(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207628
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/86 20060101AFI20170925BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C08G63/86
C08G63/183
【請求項の数】15
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-550002(P2015-550002)
(86)(22)【出願日】2013年11月30日
(65)【公表番号】特表2016-501976(P2016-501976A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013003621
(87)【国際公開番号】WO2014101980
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】12008668.1
(32)【優先日】2012年12月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】398056207
【氏名又は名称】クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ドンジョバンニ・エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】スーパット・コラダ
【審査官】
上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−201985(JP,A)
【文献】
特表2012−520357(JP,A)
【文献】
特開2010−195934(JP,A)
【文献】
特開2008−111088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)テレフタル酸、モノエチレングリコール、アンチモンを含むポリ縮合触媒、式(I)の化合物を含むリン含有安定剤、
【化1】
および、任意にコバルトイオンを含む色補正添加剤、の混合物を提供する工程;
(ii)前記混合物を220〜270℃の温度に加熱し、ビス−ヒドロキシエチルテレフタル酸エステルを提供する工程;
(iii)減圧下に280〜310℃の温度で、前記ビス−ヒドロキシエチルテレフタル酸エステルのポリ縮合を行う工程、
を含む、ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
テレフタル酸とモノエチレングリコールとのモル比が1:1〜1:1.4の、テレフタル酸:モノエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
テレフタル酸とモノエチレングリコールとのモル比が、1:1.1〜1:1.25の、テレフタル酸:モノエチレングリコールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒の量が、工程(i)の混合物のSbに基づき計算して、150〜450質量ppmである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒の量が、工程(i)の混合物のSbに基づき計算して、225〜275質量ppmである、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒が、三酸化アンチモン、シュウ酸アンチモン、アンチモングルコキシド、アンチモンブトキシド、およびアンチモンジブトキシドから成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒が、三酸化アンチモンである、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物を含むリン含有安定剤の量が、Pの量が工程(i)の混合物の1〜20質量ppmとなるような量である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物を含むリン含有安定剤の量が、Pの量が工程(i)の混合物の4〜7.5質量ppmとなるような量である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
コバルトイオンを含む色補正添加剤の量が、工程(i)の混合物の質量に対して、0〜100ppmである、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
コバルトイオンを含む色補正添加剤が、酢酸コバルト(II)またはそれの水和物である、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)が250〜265℃の温度で行われる、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)が1.2〜10barの圧力で行われる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
工程(iii)が285〜295℃の温度で行われる、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
