するために、多くの場合は、従来の炭素マンガン鋼の成分の基に、大量のCr、Nb、Bなどの合金元素を加入することにする。これは、鋼材の生産コストを増やすだけではなく、製品の製造可能性を低下させ、溶錬、連続鋳造などのプロセスの生産難度を増やす可能性もある。C、Si、Mnは、鋼鉄における最も有効的な、コストが低い強化元素である。従来の炭素マンガン鋼の基に、成分−プロセス−組織−性能の総合的な最適設計によって、従来の車用鋼板により良い総合的な性能を実現することは、極めて有利な車用高強度鋼板の解決方案である。
【0009】
本発明は、普通の炭素マンガン鋼成分設計を採用し、Si、Mnなどの合金元素が材料相変行為に対する影響規律を十分に利用して、最適化された焼入れ−分配技術によって材料の最終組織を細かく制御して、超高強度及び高塑性を合せ持つ優れた性能を達成し、性能が優れ、コストが低い超高強度鋼板製品が得られる。
【0010】
具体的に、本発明の高成形性超高強度冷間圧延鋼板は、その成分重量百分率が、C:0.15〜0.25%、Si:1.00〜2.00%、Mn:1.50〜3.00%、P≦0.015%、S≦0.012%、Al:0.03〜0.06%、N≦0.008%であり、残部がFe及び不可避的不純物である。鋼板の室温組織は、フェライト10%〜30%+マルテンサイト60〜80%+残りのオーステナイト5〜15%であり、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%である。
【0011】
前記鋼板成分において、C含有量が重量百分率で0.18〜0.22%であることが好ましい。
【0012】
前記鋼板成分において、Si含有量が重量百分率で1.4〜1.8%であることが好ましい。
【0013】
前記鋼板成分において、Mn含有量が重量百分率で1.8〜2.3%であることが好ましい。
【0014】
前記鋼板成分において、重量百分率でP≦0.012%、S≦0.008%であることが好ましい。
【0015】
本発明鋼の化学成分設計において、
C:鋼における最も基本的な強化元素であり、オーステナイトの安定化元素でもあり、オーステナイトにおいて、C含有量が高いと、残りのオーステナイトの分率及び材料性能の向上に有利である。しかし、C含有量が高すぎると、鋼材の溶接性能を劣化させる。よって、C含有量は、適切な範囲に制御する必要がある。
【0016】
Si:炭化物の形成を抑制する元素であり、Siは、炭化物への溶解度が極めて小さくて、炭化物の形成を有効的に抑制し、又は遅らせることができ、分配過程においてカーボンリッチなオーステナイトの形成に寄与し、残りのオーステナイトとして室温まで保留される。しかし、Si含有量が比較的に高いと、材料の高温塑性を低減し、溶錬、連続鋳造及び熱間圧延のプロセスに起こる欠陥の発生率を増大させる。よって、同様にSiの含有量を適当な範囲に制御する必要がある。
【0017】
Mn:オーステナイトを安定化させる元素である。Mnの存在は、マルテンサイトの変態温度Msを低下させ、残りのオーステナイトの含有量を増加させる。また、Mnは、固溶強化元素であり、鋼板強度の向上に寄与する。しかし、Mn含有量が高すぎると、鋼材の焼入れ性が高すぎることになり、材料組織の精密制御に有利ではない。
【0018】
P:Siの作用と類似し、主として固溶を強化し、炭化物の形成を抑制する作用、及び残りのオーステナイトの安定性を向上させる作用を発揮する。Pの添加は、溶接性能を明らかに劣化させ、材料の脆性を増加させる。本発明では、Pを不純物元素として、できるだけ低いレベルに制御する。
【0019】
S:不純物元素として、その含有量をできるだけ低いレベルに制御する。
Al:Siの作用と類似し、主として固溶を強化し、炭化物の形成を抑制する作用と、残りのオーステナイトの安定性を向上させる作用を発揮する。しかし、Alは、Siの強化効果より弱い。
【0020】
N:本発明では特に制御する必要がない元素である。Nが介在物の制御に対する不利影響を低減するために、溶錬の際にN含有量をできるだけ低いレベルに制御する。
【0021】
本発明の高成形性超高強度冷間圧延鋼板の製造方法は、下記の工程を含む。即ち、
1) 溶錬、鋳造
上記成分で溶錬し、ビレットを鋳造する。
【0022】
2) ビレットを1170〜1230℃に加熱して保温する。
3) 熱間圧延
最終圧延温度が880±30℃で、巻取り温度が550〜650℃である。
【0023】
4) 酸洗、冷間圧延
冷間圧延の変形量が40〜60%であり、鋼帯を形成する。
【0024】
5) 焼鈍
冷間圧延の変形量が40〜60%であり、860〜920℃で焼鈍し、冷却速度3〜10℃/sで690〜750℃に徐冷して、材料に一定比例のフェライトが得られるようにする。そして、冷却速度≧50℃/sで240〜320℃に急冷して、オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態させる。そして、360〜460℃に再加熱し、100〜500s保温し、最後に室温に冷却する。最終的に、降伏強度が600〜900MPa、引張り強度が980〜1150MPa、伸び率が17〜25%であり、成形性が優れ、低反発特性を有する超高強度冷間圧延鋼板が得られる。
