(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負圧によって部品をその上方から吸引することで該部品を吸着する吸着部と、前記吸着部における前記負圧の大きさを測定する測定部と、を備え、前記吸着部で吸着した前記部品を基板に実装する部品実装装置において、前記部品を前記基板に実装するために該部品を前記吸着部で吸着するときの吸着高さ位置を決定する吸着高さ位置の決定方法であって、
前記吸着部で前記部品を吸引するとともに該部品の吸引を開始してから吸引を終了するまでの間に前記測定部で測定される前記負圧の大きさの時間変化を観測する観測工程と、
前記吸着高さ位置を決定する決定工程と、を備え、
前記観測工程では、前記部品の吸引を開始するときの該部品と前記吸着部との間の距離を変えて前記負圧の大きさの時間変化の観測を複数回実行し、
前記決定工程では、前記観測工程で観測した前記負圧の大きさの時間変化に基づいて、前記吸着高さ位置を決定する吸着高さ位置の決定方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(表面実装機の全体構成)
図面を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、
図1に示す表面実装機1について例示する。なお、表面実装機1は、以下に示す各実施形態において同様の構成とされる。表面実装機1は、基台10と、プリント基板(基板の一例)P1を搬送するための搬送コンベア(基板搬送装置の一例)20と、プリント基板P1上に電子部品(部品の一例)E1を実装するための部品実装装置30と、部品実装装置30に電子部品E1を供給するためのフィーダ型供給装置(部品供給装置の一例)40等とを備えている。
【0035】
基台10は、平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされる。また、基台10における搬送コンベア20の下方には、プリント基板P1上に電子部品E1を実装する際にそのプリント基板Pをバックアップするための図示しないバックアッププレート等が設けられている。以下の説明では、基台10の長辺方向(
図1の左右方向)及び搬送コンベア20の搬送方向をX軸方向とし、基台10の短辺方向(
図1の上下方向)をY軸方向とし、基台10の上下方向(
図2の上下方向)をZ軸方向とする。
【0036】
搬送コンベア20は、Y軸方向における基台10の略中央位置に配置され、プリント基板P1を搬送方向(X軸方向)に沿って搬送する。搬送コンベア20は、搬送方向に循環駆動する一対のコンベアベルト22を備えている。プリント基板P1は、両コンベアベルト22に架設する形でセットされるようになっている。本実施形態では、プリント基板P1は、搬送方向の一方側(
図1で示す右側)からコンベアベルト22に沿って基台10上の作業位置(
図1の二点鎖線で囲まれる位置)に搬入され、作業位置で停止して電子部品E1の実装作業がされた後、コンベアベルト22に沿って他方側(
図1で示す左側)に搬出されるようになっている。
【0037】
フィーダ型供給装置40は、搬送コンベア20の両側(
図1の上下両側)においてX軸方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所に配されている。これらのフィーダ型供給装置40には、複数のフィーダ42が横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ42は、複数の電子部品E1が収容された部品供給テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及びリールから部品供給テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア側に位置する端部から電子部品E1が一つずつ供給されるようになっている。
【0038】
部品実装装置30は、基台10及びフィーダ型供給装置40等の上方に設けられる一対の支持フレーム31と、ヘッドユニット32と、ヘッドユニット32を駆動するヘッドユニット駆動機構とから構成される。各支持フレーム31は、それぞれX軸方向における基台10の両側に位置しており、Y軸方向に延びている。支持フレーム31には、ヘッドユニット駆動機構を構成するX軸サーボ機構及びY軸サーボ機構が設けられている。ヘッドユニット32は、X軸サーボ機構及びY軸サーボ機構によって、一定の可動領域内でX軸方向及びY軸方向に移動可能とされている。
【0039】
ヘッドユニット駆動機構を構成するY軸サーボ機構は、Y軸方向に延びる形で各支持フレーム31に設置されたY軸ガイドレール34Yと、Y軸方向に延びる形で各Y軸ガイドレール34Yに取り付けられ、図示しないボールナットが螺合されたY軸ボールねじ36Yと、Y軸ボールねじ36Yに付設されたY軸サーボモータ38Yとを有している。
【0040】
また、各Y軸ガイドレール34Yには、X軸方向に延びる形でボールナットに固定されたヘッド支持体39が取り付けられている。Y軸サーボモータ38Yが通電制御されると、Y軸ボールねじ36Yに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体39、及び次述するヘッドユニット32がY軸ガイドレール34Yに沿ってY軸方向に移動する。
【0041】
ヘッドユニット駆動機構を構成するX軸サーボ機構は、X軸方向に延びる形でヘッド支持体に設置されたX軸ガイドレール34X(
図2参照)と、X軸方向に延びる形でヘッド支持体39に取り付けられ、図示しないボールナットが螺合されたX軸ボールねじ36Xと、X軸ボールねじ36Xに付設されたY軸サーボモータ38Xとを有している。
【0042】
また、X軸ガイドレール34Xには、その軸方向に沿ってヘッドユニット32が移動自在に取り付けられている。X軸サーボモータ38Xが通電制御されると、X軸ボールねじ36Xに沿ってボールナットが進退し、その結果、ボールナットに固定されたヘッドユニット32がX軸ガイドレール34Xに沿ってX軸方向に移動する。
【0043】
