特許第6207692号(P6207692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207692ピネン変換組成物、ピネン含有香味組成物、及びこれらを含有した製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6207692
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ピネン変換組成物、ピネン含有香味組成物、及びこれらを含有した製品
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20170925BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20170925BHJP
【FI】
   C11B9/00 B
   A23L27/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-159148(P2016-159148)
(22)【出願日】2016年8月15日
【審査請求日】2016年10月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年2月18日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.asahibeer.co.jp/news/2016/0218.html ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年2月18日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.asahibeer.co.jp/mogitate/ ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年2月18日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.asahibeer.co.jp/products/sour/mogitate/ ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年3月29日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.asahibeer.co.jp/news/2016/0329_2.html ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年3月29日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.asahibeer.co.jp/mogitate/tvcm.html ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年3月29日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://cm.asahibeer.co.jp/contents/movie/mogitate_sengen01_15/player/index.php ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年3月29日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://cm.asahibeer.co.jp/contents/movie/mogitate_kashou01_15/player/index.php ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年4月5日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://cm.asahibeer.co.jp/contents/movie/mogitate_24chousen01_60/player/index.php ▲1▼ウェブサイトの掲載日 平成28年4月5日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://cm.asahibeer.co.jp/contents/movie/mogitate_24chousen01_30/player/index.php 「特30条記事欠損あり」
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 たまみ
(72)【発明者】
【氏名】田中 善久
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/118391(WO,A1)
【文献】 特開2009−263257(JP,A)
【文献】 特開2009−161459(JP,A)
【文献】 特開2012−187050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0110789(US,A1)
【文献】 特開2004−166606(JP,A)
【文献】 特開2000−191494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/
A61K 8/
A61Q
A23L
C12G
