(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207747
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】エアバッグおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/235 20060101AFI20170925BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20170925BHJP
D03D 1/02 20060101ALI20170925BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B60R21/235
B60R21/232
D03D1/02
D03D11/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-540807(P2016-540807)
(86)(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公表番号】特表2016-530160(P2016-530160A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】KR2014008268
(87)【国際公開番号】WO2015034261
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年3月2日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0105700
(32)【優先日】2013年9月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン グン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】クヮク,ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン モク
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−522985(JP,A)
【文献】
特開2012−214114(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/134228(WO,A1)
【文献】
特開2010−241417(JP,A)
【文献】
特開2006−341701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
D03D 1/02
D03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体による膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含み、
前記膨張部、前記非膨張部、及び前記接結部は、一体型製織方式(OPW、One Piece Woven)の二重織物により形成されており、この二重織物は、分離された2層の織物層(織地)と、前記の2層の織物層が製織の際に部分的に接結されてなる接結箇所とを含み、この接結箇所は前記接結部を含み、
前記二重織物は1×1の平織からなり、前記接結部は2×2のバスケット織、3×3バスケット織、またはこれを含む混合織からなるものであり、
車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を含み、
前記超音波融着部は、前記接結部との最短距離が0.1乃至30cmであり、
前記超音波融着部は、幅が0.1乃至2cmおよび長さが1乃至30cmであり、
前記超音波融着部は、車両の衝突時における高圧のガスの流れに垂直な方向に沿って延びているエアバッグ。
【請求項2】
気体による膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含み、
前記膨張部、前記非膨張部、及び前記接結部は、一体型製織方式(OPW、One Piece Woven)の二重織物により形成されており、この二重織物は、分離された2層の織物層(織地)と、前記の2層の織物層が製織の際に部分的に接結されてなる接結箇所とを含み、この接結箇所は前記接結部を含み、
前記二重織物は1×1の平織からなり、前記接結部は2×2のバスケット織、3×3バスケット織、またはこれを含む混合織からなるものであり、
車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を含み、
前記超音波融着部は、前記接結部との最短距離が0.1乃至30cmであり、
前記超音波融着部は、幅が0.1乃至2cmおよび長さが1乃至30cmであり、
前記接結部は、車両の衝突時における高圧のガスの流れ方向と交差する方向に延びているエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグは、ナイロン系原反、ポリエステル系原反、ポリオレフィン系原反、およびアラミド系原反からなる群より選択された1種以上の原反を使用するものである、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記エアバッグは、製織密度80本/inch以下である原反を使用するものである、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記エアバッグは、総纎度210乃至840デニールの原糸を含む原反を使用するものである、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記接結部は、前記超音波融着部に最も近接した箇所に、幅広のヘッド部を有する、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記超音波融着部は、実線型、点線型、曲線型、ジグザグ型、矢尻型、または多線型の形態を有するものである、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項8】
