特許第6207626号(P6207626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6207626自動車において表示される当該自動車の総走行距離をチェックするための方法および装置
<>
  • 特許6207626-自動車において表示される当該自動車の総走行距離をチェックするための方法および装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207626
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】自動車において表示される当該自動車の総走行距離をチェックするための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20170925BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60R16/02 640K
   F02D29/02 L
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-546929(P2015-546929)
(86)(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公表番号】特表2016-503738(P2016-503738A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2013074981
(87)【国際公開番号】WO2014090585
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】102012222834.9
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ デムル
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ レニンガー
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01722199(EP,A1)
【文献】 特開2003−065804(JP,A)
【文献】 特開2006−047002(JP,A)
【文献】 米国特許第05924057(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車において表示される当該自動車の総走行距離をチェックするための方法であって、
前記方法においては、前記自動車の動作中に当該自動車が走行した走行距離を検出し、当該検出した走行距離と、前記自動車が過去に走行した走行距離として検出した走行距離とを加算して、当該自動車の総走行距離が得られる、方法において、
・ 前記自動車(1)の制御装置(14)のコンポーネント(12)において、所定の期間にわたって生じる前記コンポーネント(12)の非可逆変化を検出し、
・ 前記コンポーネント(12)の当該変化の大きさおよび/またはタイプと、前記所定の期間に関連する前記自動車(1)の比較走行距離とを対応付け、
・ 前記所定の期間中に前記自動車(1)が走行した走行距離として検出した走行距離を、前記比較走行距離の比較において対比し、
・ 当該比較から得られる比較結果が、前記自動車(1)のユーザ(6)によって呼び出し可能であるかまたは当該ユーザ(6)に自動的に通知さ
前記所定の期間は、前記自動車(1)の総走行時間である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
・ 前記自動車(1)の少なくとも2つの制御装置(14,24)の1つずつのコンポーネント(12,26)において、前記所定の期間にわたって生じる各前記コンポーネント(12,26)の非可逆変化を検出し、
・ 各前記コンポーネント(12,26)の変化の前記大きさおよび/またはタイプを、前記所定の期間に関連する前記自動車(1)の1つずつの比較走行距離に対応付け、
・ 前記所定の期間中に前記自動車(1)が走行した走行距離として検出した走行距離を、少なくとも2つの前記比較走行距離との比較において対比する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記比較結果から、前記所定の期間中に走行した走行距離として検出した前記走行距離と、前記1つまたは複数の比較走行距離とが一致するかまたは一致しないかが決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において
所定の期間中に走行した走行距離として検出された前記自動車(1)の前記走行距離は、当該自動車(1)の前記総走行距離である、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、
前記制御装置(14,24)の前記コンポーネント(12,26)の前記非可逆変化には、前記コンポーネント(12,26)の老化に起因する非可逆的な化学的変化および/また物理的変化が含まれる、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
