(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207729
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】物体を持ち上げるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】18
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-520339(P2016-520339)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-522671(P2016-522671A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014060387
(87)【国際公開番号】WO2014202315
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】102013211289.0
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ゲアハート
(72)【発明者】
【氏名】マルティン レナー
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−331834(JP,A)
【文献】
特開2002−035696(JP,A)
【文献】
特開2012−050309(JP,A)
【文献】
特開2000−314402(JP,A)
【文献】
特開昭63−314376(JP,A)
【文献】
米国特許第05055733(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/00− 2/18
H02N11/00
B06B 1/18
F04B 9/00
F04B43/04
G05D 3/00
H01L41/08
F15B15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を垂直方向に移動させるための装置であって、該装置は、
作動時に複数の方向に伸びると同時に作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータ(1)と、
これらの圧電アクチュエータ(1)の押圧力を、物体を重力の方向とは逆の方向に移動させる1つの垂直方向の押圧力に変換し且つ所定の伝達比で伝達する、液圧式の伝達装置(3)と、
を有し、
前記液圧式の伝達装置(3)は、各前記圧電アクチュエータ(1)の作用側に、それぞれ可動の圧電アクチュエータ用ベローズ(5)を有しており、全ての圧電アクチュエータ用ベローズ(5)は、共通の液体(7)を内蔵しており、該液体(7)は導管系(9)を介して、前記垂直方向の押圧力を生ぜしめる、垂直方向に可動の中央ベローズ(11)内まで搬送可能であることを特徴とする、物体を垂直方向に移動させるための装置。
【請求項2】
移動されるべき物体と、前記液圧式の伝達装置(3)との間で、ばねシステムのばね力が、前記液圧式の伝達装置(3)の垂直方向の押圧力とは逆の方向に作用している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記導管系(9)は、前記圧電アクチュエータ用ベローズ(5)から延びる導管部分を、前記中央ベローズ(11)に通じる1つの共通の垂直方向導管(13)に接続している、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記圧電アクチュエータ(1)と、前記圧電アクチュエータ用ベローズ(5)と、前記導管系(9)と、前記中央ベローズ(11)とは、前記共通の垂直方向導管(13)の垂直方向の主対称軸線に対して対称的に形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記複数の圧電アクチュエータ(1)がほぼ、2つの水平面に沿って互いに整合して重なり合うように延在しており、特に4つの圧電アクチュエータが形成されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