ヘッドユニット32は、フィーダ型供給装置40から基台10上に供給される電子部品E1を取り出してプリント基板P1上に実装する。ヘッドユニット32には、
図2に示すように、電子部品E1の実装動作を行う実装ヘッド52が列状をなして複数個搭載されている。各実装ヘッド52は、ヘッドユニット32の下面から下向きに突出しており、その先端には吸着ノズル(吸着部の一例)54が設けられている。
【0044】
各実装ヘッド52は、R軸サーボモータ38R(
図4参照)等によって軸周りの回転動作が可能とされている。また、各実装ヘッド52は、Z軸サーボモータ38Z(昇降部の一例、
図4参照)等の駆動によってヘッドユニット32のフレーム32Aに対して上下方向に昇降可能な構成となっている。従って、Z軸サーボモータ38Zが通電制御されると、実装ヘッド52と共に吸着ノズル54が上下方向に移動し、吸着ノズル54の下端部の高さ位置が変化する。
【0045】
なお、ヘッドユニット32には、基板認識カメラC1(
図4参照、
図1及び
図2では不図示)が設けられている。基板認識カメラC1は、撮像面を下に向けた状態でヘッドユニット32に固定されており、ヘッドユニット32とともに一体的に移動する構成とされている。このため、上述したX軸サーボ機構、Y軸サーボ機構を駆動させることで、作業位置に停止したプリント基板P上の任意の位置の画像を、基板認識カメラC1によって撮像することができる。
【0046】
(吸着ノズルに負圧を発生させるための構成)
次に、吸着ノズル54に負圧を発生させるための構成について説明する。
図3に示すように、吸着ノズル54の内部に設けられた吸引路56は圧力センサ(測定部の一例)60を介してバルブ62に接続されている。バルブ62はさらに負圧発生部64に接続されている。負圧発生部64は、例えば真空ポンプであり、一定の圧力値(例えば−80kPa〜−90kPa)で負圧を発生させる。これらの圧力センサ60、バルブ62、及び負圧発生部64はそれぞれ後述する制御部70に接続されている。
【0047】
制御部70によって負圧発生部64がオンされた状態でバルブ62が開状態とされると、負圧発生部64から吸着ノズル54に負圧が供給され、吸着ノズル54の先端に吸引力が生じるようになっている。このような構成とすることで、フィーダF1を通じて供給される電子部品E1を、部品実装装置30の吸着ノズル54の先端部54Aに吸着し、作業位置に停止したプリント基板P1上に実装するようになっている。各実装ヘッド52から突出する吸着ノズル54は、それぞれ径や突出する長さが異なっており、吸引路56内に供給される負圧の大きさも異なっている。
【0048】
吸引路56に接続された圧力センサ60は、吸着ノズル54近傍の吸引路56内における負圧の大きさを電圧値として制御部70に出力する。なお、
図1に示すように、基台10上において、ヘッドユニット32による実装位置の近傍には、部品認識カメラC2がそれぞれ固定されている。部品認識カメラC2は、実装ヘッド52によってフィーダ型供給装置40から取り出された電子部品E1の画像を撮像することで、各電子部品E1の吸着ノズル54による吸着姿勢等を認識する。
【0049】
(表面実装機の電気的構成)
次に、表面実装機1の電気的構成について、
図4を参照して説明する。表面実装機1の本体は制御部70によってその全体が制御統括されている。制御部70はCPU等により構成される演算処理部71を備えている。演算処理部71には、モータ制御部72と、記憶部73と、画像処理部74と、外部入出力部75と、観測処理部76と、決定処理部77と、表示部78と、入力部79と、がそれぞれ接続されている。
【0050】
モータ制御部72は、後述する実装プログラム73Aに従って各ヘッドユニット32のX軸サーボモータ38XとY軸サーボモータ38YとZ軸サーボモータ38ZとR軸サーボモータ38Rとをそれぞれ駆動させる。また、モータ制御部72は、実装プログラム73Aに従って搬送コンベア20を駆動させる。
【0051】
記憶部73は、CPUを制御するプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び装置の動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等から構成されている。記憶部73には、次述する実装プログラム73Aと各種データ73Bとが記憶されている。
【0052】
記憶部73に記憶される実装プログラム73Aには、具体的には、実装対象となるプリント基板P1の生産台数に関する基板情報、プリント基板P1に実装される電子部品E1の個数や種類等を含む部品情報、プリント基板P1上の電子部品E1の実装位置に関する実装情報等が含まれている。さらに、実装プログラム73Aには、後述する吸着高さ位置検出処理で検出される各種電子部品E1についての吸着高さ位置に関する情報が含まれている。
【0053】
また、記憶部73に記憶される各種データ73Bには、フィーダ型供給装置40の各フィーダ42に保持された電子部品E1の数や種類に関するデータ、後述する吸着高さ位置検出処理において観測された各種波形に関するデータ、後述する吸着高さ位置検出処理で用いられる各種所定値、閾値、許容時間に関するデータ等が含まれている。
【0054】
画像処理部74には、基板認識カメラC1及び部品認識カメラC2から出力される撮像信号がそれぞれ取り込まれるようになっている。画像処理部74では、取り込まれた各カメラC1,C2からの撮像信号に基づいて、部品画像の解析並びに基板画像の解析がそれぞれ行われるようになっている。
【0055】
外部入出力部75は、いわゆるインターフェースであって、表面実装機1の本体に設けられる上述した圧力センサ60等の各種センサ類75Aから出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部75は、演算処理部71から出力される制御信号に基づいて、上述したバルブ62の開閉制御等、各種アクチュエータ類75Bに対する動作制御を行うように構成されている。
【0056】