工程(iii)が100mbar未満の圧力で行われる、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」としめす)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PETは、既知の、エチレングリコールとのジメチルテレフタレートのエステル交換およびエチレングリコールおよびテレフタル酸の直接エステル化、それに続く、三酸化アンチモンなどの触媒存在下での縮合重合化(以下「ポリ縮合」と示す)により製造することができる。次に、PET生成物を押し出しし、ペレット化し、ポリマーチップを製造する。そして、ポリマーの固有粘度を増加させ、製造中に生じるアセトアルデヒドを除去するために、PETチップを固体重合にかける。ポリマーの固有粘度が、空気または不活性ガス中のいずれにおいて行う固体重合によって増加することは、広く知られている。
【0003】
米国特許第5,874,517号に開示されているように、固体重合がポリマー中に含まれるアセトアルデヒドを消去するために使用されることができることも広く知られている。
【0004】
ジメチルテレフタレートおよびエチレングリコールのエステル交換は、エステル交換反応によって生じるメタンールを再利用する必要があり、工程を実施する観点から不利な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,874,517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、所望のビンの等級に達するまでポリ縮合時間(以下「PC時間」としめす)を特に短縮する、簡便で経済的なやり方で、より具体的には、飲料用ビンに使用できるポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
テレフタル酸(以下「PTA」としめす)およびモノエチレングリコール(以下「MEG」としめす)の直接エステル化、および工程中の特定の時間における選択された添加剤の添加を含む方法によって達成されることが見いだされた。
【0008】
本発明によれば、ポリエステル樹脂を製造するための方法が提供され、前記方法は、以下の工程を含む、
(i)テレフタル酸、モノエチレングリコール、アンチモンを含むポリ縮合触媒、式(I)の化合物を含むリン含有安定剤、および、任意にコバルトイオンを含む色補正添加剤、の混合物を提供する工程;
【化1】
(ii)前記混合物を220〜270℃の温度に加熱し、ビス−ヒドロキシエチルテレフタル酸エステル(以下「BHET」としめす)を提供する工程;
(iii)280〜310℃の温度、減圧下で、前記ビス−ヒドロキシエチルテレフタル酸エステルのポリ縮合を行う工程。
【0009】
工程(i)について:
ここで使用される用語「ポリエチレンテレフタレート」および「PET」は、一般に、製造方法に関わらず、エチレングリコールとジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸の縮合により製造された高分子量ポリマーを含むものである。さらに、これらの用語は、コモノマーまたはさもなければ他の既知の修飾剤を少量含む、例えば、ポリマーの質量に対して約20%未満含む、既知のポリエチレンテレフタレートポリマーを含むことを意味する。このようなコモノマーまたは修飾試薬としては、芳香族及び脂肪族ジオールおよびポリオール;芳香族及び脂肪族カルボンサン;または、カルボキシおよびアルコール官能性を含有する単一分子を含む。ジオールの例としては、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、および/または、1,3−プロパンジオールを含む。カルボン二酸の例としては、イソフタル酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびヒドロキシ安息香酸を含む。少量の分岐鎖剤(chain branching agents)および/または末端鎖剤(chain terminating agents)を使用することもできる。このような分岐鎖剤としては、例えば、多官能性の酸および/または多官能性のアルコールであり、例えば、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールである。末端鎖剤としては、単官能性のアルコール、および/または単官能性のカルボン酸であり、例えば、ステアリン酸および安息香酸である。分岐鎖剤と末端鎖剤の混合物も、また、使用することができる。用語、ポリエチレンテレフタレートおよびPETは、ここで示される目的のみにおいて、少量の修飾剤または鎖分岐剤を含むポリエチレンテレフタレートポリマーを含むが、当該明細書の意図としては、一般に、このような添加された修飾剤または鎖分岐剤を含まないPETを意図する。
【0010】
PTAとMEGのモル比は、ポリ縮合が生し得るようにし、例えば、好ましくは、おおよそ等モル量であり、好ましくは1:1〜1:1.4の量であり、よりこの好ましくは、1:1.1〜1:1.3の量であり、もっとも好ましくは、1:1.1〜1:1.25、PTA:MEGである。
【0011】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒の量は、反応混合物のSbに基づき計算し、適宜に150〜450質量ppmであり、好ましくは200〜400質量ppm、より好ましくは200〜300質量ppm、もっとも好ましくは、225〜275質量ppmである。
