(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明は、全般的には、電源システムに関し、より詳細には、流動電解液バッテリーを含む電源システムに関する。
【0003】
ある特定の従来技術のスタンドアローン型電源システムで使用されるバッテリーは、通常、鉛酸バッテリーである。しかしながら、鉛酸バッテリーには、性能および環境安全性の点で限界がある。典型的な鉛酸バッテリーの寿命は、しばしば、高温の気象条件では、特に、稀に完全に放電されたときには極めて短くなる。また、鉛が鉛酸バッテリーの主要構成要素であるので、鉛酸バッテリーは環境に対して有害であり、製造および処分の過程で深刻な環境問題を引き起こすことがある。
【0004】
亜鉛臭素バッテリー、亜鉛塩素バッテリーおよびバナジウムフローバッテリーのような流動電解液バッテリーは、鉛酸バッテリーの上述の限界を克服する可能性を提供する。詳細には、流動電解液バッテリーの有効寿命は、ディープ放電適用例による影響を受けず、流動電解液バッテリーのエネルギー対重量比は、最大で、鉛酸バッテリーのエネルギー対重量比の6倍になる。
【0005】
しかしながら、流動電解液バッテリーの製造は、鉛酸バッテリーの製造よりも難しくなり得る。鉛酸バッテリーのような流動電解液バッテリーは、個々のセルの電圧よりも高いある特定の電圧を生成するために、セルのスタックを備える。しかし、鉛酸バッテリーとは異なり、流動電解液バッテリー中のセルは、電解液循環経路を介して油圧接続されている。これは、1つの直列接続されたセルから電解液循環経路を介して別のセルへとシャント電流が流れることがあり、エネルギー損失およびセルの個々の充電状態の不均衡を引き起こすので問題が多い。そのようなシャント電流を防止するまたは減少させるために、流動電解液バッテリーは、セル間の電解液循環経路を十分に長くし、それにより、セルとの間の電気抵抗を増大させる必要がある。
【0006】
流動電解液バッテリーの別の問題は、セルの内部に均等に化学製品を供給するために、各セルにおける電解液流量を均一にする必要があることである。複数のセルを通じて均一な流量を達成するために、流動電解液バッテリーは、複雑な流量分布ゾーンを規定する。しかしながら、電解液はしばしば、油相、水相および気相の多相性を有するので、また、セルに対する構造的な制約を理由に、流量は均一にならないことが多い。
【0007】
バッテリーがセルのスタックのアレイを採用するこれらのタイプのバッテリーにおける別の問題は、スタックが共通の流動電解液を共用するということである。スタックが電解液を共有するので、スタック上の開路電圧の測定値は、スタックが、システムの他のスタックに対するスタックの充電状態を示すのではなく、若干の非ゼロ充電量を貯蔵するかどうかのみを示す。その上、スタック間の開路電圧の差は、典型的には、スタックの内部抵抗を変更した何らかの内部異常を示す。
【0008】
たとえば、亜鉛臭素流動電解液バッテリーでは、スタックは、水性の亜鉛臭化物電解液を共用し、充電サイクルおよび放電サイクル中の成分亜鉛の堆積および溶解のためにスタック自体の電極を有する。このタイプのバッテリーでは、スタックへの電解液フローは、配置が不十分な亜鉛鉱床によって阻害され得る。さらに、電極上で核形成は、セル間でのデンドライトの形成および分岐を引き起こすことがある。いずれの場合も、影響を受けたスタックの内部抵抗またはスタック上の開路電圧を低下させることがある。
【0009】
流動電解液バッテリーシステム中の並列接続されたスタック間の開路電圧の差は、スタックの充電サイクルおよび放電サイクルに、潜在的にはバッテリーの動作に影響を与え得る。たとえば、上述の亜鉛臭素バッテリーでは、特定のスタックの開路電圧が低下することにより、充電サイクル中の不良スタックにおける亜鉛蓄積レートが増大し、放電サイクル中の不良スタックにおける亜鉛低減レートが減少する。その上、不良スタックに貯蔵される追加の亜鉛は、典型的には、隣接するスタックによって通常は利用される電解液に由来する。亜鉛のアベイラビリティが低下した結果として、隣接するスタックのエネルギー貯蔵能力が低減され得る。別の結論は、亜鉛蓄積が増加したスタックは、放電中に亜鉛が完全には枯渇せず、最終的には、スタックのセル間で巡回する内部短絡を引き起こす程度まで、亜鉛が不良スタックの電極上に蓄積する結果となることである。これは、スタックを破壊する、場合によっては、バッテリーシステム全体を破壊する可能性があり得る。さらなる結論は、増加した亜鉛蓄積は、電解液が流れるチャネルを制限し得ることである。電解液フローはスタックを冷却するように作用するので、フローが制限されることにより、スタックが過熱され得る。
【0010】
開路電圧をより均一な値に回復するために、均等化プロセスを実行することができる。均等化プロセスは、バッテリー中の各スタックを完全に「ストリッピング(stripping)すること」、すなわち、完全に放電することを含み、完全にすべてのスタックのすべてのセルから貯蔵電荷が完全に除去される。このプロセスにより、スタック間の開路電圧の差を最初に引き起こした異常がなくなることが理想的である。たとえば、フルストリップは、典型的には、電解液フローを妨げるプレート間のデンドライトおよび/または堆積物を分解する。しかしながら、バッテリー中のセルスタックの各々のフルストリップにより、典型的には、バッテリーは、電気適用例のための著しく低減された容量で全面的に利用不能または利用可能になり、さらなる冗長なバッテリーシステムの購入および設置が必要になる。さらに、典型的にはバッテリー中の少数のスタックが正常には動作しないので、フルストリップは不要であることが多い。
【0011】
さらに、流動電解液バッテリー中のバッテリースタックをストリッピングする既存の方法は、典型的には時間がかかり、問題は再発するので2〜3日ごとに反復しなければならないことがある。セルスタックをストリッピングする、すなわち、セルスタックを完全に放電すると、スタックのうちの1つの極性が他のスタックの極性の反対となるセル反転を回避するように注意をしなければならない。そのような場合、反転した極性のセルスタックが負荷になり、他のスタックから電流を引き出す。したがって、放電中、セルスタックは、最初に、より高い電流を使用する低電圧レベルまで放電される。スタックが低電圧レベルに達すると、放電レートを減速させるために電流の大きさを低減させる。電圧レベルが降下し続けると、電流の大きさは、電圧レベルが0に接近するにつれて放電レートを低減するように繰り返し段階的に小さくなる。遅いレートでゼロ電圧レベルに近づけることによって、セルスタックの放電は、ゼロ電圧が達されたときに中断される。放電電流のこのような段階的な低減は、セル反転を回避するが、バッテリー中のセルスタックをストリップするために必要な時間の重要な要因でもある。
【0012】