観測処理部76は、圧力センサ60で測定される負圧の大きさの時間を観測する。決定処理部77は、観測処理部76で観測した負圧の大きさの時間変化に基づいて、電子部品E1をプリント基板P1に実装するために当該電子部品E1を吸着ノズル54で吸着するときの吸着高さ位置を決定する。
【0057】
表示部78は、表示画面を有する液晶表示装置等から構成され、表面実装機1の状態等を表示画面上に表示する。入力部79は、キーボード等から構成され、手動による操作によって外部からの入力を受け付けるようになっている。
【0058】
(表面実装機の動作態様)
本実施形態の表面実装機1では、自動運転中において、搬送コンベア20によるプリント基板P1の搬送作業を行う搬送状態と、電子部品E1のプリント基板P1上への実装作業を行う実装状態と、交互に実行される。また、フィーダ型供給装置40には、1つ又は複数のフィーダ42毎に、形状が異なる複数種類の電子部品E1が収容されている。電子部品E1は、種類毎に形状やサイズが異なっており、電子部品E1の種類が異なると、電子部品E1をプリント基板P1に実装するために当該電子部品E1を吸着ノズル54で吸着するときの最適な吸着高さ位置も異なるものとされる。
【0059】
そこで、表面実装機1では、制御部70は、プリント基板P1上に各種電子部品E1を実装する前に、実装対象とされる電子部品E1の種類毎に、上記吸着高さ位置を検出する処理を実行する。この吸着高さ位置の検出は、例えば自動運転中の上記搬送状態において実行されてもよいし、例えば自動運転の停止中に、入力部79が吸着高さ位置の検出を開始させるための入力を外部から受け付けることで実行されてもよい。そして上記実装状態では、各種電子部品E1について検出された吸着高さ位置に基づいて電子部品E1の実装作業が行われる。
【0060】
(制御部が実行する処理)
本実施形態に係る表面実装機1は以上のような構成であって、次に、電子部品E1の吸着高さ位置の検出を開始してから当該電子部品E1の実装に至るまでに制御部70が実行する処理について、
図5に示すフローチャートを参照して説明する。以下に示す一連の処理は、上述した実装プログラム73Aに従って制御部70が実行する処理である。
【0061】
吸着高さ位置の検出は、各吸着ノズル54について、種類が異なる電子部品E1毎に実行される。制御部70は、まず、各吸着ノズル54のうち吸着高さ位置の検出を実行する吸着ノズル54が検出対象となる電子部品E1の上方に位置するように、X軸サーボ機構及びY軸サーボ機構を駆動させてヘッドユニット32を移動させる(S2)。
【0062】
次に、制御部70の観測処理部76及び決定処理部77は、検出対象となる電子部品E1について吸着高さ位置を検出する吸着高さ位置検出処理を実行する(S4)。吸着高さ位置検出処理については後で詳しく説明する。制御部70は、吸着高さ位置検出処理が終了すると、その検出結果、即ち吸着高さ位置検出処理で検出された吸着高さ位置を記憶部73の実装プログラム73Aに記憶させ、S8に移行する。
【0063】
制御部70は、S8では、実装状態に移行して各種電子部品E1の実装作業を実行する。この実装作業では、制御部70は、吸着が行われる吸着ノズル54について、実装対象となる電子部品E1の吸着高さ位置を実装プログラム73Aから読み出し、各種電子部品E1について最適な吸着高さ位置で電子部品E1の実装作業を行う。
【0064】
(吸着高さ位置検出処理)
次に、制御部70の観測処理部76及び決定処理部77がS4で実行する吸着高さ位置検出処理に関する各実施形態を説明する。なお、実施形態1、実施形態2、実施形態3では、表面実装機1の構成、及び制御部70が実行する上述したS2、S6、S8の処理については、各実施形態で共通しているため、以下の説明では省略する。
【0065】
(実施形態1)
実施形態1の吸着高さ位置決定処理について
図6に示すフローチャートを参照して説明する。ここで本実施形態では、吸着高さ位置の検出対象となる電子部品E1の一例として、
図7に示す略ブロック状の電子部品E1を例示する。この電子部品E1では、その上面が吸着ノズル54によって吸着される吸着部位となる。
【0066】
吸着高さ位置検出処理では、制御部70の観測処理部76は、まず、
図7(A)に示すように、Z軸サーボモータ38Zを駆動させて検出対象となる電子部品E1から十分離れた位置まで吸着ノズル54を移動させる(S10)。ここでいう電子部品E1から十分離れた位置とは、例えば吸着ノズル54が最上端にあるときの位置であり、吸着ノズル54による吸引を開始してから吸引を終了するまでの間に吸着ノズル54の吸引力によって電子部品E1が載置面から浮き上がらないような位置をいう。なお、
図7の符号DS1〜DS5は、吸着ノズル54がそれぞれ
図7(A)〜
図7(E)に示す位置にあるときの電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離を示す。
【0067】
次に、制御部70の観測処理部76は、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引を開始し、所定時間(例えば数ミリ秒程度)経過後に吸引を終了する。また、制御部70の観測処理部76は、上記所定時間の間に圧力センサ60で測定される負圧の大きさの時間変化を観測し(S12)、観測された当該時間変化を基準波形として記憶部73に記憶させる(S14)。
【0068】
ここで、S14の処理において記憶部73に記憶される時間変化の基準波形の一例を、
図8のグラフにおいて波形W0で示す。
図8の横軸は時間軸であり、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引が開始された時点、即ち制御部70によってバルブ62が開状態とされた時点を0としている。
図8の縦軸は圧力、即ち圧力センサ60から電圧値として出力される負圧の大きさを示しており、グラフの上側にいくほど負圧が大きい(吸引路56内の真空度が高い)ものとされる。
【0069】
S12の処理では、上述したように吸着ノズル54が電子部品E1から十分離れた位置にあるため、吸着ノズル54による吸引を開始してから終了するまでの間に当該電子部品E1によって吸引が妨げられることがない。このため、