前記制御装置(14,24)の前記コンポーネント(12,26)の前記非可逆変化は、前記制御装置(14,24)の内部レイヤに配置された前記コンポーネント(12,26)のコンポーネント構造の非可逆的な破壊を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記非可逆に破壊されるコンポーネント構造には、プリント基板の導体路が含まれる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、
前記コンポーネント構造は、前記自動車(1)の走行距離および/または動作時間に依存してそれぞれ非可逆的に破壊される複数の構造要素を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法において、
前記非可逆的に破壊されるコンポーネント構造に、集積回路の少なくとも1つの構造要素が含まれている、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法において、
前記制御装置(14,24)の前記コンポーネント(12,26)の前記非可逆変化は、前記コンポーネント(12,26)の電気的なパラメタの非可逆変化を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記コンポーネント(12,26)は、コンデンサであり、
前記パラメタは、前記コンデンサの容量であり、
前記電気的なパラメタの前記変化には、前記コンデンサの容量損失が含まれる、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、
前記コンポーネント(12,26)は、コンデンサであり、
前記パラメタは、前記コンデンサの等価直列抵抗であり、
前記電気的なパラメタの前記変化には、前記等価直列抵抗の老化に依存する変化が含まれている、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法において、
前記コンポーネント(12,26)において検出される当該コンポーネント(12,26)の非可逆変化は、はんだ接合箇所の構造変化を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法において、
前記コンポーネント(12,26)において検出される当該コンポーネント(12,26)の非可逆変化は、金属層の酸化を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
自動車において表示される当該自動車の総走行距離をチェックするための装置であって、
当該装置では、前記自動車の動作中に当該自動車が走行した走行距離を検出し、当該検出した走行距離と、前記自動車が過去に走行した走行距離として検出した走行距離とを加算して、当該自動車の総走行距離が得られる、装置において、
・ 前記自動車(1)の制御装置(14)のコンポーネント(12)において、所定の期間にわたって生じる前記コンポーネント(12)の非可逆変化を検出し、
・ 前記コンポーネント(12)の当該変化の大きさおよび/またはタイプと、前記所定の期間に関連する前記自動車(1)の比較走行距離とを対応付け、
・ 前記所定の期間中に前記自動車(1)が走行した走行距離として検出した走行距離を、前記比較走行距離の比較において対比し、
・ 当該比較から得られる比較結果が、前記自動車(1)のユーザ(6)によって呼び出し可能であるかまたは当該ユーザ(6)に自動的に通知され、
前記所定の期間は、前記自動車(1)の総走行時間である、
ことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、
・ 前記自動車(1)の少なくとも2つの制御装置(14,24)の1つずつのコンポーネント(12,26)において、前記所定の期間にわたって生じる各前記コンポーネント(12,26)の非可逆変化を検出し、
・ 各前記コンポーネント(12,26)の変化の前記大きさおよび/またはタイプを、前記所定の期間に関連する前記自動車(1)の1つずつの比較走行距離に対応付け、
・ 前記所定の期間中に前記自動車(1)が走行した走行距離として検出した走行距離を、少なくとも2つの前記比較走行距離との比較において対比する、
ことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の装置において、
前記比較結果から、前記所定の期間中に走行した走行距離として検出した前記走行距離と、前記1つまたは複数の比較走行距離とが一致するかまたは一致しないかが決定される、
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項15から17までのいずれか1項に記載の装置において
所定の期間中に走行した走行距離として検出された前記自動車(1)の前記走行距離は、当該自動車(1)の前記総走行距離である、
