特許第6207718号(P6207718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207718構造崩壊したゼオライト内に金属クラスターが含有された触媒およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207718
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】構造崩壊したゼオライト内に金属クラスターが含有された触媒およびその用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20170925BHJP
   B01J 29/12 20060101ALI20170925BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20170925BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170925BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 5/333 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 5/367 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 13/18 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 1/32 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20170925BHJP
   C07C 5/10 20060101ALI20170925BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   B01J29/74 Z
   B01J29/12 Z
   B01J35/10
   B01J29/74 M
   B01J37/08
   B01J37/10
   C07C15/04
   C07C11/06
   C07C11/08
   C07C11/167
   C07C5/333
   C07C5/367
   C07C13/18
   C07C1/32
   C07C5/03
   C07C5/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】25
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-508907(P2016-508907)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-520419(P2016-520419A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】KR2014003491
(87)【国際公開番号】WO2014175626
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年10月20日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0044357
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0045750
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514020459
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】515162224
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ・ミン キ
(72)【発明者】
【氏名】イム・ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ド ワン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ド キュン
(72)【発明者】
【氏名】キム・テ ジン
(72)【発明者】
【氏名】オ・ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】ショック・テ ホン
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0048094(US,A1)
【文献】 特開平07−278569(JP,A)
【文献】 特開昭56−102942(JP,A)
【文献】 特表昭60−500859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトの部分的または全体的な構造の崩壊によって形成された結晶質または非晶質アルミノシリケートと;
前記アルミノシリケートによって囲まれた(encapsulated)水素活性化金属(M)クラスターと;を含み、
容積法により測定される温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす、水添反応、水添脱硫反応、水添脱窒素反応、水添脱酸素反応及び水添異性化反応から選ばれる水素化工程用、またはシクロヘキサンをベンゼンに転換する反応、プロパンをプロピレンに転換する反応及びブタンをブテンもしくはブタジエンに転換する反応から選ばれる脱水素化工程用の水素スピルオーバー基盤の触媒:
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【請求項2】
前記ゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比が1〜2であることを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトの部分的または全体的な構造の崩壊の際に、前記触媒のXRDパターンは下記の特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒:
0.8(MainPzeolite)>(MainPcollapse
式中、MainPzeoliteは崩壊前のゼオライトのXRDピークの中で最も高いピークの面積を意味し、MainPcollapseは崩壊後のゼオライトの同じ2θでのXRDピークの面積を意味する。
【請求項4】
前記水素活性化金属が周期表上のIB族、VIIB族およびVIII族の金属から1または2以上選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項5】
前記金属クラスターの平均直径が0.5〜50nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項6】
前記アルミノシリケート内のアルカリ金属/Alのモル比が0.9以下であることを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項7】
前記アルミノシリケート内のアルカリ土類金属/Alのモル比が0.45以下であることを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項8】
前記非晶質アルミノシリケートが、室温ですべての直径が0.29nm未満であるマイクロポアを有することを特徴とする、請求項1に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒。
【請求項9】
(a)内部に水素活性化金属(M)クラスターが含有され、アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトを提供する段階と、
(b)前記ゼオライトをアンモニウムイオン(NH4+)でイオン交換する段階と、
(c)前記イオン交換されたゼオライトを熱処理してゼオライト骨格を部分的または全体的に崩壊させることにより結晶質または非晶質アルミノシリケートによって水素活性化金属クラスターを囲む段階とを含み、
容積法により測定される温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす、水添反応、水添脱硫反応、水添脱窒素反応、水添脱酸素反応及び水添異性化反応から選ばれる水素化工程用、またはシクロヘキサンをベンゼンに転換する反応、プロパンをプロピレンに転換する反応及びブタンをブテンもしくはブタジエンに転換する反応から選ばれる脱水素化工程用の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法:
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【請求項10】
前記ゼオライトがP型ゼオライト、A型ゼオライトまたはX型ゼオライトであることを特徴とする、請求項9に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項11】
前記段階(a)は、水素活性化金属(M)の前駆体を含有しながら、酸化物を基準にして表示される下記の組成を有するゼオライト合成反応混合物から水熱合成反応を行う段階を含むことを特徴とする、請求項9に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法:
SiO2/Al23:1〜20、
2O/M’2O:10〜120、
M’2O/SiO2:0.38〜3、および
OH-/SiO2:0.76〜6。
ここで、M’はアルカリ金属を意味する。
【請求項12】
前記M’がナトリウムであることを特徴とする、請求項11に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項13】
前記段階(b)に先立ち、前記ゼオライト内のアルカリ金属を他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属で交換する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記反応混合物は、アルミナ(Al23)を基準に、メルカプトシランを0.01〜0.5のモル比でさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記メルカプトシランがメルカプトプロピルトリメトキシシランまたはメルカプトプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項14に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項16】
前記反応混合物は、ポリエチレングリコールをアルミナ(Al23)を基準に2までのモル比でさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項17】
前記段階(b)で、イオン交換量は、NH4+/Alのモル比が0.1〜1である範囲で調節されることを特徴とする、請求項9に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項18】
前記段階(c)は、酸素雰囲気水素雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で、並びに373乃至973Kの温度条件の下で行われることを特徴とする、請求項9に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項19】
前記段階(a)は、
(a1)アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトを提供する段階と、
(a2)前記ゼオライトに対して水素活性化金属(M)の前駆体を含浸またはイオン交換させる段階と、
(a3)前記含浸またはイオン交換されたゼオライトを熱処理する段階とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項20】
前記ゼオライトがアルカリ金属イオン含有ゼオライトであることを特徴とする、請求項19に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項21】
前記ゼオライトがX型ゼオライトであることを特徴とする、請求項19に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項22】
前記熱処理段階は、酸素雰囲気水素雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で、並びに500乃至800Kの温度条件で1〜3時間行われることを特徴とする、請求項19に記載の水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法。
【請求項23】
炭化水素供給原料を提供する段階と、
水素の供給下で前記炭化水素供給原料を水素スピルオーバー基盤の触媒と接触させる段階とを含む水素化または脱水素化方法:
ここで、前記水素スピルオーバー基盤の触媒は、
アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトの部分的または全体的な構造の崩壊によって形成された結晶質または非晶質アルミノシリケート;および