図8の基準波形W0で示されるように、S12の処理で測定される負圧は、吸着ノズル54による吸引が開始されて吸気が圧力センサ60に到達した時点から大きく立ち上がった後、負圧発生部64で発生される負圧の圧力値P0と等しくなるまで上昇して一定となる。
【0070】
制御部70の観測処理部76は、S14の処理が終了すると、
図7(B)に示すように、電子部品E1が吸着ノズル54による吸引によって載置面から浮き上がるような高さ位置まで吸着ノズル54を下降させる(S16)。次に、制御部70の観測処理部76は、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引を開始し、上記所定時間経過後に吸引を終了する。また、制御部70の観測処理部76は、上記所定時間の間に圧力センサ60で測定される負圧の大きさの時間変化を観測し(S18)、観測された当該時間変化を通常波形として記憶部73に記憶させる(S20)。
【0071】
ここで、吸着ノズル54の高さ位置が
図7(B)に示す位置である場合、S20の処理において記憶部73に記憶される時間変化の通常波形の一例を、
図8のグラフにおいて波形W1で示す。吸着ノズル54の高さ位置が
図7(B)に示す位置である場合、吸着ノズル54による吸引を開始した後、吸着ノズル54による吸引によって電子部品E1が載置面から浮き上がり、
図7(B)の二点鎖線で示すように、電子部品E1の上面が吸着ノズル54の下端部に吸着される。電子部品E1が吸着ノズル54に吸着されると、吸着ノズル54の下端部の吸引口が電子部品E1によって塞がれるため、圧力センサ60で測定される負圧がさらに上昇し、吸引路56内の真空度が高まる。
【0072】
このため、
図8に示す通常波形W1は、最初に大きく立ち上がってから負圧発生部64で発生される負圧の圧力値P0と等しくなるまで上昇した後、載置面から浮き上がった電子部品E1が吸着ノズル54に吸着されるまでの間、一定値を示す。そして、
図8に示す通常波形W1は、電子部品E1が吸着ノズル54に吸着された時点TA1(勾配の変化点、二度目の立ち上がり点)で再び大きく立ち上がり、上記所定時間が経過するまでの間、
図8のグラフ上で曲線を描きながら真空状態の圧力値に収束する形で上昇する。
【0073】
制御部70の観測処理部76は、S20の処理が終了すると、未算出の経過時間の差を算出可能か否か判断する(S22)。ここでいう経過時間の差は、後述する処理において算出されるものであり、基準波形と2つの通常波形とに基づいて算出されるものである。従って、経過時間の差が算出されていない少なくとも2つの通常波形が記憶部73に記憶されている場合、制御部70の観測処理部76は、未算出の経過時間の差を算出可能であると判断し(S22:YES)、S24に移行する。一方、経過時間の差が算出されていない少なくとも2つの通常波形が記憶部73に記憶されていない場合、制御部70の観測処理部76は、未算出の経過時間の差を算出可能でないと判断し(S22:NO)、S16に戻る。
【0074】
先に、S22の処理からS16の処理に戻る場合を説明する。S22からS16に戻ると、制御部70の観測処理部76は、吸着ノズル54を
図7(B)に示す位置から
図7(C)に示す位置にさらに下降させる(S16)。その後、制御部70は、上述したS18、S20の処理を順に実行し、再びS22に移行する。このようにS16からS22の処理は、電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離を変えて複数回実行される。なお、制御部70の観測処理部76がS10からS14で実行する処理、及びS16からS22で実行する処理は、観測処理の一例である。
【0075】
吸着ノズル54の高さ位置が
図7(C)に示す位置である場合に記憶部73に記憶される時間変化の通常波形の一例は、
図8の波形W2で示される。吸着ノズル54が
図7(B)に示す位置から
図7(C)に示す位置に下降されることで、電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離が小さくなり、吸着ノズル54による吸引を開始してから電子部品E1が吸着ノズル54に吸着されるまでの経過時間が短くなる。このため、
図8に示すように、通常波形W2は、通常波形W1と比べて、吸引を開始してから上記二度目の立ち上がり点TA2に至るまでの経過時間が短いものとなる。
【0076】
上記のように、S22の処理からS16の処理に戻る度に、制御部70の観測処理部76は、S16において吸着ノズル54を、
図7(C)に示す位置から
図7(D)に示す位置に、
図7(D)に示す位置から
図7(E)に示す位置に、
図7(E)に示す位置から
図7(F)に示す位置に順に下降させ、S18からS22の処理を実行する。
図7(F)に示す位置では、吸着ノズル54の下端部が電子部品E1の上面に接触している。なお本実施形態では、吸着ノズル54の下降幅は一定ではなく可変であり、吸着ノズル54が電子部品E1に近づくにつれて吸着ノズル54の下降幅が小さくなるように制御される。
【0077】
吸着ノズル54の高さ位置が
図7(C)に示す位置である場合、
図7(D)に示す位置である場合、
図7(E)に示す位置である場合、
図7(F)に示す位置である場合に記憶部73に記憶される通常波形の一例は、
図8において、それぞれ波形W2、W3、W4、W5で示される。通常波形W2、通常波形W3、通常波形W4に示されるように、吸着ノズル54が下降するにつれて(電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離が短くなるにつれて)、吸引を開始してから上記二度目の立ち上がり点に至るまでの経過時間が次第に短くなる。また、吸着ノズル54が電子部品E1に接触した状態(
図7(F)に示す状態)では、吸引を開始した時点で既に吸着ノズル54の下端部の吸引口が電子部品E1によって塞がれているので、
図8の通常波形W5に示されるように、S12の処理で測定される負圧は、最初の立ち上がり点から
図8のグラフ上で曲線を描きながら真空状態の圧力値に収束する形で上昇する。
【0078】