前記超音波融着部は、米国材料試験協会規格ASTM D 1683の方法で測定した接着強度が5乃至50kgf/inchである、請求項1または2に記載のエアバッグ。
【請求項9】
気体により膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含む二重織物を製織する段階と、
前記二重織物で車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を形成する段階と、
を含み、
前記二重織物を製織する段階では、一体型製織方式(OPW、One Piece Woven)で、分離された2層の織物層(織地)を同時に製織し、この際に、前記の2層の織物層が部分的に接結されている接結箇所を形成することで前記二重織物を製織し、この接結箇所に前記接結部が含まれ、
前記二重織物は1×1の平織で製織し、前記接結部は2×2のバスケット織、3×3バスケット織、またはこれを含む混合織で製織し、
前記超音波融着部を前記接結部との最短距離が0.1乃至30cmになるように配置し、
前記超音波融着部は、車両の衝突時における高圧のガスの流れに垂直な方向に沿って延びているように配置し、
前記超音波融着部は、幅が0.1乃至2cmおよび長さが1乃至30cmになるエアバッグの製造方法。
【請求項10】
気体により膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含む二重織物を製織する段階と、
前記二重織物で車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を形成する段階と、
を含み、
前記二重織物を製織する段階では、一体型製織方式(OPW、One Piece Woven)で、分離された2層の織物層(織地)を同時に製織し、この際に、前記の2層の織物層が部分的に接結されている接結箇所を形成することで前記二重織物を製織し、この接結箇所に前記接結部が含まれ、
前記二重織物は1×1の平織で製織し、前記接結部は2×2のバスケット織、3×3バスケット織、またはこれを含む混合織で製織し、
前記超音波融着部を前記接結部との最短距離が0.1乃至30cmになるように配置し、
前記接結部は、車両の衝突時における高圧のガスの流れ方向と交差する方向に延びているように配置し、
前記超音波融着部は、幅が0.1乃至2cmおよび長さが1乃至30cmになるエアバッグの製造方法。
【請求項11】
前記超音波融着部形成段階は、周波数15乃至25kHzの超音波を用いて行う、請求項9または10に記載のエアバッグの製造方法。
【請求項12】
前記超音波融着部形成段階は、プレス加圧力30乃至60psiの条件下で行う、請求項9または10に記載のエアバッグの製造方法。
【請求項13】
前記超音波融着部形成段階は、融着時間0.25乃至6秒の条件下で行う、請求項9または10に記載のエアバッグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の転覆時に、自動車の側面のガラス窓や構造物によって搭乗者が負傷することを防止するエアバッグおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエアバッグ(airbag)は、走行中の車両が約40km/h以上の速度で正面または側面から衝突した時、車両に加えられる衝突の衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させてエアバッグクッション内部にガスを供給して膨張させることによって、運転者および乗客を保護する装置をいう。
【0003】
最近、自動車の機能性および便宜性と共に搭乗客の安全に対する関心が高まっていることから、自動車の事故時に搭乗客を安全に保護することができる、安全と関連した装置の重要性が徐々に増大していく傾向にある。このような安全装置のうち、特にエアバッグシステムは、シートベルトと共に使用されて自動車の正面衝突や側面衝突時に搭乗客が傷害を受けることを防止する機能を果たしている。一方、前記エアバッグシステムのうち、特に自動車の側面衝突と関連したエアバッグシステムは、通常、搭乗客の頭部の保護のためのカーテンエアバッグ(Curtain Air−Bag)と、搭乗客の横腹部の保護のためのサイドエアバッグ(Side Air−Bag)に区分して使用されている。ここで、前記カーテンエアバッグは、通常、車室内の側部上端に沿って設置され、自動車の衝突時にカーテン式に展開される構造を取っており、前記サイドエアバッグは、ドアやシートの側面に装着され、搭乗客の横腹部がドアをはじめとする車体に直接ぶつけられて傷害を受けることを防止するようにしている。
【0004】