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピネン含有香味組成物であって、
ピネンと、ピネンをテルピノレンに変換するピネン変換組成物とを含んでなり、
前記ピネン変換組成物が、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物からなり、
前記ピネンの含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上100000mg/L以下であり、又は
前記ピネン変換組成物の含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上100000mg/L以下である、ピネン含有香味組成物。
【請求項2】
ピネン変換有効成分として、ポリフェノールを含んでなる、請求項1に記載のピネン含有香味組成物。
【請求項3】
前記ポリフェノールが、フラボノイド系物質、プロアントシアニジン系物質、テアフラビン系物質、テアルビジン系物質、フェニルプロパノイド系物質、フェニルエタノイド系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質、カルコン類物質、スチルベン誘導体系物質、リグナン系物質、クルクミノイド系物質及びクマリン系物質からなる群から選択されてなる一種又は二種以上の混合物である、請求項2に記載のピネン含有香味組成物。
【請求項4】
前記フラボノイド系物質が、フラボン類物質、フラボノール類物質、イソフラボン類物質、フラバン類物質、フラバノール(カテキン)類物質、フラバノン類物質、フラバノノール類物質、オーロン類物質、及びアントシアニジン類物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、請求項3に記載のピネン含有香味組成物。
【請求項5】
前記ポリフェノールが、ガロタンニン、エラジタンニン、プロアントシアニジン、及びフェニルエタノイド系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、請求項2に記載のピネン含有香味組成物。
【請求項6】
前記ピネンの含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、5mg/L以上50000mg/L以下であり、又は、
前記ピネン変換組成物の含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、5mg/L以上50000mg/L以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載のピネン含有香味組成物。
【請求項7】
ピネンをテルピノレンに変換する方法であって、
ピネンに、ピネン含有香味組成物に含有されたピネン変換組成物を付与し、
前記ピネンを前記テルピノレンに変換することを含んでなり、
前記ピネン含有香味組成物が、請求項1〜6の何れか一項に記載されたものである、ピネン変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピネン変換組成物、ピネン含有香味組成物、及びこれらを含有した製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ピネンは、柑橘類及びブドウ等の果実の香気成分として知られており、香料、食品添加物として使用されている。
【0003】
ピネンを含むテルペン類に属する香味化合物は、熱、光、酸化、pH調整(低い数値)等の外的要因又は経時的要因によって、他の化学物質に変換することが知られており、中には、劣化臭を放つ劣化化合物に変換されるものがある。
【0004】
これに対しては、従来、特許文献1(特開2016−036319号公報)では、シネオール又はシス−3−ヘキセノールを添加し、劣化臭をマスキングした、柑橘系果実の香味を有する飲料が提案されている。また、特許文献2(特開2011−167171号公報)では、エステル類と、テルペン炭化水素(α−ピネン及びβ−ピネン)との添加比率を特定数値以下とすることにより、加熱等の処理によって発生する異風味を抑制し、柑橘類果実の香味性を向上させた高果汁飲料が提案されている。
【0005】
一方で、モノテルペン類に属するピネンもまた、製品に添加された場合、加熱、pH調整(低い数値)等の外的要因又は経時的要因によって、他の化学物質(例えば、リモネン、α−テルピネオール、テルピノレン、p−サイメン等)に変換することが知られている。このため、製品状態によっては、ピネン由来の果実様香味性を継続的に付与することができないことがある。
【0006】
他方、ピネンから変換されて生成するテルピノレンもまた、ピネンと同様に、柑橘類を中心とした果実の香気成分として知られており、香料、食品添加物として使用されている。しかしながら、ピネンから同様に変換生成されるp−サイメンは灯油のような臭いを有し、果実の香気を損なう原因となっている。
【0007】
ところで、本発明者等によれば、ピネンを積極的にテルピノレンに変換させるピネン変換組成物、並びに、ピネンと、ピネン変換組成物を含んでなり、ピネンから積極的にテルピノレンを生じさせるピネン含有香味組成物は、未だ、開発されていない。
【0008】
よって、今尚、ピネンをテルピノレンに効率よく変換するピネン変換組成物、ピネンと、ピネン変換組成物とを含有したピネン含有香味組成物を開発することが要請されている。また、ピネンと、ピネンから変換されたテルピノレンとを香味成分として含有し、かつ、ピネン及びピネンから変換されたテルピノレンによる果実を摘果後、短時間で搾汁した際の果実感及び新鮮感とを兼ね備えた製品の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−036319号公報