したがって、改善された電解液フローバッテリー設計、ならびに、流動電解液バッテリー中のセルを制御、監視、充電および/または放電するため方法および装置が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面に示す本発明の好ましい実施形態について説明する際には、明快のために特定の専門用語が用いられる。ただし、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定ものではなく、特定の用語は各々、同様の目的を達成するために同様に動作するすべての技術的等価物を含むことを理解されたい。たとえば、「接続された」という単語、「取り付けられた」という単語、またはそれに類似する用語がしばしば使用される。それらは、直接接続には限定されないが、当業者によってそのような接続が等価であると認識される他のエレメントを介した接続を含む。
【0027】
次に、同様の参照番号が本開示全体にわたって同様の部分を示す図面を参照し、
図1〜
図4および
図14〜
図21において、本発明の1つの実施形態による電解液バッテリーモジュールおよびシステムを全般的に10で示す。バッテリーシステム10は、一般的な構成要素として、キャビネット12と、キャビネット12内に置かれたセルスタック14のアセンブリと、キャビネット12内に置かれたタンクアセンブリ16とを含む。タンクアセンブリ16は、各々がセルスタック14に動作可能に接続されたポンプ19および好適な配管21を有する、陽極液フローシステム18(
図5〜
図9)と陰極液フローシステム20(
図10〜
図13)とを含む。陽極液は、バッテリー中で陽極または負極セルに近接する電解液の一部分であり、陰極液は、バッテリー中で陰極または正極セルに近接する電解液の一部分である。放電状態では、各システム18、20の電解液は、実質的に同じである。セルスタック14が充電されると、陽極液フローシステム18の電解液は、負に帯電し、陰極液フローシステムの電解液は、正に帯電する。以下で詳細に述べるように、バッテリーシステム10は、セルスタック14の極性を反転させることができるように構成される。したがって、フローシステム18および20の各々は、セルスタック14の極性に応じて、陽極液フローシステムまたは陰極液フローシステムとして相互交換可能である。
【0028】
キャビネット12内に配置されたDC/DC変換器ハウジング22は、セルスタック14に動作可能に接続された1つまたは複数のDC/DC変換器24を含む。バスバー28がDC/DC変換器24に動作可能に接続されており、DC/DC変換器24を介してセルスタック14とバスバー28との間で電力を双方向にパスすることができる。熱交換器26がキャビネット12内の配設されており、ファン(図示せず)をキャビネット12上のファンマウント27に固定することができる。また、バッテリーシステム10は、とりわけポンプ19および変換器24を含むバッテリーシステム10の様々な構成要素に動作可能に接続されたコントローラ100を含む。
【0029】
図5〜
図9を見ると、陽極液フローシステム18は、ポンプ19と、配管21と、三方弁30とを有する。配管21は、セルスタック14に陽極液を分配するために、陽極液が保持されるタンクアセンブリ16の一部分からポンプ19まで延びる。陽極液は、セルスタック14から、さらなる配管21を通ってタンクアセンブリ16に戻り、三方弁30の動作によって、熱交換器26を通して方向転換される。
【0030】
次に
図10〜
図13を参照すると、陽極液フローシステム18と同様に陰極液フローシステム20が形成され、また、ポンプ19と配管21と四方弁32を有する。配管21は、セルスタック14に陰極液を分配するために、陰極液が保持されるタンクアセンブリ16の一部分からポンプ19まで延びる。陰極液は、セルスタック14から、さらなる配管21を通ってタンクアセンブリ16に戻り、四方弁32の動作によって、スタックを通る流れの方向を反転させることができる。
【0031】
次に
図22〜
図25を参照すると、セルスタック14が示されている。セルスタック14は、エンドキャップ36の対の間に配設された複数のフローフレーム34から形成される。フローフレーム34の各々は、流路の半分とフローフレーム34の各側の他の機構(feature)とを含むように成形される。フローフレーム34の各対の間に、フローフレーム34に隣接してセパレータが含まれ、セパレータは、フローフレーム34間の流路を規定するために、たとえば、超音波溶接、振動溶接または任意の他の好適な接合方法によって接合される。各エンドキャップ36は、エンドキャップ36の一方側の流路を含むように成形され、エンドキャップ36と隣接するフローフレーム34とが流路を同様に規定するようにセルスタック14に対して内向きに配向される。エンドキャップ36の他方側は、セルスタック14の構造の機構を含むように、かつ、互いに対してセルスタック14を接合することを機能するように成形される。
【0032】
次いで各フローフレーム34の一方側と各エンドキャップ36の内部に面した側とを参照すると、以下の機構が、フローフレーム34およびエンドキャップ36へと成形される。参照のために、フローフレーム34の一方側に関して機構を説明するが、フローフレーム34の両側およびエンドキャップ36の一方側にも同様にあてはまる。フローフレーム34は、上縁部62と、下縁部64と、上縁部62と下縁部64との間に延びる側縁部66の対とを含む。フローフレーム34の角部の各々に近接する開口部37は、セルスタック14に入る/から出る電解液のための入口/出口、またはフローフレーム34間で電解液を導通するための流体通路のいずれかを提供する。
【0033】
本発明の1つの実施形態によれば、各フローフレーム34とセパレータとの間に収容された電極全体に電解液を通すために、上縁部62または下縁部64のいずれかに近接する開口部37のうちの1つは流体入口を提供し、対向する縁部62または64に近接する開口部37のうちの1つは流体出口を提供する。上縁部62および下縁部64の各々に近接する他の開口部37は、電解液がフローフレーム34またはセパレータを通るが、それらの間に収容された電極全体には向けられないことを可能にするチャネルを規定する。開口部37は、陽極液フローシステム18中の電解液がフローフレーム34の一方側に向かって下がり、陰極液フローシステム20中の電解液がフローフレーム34の他方側に向かって下がるように構成される。セパレータにより、隣接するフローフレーム34間の陽極液と陰極液とが分離される。ただし、セパレータの両端間で、セルスタック14中を電流が流れることができるようにするイオン移動が生じることがある。このようにすると、セルスタック中を流れる電解液は、フローフレーム34の一方側の電極と他方側の電極の上を交互に通過するように、2つの流路へと分割される。
【0034】