ことを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15から18までのいずれか1項に記載の装置において、
前記制御装置(14,24)の前記コンポーネント(12,26)の前記非可逆変化には、前記コンポーネント(12,26)の老化に起因する非可逆的な化学的変化および/また物理的変化が含まれる、
ことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項15から19までのいずれか1項に記載の装置において、
前記制御装置(14,24)の前記コンポーネント(12,26)の前記非可逆変化は、前記制御装置(14,24)の内部レイヤに配置された前記コンポーネント(12,26)のコンポーネント構造の非可逆的な破壊を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、
前記コンポーネント構造は、前記自動車(1)の走行距離および/または動作時間に依存してそれぞれ非可逆的に破壊される複数の構造要素を有する、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車において表示されるこの自動車の総走行距離をチェックするための方法に関しており、ここではこの自動車の動作中にこの自動車が走行した走行距離が検出され、この検出した走行距離と、過去にこの自動車の走行した走行距離として検出したこの自動車の走行距離とを加算されてこの自動車の総走行距離になる。
【0002】
総走行距離を上記のように求めて表示することは自動車において広く知られている。このために自動車には一般的に、例えば速度表示装置の領域に配置されかつ自動車のユーザに総走行距離を表示する距離表示装置を有する距離カウンタが設けられている。一般的には自動車が走行した距離は、この自動車の走行距離とも称される。所定の時点における走行した距離の総計は、この時点におけるこの自動車の総走行距離である。
【0003】
一般的に自動車の経済的価値と、この自動車が全体として走行した距離との間には関係があるため、走行距離装置によって表示されるこの自動車の総走行距離と、実際にこの自動車が全体として走行した距離とが等しいことは重要である。走行距離装置によって表示される自動車の総走行距離は、自動車の積算走行距離とも称される。一般的に総走行距離が長くなるほど、この自動車の経済的価値は低くなる。自動車において、詐欺を行うことを目論んで、自動車の表示される総走行距離を不正に操作して、この自動車が実際に走行した全体的な距離よりも、表示される総走行距離が少なくなるようにする試みがたびたびなされることは知られている。
【0004】
車両の積算走行距離の不正操作が行われる可能性を制限するため、EP 1 722 199 A1からは1つの方法が公知であり、この方法によれば、エンジンブロック内で内燃機関の総走行距離が求められて記録される。ここではこの内燃機関の総動作時間の記録と同時にエンジン摩耗の算出ができるようにしている。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法を提供して、この方法により、表示される総走行距離が、この自動車が実際に走行した総走行距離に等しいか否かについての情報が簡単に得られるようにすることである。
【0006】
この課題は、本発明により、自動車の制御装置のコンポーネントにおいて、所定の期間にわたって生じるこのコンポーネントの非可逆変化を検出し、このコンポーネントのこの変化の大きさおよび/またはタイプと、上記の期間に関連する自動車の比較走行距離とを対応付け、上記の期間中に上記の車両が走行した走行距離として検出された走行距離を、上記の比較走行距離の比較において対比し、この比較から得られる比較結果が、上記の自動車のユーザによって呼び出し可能あるかまたはこのユーザに自動的に通知されるようにすることによって解決される。
【0007】
自動車の動作中にこの自動車が走行した走行距離は、不正操作がなければ、連続して、すなわちこの自動車の動作中に中断することなく検出され、検出されたこの走行距離は、不正操作がなければ、連続して、すなわちこの自動車の動作中に中断することなく、この自動車の総走行距離に加算される。この総走行距離は有利には、自動車の走行距離装置を用いて表示される。この表示は有利には視覚的に行われる。
【0008】
このようにして得られかつ表示される総走行距離の考えられ得る不正操作は、例えば、つぎのようにして行われ得る。すなわち、総走行距離の値が、例えば外部から、例えば自動車の診断インタフェースを介し、悪意のある電子式な介入によって小さくされることによって行なわれ得る。この場合にはこれによって小さくされた総走行距離に対する値が表示されることになる。表示されるこの総走行距離はもはや、この自動車が実際に全体として走行した走行距離ではなく、実際に全体として走行した走行距離は、上記の表示される総走行距離よりも長くなる。本発明は有利にもこのような不正操作を高い信頼性で識別することを可能にするのである。
【0009】