【特許文献2】特開2011−167171号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明者等は、今般、特定植物(果実包含)の抽出物が、ピネンを効率的にテルピノレンに変換することができるピネン変換組成物であることを見出した。また、本発明者等は、ピネン変換組成物により、ピネンから生成されたテルピノレンを、ピネンと併用し、継続的に製品に果実様香味性を付与することができるピネン含有香味組成物を見出した。本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【0011】
従って、本態様によれば、ピネンをテルピノレンに変換するピネン変換組成物であって、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなる、ピネン変換組成物を提案することができる。
【0012】
好ましい態様によれば、ピネン含有香味組成物であって、
ピネンと、ピネン変換組成物とを含んでなり、
ピネン変換組成物が、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなる、ピネン含有香味組成物を提案することができる。
【0013】
〔好ましい態様〕
好ましい態様は以下の通りである。
〔1〕 ピネンをテルピノレンに変換するピネン変換組成物であって、
オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなる、ピネン変換組成物。
〔2〕 ピネン変換有効成分として、ポリフェノールを含んでなる、〔1〕に記載のピネン変換組成物。
〔3〕 前記ポリフェノールが、フラボノイド系物質、プロアントシアニジン系物質、テアフラビン系物質、テアルビジン系物質、フェニルプロパノイド系物質、フェニルエタノイド系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質、カルコン類物質、スチルベン誘導体系物質、リグナン系物質、クルクミノイド系物質及びクマリン系物質からなる群から選択されてなる一種又は二種以上の混合物である、〔2〕に記載のピネン変換組成物。
〔4〕 前記フラボノイド系物質が、フラボン類物質、フラボノール類物質、イソフラボン類物質、フラバン類物質、フラバノール(カテキン)類物質、フラバノン類物質、フラバノノール類物質、オーロン類物質、及びアントシアニジン類物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、〔3〕に記載のピネン変換組成物。
〔5〕 前記ポリフェノールが、ガロタンニン、エラジタンニン、プロアントシアニジン、及びフェニルエタノイド系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物である、〔2〕に記載のピネン変換組成物。
〔6〕 ピネン含有香味組成物であって、
ピネンと、ピネン変換組成物とを含んでなり、
前記ピネン変換組成物が、〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載されたものである、ピネン含有香味組成物。
〔7〕 前記ピネンの含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上100000mg/L以下であり、
前記ピネン変換組成物の含有量が、前記ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上100000mg/L以下である、〔6〕に記載のピネン含有香味組成物。
〔8〕 ピネンをテルピノレンに変換する方法であって、
ピネンに、ピネン変換組成物を付与し、
前記ピネンを前記テルピノレンに変換することを含んでなり、
前記ピネン変換組成物が、〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載されたものである、ピネン変換方法。
〔9〕 製品であって、
〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載のピネン変換組成物、又は、
〔6〕又は〔7〕に記載のピネン含有香味組成物を含んでなる、製品。
〔10〕 前記ピネンを0mg/L超過50mg/L以下で含んでなる、〔9〕に記載の製品。
〔11〕 ピネン及びテルピノレンを、合計濃度として、0mg/L超過50mg/L以下で含んでなる、〔9〕又は〔10〕に記載の製品。
〔12〕 前記ピネン変換組成物を0mg/L超過100mg/L以下で含んでなる、〔9〕〜〔11〕の何れか一項に記載の製品。
〔13〕 前記製品が、飲料、食料品、調味料、嗜好品、香水、化粧品又は生活用品である、〔9〕〜〔12〕の何れか一項に記載の製品。
〔14〕 前記飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、〔13〕に記載の製品。
〔15〕 前記製品のpHが2以上7以下である、〔9〕〜〔14〕の何れか一項に記載の製品。
【0014】
本発明によれば、有用なピネン変換組成物により、ピネンをテルピノレンに効率よく変換させて香味成分として使用することができ、並びに、ピネンと、ピネン変換組成物を含有したピネン含有香味組成物により、ピネンと、ピネンから効率よく変換したテルピノレンとを組み合わせた組成物を提供することができる。