それぞれ付属の前記圧電アクチュエータ用ベローズ(5)を備えた前記複数の圧電アクチュエータ(1)は、外側の保持スリーブ(15)と内側の保持スリーブ(17)との間に固定されており、前記外側の保持スリーブ(15)と前記内側の保持スリーブ(17)とは、前記垂直方向の主対称軸線に対して回転対称であり、前記圧電アクチュエータ用ベローズ(5)から延びる前記導管部分は、水平方向に延在していると共に、前記内側の保持スリーブ(17)を貫通して延びている、請求項4又は5記載の装置。
【請求項7】
前記ばねシステムは、実質的に水平方向に延在する第1のばね部材(19)を有しており、該第1のばね部材(19)は、前記内側の保持スリーブ(17)の平らな上端部に支持されており、前記内側の保持スリーブ(17)は、前記外側の保持スリーブ(15)よりも高くなっている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
移動されるべき物体は、前記垂直方向の主対称軸線に対して回転対称的な主保持スリーブ(23)の平らな上端部に支持されており、前記主保持スリーブ(23)は、移動されるべき物体の下側に前記第1のばね部材(19)を有しており且つ該第1のばね部材(19)に固定されている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記ばねシステムは、実質的に水平方向に延在する第2のばね部材(25)を有しており、該第2のばね部材(25)は、前記圧電アクチュエータ(1)の下方で前記内側の保持スリーブ(17)によって支持されており、且つ前記主保持スリーブ(23)によって包囲されていると共に、該主保持スリーブ(23)に固定されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2のばね部材(19,25)は、前記垂直方向の主対称軸線に対して回転対称であり、特にばねリング、特にクロムばねリング又はダイヤフラムばねである、請求項7又は9記載の装置。
【請求項11】
前記中央ベローズ(11)は、前記垂直方向の押圧力を、前記中央ベローズ(11)と前記第1のばね部材(19)との間に配置された行程伝達部材を介して、特に前記垂直方向の主対称軸線に対して対称的なU字形部材(27)を介して、前記第1のばね部材(19)に伝達する、請求項7又は10記載の装置。
【請求項12】
移動されるべき物体は、チャックプレート又は支持体板(21)である、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記複数の圧電アクチュエータ(1)はそれぞれ制御装置によって、作動に関して個々に、且つ組み合わされて制御可能である、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の装置を用いて、物体を垂直方向に移動させるための方法であって、
複数の方向に伸びると同時に作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータ(1)を作動させるステップと、
液圧式の伝達装置(3)を用いて、各前記圧電アクチュエータ(1)の押圧力を1つの垂直方向の押圧力に変換して伝達することにより、重力の方向とは逆の方向に物体を移動させるステップと、
を有し、
前記液圧式の伝達装置(3)は、各前記圧電アクチュエータ(1)の作用側に、それぞれ可動の圧電アクチュエータ用ベローズ(5)を有しており、全ての圧電アクチュエータ用ベローズ(5)は、共通の液体(7)を内蔵しており、該液体(7)は導管系(9)を介して、前記垂直方向の押圧力を生ぜしめる、垂直方向に可動の中央ベローズ(11)内まで搬送されることを特徴とする方法。
【請求項15】
移動されるべき物体と、前記液圧式の伝達装置(3)との間で、ばねシステムのばね力を、前記液圧式の伝達装置(3)の前記垂直方向の押圧力とは逆の方向に作用させる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記中央ベローズ(11)は、前記垂直方向の押圧力を、前記中央ベローズ(11)と第1のばね部材(19)との間に配置された行程伝達部材を介して、特に垂直方向の主対称軸線に対して対称的なU字形部材(27)を介して、前記第1のばね部材(19)に伝達する、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
前記複数の圧電アクチュエータ(1)はそれぞれ制御装置によって、作動に関して個々に、且つ組み合わされて制御される、請求項14から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