図6に示すフローチャートの続きを説明する。S24では、制御部70の決定処理部77は、記憶部73に記憶されている基準波形及び複数の通常波形のデータを記憶部73から読み出す(読み出し処理の一例)。次に、制御部70の決定処理部77は、複数の通常波形について、基準波形との差分をとった差分波形を算出する(S26、差分波形算出処理の一例)。ここで、
図8に示す通常波形W1、W2、W3、W4、W5についての差分波形は、それぞれ
図9のD1、D2、D3、D4、D5で示される。
図9の横軸は
図8の横軸と同様である。
図9の縦軸は圧力の差分を示しており、グラフの上側にいくほど基準波形W0との圧力の差分が大きいものとされる。
【0079】
次に、制御部70の決定処理部77は、S26で算出した差分波形について、吸引を開始してから負圧の大きさの差分が所定の閾値となるまでの経過時間を算出する(S28、経過時間算出処理の一例)。
図9に示す例では、上記閾値をTH1で示す。この閾値TH1は、各差分波形D1、D2、D3、D4、D5の立ち上がり点近傍の波形の影響を排除するためのものであり、評価試験に基づいて予め設定される。なお、
図9におけるT1、T2、T3、T4、T5は、それぞれ各差分波形D1、D2、D3、D4、D5についての上記経過時間を示す。
【0080】
次に、制御部70の決定処理部77は、複数の差分波形を重ね合わせた場合に隣り合う2つの差分波形(
図9に示す隣り合う2つの差分波形)について、上記経過時間の差を算出する(S30、時間差算出処理の一例)。
図9のグラフでは、差分波形D1と差分波形D2との経過時間の差はT1−T2で示され、差分波形D2と差分波形D3との経過時間の差はT2−T3で示され、差分波形D3と差分波形D4との経過時間の差はT3−T4で示され、差分波形D4と差分波形D5との経過時間の差はT4−T5で示される。
【0081】
次に、制御部70の決定処理部77は、S30で算出した経過時間の差が第1の所定値であるか否かを判断する(S32)。この第1の所定値は、経過時間の差が十分に小さいものとみなせるような値であり、評価試験に基づいて予め設定され、例えば5ミリ秒である。従って、S30で算出された経過時間の差が第1の所定値以下であるということは、その経過時間の差が算出された2つの経過時間がほぼ等しいことを意味する。制御部70は、S32で経過時間の差が第1の所定値であると判断すると(S32:YES)、S34に移行する。制御部70の決定処理部77は、S32で経過時間の差が第1の所定値でないと判断すると(S32:NO)、S16に戻る。
【0082】
制御部70の決定処理部77は、S34では、S32で経過時間の差が第1の所定値以下であると判断した2つの差分波形のうち、経過時間が相対的に大きな一方の差分波形について、その差分波形についての上記経過時間が第3の所定値以下であるのか否か判断する。この第3の所定値は定数であり、表面実装機1毎に評価試験に基づいて予め設定される。
【0083】
第3の所定値は、例えば
図8において、基準波形W0と吸着ノズル54が電子部品E1に接触した状態にあるときに観測された通常波形W5との分岐点J1に、吸着高さ位置を決定するために必要な許容時間を加えたものである。なお、基準波形W0と通常波形W5は、いずれも電子部品E1の有無にかかわらず観測することができる。即ち、通常波形W5は、例えば作業者が吸着ノズル54の先端部54Aの吸引口を塞いだ状態で、圧力センサ60で測定される負圧の大きさの時間変化を観測することで得ることができる。
【0084】
制御部70の決定処理部77は、S34で経過時間が第3の所定値以下であると判断すると(S34:YES)、第3の所定値以下とされた経過時間が算出された差分波形と対応する通常波形について、その通常波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定し(S36)、吸着高さ位置検出処理を終了する。制御部70の決定処理部77は、S34で経過時間が第3の所定値以下でないと判断すると(S34:NO)、S16に戻る。なお、制御部70がS24からS36で実行する処理は、決定処理の一例である。
【0085】
ここで本実施形態では、上述した各経過時間の差のうち、T3−T4及びT4−T5のみが第1の所定値以下であるものとし、
図9の符号TS3で示す時点を第3の所定値とする。従って、本実施形態では、S30の処理で算出した経過時間の差がT1−T2、T2−T3のいずれかである場合、S32では経過時間の差が第1の所定値以下でないと判断する(S32:NO)。
【0086】
また本実施形態では、制御部70の決定処理部77は、S30の処理で算出した経過時間の差がT3−T4である場合、S32では経過時間の差が第1の所定値以下であると判断し(S32:YES)、S34では経過時間が相対的に大きな一方の差分波形、即ち差分波形D3についての上記経過時間T3が第3の所定値TS3以下でないと判断する(S34:NO)。
【0087】
また本実施形態では、制御部70の決定処理部77は、S30の処理で算出した経過時間の差がT4−T5である場合、S32では経過時間の差が第1の所定値以下であると判断し(S32:YES)、S34では経過時間が相対的に大きな一方の差分波形、即ち差分波形D4についての上記経過時間T4が第3の所定値TS3以下であると判断する(S34:YES)。そして、制御部70の決定処理部77は、S36では、第3の所定値TS3以下とされた経過時間T4が算出された差分波形D4と対応する通常波形W4について、その通常波形W4が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置、即ち
図7(E)で示す高さ位置を吸着高さ位置として決定する。
【0088】
以上のようにして複数個の吸着ノズル54毎に、各種電子部品E1についての最適な吸着高さ位置が検出される。なお、吸着ノズル54が電子部品E1に接触した状態にあるときの高さ位置(通常波形W5が観測される高さ位置)を最適な吸着高さ位置としないのは、吸着ノズル54を下降させていくことで吸着ノズル54を電子部品E1に接触させると、吸着ノズル54の先端部54Aが電子部品E1に過度に干渉することがあり得るためであり、この場合、電子部品E1又は吸着ノズル54が損傷する虞があるため、最適な吸着高さ位置とはいえないからである。
