(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207714
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】紙熱積層用のフィルム組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20170925BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20170925BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B27/10
B65D65/40 D
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-503505(P2016-503505)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-522758(P2016-522758A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】CN2013072826
(87)【国際公開番号】WO2014146237
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェイ・リー
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・ビー・ユン
(72)【発明者】
【氏名】エン・ケイ・マ
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−082736(JP,A)
【文献】
特開2004−042937(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/129080(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/092328(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/071826(WO,A1)
【文献】
特開2002−146343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/00−65/46
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.50℃〜89℃の範囲の融点を有するカルボン酸無水物官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー及び/または50℃〜89℃の範囲の融点を有するカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーであって、前記カルボン酸無水物またはカルボン酸官能基が、ポリエチレン系樹脂の0.02〜0.3重量パーセントの量で存在するカルボン酸無水物官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーと、融点が89℃より低いポリオレフィンエラストマー樹脂を含む外皮層と、
b.ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂を含む基材層と、を含む、多層フィルム。
【請求項2】
前記外皮層が、3〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項3】
前記外皮層が、4〜12ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項4】
前記外皮層が、10〜30ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項5】
1つ以上の追加の層を更に含む、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項6】
前記フィルムが、前記基材層と前記外皮層との間に下塗りを含む、請求項5に記載の前記フィルム。
【請求項7】
追加の層がバリア層である、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項8】
前記基材層が二軸配向される、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項9】
前記無水物及び/またはカルボン酸含有官能基が、無水マレイン酸である、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項10】
前記無水マレイン酸グラフトポリエチレン系樹脂が、50〜89℃の範囲の融点を有する、請求項9に記載の前記フィルム。
【請求項11】
前記基材層が、10〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項12】
前記基材層が、10〜20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項13】
前記フィルムが、10〜100ミクロンの範囲の全厚を有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項14】
前記外皮層が、コロナ、火炎、またはプラズマにより表面処理されており、36ダイン以上の表面張力を有する、請求項1に記載の前記フィルム。
【請求項15】
a.請求項1に記載の前記多層フィルムと、
b.紙基材と、を含む、熱積層紙構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材への熱積層に特に好適な多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