100〜1000gの質量を有する物体を、重力の方向とは逆の垂直方向に、0.5〜5mmの行程で1〜10ms以内に、10μm未満の位置決め精度で移動させるための、請求項10から13までのいずれか1項記載の装置又は請求項14から17までのいずれか1項記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を垂直方向に移動させるための装置及び方法に関する。
【0002】
例えばチャックの荷重の持ち上げや比較的正確な位置決めには、荷重又は物体を迅速且つ正確に位置決めすべき、複数の駆動装置が使用される。
【0003】
従来はスピンドル駆動装置と、特に比較的小さな荷重に関しては枢着伝達手段を備えた圧電駆動装置とが使用されていた。位置決め運動用には、国内の従来技術として、液圧式の行程伝達手段を備えた最初の圧電駆動装置が知られている。国内では既に、多段型の液圧式伝達手段が使用されており、この場合、物体を持ち上げるためには複数の駆動装置が並列接続され、これにより、物体の質量が相応して迅速に位置決め可能になっている。但しこの国内の従来技術は、個々の駆動装置を互いに正確に調整せねばならない、という欠点を有している。別の欠点は、正確に調整した場合でも、並列接続された複数の圧電−液圧システムの均一な行程は、製造誤差に基づき実現が極めて困難でしかない、という点にある。
【0004】
本発明の課題は、物体を小さな行程で迅速且つ正確に持ち上げることのできる、物体を垂直方向、特に重力の方向とは逆の方向に移動させるための装置及び方法を提供することである。例えば50g〜1000gの範囲の質量を、大きな位置決め精度でもってmsの範囲内で持ち上げることができるようにしたい。例えば100g〜1000gの範囲の質量を有する物体を、約5msで約0.5〜5mmだけ、10μmよりも良好な位置決め精度でもって持ち上げることができるようにしたい。特に、装置の調整が簡単で、物体の傾動の可能性が効果的に低下されていることが望ましい。
【0005】
この課題は、主請求項に記載の装置及び副請求項に記載の方法により解決される。
【0006】
第1の態様では、物体を垂直方向に移動させるための装置が請求され、該装置は、作動時に複数の方向に伸びると同時に作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータと、これらの圧電アクチュエータの押圧力を、物体を重力の方向とは逆の方向に移動させる1つの垂直方向の押圧力に変換し且つ所定の伝達比で伝達する、液圧式の伝達装置とを有している。
【0007】
伝達比は、複数の押圧力を1つの垂直方向の押圧力に変換する比率を表すものである。この比率は、例えば出口横断面積を入口横断面積で割った商から得られる。
【0008】
第2の態様による、物体を垂直方向に移動させるための方法は、複数の方向に伸びると同時に作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータを作動させるステップと、液圧式の伝達装置を用いて、各圧電アクチュエータの押圧力を1つの垂直方向の押圧力に変換して伝達することにより、重力の方向とは逆の方向に物体を移動させるステップと、を有している。
【0009】
複数の圧電アクチュエータは、少なくとも1つの単段型の液圧式行程伝達手段と共に使用される。本発明の方法により、複数の圧電アクチュエータの行程が、1つの共通の液圧系を介して物体に伝達され、これにより物体を持ち上げることができるようになっている。本発明では、互いに任意に組み合わせ可能であり且つ一緒に1つの液圧式の行程伝達手段を使用する、複数の圧電アクチュエータが使用される。
【0010】
別の有利な構成は、従属請求項に関連して請求される。
【0011】
1つの有利な構成では、移動されるべき物体と、液圧式の伝達装置との間で、ばねシステムのばね力が、液圧式の伝達装置の垂直方向の押圧力とは逆の方向に作用していてよい。これに相応して、複数の圧電アクチュエータの行程は、1つの共通の液圧系を介してばねシステムに伝達され、これにより物体が持ち上げられるようになっている。
【0012】
別の有利な構成では、液圧式の伝達装置は、各圧電アクチュエータの作用側に、それぞれ可動の圧電アクチュエータ用ベローズを有していてよく、この場合、全ての圧電アクチュエータ用ベローズは、共通の液体を内蔵しており、この液体は導管系を介して、垂直方向の押圧力を生ぜしめる、垂直方向に可動の中央ベローズ内まで搬送可能である。