前記アルミノシリケートによって囲まれた(encapsulated)水素活性化金属(M)クラスター;を含み、
容積法により測定される温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす:
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【請求項24】
前記水素化方法は、水添反応(hydrogenation)、水添脱硫反応(hydrodesulfurization)、水添脱窒素反応(hydrodenitrogenation)、水添脱酸素反応(hydrodeoxygenation)、または水添異性化反応(hydroisomerization)であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記脱水素化方法は、シクロヘキサンをベンゼンに転換させる方法;プロパンをプロピレンに転換させる方法;またはブタンをブテンまたはブタジエンに転換させる方法であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造崩壊したゼオライト内に金属クラスターが含有された、水素スピルオーバー(spillover)基盤の触媒およびその用途に関する。より具体的には、本発明は、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊した結晶質または非晶質アルミノシリケートマトリックスの内部に水素活性化金属クラスターが分散して高い水素化または脱水素化反応活性および抑制されたC−C水素化分解活性を有する、水素スピルオーバー基盤の触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、硫黄および窒素などの異種原子(heteroatoms)を多量に含有しながら芳香族含量の高い重質油(heavy oil)の活用方案が盛んに研究されており、また、輸送用燃料の原料である中間留分(middle distillate)の需要が持続的に増加している。特に、精油工程における、水添反応(hydrogenation)、水添脱硫(hydrodesulfurization;HDS)、水添脱窒素(hydrodenitrogenation;HDN)反応などの様々な水素化工程(hydroprocessing)の重要性が浮き彫りにされている。
上述の水素化工程に使用される触媒として、通常、硫黄などの不純物(触媒毒として作用)の存在下でも高い水素化活性を示すとともに、C−C結合切断(hydrogenolysis)を抑制することにより炭素数の減少により相対的に低い価値を有する炭化水素の生成を抑制することができる触媒の開発が求められている。このような水素化工程用触媒として、NiMo、CoMoなどのモリブデン硫化物(molybdenum sulfide)系およびプラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属系が現在広く使用されている。これに関連し、モリブデン硫化物系触媒は、貴金属系触媒に比べて相対的に活性は低いものの、硫黄に対する耐性が強いと言われている。一方、貴金属系触媒は、硫黄の不在下では高い活性を示すものの、硫黄の存在下では急激に不活性化されるという欠点がある。
【0003】
一方、水素化工程における水素化分解(hydrogenolysis)を抑制するために、Pt−Sn、Pt−Inなどの合金(alloy)を形成し(F.B.Passos et al.、J.Catal.,160:106、1996)、或いは金属の表面を硫黄などの触媒毒で部分的に被毒させる方案(P.Govind Menon、Ind.Eng.Chem.Res.,36:3282,1997)などが研究されたことがある。
ところが、上述の方法では、硫黄分子を供給原料に持続的に添加する必要があり、また、添加された硫黄によって副生成物が生成されるという欠点がある。
【0004】
従来の貴金属系水素化触媒の限界を克服するための他の方法、例えば、金属粒子をマイクロ多孔性(ポア直径1nm未満)のゼオライトの内部に担持することにより安定性を向上させる方案が研究されている。具体的に、C.Songなどは、モルデナイト(mordernite)構造のゼオライトの内部に白金を担持した後、硫黄化合物の存在下でナフタレンの水素化反応を研究したことがある(C.Song et al.,Energy&Fuels,11:656,1997)。モルデナイトは、サイズの異なる2つのケージ(cage)を持っているが、これらのケージのうち、有機分子が接近することが可能な大きいサイズのケージの内部に担持された白金でのみ水素化反応が行われる一方、小さいサイズのケージの内部に担持された白金では水素のみが選択的に拡散して活性化され、活性化された水素原子が、スピルオーバー現象を介して、大きいサイズのケージに担持された白金へ移動し、金属の非活性化を抑制することが報告された。しかし、硫黄化合物の分解時に生成される硫化水素(HS)が小さいサイズのケージの内部に拡散しながら、小さなケージ内の金属も非活性化されるため、その効果は制限的であった。
【0005】
Hong Yangなどは、A−ゼオライトに白金を担持してナフタレンの水素化反応触媒として使用した(Hong Yang et al.,J.Catal.,243:36,2006;米国特許公開第2009/0048094号)。具体的に、ゼオライトケージ(cage)内に貴金属のナノ粒子を混入した後、後処理(CVD、CLD、陽イオン交換またはこれらの組み合わせ)によってゼオライトケージ内の最終ポアサイズを約2.9〜3.5Åまで減少させた結果、水素分子のみがポアを通過することができ、有機硫黄分子(さらに3.6Åの動的分子径(kinematic diameter)を有するHS)はポアを通過することができないようにして、貴金属成分が被毒物質たる硫黄化合物と接触することを抑制するように触媒を設計した。上述した触媒構造を利用して、貴金属によって活性化された水素(すなわち、dissociated hydrogen)はゼオライトポアを介してスピルオーバーして水素化反応を誘発し、かつ、周辺の触媒を再生することができる(硫黄化合物で被毒された触媒サイトに水素を供給して除去する)。また、これらの研究者は、A−ゼオライトの内部に白金を担持した後、Kイオンでイオン交換し、シリカをコートして気孔サイズを減少させようとした。このように合成された触媒は、活性水素のスピルオーバー現象を介して、ゼオライト気孔の内部に拡散できないナフタレンを成功的に水素化させることができ、硫黄に対する耐性にも優れていると報告された。
【0006】
また、Chenなどは、A型ゼオライトよりも気孔サイズが小さいZeolite Rhoに白金を担持して硫黄化合物を多数含んでいる実際の原油を反応物にして水素化反応性を測定した(Song Chen et al.,Proceedings of the World Congress on Engineering and Computer Science,vol.2,2010)。前記論文では、形状選択性および水素スピルオーバー原理に基づいて、Zeolite RhoのソーダライトケージにPtが囲まれた構造の触媒を提案した。この場合、H2はポアを通過するのに対し、H2Sはポアを通過しないため、高い硫黄含有環境に晒されても水素化活性を維持することができる。
前述した研究成果にも拘わらず、依然として、当業界では、より改善された触媒活性を示す水素スピルオーバー基盤の触媒に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る実施形態では、金属クラスターが含有されたゼオライトの結晶構造を部分的または全体的に崩壊させることにより、従来の触媒とは区別される活性を有する、水素スピルオーバー基盤の触媒およびその製造方法を提供しようとする。
また、本発明に係る実施形態では、高い水素化反応活性を示しながらC−C結合切断(cleavage)を抑制することができ、熱的安定性にも優れる、水素スピルオーバー基盤の触媒およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点によれば、アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトの部分的または全体的な構造の崩壊によって形成された結晶質または非晶質アルミノシリケートと;
前記アルミノシリケートによって囲まれた(encapsulated)水素活性化金属(M)クラスターと;を含み、
ここで、温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす、水素スピルオーバー基盤の触媒が提供される。
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【0009】
例示的な実施形態によれば、前記触媒は、下記の特性を示す:
0.8(MainPzeolite)>(MainPcollapse
式中、MainPzeoliteは崩壊前のゼオライトのXRDピークの中で最も高いピークの底面積を意味し、MainPcollapseは崩壊後のゼオライトの同じ2θにおけるXRDピークの底面積を意味する。
例示的な実施形態によれば、前記ゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比(SAR)は1〜2であることが好ましい。
例示的な実施形態によれば、前記水素活性化金属は、周期表上のIB族、VIIB族およびVIII族から1または2以上選択でき、より具体的には、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Ptおよび/またはAuであることが好ましい。
【0010】
本発明の第2観点によれば、
(a)内部に水素活性化金属(M)クラスターが含有され、アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトを提供する段階と;
(b)前記ゼオライトをアンモニウムイオン(NH)でイオン交換する段階と;
(c)前記イオン交換されたゼオライトを熱処理してゼオライト骨格を部分的または全体的に崩壊させることにより、結晶質または非晶質アルミノシリケートによって水素活性化金属クラスターを囲む段階と;を含み、
温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす、水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法が提供される:
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
例示的な実施形態において、前記ゼオライトは、P型ゼオライト、A型ゼオライトおよび/またはX型ゼオライトであることができ、より具体的にはA型ゼオライトであることが好ましい。
【0011】
本発明の第3観点によれば、
炭化水素供給原料を提供する段階と、
水素の供給下で前記炭化水素供給原料を水素スピルオーバー基盤の触媒と接触させる段階とを含む水素化/脱水素化方法が提供される:
ここで、前記水素スピルオーバー基盤の触媒は、
アルミナに対するシリカのモル比が2以下であるゼオライトの部分的または全体的な構造の崩壊によって形成された結晶質または非晶質アルミノシリケートと;
前記アルミノシリケートによって囲まれた(encapsulated)水素活性化金属(M)クラスターと;を含み、
温度による水素および一酸化炭素の化学吸着量の変化が下記の関係を満たす:
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によって提供される水素スピルオーバー基盤の触媒は、ゼオライト構造の部分的または全体的な崩壊を介して形成された結晶質または非晶質アルミノシリケートの内部に水素活性化金属クラスターが囲まれており、低温では水素分子さえ触媒の内部に拡散することができないという特性を持つ。その結果、水素の活性点と有機物との反応点を分離することにより、触媒毒が金属の表面に吸着されることを根本的に遮断することができるうえ、金属の表面上で反応が起こる従来の金属担持触媒とは区別される反応特性、すなわち高い触媒活性(水添反応、水添脱酸素反応、水添脱窒素反応、水添脱硫反応、水添異性化反応、脱水素化反応など)、低いC−C水素化分解活性(従来の湿潤含浸法で製造されたPt/SiO触媒の水素化分解活性に対して約70%以下)を示す。また、水素活性化金属を構造的に安定したアルミノシリケートで囲むことにより、金属の焼結現象(sintering)を防止することができるなど、優れた熱安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態によって、ゼオライト構造の崩壊により形成された結晶質または非晶質アルミノシリケートの内部に水素活性化金属クラスターが含有された(担持された)触媒で起こる水素のスピルオーバーメカニズムを概略的に示す図である。
図2】実施例1において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、NaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル、そして従来の初期湿潤含浸法によって製造された商用のPt/SiOサンプルそれぞれに対する物理的/化学的特性を測定した結果を示す図である。
