特許第6207645号(P6207645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ THK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000002
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000003
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000004
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000005
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000006
  • 特許6207645-クランプ機能付き転動体スプライン 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207645
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】クランプ機能付き転動体スプライン
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/10 20060101AFI20170925BHJP
   F16C 29/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F16C29/10
   F16C29/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-37339(P2016-37339)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155769(P2017-155769A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宗徳
(72)【発明者】
【氏名】重富 秀章
(72)【発明者】
【氏名】村田 智純
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−190246(JP,A)
【文献】 特開2008−032047(JP,A)
【文献】 特開2015−197124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/10
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の案内転動体と、
外周面の周方向に複数の案内領域と係止領域が交互に設けられると共に当該案内領域には軸方向に沿って前記案内転動体の転走溝が形成された軸部材と、
前記軸部材が挿入される貫通孔を有し、前記転走溝との間で前記案内転動体が荷重を負荷しながら転走する複数の負荷転走溝を有すると共に前記案内転動体の無限循環路を有するスプラインナットと、
前記軸部材の係止領域に接触すると共に当該軸部材の軸方向へ転走可能に配置された複数の係止転動体と、
前記軸部材が挿入される貫通孔を有すると共に前記係止転動体の収容孔を有する保持器と、
前記軸部材及び前記保持器が挿入される貫通孔を有すると共に当該貫通孔の内周面に前記軸部材の外周面との間で前記係止転動体を挟み込むテーパ部を有し、当該保持器に対して軸方向へ移動可能に組み付けられるクランパ本体と、
前記保持器と前記クランパ本体との間に介装されて、前記係止転動体を前記クランパ本体のテーパ部と前記軸部材との間に噛み込む方向へ前記クランパ本体を付勢する付勢手段と、を備え、
前記スプラインナットは前記軸部材の係止領域と重ならない位置に前記案内転動体の無限循環路を有する一方、
前記保持器は前記軸部材の係止領域に重なると共に前記クランパ本体の軸方向一端から突出する延長固定部を有し、
前記延長固定部は前記スプラインナットと前記軸部材との間に挿入されて当該スプラインナットに固定されていることを特徴とするクランプ機能付き転動体スプライン。
【請求項2】
前記軸部材の外周面には、軸中心を挟んで前記係止領域が一対設けられると共に、これら一対の係止領域に挟まれて前記案内領域が一対設けられていることを特徴とする請求項1記載のクランプ機能付き転動体スプライン。
【請求項3】
各案内領域には前記転走溝が2条形成され、各案内領域の2条の転走溝に対応する2系統の前記案内転動体の無限循環路は、当該2条の転走溝を含む仮想平面上又は前記軸部材の中心に対して当該仮想平面よりも外側に位置していることを特徴とする請求項2記載のクランプ機能付き転動体スプライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライン軸の軸方向へのスプラインナットの移動を規制すると共に当該規制の解除を任意に行うことが可能なクランプ機能付き転動体スプラインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクランプ機能付き転動体スプラインとしては、特許文献1に開示されたものが知られている。この転動体スプラインは、軸方向に伸びる複数の転走面が外周面に形成されたスプラインシャフトと、このスプラインシャフトに案内されて直線移動が可能な移動体とから構成されており、更に、前記移動体はスプラインナット及びクランパナットから構成されている。
