(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一又は複数の追加の他の細胞傷害性剤、化学療法剤若しくは抗がん剤、又はそのような薬剤の効果を高める化合物若しくは電離放射線が投与されることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の医薬。
一又は複数の追加の他の細胞傷害性剤、化学療法剤若しくは抗がん剤、又はそのような薬剤の効果を高める化合物若しくは電離放射線が投与されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
一又は複数の追加の他の細胞傷害性剤、化学療法剤若しくは抗がん剤、又はそのような薬剤の効果を高める化合物若しくは電離放射線が投与されることを特徴とする、請求項8から10の何れか一項に記載の使用。
【背景技術】
【0003】
アフコシル化抗体
モノクローナル抗体の細胞媒介性エフェクター機能は、Umana, P.,ら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180;及び米国特許第6602684号に記載されているように、それらのオリゴ糖成分を操作することにより高められ得る。がんの免疫療法で最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン内でAsn297に保存されたN結合グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297と結合している二つの複合二分岐オリゴ糖はCH2ドメインの間に埋もれて、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成しており、該オリゴ糖の存在は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)のようなエフェクター機能を抗体が媒介するために必須である(Lifely, M.R., et al., Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R., et al., Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A.,及びMorrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32)。 Umana, P.,ら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/154342号は、二分されたオリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTIII」)のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内での過剰発現が、抗体のインビトロADCC活性を有意に増大させることを示した。N297炭水化物の組成の改変又はその除去もまたFcγR及びC1qへの結合に影響を及ぼす(Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180; Davies, J., et al., Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294; Mimura, Y., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547; Radaev, S., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740; Simmons, L.C., et al., J. Immunol. Methods 263 (2002) 133-147)。
【0004】
抗CD20抗体を含むアフコシル化抗体及びフコシル化抗体の活性を論じる研究が報告されている(例えば、Iida, S., et al., Clin. Cancer Res. 12 (2006) 2879-2887; Natsume, A., et al., J. Immunol. Methods 306 (2005) 93-103; Satoh, M., et al., Expert Opin. Biol. Ther. 6 (2006) 1161-1173; Kanda, Y., et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688; Davies, J., et al., Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294)。
【0005】
CD20抗体及び抗CD20抗体
CD20分子(ヒトBリンパ球限定分化抗原又はBp35とも称される)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置する疎水性膜貫通タンパク質であり、詳しく記述されている(Valentine, M.A., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287;及びEinfeld, D.A., et al., EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212; Stamenkovic, I., et al., J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Tedder, T.F., et al., J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。CD20は、90%超のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)上で発現される(Anderson, K.C., et al., Blood 63 (1984) 1424-1433)が、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞、又は他の正常組織上には見出されない(Tedder, T.F., et al., J, Immunol. 135 (1985) 973- 979)。
【0006】
CD20結合の様式と生物活性が有意に異なる、2つの異なるタイプの抗CD20抗体が存在する(Cragg, M.S., et al., Blood 103 (2004) 2738-2743;及びCragg, M.S., et al., Blood 101 (2003) 1045-1052)。例えばリツキシマブ(85%以上のフコース量を有する非アフコシル化抗体)等のI型抗体は補体媒介性細胞傷害が強力である。
【0007】
例えばトシツモマブ(B1)、11B8、AT80又はヒト化B−Ly1抗体等のII型抗体は、同時のホスファチジルセリン曝露でカスパーゼ非依存性アポトーシスを介して標的細胞死を効率的に起こす。
【0008】
CD22抗体−薬物コンジュゲート
CD19、CD22及びCD52等の他のB細胞抗原は、リンパ腫の治療のための治療可能性の標的となる(Grillo-Lopez A.J. et al., Curr Pharm Biotechnol, 2:301-11, (2001))。CD22は、分化の成熟した段階でのみB細胞表面に発現される135kDaのB細胞に限定されるシアロ糖タンパク質である(Dorken, B. et al., J. Immunol. 136:4470-4479 (1986))。ヒトでのCD22の主な形態は、細胞外ドメインに7の免疫グロブリンスーパーファミリードメインを含有するCD22ベータである(Wilson, G.L. et al., J. Exp. Med. 173:137-146 (1991))。変異形態であるCD22アルファは免疫グロブリンスーパーファミリードメイン3及び4を欠いている(Stamenkovic, I. and Seed, B., Nature 345:74-77 (1990))。ヒトCD22へのリガンド結合は免疫グロブリンスーパーファミリードメイン1及び2(エピトープ1及び2とも称される))と関連していることが示されている(Engel, P. et al., J. Exp. Med. 181:1581-1586, 1995)。
【0009】
B細胞NHLにおいて、CD22の発現は、高悪性度の集団及び低悪性度の集団でそれぞれ、91%から99%の範囲である(Cesano, A. et al., Blood 100:350a (2002))。CD22は、B細胞活性化複合体の構成成分として(Sato, S. et al., Semin. Immunol. 10:287-296 (1998))、また、接着分子としても機能し得る(Engel, Pl t al., J. Immunol. 150:4719-4732 (1993))。CD22欠損マウスのB細胞は寿命がより短く、アポトーシスが亢進することから、B細胞生存における本抗原の重要な役割が示唆される(Otipoby, K.L. et al., Nature (Lond) 384:634-637 (1996))。その天然のリガンド又は抗体との結合の後、CD22は急速に内部移行され、原発性B細胞で強力な共刺激シグナルと腫瘍性B細胞でプロアポトーシスシグナルとを生じさせる(Sato, S. et al., Immunity 5:551-562 (1996))。
【0010】
抗CD22抗体は、B細胞がんや他のB細胞増殖性疾患のための有望な治療方法として研究されている。このような抗CD22抗体は、RFB4(Mansfield, E. et al., Blood 90:2020-2026 (1997))、CMC−544(DiJoseph, J.F., Blood 103:1807-1814 (2004))及びLL2(Pawlak-Byczkowska, E.J. et al., Cancer Res. 49:4568-4577 (1989))を含む。LL2抗体(以前はHPB−2と呼ばれた)は、CD22抗原に対するIgG2aマウスモノクローナル抗体である(上掲のPawlak-Byczkowska, E.J. et al. (1989))。インビトロ免疫組織学的な評価で、51の試験したB細胞NHL試料中の50と反応するが、他の悪性腫瘍又は正常な非リンパ腫組織とは反応しないLL2抗体の反応性が実証された(上掲のPawlak-Byczkowska (1989); Stein, R. et al., Cancer Immunol. Immunother. 37:293-298 (1993))。
【0011】
細胞傷害性剤又は細胞増殖抑制剤、すなわち、がんの治療において腫瘍細胞を殺すか又は阻害するための薬物の局所送達のための抗体−薬物コンジュゲートの使用により(Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4975278号)、腫瘍への薬物部分の標的化送達、及びその中での細胞内蓄積が可能となる。その場合、コンジュゲートさせていないこれらの薬物を全身投与すると、排除しようとする腫瘍細胞だけでなく正常な細胞にも許容されないレベルの毒性が生じ得る(Baldwin et al., (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera et al. (ed.s), pp. 475-506)。よって、毒性を最小限にした最大限の有効性が追求される。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が、こうした方策に有用であることが報告されている(Rowland et al., (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。これらの方法において用いられる薬物は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンデシンを含む(Rowland et al., Cancer Immunol. Immunother. 21:183-87 (1986))。抗体−毒素コンジュゲートで用いられる毒素は、ジフテリア毒素等の細菌性毒素、リシン等の植物生毒素、ゲルダナマイシン(Kerr et al (1997) Bioconjugate Chem. 8(6):781-784; Mandler et al (2000) Journal of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP1391213; Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode et al (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)等の小分子毒素を含む。前記毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害等の機構によりその細胞傷害及び細胞分裂停止の効果に影響し得る(Meyer, D.L. and Senter, P.D. “Recent Advances in Antibody Drug Conjugates for Cancer Therapy” in Annual Reports in Medicinal Chemistry, Vol 38 (2003) Chapter 23, 229-237)。ある種の細胞傷害性剤は、大きな抗体又はタンパク質受容体リガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0012】
ゼヴァリン(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen/Idec)は、正常及び悪性Bリンパ球の表面上に見出されるCD20抗原に対するマウスIgG1カッパモノクローナル抗体と、チオウレアリンカーキレート剤により結合した
111In又は
90Y放射性同位体とからなる抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman et al (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77; Wiseman et al (2002) Blood 99(12):4336-42; Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63; Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼヴァリンはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症且つ長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに結合したhu CD33抗体からなる抗体薬物コンジュゲートであるマイロターグ
TM(ゲムツズマブオゾガミシン、Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号; 同第5606040号; 同第5693762号; 同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬物部分DM1と結合しているhuC242抗体からなる抗体薬物コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Immunogen,Inc.)は、CanAg抗原を発現するがん、例えば大腸がん、膵臓がん、胃がん等の治療用に開発されている。メイタンシノイド薬物部分DM1と結合している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬物コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm.,BZL Biologics,Immunogen Inc.)は、前立腺腫瘍の治療薬候補として開発中である。同じメイタンシノイド薬物部分であるDM1は、非ジスルフィドリンカーであるSMCCを介してマウスモノクローナル抗体であるTA.1に結合された(Chari et al. (1992) Cancer Research 52:127-131)。このコンジュゲートは、対応するジスルフィドリンカーコンジュゲートの200分の1の強度であることが報告された。その文献中で、SMCCリンカーは「切断可能でない」と考察された。
【0013】
幾つかの短いペプチド化合物は海生軟体動物であるタツナミガイから単離され、生物活性を有することが見出されている(Pettit et al (1993) Tetrahedron 49:9151; Nakamura et al (1995) Tetrahedron Letters 36:5059-5062; Sone et al (1995) Journal Org Chem. 60:4474)。こうした化合物の類似体も調製されており、幾つかは生物活性を有することが見出されている(概要については、Pettit et al (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277参照)。例えば、アウリスタチンE(米国特許第5635483号)は、海洋天然産物ドラスタチン10(抗がん薬ビンクリスチンと同じチューブリン上の部位に結合することによりチューブリン重合を阻害する薬剤)の合成類似体である(G. R. Pettit, (1997) Prog. Chem. Org. Nat. Prod. 70:1-79)。ドラスタチン10、アウリスタチンPE及びアウリスタチンEは、四つのアミノ酸(その内の三つは化合物のドラスタチン類に特有)とC末端アミドとを有する直鎖状ペプチドである。
【0014】
アウリスタチンペプチドであるアウリスタチンE(AE)と、ドラスタチンの合成類似体であるモノメチルアウリスタチン(MMAE)は、(i)キメラモノクローナル抗体cBR96(癌腫上のルイスYに特異的)、(ii)cAC10(血液悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Klussman, et al (2004), Bioconjugate Chemistry 15(4):765-773; Doronina et al (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784; 「Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands」; Francisco et al (2003) Blood 102(4):1458-1465;米国特許公開第2004/0018194号)、(iii)CD20を発現するがん及び免疫疾患の治療のためのリツキサン(登録商標)(リツキシマブ)(国際公開第04/032828号)等の抗CD20抗体、(iv)結腸直腸がんの治療のための抗EphB2抗体2H9及び抗L−8 (Mao, et al (2004) Cancer Research 64(3):781-788)、(v)Eセレクチン抗体(Bhaskar et al (2003) Cancer Res. 63:6387-6394)、並びに(vi)他の抗CD30抗体(国際公開第03/043583号)にコンジュゲートした。モノメチルアウリスタチン(MMAE)はまた、マウスとヒトの間で近い相同性を有する1型TMチロシンキナーゼ受容体であって、結腸直腸がん細胞中で過剰発現されるEphB2Rに対する抗体である2H9にコンジュゲートしている(Mao et al (2004) Cancer Res. 781-788)。
【0015】
C末端にフェニルアラニンを有するアウリスタチンE(MMAE)の変異体であるモノメチルアウリスタチンMMAF(米国特許第5767237号;同第6124431号)は、MMAEより弱いが、モノクローナル抗体にコンジュゲートした場合にはより強力であることが報告されている(2004年3月28日に提示されたSenter et al, Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623)。MMAEのフェニルアラニン変異体であるアウリスタチンFフェニレンジアミン(AFP)は、フェニレンジアミンスペーサーを介して1F6のC末端を通じて抗CD70 mAbである1F6に結合された(2004年3月28日に提示されたLaw et al, Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 625)。
【0016】
また、抗CD22抗体−毒素コンジュゲートも有望な治療用化合物として研究されている。例えば、初期の報告には、有望な抗がん剤として抗CD22に対するリシンA鎖含有イムノトキシンが記述された(May, R.D. et al., Chemical Abstracts 106(21):168656x pages 35-36 (1987); Ghetie, M.A. et al., Cancer Research 48:2610-2617 (1988);及びAmlot, P.L. et al., Blood 82(9):2624-2633 (1993))。毒素が放射性同位体である場合、LL2,のヒト化(CDRが移植された)IgG1型であるエプラツズマブでは、放射性イムノコンジュゲートのための治療活性のエビデンスが示された(Juweid, M.E. et al., Clin. Cancer Res. 5 (Suppl 10):3292s-3303s (1999); Griffiths, G.L. et al., J. Nucl. Med. 44:77-84 (2003); Linden, O. et al., Clin. Cancer Res. 5(suppl 10):3287s-3291s (1999))。
【0017】
抗体−薬物コンジュゲート (ADC)抗CD22−vc−MMAEはGenentech社によって開発され、既に種々の異種移植モデルにおいて非常に有効であることが証明された(Polson AG, Williams M et al., Anti-CD22-MCC-DM1: an antibody-drug conjugate with a stable linker for the treatment of non-Hodgkin’s lymphoma. Leukemia. 2010 Sep;24(9):1566-73. Epub 2010 Jul 1)。天然産物ドラスチン(dolastin)10の合成類似体であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)は微小管阻害剤である。本細胞傷害性剤は、抗CD22抗体にコンジュゲートしている。該ADCは腫瘍細胞に結合後に内部移行され、MMAEを放出しながら分解され、それによって細胞死を誘導する。
【0018】
当該技術分野では、非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫及び他のB細胞増殖性疾患のようなB細胞に関連する種々のがんを治療するための更なる薬物に対する需要が存在する。この目的のために特に有用な薬物は、有意に毒性が低いが有益な治療的有効性を有する、B細胞を標的とした抗CD22抗体−薬物コンジュゲートを含む。これら及び他の制限並びに過去の問題点は本発明によって解決される。
【0019】
本出願中の如何なる文献の引用も、こうした文献が本出願の先行技術であることを認めるものではない。特許、特許出願及び刊行物を含む本明細書中で引用されるすべての文献は、その全文が参照により援用される。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、CD22抗体−薬物コンジュゲートと併用でのがんの治療のための、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下のフコース量を有するIgG1又はIgG3アイソタイプのアフコシル化抗CD20抗体を含む。
【0068】
本発明は、CD22抗体−薬物コンジュゲートと併用されるがんの治療用医薬の製造のための、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下のフコース量を有するIgG1又はIgG3アイソタイプのアフコシル化抗CD20抗体の使用を含む。
【0069】
一実施態様では、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の40%から60%である。
【0070】
用語「抗体」は、全抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びモノクローナル抗体、キメラ抗体又は組換え抗体等の遺伝子操作された抗体、並びに本発明に記載の特性を保持している限り、こうした抗体の断片を含むがこれらに限定されない様々な形態の抗体を包含する。本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製物を指す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施態様では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合させた、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0071】
用語「キメラ抗体」は、通常は組換えDNA技術によって調製される、一つの供給源又は種由来の可変領域、すなわち結合領域と、異なる供給源又は種由来の定常領域の少なくとも一部とを含む、モノクローナル抗体を指す。マウス可変領域及びヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。そのようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、ヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントとを含む、発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の形態は、クラス又はサブクラスが元々の抗体のものから改変され又は変化されたものである。そのような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも称される。キメラ抗体を作製するための方法は、今や当該技術分野でよく知られている一般的な組換えDNA及び遺伝子導入技術を含む。例えば、Morrison, S.L.,ら, Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5202238号及び同第5204244号を参照のこと。
【0072】
用語「ヒト化抗体」は、フレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのものと比較して異なった特異性を有する免疫グロブリンのCDRを含むように改変された抗体を指す。好ましい実施態様では、マウスCDRが、「ヒト化抗体」を調製するために、ヒト抗体のフレームワーク領域にグラフトされる。例えば、Riechmann, L.ら, Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M.S.,ら., Nature 314 (1985) 268-270を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ抗体及び二機能性抗体について上述した抗原認識配列を示すCDRに相当する。
【0073】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体は当該技術分野でよく知られている(van Dijk, M.A., and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. in Chem. Biol. 5 (2001) 368-374)。こうした技術に基づき、様々な標的に対するヒト抗体が産生され得る。ヒト抗体の例は、例えば、Kellermann, S.A.,ら., Curr Opin Biotechnol. 13 (2002) 593-597に記載されている。
【0074】
本明細書において使用される「組換えヒト抗体」という用語は、NSO若しくはCHO細胞等の宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、或いは宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体等の組換え手段により調製、発現、作製又は単離されるすべてのヒト抗体を含むことが意図される。そのような組換えヒト抗体は、再配列された形態でヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する。本発明による組換えヒト抗体はインビボ体細胞超変異に供されている。したがって、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH配列及びVL配列に由来し、且つそれらに関連しているが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在しないであろう配列である。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「結合」又は「特異的結合」は、インビトロアッセイ、好ましくは精製された野生型の抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore,GE−Healthcare Uppsala,Sweden)における、腫瘍抗原のエピトープに対する抗体の結合を指す。結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合に対する速度定数)、k