書籍、雑誌包飾紙箱、買い物袋などの高品質紙用途には、典型的には紙原料に結合したポリマーフィルムが含まれる。これらの高品質紙用途は、通常、表面保護、耐水性、機械的強度、及び高い表面光沢などの特質を必要とする。そのような特性は、二軸配向ポリプロピレン(「BOPP」)または二軸配向ポリエチレンテレフタレート(「BOPET」)などの周知のポリマーにより提供され得るが、そのようなポリマーは、典型的には紙原料に良好に接着しない。したがって、より複雑なフィルム構造が、そのような用途に使用されている。
【0003】
現在、好まれるフィルム構造は、BOPPまたはBOPETなどの基材に接着しているエチレン酢酸ビニルポリマー(「EVA」)の層を含む。EVA押出塗布BOPPまたはBOPETフィルム構造は、長年にわたって、紙原料に熱積層されている。EVA塗布層の厚さは、一般に、5〜50ミクロンの範囲である。18〜20重量パーセントの範囲の酢酸ビニル含有量を有し、14〜20g/10分の範囲のメルトインデックス(190℃、2.16kg)を有するEVAが通常用いられており、これは、75℃〜85℃の範囲の融点を有する。低融点と酢酸ビニル基の固有の極性との組み合わせは、より効率的な加工のために、EVA押出塗布フィルムに非常に良好な紙接着性及び低い積層開始温度を付与する。しかしながら、EVAは、加工中に劣化する傾向があり、このことは、フィルムゲル、黄変、臭気などの問題を引き起こし得る。EVAの加工温度は、劣化を回避するために、250℃を下回るように維持されなければならない。その一方で、EVAを生成するために典型的に使用されるオートクレーブ反応器の世界的な不足は、このような用途におけるそのような樹脂の長期の利用可能性に悪影響を及ぼす。
【0004】
ポリマーフィルムを紙に接着させる別の利用可能な技術は、一段階共押出テンターフレーム連続配向プロセスにより、機能性外皮層を基材(例えば、BOPP)に組み込むことである。そのような技術は、以下の参考文献:カナダ特許第100534787C号、カナダ特許第100566994C号、及び国際公報第2008092328(A1)号に記載されている。これらの参考文献は、一般に、少なくとも2つの成分から構成される機能性外皮層を有するBOPPフィルム構造を教示する。第1の成分は、ブテンから誘導された10〜30重量%の単位を有するエチレン−ブテンコポリマー、オクテンから誘導された5〜20重量%の単位を有するエチレン−オクテンコポリマー、またはブテンから誘導された1〜30重量%の単位及びオクテンから誘導された1〜20重量%の単位を有するエチレン−ブテン−オクテンターポリマーであり得る。第2の成分は、第1の成分の無水マレイン酸グラフト型であり、無水マレイン酸は、0.5〜2重量%の量でグラフトされている。
【0005】
これらの参考文献において、オクテン含有量の20重量%の上限は、0.895g/cm
3以上の範囲の密度を表し、特許請求されるMAH−g樹脂の密度も限定する。特許請求されるE−O樹脂及びこれらのMAHグラフト誘導体のDSC融点は、特許請求されるこのオクテン%に基づいて95℃以上である。したがって、そのような高融点PE及びMAHグラフトPE樹脂から構成される機能性外皮層を有する特許請求されるBOPPフィルムは、上記に記述されたEVA押出塗布(ex−coated)フィルムよりも低い紙接着強度及び高い積層温度を有する。
【0006】
したがって、紙供給業者または製紙業者は、代替物を捜し求めている。本発明は、無水物及び/または50〜89℃の範囲の融点を有するカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを含む外皮層を含む多層フィルムに関し、無水物及び/またはカルボン酸は、ポリエチレン系樹脂の0.02〜0.3重量パーセントの量で存在する。多層フィルムは、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂を含む基材層を更に含む。
【0007】
本発明のフィルムは、90℃を下回る融点を有する樹脂から構成される機能性外皮層を有し、上記の当該技術に開示される技術よりも高い紙接着強度及び低い積層温度を与えることができる。
【0008】
本発明のフィルム組成物は、フィルムが、低い適用積層温度で良好な紙接着を達成し、ひいては急速な積層ライン速度を達成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に提示される示される実施例の積層温度の関数としての接着力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語「組成物」には、本明細書で使用されるとき、組成物を含む材料、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物の混合物が含まれる。
【0011】
用語「ポリマー」には、本明細書で使用されるとき、同じまたは異なる種類のモノマーを重合することにより調製される、ポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという一般用語は、以下に定義される、ホモポリマー(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)、コポリマー、及びインターポリマーという用語を包含する。
【0012】
用語「インターポリマー」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという一般用語は、コポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び2つを超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーが含まれる。
【0013】