【0003】
前記スプラインナットは公知の転動体スプラインのナット部材であり、前記スプラインシャフトの転走面を転走する多数の案内転動体を有すると共に、これら案内転動体が循環する無限循環路を備え、前記スプラインナットは前記スプラインシャフトに沿って自在に移動可能である。
【0004】
一方、前記クランパナットは、内周面にテーパ部を有するクランパ本体と、このクランパ本体と前記スプラインシャフトとの間で軸方向へ移動自在に配置された保持器と、この保持器に配列された複数の特殊形状の係止転動体と、前記係止転動体を前記クランパ本体のテーパ部と前記スプラインシャフトの外周面との間に噛み込む方向へ前記保持器を付勢するスプリングと、を有している。
【0005】
前記クランパナットを構成する前記保持器の軸方向の一端には円板状の連結プレートが接着固定されており、この連結プレートを前記スプラインナットに設けられた円板状の固定用フランジ部にボルトで固定することで、前記スプラインナットと前記クランパナットが一体に結合されている。
【0006】
このような従来のクランプ機能付き転動体スプラインでは、前記クランパ本体の外筒に対して何ら外力を加えていない状態では、前記スプリングの付勢力によって前記係止転動体が前記スプラインシャフトと前記クランパ本体のテーパ部との間に噛み込まれ、前記スプラインシャフトに対する前記移動体の軸方向及び回転方向の運動が規制される。一方、前記スプリングの付勢力に抗して前記クランパ本体を軸方向へ押圧すると、前記クランパ本体のテーパ部と前記スプラインシャフトとの間における前記係止転動体の噛み込み状態が解除され、前記スプラインナットと結合された前記クランパナットを前記スプラインシャフトに沿って移動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3186759号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された従来のクランプ機能付き転動体スプラインは、公知のスプラインナットに対してクランパナットを外付けしたものに過ぎず、前記スプラインナットや前記クランパナットを小型に製作しても、前記スプラインシャフトに沿って運動する前記移動体が大型化してしまう懸念があった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、スプラインナットとクランパナットを強固に一体化しつつも、スプラインシャフトに沿って運動する移動体の小型化を図ることが可能なクランプ機能付き転動体スプラインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のクランプ機能付き転動体スプラインは、複数の案内転動体と、
外周面の周方向に複数の案内領域と係止領域が交互に設けられると共に当該案内領域には軸方向に沿って前記案内転動体の転走溝が形成された軸部材と、
前記軸部材が挿入される貫通孔を有し、前記転走溝との間で前記案内転動体が荷重を負荷しながら転走する複数の負荷転走溝を有すると共に前記案内転動体の無限循環路を有するスプラインナットと、
前記軸部材の係止領域に接触すると共に当該軸部材の軸方向へ転走可能に配置された複数の係止転動体と、
前記軸部材が挿入される貫通孔を有すると共に前記係止転動体の収容孔を有する保持器と、
前記軸部材及び前記保持器が挿入される貫通孔を有すると共に当該貫通孔の内周面に前記軸部材の外周面との間で前記係止転動体を挟み込むテーパ部を有し、当該保持器に対して軸方向へ移動可能に組み付けられる、クランパ本体と、

前記保持器と前記クランパ本体との間に介装されて、前記係止転動体を前記クランパ本体のテーパ部と前記軸部材との間に噛み込む方向へ前記クランパ本体を付勢する付勢手段と、を備えている。そして、前記スプラインナットは前記軸部材の係止領域と重ならない位置に前記案内転動体の無限循環路を有する一方、前記保持器は前記軸部材の係止領域に重なると共に前記クランパ本体の軸方向一端から突出する延長固定部を有し、前記延長固定部は前記スプラインナットと前記軸部材との間に挿入されて当該スプラインナットに固定されている。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明によれば、前記保持器の延長固定部が前記軸部材の係止領域と重なる位置で前記クランパ本体から突出する一方、前記スプラインナットは前記軸部材の係止領域と重ならない位置に案内転動体の無限循環路を有しているので、前記保持器の延長固定部をスプラインナットと軸部材の間に挿入して当該スプラインナットに固定することができ、クランパナット及びスプラインナットの小径化を図りつつ、両者を強固に結合して一体化することが可能となる。また、前記延長固定部をスプラインナットと軸部材との間に挿入しても、当該延長固定部が案内転動体の無限循環路と干渉することはなく、クランパナットとスプラインナットをコンパクトに一体化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のクランプ機能付き転動体スプラインの実施形態の一例を示す断面図である。