D(解離定数)、及びK
D(k
D/ka)によって定義される。結合又は特異的結合とは、10
−8M以下、好ましくは10
−8Mから10
−13M(一実施態様では、10
−9Mから10
−13M)の結合親和性(K
D)を意味する。したがって、本発明によるアフコシル化抗体は、10
−8mol/l以下、好ましくは10
−8Mから10
−13M(一実施態様では、10
−9Mから10
−13M)の結合親和性(K
D)で腫瘍抗原に特異的に結合している。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0077】
「定常ドメイン」は抗体の抗原への結合には直接関与しないが、エフェクター機能(ADCC、補体結合、及びCDC)に関与する。
【0078】
本明細書において使用される「可変領域」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変領域(VH))は、抗原への抗体の結合に直接関与する軽鎖及び重鎖の各対を意味する。可変ヒト軽鎖及び可変重鎖のドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは、三つの「超可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)によって接続された、配列が広く保存されている四つのフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、b−シートコンフォメーションをとり、また、CDRは、b−シート構造を接続するループを形成し得る。各鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりその三次元構造が保持され、もう一方の鎖からのCDRと共に抗原結合部位を形成する。
【0079】
本明細書で使用される場合の用語「超可変可変領域」又は「抗体の抗原結合部分」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。 超可変可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書で定義している超可変可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。したがって、抗体の軽鎖及び重鎖は、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、最も抗原結合に寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的な定義及び/又は「超可変可変ループ」に由来する残基に従って決定される。
【0080】
用語「アフコシル化抗体」は、減少したレベルのフコース残基を有するAsn297においてFc領域内の改変されたグリコシル化パターンを有するIgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)の抗体を指す。ヒトIgG1又はIgG3のグリコシル化は、2個までのGal残基で終結するコアフコシル化二分岐複合型オリゴ糖グリコシル化として、Asn297において生じる。これらの構造は、末端Gal残基の量に応じて、G0、G1(α1,6又はα1,3)、又はG2グリカン残基と命名される(Raju, T.S., BioProcess Int. 1 (2003) 44-53)。抗体Fc部分のCHO型グリコシル化は、例えばRoutier, F.H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207によって説明されている。非糖修飾のCHO宿主細胞中に組換え的に発現した抗体は、通常、少なくとも85%の量でAsn297においてフコシル化されている。本明細書で使用されるアフコシル化抗体なる用語は、そのグリコシル化パターン中にフコースを有していない抗体を含む。抗体中の典型的なグリコシル化残基位置はEU番号付けシステムによる297位のアスパラギン(「Asn297」)であることが一般に知られている。
【0081】
「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は、通常、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基を指す場合に使用される(例えば、出典明示により本明細書に援用されるKabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)で報告されたEUインデックス)。
【0082】
よって、本発明のアフコシル化抗体は、Asn297においてフコースの量がオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下である(これはAsn297においてFc領域のオリゴ糖の少なくとも40%以上がアフコシル化されていることを意味する)IgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)の抗体を意味する。一実施態様では、フコースの量は、Asn297においてFc領域のオリゴ糖の40%から60%である。別の実施態様では、フコースの量はAsn297においてFc領域のオリゴ糖の50%以下であり、更に別の実施態様では30%以下である。本発明によれば、「フコースの量」は、MALDI−TOF質量分析法によって測定され、平均値として算出される、Asn297に結合したすべてのオリゴ糖(糖類)(例えば、複合体構造物、ハイブリッド構造物及び高マンノース構造物)の合計に対するAsn297におけるオリゴ糖(糖類)鎖内の前記オリゴ糖(フコース)の量を意味する(フコースの量を決定する詳しい手順については、例えば国際公開第2008/077546号を参照のこと)。更に、一実施態様ではFc領域のオリゴ糖は二分されている。本発明によるアフコシル化抗体は、Fc領域におけるオリゴ糖を部分的にフコシル化するのに十分な量でGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも一の核酸を発現するように操作された糖修飾宿主細胞において発現させることができる。一実施態様では、GnTIII活性を有するポリペプチドは融合ポリペプチドである。或いは、米国特許第6946292号に従って宿主細胞のα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を低下させるか又は消失させて、糖修飾した宿主細胞を産生させることもできる。抗体フコシル化の量は、例えば発酵条件(例えば発酵時間)によって、又は異なったフコシル化量を有する少なくとも二の抗体を組み合わせることによって、予め決定することができる。このようなアフコシル化抗体及び各糖鎖工学法は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、Umana, P.,ら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180、国際公開第99/154342号、国際公開第2005/018572号、国際公開第2006/116260号、国際公開第2006/114700号、国際公開第2005/011735号、国際公開第2005/027966号、国際公開第97/028267号、米国特許出願公開第2006/0134709号、米国特許出願公開第2005/0054048号、米国特許出願公開第2005/0152894号、国際公開第2003/035835号、国際公開第2000/061739号に記載されている。こうした糖操作抗体は増加したADDCを有している。本発明によるアフコシル化抗体を生じせしめる他の糖鎖工学法は、例えばNiwa, R..ら., J. Immunol. Methods 306 (2005) 151-160; Shinkawa, T., et al., J. Biol. Chem, 278 (2003) 3466-3473;国際公開第03/055993号又は米国特許出願公開第2005/0249722号で説明されている。
【0083】
したがって、本発明の一態様は、CD22抗体−薬物コンジュゲートと併用でのがんの治療のための、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下のフコース量を有する、CD20に特異的に結合するIgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)のアフコシル化抗CD20抗体である。本発明の別の態様は、CD22抗体−薬物コンジュゲートと併用でのがんの治療用医薬の製造のための、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下のフコース量を有する、CD20に特異的に結合するIgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)のアフコシル化抗CD20抗体の使用である。一実施態様では、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%から20%である。一実施態様では、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%から40%である。一実施態様では、フコースの量は、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の0%である。
【0084】
CD20(Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5及びLF5としても知られており;配列はSwissProtデータベースエントリー番号P11836によって特徴付けられる)は、プレB及び成熟Bリンパ球上に位置する分子量がおよそ35kDの疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine, M.A. et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287; Tedder, T.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212; Stamenkovic, I., et al., J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Einfeld, D.A., et al., EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F., et al., J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても知られている、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1である。この遺伝子は膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。この新生タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似のイントロン/エクソンスプライス境界によって特徴付けられ、造血細胞及び非リンパ系組織間で独特の発現パターンを示す。この遺伝子はB細胞の発生及び形質細胞への分化において役割を果たしているBリンパ球表面分子をコードする。本ファミリーメンバーはファミリーメンバーのクラスター内の11q12に局在する。本遺伝子の選択的スプライシングは、同じタンパク質をコードする二の転写変異体を生じる。
【0085】
「CD20」及び「CD20抗原」という用語はここでは互換的に使用され、細胞により天然に発現されるか、又はCD20遺伝子を形質移入した細胞で発現されるヒトCD20の任意の変異体、アイソフォーム及び種ホモログを含む。本発明の抗体のCD20抗原への結合は、CD20の不活性化によるCD20発現細胞(例えば腫瘍細胞)の死滅を媒介する。CD20発現細胞の死滅は、細胞死/アポトーシス誘導、ADCC及びCDCといった機構の一又は複数により生じ得る。
【0086】
当該技術分野で認識されているように、CD20の同意語は、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5及びLF5を含む。
【0087】
本発明による用語「抗CD20抗体」は、CD20抗原に特異的に結合する抗体である。Cragg, M.S.,ら., Blood 103 (2004) 2738-2743;及びCragg, M.S.,ら, Blood 101 (2003) 1045-1052に従い、抗CD20抗体は、CD20抗原に対する結合特性及び生物活性に応じて二つの型(I型及びII型抗CD20抗体)に区別することができる。表1を参照のこと。
【0088】
II型抗CD20抗体の例は、例えば、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示のキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示)及びAT80 IgG1を含む。典型的には、IgG1アイソタイプのII型抗CD20抗体は、特徴的なCDC特性を示す。II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプのI型抗体と比較して低下したCDC(IgG1アイソタイプの場合)を有する。
【0089】
I型抗CD20抗体の例は、例えば、リツキシマブ、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示)、2F2 IgG1(国際公開第2004/035607号及び同第2005/103081号に開示)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示)を含む。
【0090】
本発明によるアフコシル化抗CD20抗体は、一実施態様ではII 型の抗CD20抗体であり、別の実施態様ではアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体である。
【0091】
本発明のアフコシル化抗CD20抗体は、フコースの低下がない抗CD20抗体と異なり、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)が増加している。
【0092】
「増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有するアフコシル化抗CD20抗体」は、該用語がここで定義されるように、当業者に周知の任意の適切な方法により決定される増加したADCCを有するアフコシル化抗CD20抗体を意味する。一つの受け入れられているインビトロADCCアッセイは、以下の通りである:
1)該アッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)該アッセイは、エフェクター細胞として、無作為に選択された健常なドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3)該アッセイは、次のプロトコールに従って実施される:
i)標準的な密度遠心分離手順を使用してPBMCを単離し、5x10
6細胞/mlでRPMI細胞培養培地に懸濁させる;
ii)標準的な組織培養法により標的細胞を増殖させ、生存率が90%を越える指数増殖期から回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの
51Crで標識し、細胞培養培地で二回洗浄し、10
5細胞/mlの密度で細胞培養培地に再懸濁させる;
iii)100マイクロリットルの上記の最終標的細胞懸濁物を96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を細胞培養培地で4000ng/mから0.04ng/mlに段階希釈し、50マイクロリットルの得られた抗体溶液を96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の濃度範囲全体をカバーする様々な抗体濃度で3重試験する。
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含有するプレート中の3つの更なるウェルに、非イオン性洗浄剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の2%(VN)水溶液50マイクロリットルを、抗体溶液(上記のiv項)の代わりに与える;
vi)自然放出(SP)コントロールのために、標識された標的細胞を含有するプレート中の3つの更なるウェルに、RPMI細胞培養培地50マイクロリットルを、抗体溶液(上記のiv項)の代わりに与える;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50xgで1分間遠心分離し、1時間4℃でインキュベートする;
viii)PBMC懸濁物(上記のi項)50マイクロリットルを、エフェクター対標的細胞の比率が25:1になるように各々のウェルに加え、プレートを5%CO2雰囲気下37℃で4時間インキュベーター中に配する;
ix)無細胞上清を各ウェルから回収し、ガンマカウンターを使用して、実験的に放出された放射活性(ER)を定量する;
x)特異的溶解の百分率を、各抗体濃度について、式(ER−MR)/(MR−SR)×100[式中、ERはその抗体濃度について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、MRはMRコントロール(上記v項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、SRはSRコントロール(上記vi項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)である]に従って計算する。
4)「増加したADCC」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の増加、及び/又は上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の半分を達成するのに必要な抗体濃度の低下の何れかとして定義される。ADCCの増加は、上記アッセイで測定され、当該技術分野において当業者に知られている同じ標準的な生産、精製、製剤化及び保存の方法を使用して同じ型の宿主細胞により産生された同じ抗体によって媒介されるものであるがGnTIIIを過剰発現するように操作された宿主細胞により産生されたものではないADCCと比較したものである。
【0093】
前記「増加したADCC」は前記抗体の糖操作により得ることができ、これは、Umana, P.ら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び米国特許第6602684号に記載されているように、そのオリゴ糖成分を操作することによりモノクローナル抗体の前記の天然の細胞媒介性エフェクター機能を亢進させることを意味する。
【0094】
用語「補体依存性細胞傷害性(CDC)」は、補体存在下での本発明の抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を意味する。CDCは、好ましくは、補体の存在下での本発明の抗CD20抗体を用いたCD20発現細胞の調製物の処理により測定される。CDCは、抗体が、100nMの濃度で4時間後に20%以上の腫瘍細胞の溶解(細胞死)を誘導する場合に見出される。該アッセイは好ましくは、
51Cr又はEu標識腫瘍細胞で、放出された
51Cr又はEuの測定により実施される。コントロールは、補体を含むが抗体を含まない腫瘍標的細胞のインキュベーションを含む。
【0095】
「リツキシマブ」抗体(参照抗体;I型抗CD20抗体の例)は、ヒトCD20抗原に対する遺伝子操作キメラヒトガンマ1マウス定常ドメイン含有モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトガンマ1定常ドメインを含み、1998年4月17日に発行され、IDEC Pharmaceuticals社に譲渡された米国特許第5736137号(Andersonら)での「C2B8」という名称で特定される。リツキシマブは、再発性又は難治性の低悪性度又は濾胞性のCD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療用に承認されている。インビトロ作用機序研究は、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害性(CDC)を呈することを示している(Reff, M.E., et. al., Blood 83 (1994) 435-445)。加えて、リツキシマブは、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を測定するアッセイにおいて有意な活性を示す。リツキシマブはアフコシル化されていない。
【0097】
用語「ヒト化B−Ly1抗体」は、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化及びその後のヒト化によって、マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1(マウス重鎖の可変領域(VH):配列番号28;マウス軽鎖の可変領域(VL):配列番号29)(Poppema, S. and Visser, L., Biotest Bulletin 3(1987) 131-139参照)から得られた、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されているようなヒト化B−Ly1抗体を指す(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号参照)。こうした「ヒト化B−Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号で詳細に開示されている。
【0098】
一実施態様では、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号30から配列番号46(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2からB−HH9及びB−HL8からB−HL17)の群から選択される重鎖の可変領域(VH)を有する。特定の一実施態様では、このような可変ドメインは、配列番号30、31、34、36、38、40及び42(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2、BHH−3、B−HH6、B−HH8、B−HL8、B−HL11及びB−HL13)からなる群より選択される。特定の一実施態様では、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号47(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)の軽鎖の可変領域(VL)を有する。特定の一実施態様では、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号34(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH6)の重鎖の可変領域(VH)と配列番号47(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)の軽鎖の可変領域(VL)とを有する。更に一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体はIgG1抗体である。本発明によれば、そのようなアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、Umana, P.ら., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/154342号に記載の手順に従って、Fc領域において糖操作(GE)されている。一実施態様では、アフコシル化糖操作ヒト化B−Ly1はB−HH6−B−KV1 GEである。一実施態様では、抗CD20抗体はオビヌツズマブ(推奨国際一般名、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453)である。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブは、GA101と同義である。これは、以前のすべてのバージョン(例:Vol. 25, No. 1, 2011, p.75-76)に取って代わるものであり、古くはアフツズマブ(推奨国際一般名、WHO Drug Information, Vol. 23, No. 2, 2009, p. 176;Vol. 22, No. 2, 2008, p. 124)として知られている。
【0099】
このような糖操作ヒト化B−Ly1抗体は、Fc領域において改変されたグリコシル化パターンを有しており、好ましくは、フコース残基のレベルが低下している。一実施態様では、フコースの量はAsn297においてオリゴ糖の総量の60%以下である(フコースの量は、一実施態様では40%から60%であり、別の実施態様では50%以下であり、更に別の実施態様では30%以下である)。別の実施態様では、Fc領域のオリゴ糖は好ましくは二分されている。こうした糖操作ヒト化B−Ly1抗体は増加したADCCを有している。
【0100】
ここで使用される「CD22」は、分化の成熟した段階でのみB細胞表面に発現される135kDaのB細胞に限定されるシアロ糖タンパク質である(Dorken, B. et al., J. Immunol. 136:4470-4479 (1986))。ヒトでのCD22の主な形態は、細胞外ドメインに7の免疫グロブリンスーパーファミリードメインを含有するCD22ベータである(Wilson, G.L. et al., J. Exp. Med. 173:137-146 (1991))。変異形態であるCD22アルファは免疫グロブリンスーパーファミリードメイン3及び4を欠いている(Stamenkovic, I. and Seed, B., Nature 345:74-77 (1990))。ヒトCD22へのリガンド結合は免疫グロブリンスーパーファミリードメイン1及び2(エピトープ1及び2とも称される))と関連していることが示されている(Engel, P. et al., J. Exp. Med. 181:1581-1586, 1995)。
【0101】
用語「抗CD22抗体」は、CD22を阻害する抗体を指す。
【0102】
一態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体が提示され、この場合、抗体は、
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1;
(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2;
(3)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3;
(4)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−L1;
(5)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び
(6)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3
から選択される少なくとも一、二、三、四、五又は六のHVRを含む。
【0103】
別の態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(b)以下から選択される少なくとも一、二、三、四又は五のHVRとを含む:
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1;
(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2;
(3)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3;
(4)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び
(6)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3。
【0104】
別の態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(b)以下から選択される少なくとも一、二、三、四又は五のHVRとを含む:
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1;
(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2;
(3)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3;
(4)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び
(6)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3。