自動車の総走行距離の別のタイプの不正操作は、自動車が走行した走行距離を検出するのに使用する信号を不正操作して、走行した走行距離に対して小さすぎる値を検出するかまたは例えば一時的には値をまったく検出しないようにすることによって行われ得る。これにより、自動車が実際に走行した上記の総走行距離よりも小さすぎる総走行距離が表示されることになる。本発明は有利にもこのような不正操作も高い信頼性で識別することを可能にする。
【0010】
本発明による方法において極めて有利であるのは、基本的に、上記の非可逆変化を検出する上記の制御装置として、自動車の任意の制御装置を選択できることである。これによって有利にも、コンポーネントにおける上記の非可逆変化の検出を最も簡単かつコスト的に有利に実行することのできる制御装置を選択することができる。有利にはこの制御装置は、実際の走行距離検出および総走行距離表示には関与しない。
【0011】
本発明では、所定の期間にわたって生じる制御装置のコンポーネントの変化を検出する。したがって時間に依存する非可逆変化が検出され、これにより、本発明による方法の別のステップに有利に利用される比較走行距離との対応付けが殊に容易に可能になる。この比較走行距離との対応付けは、例えば、記憶装置に格納されているテーブルによって行うことができ、このテーブルには、所定の期間に対して1つずつの所定の、対応する比較走行距離が、例えば自動車のタイプに対して前もって経験的に求めた比較走行距離が含まれている。しかしながら、例えば、比較走行距離と期間とを対応付けるための、記憶装置に格納されているテーブルを使用することも考えられ、このテーブルは、自動車の実際の平均速度に基づいて動的に作成される。
【0012】
上記の期間中に自動車が走行した走行距離として検出された走行距離と、比較走行距離との比較は有利には比較器によって行われる。この比較器には有利には、テーブルが格納された上記の記憶装置が含まれている。
【0013】
例えば、非可逆変化が検出されるコンポーネントを有する上記の制御装置には上記の比較器を含むことができる。しかしながらこの比較器は、本発明による方法において非可逆変化が検出されるコンポーネントを有しないような、自動車の制御装置の構成部分とすることも可能である。上記の比較器が自動車の外部に配置されており、例えば移動無線インタフェースとすることも可能な診断インタフェースを介して自動車に接続されることを考えられる。この場合にこの比較器は、例えば、工場の診断テスタの構成部分または適当な比較器アプリケーションソフトウェアが実装されている移動無線装置の構成部分とすることが可能である。
【0014】
本発明では、上記の比較走行距離と、走行した走行距離として検出された走行距離との比較対比が行われる。上記のコンポーネントの非可逆変化が検出される上記の期間が、自動車の年齢または少なくとも自動車の総動作持続時間である場合、この期間中に走行した走行距離として検出される走行距離は、この自動車の総走行距離である。
【0015】
上記のコンポーネントの非可逆変化を検出するための参照値として、例えば、自動車の初期始動開始またはスタートの時点におけるこのコンポーネントの状態を使用することができる。一般的には上記の参照値は、非可逆変化を検出する期間の開始時における、非可逆変化が検出されるコンポーネントの状態とすることが可能である。
【0016】
本発明において殊に有利であるのは、例えば自動車のドライバまたは例えばこの自動車の購入希望者であり得る自動車のユーザが、極めて簡単に不正操作についての情報を得られることである。なぜならばこのユーザは直接、上記の比較結果を受け取り、しかも例えば対応する操作キーの操作による呼び出しに応じてもしくは例えば自動車のオンボート診断インタフェースを介する比較結果の読み出しにより、または、例えば、視覚的および/または音響的および/または触覚による自動車における表示により、例えば自動車のスタート時に自動的に上記の比較結果を受け取るからである。自動車の無線通信インタフェースを介して上記の比較結果を呼び出すことも考えられ、この無線通信インタフェースを介し、例えば移動無線装置と自動車とを接続して上記の比較結果を移動無線装置に表示する。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、上記の自動車の少なくとも2つの制御装置の1つずつのコンポーネントにおいて、上記の期間にわたって生じる各コンポーネントの非可逆変化を検出し、各コンポーネントの変化の大きさおよび/またはタイプを、この期間に関連する自動車の1つずつの比較走行距離に対応付け、上記の期間中に上記の自動車が走行した走行距離として検出した走行距離を、少なくとも2つの比較走行距離との比較において対比する。したがってこの実施形態により、上記の比較結果は、走行した走行距離として検出された走行距離と、少なくとも2つの比較走行距離とを比較において対比することから得られるのである。これにより、表示される総走行距離が不正操作される可能性がさらに低くなり、本発明による方法の信頼性がさらに高まる。なぜならば1つの不正操作には少なくとも2つの制御装置が関与することになり、これらの2つの制御装置がさらに、潜在的な不正操作者に既知になっていなければならないからである。