図2】実施形態に係る軸部材を示す断面図である。
図3】実施形態に係るスプラインナットと軸部材の組み合わせを示す斜視図(一部切欠き)である。
図4図1のIV−IV線断面図である。
図5図1のV−V線断面図である。
図6】実施形態に係る保持器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明のクランプ機能付き転動体スプラインを詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明を適用したクランプ機能付き転動体スプライン(以下、「転動体スプライン」という)の実施形態の一例を示すものである。この転動体スプライン1は、軸部材2と、前記軸部材2に案内されて当該軸部材2の軸方向(図中の矢線X方向)へ直線移動が可能な移動体3とから構成されている。また、前記移動体3は、スプラインナット4及びクランパナット5から構成され、これらスプラインナット4とクランパナット5とが後述する構造で結合されている。
【0015】
図2は前記軸部材2を軸方向と垂直な面で切断した断面図である。この軸部材2は軸方向に長尺な略円柱状に形成されており、周囲には当該軸部材2の軸方向に延びる複数の案内領域2A及び複数の係止領域2Bが周方向に沿って交互に設けられている。前記案内領域2Aは前記スプラインナット4に具備された案内転動体が転走する領域であり、各案内領域2Aには前記案内転動体の転走溝20が当該軸部材2の軸方向に沿って設けられている。また、前記係止領域2Bは前記クランパナット4に具備された係止転動体が接する領域である。
【0016】
この実施形態の軸部材2においては、前記係止領域2Bは軸中心を挟んで一対形成されており、これら一対の係止領域2Bに挟まれて前記案内領域2Aが一対存在している。各案内領域2Aの中央には当該軸部材2の軸方向に延びる突条21が存在しており、前記転走溝20は各突条21を挟むようにして一対ずつ設けられている。各転走溝20は当該軸部材2の半径方向に対して傾斜して設けられており、各案内領域2Aに存在する一対の転走溝20は前記突条21を挟んで対称に位置している。尚、前記軸部材2に対する前記案内領域2Aの配置や前記転走溝20の条数は図示したものに限定されず、適宜設計変更することが可能である。
【0017】
図3は前記クランパナット5を分離した前記スプラインナット4を示す斜視図、図4は前記スプラインナット4の軸方向に直交する断面を示すものである。前記スプラインナット4は前記軸部材2が挿入される貫通孔を有し、当該軸部材2の周囲を軸方向に沿って自在に運動することが可能である。このスプラインナット4の内部には前記軸部材2の転走溝20を転走する案内転動体22の無限循環路45が設けられている。前記軸部材2には4条の転走溝20が設けられていることから、このスプラインナット4には4系統の無限循環路45が具備されている。尚、本実施形態においては前記案内転動体としてボールを用いているが、各種形状のローラを用いるように設計変更してもよい。
【0018】
前記スプラインナット4は、略円筒状に形成されたスプライン本体40と、このスプライン本体40の軸方向の両端面に固定される一対のエンドプレート41とから構成されている。図4に示すように、前記スプライン本体40の内周面には前記軸部材2の転走溝20に対向する負荷転走溝42が形成されており、これら転走溝20と負荷転走溝42とが対向することにより前記案内転動体22の負荷通路が形成されている。前記案内転動体22は各負荷通路において前記軸部材2と前記スプライン本体40との間で荷重を負荷しながら転走する。また、前記スプライン本体40には各負荷転走溝42と平行に転動体戻し通路43が軸方向へ貫通形成されており、前記案内転動体22は前記転動体戻し通路43の内部を無負荷状態で且つ前記負荷通路における転走方向とは逆方向へ転走する。尚、前記スプライン本体40の形状は図示した円筒状に限定されず、例えば矩形状のものであっても差し支えない。
【0019】
前記エンドプレート41には前記負荷通路と前記転動体戻し通路43とを接続する略U字状の方向転換路44が各負荷通路に対応して形成されている。従って、前記スプライン本体40の軸方向の両端面に一対のエンドプレート41を固定すると、前記負荷通路の両端が前記転動体戻し通路43の両端と前記方向転換路44によって連結され、4系統の前記案内転動体22の無限循環路45が完成する。前記案内転動体22が無限循環路45内を循環することにより、前記スプラインナット4は荷重を負荷しながら前記軸部材2に沿って自在に運動することが可能である。