【0089】
(実施形態1の効果)
以上説明したように本実施形態では、負圧の大きさの時間変化を基準波形及び通常波形として観測し、基準波形及び通常波形から差分波形を算出する。ここで、通常波形及び差分波形は、吸着ノズル54に電子部品E1が吸着されたときの勾配の変化点(二度目の立ち上がり点)において波形が緩やかに変化するため、変化点を精度良く検出することが難しい。これに対し本実施形態では、読み出した基準波形及び通常波形から差分波形を算出し、差分波形について所定の閾値TH1となるまでの経過時間の差を算出することで、上記変化点近傍の波形の影響を排除することができる。また、上記経過時間の差は、電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離が小さくなるほど、小さくなる傾向にある。このため、算出された経過時間の差が第1の所定値以下となるときの一方の差分波形に対応する電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離に基づいて吸着高さ位置を決定することができる。
【0090】
このように本実施形態では、吸着ノズル54による吸引によって電子部品E1が浮き上がって吸着ノズル54に吸着される際の負圧の大きさの時間変化の特性に着目することで、様々な電子部品E1について、高い精度で吸着高さ位置を決定することができる。
【0091】
また本実施形態では、制御部70の決定処理部77は、上記一方の差分波形についての経過時間が第3の所定値以下である場合に、吸着高さ位置を決定する。ここで、S26の処理で算出される隣り合う2つの上記差分波形では、電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離の変化幅によっては、吸着ノズル54が電子部品E1から離れている場合であっても、さらに経過時間が第3の所定値以下である場合に吸着高さ位置を決定するので、吸着ノズル54が電子部品E1から離れているにもかかわらず吸着高さ位置が決定されることを防止することができる。このため、より高い精度で吸着高さ位置を決定することができる。
【0092】
また本実施形態では、制御部70に、外部からの入力を受け付ける入力部79が接続されている。そして、制御部70は、入力部79が入力を受け付けることで、吸着高さ位置検出処理を実行する。このため、入力部79が作業者からの入力を受け付けることで、作業者の意思に基づいて吸着高さ位置検出処理を開始することができる。
【0093】
(実施形態1の変形例)
続いて実施形態1の変形例について説明する。この変形例では、実施形態1で説明した吸着高さ位置検出処理において、各波形を観測する処理を、吸着ノズル54を下降させる距離を等間隔で変えて複数回実行する。さらに本変形例では、制御部70の決定処理部77は、S34の処理を実行せず、S32で経過時間の差が第1の所定値以下であると判断すると(S32:YES)、S36に移行する。即ち、制御部70の決定処理部77は、S32で経過時間の差が第1の所定値以下であると判断すると(S32:YES)、上記一方の差分波形と対応する通常波形について、その通常波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定する。
【0094】
本変形例のように距離を等間隔で変えて波形を観測する処理を複数回実行すると、吸着ノズル54が電子部品E1に近づくにつれて上記経過時間の差が小さくなる。このため、本変形例では、上記経過時間の差が第1の所定値以下となる場合に、吸着高さ位置を決定するために別途条件(例えば上記第3の所定値以下であるか否か)を設けなくても、高い精度で吸着高さ位置を決定することができる。このため、より簡単な決定方法で吸着高さ位置を決定することができる。
【0095】
(実施形態2)
次に、実施形態2の吸着高さ位置検出処理について、
図10に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態の吸着高さ位置検出処理では、制御部70の観測処理部76は、まず、電子部品E1が吸着される位置まで吸着ノズル54を下降させる(S110)。ここでいう電子部品E1が吸着される位置とは、例えば、
図7(B)で示す位置をいう。
【0096】
次に、制御部70の観測処理部76は、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引を開始し、所定時間(例えば数秒程度)経過後に吸引を終了する。また、制御部70の観測処理部76は、上記所定時間の間に圧力センサ60で測定される負圧の大きさの時間変化を観測し(S112)、観測された当該時間変化を波形として記憶部73に記憶させる(S114)。
【0097】
ここで、S114の処理において記憶部73に記憶される時間変化の波形の一例を、
図11のグラフにおいて波形W11で示す。
図11の横軸は時間軸であり、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引が開始された時点、即ち制御部70によってバルブ62が開状態とされた時点を0としている。
図11の縦軸は圧力、即ち圧力センサ60から電圧値として出力される負圧の大きさを示しており、グラフの上側にいくほど負圧が大きい(吸引路56内の真空度が高い)ものとされる。
【0098】
電子部品E1が吸着される位置に吸着ノズル54がある場合、吸着ノズル54による吸引を開始した後、吸着ノズル54による吸引によって電子部品E1が載置面から浮き上がり、電子部品E1の上面が吸着ノズル54の下端部に吸着される。このため、
図11に示す波形W11は、最初に立ち上がってから(最初の立ち上がり点TA0)負圧発生部64で発生される負圧の圧力値P0と等しくなるまで上昇した後、載置面から浮き上がった電子部品E1が吸着ノズル54に吸着されるまでの間は一定値を示し、電子部品E1が吸着ノズル54に吸着された時点TA11で再び立ち上がり(勾配の変化点、二度目の立ち上がり点)、上記所定時間が経過するまでの間、