図3】実施例1において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、およびNaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノケイシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプルに対するXRD分析結果を示すグラフである。
図4】実施例1において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、およびNaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノケイシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプルの温度によるHおよびCO化学吸着の結果を示すグラフである。
図5】実施例1において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、およびNaAゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)のTEM写真である。
図6】実施例2において、NaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0)、およびNaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0)または全体的に(Pt/HA−0)崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプルに対する核磁気共鳴分析(nuclear magnetic resonance)の結果を示すグラフである。
図7】実施例3において、NaAゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HA−0)、および商用Pt/SiOサンプルのそれぞれに対してHS前処理した後のXAFS(X−ray absorption fine structure)の分析結果(1:Pt−Pt coordination、2:Pt−S coordination)を示すグラフである。
図8】実施例4において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、NaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル、および商用Pt/SiO触媒サンプルのそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのベンゼン水素化反応転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図9】実施例5において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、NaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル、および商用Pt/SiO触媒のサンプルそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのシクロヘキサン脱水素化反応の転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図10】実施例6において、NaAゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)、および商用Pt/SiO触媒サンプルのそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのチオフェン水添脱硫反応の転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図11】実施例7において、様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内に白金が選択的に含有された(担持された)サンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、NaAゼオライトの構造が部分的に(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)または全体的に(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル、および商用Pt/SiO触媒サンプルのそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのプロパン水素化分解反応(hydrogenolysis)の転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図12】実施例8において、構造が部分的に崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が含有された(担持された)サンプル(Pt/NaHA−0.95)、および商用Pt/SiOサンプルに対してプロパン脱水素化反応の転換率およびプロピレン選択度を示すグラフである。
図13】実施例9において、構造が全体的に崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が含有された(担持された)サンプル(Pt/HA−0.95)内の白金クラスターの熱処理(973K、12時間)前/後のTEM写真である。
図14】実施例10において、商用NaXゼオライトの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)に対するXRD分析結果を示すグラフである。
図15】実施例10において、商用NaXゼオライトの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)の温度によるHおよびCO化学吸着の結果を示すグラフである。
図16】実施例10において、商用NaXゼオライトの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)に対する核磁気共鳴分析(nuclear magnetic resonance)の結果を示すグラフである。
図17】実施例11において、商用NaXゼオライトの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)のそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのベンゼン水素化反応の転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図18】実施例12において、商用NaXゼオライトの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)のそれぞれに含有された全体白金のモル数(mol)あたりのプロパン水素化分解反応(hydrogenolysis)の転換率(turnover rate)を示すグラフである。
図19】実施例13において、商用NaXゼオライト内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/NaX)、およびNaXゼオライトの構造が全体的に崩壊して形成されたアルミノシリケートの内部に白金クラスターが含有された(担持された)サンプル(Pt/HX)に対してプロパン脱水素化反応の転換率およびプロピレン選択度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記の説明によってすべて達成できる。下記の説明は本発明の好適な実施形態を記述するものと理解すべきであり、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。また、添付図面は、理解を助けるためのもので、本発明を限定するものではない。個別の構成に関する詳細については、後述する関連記載の具体的な趣旨によって適切に理解できる。
【0015】
本明細書で使用される用語は、下記のとおり定義できる。
「水素活性化金属」は、広義には、水素分子(molecular hydrogen)との接触によって活性化された水素、すなわち解離された水素(dissociated hydrogen)を形成することが可能な金属を意味する。
「水素スピルオーバー(spillover)」は、水素分子の解離によって生成され、水素に富む金属クラスターから水素解離の起こらない支持体(support)の表面へ解離水素(すなわち、活性化された水素)が拡散する現象を意味する。
「水素化工程(hydroprocessing)」は、水素を使用する任意の触媒工程として定義できるので、典型的には、触媒の存在下で炭化水素留分を水素と反応させることを含む。その例として、水添反応、水添脱硫反応、水添脱窒素反応、水添脱ろう(水添異性化)反応、水添脱酸素反応などを挙げることができる。
「水添反応(hydrogenation)」は、水素の供給下で炭化水素化合物を触媒と接触させて炭化水素化合物の少なくとも一部に水素を化学的に付加することにより、炭化水素化合物内の水素含量を増加させる反応を意味し、典型的にはオレフィンの水素化および芳香族の水素化などの飽和(saturation)反応を含む。
「水添脱ろう反応は、広い意味では水素の供給下で炭化水素留分からワックス成分(特に、n−パラフィン)を除去する反応であり、狭い意味では「水添異性化反応」であって、典型的にn−パラフィンをiso−パラフィンに転換する反応を意味する。
「水添脱硫反応」は、水素の供給下で炭化水素留分内に含有された硫黄成分を除去する工程を意味する。
「水添脱窒素反応」は、水素の供給下で炭化水素留分内に含有された窒素成分を除去する工程を意味する。
「水添脱酸素反応」は、水素の供給下で化合物内の酸素が水として除去される反応を意味する。
「脱水素化反応(dehydrogenation)」は、化合物内の水素が除去される反応を意味する。
「C−C水素化分解反応(hydrogenolysis)」は、水素によって炭素−炭素間の単一結合が切断される反応を意味する。
【0016】
本発明の実施形態によって提供される水素スピルオーバー基盤の触媒は、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊したアルミノシリケートの内部に水素活性化金属(M)のクラスターが含有されている。
【0017】
本明細書において、水素(H)および一酸化炭素(CO)それぞれの化学吸着量は、当業界で知られている容積法(volumetric method)を用いて測定できるので、これは、本実施形態に係る触媒のように構造が崩壊した物質の温度による水素化学吸着量の増加は容積法によって正確に測定することができるためである。容積法以外の他の方法、例えば、パルス法(pulse method)によって水素化学吸着量を測定する場合、温度による水素化学吸着量の増加を実質的に観察するのには限界がある。これは、パルス法では平衡時間(equilibrium time)が十分ではないためと判断される。すなわち、高温でも水素が触媒の内部に拡散する速度が十分に速くないため、パルス法のように水素を触媒にパルスの形で流しながら測定する方法の場合、化学吸着量の増加を確認することが難しいためである。
【0018】
本実施形態において、水素(H)および一酸化炭素(CO)の化学吸着量の測定の際に、吸着温度が増加するにつれて、Hの場合は吸着量が増加する傾向を示す。具体的に、下記のような温度による水素および一酸化炭素の化学吸着特性を示す。
0.7*(H/M373+H/M473+H/M573)/3>(CO/M373+CO/M473+CO/M573)/3
式中、H/Mは全体Mのモル(mol)あたりの水素原子の化学吸着量(mol)を意味し、CO/Mは全体Mのモル(mol)あたりの一酸化炭素の化学吸着量(mol)を意味し、下付き文字は吸着温度(K)を示す。
【0019】
金属が外部に露出している典型的な水素化触媒、およびゼオライトの構造が崩壊していないゼオライトの内部に金属が含有された構造を有する触媒(水素が室温で金属の表面に到達することができる)の場合、吸着温度が増加するにつれて、吸着分子の運動エネルギーが増加して化学吸着量が減少する典型的な特性を持つことになる。本実施形態に係る触媒が通常予測される触媒の挙動とは異なる水素吸着特性を示す理由は、低温(323K未満)では構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に水素分子が拡散し難いが、温度の増加に伴って水素分子が触媒の内部に拡散することができるものと説明できる。一酸化炭素の場合、温度が増加しても吸着量が増加しないので、上述した水素および一酸化炭素の化学吸着特性を示す。
【0020】
図1はゼオライト構造の崩壊を介して形成されたアルミノシリケートの内部に水素活性化金属クラスターが含有された(担持された)触媒で起こる水素のスピルオーバーメカニズムを概略的に示す。