【0018】
本発明の有利な発展形態にしたがい、上記の比較結果が、上記の期間中に走行した走行距離として検出された走行距離と、上記の1つまたは複数の比較走行距離とが一致するまたか一致しないを決める質的な情報だけから構成される場合、ユーザは不正操作が行われたか否かを殊に容易に識別できる。一致しないことが意味するのは、不正操作が行われたことを示し、ユーザは、例えば、専用工場に相談して別のチェックまたは場合によってより詳細なチェックをさせることが可能である。一致しないのは有利には、上記の期間中に走行した走行距離として検出された走行距離が、上記の比較走行距離または上記の複数の比較走行距離のうちの1つから、20%より大きく、殊に30%よりも大きく偏差している場合である。
【0019】
上記の制御装置のコンポーネントにおける上記の非可逆変化が検出される上記の期間は、基本的に任意に選択可能である。例えば、レンタル車両について関心が持たれるのは、不正操作を時間的に狭く限定できるようにするため、期間として1日または数日を選択することである。しかしながらこの方法を殊にわかりやすくため、また結果を簡単に証拠立てるため、例えば自動車を購入する際に有利であるのは、本発明の別の発展形態にしたがい、上記の期間が少なくとも自動車の総動作持続時間であり、かつ、この期間中に走行した走行距離として検出される自動車の走行距離がこの自動車の総走行距離とする場合である。自動車の総動作持続時間は、自動車の個々の動作時間の総和を含む期間である。制御装置のコンポーネントにおいて非可逆変化が検出される上記の期間が車両の年齢である場合には、上記の方法はより簡単になり、これによって個々の動作時間の繁雑な検出を行って合算する必要はない。自動車は基本的につねに動作状態にあるわけではないため、自動車の年齢は一般的にこの自動車の総動作持続時間よりも格段に長い期間であり、自動車の総動作持続時間は、自動車の年齢の部分集合である。
【0020】
基本的に上記の制御装置のコンポーネントにおいて検出すべき非可逆変化は任意のタイプのものとすることが可能である。しかしながら制御装置のコンポーネントにおける非可逆変化の容易かつ高い信頼性での検出は有利にはつぎのようにして行うことができる。すなわち、本発明の別の発展形態にしたがい、上記の制御装置のコンポーネントの非可逆変化に、コンポーネントの劣化に起因する非可逆的な化学的変化および/または物理的変化が含まれてることによって行うことができるのである。
【0021】
上記のコンポーネントの非可逆変化の殊に一意的な検出は有利にはつぎのようにして行うことができる。すなわち、本発明の別の発展形態にしたがい、上記の制御装置のコンポーネントの非可逆変化が、この制御装置の内部レイヤに配置されたこのコンポーネントのコンポーネント構造の非可逆的な破壊を有する場合に行うことができるのである。コンポーネント構造のこの内部レイヤにより、第1には、例えば破壊されたコンポーネント構造を復旧することによる考えられ得る不正操作が格段に困難になり、第2には、これにより、例えば上記の制御装置を自動車に組み込む際のコンポーネント構造の意図しない損傷も予防される。殊に上記のコンポーネント構造は、制御装置のコンポーネントの内部レイヤにも配置することができる。上記の非可逆変化の検出は、例えば上記のコンポーネント構造の電圧状態を測定することによって簡単に行うことができる。
【0022】
本発明の有利な発展形態にしたがい、上記の非可逆的に破壊されるコンポーネント構造がプリント基板の導体路を含む場合、本発明の方法は殊に簡単かつコスト的に構成することができる。
【0023】
本発明の別の有利な発展形態によれば、上記のコンポーネント構造は、自動車の走行距離および/または動作時間に依存してそれぞれ非可逆的に破壊される複数の構造要素を有する。これにより、簡単に上記のチェックの良好な時間的分解能を得ることができる。有利には上記の複数の構造要素は複数の導体路とすることが可能である。1つの実施例は、上記の制御装置の内部レイヤにおける導体路の非可逆的な破壊とすることが可能であり、例えば10,000kmであるそれぞれの所定の走行距離の後、電流を入力することにより、別の導体路を溶融させる。例えば30個のこのような導体路が設けられている場合には0kmと300,000kmとの間の自動車の実際総走行距離を10,000kmの精度で推定することができる。これらの導体路の破壊は、同じ大きさの複数の走行距離セクションで行う必要はなく、比較的に小さい複数の走行距離セクションで開始し、1つずつの破壊が行われるこれらの走行距離セクションをあとでより大きくすることも考えられる。これにより、自動車の、時間と共に小さくなる値の減少を、すなわち降下する値減少曲線を、はじめのうちは高い分解能で表すことができる。さらに上記の導体路は互いに直ぐに接近させて配置する必要はなく、例えば変化が検出されるコンポーネントの種々異なる箇所に配置することも可能である。このコンポーネントは例えばプリント基板とすることが可能である。
【0024】