特に、サイドカーテン型エアバッグは、自動車の転覆時に搭乗者が自動車の側面のガラス窓や構造物と衝突することを防止する目的で、自動車の側面のガラス窓または側面の構造物に設置するエアバッグをいう。自動車の正面に設置される通常のエアバッグは、自動車の衝突時に爆発性ガスにより迅速に膨張するとともに、この後、短時間内にエアバッグ内のガスが排出されてこそ、エアバッグにより加えられる搭乗者の2次衝撃を防止することができ、運転者の視野も確保することができたのである。そのために、自動車の正面に設置される従来のエアバッグの大部分には、空気を排出する孔が設置されている。しかし、サイドカーテン型のエアバッグは、自動車が転覆または転がる場合、自動車の側面のガラス窓または側面構造物から乗客の頭を保護する装置であるため、自動車が転覆して転がる少なくとも6秒の間にも、サイドカーテン型のエアバッグが引き続き膨張していて乗客の頭部付近を安全に支持しなければならない。そのためには、エアバッグの縫製部位および原反から、ガスが必要以上に漏れてはならない。したがって、一般にサイドカーテン型のエアバッグには空気排出孔を形成しない。
【0005】
したがって、自動車転覆などの事故の際、搭乗者を安全に保護することができる程度に、優れた内圧維持性能および優れたエアバッグ展開性能が発揮されるようにすべく、すなわち、インフレータガスがエアバッグクッションに効果的に伝達されるようにすべく、優れた機械的物性および展開性能を有するエアバッグの開発に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車両の衝突時にインフレータから噴出する高温高圧ガスによりエアバッグクッションの破裂を防止し、優れた内圧維持性能および展開性能を有するエアバッグを提供しようとするものである。
【0007】
本発明はまた、前記エアバッグの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、気体による膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含み、車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着(溶着welded)部を含むエアバッグを提供する。
【0009】
本発明はまた、気体による膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および、前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含む二重織物を製織する段階と、前記二重織物にて、車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を形成する段階と、を含むエアバッグの製造方法を提供する。
【0010】
以下、発明の具体的な実施形態によりエアバッグおよびその製造方法についてより詳しく説明する。ただし、これは発明の一例として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0011】
なお、本明細書全体において、特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なしに含むことを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くものと解釈されてはならない。
【0012】
本発明者らの実験結果、瞬間の高温高圧のインフレータ展開状況にて強い圧力に対する十分な耐久性を保有できるように、エアバッグ製造時に、破裂が発生しやすい接合部の付近に超音波融着部を形成することにより、優れた耐久性および機械的物性を示し、エアバッグ作動時に優れた展開性能および向上した安定性を確保できることが明らかになった。
【0013】
そこで、発明の一実施形態によると、本発明は、所定の特性を有する超音波融着部を含むエアバッグを提供する。このようなエアバッグは、気体による膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含み、車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を含む。
【0014】
特に、本発明のエアバッグは、接合部付近に超音波融着部を形成することによって、優れた耐久性および機械的物性を示し、エアバッグ作動時に優れた展開性能および向上した安定性を確保することを特徴とする。
【0015】
前記超音波融着部は、前記接結部との最短距離が0.1乃至30cm、好ましくは0.5乃至25cm、より好ましくは1乃至20cmであってもよい。前記最短距離は、融着部形成による接結部の損傷を防止する観点から、0.1cm以上であってもよく、エアバッグ展開時に接結部の効果的な保護機能を向上させる側面から、30cm以下であってもよい。
【0016】
また、前記超音波融着部の幅は、0.1乃至2cm、好ましくは0.15乃至1cm、より好ましくは0.2乃至0.5cmであってもよい。前記超音波融着部の長さは、1乃至30cm、好ましくは2乃至20cm、より好ましくは3乃至15cmであってもよい。前記超音波融着部は、車両の衝突時、インフレータから噴出する高温高圧のガスから接合部の保護性能を向上させる観点から、幅と長さが、それぞれ0.2cm以上および1cm以上に形成されてもよい。また、前記超音波融着部の幅と長さは、自動車の転覆や衝突時に、エアバッグの効果的な展開段階における脱着(剥離)の際に原反の損傷を防止する観点から、それぞれ0.5cm以下および30cm以下であってもよい。
【0017】
本発明のエアバッグにおいて前記超音波融着部は、実線型、点線型、曲線型、ジグザグ型、矢尻型、多線型(multilinear)などの形態を有することができ、エアバッグの接合部(seam)の形状により、多様な形態に組み合わせて形成してもよい。一方、前記超音波融着部は、接合部の保護性能を向上させる観点から、曲線型、ジグザグ型、矢尻型、多線型が好ましく、脱着時における原反の損傷を防止する観点からは実線型、点線型などが好ましい。