【0105】
別の態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3 と、(b)以下から選択される少なくとも一、二、三、四又は五のHVRとを含む:
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1;
(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2;
(3)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−L1;
(4)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び
(5)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3。
【0106】
別の態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3 と、(b)以下から選択される少なくとも一、二、三、四又は五のHVRとを含む:
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1;
(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2;
(3)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−L1;
(4)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び
(5)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3。
【0107】
一実施態様において、抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−L1を含む。一実施態様において、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2とを更に含む。一実施態様において、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを更に含む。
【0108】
特定の実施態様において、上記の何れの抗体も、VH サブグループIII コンセンサスフレームワーク及びVLサブグループI コンセンサスフレームワークから選択される少なくとも一のフレームワークを更に含む。
【0109】
一態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22に結合する抗体が提示され、該抗体は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも 95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する重鎖可変ドメインを含む。一実施態様において、該抗体は、配列番号16の重鎖可変ドメインを含む。
【0110】
一態様では、該抗体は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを更に含む。一実施態様において、該抗体は、配列番号17の軽鎖可変ドメインを含む。
【0111】
一態様では、該抗体は、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも 95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを更に含む。一実施態様において、該抗体は、配列番号18の軽鎖可変ドメインを含む。
【0112】
一実施態様において、該抗体は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも 95%、少なくとも96%、少なくとも 97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。一実施態様において、該抗体は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも 95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも 95%、少なくとも96%、少なくとも 97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。一実施態様において、重鎖可変ドメインは配列番号16のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号17のアミノ酸配列を含む。一実施態様において、重鎖可変ドメインは配列番号16のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0113】
一態様では、本発明は、(a)
図2Aに示されているものから選択される一、二、又は三のVH HVR及び/又は(b)
図2Bに示されているものから選択される一、二、又は三のVL HVRを含む抗CD22抗体を提示する。一態様では、本発明は、
図2Aに示されているものから選択される重鎖可変ドメインと、
図2Bに示されているものから選択される軽鎖可変ドメインとを含む抗CD22抗体を提示する。
【0114】
特定の実施態様において、上記抗体の何れかをコードするポリヌクレオチドが提示される。一実施態様において、ポリヌクレオチドを含むベクターが提示される。一実施態様において、ベクターを含む宿主細胞が提示される。一実施態様において、宿主細胞は真核生物である。一実施態様において、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。一実施態様において、抗体をコードするポリヌクレオチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養することを含む、抗CD22抗体を作製する方法が提示される。
【0115】
一態様では、本発明による前記抗体−薬物コンジュゲート中の、細胞表面に発現したCD22に結合する抗体が提示される。一実施態様において、該抗体は、ドメイン1若しくはドメイン2、又はドメイン1及び2を含むヒト或いはマウスCD22の領域内のエピトープに結合する。一実施態様において、該細胞は哺乳動物細胞である。一実施態様において、該細胞はヒト細胞である。一実施態様において、該細胞はがん細胞である。一実施態様において、該細胞はB細胞である。一実施態様において、該がん細胞はB細胞である。
【0116】
特定の実施態様において、上記抗体の何れかはモノクローナル抗体である。一実施態様において、該抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、又はF(ab’)2断片から選択される抗体断片である。一実施態様において、該抗体はヒト化されている。一実施態様において、該抗体はヒトである。
【0117】
一態様では、本発明の抗体は、国際公開第2006/034488号(その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されているように、親抗体の一又は複数のアミノ酸が、遊離システインアミノ酸に置換されているシステイン操作抗体を含む。任意の形態の抗CD22抗体がそのように操作、すなわち変異され得る。例えば、親Fab抗体断片は、システイン操作Fabを形成するように操作され得、ここでは「チオFab」と称される。同様に、親モノクローナル抗体は、「チオMab」を形成するように操作され得る。チオFabにおいて単点突然変異は単一の操作システイン残基を生じる一方、チオMabにおいて単点突然変異はIgG抗体の二量体の性質のため、二つの操作システイン残基を生じることに留意されたい。本発明のシステイン操作抗CD22抗体は、優先的に細胞関連CD22ポリペプチドを結合するモノクローナル抗体、ヒト化又はキメラのモノクローナル抗体、並びに抗体の抗原結合断片、融合ポリペプチド及び類似体を含む。或いは、システイン操作抗体は、必ずしも親抗体を変える必要はなく、例えばファージディスプレイ抗体の設計や選別によって、又は軽鎖及び/又は重鎖フレームワーク配列と定常領域の新規の設計によって、抗体の配列設計及び/又は選別により生じる、抗体又はFab中の本明細書に開示されている位置にシステインを含んでいる抗体を含む。システイン操作抗体は、0.6から1.0、0.7から1.0、又は0.8から1.0の範囲のチオール反応値を有する一又は複数の遊離システインアミノ酸を含む。遊離システインアミノ酸は、親抗体内で操作されているシステイン残基であり、ジスルフィド架橋の一部でない。システイン操作抗体は、例えばマレイミド又はハロアセチルによる操作されたシステインの部位における細胞傷害性化合物及び/又は造影化合物(imaging compound)の接着に有用である。Cys残基のチオール官能基のマレイミド基に対する求核反応性は、タンパク質中の任意の他のアミノ酸官能基(例えば、リジン残基のアミノ基又はN末端アミノ基)と比較して約1000倍高い。ヨードアセチル及びマレイミド試薬におけるチオール特異的官能基はアミン基と反応し得るが、より高いpH(>9.0)及びより長い反応時間が必要とされる(Garman, 1997, Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London)。
【0118】
ある実施態様において、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のシステイン操作抗CD22抗体は、次の何れか一の位置において操作されたシステインを含み、該位置は、軽鎖ではKabatらに従った(Kabat et al (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照)、また、重鎖(Fc領域を含む)ではEU番号付け(上掲のKabatら(1991)を参照)に従った数であり、ここで、軽鎖定常領域は、108位(Kabat番号付け)で始まり、重鎖定常領域は118位(EU番号付け)で始まる。また、位置は、完全長の軽鎖又は重鎖のアミノ酸を順番に番号付けする際にその位置で表されてもよい。本発明の一実施態様によると、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、LC−V205Cにおいて操作されたシステインを含む(Kabat番号:Val 205;順次番号210はその位置でCysになるように操作される)。一実施態様によると、抗CD22抗体はHC−A118Cにおいて操作されたシステインを含む(EU番号:Ala 118;順次番号121はその位置でCysになるように操作される)。一実施態様によると、抗CD22抗体はFc−S400Cにおいて操作されたシステインを含む(EU番号:Ser 400;順次番号403はその位置でCysになるように操作される)。他の実施態様では、重鎖(Fc領域を含む)の操作されたシステインは、(EU番号付けに従う)次の位置の何れか一にある:41、88、116、118、120、171、282、375又は400。したがって、本発明の親抗CD22抗体についてこれらの位置におけるアミノ酸の変化は、A41C、A88C、S116C、A118C、T120C、A171C、V282C、S375C又はS400Cである。他の実施態様では、軽鎖の操作されたシステインは、(Kabat番号付けに従う)次の位置何れか一にある:15、43、110、144、168、205。したがって、本発明の親抗CD22抗体についてこれらの位置におけるアミノ酸の変化は、V15C、A43C、V110C、A144C、S168C又はV205Cである。
【0119】
本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のシステイン操作抗CD22抗体は、一又は複数の遊離システインアミノ酸を含み、システイン操作抗CD22抗体がCD22ポリペプチドに結合するものであり、親抗CD22抗体の一又は複数のアミノ酸残基をシステインに置換することを含む工程によって調製され、ここで該親抗体は、以下から選択される少なくとも一のHVR配列を含む:
(a)HVR−L1 配列 RSSQSIVHSNGNTFLE (配列番号9)又は配列 RSSQSIVHSVGNTFLE (配列番号10)(
図3B);
(b)HVR−L2 配列 KVSNRFS 配列番号12(
図3B);
(c)HVR−L3 配列 FQGSQFPYT (配列番号14)(
図3B);
(d)HVR−H1 配列 GYEFSRSWMN (配列番号2)(
図3A);
(e)HVR−H2 配列 GRIYPGDGDTNYSGKFKG (配列番号4)(
図3A);及び
(f)HVR−H3 配列 DGSSWDWYFDV (配列番号6)(
図3A)。
【0120】
ある態様では、本発明は、本明細書において開示した完全長アミノ酸配列を有するシステイン操作抗体、又は本明細書において開示したシグナルペプチドを欠くシステイン操作抗体アミノ酸配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のシステイン操作抗CD22抗体に関する。
【0121】
より更なる態様では、本発明は、(a)本明細書に開示した完全長アミノ酸配列を有するシステイン操作抗体、(b)本明細書に開示したシグナルペプチドを欠くシステイン操作抗体アミノ酸配列、(c)本明細書に開示した、シグナルペプチドを持つ又は持たない、膜貫通型システイン操作抗体タンパク質の細胞外ドメイン、(d)本明細書に開示した何れかの核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、又は(e)本明細書に開示した完全長システイン操作抗体アミノ酸配列の任意の他の具体的に定義した断片をコードするDNA分子の補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の単離されたシステイン操作抗CD22抗体に関する。
【0122】
特定の態様では、本発明は、N末端シグナル配列を持たない及び/又は開始メチオニンを持たない、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の単離されたシステイン操作抗CD22抗体を提示し、該抗体は本明細書中に記載のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされる。本明細書中ではまた、前記抗体を生産するための方法が記載されており、そうした方法は、システイン操作抗体の発現に適した条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養することと、細胞培養物からシステイン操作抗体を回収することとを含む。
【0123】
本発明の別の態様は、膜貫通ドメインを削除するか又は膜貫通ドメインを不活性化してある、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の単離されたシステイン操作抗CD22抗体を提示する。本明細書では、前記抗体を生産するための方法も記載されており、そうした方法は、システイン操作抗体の発現に適した条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養することと、細胞培養物からシステイン操作抗体を回収することとを含む。
【0124】
他の実施態様では、本発明は、異種(非CD22)ポリペプチドに融合させた本明細書に記載の何れのシステイン操作抗体の何れかを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の単離された抗CD22キメラシステイン操作抗体を提示する。このようなキメラ分子の例は、例えばエピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域等の異種ポリペプチドに融合させた、本明細書に記載のシステイン操作抗体何れかを含む。
【0125】
本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のシステイン操作抗CD22抗体は、それぞれの抗原エピトープへの抗CD22ポリペプチド抗体の結合を競合的に阻害するモノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体又は抗体であってもよい。本発明の抗体は場合によって、例えばアウリスタチン、抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素等を含む毒素のような増殖阻害性剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートさせてもよい。本発明の抗体は場合によってCHO細胞又は細菌細胞内で生成され、好ましくは結合する細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、又は死を誘導し得る。診断目的のために、本発明の抗体を固体担体等に付着させて検出可能に標識してもよい。
【0126】
本発明の他の実施態様では、本発明は、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の本明細書に記載の抗CD22抗体の何れかと、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22システイン操作抗体とをコードするDNAを含むベクターを提示する。また、任意のそのようなベクターを含む宿主細胞も提示される。例として、宿主細胞は、CHO細胞、大腸菌細胞又は酵母細胞であり得る。本明細書に記載の任意のポリペプチドを生産するための方法が更に提示され、該方法は、目的のポリペプチドの発現に適した条件下で宿主細胞を培養することと、細胞培養物から目的のポリペプチドを回収することとを含む。
【0127】
システイン操作抗体はがんの治療において有用であり得、細胞表面及び膜貫通型受容体、並びに腫瘍関連抗原(TAA)に特異的な抗体を含み得る。そのような抗体は、ネイキッド抗体(薬剤又は標識部分にコンジュゲートしていない)として、或いは抗体−薬物コンジュゲート(ADC)として用いられてもよい。本発明のシステイン操作抗体は、チオール反応性試薬と、部位特異的且つ効率的にカップリングし得る。チオール反応性試薬は、多機能リンカー試薬、キャプチャー標識試薬、蛍光体試薬又は薬物−リンカー中間体であり得る。システイン操作抗体は、検出可能な標識により標識され、固相担体に固定され、及び/又は、薬物部分とコンジュゲートされ得る。チオール反応性は、反応性システインアミノ酸によるアミノ酸の置換が、アミノ酸範囲:L−10からL−20、L−38からL−48、L−105からL−115、L−139からL−149、L−163からL−173から選択される軽鎖中の範囲内、並びにアミノ酸範囲:H−35からH−45、H−83からH−93、H−114からH−127及びH−170からH−184から選択される重鎖中の範囲内で、並びにH−268からH−291、H−319からH−344、H−370からH−380及びH−395からH−405から選択される範囲内のFc領域でなされ得る任意の抗体に一般化され得るが、この場合、アミノ酸位置の番号付けはKabat番号付けシステム(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD)の位置1で始まり、その後、国際公開第2006034488号に開示されたように、順次続く。また、チオール反応性は、抗体の特定のドメイン、例えば軽鎖定常ドメイン(CL)並びに重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3に一般化され得る。0.6以上のチオール反応性値をもたらすシステイン置換は、インタクトな抗体:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM(IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA及びIgA2)を含む)のそれぞれ重鎖定常ドメインα、δ、ε、γ及びμにおいてなされ得る。このような抗体及びそれらの使用は、国際公開第2006/034488号に開示されている。
【0128】
本発明のシステイン操作抗体は、その対応する野生型親抗体の抗原結合能を保持するのが好ましい。したがって、システイン操作抗体は、抗原に結合することができ、好ましくは抗原に特異的結合できる。そのような抗原は、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質及び他の細胞表面分子、膜貫通タンパク質、シグナル伝達タンパク質、細胞生存調節因子、細胞増殖調節因子、組織発達又は分化に関連する(例えば機能的に寄与することが周知であるか又は予測される)分子、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関わる分子、脈管形成に関わる分子、及び血管新生に関連する(例えば機能的に寄与することが周知であるか又は予測される)分子を含む。腫瘍関連抗原は、クラスター分化因子(すなわち、CD22を含むがこれに限定されないCDタンパク質)であり得る。本発明のシステイン操作抗CD22抗体は、その親抗CD22抗体の抗原結合能を保持する。ゆえに、本発明のシステイン操作抗CD22抗体は、限定されないがB細胞等の細胞の表面上に抗原が発現される場合を含め、ヒト抗CD22アイソフォームベータ及び/又はアルファを含むCD22抗原に、好ましくは特異的に、結合することができる。
【0129】
本明細書に記載の抗CD20抗体との独創的な併用がなされる抗体−薬物コンジュゲートの一部としての、典型的な抗CD22抗体に関する詳細な説明は、以下の通りである。
【0130】
抗CD22抗体の具体的な実施態様
一態様では、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)配列番号9、10、19、20、21、22、23の何れか一のアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、(f)配列番号14から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3とから選択される少なくとも一、二、三、四、五又は六のHVRを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0131】
一態様では、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3とから選択される少なくとも一、少なくとも二、又は三すべてのVH HVR配列を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体を提示する。一態様では、本発明は、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む、抗CD22抗体を提示する。一態様では、本発明は、配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、抗CD22抗体を提示する。
【0132】
一態様では、本発明は、配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3と、配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H1とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0133】
一態様では、本発明は、配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3と、配列番号4から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H2とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0134】
一態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2とを含む抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0135】
一態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0136】
一態様では、本発明は、(a)配列番号9又は10のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号14から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも一、少なくとも二、又は三すべてのVL HVR配列を含む本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、本発明は、配列番号9から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1を含む、抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、本発明は、配列番号10から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1を含む、抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、本発明は、配列番号19−23から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がVに置換されている(N28Vアミノ酸変化、これによって配列番号10が生成される)。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がAに置換されている(N28Aアミノ酸変化、これによって配列番号19が生成される)。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がQに置換されている(N28Qアミノ酸変化、これによって配列番号20が生成される)。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がSに置換されている(N28Sアミノ酸変化、これによって配列番号21が生成される)。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がDに置換されている(N28Dアミノ酸変化、これによって配列番号22が生成される)。一態様では、HVR−L1は配列番号9のアミノ酸配列を含んでおり、このときN28がI に置換されている(N28I アミノ酸変化、これによって配列番号23が生成される)。一態様では、本発明は、配列番号9、10、19、20、21、22、23の何れか一のアミノ酸配列を含むHVR−L1を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。一態様では、HVR−L1は、配列番号9、10、19、20、21、22又は23の何れか一であり、N30位のアミノ酸(30位のアスパラギン)がAに置換されている(N30Aアミノ酸変化)。一態様では、HVR−L1は、配列番号9、10、19、20、21、22又は23の何れか一であり、N30位のアミノ酸(30位のアスパラギン)がQに置換されている(N30Qアミノ酸変化)。
【0137】
一態様では、本発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様では、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22抗体は、(a)配列番号2を含むHVR−H1と、配列番号4を含むHVR−H2とを更に含む。
【0138】
一態様では、本発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様では、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22抗体は、(a)配列番号2を含むHVR−H1と、配列番号4を含むHVR−H2とを更に含む。
【0139】
一態様では、本発明は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(b)配列番号9、10、19、20、21、22及び23から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様では、CD22抗体は、(a)配列番号2を含むHVR−H1と、配列番号4を含むHVR−H2とを更に含む。幾つかの実施態様では、配列番号9、10、19、20、21、22又は23のアミノ酸配列はN30A又はN30Qアミノ酸変化を含む。幾つかの実施態様では、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2を更に含む。幾つかの実施態様では、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中のCD22抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3 を更に含む。
【0140】