殊に簡単かつコスト的に有利であるのは、本発明の別の有利な実施形態にしたがい、上記の非可逆的に破壊されるコンポーネント構造に、集積回路の少なくとも1つの構造要素が含まれていることである。ここでこの電気的な集積回路の内部構造は、この構造要素が時間に依存してまたは自動車の動作中に検出される走行距離に依存して破壊されるように構成される。有利にはつぎつぎに破壊される複数のこのような構造要素が設けられる。
【0025】
本発明の別の有利な発展形態に相応して、上記の制御装置のコンポーネントの非可逆変化は、電気的なパラメタの、すなわちこのコンポーネントの電気的な特性量の非可逆変化を有する。
【0026】
殊に信頼性が高くかつ有利な方法は、本発明の有利な発展形態にしたがい、上記のコンポーネントがコンデンサであり、殊に電解コンデンサであり、上記のパラメタがこのコンデンサの容量であり、上記の電気的なパラメタの変化にこのコンデンサの容量損失が含まれることによって得られる。時間にわたって生じる容量損失は、このコンデンサの年齢に対する尺度である。このコンデンサの容量は、有利にもこのコンデンサを有する制御装置において簡単に測定することができる。
【0027】
さらに、殊に高い信頼性かつ有利な方法は、本発明の別の有利な発展形態にしたがい、上記のコンポーネントがコンデンサであり、上記のパラメタがこのコンデンサの等価直列抵抗、略してESR(Equivalent Series Resistance)であり、上記の電気的なパラメタの変化に、この等価直列抵抗の老化に依存する変化が含まれることによって得ることができる。
【0028】
本発明の別の有利な発展形態によれば、上記のコンポーネントの、このコンポーネントにおいて検出される非可逆変化は、はんだ接合箇所の構造変化を有する。これにより、不正操作が殊に困難になる。はんだ接合箇所の構造変化は、例えばこのはんだ接合箇所の粒界における変化である。
【0029】
不正操作の可能性は有利には、本発明の別の発展形態にしたがい、上記のコンポーネントにおいて検出されるこのコンポーネントの非可逆変化が、金属層の酸化を有することによっても殊に困難になる。
【0030】
本発明の実施例を概略図面によって示し、以下で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】制御装置および走行距離表示装置を有する自動車の概略図である。
【0032】
ただ1つの図には、自動車1に表示される自動車1の総走行距離をチェックするための方法が略図で示されている。
【0033】
自動車1が走行した走行距離は、自動車1の動作中に距離測定装置2によって検出される。検出した走行距離は、距離測定装置2の距離カウンタ4によって連続的に自動車1の総走行距離に加算される。自動車1のこの総走行距離は、この実施例では自動車1の速度表示装置10の領域に配置されている距離表示装置8によって自動車1のユーザ6に表示される。したがって距離表示装置8は、総走行距離表示装置なのである。
【0034】
自動車1の第1制御装置14のコンポーネント12では、所定の期間にわたって生じるコンポーネント12の非可逆変化が検出される。コンポーネント12の非可逆変化は、第1センサ装置16によって検出される。
【0035】
比較器18では、第1制御装置14のコンポーネント12の検出した非可逆変化の大きさおよび/またはタイプが、上記の検出の期間に関連する自動車1の第1比較走行区間に対応付けられる。さらに比較器18により、上記の期間中に自動車1が走行した走行距離として検出された走行距離が、第1比較走行距離との比較において対比される。
【0036】
上記の比較から得られる比較結果は、自動車1のユーザ6によって呼び出すことができる。この実施例では、キー20が設けられており、このキーは、上記の比較結果を呼び出すために自動車1のユーザ6によって操作される。この実施例ではつぎにこの比較結果が視覚式の表示素子22を用いてユーザ6に通知される。この実施例の一変形実施形態によれば、択一的にユーザ6に上記の比較結果を自動的に通知することができ、上記の比較の実行に引き続いて直接、上記の視覚式の表示素子22によってユーザ6に自動的に、すなわちユーザ6または他の人のアクションなしに通知される。
【0037】
この実施例では比較結果は自動車1のユーザ6に視覚的に通知される。しかしながらユーザ6への比較結果の通知は、この実施例の変化形態では音響式または触覚式に行うことも可能である。
【0038】
ただ1つの図からわかるのは、第1制御装置14の他に、自動車1の別の制御装置24が設けられていることである。この別の制御装置24のコンポーネント26では、上で述べて期間にわたって生じるコンポーネント26の非可逆変化が検出される。別の制御装置24のコンポーネント26の非可逆変化の検出は、第2のセンサ装置28によって行われる。比較器18では、別の制御装置24のコンポーネント26の検出した非可逆変化の大きさおよび/またはタイプが、上記の検出の期間に関連する、自動車1の第2の比較走行距離に対応付けられる。つぎにこの実施例のこの変化形態において、上記の比較結果が、上記の期間中に走行した走行距離として検出された走行距離と、第1比較走行距離および第2比較走行距離との比較から得られる。
図1