【0020】
図4に示すように、各無限循環路45を構成する転動体戻し通路43及び方向転換路44は前記軸部材2の係止領域2B(図2参照)と重ならない位置に存在している。より具体的には、前記軸部材2の各案内領域2Aに含まれる2条の転走溝20に対応した2系統の無限循環路45は、当該2条の転走溝20の中心を通る仮想平面P(図2中の一点鎖線)を想定した場合に、当該仮想平面Pと同一面上、又は当該仮想平面Pを挟んで前記軸部材2の中心と反対側に位置している。すなわち、前記軸部材2は軸中心を挟んで一対の案内領域2Aを有することから、各案内領域2Aに対して前記仮想平面Pを想定した場合、これら一対の仮想平面Pに挟まれた領域には前記案内転動体の無限循環路45は存在していない。
【0021】
一方、図1に示すように、前記クランパナット5は、前記軸部材2が挿入される貫通孔を有して略円筒状に形成されたクランパ本体50と、このクランパ本体50と前記軸部材2との間に配置された複数の係止転動体51と、前記クランパ本体50と前記軸部材2との隙間に配置されると共に前記係止転動体51を所定の姿勢で保持する保持器52と、前記保持器52を軸方向へ押圧する付勢手段としてのコイルスプリング53とを備えている。
【0022】
前記クランパ本体50は前記軸部材2が挿入される貫通孔を有して略円筒状に形成されている。このクランパ本体50の内周面には、軸部材2との間で前記係止転動体51を挟み込むテーパ部54が設けられている。前記テーパ部54においては前記クランパ本体50の内周面は傾斜面となっており、前記クランパ本体50と前記軸部材2との隙間が軸方向の一方向(図1では紙面右方向)へ向けて徐々に狭くなり、これらクランパ本体50と軸部材2との間に楔状空間が形成されている。
【0023】
図5は前記クランパナット5の軸方向に直交する断面を示すものである。前記係止転動体51は前記軸部材2の係止領域2Bと前記クランパ本体50のテーパ部54との間、すなわち前記楔状空間に配置されている。図示した実施形態においては、各係止領域2Bに対して2個の係止転動体51が配置され、前記クランパナット5には4個の係止転動体51が配置されている。各係止転動体51は樽型に形成されたローラの中央に円弧状の凹溝を形成した瓢箪形の特殊形状をなしており、中央の凹溝は前記軸部材2の係止領域2Bに接する一方、当該凹溝で区分された両端部の外周面は前記クランパ本体50のテーパ部54に接する。すなわち、前記係止転動体51は前記軸部材2及び前記クランパ本体50の双方に対して面接触していることになる。尚、前記係止転動体51の形状は図示したものに限定されない。
【0024】
一方、前記保持器52は略円筒状に形成されて、前記クランパ本体50の貫通孔に組み付けられている。この保持器52は前記軸部材2の係止領域2Bに対応して前記係止転動体51が配置される収容孔55を有しており、前記収容孔55に配置された係止転動体51は前記軸部材2の係止領域2Bと前記クランパ本体50のテーパ部54の双方に接している。
【0025】
また、図1に示すように、前記保持器52と前記クランパ本体50との間には、当該クランパ本体50に対して前記保持器52の周方向への回転を規制する回り止め部材56が配置されている。この回り止め部材56はボールであり、保持器52の外周面に設けられた凹所57(図6参照)に配置されて、その一部が当該保持器52の外周面から突出している。前記クランパ本体50の内周面には軸方向に沿って案内溝58が形成されており、前記保持器52から突出した回り止め部材56は前記案内溝58に遊嵌している。これにより、前記保持器52は前記クランパ本体50の軸方向へは移動自在で、且つ、当該クランパ本体50の周方向へ回転不能である。尚、図1において符号59は前記クランパ本体50の内周面に装着されたストップリングであり、前記回り止め部材56を係止して、前記コイルスプリング53に押圧された前記保持器52が前記クランパ本体50の貫通孔から飛び出すのを防止している。
【0026】
図5に示すように、この実施形態において前記回り止め部材56は前記保持器52の周方向の三か所に設けられている。但し、前記クランパ本体50に対する保持器52の回転を防止できるのであれば、当該回り止め部材56の個数は適宜設計変更して差し支えない。また、前記回り止め部材56はボールに限られるものではなく、保持器52の外周面に対して突部を直接形成してもよい。
【0027】
前記コイルスプリング53は前記軸部材2の周囲を囲むようにして前記クランパ本体50と当該軸部材2との間に配置されている。前記クランパ本体50の内周面にはバネ受けリング60が装着されており、前記コイルスプリング53はこのバネ受けリング60と前記保持器52の軸方向の端面との間に圧縮された状態で配置されている。従って、コイルスプリング53はクランパ本体50に対して保持器52を軸方向へ相対的に押圧しており、その押圧方向は前記係止転動体51が前記楔状空間に食い込む方向である。すなわち、前記コイルスプリング53が前記保持器52に対して前記クランパ本体を軸方向へ押圧することにより、当該保持器52の収容孔55に配置された前記係止転動体51は前記軸部材2の係止領域2Bと前記クランパ本体50のテーパ部54に常時圧接する。