用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書で使用されるとき、重合形態のエチレンモノマーを(ポリマーに重量に基づいて)過半数含み、任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0014】
用語「エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー」は、本明細書で使用されるとき、重合形態のエチレンモノマーを(ポリマーに重量に基づいて)過半数、及び1つ以上の追加のアルファ−オレフィンモノマーを含むインターポリマーを指す。用語「エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマー」には、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、ならびに複数のモノマーから誘導されるターポリマー及び他のポリマーが含まれる。
【0015】
用語「エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー」は、本明細書で使用されるとき、重合形態のエチレンモノマーを(コポリマーに重量に基づいて)過半数及びアルファ−オレフィンを、2つのみのモノマー型として含むコポリマーを指す。
【0016】
用語「EVOH」は、本明細書で使用されるとき、エチレン及びビニルアルコールの反復単位を含むポリマーを指す。当該技術において一般に知られているように、エチレンとビニルアルコールの重量比は、バリア特性を定義する。そのようなポリマー及びこれらの製造方法は、当該技術において一般に知られている。
【0017】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、及びこれらの派生語は、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を、これらが特定的に開示されているかにかかわらず、除外することを意図しない。あらゆる疑念を回避するため、用語「含む(comprising)」の使用を介して特許請求される全ての組成物は、任意の追加の添加剤、補助剤、または化合物を、特に異なる記述のない限り、ポリマーであるか、そうでないかにかかわらず含むことができる。対照的に、用語「実質的になる」は、操作性に必須でないものを除いて、任意の他の成分、ステップ、または手順の任意の後続詳述の範囲を除外する。用語「からなる」は、特定的に叙述または列挙されない任意の成分、ステップ、または手順を除外する。
【0018】
試験方法
メルトインデックス
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I
2またはMI)は、ASTM D−1238、条件190℃/2.16kgに従って測定される。高I
2ポリマーの場合(200g/モル以上のI
2、メルトインデックスは、好ましくは、米国特許第6,335,410号、同第6,054,544号、同第6,723,810号に記載されるブルックフィールド粘度から計算される。I
2(190℃/2.16kg)=3.6126[10(log(η)−6.6928)/−1.1363]−9.31851、ここでη=350°Fでの溶融粘度(cP)である。
【0019】
DSC
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、ポリエチレン(PE)系試料の結晶化度を測定する。約5〜8ミリグラムの試料を秤量し、DSCパンの中に置く。蓋をパンに圧着して、密閉雰囲気を確実にする。試料パンをDSCセルの中に置き、次におよそ10℃/分の速度で加熱して、PEの温度を180℃にする。試料をこの温度で3分間保持する。次に試料を10℃/分の速度で冷却して、PEを約−60℃にし、その温度で等温的に3分間保持する。次に試料を、完全に溶融するまで、10℃/分の速度で加熱する(第2の加熱)。結晶化率は、第2の加熱曲線から決定された融解熱(Hf)を、PEの理論的融解熱の292J/gで割り、この数量に100を乗じることにより計算される(例えば、PEの場合、結晶化率=(Hf/292J/g)×100。
【0020】
特に記述のない限り、それぞれのポリマーの融点(Tm)は、上述のように、DSCから得た第2の加熱曲線から決定される。結晶化温度(Tc)は、第1の冷却曲線から測定される。
【0021】
密度
密度は、ASTM D−792に従って測定される。測定された密度は、「即密度」であり、密度が成形1時間後に決定されたことを意味する。
【0022】
無水マレイン酸含有量−フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析
無水マレイン酸の濃度は、波数1791cm−1での無水マレイン酸のピーク高と、ポリエチレンの場合では波数2019cm−1であるポリマー基準ピークとの比により決定される。無水マレイン酸含有量は、この比に、適切な較正定数を乗じることにより計算される。マレイン酸グラフトポリオレフィン(ポリエチレンの基準ピークを有する)に使用される方程式は、方程式1に示される以下の形態を有する。
MAH(重量%)=A
*{[FTIRピーク領域@1791cm−1]/[FTIRピーク領域2019cm−1]+B
*[FTIRピーク領域@1712cm−1]/[FTIR_ピーク領域@2019cm−1]}(方程式1)
【0023】
較正定数Aは、C13NMR基準を使用して決定することができる。実際の較正定数は、機器及びポリマーに応じて僅かに異なり得る。波数1712cm−1での第2の成分は、マレイン酸の存在を説明し、これは新たにグラフトされた材料では無視できるほどである。しかしながら、時間が経つにつれ、無水マレイン酸は、水分の存在下で容易にマレイン酸に変換される。表面積に応じて、有意な加水分解が周囲条件下で、僅か数日間で生じ得る。酸は、波数1712cm−1に明確なピークを有する。方程式1の定数Bは、無水物と酸基の消衰係数の差の補正である。