【0025】
工程2)において、ビレットを1170〜1200℃に加熱することが好ましい。
工程3)において、熱間圧延巻取り温度が550〜600℃であることが好ましい。
【0026】
工程5)において、焼鈍温度が860〜890℃であることが好ましい。
工程5)において、放射加熱手段で還元性雰囲気下連続焼鈍を制御し、炉内のH含有量を10〜15%とすることが好ましい。
【0027】
工程5)において、700〜730℃に徐冷することが好ましい。
工程5)において、280〜320℃に急冷することが好ましい。
【0028】
工程5)において、急冷の後に、390〜420℃に再加熱し、180〜250s保温することが好ましい。
【0029】
工程5)において、860〜920℃で焼鈍する保温時間が80〜120sであることが好ましい。
【0030】
工程5)において、240〜320℃に急冷する際の冷却速度が50〜100℃/sであることが好ましい。
【0031】
工程5)において、急冷した後に、360〜460℃に再加熱する際の速度が5〜10℃/sであることが好ましい。
【0032】
本発明は、熱間圧延高温加熱炉で保温し、C及びNの化合物が十分に溶解することに寄与する。巻取りは、低い巻取り温度を採用し、細かい析出物を得ることに寄与する。
【0033】
通常の酸洗及び冷間圧延プロセスを採用する。焼鈍プロセスは、連続焼鈍を採用し、温度は、比較的に高い焼鈍温度を採用し、均質化のオーステナイト組織を形成して、鋼強度の向上に寄与する。その後に、一定量のフェライトが得られるように、冷却速度<10℃/sで690〜750℃に徐冷して、鋼の塑性の向上に寄与する。その後に、M
sとM
fの間にある温度に急冷して、オーステナイトの一部をマルテンサイトに変態し、鋼強度の向上に寄与する。そして、360〜460℃に再加熱し、100〜300s保温して、炭素がマルテンサイトとオーステナイトとの中に再分配され、安定性が高いカーボンリッチなオーステナイトが形成され、最終組織に一定量の残りのオーステナイトが得られ、加工硬化能力及び成形性能の向上に寄与する。鋼板の最終組織は、フェライト+マルテンサイト+残りのオーステナイトからなる。高Si設計を採用したので、鋼に形成されたマルテンサイトが分配過程でほとんど分解しなく、最終に所要の組織形態を得ることを保証できる。
【0034】
本発明の鋼は上記のように処理された後、降伏強度600〜900MPa、引張り強度980〜1150MPa、伸び率17〜25%が得られる。また、分配した後に、マルテンサイトにおけるC含有量が低下するので、マルテンサイトの冷間変形際の擬弾性を低下させ、本発明の鋼の反発性を顕著に改善させた。
【0035】
本発明は、従来の技術と比べて、以下の効果がある。
中国特許CN201010291498.3は、高強度連続焼鈍冷間圧延変態誘起塑性鋼板を公開した。当該鋼板は、引張り強度1000MPaのレベルで約20%の伸び率を達成でき、優れた総合的な性能を持つものである。しかし、当該発明の鋼には、Cu、Ni、Crなどの合金元素を多量に添加する必要があり、材料のコストを大幅に増加したので、コストの要求が極めて重要である車分野への適用が大きく制限される。
【0036】
日本特許JP2005−232493は、高強度及び高成形性能を有する冷間圧延鋼板を公開した。当該鋼板の成分が簡単で、コストが安い。しかし、14%程度の伸び率は、車用高強度鋼の成形性にとってまだ不十分である。
【0037】
米国特許US6210496は、冷間圧延高強度高成形性鋼を公開した。当該発明は、引張り強度が低いので、車用超高強度鋼の性能要求を満たさなく、そして、一定量のCrを添加する必要が有り、コストの制御要求が非常に厳しい車用鋼として適切ではない。
【0038】
本発明の有益効果:
本発明は、適切な成分設計によって、通常の熱間圧延及び冷間圧延プロセスの条件下で、連続焼鈍によって超高強度冷間圧延鋼板を生産し、如何なる高価な合金元素の添加も必要としなく、Mn含有量を適切に向上するとともに、特有の連続焼鈍プロセスを組み合わせるだけで、強度を大幅に向上することができ、かつ、優れた塑性を保つことができる。そして、特別な生産装置を必要としなく、生産コストが低い。
【0039】
本発明の鋼は、溶錬、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、調質圧延を経て、車の安全構造部品に好適に適用でき、特に、形状が複雑で、成形性能に対する要求が高い車両構造部品及び安全部品、例えば、サイドドアビーム、バンパー及びBピラーなどの製造に適用できる。