【0018】
前記超音波融着部は、米国材料試験協会規格ASTM D 1683の方法で測定した接着強度が5乃至50kgf/inch、好ましくは10乃至40kgf/inch、より好ましくは15乃至30kgf/inchであってもよい。前記超音波融着部の接着強度は、接合部保護効果を増進させる観点から5kgf/inch以上であってもよく、脱着時に原反損傷を防止する観点から50kgf/inch以下であってもよい。
【0019】
一方、本発明にて、接合部とは、自動車用エアバッグにおいて気体により膨張性を有する膨張部と前記膨張部を支持する非膨張部との間で境界をなす部分をいうのであり、接合部はエアバッグ展開時に、膨らみを発生させる気体について膨張部から抜け出ることができないようにし、膨張する気体の圧力に耐える役割を果たす。
【0020】
まず、本発明のエアバッグ用原反(布地)には、通常、製織を通じて形成された織物が主に使用される。前記織物としては、ナイロン系原反、ポリエステル系原反、ポリフェニレンスルフィド(
PPS;polyphenylene sulfide)系原反、およびアラミド系原反からなる群より選択された1種以上の原反を含む織物を使用することができる。本発明で使用される織物の種類もそれほど限定されないが、エアバッグ用原反として要求される項目である低通気性、高強力、高耐熱性、フォールディング性(折り畳み性)および高温−高湿で長時間放置される際の優れた引張強力維持率と耐熱老化性、そしてエアバッグ展開時に2次被害を防止する優れた自己消火性と優れたエネルギー吸収性などを考慮した時、ナイロン66の原反を使用することが好ましい。また、前記原反には、必要に応じて、耐熱向上剤、酸化防止剤、難燃剤、および帯電防止剤などを含むこともできる。
【0021】
前記エアバッグ用原反に使用される原糸としては、総纎度が210乃至840デニール、好ましくは315乃至525デニールであり、フィラメント数は60乃至200、好ましくは60乃至150であり、引張強度は7.0乃至10.0g/d、好ましくは8.2乃至9.5g/dであり、熱収縮率は6〜7%の水準であるものを使用することができるが、特にこれに限定されるのではない。
【0022】
本発明のエアバッグ用原反は、通常の方法で緯糸および経糸のビーミング(beaming)、製織、精練、およびテンタリング工程を経て製造されたものを使用することができる。特に、前記原反は、一体型製織方式(OPW、One Piece Woven)で、分離された2層の織物層(織地)を同時に製織し、前記の2層の織物層が接結点により部分的に接結されている二重織物を使用することができる。このような二重織物、すなわち、空気などの気体による膨張性がある織物は、分離された2層の織物とこの2層の織物間の接結点を有している。接結点により閉鎖された領域を有する織物は各単一層が空気などにより急激に膨張する時、2層を堅固に結束させる役割を果たし、2層が連結される部分の気体の流出現象があってはならない。そのために、二重織物で接結部分の組織として3×3バスケット織(斜子織)や2×2バスケット織が主に使用されてもよい。また、前記接結部を境界とする非膨張部は、前記膨張部を支持するためのものであり、接結点を中心として分離された2層の二重織物部の形態が維持されるのでも、平織形態の組織などが使用されるのでもよい。
【0023】
前記エアバッグ用原反は、外部の引張力に対して伸張の抵抗力が高い平織地を織物層として使用し、同時に製織される、膨張部の上面および下面の織物層をそれぞれ異なる組織で製織することによって、このような問題点を解決することができる。好ましくは、前記膨張部で同時に製織された上面および下面の織物層のカバーファクター値が、下記計算式1により1,900以上である高密度製織により、空気袋の気密性をさらに良好にすることができる。前記でカバーファクターが1,900未満であるときは、空気膨張時に、空気が外部に容易に排出されるという問題が発生することもある。
[計算式1]
【0024】
特に、前記エアバッグ用原反の製織密度は、つまり、経糸密度および緯糸密度は、それぞれ、80本/インチ以下、または40乃至80本/インチ(th/inch)、好ましくは75本/インチ以下、または45乃至75本/インチ、より好ましくは72本/インチ以下、または49乃至72本インチであってもよい。前記膨張部の織物層の製織密度は、製織生産効率の観点から80本/インチ以下であってもよい。また、経糸繊度および緯糸纎度は、それぞれ210乃至840デニール、好ましくは315乃至525デニールであってもよい。
【0025】
一方、本発明の他の実施形態によると、前述のようなエアバッグを製造する方法が提供される。前記エアバッグは、気体により膨張性を有する膨張部、前記膨張部を支持する非膨張部、および前記膨張部と非膨張部の境界をなす接結部を含む二重織物を製織する段階と、前記二重織物で車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と前記接結部の間に位置する超音波融着部を形成する段階と、を含む。
【0026】
本発明のエアバッグを製造するに際し、前記超音波融着部の形成段階は、周波数15乃至25kHzの超音波を用いて行うことができる。前記超音波の周波数は、好ましくは18乃至23kHz、より好ましくは19乃至21kHzであってもよい。前記超音波の周波数は、エアバッグ用原反で超音波融着部の接着強度を向上させる観点から15kHz以上であってもよく、脱着の際に原反の損傷を防止する観点から25kHz以下であってもよい。
【0027】