【0013】
更に別の有利な構成では、導管系は、圧電アクチュエータ用ベローズから延びる導管部分を、中央ベローズに通じる1つの共通の垂直方向導管に接続していてよい。
【0014】
更に別の有利な構成では、圧電アクチュエータと、圧電アクチュエータ用ベローズと、導管系と、中央ベローズとは、共通の垂直方向導管の垂直方向の主対称軸線に対して対称的に形成されていてよい。
【0015】
更に別の有利な構成では、複数の圧電アクチュエータがほぼ、2つの水平面に沿って互いに整合して重なり合うように延在しており、特に4つの圧電アクチュエータが形成されていてよい。
【0016】
更に別の有利な構成では、それぞれ付属の圧電アクチュエータ用ベローズを備えた複数の圧電アクチュエータが、外側の保持スリーブと内側の保持スリーブとの間に固定されていてよく、外側の保持スリーブと内側の保持スリーブとは、垂直方向の主対称軸線に対して回転対称であり、この場合、圧電アクチュエータ用ベローズから延びる導管部分は、水平方向に延在していると共に、内側の保持スリーブを貫通して延びている。
【0017】
更に別の有利な構成では、ばねシステムは、ほぼ水平方向に延在する第1のばね部材を有していてよく、第1のばね部材は、内側の保持スリーブの平らな上端部に支持されており、この場合、内側の保持スリーブは、外側の保持スリーブよりも高くなっている。
【0018】
更に別の有利な構成では、移動されるべき物体は、垂直方向の主対称軸線に対して回転対称的な主保持スリーブの平らな上端部に支持されていてよく、主保持スリーブは、移動されるべき物体の下側に第1のばね部材を有しており且つこの第1のばね部材に固定されている。
【0019】
更に別の有利な構成では、ばねシステムは、ほぼ水平方向に延在している第2のばね部材を有していてよく、第2のばね部材は、圧電アクチュエータの下方で内側の保持スリーブによって支持されており、且つ主保持スリーブによって包囲されていると共に、主保持スリーブに固定されている。
【0020】
更に別の有利な構成では、第1及び第2のばね部材は、垂直方向の主対称軸線に対して回転対称であってよく、特にばねリング、特にクロムばねリング又はダイヤフラムばねであってよい。
【0021】
更に別の有利な構成では、中央ベローズは、垂直方向の押圧力を、中央ベローズと第1のばね部材との間に配置された行程伝達部材を介して、特に垂直方向の主対称軸線に対して対称的なU字形部材を介して、第1のばね部材に伝達してよい。
【0022】
更に別の有利な構成では、移動されるべき物体は、チャックプレート又は支持体板であってよい。
【0023】
更に別の有利な構成では、圧電アクチュエータはそれぞれ制御装置によって、作動に関して個々に、且つ任意に組合せ可能に制御可能である。
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による方法の実施形態を示す図である。
【0026】
図1には、本発明による装置の第1の実施形態が示されている。作動時に水平方向に伸びると同時に、作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータ1が図示されている。本実施形態では、これらの圧電アクチュエータ1は封入されているか、若しくはケーシング2内に配置されている。液圧式の伝達装置3が、各圧電アクチュエータ1の押圧力を、物体を重力の方向とは逆の方向に移動させる1つの垂直方向の押圧力に変換する。液圧式の伝達装置3は、各圧電アクチュエータ1の作用側に、それぞれ可動の圧電アクチュエータ用ベローズ5を有しており、この場合、全ての圧電アクチュエータ用ベローズ5は、共通の液体7を内蔵しており、この液体7を、作動時に導管系9を介して、垂直方向の押圧力を生ぜしめる、垂直方向に可動の中央ベローズ11内まで搬送する。導管系9は、圧電アクチュエータ用ベローズ5から水平方向に延びる導管部分を、中央ベローズ11内へ延びている1つの共通の垂直方向導管13に接続している。
【0027】
圧電アクチュエータ1と、圧電アクチュエータ用ベローズ5と、導管系9と、中央ベローズ11とは、共通の垂直方向導管13の垂直方向の主対称軸線に対して、それぞれ対称的に形成されている。
図1に示す実施形態では、複数の圧電アクチュエータ1がほぼ、2つの水平面に沿って互いに整合して重なり合うように延在している。例えば、4つの圧電アクチュエータ1が設けられていてよい。
図1は、液圧式の伝達手段を備えた圧電アクチュエータシステムを示すものである。