フローフレーム34間の電解液分布のための流路を規定するために、上縁部62および下縁部64の各々に近接して内部ヘッダシステム38が規定される。内部ヘッダシステム38は、陽極液フローシステム18または陰極液フローシステムのいずれかから電解液を受け、第1のチャネルを通して、上縁部62に近接するフローフレーム34の幅のほぼ全体に電解液を誘導する。次いで、内部ヘッダシステム38は、電解液を、戻りチャネルを通してフローフレーム34の中央部分に誘導する。電解液は、その後、電極の電解液の分布ためのフローチャネルを形成するために、フローフレーム34の各側66間にあるほぼ均等な間隔の複数の流路に分割される。内部ヘッダシステム38は、ヘッダシステム38中の流路に大きな粒子が入ること、および、潜在的に大きな粒子が流路を遮断することを防止するために、入口および出口の開口部37の各々に近接する一体型フィルタ39をさらに含む。フローチャネル中には、多相電解液がフローフレーム34中を流れる際に多相電解液を混合して連続エマルジョンを生成するための混合シェブロン41が含まれる。内部ヘッダシステム38は、電解液流路を増加させ、それによって、内部抵抗を高め、セルスタック14中を流れるシャント電流を低減させるとともに、フローフレーム34間に電解液をより均一に分配する。
【0035】
図示の実施形態によれば、フローフレーム34は、フローフレームとセパレータとを接合してセルスタック14を形成するため使用される機構(feature)をさらに含む。振動溶接ビード40を成形して各フローフレーム34を作製する。振動溶接ビード40は、フローフレーム34を接合してセルスタック14を組み立て、加圧下でのセルスタック14の剛性を維持するために使用される。また、フローフレーム34は、振動溶接プロセス中に発生される閃光を封じ込めるためにフラッシュ室を含む。フローフレームまたはセパレータフレームは、インサートまたは、オーバーモールディング材料で作製され、挿入された部品の外周の周りにピンを組み込んで、一方側にインサートを押しつける。これにより、完成したフローフレーム34またはセパレータフレームをモールドに完全に組み付けることができるようになり、手作業による組付け作業の多くがなくなる。溶接位置合わせ機構38は、限定はしないが、陳列された(displayed)ピンとピンホールとを含む。ビルトイン型目視検査機構によって、スタックの組立ての前でも組立ての後でも適切な組付けが保証される。
【0036】
図23および
図24を参照すると、各エンドキャップ36の内部側は、フローフレーム34の一方側と同様の構造のものである。エンドキャップ36は、一体型フィルタ48と混合シェブロン50とを有する内部ヘッダシステム47を含む。エンドキャップ36は、振動溶接ビード49のような構造エレメントと、適切な組付けを保証するためのビルトイン型目視検査機構53とをさらに含む。エンドキャップ36はさらに、1つのスタックを別のスタックに封止するために、一方の角部にOリング溝を含み、対向する角部には中実表面を含む。エンドキャップは、一方側にインサートを押しつけるために挿入された部分の外周の周りのピンを組み込む材料および成形方法を含めて、モールドアセンブリおよび気密に封止されたバッテリースタック14の端子電極55の周りに挿入するまたはオーバーモールド成形することができる。
【0037】
亜鉛臭素バッテリーは、一定のセルギャップ厚を維持し、電極とセパレータ膜とが互いに接触することを防ぐために、各電解液ハーフセルにおいてスペーサメッシュ材料を使用する。スペーサは、フローチャネルを通る電解液フローを妨げることなく、寸法安定性を提供する必要がある。
【0038】
図26に示した1つの実施形態では、スペーサ設計は、丈夫で可撓性の軽量ネットを製作するために、制御された条件下で両方向に伸張される二軸延伸ポリプロピレンネットを使用した。
【0039】
図27および
図27Aに示した第2の実施形態では、ダイヤ型(バイプラナー)構成で作製された押出成形ネットによりバッテリー性能を改善させる。フロー試験は、電極面全体への臭素電解液の分布が改善したことを示し、また、バッテリー性能試験は、ハーフスタック間の電流分布が著しく改善し、それにより、エネルギー効率が改善することを示した。
【0040】
バッテリーシステム10は、セルギャップの整合性とアクティブセルエリア全体への電解液および臭素の分布とを改善するために、バイプラナーポリプロピレンメッシュを使用する。このメッシュは、各層のストランドが互いに対して角度をつけて配設された、たとえば、各々に対して直行して配向された平行なストランドの2つの層で構成される。さらに、このメッシュは、ストランドの各層が、電解液フロー方向に対して一定の角度となるように、たとえば、電解液フロー方向に対して45度の角度となるように、セル中に配向することができる。
【0041】
本発明の1つの実施形態によれば、別個のDC/DC変換器24が、フローバッテリーシステム10中の各セルスタック14を個々に動作させ、制御する。前述のテストから、残りのセルスタック14の性能に影響を与えることなく、セルスタック14を個々に動作させることができることが分かっている。また、セルスタック14が電気的に並列に接続されているときには、セルスタック14はコモンDC電圧で動作するが、各スタック上でコモンDC電圧を維持するために、各セルスタック14から送達されるまたは各セルスタック14によって受容される電流は、大幅に変動することがある。さらに、セルスタック14ごとに別個のDC/DC変換器24を提供することによって、1つセルスタック14はストリップすることができるが、残りのセルスタック14は、標準的なチャージ/放電構成で動作可能なままとなる。
【0042】
本発明の1つの実施形態によれば、バッテリーシステム10は、各々が独立してDC/DC変換器24に接続された8つのセルスタック14を備えている。この構造により、モジュール10は、充電および放電するための設定点としてDCバス電圧を使用して個々のセルスタック14へのエネルギーフローを最適化することが可能になる。この構造の1つの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる同時係属中の米国特許出願第13/185,862号に示されている。この米国特許出願は、対応するDC/DC変換器24を介してDCバス28と各セルスタック14との間で双方向に電力が伝達されるヒステリシス制御方法について論じている。各DC/DC変換器24は、セルスタック14が充電または放電される別個の設定点を含む。たとえば、より低い充電状態のスタックは、より低いDCバス設定点(たとえば、351V)で充電するように自身のDC/DC変換器24を設定することでき、より高い充電状態のスタックは、より高いDCバス設定点(たとえば、355V)で充電するように自身のDC/DC変換器24セットを設定することができる。したがって、DCバス28上のエネルギーは、より低い充電状態のセルスタック14に最初に貯蔵される。同様に、セルスタック14を放電するために設定点を千鳥状に配置することができる。高い充電状態のセルスタック14は、より高いDCバス設定点(たとえば、330V)で放電するように自身のDC/DC変換器24を設定することができ、より低い充電状態のセルスタック14は、より低いDCバス設定点(たとえば、325V)で放電するように自身のDC/DC変換器24を設定することができる。したがって、エネルギーは、最初に、より高い充電状態のセルスタック14からDCバス28に供給される。さらに、1つのDC/DC変換器24を2つ以上のセルスタック14に接続し得ることが企図される。複数のセルスタック14を、直列に、並列に、または直列と並列との組合せで接続することができ、その結果、エネルギー貯蔵デバイスは、所望の電圧およびエネルギー貯蔵能力を有することになる。DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14のセットは、上記で説明した個々のセルスタック14と同様に制御される。
