【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、少なくとも1種のシリカ系充填剤および少なくとも1種の特定のシランの存在下に、架橋剤としてのレゾールを使用することによって達成された。
【0017】
したがって、本発明は以下のものを含む加硫可能な組成物を提供する:
(1)少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および少なくとも1種の共重合可能なカルボキシル基を有するターモノマーの繰り返し単位を有する、ニトリルゴム、
(2)少なくとも1種のレゾール、
(3)少なくとも1種のシリカ系充填剤および少なくとも1種の一般式(I)のシラン
【化1】
[式中、
R
1、R
2およびR
3が、同一であるかまたは異なっていて、それぞれ、直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
25−アルキル基、またはR
4−C(=O)−(式中、R
4は直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
25−アルキルである)であり、
R
4が、飽和であるか、または1個または複数の不飽和を有し、ビニル、−SH、置換もしくは非置換フェニル、メタクリロイルオキシおよびイソシアナトから選択される置換基を0個、1個、もしくは2個以上有する、直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
14−アルキル基を表すか、または
−R
5−(S)
x−R
5−Si(OR
1)(OR
2)(OR
3)(式中、R
1、R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なっていて、それぞれ式(I)において定義されたものであり、R
5は、直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
14−アルキレン基であり、xは1〜8の数である)である]
または、それらに代わるものとして、シランを用いてあらかじめ変性されているシリカ系充填剤。
【0018】
本発明はさらに、成分(1)、(2)および(3)を混合することによる、これらの加硫可能な混合物を調製するためのプロセスも提供する。
【0019】
本発明はさらに、それらの加硫可能な混合物を、好ましくは高温での加硫にかけることによる、加硫物を製造するためのプロセスも提供する。
【0020】
本発明はさらに、本発明の混合物を加硫させることによって得ることが可能な加硫物も提供する。
【0021】
利点:
本発明の加硫可能な組成物は、酸化亜鉛/硫黄の架橋剤系をベースとする組成物に比較して、加工特性における明らかな改良を特徴としている。さらに、本発明の加硫可能な組成物から加硫によって得られる加硫物は、一方では、酸化亜鉛/硫黄の架橋によって得られる製品の(有利な方向での)性能プロファイルを示すと共に、他方では、それらに加えて、顕著に良好な圧縮永久歪み性、すなわち、より低い圧縮永久歪みを有している。
【0022】
今日慣用されている酸化亜鉛および硫黄ベースの架橋剤からなる架橋系に比較して、架橋剤としてのレゾールを、シランおよびシリカ系充填剤と組み合わせて使用することによって、加工技術に関して、加工特性に関して、および、それらから広く各種のゴム物品の形態で製造される加硫物の性能に関して、数多くの利点が得られる:
− 使用される粗原料:本発明による加硫可能な組成物は、環境的に有害な架橋剤たとえば酸化亜鉛の使用、さらには、架橋剤系の一部としての硫黄または硫黄供与型化合物の使用をもはや必要としない、ということを特徴としている。レゾールを使用することによって、極めて安定な共有結合的架橋の橋かけが形成される。
− 加工技術:混合粘度が最大で30%低減される。このことによって、混合物の流動性が顕著に改良される。180℃でのRheovulkameter試験の手段により、その流動性が最大で100%まで改良されたことを確認することができた。本発明の組成物の混合物から製造されるシートは、より滑らかであり、ダイスエルさらにはカレンダリング収縮がより低い。したがって、それらの混合物は、射出成形プロセスによって成形物品を製造するのに好適である。たとえばホースのための押出加工、ならびにフィルムおよび織布を被覆するためのカレンダーまたはローラーヘッド系での加工も同様に改良される。これらの利点によって、コスト的に顕著なメリットが得られ、このことは、状況に応じていずれのユーザーでも利用することができる。
− 混合の管理(Mixing logistics):従来技術に従って酸化亜鉛を用いて加硫可能とした混合物は、極めて限定された貯蔵安定性しか有していないことが多い。改良のために過酸化亜鉛を使用すると、特別な注意を払うことがさらに必要となる。本発明の加硫可能な組成物は、それらとは対照的に、貯蔵安定性において明らかな改良を示す。たとえば、室温で約10日の貯蔵寿命に相当する、40℃で3日間の貯蔵をした後で加硫試験をするような条件が、デリケートなコンパウンディングの場合においても、効率的に履行されることができる。その結果、極端なケースにおいては、製造計画を改良し、過度に長期の保存が原因で廃棄される混合物の量を減らすことが可能となる。