一態様では、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR−H1と、(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR−H2と、(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR−H3と、(d)配列番号9、10、19、20、21、22、23から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−L1と、(e)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L2と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3とを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様では、本発明は、HVR−L1として選択される配列番号9、10、19、20、21、22又は23のアミノ酸配列がN30A又はN30Qアミノ酸変化によって改変されることを更に提示する。
【0141】
一態様では、本発明は、配列番号16を含む重鎖可変ドメインを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する(
図2A、h10F4v1参照)。一態様では、本発明は、配列番号17を含む軽鎖可変ドメインを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体を提示する(
図2B、h10F4v1参照)。一態様では、本発明は、配列番号18を含む軽鎖可変ドメインを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体を提示する(
図2B、h10F4v3参照)。
【0142】
一態様では、本発明は、配列番号26を含む重鎖を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する(
図2A、m10F4参照)。一態様では、本発明は、配列番号27を含む軽鎖を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体を提示する(
図2B、m10F4参照)。
【0143】
一態様では、本発明は、ATCCに寄託され、寄託番号PTA−7621を有するハイブリドーマにより産生される抗体10F4.4.1のHVR配列1、2、3、4、5又は6を含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0144】
一態様では、本発明は、ATCCに寄託され、寄託番号PTA−7620を有するハイブリドーマにより産生される抗体5E8.1.8のHVR配列1、2、3、4、5又は6を含む本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0145】
本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、CD22を結合する能力を保持する限り、任意の適切なフレームワーク可変ドメイン配列を含んでもよい。例えば、幾つかの実施態様において、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、ヒトのサブグループIII重鎖フレームワークコンセンサス配列を含む。こうした抗体の一実施態様では、重鎖フレームワークコンセンサス配列は、71、73及び/又は78位での置換を含む。こうした抗体の一実施態様では、71位はAであり、73位はTであり、及び/又は78位はAである。一実施態様では、こうした抗体は、huMAb4D5−8の重鎖可変ドメインフレームワーク配列、例えば配列番号1、3、5、7(それぞれFR−H1、FR−H2、FR−H3、FR−H4)を含む。huMAb4D5−8は、ハーセプチン(登録商標)抗HER2抗体(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA,USA)として商業的に知られており、米国特許第6407213号及び同第5821337号、並びにLee ら.,J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93の中でも言及されている。そのような一実施態様において、こうした抗体はヒトのκI軽鎖フレームワークコンセンサス配列を更に含む。そのような一実施態様において、こうした抗体は、huMAb4D5−8の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列、例えば配列番号8、1、13、15(それぞれFR−L1、FR−L2、FR−L3、FR−L4)を含む。
【0146】
一実施態様では、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、フレームワーク配列と超可変領域とを含む重鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列はFR−H1−FR−H4配列、それぞれ配列番号1、3、5及び7を含み;HVR H1は配列番号2のアミノ酸配列を含み;HVR−H2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HVR−H3は配列番号6から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施態様では、抗CD22抗体はフレームワーク配列と超可変領域とを含む軽鎖可変ドメインを含み、ここで、フレームワーク配列はそれぞれ配列番号8、11、13及び15のFR−L1−FR−L4配列を含み;HVR−L1は、配列番号9、10、19、20、21、22及び23から選択されるアミノ酸配列を含み、この場合配列番号9−10又は19−23の何れか一はN30A又はN30Qのアミノ酸変化を含んでもよく;HVR−L2は配列番号12のアミノ酸配列を含み;またHVR−L3は配列番号14から選択されるアミノ酸配列を含む。こうした抗体の一実施態様では、重鎖可変ドメインは配列番号16を含み;軽鎖可変ドメインは配列番号17又は18を含む。
【0147】
幾つかの実施態様において、本発明は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比較して置換、挿入又は欠失を含有するが、そのアミノ酸配列を含む抗体はCD22に結合する能力を保持する。ある実施態様において、合計1から10のアミノ酸が、配列番号16において置換、挿入又は欠失されている。幾つかの実施態様において、置換、挿入又は欠失はHVR外の領域(すなわちFR内)で起こる。幾つかの実施態様において、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、配列番号16から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0148】
幾つかの実施態様では、本発明は、以下に示す重鎖可変ドメインを含む本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0149】
1 Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser
Gly Tyr Glu Phe Ser Arg Ser Trp Met Asn Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
Gly Arg Ile Tyr Pro Gly Asp Gly Asp Thr Asn Tyr Ser Gly Lys Phe Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg
Asp Gly Ser Ser Trp Asp Trp Tyr Phe Asp Val Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser 113 (配列番号16)(HVR残基を下線で示す)。
【0150】
幾つかの実施態様において、重鎖HVR配列及びFR配列は以下を含む:
HVR−H1(Gly Tyr Glu Phe Ser Arg Ser Trp Met Asn、配列番号2)
HVR−H2(Gly Arg Ile Tyr Pro Gly Asp Gly Asp Thr Asn Tyr Ser Gly Lys Phe Lys Gly、配列番号4)
HVR−H3(Asp Gly Ser Ser Trp Asp Trp Tyr Phe Asp Val、配列番号6)
FR−H1(Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser、配列番号1)
FR−H2(Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val、配列番号3)
FR−H3(Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys Ala Arg、配列番号5)
FR−H4(Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser、配列番号7)
【0151】
幾つかの実施態様では、本発明は、以下に示す軽鎖可変ドメインを含む本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。
【0152】
1 Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys
Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Asn Gly Asn Thr Phe Leu Glu Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr
Lys Val Ser Asn Arg Phe Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys
Phe Gln Gly Ser Gln Phe Pro Tyr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys 108 (配列番号17)(HVR残基を下線で示し、位置N28を太字で示す)
又は
1 Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys
Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Val Gly Asn Thr Phe Leu Glu Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr
Lys Val Ser Asn Arg Phe Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys
Phe Gln Gly Ser Gln Phe Pro Tyr Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys 108 (配列番号18)(HVR残基を下線で示し、N28Vを太字で示す)。
【0153】
幾つかの実施態様において、軽鎖HVR配列は以下を含む:
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Asn Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号9)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Val Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号10)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Ala Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号19)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Gln Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号20)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Ser Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号21)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Asp Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号22)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Ile Gly Asn Thr Phe Leu Glu、配列番号23)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Ile Gly Ala Thr Phe Leu Glu、配列番号24)
HVR−L1(Arg Ser Ser Gln Ser Ile Val His Ser Ile Gly Gln Thr Phe Leu Glu、配列番号25)
HVR−L2(Lys Val Ser Asn Arg Phe Ser、配列番号12)
HVR−L3(Phe Gln Gly Ser Gln Phe Pro Tyr Thr、配列番号14)。
【0154】
幾つかの実施態様において、軽鎖FR配列は以下を含む:
FR−L1(Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys、配列番号8);
FR−L2(Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile Tyr、配列番号11);
FR−L3(Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys、配列番号13)
FR−L4(Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys、配列番号15)。
【0155】
一実施態様において、本発明は、配列番号17又は18から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比較して置換、追加又は欠失を含有するが、そのアミノ酸配列を含む抗体はCD22に結合する能力を保持する。幾つかの実施態様では、合計1から10のアミノ酸が、配列番号17又は18から選択される配列において置換、挿入又は欠失されている。幾つかの実施態様において、置換、挿入又は欠失はHVR外の領域(すなわちFR内)で起こる。幾つかの実施態様において、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、配列番号17又は18から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0156】
一態様において、本発明は、(a)配列番号16から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、(b)配列番号17又は18から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体と、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用を提示する。幾つかの実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比較して置換、追加又は欠失を含有するが、そのアミノ酸配列を含む抗体はCD22に結合する能力を保持する。幾つかの施態様では、合計1から10のアミノ酸が、参照配列おいて置換、挿入又は欠失されている。幾つかの実施態様において、置換、挿入又は欠失はHVR外の領域(すなわちFR内)で起こる。幾つかの実施態様において、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号18から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0157】
一態様では、本発明の前記抗体−薬物コンジュゲート中の抗CD22抗体は、ATCCに寄託され、寄託番号PTA−7620を有するハイブリドーマにより産生される5E8.1.8抗体の1、2、3、4、5又は6つの超可変領域を含む。
【0158】
抗体断片
本発明は抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化等の伝統的手段によるか、又は組換え技術によって生成され得る。ある状況下では、全抗体よりも抗体断片を用いることに利点がある。より小さいサイズの断片であると、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセス改善につながり得る。特定の抗体断片の総説については、Hudsonら (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照のこと。
【0159】
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されてきている。伝統的には、こうした断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);及びBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと)。しかし、こうした断片は、現在では組換え宿主細胞により直接生産され得る。Fab、Fv及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌中で発現され、そこから分泌されるため、こうした断片の大量生産が容易となる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離され得る。或いは、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的に結合してF(ab’)
2断片を形成し得る(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。他のアプローチ法では、F(ab’)
2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が延長されたFab及びF(ab’)
2断片は米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。特定の実施態様では、抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;同第5587458号を参照のこと。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種である;したがって、それらは、インビボでの使用中に低減した非特異的結合に適するであろう。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端又はカルボキシル末端の何れかにおいてエフェクタータンパク質の融合を生じさせるように構築され得る。上掲のAntibody Engineering, ed. Borrebaeckを参照のこと。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5641870号に記載されているように「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
【0160】
ヒト化抗体
本発明はヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、当該技術分野において知られている。例えば、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入され得る。こうした非ヒトアミノ酸残基は、通常、「移入」残基と呼ばれ、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の対応する配列の超可変領域配列を置換することにより、Winterと共同研究者の方法(Jones et al. (1986) Nature 321:522-525; Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327; Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534-1536)に従って実施され得る。よって、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種由来の対応配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾つかの超可変領域残基とおそらくは幾つかのFR残基が、齧歯類抗体の類似部位からの残基で置換されているヒト抗体である。
【0161】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に使用するヒトの可変ドメイン(軽重両方)の選択が重要となり得る。いわゆる「ベストフィット」法では、齧歯類抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次いで、齧歯類のものと最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域として受け入れる(Sims et al. (1993) J. Immunol. 151:2296; Chothia et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用してもよい(Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285; Presta et al. (1993) J. Immunol., 151:2623)。
【0162】
更に、抗体が、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持したままヒト化されることが一般的に望ましい。この目標を達成するべく、一つの方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の解析のプロセスによってヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を説明及び表示するコンピュータープログラムが、利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原へ結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント配列及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、直接的且つ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0163】
ヒト抗体
本発明のヒト抗CD22抗体は、上記のように、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を、既知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることによって構築され得る。或いは、本発明のヒトモノクローナル抗CD22抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の生産のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoernerら, J. Immunol., 147: 86 (1991)によって説明されている。
【0164】
現在では、免疫化によって、内因性免疫グロブリンの産生なしに、ヒト抗体の完全なレパートリーを生成する能力があるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することが可能である。例えば、キメラマウス及び生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイのそうした生殖細胞系変異体マウスへの転移は、抗原チャレンジによるヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 90: 2551 (1993); Jakobovitsら, Nature, 362: 255 (1993); Bruggermannら, Year in Immunol., 7: 33 (1993)参照。
【0165】
また、遺伝子シャフリングは、ヒト抗体が開始非ヒト抗体と類似した親和性及び特異性を有している場合、非ヒト、例えば齧歯類の抗体からヒト抗体を誘導するために使用され得る。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法により、本明細書に記載のファージディスプレイ技術により得られた非ヒト抗体断片の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の何れかをヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えることにより、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラの集団を作成する。抗原を用いた選択により、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFV又はFabの単離がもたらされ、その場合、ヒト鎖は一次ファージディスプレイクローン内の対応する非ヒト鎖の除去に際し破壊された抗原結合部位を回復し、すなわち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を支配(インプリント)する。残存する非ヒト鎖を置き換えるためにこの方法を反復すると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT 国際公開第93/06213号参照)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この手法は非ヒト起源のFR又はCDRを有さない完全にヒト型の抗体を提供する。
【0166】
二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二の異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様において、二重特異性抗体はヒト抗体又はヒト化抗体である。特定の実施態様において、結合特異性の一つはCD22に対してであり、他の一方は、任意の他の抗原に対してである。特定の実施態様において、二重特異性抗体は、CD22の二の異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体はまた、CD22を発現する細胞に対して細胞傷害性剤を局在化させるために用いてもよい。こうした抗体は、CD22結合アーム及び細胞傷害性剤、例えばサポリン、抗インターフェロン−α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサート又は放射性同位体ハプテンに結合するアームを保有している。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特性抗体)として調製され得る。
【0167】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で知られている。伝統的には、二重特異性抗体の組換え製造は、二つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、その場合、二つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello, Nature, 305: 537 (1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖はランダムに取り合わされるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の可能性のある混合物を生成し、そのうちの一種のみが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は面倒であり、生成物収率は低い。同様の方法が、1993年5月13日公開の国際公開第93/08829号、及びTrauneckerら, EMBO J., 10: 3655 (1991)に開示されている。
【0168】
異なるアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原−抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は例えば、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。特定の実施態様において、軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうち少なくとも一に存在する。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNA、及び、必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に同時形質移入する。これにより、構築に使用する三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が最適な収率をもたらす場合の実施態様において、三のポリペプチド断片の相互の割合を調節する際に大きな柔軟性がもたらされる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖が等しい比率で発現することで収率が高くなるとき、又はその比率が特に重要性を持たないときは、二つ又は三つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0169】