【0043】
本発明の別の態様によると、DC/DC変換器24は、セルスタック14に存在するいずれかの極性で動作するように構成される。第1の動作モードでは、セルスタック14の極性は、DCバス28の極性と同じである。第2の動作モードでは、セルスタック14の極性は、DCバス28の極性から反転する。
【0044】
次に
図29を参照すると、例示的な極性反転DC/DC変換器24が示されている。このDC/DC変換器は、メモリデバイス202と通信するプロセッサ200を含む。プロセッサ200は、限定はしないが、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、またはそれらの任意の組合せであり得、直列または並列に動作する上述のデバイスのうちの1つまたは複数をさらに含み得る。メモリデバイス202は、単一のデバイスまたは複数のデバイス中で同様に実装され得、スタティックメモリ、ダイナミックメモリまたはそれらの組合せを含み得る。メモリデバイス202は、たとえば、動作パラメータおよびプログラム、あるいはプロセッサ200によって実行可能な一連の命令を記憶するように構成される。さらに、プロセッサ204はゲートドライバ204と通信する。ゲートドライバ204は、限定はしないが、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路であり得、また、プロセッサ200とともに単一のデバイス中に集積され得る。プロセッサ200は、センサから、DC/DC変換器24の全体にわたる様々なポイントにおける電圧および/または電流の振幅に対応するフィードバック信号を受信する。そのロケーションは、プロセッサ200内で実行される特定の制御ルーチンに依存する。たとえば、DCバスセンサ200は、DCバス212上に存在する電圧の振幅を提供することができる。任意選択で、DC/DC変換器24の内部のDCバス214上で導通される電流の振幅を提供するために、DCバスセンサ200を動作可能に接続してもよい。同様に、DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14における電流および/または電圧の振幅を提供するために、電流センサ250および/または電圧センサ252を動作可能に接続してもよい。
【0045】
DC/DC変換器24は、バッテリーシステム10のDCバス28に接続されるように構成された入力端子210の対をさらに含む。次いで、各端子210は、DC/DC変換器24内の内部DCバス212に接続される。内部DCバス212は、正極レール214と負極レール216とを含む。当技術分野で理解されているように、正極レール214および負極レール216は、コモン電圧またはニュートラル電圧に関して任意の好適なDC電圧電位を導通することができ、正DC電圧電位または負DC電圧電位に限定されるものではない。さらに、正極レール214または負極レール216のいずれかを、ニュートラル電圧電位に接続することができる。正極レール214は、典型的には、負極レール216よりも大きい電位を有するDC電圧を導通する。内部DCバス212の正極レール214と負極レール216との間にキャパシタンス218が接続されている。キャパシタンス218は、システム要件に応じて、単一のキャパシタ、あるいは直列または並列に接続された任意の数のキャパシタであり得る。
【0046】
複数のスイッチングデバイス230、240は、内部DCバス212を出力端子260に選択的に接続する。スイッチングデバイス230、240は、典型的には、限定はしないが、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、電界効果トランジスタ(FET)、サイリスタ、またはシリコン制御整流器(SCR)を含むソリッドステート電力デバイスである。任意選択で、スイッチングデバイス230、240は、電気機械デバイス、またはアプリケーション要件に応じて構成された任意の他の好適なスイッチングデバイスであり得る。ダイオード232、242は、スイッチングデバイス230、240がオフにされたときに求められるようなスイッチングデバイス230、240の両端間での逆導通のために、スイッチングデバイス230、240の各々に並列に接続される。出力端子260における電圧の極性を制御するために、スイッチングデバイス230の第1のセットが使用される。スイッチングデバイス230の第1のセットの各々は、ゲート信号206の対応する第1のセットの1つを受信する。内部DCバス212と出力端子260との間の電流の振幅および方向を調整するために、スイッチングデバイス240の第2のセットが使用される。スイッチングデバイス240の第2のセットの各々は、ゲート信号208の対応する第2のセットの1つを受信する。内部DCバス212と出力端子260との間の電流の調整を容易にするために、スイッチングデバイス240の第2のセットと出力端子260との間に、インダクタ246および248が直列に含まれる。
【0047】
動作中、DC/DC変換器24は、DCバス28とDC/DC変換器24に接続された1つまたは複数のセルスタック14との間の双方向電流フローを調整するように構成される。DC/DC変換器24は、また、順極性または逆極性のいずれかのセルスタック14にDCバス28に接続し、DCバス28への接続において一定の極性を維持しながらセルスタック14の極性を切り替えるように構成される。再び
図29を参照すると、プロセッサ200は、メモリデバイス202に記憶された一連の命令を実行するように構成される。プロセッサ200は、ゲートドライバ204への基準信号を発生させ、ゲートドライバ204は、スイッチングデバイス230、240の動作を制御するためのゲート信号206、208を発生させる。任意選択で、ゲートドライバ204は、プロセッサ200中に集積化され、プロセッサ200は、ゲート信号206、208を発生させるようにさらに構成される。
【0048】
図示の実施形態によれば、ゲート信号206の第1のセットは、スイッチングデバイス230の第1のセットの動作を制御し、スイッチングデバイス230の第1のセットは、出力端子260における電圧の極性を制御するように構成される。スイッチングデバイス230の第1のセットは、トランジスタ1(Q1)またはトランジスタ2(Q2)のうちの1つのみが同時にイネーブルされるように構成される。トランジスタ1(Q1)がイネーブルにされたとき、出力端子260の極性は、DCバス212の極性に対して反転している。トランジスタ2(Q2)がイネーブルにされたとき、出力端子260の極性は、DCバス212の極性と同じである。