【0028】
図6は前記保持器52を軸方向と直交する方向から観察した図である。
【0029】
前記保持器52は前記スプライン本体40に固定される複数の延長固定部61を有している。前記延長固定部61は前記コイルスプリング53による押圧方向へ向けて当該保持器52の軸方向の一端に突出形成されており、前記保持器52を前記クランパ本体50に装着した状態では、当該延長固定部61が前記クランパ本体50の軸方向端部から突出している。この延長固定部61は、前記保持器52の周方向に関しては、前記軸部材2の係止領域2Bと重なる位置に設けられている。この実施形態では前記係止領域2Bは前記軸部材2の外周面の二か所に設けられているので、前記延長固定部61は当該軸部材2を挟んで一対が設けられている。尚、図6において、符号62は前記コイルスプリング53が嵌合する係止溝である。
【0030】
図4に示すように、前記保持器52の延長固定部61は前記軸部材2の係止領域2Bに重なった位置で当該軸部材2と前記スプラインナット4との隙間に挿入され、固定ねじ63によって前記スプライン本体40に固定されている。これにより、前記スプラインナット4と前記クランパナット5が結合され、前記軸部材2に沿って運動する前記移動体3が完成する。
【0031】
以上のように構成された本実施形態の転動体スプライン1では、前記クランパ本体50に対して何ら軸方向への外力を加えていない状態では、前記コイルスプリング53の付勢力によって前記係止転動体51が前記クランパ本体50と前記軸部材2との間の楔状空間に押し込まれ、当該係止転動体51は前記クランパ本体50のテーパ部54と前記軸部材2の係止領域2Bの双方に圧接している。このため、前記移動体3と前記軸部材2を相対移動させる際に、一方向への移動に対しては、前記係止転動体51が楔状空間に食い込むことになるので、両者の相対移動は規制される。また、他方向への移動に対しては、前記係止転動体51が楔状空間から抜け出すことになるので、前記移動体3と前記軸部材2の相対移動が許容される。
【0032】
一方、前記コイルスプリング53の付勢力に抗して前記クランパ本体50を前記保持器52に対して移動させると、前記係止転動体51が楔状空間から抜け出し、当該係止転動体51と前記クランパ本体50のテーパ部54及び前記軸部材2の係止領域2Bの圧接状態は解除されるので、前記移動体3と前記軸部材2の相対移動の規制は解除され、当該移動体3を前記軸部材2に沿っていずれの軸方向へも自由に移動させることが可能となる。
【0033】
すなわち、前記スプラインナット4の軸方向の一端に前記クランパナット5を連結したことにより、前記軸部材2に沿った一方向への運動は規制、他方向への運動は許容する転動体スプライン1を得ることができる。
【0034】
そして、前述したように、前記スプラインナット4に具備された案内転動体22の無限循環路45は前記軸部材2の係止領域2Bと重ならない位置に設けられており、また、前記保持器52の延長固定部61は前記軸部材2の係止領域2Bと重なった位置に存在しているので、当該延長固定部61を前記スプラインナット4と前記軸部材2との隙間に軸方向から挿入しても、前記スプラインナット4の内部において、当該延長固定部61は前記案内転動体22の無限循環路45と干渉することがない。
【0035】
このため、前記延長固定部61を前記スプラインナット4の内部に深く差し込んで、当該延長固定部61を前記スプライン本体40と締結することができ、両者を強固に結合して一体化することが可能となる。また、スプラインナット4及びクランパナット5の半径方向に固定用のフランジ部を突出させる必要がないので、これら両者の小径化を図ることができる。更に、前記延長固定部61をスプラインナット4と軸部材2との間に挿入しても、当該延長固定部61が案内転動体22の無限循環路45と干渉することはないので、クランパナット5とスプラインナット4をコンパクトに一体化し、全長を短くした小型の移動体を構成することが可能となる。
【0036】
尚、図を示して説明した実施形態では、前記スプラインナット4の軸方向の片側にのみ前記クランパナット5を連結したが、互いに向かい合う一対のクランパナット5を前記スプラインナット4の両端に固定してもよい。このように構成すれば、前記軸部材2に沿ったいずれの方向への前記スプラインナット4の移動についても、当該スプラインナット4の移動を任意に規制し、当該規制を解除することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1…クランプ機能付き転動体スプライン、2…軸部材、2A…案内領域、2B…係止領域、3…移動体、4…スプラインナット、5…クランパナット、40…スプライン本体、50…クランパ本体、51…係止転動体、52…保持器、53…コイルスプリング(付勢手段)、

図1
図2
図3
図4
図5
図6