そして、ピネン含有香味組成物によれば、ピネンと、同族香味成分である転換されたテルピノレンとを併用することにより、製品に劣化臭が生成するリスクを低減させ、柑橘類を中心とした果実様香味性、とりわけ、果実を摘果後、短時間で搾汁した際の果汁感又は新鮮感を継続的に付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔定義〕
(ピネン)
ピネン(C1016)は、モノテルペン炭化水素の一種であり、天然成分として、α−ピネンとβ−ピネンとこれらの鏡像異性体とが存在する。α−ピネンは、針葉樹(例えば、松)の針葉油又は柑橘類果実及びブドウ等の精油中に存在する香味成分であり、β−ピネンもまた、針葉樹の針葉油又はその他の植物(ローズマリー、パセリ、バジル、バラ等)の精油中に存在する香味成分である。α−ピネンとβ−ピネンとは、柑橘類を中心とした果実の香味成分としてよく知られており、また、香料又は医薬品として利用されている。
【0016】
ピネンは、pHが低い状態では熱的安定性に欠ける為、ピネンを含有した製品は、その経時的変化によって、ピネンが他の物質(例えば、リモネン、α−テルピネオール、テルピノレン、p−サイメン等)に変換されやすいという性質を有する。
【0017】
(テルピノレン)
テルピノレン(C1016)は、モノテルペン炭化水素の一種であり、針葉樹(例えば、檜)の針葉油又は柑橘類果実等の精油中に存在する香味成分である。テルピノレンは、柑橘類果実(ライム様)の香味成分としてよく知られており、また、香料又は医薬品として利用されている。
本発明にあっては、テルピノレンは、主として、ピネンを転換して生成されたものを意味するが、転換されていないテルピノレンもまた使用する。
テルピノレン、特に、ピネンから変換され生成されたテルピノレンは、とりわけ、ピネンと併用されることにより、果実を摘果後、短時間で搾汁した際の果汁感又は爽快感を高い次元において達成することができる。この意味において、テルピノレン、特に、ピネンから変換され生成されたテルピノレンは、果実様香味を促進させる促進剤(増強剤)としての機能を有する。
【0018】
(ピネン変換組成物及びピネン含有香味組成物)
本発明にあっては、ピネン変換組成物及びピネン含有香味組成物は、様々な用途に使用することができるものであり、そのまま飲食料品及び生活用品として使用することができ、或いは、様々な用途組成物として、例えば、飲食料用組成物として使用することが可能である。
【0019】
ピネン変換組成物とは、ピネンをテルピノレンに変換させる組成物を意味する。本発明にあっては、「変換」は、ピネンがテルピノレンに変る様々な現象、例えば、ピネンの変換、転換、劣化又は崩壊等を包含するものとして使用する。好ましい態様にあっては、「ピネン変換組成物」は、ピネンと一緒に含有された、ピネン含有香味組成物として利用される。
【0020】
(含有量)
本発明にあっては、含有量は、本明細書において特に理がない限り、基本的に、mg/L、即ち、ppm(質量/体積)にて表す。
【0021】
〔ピネン変換組成物〕
(抽出物)
ピネン変換組成物は、ピネンをテルピノレンに変換する組成物であり、必須成分として、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなる。
【0022】
抽出物は、一般的な抽出方法によって得ることができ、例えば、原料(果実及び葉等)を、圧搾法、溶媒抽出法、油脂(温浸透又は冷浸透)吸着法、超臨界抽出法等によって、抽出することができる。飲食料品に使用する場合には、厚生労働省、消費者庁等所管のガイドライン及び食品衛生法等の規定に基づいて抽出する。
【0023】
これら抽出物は、市販されており、例えば、オリーブ抽出物としては、サンブライト株式会社製「OLIVEX(登録商標)HT6」やINDENA社製「OLEASELECT(登録商標)」等、ブドウ種子抽出物としては、サンブライト株式会社製「exGrape(登録商標)Seed OPC30」等、ビルベリー抽出物としては、インデナジャパン株式会社製「ミルトセレクト(登録商標)」等、アムラ抽出物としては、株式会社サビンサジャパンコーポレーション製「サベリー(登録商標)」等、ルブス抽出物としては、丸善製薬株式会社製「ルブス乾燥エキスF」等、赤ワインもろみ抽出物としては、サンブライト株式会社製「exGrape(登録商標)Total PPR」等、として入手することが可能である。
【0024】
(ポリフェノール)
前記抽出物は、好ましくは、ピネンをテルピノレンに変換する有効成分として、ポリフェノールを含んでなる。ポリフェノールは、フラボノイド系物質、プロアントシアニジン系物質、テアフラビン系物質、テアルビジン系物質、フェニルプロパノイド系物質、フェニルエタノイド系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質、カルコン類物質、スチルベン誘導体系物質、リグナン系物質、クルクミノイド系物質及びクマリン系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であってよく、好ましくは、プロアントシアニジン系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
【0025】