上記図面において、水素活性化金属(例えば、Pt)は、ゼオライト(例えば、A型ゼオライトまたはX型ゼオライト)の構造が崩壊したアルミノシリケートによって囲まれている。このとき、アルミノシリケートは、マイクロポア(例えば、全体的に(完全に)崩壊したアルミノシリケートの場合、室温で約0.29nm未満の直径)を持っているので、有機硫黄化合物(例えば、チオフェン)だけでなく、硫化水素(HS)のように最も簡単な触媒毒成分も金属の表面に拡散(接近)することができない。特に、低温では水素分子さえアルミノシリケート内の金属の表面に拡散し難い。
しかし、温度の増加に伴って水素分子が選択的に触媒内部の金属の表面まで選択的に拡散し(水素の化学吸着量が増加し)、その結果、金属によって水素分子が解離されることにより、活性化された水素を生成する。このように活性化された水素は、アルミノシリケートのマイクロポアを介して触媒の表面へ移動し、表面上に存在する有機分子(図示の例では有機硫黄化合物など)と反応して炭化水素および硫化水素を生成する。
【0021】
図1に示されている水素化反応におけるスピルオーバー原理とは異なり、脱水素化反応では有機分子から水素が除去される。この場合、逆スピルオーバー現象(reverse spillover phenomena)が起こる(具体的には、シクロヘキサンなどのシクロアルカンの脱水素化反応から生成された水素原子がアルミノシリケートのマイクロポアを介して金属の表面に拡散し、互いに再結合して水素分子を生成する)。
【0022】
本発明の実施形態に係る触媒は、結晶の大きさが大きくゼオライトの構造をそのまま維持する金属含有触媒に比べて、特に優れた水素化および脱水素化反応活性を示す。たとえ、本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、このような改善された活性は、骨格構造の厚さの減少およびこれに伴うアルミノシリケートマトリックス内の拡散経路長さの減少により、水素分子が触媒内部の金属の表面へ速く拡散する現象、活性化された水素がアルミノシリケートの表面へより迅速に移動する現象、またはスピルオーバー水素が追加されたり(水素化工程)反応物の分子から除去されたり(脱水素化工程)する場所であるアルミノシリケートマトリックスの表面上の活性点の数が増加する現象と説明できる。
【0023】
一実施形態によれば、高いアルミニウム含量のゼオライトを用いて後続のイオン交換および熱処理過程によってゼオライトの構造を部分的または全体的に崩壊させることができる。このとき、崩壊前のゼオライトのアルミナに対するシリカのモル比(SAR)は、約2以下、より具体的には約1〜2の範囲でありうる。すなわち、アルミナに対するシリカのモル比が比較的低いゼオライト(高いアルミニウム含量のゼオライト)を使用する場合、後続のイオン交換および熱処理過程を介して結晶構造が崩壊することがある。これに関連し、崩壊前のゼオライトのSARは、崩壊(部分的または全体的崩壊)後の結晶質または非晶質アルミノシリケートのSARと実質的に同等であろう。
【0024】
一実施形態において、構造が崩壊したゼオライト内に含有された金属は、水素活性化金属であって、特定の種類に限定されるものではないが、例えば、周期表上のIB族、VIIB族およびVIII族の金属から1または2以上選択できる。より具体的に、典型的な水素活性化金属はCo、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Ptおよび/またはAuであってもよい。水素活性化金属は、アルミノシリケートマトリックスによって囲まれて(encapsulated)クラスターの形で分散している。このとき、金属クラスターの直径は、例えば、約0.5〜50nm、具体的には約0.5〜10nm、より具体的には約0.5〜2nmの範囲でありうる。また、触媒内の水素活性化金属の含量は、触媒の重量を基準に、例えば、約0.01〜10重量%、具体的に約0.1〜2重量%、より具体的には約0.5〜1.5重量%の範囲であることができる。
【0025】
また、前記触媒のBET比表面積は、ゼオライトの崩壊程度が増加するほど減少する傾向を示すが、このとき、構造が部分的または全体的に崩壊したゼオライト(すなわち、結晶質または非晶質アルミノシリケート)の典型的な比表面積は、例えば、約1〜800m/g、具体的には約2〜200m/g、より具体的には約2〜60m/gの範囲であることができる。
【0026】
例示的な実施形態において、前記触媒内のアルカリ金属/Alのモル比は、例えば、約0.9以下、具体的には約0.01〜0.8、より具体的には約0.05〜0.6の範囲であることができる(ゼオライトの製造時に使用されたアルカリ金属、または後述するようにアルカリ金属イオンを含有するゼオライトを他のアルカリ金属でイオン交換した後、アンモニウムイオンでイオン交換して構造を崩壊させた場合)。択一的な実施形態によれば、前記触媒内のアルカリ土類金属/Alのモル比は、例えば約0.45以下、具体的には約0.005〜0.4、より具体的には約0.025〜0.3の範囲であることができる(後述するように、アルカリ金属イオンを含有するゼオライトをアルカリ土類金属でイオン交換した後、アンモニウムイオンでイオン交換して構造を崩壊させた場合)。
【0027】
一方、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊するとき、XRDピークは減少するが、具体的には下記の特性を示す:
0.8(MainPzeolite)>(MainPcollapse
式中、MainPzeoliteは崩壊前のゼオライトのXRDピークの中で最も高いピークの底面積を意味し、MainPcollapseは崩壊後のゼオライトの同じ2θにおけるXRDピークの底面積を意味する。
【0028】
一方、前記触媒は、低温では水素分子がアルミノシリケートによって囲まれた金属に接近することができない程度に低い水素化学吸着量を有する。例示的な化学吸着量(温度別)の範囲を下記表1および表2のとおり表すことができる。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
例示的な実施形態によれば、ゼオライト構造が崩壊したアルミノシリケートの水素化活性金属を含有する触媒は、さらに、様々な陽イオンでイオン交換することができるので、このような陽イオンの例として、周期表上のIA族、IIA族、IIIB族、VII族、IB族、VIII族などの金属イオンを挙げることができる。
【0032】
一方、本発明の例示的な実施形態によれば、物理的/機械的性状の改善または成形のために、当業界で知られているバインダーなどを前記触媒と一緒に使用することができる。このようなバインダーの例として、粘土、無機酸化物などを例示することができるが、無機酸化物として、具体的にシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−チタニアなどが使用可能である。前記バインダーは、触媒に対して、例えば、約10〜90重量%、具体的には約30〜70重量%の範囲で使用できるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0033】
触媒の製造
本発明の他の実施形態において、水素スピルオーバー基盤の触媒の製造方法は、大きくは金属含有ゼオライトの製造、イオン交換および熱処理の順に行われる。
【0034】
金属含有ゼオライトの製造
一実施形態において、ゼオライトは、水、シリカソース、アルミナソース、および鉱化剤(mineralizer;OH、Fなど)などが含有された混合物から製造され、例えば水熱(hydrothermal)合成法を使用する。こうして製造されるゼオライトは、高いアルミニウム含量のゼオライト(aluminous zeolite)であって、典型的にP型ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライトなどを例示することができる。
【0035】
シリカソースとして、シリケート、シリカゲル、ケイ酸コロイドシリカ、ヒュームシリカ、テトラアルキルオルソシリケート、水酸化シリカ、沈殿シリカ、粘土などを使用することができる。前記例示されたシリカソースのうち、沈殿シリカおよびシリカゲルの場合にはゼオシル(Zeosil)の商品名で、ケイ酸コロイドシリカの場合にはルドックス(Ludox)などの商品名で市販されている。
【0036】
アルミナソースの場合、アルミナ溶解性塩として存在することができるので、例えば、ナトリウム塩、塩化物、アルミニウムアルコラート、水和されたアルミナ(例えば、γ−アルミナ)、シュードボヘマイト(pseudobohemite)およびコロイドアルミナを含む。
【0037】
例示的な実施形態によれば、前記ゼオライト合成用反応混合物は、下記の組成(酸化物で表示される組成)を持つことができる(モル比):
SiO/Al:約1〜20、
O/M’O:約10〜120、
M’O/SiO:約0.38〜3、および
OH/SiO:約0.76〜6。
式中、M’はアルカリ金属を意味する。
【0038】
例示的に、A−ゼオライト合成用反応混合物は、下記の組成を持つことができる(モル比):
SiO/Al:約1〜2.5、
O/M’O:約40〜120、
M’O/SiO:約0.8〜3、および
OH/SiO:約1.6〜6。
式中、M’はアルカリ金属を意味する。
【0039】
前記実施形態において、所望のタイプのゼオライト(例えば、P型ゼオライト、A型ゼオライトまたはX型ゼオライト)を製造するために、上述した原料組成の範囲内で具体的な原料組成および合成温度(水熱合成温度)を選定することができる。ゼオライトタイプによる反応原料の組成および合成温度に関する基本的な内容は、例えば、W.Breck、Zeolite Molecular Sieves、Wiley、New York、p271、1974に記載されており、前記文献は、本明細書の参考資料として含まれる。このとき、水素活性化金属は、例えば、当業界で知られている前駆体の形でゼオライト合成用反応混合物に添加できる。但し、注目すべき点は、上述した原料組成の範囲内でゼオライトを合成しても、後述するゼオライト構造の崩壊のためには崩壊前(合成された)ゼオライトのシリカ/アルミナのモル比(SAR)が約2以下の値を持つ必要がある。
本発明の特定の実施形態によれば、合成されるゼオライトの比表面積および結晶サイズを制御するために、反応混合物内に結晶成長抑制剤として例えばポリエチレングリコール(PEG)を添加することができるので、前記成分は、反応混合物内のアルミナ(Al;酸化物で表示する場合)の含量を基準に、例えば約2まで、具体的には約0.1〜1.5、より具体的には約0.2〜1のモル比で添加できる。さらに、結晶成長抑制剤として有機シランを使用することができるが、上記の成分は反応混合物内の酸化シリコン(SiO;酸化物で表示する場合)を基準に、例えば、約0.0001乃至0.5、具体的には約0.0005乃至0.2、より具体的には約0.001乃至0.1のモル比で添加できる。このとき、前記有機シランは、下記化学式1で表示できる:
【0040】
【化1】
【0041】
式中、aは1〜3の整数であり、
Xは合成の際に加水分解できるグループ、具体的にはヒドロキシ基、ハライド基またはアルコキシ基を意味し、
Rはアルキル基またはアルケニル基を表す。
このとき、アルキル基はヒドロキシ基、ハライド基、チオール基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アミド基、カルボン酸基またはスルホン酸基で置換された形態であることができる。
【0042】
代表的な有機シランは、下記のとおり例示することができ、単独で、或いは組み合わせて使用できる。但し、本発明はこれに限定されない。