【0012】
アンチモンを含有するポリ縮合触媒としては、好ましくは、三酸化アンチモン、シュウ酸アンチモン、アンチモングルコキシド、アンチモンブトキシド、アンチモンジブトキシドから成る群から選択され、最も好ましくは、三酸化アンチモンである。
【0013】
式(I)の化合物を含むリン含有安定剤の量としては、適宜に、Pの量が反応混合物の、1〜20質量ppm、好ましくは2〜15質量ppm、より好ましくは3〜10質量ppm、もっとも好ましくは4〜7.5質量ppmであるような、量とされる。
【0014】
前記式(I)の化合物を含むリン含有安定剤は、適宜に、三塩化リンと1,1’−ビフェニルおよび2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノールの反応生成物であり、CAS 38613−77−3であり、Hostanox P−EPQ(登録商標)の名前でクラリアント社から商業的に利用可能である。
【0015】
コバルトイオンを含む色補正添加剤の量としては、適宜に、反応混合物の0〜100質量ppm、好ましくは0〜50質量ppm、より好ましくは5〜50質量ppm、もっとも好ましくは10〜30質量ppmである。当該コバルトイオンを含む色補正添加剤としては、好ましくは酢酸コバルト(II)またはそれの水和物である。
【0016】
工程(ii)について:
中間体生成物としてBHETを与える縮合反応は、好ましくは240〜270℃の温度で、よりこのマイクは250〜265℃の温度で行われる。縮合反応は、適宜、高圧下、好ましくは1.2〜10bar、より好ましくは2〜5barで行われる。縮合反応中に形成される水は、反応混合物から除去されることが好ましい。
【0017】
工程(iii)について:
ポリ縮合反応は、好ましくは280〜300℃の温度、より好ましくは285〜295℃の温度
で、100mbar未満、好ましくは20mbar未満、より好ましくは10mbar未満の減圧下、適切には、ポリ縮合水を除去しながら、行うことが好ましい。下限については、0.5〜1mbarで十分である。
【0018】
ポリ縮合反応は、所望の固有粘度が得られる時間まで行う。PETの固有粘度は、25℃でo−クロロフェノールにおいて測定から作製した計算に基づき、約0.40〜約1.0、好ましくは約0.50〜0.85、より好ましくは約0.55〜約0.80、もっとも好ましくは約0.55〜約0.70dl/gである。固有粘度の特定の好ましい範囲は、最終用途に依存する。固有粘度の測定は、DIN53728に従い実施される。
【0019】
その後、PET反応生成物は、高温下で水中に押し出しすればよく、そしてそこで固体化される。当該固体PETは、その後、当分野の当業者に既知の手段によりペレット化されてよい。例えば、水中ペレタイザーを使用して、PETをペレット化すればよい。
【0020】
本発明で使用できるPETは、いずれの形態、例えば、ペレット、チップ、または顆粒であってもよく、比較的均一のサイズと形であることが好ましい。参照しやすいようにこれ以後、PETチップとしてPETが示されるが、本発明においてはいずれの形態のPETも適用でき、そして、用語、PETチップは、全ての形態のチップを含むことを意図する。
【0021】
他の代替の実施形態においては、むしろチップよりも、PET反応生成物を直接押し出しして最終形態とする連続的工程を使用して、PETを生成することができる。このような直接押し出しを、フィルム、繊維、および他の化身を製造するのに使用することが本分野においては周知である。
【0022】
工程(ii)の開始前に、工程(i)で特定された全ての成分の存在は、所望のより短いポリ縮合時間を達成するために重要である。より短いPC時間によりポリマーの処理量が増大し、それにより経済的に十分に有利にPET樹脂を製造できる。
【実施例】
【0023】
例1:
重合を、約5kgのPETチップを製造できる、テレフタル酸(PTA)およびモノエチレングリコール(MEG)の2つの段階の重合のための標準的な二回手法製造ユニットにおいて実施する。PTAおよびMEGを、モル比1:1.2PTA:MEGで装入した。他の全ての出発物質、すなわち、触媒(Sb
2O
3:反応混合物中に250ppmのSb)、色補正添加剤(酢酸Co(II):反応混合物中に25ppmのCo)および前記リン含有安定剤Hostanox P−EPQ: 反応混合物中に5ppmのP、を工程の前に添加する。
【0024】
第1の反応工程(ii)において、直接エステル化を260℃、3.76barにて実施し、中間体であるビス−ヒドロキシエチルテレフタル酸エステル(BHET)を形成する。第2の反応工程(iii)において、BHETのポリ縮合を290℃で、水を除去しつつ、2mbarの圧力で行い、0.6dl/gの固有粘度を有するPETポリエステルとした。固有粘度の測定は、DIN53728に従い実施する。
【0025】
例2(比較):
反応混合物中に5ppmのPの量のHostanox P−EPQの代わりに反応混合物中に5ppmのPの量のCEPA(=2−カルボキシエチルホスホン酸)を置き換えたことを除いて、例1に示されたように重合を実施する。
【0026】
例3(比較):
出発反応混合物中に三酸化アンチモンポリ縮合触媒がなく、最終工程(ii)の後にそれを添加することを除いて、例1に示されたように重合を実施する。
【表1】