フラボノイド系物質は、フラボン類物質、フラボノール類物質、イソフラボン類物質、フラバン類物質、フラバノール(カテキン)類物質、フラバノン類物質、フラバノノール類物質、オーロン類物質、及びアントシアニジン類物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であってよく、いずれのものを有意に使用することができる。
【0026】
(特定のポリフェノール)
好ましい態様によれば、ポリフェノールは、ガロタンニン、エラジタンニン、プロアントシアニジン、及びフェニルエタノイド系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは使用される。
【0027】
〈ガロタンニン〉
ガロタンニンの具体例としては、タンニン酸(tannic acid)、ハマメリタンニン(Hamamelitannin)、モノガロイルグルコース(monogalloylglucose)、ジガロイルグルコース(digalloylglucose)、トリガロイルグルコース(trigalloylglucose)、テトラガロイルグルコース(tetragalloylglucose)、ペンタガロイルグルコース(pentagalloylglucose)、ヘキサガロイルグルコース(hexagalloylglucose)、ヘプタガロイルグルコース(heptagalloylglucose)、オクタガロイルグルコース(octagalloylglucose)、ノナガロイルグルコース(nonagalloylglucose)、デカガロイルグルコース(decagalloylglucose)、ウンデカガロイルグルコース(undecagalloylglucose)、ドデカガロイルグルコース(dodecagalloylglucose)等が挙げられる。これら具体例の中でも、タンニン酸、ハマメリタンニン、が好ましい。
【0028】
〈エラジタンニン〉
エラジタンニンは、加水分解によりエラグ酸を生成する、ヘキサヒドロキシジフェニル基、サングイソルボイル基、ガロイル基を有する化合物である。
エラジタンニンの具体例としては、プニカラジン(Punicalagin)、プニカリン(Punicalin)、カスタラジン(Castalagin)、ベスカラジン(Vescalagin)オイゲニイン(Eugeniin)、サングイインH−1(Sanguiin H−1)、サングイインH−4(Sanguiin H−4)、2,3−ヘキサヒドロキシジフェノイルグルコース(2,3−hexahydroxydiphenoylglucose)、4,6−ヘキサヒドロキシジフェノイルグルコース(4,6−hexahydroxydiphenoylglucose)、ケブラグ酸(Chebulagic acid)、ゲラニイン(Geraniin)、グラナチンA(Granatin A)、グラナチンB(Granatin B)、エラエオカルプシン(Elaeocarpusin)、コリラギン(Corilagin)、コルヌシインA(Cornusiin A)、コルヌシインB(Cornusiin B)、アグリモニイン(Agrimoniin)、エンブリカニン(Emblicanin)、プニグルコニン(Punigluconin)、テリマグランジンI(Tellimagrandin I)、テリマグランジンII(Tellimagrandin II)、カスアリクチン(Casuarictin)、ペデュンクラギン(Pedunculagin)、ケブリン酸(Chebulicacid)等が挙げられる。
これら具体例の中でも、プニカラジン、プニカリン、カスタラジン、ベスカラジン、オイゲニイン、テリマグランジンI、テリマグランジンIIが好ましいものであり、より好ましくは、プニカラジン、オイゲニイン、テリマグランジンIが挙げられる。
【0029】
〈プロアントシアニジン〉
プロアントシアニジンは、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキンが複数個重合した構造を有するポリフェノールである。
プロアントシアニジンの具体例としては、プロシアニジンA1(Procyanidin A1)、プロシアニジンA2(Procyanidin A2)、プロシアニジンB1(Procyanidin B1)、プロシアニジンB2(Procyanidin B2)、プロシアニジンB3(Procyanidin B3)、プロシアニジンC1(Procyanidin C1)、プロシアニジンC2(Procyanidin C2)、プロデルフィニジンB1(ProdelphinidinB1)、プロデルフィニジンB2(ProdelphinidinB2)、プロデルフィニジンB3(ProdelphinidinB3)又はこれらの立体異性体、ガロイル化又は配糖体化されたプロアントシアニジン、プロアントシアニジン誘導体等が挙げられる。
これら具体例の中でも、好ましくは、プロシアニジンB2、プロシアニジンB1、プロシアニジンC1が挙げられる。
【0030】
〈フェニルエタノイド系物質〉
フェニルエタノイド系物質は、オリーブ植物及びニクジュヨウ等に含有される成分であり、その具体例としては、チロソール、ヒドロキシチロソール、ベルバスコシド、オレウロペイン、アクテオシド、エキナコシド、チロソール配糖体、ヒドロキシチロソール配糖体等が挙げられ、好ましくは、チロソール、ヒドロキシチロソール、ベルバスコシド、オレウロペインが挙げられる。
【0031】
〔ピネン変換方法〕
好ましい別の態様によれば、ピネンをテルピノレンに変換する方法を提案することができ、前記変換方法は、
ピネンに、本発明によるテルピノレン変換組成物を付与し、