このアプローチ法の一実施態様において、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を一方のアームに、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)を他方のアームに有する、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖から構成される。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体生成の更なる詳細については、例えば、Sureshら, Methods in Enzymology 121:210 (1986)を参照のこと。
【0170】
別のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。界面は、抗体定常ドメインのうちC
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一の抗体分子の界面由来の一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同一又は類似する大きさの代替的な「空洞」が、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより、第二の抗体分子の界面に形成される。これは、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機構を提示する。
【0171】
二重特異性抗体は、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方はアビジンに、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に免疫系細胞を標的するため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染症の治療のため(国際公開第91/00360号、同第92/00373号及びEP03089)に提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の好都合な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤は当該技術分野でよく知られており、多くの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0172】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術も、文献に記載されている。例えば、化学結合を用いて二重特異性抗体は調製され得る。Brennanら, Science 229: 81 (1985)は、インタクトな抗体をタンパク質分解性に切断してF(ab’)
2断片を生成する手順を記載している。こうした断片をジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して隣接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィドの形成を防止する。次いで、生成されたFab’断片はチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうち一方をメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再変換し、他方のFab’−TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用の薬剤として使用され得る。
【0173】
最近の進歩により、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができるFab’−SH断片を大腸菌から直接回収することが容易になった。Shalabyら, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)
2分子の製造を記述している。各Fab’断片は大腸菌から別々に分泌され、インビトロで定方向化学的カップリングを受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合することが可能で、また、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性をトリガーすることも可能であった。
【0174】
組換え細胞培養物から直接、二重特異性抗体断片を作製し単離するための様々な技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを用いて製造されている。Kostelnyら, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により、二つの異なる抗体のFab’部分と連結された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて単量体を形成し、次いで、再酸化されて抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の製造にも利用され得る。Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機構を提示した。該断片は、同一鎖上の二つのドメイン間で対合するには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に結合されている重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、一つの断片のVH及びVLドメインは別の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対合させられ、それにより二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造するための他の方策もまた報告されている。Gruberら, J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0175】
二価より多い抗体も企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuttら, J. Immunol. 147: 60 (1991)。
【0176】
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体より速く内部移行(及び/又は異化)され得る。本発明の抗体は、三つ又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であってもよく(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に製造され得る。多価抗体は、二量体化ドメイン及び三つ又はそれ以上の抗原結合部位を含み得る。特定の実施態様では、二量体化ドメインは、Fc領域又はヒンジ領域を含む(又は、それらからなる)。この場合、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端に三つ又はそれ以上の抗原結合部位とを含むであろう。特定の実施態様では、多価抗体は三つからおよそ八つの抗原結合部位を含む(又は、それらからなる)。このような一実施態様では、多価抗体は四つの抗原結合部位を含む(又はそれらからなる)。多価抗体は、少なくとも一つのポリペプチド鎖(例えば二つのポリペプチド鎖)を含み、ここでポリペプチド鎖は二つ又はそれ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖はVD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fcを含んでもよく、ここで、VD1は第一の可変ドメインであり、VD2は第二の可変ドメインであり、FcはFc領域の一つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖は、VH−CH1−柔軟なリンカー−VH−CH1−Fc領域鎖、又はVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含んでもよい。本明細書における多価抗体は、少なくとも二(例えば四)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを更に含んでもよい。本明細書における多価抗体は、例えば、約二から約八の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。ここで企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、場合により、CLドメインを更に含む。
【0177】
単一ドメイン抗体
幾つかの実施態様では、本発明の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインのすべて若しくは一部を含む単一ポリペプチド鎖である。特定の実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6248516号を参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて又は一部からなる。
【0178】
抗体変異体
幾つかの実施態様において、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製され得る。このような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は残基への挿入、及び/又は残基の置換を含む。欠失、挿入、及び置換の何れの組み合わせも最終コンストラクトに到達するように行なわれてよいが、ただし最終コンストラクトは所望の特性を保有しなければならない。アミノ酸変化は、配列ができるときに対象の抗体のアミノ酸配列に導入され得る。
【0179】
突然変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基又は標的残基の群が同定され(例えば、arg、asp、his、lys及びgluのような荷電残基)、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次いで、置換に対して機能的感受性を示すこれらのアミノ酸位置が、置換部位において又はそれに対して更なる又は他の変異体を導入することにより精査される。このように、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決まっている必要はない。例えば、所与の部位における突然変異の成果を分析するために、標的コドン又は領域でalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発が行われ、発現された免疫グロブリンが、所望の活性についてスクリーニングされる。
【0180】
アミノ酸配列挿入は、長さが一残基から、百以上の残基を有するポリペプチドに及ぶアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を延長させる酵素(例えばADEPTのための)又はポリペプチドに対する抗体のN末端又はC末端への融合物を含む。
【0181】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を高める又は減じるために改変される。ポリペプチドのグリコシル化は典型的にはN結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への、炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合に対する認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列の何れかの存在が、潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの一つが結合することを指すが、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンもまた用いられ得る。
【0182】
抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、一又は複数の上記トリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)が作成または削除されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成される。この改変は、元の抗体の配列(O結合グリコシル化部位のもの)に対して、一又は複数のセリン残基又はスレオニン残基を付加、削除又は置換することによってもなされ得る。
【0183】
抗体がFc領域を含む場合には、それに結合する糖を変えることができる。例えば、抗体のFc領域に結合したフコースを欠く成熟した糖鎖構造を有する抗体は、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)に記述されている。米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照のこと。抗体のFc領域に結合した糖にバイセクティング(bisecting)N‐アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体は、Jean−Mairetら、国際公開第2003/011878号、及びUmanaら、米国特許第6602684号に参照されている。抗体のFc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、Patelら、国際公開第1997/30087号に報告されている。改変された糖がFc領域に結合している抗体については、国際公開第1998/58964号(Raju, S.)及び同第1999/22764号(Raju, S.)も参照のこと。修飾されたグリコシル化を有する抗原結合分子については米国特許第2005/0123546号(Umanaら)を参照されたい。
【0184】
特定の実施態様では、グリコシル化変異体はFc領域を含み、この場合、そのFc領域と結合する糖鎖構造はフコースを欠く。このような変異体はADCC機能を向上させている。場合により、Fc領域は、ADCCを更に向上させる、Fc領域中の一又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位及び/又は334位(残基のEu番号付け)を更に含む。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体に関連する出版物の例は、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、国際公開第2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、米国特許出願公開第2002/0164328号、米国特許出願公開第2004/0093621号、米国特許出願公開第2004/0132140号、米国特許出願公開第2004/0110704号、米国特許出願公開第2004/0110282号、米国特許出願公開第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、国際公開第2003/084570号、国際公開第2005/035586号、国際公開第2005/035778号、国際公開第2005/053742号、Okazakiら J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnukiら Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)を含む。脱フコシル化シル化抗体を産生する細胞株の例は、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号、Presta, L;及び国際公開第2004/056312号(Adamsら、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004))を含む。
【0185】
一実施態様では、抗体は、その血清半減期を向上させるために改変される。例えば、米国特許第5739277号に記載のように、抗体の血清半減期を延長させるために、抗体(特に抗体断片)の中へサルベージ受容体結合エピトープを組み入れることができる。本明細書において使用される場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボでの血清半減期の延長に関与している、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す(米国特許出願公開第2003/0190311号、米国特許第6821505号;米国特許第6165745号;米国特許第5624821号;米国特許第5648260号;米国特許第6165745号;米国特許第5834597号)。
【0186】
もう一つの型の変異体は、アミノ酸置換変異体である。こうした置換変異体は、異なる残基により置換された抗体分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。関心が持たれる置換突然変異誘発の部位には超可変領域が含まれるが、FRの変更も企図される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。そのような置換が生物活性に所望の変化をもたらす場合は、次いで、表1で「例示的置換」と命名した、又はアミノ酸クラスを参照して以下に更に記載した、より実質的な変更を導入し、生成物をスクリーニングしてもよい。
【0188】
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)例えばシート又は螺旋状の立体配座としての、置換領域におけるポリペプチド骨格の構造の維持、(b)標的部位での分子の電荷又は疎水性の維持、又は(c)側鎖の嵩の維持に及ぼす効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、側鎖の特性の類似性に従ってグループ化され得る(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0189】
或いは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下の群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0190】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換する必要があろう。このような置換された残基も、保存的置換部位又は残存(非保存的)部位に導入され得る。
【0191】
置換変異体の一種は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、その結果得られる、更なる開発のために選択される変異体は、その変異体を生成する親抗体と比較して生物学的特性が改変(例えば、改善)されているであろう。そのような置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を含む。簡潔に言えば、幾つかの超可変領域部位(例えば、6−7部位)を突然変異させて、各部位におけるすべての可能なアミノ酸置換を生じさせる。このように生成された抗体は、各粒子内にパッケージされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)への融合物として繊維状ファージ粒子からディスプレイされる。次いで、ファージディスプレイされた変異体は、その生物活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。改変の候補となる超可変領域部位を同定するために、スキャンニング突然変異誘発(例えば、アラニンスキャンニング)を実施され得、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基が同定され得る。代替的又は追加的に、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と抗原との接触点を同定することも有益であり得る。そのような接触残基及び隣接残基は、当該技術分野で知られている手法による置換のための候補である。そのような変異体が生成されれば、本明細書に記載のものを含む当該技術分野で知られている手法を用いて変異体パネルをスクリーニングし、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択することができる。
【0192】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で知られた種々の方法によって調製される。こうした方法は、限定されないが、天然の供給源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)、又は以前に調製された変異体若しくは非変異体バージョンの抗体のオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0193】
本発明の抗体のFc領域内に一又は複数のアミノ酸修飾を導入し、それによりFc領域変異体を生成することが望ましい。Fc領域変異体は、ヒンジシステイン修飾を含む、一又は複数のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0194】
本記述及び当該技術分野での教示に従い、幾つかの実施態様では、本発明の抗体が野生型の対応抗体と比較して例えばFc領域内に一又は複数の改変を含み得ることが考慮される。それにもかかわらず、こうした抗体は、その野生型対応物と比較して治療的有用性に求められるものと実質的に同じ特性を維持している。例えば、国際公開第99/51642号に記載のように、C1q結合性及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)の改変(すなわち、向上又は低下)をもたらす、Fc領域における特定の改変がなされ得ることが考えられる。また、Fc領域変異体の他の例に関するDuncan & Winter Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号も参照されたし。国際公開第00/42072号(Presta)及び国際公開第2004/056312号(Lowman)は、Fc領域への結合性が向上したか又は低下した抗体変異体を記述している。これらの特許文献の内容は出典明示により本明細書に援用される。また、Shieldsら J. Biol. Chem. 9 (2) -6604 (2001)も参照のこと。半減期が延長され、胎児への母性IgGの移送を担う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合性が向上している抗体は、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hintonら)に記述されている。こうした抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上させる一又は複数の置換を有するFc領域を含む。Fc領域アミノ酸配列が改変されてC1q結合能力が向上したか又は低下したポリペプチド変異体は、米国特許第619455号、国際公開第99/51642号に記述されている。これらの特許文献の内容は出典明示により本明細書に援用される。また、Idusogieら J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0195】
一実施態様では、本発明は、ヘテロ二量体化を促進する改変をFc領域を含むFcポリペプチドの界面において含む抗体を提示する。こうした改変は、第一のFcポリペプチドへの突起の導入及び第二のFcポリペプチドへの空洞の導入を含み、突起は第一及び第二のFcポリペプチドの複合体形成性を促進するために空洞内に配置可能である。例えば、米国特許第5731168号に記載されているように、このような改変を有する抗体の生成方法は当該技術分野で知られている。
【0196】
抗体誘導体
本発明の抗体は当該分野において知られており容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に改変され得る。好ましくは、抗体の誘導体化に適した部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーの何れか)及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール並びにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドはその水中での安定性のために製造上の利点を有し得る。ポリマーは任意の分子量のものであってよく、分枝鎖又は非分枝鎖であってよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが結合する場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は型は、限定されるものではないが、向上されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が定まった条件下で治療に使用されるかどうかを含む考慮事項に基づいて決定され得る。
【0197】
別の実施態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい非タンパク質部分と抗体とのコンジュゲートが提示される。一実施態様では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 102。 -11605 (2005)。放射線は、通常の細胞に害を与えないが抗体−非タンパク質部分の近位細胞が死滅される温度にまでは非タンパク質部分を加熱する波長を含むがこれに限定されない任意の波長のものであってよい。
【0198】
本発明の用語「CD22抗体−薬物コンジュゲート」は、式Ab−(L−D)p[式中、
(a)Abは本明細書に開示のCD22抗体であり;
(b)Lはリンカーであり;
(c)Dは薬物部分である]
を有する薬剤を指す。
【0199】
本発明による方法の一実施態様では、CD22抗体−薬物コンジュゲートは、抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEである。
【0200】
抗体−薬物コンジュゲート
別の態様では、本発明は、細胞傷害性剤、例えば化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物由来の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)又は放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗体を含む、イムノコンジュゲート又は抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を提示する。別の態様では、本発明はイムノコンジュゲートを用いる方法を更に提示する。一態様において、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための、細胞傷害性剤又は検出可能な薬剤に共有結合的に結合した上記抗CD22抗体の何れも含む。
【0201】
細胞毒性又は細胞増殖抑制剤、すなわちがん治療において腫瘍細胞を殺傷又は阻害する薬剤(Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4975278号)の局所送達のための抗体−薬剤コンジュゲートの使用は、腫瘍への薬物部分の標的化送達及びそこにおける細胞内蓄積を可能にし、ここで、これらの非コンジュゲート薬剤の全身投与は排除しようとする腫瘍細胞のみならず正常細胞にも許容できないレベルの毒性をもたらし得る(Baldwin et al., (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」 Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera et al. (ed.s), pp. 475-506)。このため最小限の毒性で最大の効力が求められる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が、これらの方策に有用であることが報告されている(Rowland et al., (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。これらの方法において使用されている薬物はダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンデシンである(上掲のRowland et al., (1986))。抗体−毒素コンジュゲートに使用される毒素は、ジフテリア毒素のような細菌性毒素、リシンのような植物性毒素、ゲルダナマイシン(Mandler et al (2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP1391213;Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode et al (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)等の小分子毒素を含む。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構により、その細胞傷害性及び細胞分裂停止性の効果に影響を与え得る。一部の細胞傷害性剤は大型の抗体又はタンパク質受容体リガンドにコンジュゲートされると不活性になるか又は活性が低下する傾向がある。