【0024】
試料調製手順は、典型的には、2つの保護フィルム間で150〜180℃での1時間の加熱プレスにより0.05〜0.15ミリメートルの厚さの圧縮物を作製することによって開始する。Mylar及びTeflonが、試料をプラテンから保護するのに適した保護フィルムである。アルミニウム箔は絶対に使用してはならない(無水マレイン酸はアルミニウムと反応する)。プラテンは、約5分間にわたって圧力(約10トン)下にあるべきである。試料を室温に冷まし、適切な試料保持器に配置し、次にFTIRで走査する。バックグラウンド走査は、それぞれの試料走査の前に、または必要に応じて実施するべきである。試験の精度は良好であり、固有の変動性は、±5%未満である。試料を、乾燥剤と共に保存して、過剰な加水分解を防止するべきである。生成物中の含水量を測定して、0.1重量パーセントの高さであった。しかしながら、無水物から酸への変換は、温度により可逆的であるが、完全な変換までに、最大1週間かかり得る。変換は、150℃で真空オーブンにより最適に実施され、良好な真空(ほぼ30インチのHg)が必要である。真空が適正とはいえない場合、試料が酸化する傾向があり、およそ1740cm−1に赤外ピークをもたらし、グラフトレベルの値を低くしすぎる。無水マレイン酸及び酸は、それぞれ、約1791及び1712cm−1のピークで表される。
【0025】
多層フィルム
本発明は、無水物及び/または50℃〜89℃の範囲の融点を有するカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを含む外皮層を含む多層フィルムに関し、無水物またはカルボン酸官能基は、ポリエチレン系樹脂の0.02〜0.3重量パーセントの量で存在する。多層フィルムは、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂を含む基材層を更に含む。
【0026】
外皮層
本発明のフィルムの外皮層は、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを含む。官能化インターポリマーは、50℃〜89℃の範囲、より好ましくは60〜80℃の範囲の融点を有する。
【0027】
本発明の別の実施形態において、外皮層は、エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーまたは他のポリマーとブレンドしたMAH官能化インターポリマーである。
【0028】
無水物またはカルボン酸官能基は、外皮層全体においてポリエチレン系樹脂の0.02〜0.3重量パーセント、好ましくは外皮層全体において0.04〜0.2重量パーセントの量で存在する。好ましいアルファ−オレフィンには、C
3〜C
20αオレフィン、好ましくはC
3〜C
10αオレフィンが含まれるが、これらに限定されない。より好ましいαオレフィンには、プロピレン、1−ブテン、1−ペンタン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン、より好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテンが含まれる。好ましくは、コモノマーがオクテンまたはヘキセンである場合、コモノマー含有量は、20%〜40重量%であり、コモノマーがブテンである場合、コモノマー含有量は、15%〜30重量%であり、残部は、好ましくはエチレンである。
【0029】
無水物及び/またはカルボン酸官能化は、無水物またはカルボン酸官能基を有する任意の材料であり得、当該技術において一般に知られている。無水マレイン酸は、官能化に特に好ましい材料である。
【0030】
同様に、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、2g/10分、3g/10分、4g/10分、5g/10分、または更には6g/10分以上のメルトインデックス(I
2)または算出メルトインデックス(I
2)を有することが好ましい。一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーは、40g/10分以下、更には35g/10分以下、より更には25g/10分以下のメルトインデックス(I
2)または算出メルトインデックス(I
2)を有する。
【0031】
無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマーは、DSCにより決定される、40パーセント以下、更には30パーセント以下、更には20パーセント以下の結晶化率を有利に有し得る。一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマーは、DSCにより決定される、2パーセント以上、更には5パーセント以上、更には10パーセント以上の結晶化率を有する。
【0032】
一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマーは、0.850g/cm
3以上、更には0.855g/cm
3以上、更には0.860g/cm
3以上の密度を有する。一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマーは、0.900g/cm
3以下、更には0.895g/cm
3以下、更には0.890g/cm
3以下の密度を有する。一実施形態において、無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマーは、0.855g/cm
3〜0.900g/cm
3、更には0.860g/cm
3〜0.895g/cm