ピネンをテルピノレンに変換することを含んでなる、変換方法である。
混合及び変換工程以外の事項は、〔ピネン変換組成物〕の項で説明したのと同様であってよい。
【0032】
〔ピネン含有香味組成物〕
ピネン含有香味組成物は、ピネンと、ピネン変換組成物とを含んでなる組成物である。
ピネン含有香味組成物は、当初、ピネンとピネン変換組成物が主として存在するが、製品に添加された後に、ピネン変換組成物により、ピネンからテルピノレンが生成されて、ピネンと生成したテルピノレンとの混合物を含有することとなる。
【0033】
ピネン含有香味組成物は、ピネンと、ピネン変換組成物を含有することにより、製品に添加された後にピネンと変換されたテルピノレンを含有することになることから、柑橘類を中心とした果実様香味性を継続的に製品に付与することが可能となり、かつ、両者の香味成分として相乗効果を発揮させることが可能となる。ピネンとテルピノレンとは、化学分子量が同一であり、モノテルペン類に属する同族物質であり、また、柑橘類を中心とした果実の香味成分であることから、香味成分として両者が併存することの相乗効果を発揮させるものと思われる。
【0034】
ピネンの含有量は、ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上、100000mg/L以下であり、好ましくは、5mg/L以上、50000mg/L以下である。
【0035】
ピネン変換組成物の含有量は、ピネン含有香味組成物全量に対して、1mg/L以上、100000mg/L以下であり、好ましくは、5mg/L以上、50000mg/L以下である。ピネン変換組成物の含有量が上記数値範囲にあることにより、ピネンを効率よくテルピノレンに変換することが可能となる。
【0036】
〔製品〕
好ましい別の態様によれば、ピネン変換組成物又はピネン含有香味組成物を含有した製品を提案することができる。
【0037】
(添加量)
ピネン変換組成物又は前記ピネン含有香味組成物を含有した製品は、ピネンを0mg/L超過50mg/L以下であり、好ましくは、0.01mg/L超過30mg/L以下で含有してなることが好ましい。
また、この製品は、テルピノレンを0mg/L超過50mg/L以下であり、好ましくは、0.01mg/L超過30mg/L以下で含有してなることが好ましい。
さらに、この製品は、ピネン及びテルピノレンを、合計濃度として、0mg/L超過50mg/L以下であり、好ましくは、0.01mg/L超過30mg/L以下で含んでなることが好ましい。
【0038】
好ましい態様によれば、ピネン変換組成物(抽出物)の添加量は、製品に対して、0mg/L超過100mg/L以下であり、より好ましくは、0.01mg/L以上80mg/L以下である。添加量が上記範囲にあることにより、ピレネンをテルピノレンに効率よく変換させることが可能となる。
【0039】
「製品」は、飲料、食料品、調味料、嗜好品(お菓子、珍味)、飲食料品以外では、香水、化粧品等の美容用品;入浴剤、芳香剤、洗剤、洗口剤等の生活用品等が挙げられる。例えば、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒等のアルコール飲料;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料;果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、エキス入り飲料等の炭酸飲料;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料等の嗜好飲料;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、ディリーデザート等のデザート食品及びそれらを製造するためのミックス原料;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子及びそれらを製造するためのミックス原料;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;レトルト食品、パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類、香水、化粧品、オーラルケアー商品等を挙げることができる。
【0040】
(任意成分)
製品は、任意成分として、食品添加物(色素、香料、甘味料、酸味料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、旨み成分、食物繊維、安定化剤、乳化剤)、香水又化粧品添加物、又は、医薬部外品の添加物等を含有することが可能である。これら添加物は、厚生労働省、消費者庁等において定められたガイドライン及び関連法規(食品衛生法等)に規定されたものを用いる。
【0041】
〈酸味料〉
酸味料の具体例としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸(三)ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸及びこれらの塩(カリウム塩、ナトリウム塩)が挙げられる。酸味料は、pH調整剤としても使用可能である。
製品のpHは、完成品の性状にもよるが、一般に、7以下であり、2以上5未満とすることが可能である。
【0042】
〈甘味料〉