[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド([3−(Trimethoxysilyl)propyl]octadecyldimethylammonium chloride);[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド([3−(Trimethoxysilyl)propyl]hexadecyldimethylammonium chloride);[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド([3−(Trimethoxysilyl)propyl]dodecyldimethylammonium chloride);[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド([3−(Trimethoxysilyl)propyl]octylammonium chloride);N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N−[3−(Trimethoxysilyl)propyl]aniline);3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリメトキシシラン(3−[2−(2−Aminoethylamino)ethylamino]propyl−trimethoxdysilane);N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N−[3−(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine;トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン(Triethoxy−3−(2−imidazolin−1−yl)propylsilane);1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア((1−[3−(Trimethoxysilyl)propyl]urea));N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N−[3−(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine);[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン([3−(Diethylamino)propyl]trimethoxysilane);(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3−Glycidyloxypropyl)trimethoxysilane);3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3−(Trimethoxysilyl)propyl methacrylate);[2−(シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン([2−(Cyclohexenyl)ethyl]triethoxysilane);ドデシルトリエトキシシラン(Dodecyltriethoxysilane);ヘキサデシルトリメトキシシラン(Hexadecyltrimethoxysilane);(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン((3−Aminopropyl)trimethoxysilane);(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3−Mercaptopropyl)trimethoxysilane);および(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン((3−Chloropropyl)trimethoxysilane)。
【0043】
このとき、PEGおよび/または有機シランの添加量が増加するほど結晶サイズは減少する一方、比表面積は増加する傾向を示す。例示的に、前記合成されたゼオライトの結晶サイズは、例えば、約20〜3000nm、具体的に約30〜1800nm、より具体的には約60〜1800nmの範囲である。
【0044】
一方、一実施形態では、ゼオライト内に水素活性化金属を混入させて金属含有ゼオライトを製造する。これに関連し、ゼオライトが金属クラスターを囲む方式は、活性点を保護し、反応物、生成物または遷移状態を選択することができるなど反応効率性を改善することができるので、このための様々な方案が考慮できる。例示的な実施形態によれば、追ってゼオライトの構造が崩壊した後にも、アルミノシリケートマトリックス内に金属クラスターが安定的に囲まれた形で存在することが有利であるから、金属含有ゼオライトの製造過程中に水素活性化金属を均一なサイズのクラスターの形態でゼオライト内に選択的に混入させることが好ましいことがある。但し、従来は、ゼオライト合成中にpHを高める過程で金属水酸化物が沈殿できる。例示的な実施形態によれば、反応混合物にメルカプトシランを水素活性化金属(M)の前駆体と一緒に添加する方式でゼオライトを製造することにより、前述の問題点を除去することができる。このとき、メルカプトシランは、反応混合物中のアルミナ(Al;酸化物で表示する場合)を基準に、例えば、約0.01〜0.5、具体的に約0.03乃至0.2、より具体的には約0.05〜0.1モル比の範囲で添加できる。前記シランのメルカプト(−SH)は、ゼオライトの合成に必要なアルカリ媒質内で金属水酸化物の形成を抑制する一方、アルコキシシランモイエティ(moiety)が加水分解され、ゼオライト前駆体と縮合される。その結果、Si−O−SiまたはSi−O−Al結合を形成して金属−有機シラン錯体の周囲に無機骨格(framework)の結晶化を誘導する。このように、有機シランリガンドの2元機能性によりゼオライト内に水素活性化金属を選択的かつ効果的に囲むことができる。メルカプトシランとして、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(mercaptopropyltrimethoxysilane)やメルカプトプロピルトリエトキシシラン(mercaptopropyltriethoxysilane)などを使用することができる。前記メルカプトシランは、ゼオライト合成の際通常行われる乾燥および熱処理過程で除去できる。このとき、熱処理過程は、酸素(空気)および/または水素および/または不活性ガス雰囲気の下で、例えば、約573乃至773K(具体的には、約600乃至700K)で約1〜3時間(具体的に、1.5〜2.5時間)行われ得る。前記熱処理条件は例示的に理解でき、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
一方、択一的な実施形態によれば、既に合成されている或いは商業的に市販されているゼオライト(例えば、Na−ゼオライトのようにアルカリ金属イオン含有ゼオライト)に対して水素活性化金属(M)の前駆体を含浸(特に、湿潤含浸)またはイオン交換させた後、これを熱処理して均一なサイズのクラスターの形で水素活性化金属(M)をゼオライトの内部に選択的に混入させることができる。選択的に、熱処理に先立って含浸された或いはイオン交換されたゼオライトを乾燥させることもできる。前記水素活性化金属の前駆体として、ゼオライトに対して含浸またはイオン交換を行うことができる限り、当業界で知られている該当金属の塩、錯体などを特別な制限なく使用することができる。例示的に、水素活性化金属として白金を使用する場合、水素化物(Hydrides)、フッ化物(Fluorides;例えば、PtF、PtF、[PtFなど)、塩化物(Chlorides;例えば、PtCl、PtCl、PtCl12など)、臭化物(Bromides;PtBr、PtBrなど)、ヨウ化物(Iodides;例えば、PtI、PtI、PtIなど)、酸化物(Oxides;例えば、PtO、PtO、PtOなど)、硫化物(Sulfides;例えば、PtS、PtSなど)、カルボニル化物(Carbonyls;例えばmPt(CO))、および/または錯体(Complexes;例えば、[PtCl(NH]、[PtCl(NH]、K[PtCl]、K[Pt(CN)]、PtCl・5HO、K[PtCl(NH)]、Na[PtBr]・6HO、(NH[PtBr]、K[PtI]、(NH[PtCl]、K[Pt(CN)]、(NH[PtCl]、K[Pt(NO]、K[PtCl(C)]・HO[Pt(NH](NO、HPtClなど)を使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、湿潤含浸またはイオン交換のために、水素活性化金属前駆体は水溶液および/または有機溶液の形で適用できる。このとき、例示的な有機溶媒は、酢酸(acetic acid)、アセトン(acetone)、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゼン(benzene)、1−ブタノール(1−butanol)、2−ブタノール(2−butanol)、2−ブタノン(2−butanone)、t−ブチルアルコール(t−butyl alcohol)、カーボンテトラクロリド(carbon tetrachloride)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、クロロホルム(chloroform)、シクロヘキサン(cyclohexane)、1,2−ジクロロエタン(1,2−dichloroethane)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジグリム(diglyme;diethylene glycol dimethyl ether)、1,2−ジメトキシ−エタン(1,2−dimethoxy−ethane;glyme;DME)、ジメチルエーテル(dimethylether)、ジメチル−ホルムアミド(dimethyl−formamid11e;DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)、ジオキサン(dioxane)、エタノール(ethanol)、酢酸エチル(ethyl acetate)、エチレングリコール(ethylene glycol)、グリセリン(glycerin)、ヘプタン(heptanes)、ヘキサメチルホスホアミド(hexamethylphosphoramide;HMPA)、ヘキサメチルホスホラストリアミド(hexamethylphosphoroustriamide;HMPT)、ヘキサン(hexane)、メタノール(methanol)、メチルt−ブチルエーテル(methyl t−butyl ether;MTBE)、塩化メチレン(methylene chloride)、N−メチル−2−ピロリジノン(N−methyl−2−pyrrolidinone;NMP)、ニトロメタン(nitromethane)、ペンタン(pentane)、1−プロパノール(1−propanol)、2−プロパノール(2−propanol)、ピリジン(pyridine)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、トルエン(toluene)、トリエチルアミン(triethyl amine)、o−キシレン(o−xylene)、m−キシレン(m−xylene)、p−キシレン(p−xylene)などを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
例示的な実施形態によれば、上述した混入方式において、水素化金属塩または錯体の水溶液を用いたイオン交換方法の場合、283乃至363K(具体的に、約293乃至333K、より具体的に約297乃至313K)で約1〜24時間(具体的に、2〜12時間、より具体的には4〜6時間)行われることができる。このとき、使用される水素化金属塩の水溶液の場合、0.000001乃至1M(具体的には0.0001乃至0.1M、より具体的には0.0005乃至0.01M)の濃度であることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0047】
また、熱処理段階は、酸素(空気)および/または水素雰囲気および/または不活性ガス雰囲気の下で、例えば約500乃至800K(具体的に約573乃至773K、より具体的には約600乃至700K)で約1〜3時間(具体的には、1.5〜2.5時間)行われることができる。前記熱処理条件は、例示的に理解でき、必ずしもこれに限定されない。
【0048】
上述したような水素活性化金属の混入方法は、比較的ポアサイズが大きいX型ゼオライトに対してより効果的に適用できる。
【0049】
前述のように製造された、内部に水素活性化金属クラスターを含有するゼオライトの場合、必要に応じて(optionally)、合成されたゼオライト(すなわち、ゼオライトの外郭構造)内に存在するアルカリ金属イオン(例えば、Naイオン)を、他のアルカリ金属(例えば、LiおよびK)、アルカリ土類金属(例えば、Mg2+およびCa2+)などで置換することにより、ゼオライトの構造的および化学的特性を調整することができる。このとき、アルカリ金属(例えば、Na以外に、Naとイオン交換された他のアルカリ金属)またはアルカリ土類金属(例えば、Naとイオン交換されたアルカリ土類金属)が含有されたゼオライトは、下記反応式1に例示されているように、アンモニウムイオンなどでイオン交換できる。
【0050】
【化2】
【0051】
このとき、イオン交換量は、後続の熱処理によってゼオライトの結晶構造が少なくとも部分的に崩壊することが可能な範囲で決定できる。特定の実施形態によれば、後続の熱処理過程でゼオライトの構造が部分的に崩壊するようにイオン交換量を調整する場合は、より有利な反応活性を得ることができる。その理由として、部分的崩壊を介してアルミノシリケートマトリックス内での水素のガス拡散速度と活性化された水素の表面拡散速度との間の最適値が導出できるためである。
【0052】
これに関連し、前述したように、ゼオライト内のアルカリ金属を他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属でイオン交換した後、アンモニウムイオンでイオン交換した場合のゼオライト内のイオン交換程度(すなわち、Alに対するモル比として)を下記一般式1で表示することができる。
【0053】
【化3】
【0054】
式中、M1およびM2は、それぞれアルカリ金属およびアルカリ土類金属を意味し、
0.1≦m≦1の範囲で調節でき、
アルカリ金属およびアルカリ土類金属のイオン交換程度は0≦n≦1−mの範囲で調節できる。
【0055】