3、更には0.865g/cm
3〜0.890g/cm
3の密度を有する。
【0033】
外皮層は、75〜100重量パーセント、好ましくは5%〜30%または10%〜20%の重量パーセントの無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを含む。外皮層は、本明細書に記載される2つ以上の無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレンアルファ−オレフィンインターポリマー実施形態を含み得ることも考慮される。1つ以上の無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーとブレンドされ得る他の材料には、非官能化エチレン/アルファ−オレフィン、ならびにEVA、EEA、及び/またはイオノマーなどの材料が含まれ、当該技術において一般に知られている。
【0034】
本発明の多層フィルムの外皮層に使用される無水物及び/またはカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーとしての使用に適した材料は、PCT/CN12/076986及び米国特許仮出願第61/722,274号(それぞれその全体が参照として組み込まれる)に記載される官能化低分子量エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーである。
【0035】
外皮層は、好ましくは3〜50ミクロンの範囲、より好ましくは4〜12ミクロン、更により好ましくは10〜30ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0036】
基材層
本発明の多層フィルムは、基材層を更に含む。基材層は、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂を含む。基材層は、好ましくは二軸配向されて、高い剛性、高い光沢、及び高い寸法安定性を取得する。これらの基材の表面は改質されて、非常に高い雲り度及び紙様外観などの幾つかの特殊な特性を得ることができる。
【0037】
好ましくは、使用される場合、ポリプロピレンはホモポリプロピレンである。
【0038】
好ましくは、基材層に使用される樹脂は、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート材料を100%含むが、他の材料が25重量%未満、より好ましくは5%未満の量でブレンドされ得ることが考慮される。本明細書に記載される2つ以上の異なるポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートポリマーを、基材層として使用できることも考慮される。
【0039】
好ましくは、基材層は、10〜50ミクロン、より好ましくは10〜20ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0040】
基材及び/または外皮層は、鉱油または他の可塑剤などの添加剤を含有し得る。当該技術において一般に既知の他の添加剤には、無機充填剤、伝導性充填剤、顔料、核剤、清澄剤、酸化防止剤、酸スカベンジャー、酸素スカベンジャー、難燃剤、紫外線吸収剤、ステアリン酸亜鉛などの加工助剤、押出助剤、滑剤、浸透性改質剤、帯電防止剤、粘着防止剤、及び他の熱可塑性ポリマーなどの材料が含まれる。
【0041】
フィルム構造
本発明のフィルムは、外皮層及び基材層のみからなるフィルムであり得るが、追加の層を有利に含有し得る。これらの追加の層は、基材層のいずれかの側面に位置し得る。本発明の有利に使用され得る1つの追加の層は、基材層と外皮層の間の下塗りである。そのような材料は、基材層と外皮層の間の接着を改善することが当該技術において知られている。有利に添加され得る他の材料には、EVOH、及びプロピレン系プラストマーもしくはエラストマー、プロピレンホモポリマー、MDPE、HDPE、LLDPE、LDPE、またはこれらのブレンドからなる群から選択される他のポリマー材料などの、バリア層が含まれる。追加の層は、一般名ポリアミド(Nylon−Dupontの商標)を有するポリマーの群から選択されるポリマー材料も有利に含み得る。
【0042】
本発明の多層フィルムは、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは15μm〜50μm、より好ましくは18μm〜30μmの範囲の全厚を有する。
【0043】
フィルムは、インフレートフィルム(blown film)及びキャストフィルム(cast film)を含む当該技術において一般に既知の任意のプロセスを使用して形成することができ、個別の層を共押出することができる。
【0044】
幾つかの用途において特に興味深いことに、フィルムを、フィルム形成ステップの後、縦方向もしくは横方向、または縦及び横方向の両方に配向することができる。
【0045】
本発明のフィルムを、コロナ処理、火炎処理、及びプラズマ処理などにより有利に処理することができ、当該技術において一般に知られている。
【0046】
本発明のフィルムは、紙基材への熱積層に特に良好に適している。
【0047】
本発明の多層フィルム構造は、生地板であり得るか、または有利に印刷され得る。印刷構造では、本発明の外皮層は、印刷インクと近接していることが一般に好ましい。
【0048】
本発明のポリマー、組成物、及びプロセス、ならびにこれらの使用は、以下の実施例により更に完全に説明される。以下の実施例は、本発明を例示する目的のために提供されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0049】
試験に用いられる樹脂の特性を表1にまとめる。
【0050】
以下の樹脂を使用して、一連のフィルムを作製し、次に以下に詳述されるように紙原料に積層した。