図11のグラフ上で曲線を描きながら真空状態の圧力値に向かって上昇する。
【0099】
制御部70の観測処理部76は、S114の処理が終了すると、未算出の経過時間の差を算出可能か否か判断する(S116)。ここでいう経過時間の差は、後述する処理において算出されるものであり、後述する2つの微分波形に基づいて算出されるものである。従って、経過時間の差が算出されていない少なくとも2つの微分波形が記憶部73に記憶されている場合、制御部70の観測処理部76は、未算出の経過時間の差を算出可能であると判断し(S116:YES)、S120に移行する。一方、経過時間の差が算出されていない少なくとも2つの微分波形が記憶部73に記憶されていない場合、制御部70の観測処理部76は、未算出の経過時間の差を算出可能でないと判断し(S116:NO)、S118に移行する。
【0100】
制御部70の観測処理部76は、S118では、吸着ノズル54の高さ位置をさらに下降させ、S112に戻る。例えば吸着ノズル54が
図7(B)に示す位置にある場合、制御部70は、S116では吸着ノズル54の高さ位置を
図7(B)に示す位置から
図7(C)に示す位置にさらに下降させる。その後、制御部70の観測処理部76は、上述したS112、S114の処理を順に実行し、再びS116に移行する。このようにS112からS116の処理は、電子部品E1と吸着ノズル54との間の距離を変えて複数回実行される。なお、制御部70の観測処理部76がS110で実行する処理、及びS112からS116で実行する処理は、観測処理の一例である。
【0101】
吸着ノズル54の高さ位置が
図7(C)に示す位置である場合、
図7(D)に示す位置である場合、
図7(E)に示す位置である場合、
図7(F)に示す位置である場合に記憶部73に記憶される波形の一例は、
図11において、それぞれ波形W12、W13、W14、W15で示される。各波形W12、W13、W14、W15の変化の態様は、実施形態1で説明した通常波形W2、W3、W4、W5の変化の態様と同様である。なお、
図11における符号TA12、TA13、TA14、TA15は、各波形W12、W13、W14、W15の二度目の立ち上がり点を示す。
【0102】
図10に示すフローチャートの続きを説明する。S120では、制御部70の決定処理部77は、記憶部73に記憶されている各波形のデータを記憶部73から読み出す(読み出し処理の一例)。次に、制御部70の決定処理部77は、複数の波形をそれぞれ微分した微分波形を算出する(S122、微分波形算出処理の一例)。ここで、
図12のグラフでは、上記各波形W12、W13、W14、W15についての各微分波形を重ね合わせたものを示している。
図12の横軸は
図11の横軸と同様である。
図12の縦軸は圧力の変化、即ち
図11における各波形W12、W13、W14、W15の傾きの大きさを示しており、グラフの上側にいくほど圧力の変化が大きいものとされる。
【0103】
従って、
図12における最初のピークPK10は、
図11における各波形W11、W12、W13、W14、W15の最初の立ち上がり点TA10と対応しており、
図12における各ピークPK11、PK12、PK13、PK14、PK15は、2回目のピークであり、
図11における各波形W11、W12、W13、W14、W15の二度目の立ち上がり点TA11、TA12、TA13、TA14、TA15と対応している。
【0104】
次に、制御部70の決定処理部77は、S122で算出した微分波形について、吸引を開始してから負圧の大きさについての2回目のピークが発生した時点までの経過時間を算出する(S124、経過時間算出処理の一例)。S124の処理で算出される経過時間は、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引を開始してから吸着ノズル54に電子部品E1が吸着されるまでの時間に等しい。
【0105】
なお、
図12におけるT11、T12、T13、T14、T15は、それぞれ各微分波形についての上記経過時間を示しており、各微分波形について2回目のピークPK11、PK12、PK13、PK14、PK15が発生した時点と対応している。このように微分波形から上記経過時間を算出するのは、微分を行う前の上記波形では、二度目の立ち上がり点が緩やかに立ち上がるため、二度目の立ち上がり点を精度良く検出することが難しいのに対し、微分波形では、二度目の立ち上がり点がピークとして現れるため、二度目の立ち上がり点を精度良く検出できるからである。
【0106】
次に、制御部70の決定処理部77は、複数の微分波形を重ね合わせた場合に上記経過時間が近接する2つの微分波形(
図12において2回目のピークが近接する2つの微分波形)について、経過時間の差を算出する(S126、時間差算出処理の一例)。
図12のグラフでは、各微分波形についての経過時間の差は、それぞれT11−T12、T12−T13、T13−T14、T14−T15で示される。
【0107】
次に、制御部70の決定処理部77は、S126で算出した経過時間の差が第2の所定値であるか否かを判断する(S128)。この第2の所定値は、経過時間の差が十分に小さいものとみなせるような値であり、評価試験に基づいて予め設定され、例えば5ミリ秒である。従って、S126で算出された経過時間の差が第2の所定値以下であるということは、その経過時間の差が算出された2つの経過時間がほぼ等しいことを意味する。制御部70の決定処理部77は、S128で経過時間の差が第2の所定値であると判断すると(S128:YES)、S130に移行する。制御部70の決定処理部77は、S128で経過時間の差が第2の所定値でないと判断すると(S128:NO)、S118に戻る。
【0108】
制御部70の決定処理部77は、S130では、S128で経過時間の差が第2の所定値以下であると判断した2つの微分波形のうち、経過時間が相対的に大きな一方の微分波形について、その微分波形についての上記経過時間が第3の所定値以下であるのか否か判断する。この第3の所定値は、実施形態1で説明したものと同様である。
【0109】