【0202】
ゼヴァリン(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン、Biogen/Idec)は、正常及び悪性のBリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対するマウスIgG1カッパモノクローナル抗体と、チオウレアリンカーキレート剤により結合した
111In又は
90Y放射性同位体とからなる抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman et al (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77; Wiseman et al (2002) Blood 99(12):4336-42; Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63; Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼヴァリンはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して活性を有するが、投与により重度及び長期間の血球減少症が大部分の患者において起こる。カリケアマイシンに結合したhu CD33抗体からなる抗体−薬物コンジュゲートであるマイロターグ
TM(ゲムツズマブオゾガミシン、Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤としての2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。メイタンシノイド薬物部分DM1にジスルフィドリンカーSPPを介して結合したhuC242抗体からなる抗体−薬物コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Immunogen,Inc)は、結腸がん、膵臓がん、胃がん等、CanAgを発現するがんの治療のための第II相治験段階に入っている。メイタンシノイド薬物部分DM1に結合した抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体−薬物コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm.,BZL Biologics,Immunogen Inc.)は前立腺腫瘍の候補治療薬として開発中である。ドラスタチンの合成類似体である、アウリスタチンペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌腫上のLewisYに特異的)及びcAC10(血液悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doronina et al (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートされており、現在治療開発中である。
【0203】
イムノコンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は本明細書に記載されている。使用され得る酵素的に活性な毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン及びトリコテセンを含む。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。種々の放射性核種が放射性コンジュゲート抗体の製造のために利用され得る。その例は、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reを含む。抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して製造され得る。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら(1987) Science, 238:1098に記載の通りに調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種が抗体にコンジュゲートするためのキレート剤の例である(国際公開第94/11026号)。
【0204】
抗体と、一又は複数の小分子毒素(例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン及びCC1065並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体)とのコンジュゲートもまた本発明において企図される。
【0205】
メイタンシン及びメイタンシノイド
幾つかの実施態様において、イムノコンジュゲートは、一又は複数のメイタンシノイド分子にコンジュゲートした本発明の抗体(完全長又は断片)を含む。
【0206】
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、東アフリカの低木Maytenus serrataから最初に単離された(米国特許第3896111号)。その後、幾つかの微生物もメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC−3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール並びにその誘導体及び類似体は、例えば、米国特許第4137230号;同第4248870号;同第4256746号;同第4260608号;同第4265814号;同第4294757号;同第4307016号;同第4308268号;同第4308269号;同第4309428号;同第4313946号;同第4315929号;同第4317821号;同第4322348号;同第4331598号;同第4361650号;同第4364866号;同第4424219号;同第4450254号;同第4362663号;及び同第4371533号に開示されている。
【0207】
メイタンシノイド薬物部分は抗体薬物コンジュゲートの魅力的な薬物部分である。なぜなら、該薬物部分は、(i)発酵又は発酵産物の化学的修飾、誘導体化により比較的調製しやすく、(ii)抗体に対する非ジスルフィドリンカーを介した結合に適した官能基の誘導体化を受けやすく、(iii)血漿中で安定であり、且つ(iv)種々の腫瘍細胞株に対して有効であるからである。
【0208】
メイタンシノイド薬物部分としての使用に適したメイタンシン化合物は当該技術分野ではよく知られており、既知の方法によって天然の供給源から単離され得、遺伝子工学技術を用いて製造され得(Yu et al (2002) PNAS 99:7968-7973参照)、また、メイタンシノール及びメイタンシノール類似体は、既知の方法によって合成して調製され得る。
【0209】
例示的なメイタンシノイド薬物部分は、修飾された芳香族環を有するもの、例えば、C−19−デクロロ(米国特許第4256746号)(アンサマイトシン(ansamytocin)P2の水素化アルミニウムリチウムの還元によって調製される);C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4361650号及び同第4307016号)(ストレプトマイセス属又はアクチノマイセス属を用いた脱メチル化又はLAHを用いた脱塩素により調製される);及びC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4294757号)(アシルクロリドを用いたアシル化により調製される)、及び他の位置に修飾を有するものを含む。
【0210】
また、例示的なメイタンシノイド薬物部分は、修飾を有するもの、例えば、C−9−SH(米国特許第4424219号)(H
2S又はP
2S
5を有するメイタンシノールの反応により調製される);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH
2 OR)(米国特許第4331598号);C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH
2OH又はCH
2OAc)(米国特許第4450254号)(Nocardiaより調製される);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4364866号)(ストレプトマイセス属によるメイタンシノールの変換によって調製される);C−15−メトキシ(米国特許第4313946号及び同第4315929号)(トレウィア ヌドロフローラ(Trewia nudlflora)より単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4362663号及び第4322348号)(ストレプトマイセス属によるメイタンシノールの脱メチル化により調製される);及び、4,5−デオキシ(米国特許第4371533号)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される)を含む。
【0211】
メイタンシノイド薬物部分の例示的な実施態様は、以下の構造を有するDM1;DM3;及びDM4を含む:
(ここで、波線は、抗体薬物コンジュゲートのリンカー(L)への薬物の硫黄原子の共有結合を示す)。SMCCによりDM1に結合されたハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、抗HER2抗体)が報告されている(全内容が本明細書に出典明示により援用される国際公開第2005/037992号)。本発明の抗体薬物コンジュゲートは本明細書で開示されている手順に従って調製され得る。
【0212】
他の例示的メイタンシノイド抗体薬剤コンジュゲートは以下のような構造と略記号を有する(ここでAbは抗体であり、pは1〜およそ8である):
Ab−SPP−DM1
Ab−SMCC−DM1
【0213】
DM1がBMPEOリンカーを介して抗体のチオール基に結合されている例示的な抗体−薬剤コンジュゲートは、以下のような構造及び略記号を有する:
(ここで、Abは抗体であり、nは0、1又は2であり、pは1、2、3又は4である)。
【0214】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同第5416064号、同第6441163号、及び欧州特許第0425235号に開示されており、これらの開示内容は本明細書に出典明示により援用される。Liuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996)には、ヒト結腸直腸がんに対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含むイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸がん細胞に対して細胞傷害性が高いことが見出されており、インビボ腫瘍増殖アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。Chariら, Cancer Research 52:127-131 (1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィドリンカーを介してヒト結腸がん細胞株上の抗原に結合しているマウス抗体A7、又はHER−2/neuオンコジーンに結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1にコンジュゲートしたイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1−メイタンシノイド(maytansonoid)コンジュゲートの細胞傷害性はインビトロでヒト乳がん細胞株SK−BR−3上で試験され、該細胞株は細胞当たり3x10
5個のHER−2表面抗原を発現する。薬物コンジュゲートは遊離メイタンシノイド薬と同程度の細胞傷害性を達成し、該細胞傷害性は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増やすことにより亢進され得る。A7−メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞傷害性を示した。
【0215】
本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための抗CD22抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子の何れの生物活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号(その開示内容は本明細書に出典明示により援用される)参照。1分子の毒素/抗体でもネイキッド抗体の使用において細胞傷害性を高めることが予期されるが、抗体分子当たり平均3−4のメイタンシノイド分子がコンジュゲートしたものは、抗体の機能又は溶解度に悪影響を与えることなく、標的細胞の細胞傷害性を向上させるといった効力を示した。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、既知の技術で合成され得、又は天然の供給源から単離され得る。適切なメイタンシノイドは、例えば、上述の米国特許第5208020号及び他の特許、並びに特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイド類は、メイタンシノール、及びメイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体、例えば種々のメイタンシノールエステルである。
【0216】
例えば、開示内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5208020号、同第6441163号又は欧州特許第0425235号、Chariら, Cancer Research 52:127-131 (1992)、及び米国特許出願公開第2005/0169933号に開示されているものも含め、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための、当該技術分野で知られている多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含む抗体−メイタンシノイドコンジュゲートは、2005年5月31日出願の米国特許出願公開第11/141344号、「Antibody-drug conjugates and Methods」に開示の通りに調製され得る。結合基は、上述した特許に開示されているような、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基を含む。追加の結合基を本明細書中に記載し、例示する。
【0217】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して製造され得る。ジスルフィルド結合を提供するための特に好適なカップリング剤は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 (1978))及びN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)を含む。
【0218】
リンカーは、連結部の型に応じて多様な位置でメイタンシノイド分子に結合され得る。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技術を使用してヒドロキシル基との反応により形成されてもよい。反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14 位、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位、及びヒドロキシル基を有するC−20位で生じ得る。好ましい実施態様では、結合はメイタンシノール又はメイタンシノール類似体のC−3位において形成される。
【0219】
一実施態様では、本発明の抗体(完全長又は断片)の何れも一又は複数のメイタンシノイド分子にコンジュゲートされている。イムノコンジュゲートの一実施態様において、細胞傷害性剤Dは、メイタンシノイドDM1である。イムノコンジュゲートの一実施態様において、リンカーはSMCCである。本明細書に記載の抗CD20抗体の併用のための抗体−リンカー薬物コンジュゲートの一実施態様において、抗体−リンカー薬物コンジュゲートは、DM1細胞傷害性剤がSMCCリンカーを介して共有結合的である、本明細書に記載の抗CD22抗体である。
【0220】
アウリスタチン及びドロスタチン(dolostatin)
幾つかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチン(dolostatin)のペプチド類似体及び誘導体である、アウリスタチン(米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含む。ドラスタチン及びアウリスタチンは微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗がん活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌活性(Pettit et al (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合され得る(国際公開第02/088172号)。
【0221】
例示的なアウリスタチンの実施態様は、2004年3月28日に発表されたSenterら,Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623(その全開示内容は本明細書に出典明示により援用される)に開示されている、N末端結合モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDFを含む。
【0222】
例示的なアウリスタチンの実施態様はMMAEである(ここで、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す):
MMAE
【0223】
別の例示的なアウリスタチンの実施態様はMMAFである(ここで、波線は抗体−薬物コンジュゲートのリンカー(L)への共有結合を示す)(米国特許出願公開第2005/0238649号):
【0224】
MMAE又はMMAF及び様々なリンカー成分(本明細書において更に説明される)を含む追加の例示的な実施態様は、以下の構造及び略号を有する(ここで、Abは抗体を意味し、pは1〜およそ8である):
【0225】
通常、ペプチドベースの薬物部分は、二以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することにより調製され得る。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知の液相合成方法に従って調製され得る(E. Schroder and K. Lubke, 「The Peptides」, volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Press参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit etら; (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465; Pettitら; (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277; Pettit, G.R.ら, Synthesis, 1996, 719-725; Pettitら, (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863;及びDoronina (2003) Nat Biotechnol 21(7):778-784の方法に従って調製され得る。
【0226】
カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子とコンジュゲートした本発明の抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはピコモル以下の濃度で二本鎖DNA破壊を生じさせる能力がある。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同第5714586号、同第5739116号、同第5767285号、同第5770701号、同第5770710号、同第5773001号、同第5877296号(すべてAmerican Cyanamid Company)を参照のこと。使用され得るカリケアマイシンの構造類似体は、限定されないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N−アセチル−γ
1I、PSAG及びθ
I1(Hinman et al., Cancer Research 53:3336-3342 (1993), Lode et al., Cancer Research 58:2925-2928 (1998)及び上記したAmerican Cyanamidへの米国特許)を含む。抗体がコンジュゲートできる別の抗腫瘍薬は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシンアマイシン及びQFAはどちらも、細胞内作用部位を有しており原形質膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介性の内部移行によるこれらの薬剤の細胞への取り込みにより、該薬剤の細胞傷害効果が大きく向上する。
【0227】
他の細胞傷害剤
本発明の抗体とコンジュゲートできる他の抗腫瘍剤は、BCNU、ストレプトゾシン(streptozoicin)、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、米国特許第5053394号;同5770710号に記載されており、集合的にLL−E33288複合体として知られている薬剤のファミリー、並びにエスペラミシン(米国特許第5877296号)を含む。
【0228】
酵素的に活性な毒素及び使用され得るその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌由来)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを含む。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0229】
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ、又はデオキシリボヌクレアーゼ(すなわちDNase)のようなDNAエンドヌクレアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートを更に考察する。
【0230】
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は放射性の高い原子を含み得る。放射性コンジュゲート抗体の製造のために、種々の放射性同位体が利用される。例としては、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体がある。コンジュゲートが検出用に使用される場合、該放射性同位体はシンチグラフ検査のための放射性原子、例えばtc
99m若しくはI
123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られている)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含み得る。
【0231】
放射標識又は他の標識が、周知の方法でコンジュゲートに取り込まれ得る。例えば、ペプチドは生合成されるか、又は例えば水素の代わりにフッ素−19を伴う適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成され得る。標識、例えばtc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合され得る。イットリウム−90はリジン残基を介して結合され得る。IODOGEN法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)は、ヨウ素−123の取り込みに使用され得る。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0232】
抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン−2,6−ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して製造され得る。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら, Science 238: 1098 (1987)に記載されているようにして調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種の抗体へのコンジュゲーションのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。リンカーは細胞中の細胞傷害性剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Research 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)が使用され得る。
【0233】
本発明の化合物は、限定するものではないが、(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されている架橋剤:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエートを用いて調製したADCを特に企図している。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467−498頁を参照。
【0234】
抗体−薬物コンジュゲートの調製:
本発明の抗体薬物コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)は、リンカー(L)を介して、一又は複数の薬物部分(D)、例えば1抗体につき約1〜約20の薬物部分にコンジュゲートされる。式IのADCは、(1)共有結合を介し、抗体の求核基を二価性リンカー試薬と反応させAb−Lを形成し、続いて薬物部分Dと反応させる、及び;(2)共有結合を介し、薬物部分の求核基を二価性リンカー試薬と反応させてD−Lを形成し、続いて抗体の求核基と反応させる等、当業者に周知の有機化学反応、条件及び試薬を用いて、幾つかの経路により調製され得る。ADCを調製するための追加的な方法は本明細書に記載されている。
Ab−(L−D)
p 式I
【0235】
リンカーは、一又は複数のリンカー成分から成っていてもよい。例示的なリンカー成分は、6−マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」)、p−アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN−スクシンイミジル(4−ヨード−アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)を含む。追加的なリンカー成分は当該技術分野では周知であり、その幾つかは本明細書に記載されている。
【0236】
幾つかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含み得る。例示的なアミノ酸リンカー成分は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドを含む。例示的なジペプチドは、バリン−シトルリン(vc又はval−cit)、アラニン−フェニルアラニン(af又はala−phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン−バリン−シトルリン(gly−val−cit)及びグリシン−グリシン−グリシン(gly−gly−gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分が設計され得、特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性において最適化され得る。
【0237】