【0049】
ゲート信号208の第2のセットは、スイッチングデバイス240の第2のセットの動作を制御し、スイッチングデバイス240の第2のセットは、DCバス212と出力端子260との間の電流を制御するように構成される。図示のように、スイッチングデバイス240の第2のセットの2つの対が含まれる。第1の対は、トランジスタ3(Q3)とトランジスタ4(Q4)とを含み、第2の対は、トランジスタ5(Q5)とトランジスタ6(Q6)とを含む。任意選択で、スイッチングデバイス240の第2のセットの単一の対を含んでもよい。出力端子260の極性がDCバス212の極性と反対になるようにトランジスタ1(Q1)をイネーブルすると、トランジスタ4(Q4)およびトランジスタ6(Q6)のトグリング(toggling)は、DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14を充電するように動作する。反対に、出力端子260の極性がDCバス212の極性と反対になるようにトランジスタ1(Q1)をイネーブルすると、トランジスタ3(Q3)およびトランジスタ5(Q5)のトグリングは、DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14を放電するように動作する。出力端子260の極性がDCバス212の極性と同じになるようにトランジスタ2(Q2)をイネーブルにすると、トランジスタ3(Q3)およびトランジスタ5(Q5)のトグリングは、DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14を充電するように動作する。反対に、出力端子260の極性がDCバス212の極性と同じになるようにトランジスタ2(Q2)がイネーブルにされると、トランジスタ4(Q4)およびトランジスタ6(Q6)のトグリングは、DC/DC変換器24に接続されたセルスタック14を放電するように動作する。さらに、スイッチングデバイス230、240は、様々な組合せで、かつ、出力端子260における電圧の極性を制御し、セルスタック14を充電/放電するための様々な制御ルーチンにしたがって制御され得ることが企図される。
【0050】
また、
図30〜
図33を参照すると、バッテリー端子55に存在する順電圧極性と逆電圧極性の両方で充電および放電する間の電力変換器24の動作が開示されている。標準動作(すなわち、セルスタック14の均等化またはストリッピング以外の動作)中、プロセッサ204は、メモリデバイス202から、DC/DC変換器24がセルスタック14を充電するかまたは放電する電圧設定点を取り出す。DC/DC変換器24は、
図30および
図31、あるいは
図32および
図33のいずれかにしたがって、バッテリー端子55においてその時点で指令される極性にしたがって動作する。極性反転が指令された場合、DC/DC変換器24は、セルスタック14を完全に放電し、セルスタック14に印加される電圧の極性を反転させ、セルスタック14を再充電し始める。DC/DC変換器24は、次いで、
図30および
図31、あるいは
図32および
図33のいずれかにしたがって、バッテリー端子55においてその時点で指令される新しい極性による求めに応じて、標準作業を再開する。
【0051】
DC/DC変換器24が標準動作で実行している間、プロセッサ200は動作記録を維持する。任意選択で、モジュールコントローラ100は、DC/DC変換器24の各々の動作記録を維持し、動作持続時間に応じて各DC/DC変換器24の所望の動作モードを指令する。所定のインターバルの後、DC/DC変換器24は、セル均等化ルーチンに入る。セル均等化プロセスは、セルスタック14における有害な亜鉛デンドライトの形成を防止するために必要とされる。
【0052】
本発明の1つの実施形態によれば、DC/DC変換器24の動作を追跡するために、ポイントシステムが利用される。DC/DC変換器24またはモジュールコントローラ100のいずれかは、バッテリーシステム10の特定のセルスタック14各々の健全性を予想する手段として、DCバス28とセルスタック14との間を流れる電流および他の動作状態を監視する。電流および他の監視される状態は、整数値またはポイントに変換される。これらのポイントの合計がユーザにより決定された最大値に達すると、DC/DC変換器24は、放電専用モードに入り、セル均等化プロセスを開始するように指令される。監視される状態は、限定はしないが、セルスタック14の総充電・放電(アンペア時間)、セルスタック14の充電・放電の速度、ならびに、ストリップサイクル間にセルスタック14が充電状態から放電状態に循環した回数のようなファクタを含み得る。モジュールコントローラ100はさらに、最小記憶容量を維持するように、一度に均等化ルーチンに入るセルスタック14の数を制限する。したがって、均等化ルーチンに入ると、DC/DC変換器24によって累積されるポイント数が変動し得る。このポイント数は、ストリップサイクルのタイプ、およびセルスタック14がストリップサイクルである時間の長さを判断するために使用することができる。セルスタック14の使用を追跡することによって、均等化を必要とするセルスタック14のみが、バッテリーシステム10全体のストリップを実施するのではなく、均等化ルーチンに入るように指令され、全体的なシステムアベイラビリティが最適化される。任意選択で、DC/DC変換器は、動作時間のみに基づいて、ストリップサイクルに入るように指令され得る。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、セルスタック14において充電/放電サイクルの持続時間を追跡するさらに他の方法を利用することができることが企図される。
【0053】
次に
図34を参照すると、改善された均等化ルーチン300の各ステップが示されている。ステップ302において、DC/DC変換器24は、均等化ルーチンに入るためのコマンドを受信する。コマンドは、接続されたセルスタック14の充電/放電サイクルの動作を監視することに応じて内部で発生され得る。任意選択で、モジュールコントローラ100からコマンドを受信してもよい。DC/DC変換器24は、たとえば、ヒステリシス制御のための設定点を変更することによって放電モードに入る。ヒステリシス制御の放電設定点が、DCバス28上の電圧の所望の値よりも大きい値に設定された場合、DC/DC変換器24は、その対応するセルスタック14をDCバス28に放電し始める。DCバス28または残りのセルスタック14のいずれかの上に存在する負荷は、DCバス28上で所望の電圧レベルを維持するために、DCバス28からエネルギーを引き出す。ステップ306において、均等化ルーチンは、DC/DC変換器24は対応するセルスタック14を放電し、バッテリー上に存在する電圧がゼロボルトに達するまで、放電ステップ304にループバックし続ける。ゼロボルトに達すると、DC/DC変換器24は、ステップ308に示すように、バッテリー端子55上に存在する極性を反転させる。DC/DC変換器24は、次いで、バッテリー端子に存在する反転した極性でセルスタック14を充電し始める。均等化ルーチン300はセル反転とは関係ないので、セルスタック14の放電は、連続して低減される段階状の電流の放電が行われるように求めるのではなく、高速でゼロボルトまで下がり続け得る。