【0028】
図2には、本発明による装置の第2の実施形態が示されている。この場合、
図1に示した構成部材は全て、
図2に示す図面に含まれている。同一の符号は、構造が同じ構成に付されている。
図2では、それぞれ付属の圧電アクチュエータ用ベローズ5を備えた複数の圧電アクチュエータ1が、外側の保持スリーブ15と内側の保持スリーブ17との間に固定されており、外側の保持スリーブ15と内側の保持スリーブ17とは、共通の垂直方向導管13の垂直方向の主対称軸線に対して回転対称である。圧電アクチュエータ用ベローズ5から延びる導管部分は、水平方向に延在していると共に、内側の保持スリーブ17内に侵入している。ばねシステムは、ほぼ水平方向に延在する第1のばね部材19を有しており、第1のばね部材19は、内側の保持スリーブ17の上端部に支持されており、この場合、内側の保持スリーブ17は、外側の保持スリーブ15よりも高くなっている。移動されるべき物体は、本実施形態では支持板21であり、支持板21は、垂直方向の主対称軸線に対して回転対称的な主保持スリーブ23の上端部に支持されており、主保持スリーブ23は、移動されるべき物体の下側に第1のばね部材19を有しており且つこの第1のばね部材19に固定されている。付加的にばねシステムは、ほぼ水平方向に延在している第2のばね部材25を有しており、第2のばね部材25は、圧電アクチュエータ1の下方で内側の保持スリーブ17によって支持されており、且つ主保持スリーブ23によって包囲されていると共に、主保持スリーブ23に固定されている。第1及び第2のばね部材19,25は、本実施形態ではばねリングとして形成されている。択一的に、これらのばね部材19,25はダイヤフラムばねとして形成されていてもよい。中央ベローズ11は、垂直方向の押圧力を、中央ベローズ11と第1のばね部材19との間に配置された、垂直方向の主対称軸線に対して対称的なU字形部材27を介して、第1のばね部材19に伝達する。圧電アクチュエータ1はそれぞれ制御装置によって、作動に関して個々に、且つ任意に組合せ可能に制御可能である。支持板21は択一的に、チャックプレートであってもよい。第1のばね部材19のばねリングと、第2のばね部材25のばねリングとは、圧電アクチュエータの作動時に、重力の方向とは逆の方向に案内された変位を生ぜしめる。U字形部材27は、中央ベローズ11と、第1のばね部材19のばねリングとの間での一様な行程伝達を可能にする。液体7で満たされた中央ベローズ11は、液圧式の伝達体として作用することができる。水平方向の各導管と、垂直方向導管13とは、圧電アクチュエータ用ベローズ5と中央ベローズ11との間での液体7の搬送を可能にする。圧電アクチュエータ1は、それぞれ封入されていてよい。保持スリーブもやはり、それぞれ保持リングとして形成されていてよい。内側の保持スリーブ17により、内側のばね部材支持部が提供され得る。主保持スリーブ23は、第1のばね部材19、第2のばね部材25及び支持板21用のホルダとして使用され得る。
図2は、例えばチャックプレート用の垂直方向駆動装置を示すものである。チャックプレートは、例えば電子構成部品や電子機器の製造に際して使用されることがある。
【0029】
図3には、本発明による方法の実施形態が示されている。第1のステップS1では、複数の方向に延びると同時に、作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータの作動が行われる。第2のステップS2では、液圧式の伝達装置を用いて、圧電アクチュエータの押圧力を垂直方向の押圧力に変換して伝達することによる、重力の方向とは逆の方向での物体の移動が行われる。案内された変位を生ぜしめるためには、液圧式の伝達装置の垂直方向の押圧力が、ばねシステムに抗して作用する。つまり、垂直方向に持ち上げる押圧力が、反対方向に作用するばねシステムのばね力よりも大きくなってから、物体の迅速な持ち上げが行われる。相応する限界値を超過すると、物体は大きな速度で持ち上げられる。
【0030】
本発明は、作動時に所定の方向に伸びると同時に作用側に押圧力を生ぜしめる複数の圧電アクチュエータ1と、これらの圧電アクチュエータの押圧力を、物体を重力の方向とは逆の方向に移動させる1つの垂直方向の押圧力に変換し且つ所定の伝達比で伝達する液圧式の伝達装置3とを有する、物体を垂直方向に移動させるための装置及び方法に関する。物体の持ち上げは、垂直方向の押圧力が、反対方向に作用するばねシステムのばね力を上回った後に行われる。