例示的な実施形態によれば、前記一般式1において、mおよびnは、NH/Alのモル比が約0.1〜1である範囲内で調節できる。
通常、イオン交換反応は、ゼオライトを、所望の交換イオンの塩を含有する溶液と接触させる方式により行われる。代表的なイオン交換反応の詳細は米国特許第3,140,249号、同第3,140,251号などを始めとする多数の文献に記載されており、前記文献は本発明の参考資料として含まれる。本実施形態によれば、前記合成された金属含有ゼオライト外郭構造(extraframework)の陽イオン(アルカリ金属またはアルカリ土類金属陽イオン)がイオン交換によってアンモニウムイオンと交換される。特定の実施形態において、イオン交換に使用されるアンモニウムイオン含有化合物として硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどを挙げることができ、所望のイオン交換程度に到達するためにイオン交換を1回または2回以上行うことができる。典型的に、前記金属含有ゼオライトの場合、アンモニウムイオン含有化合物の水溶液(約0.005〜1Mの濃度)と約1〜24時間(具体的に、約5〜10時間)、約20〜80℃で接触させる方式で行われ得る。
【0056】
前述のようにイオン交換された金属含有ゼオライトは、後続の熱処理によってゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊する。このとき、構造崩壊の程度はアンモニウムイオンへの交換量に依存する。一実施形態によれば、イオン交換された金属含有ゼオライトは、酸素雰囲気(例えば、空気)および/または水素雰囲気および/または不活性ガス雰囲気の下で約373乃至973K、具体的に約473乃至773Kの温度で熱処理した結果、脱陽イオン化(decationization)が起こることによりゼオライト結晶構造の崩壊が誘導される。
【0057】
アンモニウムイオンで交換されたゼオライト(高いアルミニウム含有)は、不安定な状態で存在するので、比較的低温である423K未満の温度における熱処理のみでも結晶構造が崩壊する可能性がある。このように部分的または全体的にゼオライトの構造が崩壊したアルミノシリケートは、熱処理前のゼオライトに比べて比表面積は減少し、マイクロポア構造を示す。このとき、ゼオライト内に混入された金属クラスターは、構造崩壊後には結晶質または非晶質アルミノシリケートマトリックス内に囲まれた形で分散している。
【0058】
上述したように、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊したアルミノシリケート内に金属粒子が囲まれた触媒は、従来知られている商用の触媒、またはゼオライトの構造を維持しながら金属クラスターが混入された(囲まれた)触媒と比較して水素が拡散することができるが(昇温下で)、依然として、有機分子は触媒内の金属クラスターに接近することができないため、水素スピルオーバー基盤の触媒として作用することができる。
【0059】
本発明の他の実施形態によれば、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊したアルミノシリケートに金属クラスターが囲まれた触媒は、様々な水素化工程および脱水素化工程に適用される場合、改善された活性を示す。このような水素化工程の例として、水添反応(hydrogenation)、水添脱硫反応(hydrodesulfurization)、水添脱窒素反応(hydrodenitrogenation)、水添脱酸素反応(hydrodeoxygenation)、水添異性化反応(hydroisomerization)などを挙げることができる。脱水素化反応の典型的な例として、シクロヘキサンをベンゼンに転換する反応を挙げることができる。さらに、過酸化水素の製造のための酸素還元反応などにも使用できる。
【0060】
一方、本実施形態に係る触媒は、C−C水素化分解反応(hydrogenolysis)に対して有意に低いレベルを示し、場合によっては実質的にC−C水素化分解反応活性を示さないことに注目する必要がある。通常、水素化分解反応の場合、触媒活性は金属クラスターのサイズに依存することが知られている。すなわち、金属クラスターのサイズが小さいほど活性が増加する。ところが、本実施形態に係る触媒は、アルミノシリケートマトリックス内に微細サイズの金属クラスターが混入(分散)されているにも拘わらず、C−C水素化分解活性が抑制される。従来から知られているのと相反した活性を示す理由は、スピルオーバー水素が反応する触媒表面の活性点が有機分子のC−C結合を切断することができないからである。このような反応特性は、水素化反応過程で炭化水素反応物が付加価値の低い硬質炭化水素ガスとして損失する現象を効果的に抑制することができるという利点を提供する。
【0061】
この他にも、本実施形態で提供される触媒の場合、水素活性化金属クラスターが構造的に安定したアルミノシリケートによって囲まれているので、過酷な高熱環境に適用されるとしても、金属が支持体の表面に露出している通常の水素化または脱水素化触媒に比べて金属の焼結(sintering)現象が効果的に抑制されることにより、優れた耐熱特性を示す。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0063】
実施例1
様々なBET表面積を有するNaAゼオライト内への白金の選択的混入
アルミン酸ナトリウム(NaO42.5%、Al53%、Aldrich)およびLudox(AS−30、30wt%in HO、Aldrich)をそれぞれアルミナソースおよびシリカソースとして使用した。様々なBET表面積を有するゼオライトを合成するために、反応混合物(ゲル組成物)にポリ(エチレングリコール)(PEG、Average Mn;1450、Aldrich)を水に対して0重量%、50重量%および200重量%の割合でそれぞれ添加した。メルカプトプロピルトリメトキシシラン(mercaptopropyltrimethoxysilane)および白金前駆体としての白金酸(platinic acid;HPtCl)を反応混合物に一緒に投入した。その結果、反応混合物の最終組成は、下記のとおりである(モル基準):
(1.5SiO:Al:1.8NaO:38.12HO:0.016Pt:0.064メルカプトシラン:nPEG(nは0〜0.95))。
【0064】
十分に混合された反応混合物を353Kで18時間攪拌した後、固体生成物を濾取し、373Kで24時間乾燥させてゼオライト(NaAゼオライト)を製造した。その後、前記ゼオライトを673Kでそれぞれ2時間ずつ空気およびH雰囲気の下で熱処理した。
合成されたNaAゼオライトの内部に白金が担持されたサンプルに対して、77Kで窒素吸着を用いてBET表面積を測定した。窒素吸着はBEL−Sorp−max(BEL Japan)装備を用いて測定した。吸着測定に先立ち、すべてのサンプルは673K、真空中で前処理し、サンプルの表面積は相対圧力(P/P)が0.05と0.20の範囲でBrunauer−Emmett−Teller(BET)式を用いて計算した。その結果、それぞれ3m−1、18m−1および38m−1のBET表面積を有する、白金が担持されたNaAゼオライトを合成することができた。
【0065】
合成されたNaA−ゼオライトの内部に担持された白金の量は、iCAP−6500(Thermo elemental)装備を用いて誘導結合プラズマ原子発光分光法(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy;ICP−AES)によって分析した。表面に露出した白金のモル数は、ASAP2000(Micromeretics)装備を用いて323KでのHおよびCO化学吸着量を測定して分析した(volumetric vacuum method)。H(99.999%)およびCO(99.9%)ガスは、追加精製過程を経ることなく使用した。吸着分析に先立ち、すべてのサンプルは、673KでHを流しながら(100sccm)1時間還元させ、同じ温度で1時間真空処理した。水素および一酸化炭素の化学吸着は、ASAP2020(Micromeritics)装備を用いて容積法によって測定し、673Kで1時間還元させた後、323K、373K、473Kおよび573Kでそれぞれ化学吸着量を測定した。具体的に、サンプルは下記の手順によって前処理した:
(i)水素を100ml/minで流しながら373Kまで10K/minで昇温して30分間保持する段階と、
(ii)水素を100ml/minで流しながら673Kまで10K/minで昇温して60分間保持する段階と、
(iii)真空状態に673Kで60分間保持する段階と、
(iv)真空状態に吸着温度(323K、373K、473K、573K)まで50K/minで降温して60分間保持する段階と、
(v)吸着温度(323K、373K、473K、573K)で「outgas rate」が10μm/min以下となるようにリークテスト(leak test)する段階。
【0066】
具体的な化学吸着量の測定は、下記の条件で行った。:
平衡間隔(Equilibration interval):20秒
相対目標許容値(Relative target tolerance):5.0%
絶対目標許容値(Absolute target tolerance):5.000mmHg
測定圧力(Measuring pressure):2〜450mmHg。
【0067】
前述した条件で得た吸着等温線の高圧部分(50〜200mmHg)区間で外挿(extrapolation)して該当吸着温度での水素および一酸化炭素の化学吸着量を決定した。このとき、20秒の平衡間隔は、20秒間隔で化学吸着量の平衡か否かを判断することであり、相対目標許容値は、該当平衡間隔の間に吸着量の変化が5%未満の場合に平衡に達したと判断した。また、絶対目標許容値は、吸着絶対量が5mmHg未満の場合に平衡に到達したと判断した。相対許容値および絶対許容値の範囲をすべて満たすとき、吸着と判断した。
合成された物質の特性を図2にまとめた。NaAゼオライトの合成の際に、添加されたPEGのモル組成に応じてそれぞれPt/NaA−0、Pt/NaA−0.24、およびPt/NaA−0.95で示した。
【0068】
これとは別に、メソ多孔性のシリカゲル(Davisil Grade 636、Sigma−Aldrich)でPt(NH(NO(Aldrich)水溶液を初期湿潤含浸させた。前記含浸されたシリカゲルを373Kで24時間乾燥させた後、673Kで、2時間乾燥空気中でか焼させ(200mLmin−1−1)、水素雰囲気および773Kの下で2時間還元させることにより(200mLmin−1−1)、Pt/SiO触媒サンプルを製造した。前記製造されたPt/SiO触媒サンプルに対する特性を図2に示した。
【0069】
NHイオン交換および熱処理によるゼオライト構造の崩壊
上述した手順に従って合成されたNaAゼオライトは、常温で0.5M硝酸アンモニウム(NHNO)溶液を用いて6時間にわたってイオン交換させた。合成された白金担持NaAゼオライトのうち、一部は1gあたり14mlの0.5M硝酸アンモニウム(NHNO)溶液で1回イオン交換させ、残りは1gあたり140mlの0.5M硝酸アンモニウム(NHNO)溶液を用いて3回にわたってイオン交換させた。イオン交換されたサンプルを673Kおよび空気雰囲気の条件下で熱処理し、ゼオライト結晶構造の崩壊程度はXRD分析を用いて確認した。このとき、硝酸アンモニウム溶液で1回イオン交換したサンプルの場合、NaAゼオライト合成過程で添加されたPEGのモル含量に応じて、それぞれPt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95で表示した(部分的崩壊)。また、3回にわたってイオン交換したサンプルの場合、NaA−ゼオライト合成過程で添加されたPEGのモル含量に応じて、それぞれPt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95で表示した(全体的崩壊)。
【0070】
−XRD分析
ゼオライトの崩壊前/後の結晶構造に対するXRD分析結果を図3に示した。前記図面によれば、合成された白金含有NaAゼオライトは、典型的なLTA構造に対するXRDパターンを示し、結晶構造の崩壊が進むにつれてピーク強度は益々減少した(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)。ゼオライトの構造が全体的に崩壊したサンプルの場合(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)、ゼオライト結晶特性のほとんどが消えたことが分かる。NaAゼオライトにおける主ピークは2θ=7.20であり、ゼオライト崩壊後の主ピークの面積が崩壊前の主ピークの面積の0.8未満に減少したことを確認した。すなわち、0.8(MainPzeolite)>(MainPcollapse)の関係を示した。
【0071】
−HおよびCO化学吸着の分析
白金含有ゼオライト触媒サンプルのそれぞれに対して、温度変化による水素(H)および一酸化炭素(CO)の化学吸着量の挙動を図4に示し、0.7*(H/Pt373+H/Pt473+H/Pt573)/3および(CO/Pt373+CO/Pt473+CO/Pt573)/3を下記表3にまとめた。
【0072】
【表3】
【0073】