【0054】
次に
図35を参照すると、均等化ルーチン300の放電ステップ304がより詳細に示されている。放電中、DC/DC変換器24は、ステップ320に示すように、セルスタック14に存在する電圧の振幅を監視する。ステップ322において、電圧の振幅を初期閾値と比較する。電圧の振幅が初期閾値よりも大きい場合、DC/DC変換器24は、ステップ324に示すように、セルスタック14からDCバス28への電流を調整し、セルスタック14を放電する。電圧の振幅が初期閾値を下回る場合、放電ルーチンは、ステップ326において、電圧の振幅がゼロボルトに達したかどうかを検査する。電圧の振幅が初期閾値を下回るがゼロボルトよりも大きいままであるときは、ステップ328に示すように、高損失スイッチングモジュールをイネーブルする。電圧の振幅がゼロボルトに達したときには、ステップ330に示すように、高損失スイッチングモジュールをディスエーブルする。したがって、DC/DC変換器24は、DCバス28に接続された入力端子210上の極性を維持しながら、かつ、DC電流を双方向に連続して調整しながら、セルスタック14に接続された出力端子260に存在する電圧の極性を自動的に反転させるように動作可能である。セルスタック14における電圧の極性を反転させるこの能力は、フローバッテリーのセル均等化を加速し、バッテリーシステム10の残りの部分によって見られるコモン極性をDC/DC変換器24の入力で維持しながらフローバッテリーモジュールの反転充電を可能にする。
【0055】
次に
図36を参照すると、高損失スイッチングモジュール350は、ステップ352に示すように、変調ルーチンのスイッチング周波数を制御し、「アクティブレジスタ」として機能するスイッチングデバイス230、240のゲート信号206、208を発生する(
図29参照)。エネルギーを散逸させ得るレジスタが接続される従来の放電方法とは対照的に、高損失スイッチングモジュール350は、スイッチングデバイス230、240でエネルギーを散逸させる。変調ルーチンのスイッチング周波数を増大させることによって、スイッチングデバイス230、240は、より高い周波数でオン/オフされ、その結果、前記スイッチングに関連する損失が増大する。バッテリー端子55における電圧が初期閾値を下回るまで待つことによって、電圧、したがってスイッチングデバイス230、240上の電力が低減される。電流基準はステップ354においても低減され得、それにより、スイッチングデバイス230、240の各遷移部(transition)上で散逸する電力がさらに低減される。
【0056】
さらなる利点として、スイッチング周波数は、標準動作周波数と上限値との間で線形に変動させることができる。本発明の1つの実施形態によれば、スイッチング周波数は、DC/DC変換器24によって使用される元のスイッチング周波数の4〜16倍に増大し得る。対照的に、レジスタの従来の接続は、単一の抵抗または一連の階段状の抵抗を生じ、その結果、放電されるときに、セルスタック14から定形の段階状の電流が引き出される。ブロック358から放電ブロック356に戻るように
図36には示されているが、高損失スイッチングモジュール350は、ブロック358からスイッチング周波数変更ブロック352に戻るように構成することができ、連続的に変動するスイッチング周波数が実装され得る。ステップ356において、高損失スイッチングモジュール350は、セルスタック14を放電するために、選択されたスイッチング周波数および電流基準で動作する。ステップ358において、セルスタック14上の電圧レベルを監視する。セルスタック14上の電圧レベルが、より低い第2の閾値を下回ったとき、スイッチングデバイスのうちの1つまたは複数がラッチされ得、短絡を発生させてセルスタック14を完全に放電する。セルスタック14の内部抵抗は、この短絡動作状態下での電流を制限する。有効抵抗として働くことによって、高損失スイッチングモジュール350は、典型的には固定されたパッシブ抵抗方式とは対照的に、広い動作周波数にわたって線形に変動する抵抗手法を用いてセルを等化する方法を提供する。DC/DC変換器24は、各々の範囲設定における完全なフレキシビリティとともに、極性反転、高損失スイッチングモジュール350、またはそれらの両方を戦略的に実装する能力を有する。
【0057】
本発明は、
図29に示したDC/DC変換器24に関して論じてきたが、電力変換器が、DCバス212と出力端子260との間の双方向電流フローを調整し、出力端子260における電圧の極性を制御するように構成される限り、本発明の範囲から逸脱することなく、電力変換器の多数の他の構成を採用することができることがさらに企図される。
【0058】
以下に、モジュール10の構成要素の様々な属性およびモジュール10の動作についてさらに詳細に記載する。
【0059】
モジュール電解液タンク16−臭素錯体の貯蔵、制御およびレベル管理
設計は、オーバーフロー保護のために頂部ですべてが接続された3つの別個のタンク16を使用すること伴う。タンク液面は、ポンプ速度とタンク中の流体高さに起因する異なるヘッド圧力によって制御される。タンクは、ポンプおよび鉛管類のための凹型エリアを有するように回転成形される。
【0060】
バッテリーセルおよびフローフレーム設計−非常に広範囲の流体パラメータ下で一貫した流量分布を与える。他のフローバッテリーケミストリーに対して効率的かつ好適。
連続する分岐によって2P分布(すなわち、2パラメータ分布関数)を達成するためにプレナムなフローフレーム34において適用される手法がいくつかある。単相流体または多相流体を均等に分布させるために、各分岐において均等な水平方向流量と十分な濁度とを達成する解決策を設計した。
【0061】
バッテリー充電状態インジケータ
2Pタンク底部圧力は、浸水型圧力トランスデューサを使用してロギングされる。
図28を参照すると、充電中に2Pが構築される(3つのスタック上に約1時間、100Aで沈降し始める)と、圧力は、線形関数として、したがって、SOCに比例して増大する。放電中、4WVは5〜15分ごとに回転し、迅速な2Pレベルドロップオフでそのスタック中に2Pビルドアップを引き起こす。
【0062】
フローバッテリーのための電解液ストレージタンクにおける電解液圧力を測定することによってバッテリーSOCを測定することが発明の目的である。タンク圧力をロギングすることによって電解液密度の変化を記録することは、おそらく新規であり、亜鉛臭素フローバッテリー中の臭素相のための別個のストレージタンクによって達成することができる。
【0063】