また、前記超音波融着部の形成段階は、プレス加圧力30乃至60psi、好ましくは35乃至55psi、より好ましくは40乃至50psiの条件下で行うことができる。前記超音波プレスの圧力は、前記融着部が十分な接着強度を確保する観点から30psi以上であってもよく、脱着の際に原反の損傷を防止する観点から60psi以下であってもよい。
【0028】
前記超音波融着部の形成段階は、融着時間0.25乃至6秒(sec)、好ましくは0.5乃至5秒、より好ましくは0.75乃至4秒にて行うことができる。前記超音波融着の時間は、前記融着部が十分な接着強度を向上させる観点から0.25秒以上にて行うことができ、脱着の際に原反の損傷を防止する観点から6秒以下にて行うことができる。
【0029】
また、本発明のまた他の実施形態により、前述のようなエアバッグを含むエアバッグシステムが提供される。前記エアバッグシステムは、関連業者によく知られた通常の装置を備えることができる。前記カーテンエアバッグ(Curtain Airbag)は自動車の側面衝突や転覆事故の際に乗客を保護することとなる。
【0030】
本発明において前述の内容以外の事項は、必要に応じて加減が可能であるため、本発明では特に限定しない。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、一体型製織方式で同時に製織される2つの分離された織物層における特定位置に超音波融着部を形成することによって、エアバッグ展開時に容易に破裂が発生する接合部についての耐久性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態により超音波融着を適用したエアバッグクッションを示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエアバッグ内圧の測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0034】
実施例1〜4
下記表1に示されている条件下で、ジャカード織機を用いて一体型製織方式(OPW )でサイドカーテン型のエアバッグを製造した。
【0035】
特に、
図1に示したような実線型の形態にて、車両の衝突時に高圧のガスを噴出するインフレータの末端部と、前記接結部との間に位置する超音波融着部を形成した。
【0036】
比較例1
下記表1に示したように、別途の超音波融着部を形成しないことを除いては、実施例1と同様な方法で、ジャカード織機を用いて一体型製織方式(OPW)でサイドカーテン型のエアバッグを製造した。
【0037】
比較例2
下記表1に示したように、原糸纎度を異にし、別途の超音波融着部を形成しないことを除いては、実施例3と同様な方法でジャカード織機を用いて一体型製織方式(OPW)でサイドカーテン型のエアバッグを製造した。
【0038】
実施例1〜4および比較例1〜2により製造されたエアバッグに対して次のような方法で物性評価を測定し、測定結果を下記表1に示した。
【0039】
1)内圧評価
前記実施例1〜4および比較例1〜2のエアバッグ用原反を使用してサイドカーテン型で車両用エアバッグを製造し、別途のエイジングなしに、常温条件下でエアバッグ内圧維持性能を次のような方法で測定した。
【0040】
まず、
図2に示したように、空気(Air)として16barの窒素圧縮ガスを瞬間的に注入することでエアバッグを展開させた後に、エアバッグ内圧の変化を時間別に観察して、瞬間圧力注入時の最大圧力および6秒経過後のエアバッグ内圧をそれぞれ測定した。
【0041】
2)融着有無評価
融着部位を直接引っ張ってみて融着の有無を評価し、接合部であるシーム(Seam)と同一に接合されている場合、融着が発生したと表示し(「有」と表示)、接合されずに分離される場合、融着が発生しなかったと表示した(「無」と表示)。
【0042】
3)脱着時の損傷有無の評価
融着部位を視覚的に観察して脱着時の損傷有無を評価し、脱着部位に損傷によるホールが発生した場合、脱着時に損傷が発生したと表示し(「有」と表示)、ホールがない場合、脱着時に損傷が発生しなかったと表示した(「無」と表示)。
【0043】
4)クッション接合部(seam)の損傷有無の評価
エアバッグ展開後、接合部(seam)部位を視覚的に観察してクッション接合部(seam)部位の損傷有無を評価し、接合部(seam)部位の組織が開いたり、組織内原糸が破れた場合、クッション接合部(seam)部位の損傷が発生したと表示し(「有」と表示)、展開前と同一に組織に何ら変化もない場合、クッション接合部(seam)部位の損傷が発生しなかったと表示した(「無」と表示)。
【0044】
【表1】
前記表1に示されているように、本発明による実施例1〜4のエアバッグは、インフレータを用いた展開時に損傷が発生する接合部付近に、効果的に超音波融着部が形成されており、エアバッグ展開時に融着部位の脱着(剥離)が行なわれることに起因する原反の何らの損傷も現れなかった。そして、エアバッグ展開時に発生する気体が、接結部と衝突する前に、融着されている部位と先に衝突して衝撃を緩和させて衝撃から接結部を保護して損傷が発生しないようにし、これによって、クッション内部の圧力を長期間維持することができるようにするなど、優れた特徴を有することが分かる。
【0045】
反面、既存の方法にしたがい、超音波融着をしていない比較例1〜2の場合には、インフレータで展開する際に接結部に損傷が発生したことが確認され、これによって、自動車転覆などの事故時に搭乗者を安全に保護することができる程度には優れた内圧維持性能および優れたエアバッグ展開性能が発揮されないという問題が発生するおそれがある。