− 加硫物の物性:応力−歪み物性:所定の硬度での高い応力値は、カルボキシル基を有するニトリルゴムをベースとするエラストマーの本質的な性質の一つである。従来技術においては、これらの性質は、高いカルボキシル基含量を有するポリマーの場合においてのみ達成されるか、または、酸化亜鉛のカルボキシル基との「クラスター状の」架橋が避けられず、それが応力下での緩和に対する低抵抗性を示すという結果を伴って達成されるかのいずれかである。したがって、酸化亜鉛/硫黄を用いて架橋された、カルボキシル基を有するニトリルゴムをベースとする加硫物は、現時点で工業的に要求されているシーリング材料としては、特殊な場合においてのみにしか慣用されない。
それとは対照的に、本発明の混合物を使用する場合には、そのカルボキシル基含量を、はるかに広い範囲から選択することが可能である。カルボキシル基を含み、シランおよびシリカ系充填剤の存在下にレゾールを用いて架橋されたニトリルゴムは、カルボキシル基含量がわずか1%以下の低い場合であってさえも、優れた性能、特に340時間/100℃という長期間の応力下でも約35%という圧縮永久歪みを有する加硫物を与える。この数値は、酸化亜鉛/硫黄で架橋された加硫物で達成される数値の約半分でしかない。
− 加硫物の物性−低温/膨潤物性:酸化亜鉛/硫黄の組合せを用いた従来技術による架橋では、高いカルボキシル基含量、従って相対的に低いアクリロニトリル含量を有するポリマーの場合にしか、所望の加硫物の物性が達成できない。たとえば、33%のアクリロニトリルを含むコポリマーのような場合において、十分な低温物性を達成するためには、そのアクリロニトリル含量を、たとえば、約28%に調節しなければならない。このことによって、33%のアクリロニトリルを有するタイプのニトリルゴムに比較して、非極性媒体中での膨潤が、より高くなってしまう。先に述べたように、典型的なXNBRの性能プロファイルとの関連において優れた機械的性質を有する加硫物は、極めて低いカルボキシル基含量においてのみ得られるので、その結果、そのアクリロニトリル含量が高いか、または高いままに留まる可能性があり、従って、従来技術の加硫物とは対照的に、十分に留まっているガラス転移温度でも、優れた膨潤性が依然として残っている。
【0023】
上述の利点に加えて、酸化亜鉛/硫黄の架橋系の場合の架橋の有利な「二重(dual)」効果が依然として維持されている。レゾールを使用することによって、カルボキシル化ニトリルゴムのポリマー主鎖中の二重結合からオキサシクロヘキサン誘導体を与えることによる架橋、ならびに、レゾールのヒドロキシル基とのエステル化によるカルボキシル基による架橋、ならびに、α−水素原子がニトリル基と結合してエーテルを与える架橋、がいずれも存在することになる。レゾールは、少なくとも2官能であるので、そのことによって、ZnOクラスターおよび硫黄の橋かけよりも熱的、酸化的に安定な、共有結合的な架橋の橋かけが形成される。ZnO/硫黄系を用いた従来からの架橋に比較して、本発明の混合物の加硫は、たとえば比較的高温における圧縮永久歪みに関するような、より良好な安定性を有する加硫物を与える。熱酸化的安定性は、ポリマー鎖中の二重結合によって実質的に決まってくるので、これは、標準的なニトリルゴム加硫物のレベルにある。
【0024】
架橋剤としてのレゾールに加えてシリカ系充填剤も含んでいる加硫可能な混合物においてこれらの改良を達成することが可能であるという事実は驚くべきことであるが、その理由は、シリカ系充填剤を使用すると、レゾールとカルボン酸との期待されている相互作用だけではなく、レゾールとシリカとが、望ましくないレゾールのグラフト化や、その結果としてのレゾール不活性化の形の望ましくない相互作用を起こしうるために、複雑な条件に導かれる可能性があるからである。さらには、水素結合を介したシリカとXNBRとの間の相互作用もまた、望ましくない結果をもたらす可能性がある。しかしながら、特定のシランを添加することによって、それらの望ましくない副作用を避けることが可能である。
【0025】
カルボキシル基を有するニトリルゴム(成分1):
本発明の加硫可能な組成物において使用されるカルボキシル基を有するニトリルゴムは、少なくとも1種の共役ジエン、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、および少なくとも1種の共重合可能なカルボキシル基を有するターモノマーから誘導される繰り返し単位を有するターポリマーである。本出願の文脈においては、それらもまた「XNBR」と略称する。
【0026】
各種の共役ジエンを使用することができる。(C
4〜C
6)共役ジエンを使用するのが好ましい。特に好ましいのは、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはそれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物である。さらにより好ましいのは、1,3−ブタジエンである。
【0027】
使用されるα,β−不飽和ニトリルは、各種公知のα,β−不飽和ニトリルであってよいが、(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
【0028】
カルボキシル基を有するニトリルゴムが、少なくとも1種の(C
4〜C