最高効率、長期シャットダウンおよび脱気プロセスのためのモジュール電解液フロー制御 モジュールコントローラ100は、フローシステム、温度管理および保護を制御し、モジュールのすべての面の監視するように設計される。モジュールコントローラ100は、ハードウェアが何モードであるべきかを判断するために、8つのセルスタックを監視する。たとえば、いずれか1つのスタックが放電している場合、モジュールは、放電のために第2相弁を開く。また、モジュールコントローラは、ファンと熱交換器とのシステムを使用してバッテリー温度を維持する。また、不良およびシステムメッセージも処理される。たとえば、モジュールがハードウェア不良を有する場合、コントローラは適切な動作をとって、バッテリーを安全にシャットダウンし、システムコントローラに不良を通知する。モジュールコントローラは、ストリッピング機能およびすべての動作モードを管理する。
【0064】
臭素が豊富な第2相をセルスタックから濯ぎ落とすために、シャットダウンプロシージャが開発され、それにより、バッテリーを無期限に部分充電状態にしたままにすることができる。臭素相と水相とを分離する機構(feature)を含むような2Pタンクは、このプロシージャにおいて一翼を担い、制御されたディスパッチのために2Pタンクに臭素が貯蔵されたままになる。シャットダウンプロシージャ中、四方弁32は、前進位置(スタックの頂部から底部に)へと回転され、セルスタックへと進む臭素の量を最小限に抑えるために第2相弁が閉じられ、ポンプ19は、低減された速度ハードウェア不良で動作するか、あるいはパルスして、スタックを通して電解液を循環させ、臭素相をパージする。バッテリーは、次いで、セルスタック中に反応性化学物質が残っている場合にはそれを除去するために放電される。バッテリーが安全な電圧に達すると、ポンプが停止し、バッテリーは、無期限にこの状態のままでいることが可能になる。
【0065】
専用の熱交換器26を使用するモジュール温度管理および調整
電解液温度が許容可能な動作範囲を超えることを防止するために、陽極液は、空冷式熱交換器26を使用してバッテリーモジュール上で直接的に冷却される。腐食性電解液に抵抗するために、この熱交換器のチューブ側は、高純度チタン材料を使用して作製される。この熱交換器の空気側は、アルミニウムフィンを使用し、この交換器を通して周囲空気をファンで押し進めて冷却が行われる。また、この交換器26は、電解液電圧でフロートし、腐食を加速させる漏れ電流がないように電気的に絶縁される。
【0066】
デュアル(AC/DC)電源
単一のデバイスを利用して制御電力および/または補助電力が提供され、電力源が冗長電源から導出される。電源が高電圧を利用する場合、バッテリーモジュールの調整されたDCバス電圧が出力され、および/またはPECCシステムまたは外部のAC電源のインバータのAC側からPECCコモンDCバスならびにAC電源で出力される。したがって、ユーティリティグリッドのような接続されたAC電源を用いるか用いないかにかかわらず、完全に動作可能なシステムの能力を提供し、ただし、1次/好適な電源は、DCバスに接続されているように、可能な場合には優先度の高い再生可能エネルギー発生を利用し、利用可能でないときにはグリッド電源のみを利用することを目的として、DC入力として確立される。デュアル電源は、制御/補助出力に対して完全にシームレスなままである。デバイスは、所望の冗長度のために複数のソース入力を有し得、1つまたは複数の出力を提供し得るようなものである。
【0067】
補助装置に電力供給するためにコモンDCバス28を使用
フローバッテリーデバイス(ポンプ、コントローラ、ファン、ヒータなど)の補助電源のための複数の調整および絶縁されたDC電圧を提供し制御する単一の包括デバイス(補助電源・制御モジュール(APC))、すべての補助装備および機器に対する完全なDSPベースの制御、ならびにフローバッテリーにおけるフローバッテリー充放電制御、あるいはフローバッテリーが動作するために必要とする必須なものを含む。さらに、デバイスは、セットアップおよび制御、ならびにフローバッテリーにおける機械的側面と電気的側面の両方の完全な監視を行うための外部通信を含む。デバイス(補助電源・制御モジュール)は、マウンティングスタンドオフ、電力、i/oおよび通信とともに単一ボード上にパッケージングされる。ただし、デバイスは、コモン調整DCバスから、フローバッテリーモジュール、あるいはPECCコモンバスのようなコモンdcバスに接続され得る他のエネルギー貯蔵デバイスまたはソースの出力において、そのソースを導出する。代替的な発生ソースがない場合でさえ、フローバッテリーモジュールが自立運転する結果となる。エネルギーが、フローバッテリー自体に貯蔵され、そこから使用可能であり、フローバッテリーを動作させ制御するための任意の外部または間接ソースに依存していない限り、すべての環境上および動作上の相関性が維持され得る。
【0068】
バッテリー構成要素をオーバーモールド成形するための方法および材料
バッテリースタック14において、膜、電極および端子電極(TE)は、それぞれ対応する「フレーム」へと、すなわち、バッテリーハウジング(これらは一般に膜・電極アセンブリについてはフローフレームと呼ばれ、TEアセンブリについてはエンドキャップと呼ばれる)へとインサート成形される。電極およびフレームプラスチックは、これらの材料間のインサート成形接着を改善するように変更される。両方の材料は、摂氏230度、2.16kgにおいて60〜120gm/10分の範囲の高MFIポリプロピレンを含有する。また、両方の材料は、ポリオレフィンエラストマー(エチレンオクテン共重合体)も含有する。これらの添加剤は、プラスチックの移動性および混和性を高め、インサートと射出されたフレームとの間の凝集力を大きくする。
【0069】
また、インサートは、インサート成形プロセスの直前に、少なくとも華氏200度まで予熱される。これには二重の目的があり、第1には、インサートの表面を溶融させるための射出されたプラスチックからの必要な熱伝達を減少させ、それにより、両方の材料が溶融状態にある時間が増え、したがって、より相互混合し、整合した結合が生成される。第2に、フレーム材料が成形の後に収縮する際のインサート上での圧縮を低減する。圧縮が低減されたことにより、より平坦でより低い圧力を加えられた部分が生じ、それにより、セルギャップおよび寸法全体の整合性が改善される。
【0070】
電極材料に活性化層を適用するための製造技法
現在のところ、電極材料に活性化層を適用するために使用される技法は3つある。第1の技法は、粒状活性炭(granular activated carbon)を適用するために使用され、第2および第3のプロセスは、シート形状(たとえば紙、フェルト、ガス拡散層)中に炭素材料を適用するために使用される。
1)多孔質ローラーを使用して、導電性接着剤を電極シートに適用する。次いで直ぐに、シートを粒状活性炭の流動床に浸漬する。次いで、このシートを乾燥させた後、炭素粒(carbon granule)が電極シートに部分的に浸水するようにこのシートを加圧加熱下で押圧する。これにより、炭素とプラスチックシートとの間に永続的な機械結合が生じる。