前記図面によれば、ゼオライトの構造が崩壊する前のサンプルの場合、吸着温度の上昇に伴ってCOの化学吸着量および水素の化学吸着量はすべて減少する傾向を示した。ところが、ゼオライトの構造が崩壊したサンプルでは、吸着温度が上昇するにつれて、全体的にCOの化学吸着量が減少する一方、水素の化学吸着量は増加する傾向を示した。具体的に、ゼオライの構造が全体的に(完全に)崩壊したサンプル(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)の場合、323Kでの水素化学吸着量に照らしてみるとき、室温(room temperature)では水素分子がアルミノシリケートマトリックスの内部に分散している金属クラスターの表面まで拡散することができないことが分かった。また、ゼオライトの構造が全体的に崩壊したサンプルでは、昇温の下でもCO吸着量は全体温度にわたって実質的に0に近づいたので(<0.02)、これはCOが水素原子よりも大きい分子サイズ(動的分子径:0.38nm)を持つためであると判断される。
【0074】
一方、部分的に崩壊したサンプル(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24およびPt/NaHA−0.95)の場合、崩壊する前のサンプルと完全に崩壊したサンプルとの間の中間挙動を示しているので、323Kでもある程度の水素化学吸着量特性を示した。但し、一部のサンプル(Pt/NaHA−0およびPt/NaHA−0.95)の場合、温度の上昇に伴って水素吸着量が増加してから渋滞するか或いはやや減少する傾向を示した。
ところが、ゼオライトの構造が部分的または全体的に崩壊したサンプルは0.7*(H/Pt373+H/Pt473+H/Pt573)/3>(CO/Pt373+CO/Pt473+CO/Pt573)/3の関係を満たしているのに対し、ゼオライトの構造が崩壊していないサンプルまたは従来の触媒(Pt/SiO)の場合は上述した関係を満たしていない。
上述した化学吸着量分析の結果から、イオン交換および熱処理過程中に脱陽イオンによりゼオライトの構造がより稠密なアルミノシリケートマトリックスに転換されながらも、白金(Pt)クラスターは継続的に囲まれた状態で存在することが分かる。
一方、図2に記載されているように、全体的に構造が崩壊したサンプルに対する窒素吸着測定の結果、BET表面積がそれぞれ2m−1、12m−1および33m−1であったので、崩壊前のゼオライトの比表面積と比較すると、わずかに減少したことが分かる。
【0075】
−TEMイメージ
金属(Pt)がアルミノシリケートマトリックス内にサイズ変化なしで均一に含有(担持)されているか否かを確認するために、Pt/NaA−0、Pt/HA−0、Pt/NaA−0.24、Pt/HA−0.24、Pt/NaA−0.95およびPt/HA−0.95のサンプルに対するTEMイメージ(image)を分析し、その結果を図5に示した。図示の如く、ゼオライトの構造が崩壊したサンプルの場合、白金クラスターが非晶質アルミノシリケートの内部によく分散した状態で存在することを確認することができる。このとき、観察される白金クラスターは均一な直径(約1.0nm)を有すると把握された。
【0076】
実施例2
固体MAS核磁気共鳴(solid−state magic angle spinning nuclear magnetic resonance;solid−state MAS NMR)分析
NaAゼオライトの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaA−0)、および構造が部分的または全体的に崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0およびPt/HA−0)に対して27Al MAS NMRおよび29Si MAS NMR分析を行った。その結果を図6に示した。固体核磁気共鳴法(solid−state NMR)は、widebore 9.4Tの磁場強度を持つBruker Avance 400装備を用いて104.3MHz(27Al)、79.5MHz(29Si)のラーモア周波数(Larmor frequency)で測定した。マジックアングルスピニング(magic angle spinning)速度は27Alおよび29Siでそれぞれ15kHzおよび5kHzと設定し、化学的移動はAl(NOおよびDSS(2,2−dimethyl−2−silapentane−5−sulfonic acid)を27Alおよび29Siの基準にしてppm単位で記録した。
27Al MAS NMR分析の結果、構造が崩壊するにつれて、Pt/HA−0サンプルの場合には、4面体(tetrahedral)構造を有するAl(60ppm)が減少すると同時に、五配位された(penta−coordinated)Al(25ppm)および8面体(octahedral)構造を有するAl(0ppm)が生成された。また、29Si MAS NMR分析の結果、構造の崩壊に伴い、4つのAlによって囲まれたSi(−89ppm)が減少しながら、非常に不均一な形態のSi構造(−80ppm乃至−120ppm)が生成された。部分的に構造が崩壊したPt/NaHA−0サンプルの場合、中間程度の傾向を示した。
一方、Pt/NaA−0サンプルの場合、27Alおよび29Si MAS NMRスペクトルの両方で単一の狭いピークを示したので、これらのそれぞれは、4面体Al(60ppm)および4つのAlによって囲まれたSi(−89ppm)に該当した。
【0077】
実施例3
硫黄による金属表面の非活性化の分析
構造が崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に担持された白金触媒の硫黄に対する被毒か否かを評価するために、XAFS(X−ray absorption fine structure)分析を介して、Pt−S結合が生成されるかを考察した。XAFS分析は、浦項加速器センターの7D−XAFSビームラインで行ったとともに、Pt L3edgeで透過(transmission)モードにて測定した。測定に先立ち、約0.3gのPt/HA−0サンプルおよびPt/SiOサンプルをそれぞれ200barで圧縮して直径13mmのペレットを製造した。製造されたペレットは、厚さ0.05mmのアルミニウムウィンドウを有するin−situ XAFSセルに装着した。セルに装着されたサンプルは、573Kで5%HS/H(200sccm)で1時間前処理した。前記XAFS分析の結果を図7に示した(1:Pt−Pt coordination、2:Pt−S coordination)。
前記図面によれば、Pt/HA−0の場合、白金箔のような径方向の分布(radial distribution)を示すが、これに対し、白金が外部に露出しているPt/SiO触媒サンプルの場合、Pt−S結合が生成されたことを確認した。すなわち、Pt/HA−0サンプルの場合、最も簡単な硫黄化合物であるHSさえ金属(Pt)の表面まで接近することができなかった。
【0078】
実施例4
ベンゼン水素化反応性の測定
ゼオライトの構造が崩壊する前のサンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、および部分的または全体的に構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24、Pt/NaHA−0.95、Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)に対して、ベンゼン水素化反応を行った。
水素化反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、それぞれのサンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、0.1gの触媒と1.9gのSiOを混合して固定層連続流反応器(fixed−bed continuous flow reactor)で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って673K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。ベンゼンの水素化反応は、(WHSV(h−1)=525.9、523K、PH2=472.54kPa、Pbenzene=27.46kPa)の運転条件で行った。
また、実施例1で製造された従来の商用触媒(Pt/SiO)に対しても、同様の方法によってベンゼン水素化反応を行った。
触媒の活性は、触媒に含有された全体白金のmolあたりの転換率(turnover rate;TOR)、または323Kでの水素化学吸着で測定された表面に露出した白金のmolあたりの転換率で表すことができる。但し、ゼオライトの構造が全体的に崩壊したアルミノシリケートマトリックスの内部に白金が担持されたサンプルの場合、323Kで水素化学吸着量が実質的に0であるため、無限大であるTORの値を持つことになる。したがって、室温での水素化学吸着量が実質的に0である該当触媒を商用触媒と比較することは妥当ではないと判断し、本実施例では触媒に含有された全体白金のmolあたりの転換率で評価し、その結果を図8に示した。
前記図面によれば、BET表面積が増加するほど反応性が増加する傾向を示した。ゼオライトが部分的に崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプルのうち、比表面積が大きいサンプルの場合、従来のPt/SiO触媒に比べて特に優れた水素化反応活性を示した。
【0079】
実施例5
シクロヘキサン脱水素化反応性の測定
ゼオライトの構造が崩壊する前のサンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、および部分的または全体的に構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24、Pt/NaHA−0.95、Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)に対して、シクロヘキサン脱水素化反応を行った。
脱水素化反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、各サンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、0.1gの触媒と1.9gのSiOを混合して固定層連続流反応器で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って673K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。シクロヘキサンの脱水素化反応は、(WHSV(h−1)=467.4、623K、PH2=92.45kPa、Pcyclohexane=7.55kPa)の運転条件で行った。
また、実施例1で製造された従来の商用触媒(Pt/SiO)に対しても、同様の方法によってシクロヘキサン脱水素化反応を行い、その結果を図9に示した。
前記図面によれば、BET表面積が増加するほど反応性も増加する傾向を示した。ゼオライトが部分的に崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプルのうち、比表面積が大きいサンプルの場合、従来のPt/SiO触媒に比べて特に優れた脱水素化反応活性を示した。
【0080】
実施例6
チオフェン水添脱硫反応性の測定
全体的に構造が崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)に対して、チオフェン脱硫反応を行った。反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、それぞれのサンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、0.1gの触媒と1.9gのSiOを混合して固定層連続流反応器で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って673K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。チオフェンの水添脱硫反応は(WHSV(h−1)=89.87、573K、PH2=1976kPa、Pthiophene=4kPa、Pheptane=20kPa)の運転条件で行った。
また、実施例1で製造された従来の商用触媒(Pt/SiO)に対しても、同様の方法によってチオフェン水添脱硫反応を行い、その結果を図10に示した。前記図面によれば、BET表面積が増加するにつれて水添脱硫反応性が増加した。
【0081】
実施例7
プロパン水素化分解(hydrogenolysis)反応性の測定
ゼオライトの構造が崩壊する前のサンプル(Pt/NaA−0、Pt/NaA−0.24およびPt/NaA−0.95)、および部分的または全体的に構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0、Pt/NaHA−0.24、Pt/NaHA−0.95、Pt/HA−0、Pt/HA−0.24およびPt/HA−0.95)に対して、プロパン水素化分解反応を行った。