例示的なリンカー成分の構造を以下に示す(ここで、波線はADCの他の成分への共有結合の部位を示す):
MC
MP
MPEG
【0238】
追加の例示的なリンカー成分及び略号は以下のものを含む(ここで、抗体(Ab)及びリンカーが示されており、pは1〜およそ8である):
Val−cit
MC−val−cit
MC−val−cit−PAB
【0239】
抗体上の求核基は、(i)N末端アミン基、(ii)側鎖アミン基、例えばリシン、(iii)側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv)抗体がグリコシル化される糖のヒドロキシル基又はアミノ基を含むがこれらに限定されない。アミン、チオール及びヒドロキシル基は求核性であり、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物等の活性エステル、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド;(ii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる。特定の抗体は、還元可能な鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、DTT(ジチオスレイトール)等の還元剤を用いた処理によって、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対して反応性にされ得る。したがって、各システイン架橋は、理論的には二の反応性チオール求核試薬を形成する。リシンと2−イミノチオラン(Trautの試薬)との反応によって追加的な求核基が抗体内に導入され得、アミンからチオールへの変換がもたらされる。一、二、三、四又はそれより多くのシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製する)ことによって、反応性チオール基が抗体(又はその断片)内に導入され得る。
【0240】
また、本明細書に記載の抗CD20抗体との併用のための本発明の抗体薬物コンジュゲートは、リンカー試薬又は薬物上の求核置換基と反応することができる求電子部分を導入するための抗体の修飾によっても生成され得る。グリコシル化された抗体の糖は、例えば過ヨウ素酸酸化剤で酸化させ、リンカー試薬又は薬物部分のアミン基と反応し得るケトン基又はアルデヒド基を形成させ得る。得られたイミンシッフ塩基群は、安定な結合を形成し得、又は例えば水素化ホウ素試薬によって還元されて安定なアミン結合を形成し得る。一実施態様では、グリコシル化された抗体の炭水化物部分と、ガラクトース(glactose)オキシダーゼ又はメタ過ヨウ素酸ナトリウムの何れかとの反応により、薬物上の適切な基と反応することができるタンパク質中にカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じ得る(Hermanson,Bioconjugate Techniques)。別の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含有するタンパク質は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドの生成をもたらし得る(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬物部分又はリンカー求核試薬と反応され得る。
【0241】
同様に、薬物部分上の求核基は、(i)NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート及び酸ハロゲン化物等の活性エステル、(ii)アルキル及びベンジルハロゲン化物、例えばハロアセトアミド(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基を含む、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子基と反応して共有結合を形成することができる、アミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジド基を含むがこれらに限定されない。
【0242】
更なる別の態様では、抗体は、一又は複数のスルフヒドリル基を導入するために化学的に修飾され得る一又は複数のリジン残基を有する。抗体単位はスルフヒドリル基の硫黄原子を介してリンカー単位に結合する。リジンを修飾するために用いられ得る試薬は、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)及び2−イミノチオランヒドロクロリド(Trautの試薬)を含むがこれらに限定されない。
【0243】
別の実施態様では、抗体は、一又は複数のスルフヒドリル基を持つように化学的に修飾され得る一又は複数の炭水化物基を有してもよい。本明細書に開示の通り、抗体単位はスルフヒドリル基の硫黄原子を介してリンカー単位(例えばストレッチャー単位)に結合する。
【0244】
更に別の実施態様では、抗体は、酸化されて、アルデヒド(−CHO)基を提供し得る一又は複数の炭水化物基を有してもよい(例えば、Laguzza, et al., J. Med. Chem. 1989, 32(3), 548-55を参照)。対応するアルデヒドはストレッチャー上の反応部位と結合を形成し得る。抗体上のカルボニル基と反応し得るストレッチャー上の反応部位は、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンを含むがこれらに限定されない。薬物単位の結合又は会合のためのタンパク質の修飾用の他のプロトコールは、参照により本明細書に援用されるColiganら., Current Protocols in Protein Science, vol. 2, John Wiley & Sons (2002)に記載されている。
【0245】
抗体、イムノグロブリン又はこれらの断片等の細胞を標的とするタンパク質へのリンカー−薬物部分のコンジュゲーションのための方法は、例えば、米国特許第5208020号、米国特許第6441163号、国際公開第2005037992号、国際公開第2005081711号、及び国際公開第2006/034488号に見出され、これらのすべては出典明示により本明細書にその全文が援用される。
【0246】
別法として、抗体及び細胞傷害性剤を含む融合タンパク質が、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製され得る。DNAの長さは、コンジュゲートの所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離されているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの二つの部分をコードする各領域を含み得る。
【0247】
更なる他の実施態様では、腫瘍の事前標的化に利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、この場合、抗体−受容体コンジュゲートが患者に投与され、続いて洗浄剤を使用して循環から非結合コンジュゲートを除去し、次いで細胞傷害性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートさせた「リガンド」(例えばアビジン)の投与が行われる。
【0248】
イムノコンジュゲートの一実施態様では、細胞傷害性剤Dは式D
E又はD
F
[式中、R
2及びR
6はそれぞれメチルであり、R
3及びR
4はそれぞれイソプロピルであり、R
7はsec−ブチルであり、各R
8は、CH
3、O−CH
3、OH及びHから独立に選択され;R
9はHであり;R
10はアリールであり;Zは−O−又は−NH−であり;R
11はH、C
1−C
8アルキル、又は−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−CH
3であり;R
18は−C(R
8)
2−C(R
8)
2−アリールであり、また、
(d)pはおよそ1から8の範囲である]のアウリスタチンである。
【0249】
以下の実施態様が上記の任意のイムノコンジュゲートのために更に提示される。一実施態様では、イムノコンジュゲートはインビトロ又はインビボでの細胞殺傷活性を有する。一実施態様では、リンカーは抗体上のチオール基を介して抗体に結合している。一実施態様では、リンカーはプロテアーゼによって切断可能である。一実施態様では、リンカーはval−citジペプチドを含む。一実施態様では、リンカーはp−アミノベンジル単位を含む。一実施態様では、p−アミノベンジル単位は薬物とリンカー中のプロテアーゼ切断部位との間に配置される。一実施態様では、p−アミノベンジル単位はp−アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)である。一実施態様では、リンカーは6−マレイミドカプロイルを含む。一実施態様では、6−マレイミドカプロイルは抗体とリンカー中のプロテアーゼ切断部位との間に配置される。上記の実施態様は単独で行われても、又は互いに任意の組み合わせで行われてもよい。
【0250】
一実施態様では、薬物はMMAEとMMAFから選択される。一実施態様では、イムノコンジュゲートは、式
[式中、Abは上記の抗CD22抗体の何れかであり、Sは硫黄原子であり、また、pは2から5の範囲である]を有する。一実施態様では、イムノコンジュゲートは、式
[式中、Abは上記の抗CD22抗体の何れかであり、Sは硫黄原子であり、また、pはおよそ1からおよそ6、およそ2からおよそ5、およそ2からおよそ6、およそ2からおよそ4、およそ2からおよそ3、およそ3からおよそ4、およそ3から5、およそ3からおよそ6、およそ4からおよそ6である]を有する。
【0251】
本発明のCD22抗体−薬物コンジュゲートのIC50を決定するためのインビトロ活性アッセイ
「IC
50」とは、測定された比活性の50%を阻害するために必要な特定の化合物の濃度を指す。とりわけ、後述されるように、CD22の相互作用を阻害する薬剤のIC50が測定され得る。
【0252】
用語「細胞傷害活性」とは、抗体−薬物コンジュゲート又は抗体−薬物コンジュゲートの細胞内代謝物の細胞殺傷効果、 細胞分裂停止効果、又は細胞増殖阻害効果を指す。細胞傷害活性は、細胞の半分が生存する単位量当たりの濃度(モル又は質量)であるIC
50値として表されてもよい。
【0253】
多数のリンパ腫細胞株上のヒトCD22の表面発現
表面に種々の量のCD22を発現している19個のリンパ腫細胞株が培養され、対数増殖期に採取された。正常マウスIgG及び正常ヒトIgGを各100μg/m含有しているFACS洗浄緩衝液(PBS;0.5%ウシ血清アルブミン;0.1%アジ化ナトリウム)中に細胞が再懸濁され、氷上で維持された。氷上で30分間、約1x10^6細胞/100μlが抗huCD22 APC(mIgG1、クローンRFB4、Southern Biotech #9361−11)又はマウスIgG1 APCアイソタイプ(BD Pharmingen #555751)で染色された。死細胞は、7−AAD(BD Pharmingen #559925)で染色された。データは、BD FacsCalibur
TMフローサイトメーターで取得され、FlowJo
TMソフトウェアを用いて分析された。hu10F4v3−SMCC−DM1のIC50の決定、又は各遊離薬物(DM1、MMAF又はMMAE)は、上記のリンパ腫細胞を培養し、その培養された細胞を対数期に採取し、96ウェルプレートで1ウェル当たり90μlの培地中に5000個の細胞を播種することにより決定された。ADC及び遊離薬物が検出範囲内で連続的に希釈された(ADCが300μg/ml又は遊離薬物が90nMで始まり、アッセイ対象物が実質的にゼロになるまで希釈)。10μlの希釈されたADC又は遊離薬物のアリコートが細胞を含有する複製ウェルに添加され、37℃で3日間インキュベートされた。各ウェルに、100μlのCellTiter Glo
TMが添加され、30分間インキュベートされた。化学発光が検出され、データはPrism
TMソフトウェアを使用して分析された。
【0254】
オリゴ糖成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態及び特異的の生物活性を含む、治療用糖タンパク質の効力と関連する特性に有意に影響を及ぼし得る。このような特性は、オリゴ糖の存在又は非存在だけでなく、その特異的構造にも依存し得る。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間で幾つかの一般化がなされ得る。例えば、あるオリゴ糖構造は、特異的な糖結合タンパク質との相互作用により血流からの糖タンパク質の急速なクリアランスを仲介するが、他のオリゴ糖構造は、抗体によって結合され、望ましくない免疫反応を誘発し得る(Jenkins, N., et al., Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981)。
【0255】
哺乳類細胞は、ヒトへの応用に最も適合する形態でタンパク質をグリコシル化する能力により、治療用糖タンパク質の製造のための優れた宿主である(Cumming, D.A., et al., Glycobiology 1 (1991) 115-130; Jenkins, N., et al., Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981)。細菌はタンパク質をほとんどグリコシル化せず、酵母、糸状菌、昆虫及び植物細胞のようなその他の種類の一般的な宿主と同様に、血流からの急速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、及び(場合によっては)生物活性の低減と関連するグリコシル化パターンを生じる。哺乳類細胞のうちで、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間で最も一般的に用いられてきた。適切なグリコシル化パターンを与えることに加えて、こうした細胞は、遺伝子的に安定で高度に生産的なクローン性細胞株を一貫して生産することを可能にする。こうした細胞は、無血清培地を用いて単純なバイオリアクター中で高密度まで培養され得、安全且つ再現可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に用いられる動物細胞は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NSO−及びSP2/0マウス骨髄腫細胞を含む。ごく最近では、トランスジェニック動物からの生産も試験されている(Jenkins, N., et al., Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981)。
【0256】
すべての抗体は重鎖定常領域の保存された位置に糖鎖構造を含有し、各アイソタイプはN結合型糖鎖構造の異なるアレイを保有し、これがタンパク質の集合、分泌又は機能活性に様々に影響する(Wright, A., and Morrison, S.L., Trends Biotech. 15 (1997) 26-32)。結合されたN結合型糖鎖の構造は、プロセシングの程度によって相当に異なり、高マンノース型、多分岐型及び二分岐複合オリゴ糖を含み得る(Wright, A., and Morrison, S.L., Trends Biotech. 15 (1997) 26-32)。典型的には、モノクローナル抗体でさえ複数のグリコフォームとして存在するように、特定のグリコシル化部位にて結合したコアオリゴ糖構造の不均質なプロセシングが存在する。同様に、抗体のグリコシル化における主要な相違が細胞株間で生じ、異なる培養条件下で増殖した所定の細胞株については更に僅かな差異も見られる(Lifely, M.R., et al., Glycobiology 5 (1995) 813-822)。
【0257】
単純な生産方法を維持し、且つ、重大で望ましくない副作用をおそらくは回避しつつ、効力を大きく増加させるための一つの方法は、モノクローナル抗体のオリゴ糖成分をUmana, Pら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び米国特許第6602684号に記載のように操作することによってモノクローナル抗体の天然の細胞媒介性エフェクター機能を向上させることである。IgG1型抗体は、がん免疫療法において最も一般的に使用される抗体であり、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297と結合している二つの複合二分岐オリゴ糖はCH2ドメインの間に埋もれて、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成しており、該オリゴ糖の存在は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)のようなエフェクター機能を抗体が媒介するために必須である(Lifely, M.R., et al., Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R., et al., Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A. and Morrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32)。
【0258】
β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTII17y」)、すなわち二分されたオリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における過剰発現が、操作されたCHO細胞により産生される抗神経芽腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を有意に増加させることが以前に示された(内容全体が参照により本明細書に援用される、Umana, Pら, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180;及び国際公開第99/154342号を参照のこと)。抗体chCE7は、高い腫瘍親和性及び特異性を有する非コンジュゲートモノクローナル抗体の大きいクラスに属するが、GnTIII酵素を欠く標準的な産業用細胞株において生産された場合、殆ど効力を有さず臨床的に有用ではない(Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180)。その研究は、ADCC活性の大幅な増加がGnTIIIを発現するように抗体産生細胞を操作することにより得られ、これは更に、二分された非フコシル化オリゴ糖を含む定常領域(Fc)結合二分オリゴ糖の割合の、天然抗体に見られるレベルを超える増加にもつながることを最初に示した。
【0259】
本明細書で使用される用語「がん」は、リンパ腫、リンパ性白血病、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞上皮細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚黒色腫又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫(任意の上記がんの難治性型、又は上記がんの一又は複数の組合せを含む)を含む。一実施態様では、がんという用語はCD20を発現するがんを指す。
【0260】
用語「CD20抗原の発現」とは、腫瘍又はがんにそれぞれ由来し、好ましくは非固形腫瘍に由来する、T細胞又はB細胞、より好ましくはB細胞の細胞内、好ましくは細胞表面での、CD20抗原の発現の有意なレベルを示すことが意図されている。「CD20を発現するがん」の患者は、当該技術分野において知られている標準的なアッセイにより決定され得る。例えば、CD20抗原発現は、免疫組織化学的(IHC)検出を用いて、FACS又は対応するmRNAのPCRに基づく検出により測定され得る。
【0261】
用語「CD20を発現するがん」は、本明細書で用いる場合、がん細胞がCD20抗原の発現を示すすべてのがんを指す。好ましくは、CD20を発現するがんは、本明細書で用いる場合、リンパ腫(好ましくはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))及びリンパ性白血病を指す。このようなリンパ腫及びリンパ球性白血病は、例えば、a)濾胞性リンパ腫、b)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地方病性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫及び非バーキットリンパ腫を含む)、c)辺縁帯リンパ腫(節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、e)大細胞型リンパ腫(B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、縦隔原発B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫−肺性B細胞性リンパ腫を含む)、f)ヘアリー細胞白血病、g)リンパ球性リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、h)急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性前リンパ球性白血病、i)形質細胞腫瘍、形質細胞性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、j)ホジキン病を含む。
【0262】
一実施態様では、CD20を発現するがんは、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)である。別の実施態様では、CD20を発現するがんは、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、辺縁帯リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、HIV関連リンパ腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、又は原発性中枢神経系リンパ腫である。
【0263】
用語「治療方法」又はこれと同義の用語は、例えばがんに適用される場合、患者におけるがん細胞の数を減少若しくは消滅させるように、又はがんの症状を緩和するように設計された手順又は一連の措置を指す。がん又は他の増殖性疾患の「治療方法」は、がん細胞若しくは他の疾患が実際に取り除かれること、細胞の数若しくは疾患が実際に低減されること、又はがん若しくは他の疾患の症状が実際に緩和されることを必ずしも意味するとは限らない。がんの治療方法は、多くの場合、成功の見込みが低くても行われるが、それは、患者の病歴及び推定余命に鑑み、それでも総合的に有益な一連の作用を誘導すると考えられているものである。
【0264】
用語「共投与」又は「共投与すること」は、前記アフコシル化抗CD20抗体及び前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの、二の別々の製剤として(又は一の単独製剤として)の投与を指す。共投与は、同時であっても、又は任意の順序で逐次的であってもよく、両方(又はすべて)の活性剤がそれらの生物活性を同時に発揮する期間があることが好ましい。前記抗CD20アフコシル化抗体及び前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは、同時に又は逐次的に共投与される(例えば、連続的注入で静脈内(i.v.)に(一つは抗CD20抗体のためのもので、一つは前記CD22抗体−薬物コンジュゲートのためのもの;又は、例えば、抗CD20抗体は連続的注入で静脈内(i.v.)に投与され、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは経口投与される)。両方の治療剤が逐次的に共投与される場合、用量は、同じ日に二回の別々の投与で投与されるか、又は一方の薬剤が1日目に投与され、第二の薬剤が2日目から7日目、好ましくは2日目から4日目に共投与される。よって、一実施態様において用語「逐次的に」は、第一の成分(抗CD20抗体又はCD22抗体−薬物コンジュゲート)の投与後7日以内、好ましくは第一の成分の投与後4日以内を意味し、また、用語「同時に」は同じ時におけることを意味する。前記アフコシル化抗CD20抗体及び前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの維持量に関して、用語「共投与」は、両方の薬物について治療サイクルが適切(例えば、週に1回)であるならば、維持量が同時に共投与され得ることを意味する。或いは、CD22抗体−薬物コンジュゲートは、例えば1日から3日毎に例えば投与され、前記アフコシル化抗体は週1回投与される。或いは、維持量は1日以内又は数日以内の何れかに逐次的に共投与される。
【0265】
抗体が、「治療的有効量」(又は単に「有効量」)、すなわち、研究者、獣医、医師又は他の臨床家によって求められている、組織、系、動物若しくはヒトの生物学的又は医学的奏功を引き出すであろう各化合物又は併用の量で患者に投与されることは自明である。
【0266】
前記抗CD20アフコシル化抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの共投与の量並びに共投与のタイミングは、治療される患者のタイプ(人種、性別、年齢、体重等)及び状態、並びに治療される疾患又は状態の重症度に依存する。前記アフコシル化抗CD20抗体及び前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは、適切には、単回又は一連の治療で、例えば同日又は翌日に患者に共投与される。
【0267】
投与が静脈内の場合、前記アフコシル化抗CD20抗体又は前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの初期注入時間は、例えば、初期注入がおよそ90分、(初期注入で耐容性が良好ならば)後続の注入がおよそ30分というように、後続の注入時間よりも長くてよい。
【0268】
疾患の型及び重症度により、約0.1mg/kgから50mg/kg(例えば0.1−20mg/kg)の前記アフコシル化抗CD20抗体と1μg/kgから50mg/kg(例えば0.1−20mg/kg)の前記CD22抗体−薬物コンジュゲートが、患者への両薬物の共投与の初期候補用量である。一実施態様では、前記アフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)の好ましい投与量は、約0.05mg/kgから約30mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg又は30mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の一又は複数の用量が患者に共投与され得る。一実施態様では、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの好ましい投与量は、約0.05mg/kgから約30mg/kgの範囲であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg又は30mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の一又は複数の用量が患者に共投与され得る。
【0269】
上述の通り、こうしたがんを治療するために、一実施態様では前記CD22抗体−薬物コンジュゲートが静脈内注入により投与される。注入により投与される用量は、1用量当たり約1μg/m
2から約10000μg/m
2の範囲であり、通常、週に1用量、計1、2、3又は4用量である。或いは、用量範囲は、約1μg/m
2から約1000μg/m
2、約1μg/m
2から約800μg/m
2、約1μg/m
2から約600μg/m
2、約1μg/m
2から約400μg/m
2、約10μg/m
2から約500μg/m
2、約10μg/m
2から約300μg/m
2、約10μg/m
2から約200μg/m
2、及び約1μg/m
2から約200μg/m
2である。該用量は、日に1回、週に1回、1日1回未満で週に複数回、1日1回未満で月に複数回、週に1回未満で月に複数回、月に1回、又は疾患の症状が軽減若しくは緩和するまで断続的に投与されてもよい。投与は、治療されている腫瘍やリンパ腫、白血病の症状の寛解まで、開示されている任意の間隔で継続してよい。そのような寛解又は軽減が継続的な投与により延長される場合、症状の寛解又は軽減の達成後も投与を続けてよい。
【0270】
前記アフコシル化抗CD20抗体の用量及び投与スケジュールは、患者のタイプ(人種、性別、年齢、体重等)及び状態並びにアフコシル化抗CD20抗体の型によって、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートと異なることがある。例えば、前記アフコシル化抗CD20抗体は、例えば1週間から3週間毎に投与され得、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは、毎日又は2日から10日毎に投与され得る。初期の比較的高い負荷用量と、続いて1用量以上の比較的低用量を投与してもよい。
【0271】