2)積層プロセスにおける電極の押出成形中に、炭素活性化層シートを電極シートに適用する。活性化層のタイプに応じて、それは、伝達プロセス中の安定化のための転写シートを必要とすることも、必要しないこともある。
3)電極シート上に活性化層を置き(またはプロセス1の通り接着し)、次いで、加圧加熱下で押圧する。プロセス1の通り、これは、機械結合を生成する電極中に活性化層を部分的に浸水する。
【0071】
端子電極55製造プロシージャ。
端子電極は、亜鉛臭素バッテリーの電流収集点である。現在の設計は、金属ラグまたはバスバーを使用し、金属ラグまたはバスバーは、はんだ付けプロセスまたは金属溶接プロセスのいずれかを使用して金属メッシュ材料に接続されている。その金属メッシュを導電性炭素プラスチックシートに埋め込んで、端子電極が形成される。
【0072】
現在の製造方法の場合、(拡張メッシュとバスバーとの超音波溶接アセンブリを備える)アルミニウム電流コレクタは、TEモールドに嵌合するように切断された電極材料のシートとともに、圧縮モールドに置かれる。次いで、このモールドを、ウォバッシュプレス(Wabash press)を使用して加圧下で加熱する。次いで、プラスチックを溶融し、所望のTE形状を形成する。次いで、モールドを加圧下で冷却し、モールドを開いて、一部を除去することができる。次いで、余剰材料(鋳バリ)が除去される。この部分は、陽極TEとして使用することができるが、それが陰極TEとなるべき場合には活性化層で被覆しなければならない。
【0073】
端子電極55製造プロセス。射出成形されたTE
新たに開発されたオーバーモールドプロセスは、平坦な端子電極を提供し、オーバーモールド成形されたフローフレーム材料を端子電極の導電性炭素プラスチックシートに結合するために開発された。ツーショット射出成形プロセスおよび導電性電極材料は、オーバーモールド成形されたエンドキャップをもつ端子電極を単一のモールドにおいて形成するために開発される。この開発努力における1つのファクタは、許容可能な導電性と射出成形可能性をもつ炭素充填プラスチック材料を達成することである。これは、ポリプロピレンワックスのような超低分子量プラスチック材料を使用して達成することができる。このプロセスにより、複数の構成要素から成る電極/エンドキャップがツーショット成形される。
【0074】
マルチショットプロセスの場合、アルミニウム電流コレクタを射出モールドに挿入し、その周りに電極材料を射出成形する。この電極材料は、摂氏230度、2.16kgでMFI>1gm/10分の射出グレード材料である必要がある。TEがモールド中にある間に、その周りにフレーム材料を射出してエンドキャップアセンブリを完成させる。次いで、後のステップにおいて、加熱加圧プロセスによって(陰極エンドキャップのための)活性化層を適用する。
【0075】
バッテリー電極55材料フォーミュレーションおよび製造プロセス
V3バッテリーのための電極は、押出グレードの、炭素とガラスとを充填したポリプロピレンである。フォーミュレーションを以下の表1に示す。
【0076】
【表1】
表1:電極のフォーミュレーション
ただし、
・MFI:メルトフローインデックス(摂氏230度、5kgにおいて何gm/10分であるか)
・低MFIポリプロピレン(PP)のMFIは、摂氏230度、2.16kgにおいて1〜10gm/10分である。この材料は、押出グレード材料を達成することが必要であり、炭素充填剤の分散を改善し、それにより、材料の導電性が増大する。
・高MFIポリプロピレン(PP)のMFIは、摂氏230度、2.16kgにおいて10〜130gm/10分である。この材料は射出成形プロセスを改善するために使用される。
・ガラス繊維は、材料安定性、臭素に対する耐性、および熱膨張を改善することを必要とされる。
・グラファイトは、材料安定性および導電性のために使用される。
・カーボンブラックは、導電性のために使用され、電極材料がバルク抵抗率<2Ωcmおよび表面抵抗率<10Ω/cmを達成することを可能にする。
・ポリオレフィンエラストマーは、インサート成形プロセスを改善するために使用される。
・電極55のための1つのより詳細なフォーミュレーションを以下の表2に示し、MFIは1未満である。
【0077】
【表2】
表2:電極のフォーミュレーション
上記の材料は、すべてがフォーミュレーション中に存在する必要はないが、フォーミュレーションの具体的な実施形態を示す。バッテリー電極材料のための代替的な構成要素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、マイクログラファイト、インサート成形接着促進剤、ガラスビーズ、タルク、マイカ、カップリング剤、安定化充填剤、結晶化度促進剤、および抗酸化剤
を含む。
【0078】
バッテリーフローフレーム24材料フォーミュレーションおよび製造プロセス。
バッテリーのためのフレーム材料は、射出グレードの、ガラスを充填したポリプロピレンである。フォーミュレーションを以下の表3に示し、MFIは約25〜50である。
【0079】
【表3】
表3:バッテリーフレーム材料のフォーミュレーション
ただし、
・最終化合物のMFI(メルトフローインデックス)は、摂氏230度、2.16kgにおいて12〜50gm/10分である。
・PP(ポリプロピレン)は、最終的に所望されるMFIを達成するために、単一のタイプまたはブレンド材とすることができる。
・ガラス繊維は、材料の収縮を低減させるために使用される。
・カップリング剤(無水マレイン酸改質ポリプロピレン)は、ガラスをポリプロピレンに結合するために使用され、それにより、材料強度、安定度、および臭素耐性が改善される。
・ポリオレフィンエラストマー(エチレンオクテン共重合体)は、インサート成形プロセスを改善するために使用される。
【0080】
フローフレーム23のための1つのより詳細なフォーミュレーションを以下の表4に示し、MFIは約40である。
【0081】
【表4】
表4:バッテリーフレーム材料のフォーミュレーション
上記の材料は、すべてがフォーミュレーション中に存在する必要はないが、フォーミュレーションの具体的な実施形態を示す。フレーム材料のための代替的な構成要素は、
インサート成形接着促進剤、ガラスビーズ、タルク、マイカ、カップリング剤、安定化充填剤、結晶化度促進剤、および抗酸化剤
を含む。
【0082】
本発明は、本明細書に記載した構成要素の構造および構成の詳細への適用に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、様々な方法で実施または実行することが可能である。上記の変形形態および修正形態は、本発明の範囲に含まれる。また、本明細書で開示および規定される本発明は、説明した個々の機構(feature)またはテキストおよび/または図面から明白な個々の機構のうちの2つ以上のすべての代替的な組合せに及ぶことが理解されよう。これらの異なる組合せのすべては、様々な本発明の代替的な態様を構成する。本明細書に記載した実施形態は、本発明を実施するために知られている最良の形態について説明しており、当業者が本発明を利用することを可能にする。