甘味料の具体例としては、高甘味度甘味料、糖類及び糖アルコールが挙げられる。高甘味度甘味料の具体例としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(K)、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。糖類の具体例としては、異性化糖、ブドウ糖、果糖、砂糖、麦芽糖及び乳糖が挙げられる。糖アルコールの具体例としては、還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール及びマルチトールが挙げられる。
【0043】
〈色素〉
色素の具体例としては、カラメル、アントシアニン色素、フラボノイド色素、カロテノイド色素、キノン色素、ポリフィリン、ジケトン色素、ベタシアニン色素、アザフィロン色素、クチナシ色素等が挙げられる。
【0044】
〔飲料〕
より好ましい態様によれば、ピネン変換組成物又はピネン含有香味組成物を含有した飲料を提案することができる。飲料については、上記に記載したものが例示され、大別して、アルコール飲料とノンアルコール飲料とに類別される。
【0045】
ノンアルコール飲料は、実質的にアルコールを含まないアルコールテイストの飲料である。ノンアルコール飲料には、ノンアルコールビール(ビールテイスト飲料)、ノンアルコールワイン、ノンアルコールカクテル、ノンアルコール酎ハイ(酎ハイテイスト飲料)、ノンアルコール日本酒及びノンアルコール焼酎(焼酎テイスト飲料)等が含まれる。ノンアルコール飲料のアルコール濃度は、酒税法上は温度15度の時において原体積百分中に含有するエチルアルコールの体積が1%未満であると定義される。
【0046】
アルコール飲料は、ビール、酎ハイ、カクテル、発泡酒等が挙げられる。ベースとなるアルコールは、飲料として許可されたアルコールであってよく、ベースアルコールとしては、醸造酒又は蒸留酒(好ましい)であってよい。蒸留酒としては、好ましくは、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム等であってよい。アルコール飲料は、そのアルコール含有量は特に限定されるものではないが、製品特性、酒税法等を考慮して適宜調整できる。アルコール含有量は30体積%以下、より好ましくは10体積%以下が好ましく、より好ましくは、3体積%以上10体積%以下である。
【0047】
(飲料製造方法)
ピネン変換組成物又はピネン含有香味組成物を含有した飲料の一般的な製造方法は、概説すると以下の通りである。ピネン変換組成物又はピネン含有香味組成物と、食品添加剤と、飲用水(炭酸水)、必要に応じてベースアルコールとを所定の量で準備し、これらを混合する。次に、混合液を冷却し、必要に応じてカーボネーションを行う。その後、容器に充填・密封することにより、所望の飲料を得ることができる。容器に充填する前に膜ろ過フィルターを用いてろ過してもよい。また、濃厚な状態で中間液を作成した後に、炭酸水を添加して飲料を調製してもよい。
【0048】
〔容器詰め製品(飲料)〕
別の好ましい態様によれば、ピネン変換組成物又はピネン含有香味組成物を含有した製品(特に、飲料)を容器に詰めた容器詰製品(飲料)を提案することができる。容器詰飲料とすることにより、果実様香味感、とりわけ、果実を摘果後、短時間で搾汁した際の果汁感及び新鮮感を十分に付与し、促進させ、かつ、維持することができると伴に、製品の提供利便性、流通利便性、保存性、品質劣化防止を図ることが可能となる。
容器は、内容物が漏洩しない材料であれば、ビニール、プラスチック、ガラス、金属、紙、木又は皮等で、様々な形状で形成された容器に詰めることができる。より好ましい態様によれば、容器の内外に、光、熱、酸素、紫外線等を遮断するための素材(たとえば、金属箔)を備えたものであってよい。
【実施例】
【0049】
以下の実施例により、本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定して解釈されるものではない。また、以下の実施例は、本発明の実施態様の一例を示すものであるが、これら実施例により当業者は本発明の全ての範囲について容易に実施することができること当然に理解するものである。
【0050】
〔分析〕
実施例、比較例の飲料中に含まれる各成分は、ガスクロマトグラフィ(GC)分析を用いて定量を行った。GC分析の手順は以下の通りであった。
【0051】
(分析用試料調製)
試料を5.0g秤量し、内部標準としてリナロール−d5を200μL添加した上で、45mLの水で希釈した。次に、アセトニトリル浸漬及び加熱にてコンディショニングを行ったTwister(PDMS,0.5mm×20mm)を希釈した試料に投入し、40℃、2時間の撹拌吸着反応を行ったものを分析用試料とした。なお、試料調製は2点並行して行った。
【0052】
(定量方法)
分析用試料中のピネン及びテルピノレンの量は、内部標準(リナロール−d5)とのピーク面積比から計算した。また、同一試料について2点並行で行った分析値の平均値を試料中の成分量であるものとして定量を行った。
【0053】
(GC測定条件)
装置:測定には昇温気化型注入口(CIS4,Gerstel社製)、加熱脱着ユニット(TDU, Gerstel社製)およびLTMカラム(1st:DB−WAX,20m×0.18mm;0.3μm,2nd:DB−5,10m×0.18mm;0.4μm, Agilent Technologies社製)を搭載した7890B GC System(Agilent Technologies社製)、5977A MSD(Agilent Technologies社製)を使用した。