6)共役ジエン、好ましくは1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはそれらの混合物から誘導される繰り返し単位、および少なくとも1種の(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物の繰り返し単位、を含んでいるのが好ましい。
【0029】
使用されるカルボキシル基を有する共重合性ターモノマーは、α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸の無水物、およびα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルであってよい。
【0030】
使用されるα,β−不飽和モノカルボン酸は、好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸であってよい。
【0031】
好ましいα,β−不飽和ジカルボン酸は、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸である。
【0032】
α,β−不飽和ジカルボン酸の無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸を使用することもさらに可能である。
【0033】
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルを使用することも可能である。
【0034】
これらのα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルは、たとえば、アルキル、好ましくはC
1〜C
10−アルキル、特にはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、アルコキシアルキル、好ましくはC
2〜C
12−アルコキシアルキル、より好ましくはC
3〜C
8−アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC
1〜C
12−ヒドロキシアルキル、より好ましくはC
2〜C
8−ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、好ましくはC
5〜C
12−シクロアルキル、より好ましくはC
6〜C
12−シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC
6〜C
12−アルキルシクロアルキル、より好ましくはC
7〜C
10−アルキルシクロアルキル、アリール、好ましくはC
6〜C
14−アリール、のモノエステルであってよい。
【0035】
α,β−不飽和ジカルボン酸モノエステルの例には、以下のものが挙げられる:
・ マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・ メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル。
【0036】
本発明の組成物において使用されるカルボキシル基を有するニトリルゴムには、以下のものが含まれる:
− 40〜89.9重量%、好ましくは45〜84.8重量%、より好ましくは49〜80重量%の量の、少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位、
− 10〜59.9重量%、好ましくは15〜54.8重量%、より好ましくは19〜50重量%の量の、少なくとも1種の不飽和ニトリルの繰り返し単位、および
− 0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%の量の、少なくとも1種の共重合可能なカルボキシル基を有するターモノマーの繰り返し単位
(ここで、すべての繰り返し単位を合計したものが100重量%である)。
【0037】
そのようなカルボキシル基を有するニトリルゴムは、たとえば、Lanxess Deutschland GmbHからKrynac(登録商標)ブランドで市販されている(たとえば、カルボン酸モノマーを7重量%含むKrynac(登録商標)X750およびKrynac(登録商標)X740;カルボン酸モノマーを1重量%含むKrynac(登録商標)X146;カルボン酸モノマーを1重量%含むKrynac(登録商標)X160)。
【0038】
別な方法として、そのようなカルボキシル基を有するニトリルゴムは、当業者には公知の方法により、エマルション中で三元重合させることによって調製することも可能である。
【0039】
レゾール(成分2):
本発明の組成物には、少なくとも1種のレゾールが含まれる。典型的には、使用されるレゾールは、p−アルキルフェノールをベースとする樹脂である。そのようなレゾールは、相当するp−アルキルフェノールをホルムアルデヒドと塩基性の条件下で縮合させることによって得ることができる。
【0040】
典型的には、レゾールとしては、一般式(II)の1種または複数の化合物が挙げられる:
【化2】
[式中、
R
aが、H、−CH
3、−CH
2OH、または−CH
2Brであり、
R
bが、−CH
2OHまたは−CH
2Brであり、
R
cが、直鎖状もしくは分岐状のC
1〜C
15−アルキル基であり、
nとmが、同一であるかまたは異なっていて、それぞれ0〜25の範囲の整数である]。