一実施態様では、本発明の前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの併用での、前記アフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)の好ましい投与量は、3から6週間の投与サイクルの1、8、15日目に800から1600mg(一実施態様では800から1200mg)、次いで3から4週間の投与サイクルの1から9日目までに400から1200mg(一実施態様では800から1200mg)であろう。最も好ましくは、投与量は3週間の投与スケジュールで1000mgのフラット用量であり、第2週に1000mgのフラット用量の追加サイクルも可能である。
【0272】
更に別の実施態様では、本発明のアフコシル化抗CD20抗体との併用での前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの投与量は、3週間の投与スケジュールで約1.5mg/kgから約3mg/kg、好ましくは約1.7mg/kgから約2.5mg/kg、最も好ましくは約1.8mg/kg又は約2.4mg/kgである。前記の最も好ましい用量は、CD22抗体−薬物コンジュゲート単剤療法の臨床治験で現在試験中である。
【0273】
更に別の実施態様では、本発明の前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの併用でのアフコシル化抗CD20抗体の投与量は、1日目(サイクル1の1日目(C1D1))に約1000mgのフラット用量、8日目(C1D8)に約1000mgの更なるフラット用量、15日目(C1D15)にも約1000mgのまた更なるフラット用量であり、続いて、3週間毎、すなわち22日目(C2D1)、43日目(C2D2)、64日目(C2D3)、85日目(C2D4)、106日目(C2D5)及び127日目(C2D6)に約1000mgの前記アフコシル化抗CD20抗体の更なる6フラット用量(サイクル2)である。前記実施態様において、本発明のアフコシル化抗CD20抗体との併用でのCD22抗体−薬物コンジュゲートの投与量は、3週間毎に約2.4mg/kg、或いは3週間毎に約1.8mg/kgである。前記実施態様において、本発明のアフコシル化抗CD20抗体との併用での前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの投薬は、1日目(C1D1)、22日目(C2D1)、43日目(C2D2)、64日目(C2D3)、85日目(C2D4)、106日目(C2D5)及び 127日目(C2D6)である。
【0274】
好ましくは、上述の通り、前記投与計画においてアフコシル化抗CD20抗体はオビヌツズマブ(GA101)である。また、好ましくは、上述の通り、前記投与計画において前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEである。
【0275】
本発明はまた、本明細書に開示の前記アフコシル化抗CD20抗体及び前述の実施態様の何れか一に記載のヒト化10F4抗体−薬物コンジュゲートの治療的有効量を自己免疫疾患に罹患している患者に投与することを含む、自己免疫疾患を緩和する方法も提示する。好ましい実施態様では、抗体は静脈内に又は皮下に投与される。抗体−薬物コンジュゲートは、1用量当たり約1μg/m
2から約100mg/m
2の範囲の投与量で静脈内に投与され、また特定の実施態様では、該投与量は1μg/m
2から約500μg/m
2である。該用量は、日に1回、週に1回、1日1回未満で週に複数回、1日1回未満で月に複数回、週に1回未満で月に複数回、月に1回、又は疾患の症状が軽減若しくは緩和するまで断続的に投与されてもよい。投与は、治療されている自己免疫疾患の症状の軽減又は緩和まで、開示されている任意の間隔で継続してよい。そのような軽減又は緩和が継続的な投与により延長される場合、症状の緩和又は軽減の達成後も投与を続けてよい。
【0276】
また、本発明は、本明細書に開示の前記アフコシル化抗CD20抗体及び前述の実施態様の何れか一に記載のヒト化10F4抗体(この抗体は、細胞傷害性分子又は検出可能な分子にコンジュゲートしていない)の治療的有効量を、例えばB細胞増殖性疾患(限定されないが、リンパ腫及び白血病を含む)等のB細胞疾患に罹患している患者に投与することを含む、B細胞疾患を治療する方法も提示する。抗体は、典型的には、約1μg/m
2から約1000mg/m
2.の用量範囲で投与されるであろう。
【0277】
推奨用量は、更なる化学療法剤の共投与があるか否かによって、また、化学療法剤の種類によって変化し得る。
【0278】
ある実施態様では、医薬は、がん、好ましくはCD20を発現するがんに罹患している患者における転移又は更なる播種性転移を予防又は低減するために有用である。医薬は、そのような患者の生存期間を延長し、そのような患者の無増悪生存期間を延長し、奏功期間を延長するのに有用であり、生存期間、無増悪生存期間、奏功率又は奏功期間により測定される、治療されている患者の統計学的に有意で臨床的に意味のある改善をもたらす。好ましい実施態様では、医薬は、患者の群における奏功率を上昇させるのに有用である。
【0279】
本発明との関係において、追加的な他の細胞傷害性剤、化学療法剤若しくは抗がん剤又はそのような薬剤の効果を向上させる化合物(例えばサイトカイン)が、がんのアフコシル化抗CD20抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの併用治療において使用され得る。そのような分子は、好ましくは、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。一実施態様において、前記アフコシル化抗CD20抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの併用療法は、このような追加の細胞傷害剤、化学療法剤若しくは抗がん剤、又はこのような薬剤の効果を向上させる化合物なしで用いられる。
【0280】
そのような薬剤は、例えば、アルキル化剤又はアルキル化作用を有する薬剤;例えば、シクロホスファミド(CTX;例:シトキサン(登録商標))、クロラムブシル(CHL;例:ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(CisP;例:プラチノール(登録商標))、ブスルファン(例:ミレラン(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンC、及び類似のもの;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16;例:べプシド(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオグアニン(thiocguanine)(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(例:ゼローダ(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)及び類似のもの;抗生物質、例えばアクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例:アドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及び類似のもの;アルカロイド、例えば、ビンクリスチン(VCR)、ビブラスチン等のビンカアルカロイド及び同類のもの;及び他の抗腫瘍剤、例えば、パクリタキセル(例:タキソール(登録商標))、及びパクリタキセル誘導体、細胞増殖抑制剤、デキサメタゾン(DEX;例:デカドロン(登録商標))等のグルココルチコイド、及びプレドニゾン等のコルチコステロイド、ヒドロキシウレア等のヌクレオシド酵素阻害剤、アスパラギナーゼ等のアミノ酸除去酵素、ロイコボリン及び他の葉酸誘導体、並びに類似の様々な抗腫瘍剤を含む。以下の薬剤も、追加の薬剤として使用されてもよい:アミホスチン(arnifostine)(例:エチオール(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン リポ(例:ドキシル(登録商標))、ゲムシタビン(例:ジェムザール(登録商標))、ダウノルビシン リポ(例:ダウノキソーム(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例:タキソテール(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT 11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ 7−エチル−カンプトセシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロン ベータ、インターフェロン アルファ、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル。一実施態様において、アフコシル化抗CD20抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートの併用療法はこのような追加の薬剤なしで用いられてもよい。
【0281】
化学療法計画における上記の細胞傷害性剤及び抗がん剤並びにプロテインキナーゼ阻害剤のような抗増殖性標的特異的抗がん剤の使用は、がん療法技術において全般的によく特徴付けられており、本明細書においてそれらを用いる場合、いくらかの調整を加えて、耐容性及び効果のモニタリング並びに投与経路及び投与量の制御について同じように考慮する。例えば、細胞傷害性剤の実際の投与量は、組織培養法を用いて決定される患者の培養細胞応答に応じて変動し得る。一般的に、投与量は、追加の他の薬剤の非存在下で使用される量と比較して低減される。
【0282】
効果的な細胞傷害性剤の典型的な投与量は、製造者により推奨される範囲内であり得、インビトロ応答又は動物モデルにおける応答により示される場合、濃度又は量は約1桁分まで減らされ得る。したがって、実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、及び初代培養悪性細胞若しくは組織培養組織試料のインビトロ応答性か、又は適切な動物モデルにおいて観察される応答に基づく治療法の効果に依存するであろう。
【0283】
本発明との関係において、CD20を発現するがんのアフコシル化抗CD20抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの併用療法に加えて、有効量の電離放射線療法が実施され得、且つ/又は放射性医薬品が用いられ得る。放射線源は、治療される患者にとって外部にあっても、内部にあってもよい放射線源が患者にとって外部にある場合、その療法は体外照射療法(EBRT)として知られている。放射線源が患者にとって内部にある場合、その治療は近接照射療法(BT)と称される。本発明との関係で使用される放射性原子は、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨウ素−123、ヨウ素−131及びインジウム−111を含むがこれらに限定されない群から選択され得る。抗体をこのような放射性同位体で標識することも可能である。一実施態様では、アフコシル化抗CD20抗体と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートヒトとの併用療法は、このような電離放射線なしで用いられる。
【0284】
放射線療法は、切除不可能若しくは手術不可能な腫瘍及び/又は腫瘍転移を抑制するための標準的な治療である。放射線療法が化学療法と併用された場合に、結果の改善が見られている。放射線療法は、標的領域に送達された高線量の放射線が腫瘍組織及び正常組織の両方において生殖細胞の死をもたらすという原理に基づいている。放射線投与計画は、一般に、放射線吸収量(Gy)、時間及び分割の観点から定められ、がん専門医によって注意深く定められる必要がある。患者が受ける放射線量は、様々な考慮事項に依拠するが、二つの最も重要な点は、体の他の重要な構造又は臓器に対する腫瘍の位置、及び腫瘍が広がっている範囲である。放射線療法を受ける患者の典型的な治療過程は、1から6週間の治療スケジュールで、10から80Gyの総線量を、1日1回約1.8から2.0Gyの分割で週に5日間患者に投与する。本発明の好ましい実施態様では、本発明の併用療法と放射線とを用いてヒト患者の腫瘍が治療されると相乗効果がある。すなわち、本発明の併用を含む薬剤による腫瘍増殖の阻害は、放射線と、場合により追加の化学療法剤又は抗がん剤と組み合わせると増強される。アジュバント放射線療法のパラメーターは、例えば、国際公開第99/60023号に含まれている。
【0285】
本発明のアフコシル化抗CD20抗体及び/又は抗CD22抗体−薬物コンジュゲートは、既知の方法に従って、ボーラスとして静脈内投与により、又は一定期間にわたる連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、又は髄腔内経路により患者に投与される。一実施態様では、抗体の投与は静脈内又は皮下が好ましい。
【0286】
本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤、並びに薬学的投与に適合するその他の物質及び化合物等、薬学的投与に適合するありとあらゆる物質を含むことが意図される。但し、活性化合物と適合性である限り、従来の媒体又は薬剤の何れについても、本発明の組成物におけるそれらの使用が企図される。補足的な活性化合物が組成物に組み入れられてもよい。
【0287】
薬学的組成物:
薬学的組成物は、本発明の抗CD20抗体及び/又はCD22抗体−薬物コンジュゲートを、薬学的に許容される無機又は有機の担体と共に加工することにより得ることができる。ラクトース、コーンスターチ又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等が、例えば錠剤、被覆錠剤、糖衣剤及び硬ゼラチンカプセル剤のための担体として用いられ得る。軟ゼラチンカプセル剤に適した担体は、例えば、植物油、ワックス、油脂、半固体ポリオール及び液体ポリオール等である。活性物質の性質によっては担体は必要ないが、軟ゼラチンカプセル剤の場合は通常必要である。液剤及びシロップ剤の製造に適した担体は、例えば、水、ポリオール類、グリセロール、植物油等である。坐剤に適した担体は、例えば、天然油又は硬化油、ワックス、油脂、半固体ポリオール及び液体ポリオール等である。
【0288】
薬学的組成物は、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、浸透圧を変えるための塩、緩衝液、マスキング剤、又は抗酸化剤を更に含有することができる。薬学的組成物は、更に他の治療上価値のある物質も含有し得る。
【0289】
本発明の一実施態様では、該組成物は、がん、特にCD20を発現するがん(好ましくはリンパ腫又はリンパ性白血病、例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療での使用のための、60%以下のフコース量を有する前記アフコシル化抗CD20抗体(好ましくは前記アフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)と前記CD22抗体−薬物コンジュゲートとの両方を含む。
【0290】
前記薬学的組成物は、一又は複数の薬学的に許容される担体を更に含んでもよい。
【0291】
本発明は、例えばがんでの使用のための、(i)60%以下のフコース量を有するアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)の効果的な第1量と、(ii)CD22抗体−薬物コンジュゲートの効果的な第2量とを含む薬学的組成物を更に提示する。このような組成物は、場合によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。
【0292】
本発明に従って用いられるアフコシル化抗CD20抗体単独の薬学的組成物は、所望される程度の純度を有する抗体を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより保管用に調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980))。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度にてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はTWEEN
TM、PLURONICS
TM若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0293】
抗体CD22抗体−薬物コンジュゲートの薬学的組成物は、アフコシル化抗CD20抗体について上に記載したものと同様であり得る。
【0294】
小分子CD22抗体−薬物コンジュゲートの薬学的組成物は、経口、経鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、直腸、膣内及び/又は非経口投与に適したものを含む。組成物は、好都合には単位剤形で提供され得、薬学の分野で周知の任意の方法により調製され得る。単回剤形を製造するために担体物質と組み合わされ得る活性成分の量は、治療されている宿主及び特定の投与様式によって様々であろう。単回剤形を製造するために担体物質と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果を生じさせる式Iの化合物の量であろう。一般的に、該活性成分の量は、100パーセント中、約1パーセントから約99パーセント、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲であろう。このような組成物を調製する方法は、CD22抗体−薬物コンジュゲートを担体と、また、任意選択的に一又は複数の副成分と会合させる工程を含む。一般的に、CD22抗体−薬物コンジュゲートの薬学的組成物は、CD22抗体−薬物コンジュゲートを均一且つ密接に、液体担体若しくは微粉固体担体又はその両方と会合させ、次いで、必要に応じて生成物を成形することにより調製される。経口投与に適した組成物は、カプセル剤、カシェ剤、サシェ剤、丸薬、錠剤、トローチ剤(風味基剤、通常、ショ糖及びアカシア又はトラガカントを使用)粉末、顆粒の形態でもよく、或いは水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液として、或いは水中油型エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして、或いはエリキシル剤若しくはシロップ剤として、或いは香錠(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを使用)として、及び/又は洗口剤等としてのものでもよく、これらはそれぞれ所定量の本発明の化合物を活性成分として含有している。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与されてもよい。
【0295】
本発明の更なる一実施態様では、アフコシル化抗CD20抗体及びCD22抗体−薬物コンジュゲートは二の別々の薬学的組成物に製剤化される。
【0296】
また、活性成分は、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)において、又はマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション法により、又は界面重合(interracial polymerization)により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入されてもよい。これらの技術は、RemingtonのPharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)に開示されている。
【0297】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の成形品の形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸?グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
【0298】
インビボ投与用に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0299】
一実施態様は、がんの治療のための、本明細書に開示されているCD22抗体−薬物コンジュゲートと、Asn297においてオリゴ糖(糖類)の総量の60%以下のフコース量でアフコシル化されているヒト化B−Ly1抗体とを含む組成物である。
【0300】
本発明は、がんの治療を必要とする患者に(i)60%以下のフコース量を有するアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)の効果的な第1量と、(ii)CD22抗体−薬物コンジュゲートの効果的な第2量とを投与することを含む、がんの治療方法を更に提示する。
【0301】
一実施態様において、フコースの量は40%から60%である。
【0302】
前記がんは、好ましくはCD20を発現するがんである。
【0303】
前記CD20を発現するがんは、好ましくはリンパ腫又はリンパ性白血病である。
【0304】
前記アフコシル化抗CD20抗体は、好ましくはII型抗CD20抗体である。
【0305】
前記抗体は、好ましくはヒト化B−Ly1抗体である。前記ヒト化B−Ly1抗体は、好ましくはオビヌツズマブである。
【0306】
前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは、好ましくは抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEである。
【0307】
好ましくは、前記アフコシル化抗CD20抗体はヒト化B−Ly1抗体であり、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEであり、前記がんはCD20を発現するがん、好ましくはリンパ腫又はリンパ性白血病である。
【0308】
本明細書で用いられる場合の用語「患者」は、好ましくは、如何なる目的であろうとアフコシル化抗CD20抗体を用いる治療を必要としているヒト(例えばCD20を発現するがんに罹患している患者)、より好ましくは、がん又は前がん状態若しくは病変を治療するためにそのような治療を必要としているヒトを指す。しかしながら、用語「患者」は非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、及び、とりわけ非ヒト霊長類のことも意味し得る。
【0309】
本発明は、がんの治療での使用のための、60%以下のフコース量を有するアフコシル化抗CD20抗体と、CD22抗体−薬物コンジュゲートとを更に含む。
【0310】
前記アフコシル化抗CD20抗体は、好ましくはヒト化B−Ly1抗体である。
【0311】
好ましくは、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは、本発明の方法の一実施態様では抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEである。
【0312】
好ましくは、前記アフコシル化抗CD20抗体はヒト化B−Ly1抗体であり、前記CD22抗体−薬物コンジュゲートは抗CD22−MC−vc−PAB−MMAEである。
【0313】
好ましくは、前記がんはCD20を発現するがん、好ましくはリンパ腫又はリンパ性白血病である。
【0314】
以下の実施例及び図面は、本発明の理解を助けるために提示されるが、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神から逸脱することなく、記載された手順で改変がなされ得る。
【0315】
実験手順
本試験の主要目的は、GA101(オビヌツズマブ)を用いた単剤療法、リツキシマブを用いた単剤療法、及びリツキシマブとCD22−ADCとの併用療法との比較で、ヒトCD16トランスジェニックSCIDマウスにおける播種WSU−DLCL2 DLBCL異種移植モデルでのCD22抗体−薬物コンジュゲート(CD22−ADC)と併用での、本明細書に記載のGA101の効果を調べることであった。試験デザインを表3に示す。
【0316】
細胞培養及び細胞用途
WSU−DLCLヒトびまん性大B細胞型リンパ腫細胞は元々ウェイン州立大学より入手され、増殖後にRoche Glycartの社内細胞バンクに寄託された。該腫瘍細胞株は、5%CO2の水飽和雰囲気下37℃で、10%のFCS(Gibco)含有DMEM 中で常套的に培養された。継代15を、ヒトCD16トランスジェニックScidマウスでの移植に使用した。生存率96%にて、動物当たり5x106個の細胞が、Aim V細胞培養培地(GIBCO)200μl中で尾静脈にi.v.注射された。CD20及びCD22の発現がFACSにより、WSU−DLCL2リンパ腫細胞上で確認された。本目的のために、0.2Mio細胞が、抗ヒトCD20 PE(BD Bioscience #555623)、抗ヒトCD22−PE(BD Bioscience #337899)又はアイソタイプコントロールマウス IgG1(BD Bioscience #555749)若しくはアイソタイプコントロールマウス IgG2b(BD Bioscience #555743)で3重染色された。平均蛍光発光がFACS CantoII(FACS Divaソフトウェア)でのプレートプロトコールを用いて測定された。
【0317】
動物
実験開始時に7−8週齢の雌のSCID FcgR3トランスジェニックマウス(SCID CD16 tgマウス)60匹(Charles Riverより購入)が、認定ガイドライン(GV−Solas;Felasa;TierschG)に従い、特定の病原体がない条件下にて、12時間明/12時間暗の日周期にて飼養された。実験研究プロトコールは、地域の獣医療施設(免許番号P2008016)により評価、承認された。動物は到着後1週間、新しい環境への馴致及び観察のために飼養された。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。
【0318】
治療
動物は、70%の平均値を有するマウスNK細胞上のCD16発現についてランダム化された。治療は、細胞移植後12日目に開始された。治療抗体GA101及びリツキシマブ及び対応するビヒクルが、12日目、19日目及び26日目に、単剤として30mg/kgの用量で静脈内投与された。CD22−ADCは試験12日目に4mg/kgの用量で一回投与された。抗体希釈液が、使用前にストックから新鮮に調製された。試験は273日目に終了した。
【0319】
モニタリング、終了基準及び部検
動物は、臨床症状及び副作用検出について毎日制御された。動物に対する終了基準は、視認できる病気、すなわち、汚らしい毛皮、曲がった背中、荒い呼吸、運動障害、HLP(後足麻痺)であった。マウスは、終了基準に従って屠殺された。
【0320】
統計
生存データは、ペア毎のウィルコクソン及びペア毎のログランク検定により統計学的に分析された。
【0321】
結果
びまん性大B細胞型リンパ腫細胞株WSU−DLCL2は、ヒトCD16トランスジェニックScidマウスの尾静脈に静脈内接種(細胞5x106個)された。マウスは、NK細胞の同等のCD16発現についてランダム化され、治療は細胞移植後12日目に開始された。CD22抗体−薬物コンジュゲートは4mg/kgの用量で12日目に1回投与され、この場合、GA101、リツキシマブ及び対応するビヒクルは12日目、19日目及び26日目に30mg/kgの用量で静脈内投与された。コントロール群の動物にはPBSが投与された。すべての動物は臨床症状及び副作用検出について毎日制御され、既定の終了基準に従って屠殺された。試験終了は試験273日目であった。生存データは生存曲線(
図1)で表され、ペア毎のウィルコクソン及びペア毎のログランク検定により統計学的に分析された(
図2)。
図2で*印の値は有意差を示している。異なる治療群の生存期間中央値及び全生存の値を表4及び表5に示す。GA101+CD22−ADC、及びリツキシマブ+CD22−ADCの併用については、生存期間中央値に達しなかった。実験が終了した273日目まで生存したすべての動物には、部検中に腫瘍が見られなかった。
【0322】
GA101とリツキシマブは有意差を示さないが、ペア毎のウィルコクソン検定でGA101の群を除いたすべての群がビヒクル群とは有意に異なっている。GA101+CD22−ADC、及びリツキシマブ+CD22−ADCの何れの併用も、ウィルコクソン検定ではそれぞれ単剤療法と比較して有意な生存期間の増加を示している。しかしながら、ログランク検定ではこれらの併用は抗CD22−ADCの単剤療法に対して有意差を示さず、GA101+CD22−ADC及びリツキシマブ+CD22−ADCの併用で動物10匹中6匹に実験終了時に腫瘍が認められなかったためにこれら何れの併用でもすべての群で生存期間中央値が達成されず、また、分析することができなかった。対照的に、単剤としてのGA101、リツキシマブ及び抗CD22−ADCを使用した治療群では、それぞれ僅か1匹、2匹及び3匹のみの動物でしか試験終了時に腫瘍が認められなかった。したがって、GA101とCD22−ADCの併用、及びリツキシマブとCD22−ADCの併用は、全生存期間に関して各単剤療法と比較して向上した有効性を示した。