プロパン水素化分解反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、各サンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、2gの触媒および2gのSiOを混合して固定層連続流反応器で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って673K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。プロパン水素化分解反応は、(WHSV(h−1)=5.41、643K、PH2=40kPa、PHe=50kPa、Ppropane=10kPa)の運転条件で行った。
また、実施例1で製造された従来の商用触媒(Pt/SiO)に対しても、同様の方法によってプロパン水素化分解反応を行い、その結果を図11に示した。
前記図面によれば、構造が崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプルの場合、BET表面積に関係なく、プロパン水素化分解活性が低かった。特に、従来の商用触媒(Pt/SiO)と比較して著しく低レベルであったので、Pt/SiO触媒の場合、開放されたポア構造を持つため、高いC−C水素化分解活性を有すると判断される。
【0082】
実施例8
プロパン脱水素化反応性の測定
ゼオライトの構造が部分的に崩壊したサンプル(Pt/NaHA−0.95)および実施例1で製造された従来の商用触媒(Pt/SiO)に対して、プロパン脱水素化反応を行った。
プロパン脱水素化反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、各サンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。同じプロパン転換率の範囲で選択度を比較するために、Pt/NaHA−0.95の場合には4gの触媒および2gのSiOを混合して使用し、Pt/SiOの場合には5gの触媒および2gのSiOを混合して使用することにより、固定層連続流反応器で反応を行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って823K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。プロパン脱水素化反応は、(823K、PH2=10kPa、PHe=80kPa、Ppropane=10kPa)の運転条件で行った。Pt/NaHA−0.95触媒およびPt/SiO触媒のそれぞれに対して、WHSV(h−1)=2.7およびWHSV(h−1)=2.16の空間速度で測定した。その結果を図12に示した。
前記図面によれば、構造が部分的に崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0.95)の場合、従来の商用触媒(Pt/SiO)と比較して同じ範囲の転換率で著しく改善されたプロピレン選択度を持つことが確認された。すなわち、構造が部分的に崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaHA−0.95)の場合、従来の商用触媒(Pt/SiO)と比較して非常に低いC−C水素化分解活性を持つため、結果としてプロピレン選択度が改善されたと判断される。
【0083】
実施例9
熱処理による金属焼結現象(sintering)の評価
全体的に構造が崩壊した非晶質アルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HA−0.95)を973K、H(200sccm)の雰囲気で12時間熱処理した後、白金の焼結(sintering)か否かをTEM(transmission electron microscope)を用いて観察し、熱処理前/後のTEMイメージを図13に示した。
図示の如く、Pt/HA−0.95サンプルは、12時間の熱処理後にも、白金クラスターのサイズが熱処理前と比較して増加していないことを確認した。
【0084】
実施例10
商用NaXゼオライト内への白金の選択的混入
商用NaXゼオライト(13X molecular sieve、Sigma−Aldrich)のマイクロ気孔内に存在する水分を除去するために、623Kで6時間空気雰囲気の下で熱処理し、白金前駆体としてPt(NH(NO(Aldrich)を使用した。
商用NaXゼオライトのマイクロ気孔内に白金を選択的に混入するために、0.002M Pt(NH(NO水溶液を用いて常温でイオン交換した後、583K、空気雰囲気、573K、H雰囲気で熱処理した。このとき、NaXゼオライト1gあたり0.002M Pt(NH(NO水溶液25.9mlを用いて最終Pt含量が1重量%となるようにした。合成されたサンプルをPt/NaXで表示した。
【0085】
NHイオン交換と熱処理によるゼオライト構造の崩壊
上述した手順に従って合成されたPt/NaXゼオライトは、常温で0.5M硝酸アンモニウム(NHNO)溶液を用いて6時間にわたってイオン交換させた。Pt/NaX1gあたり140mlの0.5M硝酸アンモニウム(NHNO)溶液で3回にわたってイオン交換した。イオン交換されたサンプルを573K、水素雰囲気の条件下で2時間熱処理し、ゼオライト結晶構造の崩壊程度はXRD分析を用いて確認した。イオン交換の後に熱処理したサンプルの場合はPt/HXで表示した。
【0086】
−XRD分析
Xゼオライトの崩壊前/後の結晶構造に対するXRD分析結果を図14に示した。前記図面によれば、Pt含有NaXゼオライト(Pt/NaX)は、典型的なFAU構造に対するXRDパターンを示すのに対し、ゼオライト結晶構造の崩壊後(Pt/HX)には結晶特性のほとんどが消えたことが分かる。NaXゼオライトにおける主ピークは2θ=10であり、ゼオライトの崩壊後の主ピークの面積が崩壊前の主ピークの面積の0.8未満に減少したことを確認した。すなわち、0.8(MainPzeolite)>(MainPCollapse)の関係を示した。
【0087】
−HおよびCO化学吸着の分析
Pt/NaXおよびPt/HXサンプルに対して、温度変化による水素(H)および一酸化炭素(CO)の化学吸着量の挙動を図15に示し、0.7*(H/Pt373+H/Pt473+H/Pt573)/3および(CO/Pt373+CO/Pt473+CO/Pt573)/3を下記の表4にまとめた。
【0088】
【表4】
【0089】
上記の表に記載されているように、Xゼオライトの場合にも、Aゼオライトと同様に、ゼオライトの構造崩壊後にA>Bの関係を示した。
【0090】
固体MAS核磁気共鳴(solid−state magic angle spinning nuclear magnetic resonance;solid−state MAS NMR)分析
NaXゼオライトの内部に白金が担持されたセンプル(Pt/NaX)、および構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HX)に対して、27Al MAS NMRおよび29Si MAS NMR分析を行い、その結果を図16に示した。固体核磁気共鳴法(solid−state NMR)は、widebore 9.4Tの磁場強度を持つBruker Avance 400装備を用いて104.3MHz(27Al)、79.5MHz(29Si)のラーモア周波数(Larmor frequency)で測定した。マジックアングルスピニング(magic angle spinning)速度は、27Alおよび29Siでそれぞれ15kHzおよび5kHzに設定し、化学的移動はAl(NOおよびDSS(2,2−dimethyl−2−silapentane−5−sulfonic acid)を27Alおよび29Siの基準にしてppm単位で記録した。
【0091】
27Al MAS NMR分析の結果、構造が崩壊するにつれて、Pt/HXサンプルの場合は、4面体(tetrahedral)構造を有するAl(60ppm)が減少するとともに、五配位された(penta−coordinated)Al(25ppm)および8面体(octahedral)構造を有するAl(0ppm)が生成された。一方、29Si MAS NMR分析の結果、構造の崩壊に伴い、4つのAlによって囲まれたSi(−89ppm)が減少しながら、非常に不均一な形態のSi構造(−80ppm乃至−120ppm)が生成された。
一方、Pt/NaXサンプルの場合、27Alおよび29Si MAS NMRスペクトルの両方で単一の狭いピークを示したので、これらのそれぞれは4面体Al(60ppm)および4つのAlによって囲まれたSi(−89ppm)に該当した。
【0092】
以下の実施例11、12及び13は参考例である。
実施例11
Pt/NaXおよびPt/HXに対するベンゼン水素化反応性の測定
NaXゼオライトの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaX)、および構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HX)に対して、ベンゼン水素化反応を行った。
水素化反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、それぞれのサンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、0.2gの触媒および4gのSiO2を混合して固定層連続流反応器(fixed−bed continuous flow reactor)で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って573K、H2流量100sccmでin−situにて還元させた。ベンゼンの水素化反応は、(WHSV(h-1)=263.0、523K、PH2=472.54kPa、Pbenzen=27.46kPa)の運転条件で行い、その結果を図17に示した。
前記図面によれば、構造が崩壊したPt/HX触媒の場合、すべての反応物が金属の表面に触れることが可能なPt/NaX触媒に比べて高い水素化反応性を示した。
【0093】
実施例12
Pt/NaXおよびPt/HXに対するプロパン水素化分解(hydrogenolysis)反応性の測定
NaXゼオライトの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaX)、および構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HX)に対して、プロパン水素化分解反応を行った。
水素化分解反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、各サンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、1.5gの触媒および4gのSiOを混合して固定層連続流反応器で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って723K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。プロパンの水素化分解反応は、(WHSV(h−1)=3.60、723K、PH2=90kPa、Ppropane=10kPa)の運転条件で行い、その結果を図18に示した。
前記図面によれば、構造が崩壊したPt/HX触媒の場合、すべての反応物が金属の表面に触れることが可能なPt/NaX触媒に比べて著しく低い水素化分解反応性を示した。Pt/NaX触媒の場合、開放されたポア構造を持つため、高いC−C水素化分解活性を有すると判断される。
【0094】
実施例13
Pt/NaXおよびPt/HXに対するプロパン脱水素化反応性の測定
NaXゼオライトの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/NaX)、および構造が崩壊したアルミノシリケートの内部に白金が担持されたサンプル(Pt/HX)に対して、プロパン脱水素化反応を行った。
脱水素化反応に先立ち、熱および物質移動に対する影響を最小化するために、各サンプルは、γ−アルミナと1:9の割合で混合した後、75〜100メッシュに成形して最終触媒として反応に使用した。反応は、2gの触媒および4gのSiOを混合して固定層連続流反応器で行った。すべてのサンプルに対して、反応に先立って853K、H流量100sccmでin−situにて還元させた。プロパンの脱水素化反応は、(WHSV(h−1)=7.21、853K、PH2=10kPa、PHe=70kPa、Ppropane=20kPa)の運転条件で行い、その結果を図19に示した。
前記図面によれば、構造が崩壊したPt/HX触媒の場合、すべての反応物が金属の表面に触れることが可能なPt/NaX触媒に比べて著しく高いプロピレン選択性を示した。一方、Pt/NaX触媒の場合、開放されたポア構造を持つため、高いC−C水素化分解活性を有するので、結果的に低いプロピレン選択度を示すと判断される。
本発明の単純な変形乃至変更は当該分野における通常の知識を有する者によって容易に利用でき、それらの変形や変更はいずれも本発明の範囲に含まれるものと理解できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図19