TDU:20℃(1min)−(720℃/min)−250℃(3min)
CIS:−50℃(1.5min)−(12℃/min)−240℃(20min)
スプリット比:30:1
注入口圧:508.28kPa
ベント圧:314.11kPa
1stカラム温度:40℃(3min)−(5℃/min)−125℃(0min)
2ndカラム温度:40℃(31min)−(5℃/min)−200℃(0min)
MSD:Scan mode,m/z 29−230, 20Hz, EI
【0054】
〔評価試験1:β−ピネンの変換〕
(飲料調製)
下記〔表1〕に記載された処方に従って、実施例と比較例による柑橘類果実様香味を有するアルコール飲料を調製した。実施例及び比較例におけるpHは、3.3であり、アルコールは8.5体積%とした。pHの測定は、pHメーター(HORIBA LAQUA pH/ION Meter F-72;電極:9615S JF15)によっておこなった。アルコールの測定は、アルコライザー(Anton Paar Alcolyzer Plus、DMA4500 Density Meter)によっておこなった。
【0055】
(評価試験内容)
実施例1〜12と比較例1とについて、保存試験前後のピネン及びテルピノレンの量を比較した。
〔表1〕の処方にある通り、所定の含有量のβ-ピネンと、所定の含有量のピネン変換組成物とを含むアルコール飲料(アルコール8.5体積%)を調製し、37℃で2週間保存した後、GC分析し、内部標準エリア比によって生成量を比較した。その結果は、表1に記載した通りであった。
【0056】
(評価結果)
〔表1〕の結果から比較例1(ピネン変換組成物無し)のものと比較して、実施例1〜12のテルピノレンの生成量が増加していることが明らかとなり、優れた変換率を有していることが理解された。
【0057】
【表1】
【0058】
〔評価試験2:α−ピネンの変換〕
(試料調製)
〈実施例13〉
0.1重量%のグレープフルーツ香料と、2重量%のグレープフルーツ果汁、9.2体積%のアルコールと、0.05ppmのピネン変換組成物(ブドウ種子抽出物)とを含むグレープフルーツ風味のアルコール飲料(pH3.1)を調製した。
〈比較例2〉
ピネン変換組成物(ブドウ種子抽出物)を添加しない以外は、実施例13と同様にグレープフルーツ風味のアルコール飲料(pH3.1)を調製した。
【0059】
(評価内容)
実施例13と比較例2について、37℃で1週間保存した後、GC分析し、内部標準比から、保存試験前後のテルピノレン及びα-ピネンの量を測定し、テルピノレンとα-ピネンの合計濃度及び保存前後の量比を算出した。その結果は、表2に記載した通りであった。
【0060】
(評価結果)
保存前の比較例2及び実施例13のα−ピネン濃度は0.19ppm、テルピノレン濃度は0.05ppmであった。〔表2〕に示した保存後の結果から、比較例2(ピネン変換組成物無し)と比較して、実施例13のテルピノレンの生成量が増加していることが明らかとなり、優れた変換率を有していることが理解された。
【0061】
〔評価試験3:官能評価試験〕
(評価内容)
実施例13と比較例2とについて、保存試験後の官能評価を評価した。評価試験2と同様にサンプルを調整し、37℃で1週間保存した後、熟練したパネリスト6名にて官能評価を行った。下記評価基準により、パネリストが評価した値の平均値を採用した。
【0062】
(評価基準)
評価点「−3」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりも非常に弱い」
評価点「−2」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりも弱い」
評価点「−1」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりやや強い」
評価点「0」:新鮮感又は劣化臭が「比較例に対して差がない」
評価点「1」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりやや強い」
評価点「2」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりも強い」
評価点「3」:新鮮感又は劣化臭が「比較例よりも非常に強い」
【0063】
(評価結果1)
〔表2〕の結果のとおり、実施例13は、比較例2と比較して、新鮮感がより強く感じられると同時に、劣化臭は弱く感じられることが明らかとなった。
(評価結果2:官能評価)
実施例13と比較例2との比較とは別に、6名のパネリストに短評を求めた。この短評の中には、実施例13について、「グリーン感が強い」、「トップから含みまでグレープフルーツ固有の香判る」、「劣化臭なし」、「軽い香りが残っている」、「ピール感がしっかしていた」との評価も挙がった。比較例2について、「やや樹脂的」、「呈味に雑味が多い」、「エタノール感」、「クレゾール」、「劣化した甘味」との評価が挙げられた。
【0064】
【表2】
【要約】
【課題】 ピネンを効率よくテルピノレンに変換するピネン変換組成物を提供する。
【解決手段】 ピネンをテルピノレンに変換するピネン変換組成物であって、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワイン抽出物、ルブス抽出物及びアムラ抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなるものにより達成される。
【選択図】なし