【0051】
【表1】
【0052】
押出塗布試験をパイロットラインにおいて実施する。このラインは、4台の押出機及び5層フィードブロックを備える。3台の押出機は、直径25mmの直径を有し、1台は30mmの直径を有する。スクリューは、長さ対直径比の25:1を有する。すべての押出機は、独立して動作することができ、したがって30mmの直径の押出機のみを本試験に使用する。この押出機は、樹脂をフィードブロックのコア層に供給する。300mm幅のスロットダイは、塗布ハンガー形状のものである。0.7mmのダイギャップを使用する。12ミクロンの化学下塗りBOPET基材を、制御巻出張力を用いる巻出機により供給する。インラインコロナ処理を備えていないので、フィルムは処理されない。
【0053】
試験に用いられる樹脂の特性を表1にまとめる。
【0054】
塗布層の試験実施設計を表2にまとめる。標的塗布層厚を30ミクロンに設定する。
【0055】
【表2】
【0056】
紙熱積層を、Shanghai Dow Centerのlab#2F510にあるChemInstrument Inc.により作製されたロールラミネーターにより行った。250gsmの黒色印刷クラフト紙を熱積層に用いた。
【0057】
主要なパラメーターは、
−積層速度:1.1mpm
−ニップ圧:0.38MPa
−積層温度:10℃間隔で70〜110℃
である。
【0058】
各試料をニップロールにより2回積層する。
【0059】
積層試料を、剥離試験の前に周囲温度で48時間調湿した。剥離試験は、以下のパラメーター設定で引張機により行った。
−試料幅:15mm
−剥離モード:180度Tピール
−剥離速度:300mm/分
【0060】
プラトー剥離力は、紙接着強度としてN/15mmの単位で報告される。
【0061】
紙接着強度の結果を表3にまとめ、
図1にプロットする。
【0062】
【表3】
【0063】
驚くべきことに、89℃未満の融点のポリオレフィンエラストマー樹脂と、10〜20重量%のMAHグラフト樹脂との組み合わせは、低い熱積層温度で高い紙接着強度を示す。
図1に示されるように、発明実施例1、2、及び3は、100%のNUC−3461である比較実施例1よりも高い紙接着強度を、70〜110℃の全ての研究熱積層温度において示した。
【0064】
比較実施例2は、比較実施例1よりも低い紙接着強度を全ての研究積層温度で示しており、このことは、配合中の少量のMAHグラフト樹脂なしでは、直鎖ポリオレフィンエラストマー樹脂は、融点が80℃を下回っていても、研究積層温度でEVAと同じ高さの紙接着強度を達成できないことを示唆している。
【0065】
比較実施例3及び4は、比較実施例1よりも低い紙接着強度を70〜100℃で示しており、このことは、89℃を超える融点のポリオレフィンプラストマー樹脂は、配合物にMAHグラフト樹脂をブレンドしていても、研究積層温度でEVAと同じ高さの紙接着強度を達成できないことを示唆している。
【0066】
図1は、「発明実施例1」、「発明実施例2」、及び「発明実施例3」とラベル付けされている3つの発明実施例のフィルムが、「比較実施例1」、「比較実施例2」、「比較実施例3」、及び「比較実施例4」とラベル付けされている4つの比較実施例のフィルム以上の紙接着強度を、70〜100℃の範囲の積層温度で与えることをグラフで示している。
本願は以下の発明に関するものである。
(1)a.無水物及び/または50℃〜89℃の範囲の融点を有するカルボン酸官能化エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーを含み、前記無水物またはカルボン酸官能基が、ポリエチレン系樹脂の0.02〜0.3重量パーセントの量で存在する、外皮層と、
b.ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される樹脂を含む基材層と、を含む、多層フィルム。
(2)前記外皮層が、3〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(3)前記外皮層が、4〜12ミクロンの範囲の厚さを有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(4)前記外皮層が、10〜30ミクロンの範囲の厚さを有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(5)1つ以上の追加の層を更に含む、上記(1)に記載の前記フィルム。
(6)前記フィルムが、前記基材層と前記外皮層との間に下塗りを含む、上記(5)に記載の前記フィルム。
(7)追加の層がバリア層である、上記(1)に記載の前記フィルム。
(8)前記基材層が二軸配向される、上記(1)に記載の前記フィルム。
(9)前記無水物及び/またはカルボン酸含有官能基が、無水マレイン酸である、上記(1)に記載の前記フィルム。
(10)前記無水マレイン酸グラフトポリエチレン系樹脂が、50〜89℃の範囲の融点を有する、上記(9)に記載の前記フィルム。
(11)前記基材層が、10〜50ミクロンの範囲の厚さを有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(12)前記基材層が、10〜20ミクロンの範囲の厚さを有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(13)前記フィルムが、10〜100ミクロンの範囲の全厚を有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(14)前記外皮層が、コロナ、火炎、またはプラズマにより表面処理されており、36ダイン以上の表面張力を有する、上記(1)に記載の前記フィルム。
(15) a.上記(1)に記載の前記多層フィルムと、b.紙基材と、を含む、熱積層紙構造。