制御部70の決定処理部77は、S130で経過時間が第3の所定値以下であると判断すると(S130:YES)、第3の所定値以下とされた経過時間が算出された微分波形と対応する波形について、その波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定し(S132)、吸着高さ位置検出処理を終了する。制御部70の決定処理部77は、S130で経過時間が第3の所定値以下でないと判断すると(S130:NO)、S118に戻る。なお、制御部70の決定処理部77がS120からS132で実行する処理は、決定処理の一例である。
【0110】
(実施形態2の効果)
以上説明したように本実施形態では、負圧の大きさの時間変化を波形として観測し、観測した波形から微分波形を算出する。そして、算出された微分波形について上記経過時間の差を算出する。このため、吸着ノズル54に電子部品E1が吸着されたときの変化点近傍の波形の影響を排除することができる。さらに、実施形態1のように基準波形を算出することなく上記微分波形を算出し、算出された微分波形の2回目のピークが発生した時点までの経過時間を算出する。ここで、
図12に示すように、2回目のピークが発生した時点は一点に定まるため、2回目のピークが発生した時点をみることで上記経過時間を精度良く検出することができる。そして、隣り合う2つの微分波形から経過時間の差を算出することで、波形の観測について少ない回数で吸着高さ位置を検出することができる。このように本実施形態では、吸着高さ位置検出処理に要する時間を短縮することができる。
【0111】
(実施形態3)
次に、実施形態3の吸着高さ位置検出処理について、
図13に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態の吸着高さ位置検出処理では、制御部70の観測処理部76は、まず、
図13に示すS210、S212、S214の処理を順に実行する。このS210、S212、S214の処理は、実施形態2におけるS110、S112、S114(
図10参照)の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0112】
制御部70の観測処理部76は、S214の処理が終了すると、近似関数を算出可能か否か判断する(S216)。ここでいう近似関数は、後述する処理において算出されるものであり、少なくとも3つの波形に基づいて算出されるものである。従って、少なくとも3つの波形が記憶部73に記憶されている場合、制御部70の観測処理部76は、近似関数を算出可能であると判断し(S216:YES)、S220に移行する。一方、少なくとも3つの波形が記憶部73に記憶されていない場合、制御部70の観測処理部76は、近似関数を算出可能でないと判断し(S216:NO)、S218に移行する。
【0113】
制御部70の観測処理部76は、S218では、吸着ノズル54の高さ位置をさらに下降させ、S212に戻る。例えば吸着ノズル54が
図7(B)に示す位置にある場合、制御部70の観測処理部76は、S218では吸着ノズルの高さ位置を
図7(B)に示す位置から
図7(C)に示す位置にさらに下降させる。その後、制御部70の観測処理部76は、上述したS212、S214の処理を順に実行し、再びS216に移行する。なお、制御部70の観測処理部76がS210で実行する処理、及びS212からS216で実行する処理は、観測処理の一例である。
【0114】
図14に示す波形W21、W22、W23は、吸着ノズル54の高さ位置を順に下降させて負圧の大きさの時間変化を3回観測した場合の、記憶部73に記憶される各波形の一例を示したものである。各波形の変化の態様は、実施形態2で説明した波形W12、W13、W14、W15の変化の態様と同様である。なお、
図11における符号TA21、TA22、TA23は、各波形W21、W22、W23の二度目の立ち上がり点を示す。
【0115】
図13に示すフローチャートの続きを説明する。制御部70の決定処理部77は、近似関数を算出可能であると判断すると、S220、S222、S224の処理を順に実行し、S226に移行する。このS220、S222、S224の処理は、実施形態2におけるS120、S122、S124(
図10参照)の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。なお、制御部70の決定処理部77がS220、S222、S224で実行する処理は、それぞれ読み出し処理の一例、微分波形算出処理の一例、経過時間算出処理の一例である。
【0116】
ここで、
図15のグラフでは、
図14に示す各波形W21、W22、W23から算出された各微分波形を重ね合わせたものを示している。
図15の横軸及び縦軸は、
図12の横軸及び縦軸と同様である。
図15における最初のピークPK20は、
図14における各波形W21、W22、W23の最初の立ち上がり点TA20と対応しており、
図15における各ピークPK21、PK22、PK23は、2回目のピークであり、
図14における各波形W21、W22、W23の二度目の立ち上がり点TA21、TA22、TA23と対応している。また、
図15におけるT21、T22、T23は、S224の処理において上記の各微分波形から算出される経過時間をそれぞれ示しており、各微分波形について2回目のピークPK21、PK22、PK23が発生した時点と対応している。
【0117】
次に、制御部70の決定処理部77は、S226では、S224の処理で算出される各経過時間と、各経過時間が算出された各微分波形と対応する各波形について、それらの波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置と、から近似関数を算出する(関数算出処理の一例)。ここで、
図16のグラフは、横軸が上記高さ位置を示しており、グラフの縦軸が上記経過時間、即ち吸着ノズル54による電子部品E1の吸引を開始してから吸着ノズル54に電子部品E1が吸着されるまでの時間を示している。
【0118】
また、
図16に示す曲線W20は、S226の処理において算出される近似関数の一例であり、次のように算出される。即ち、制御部70の決定処理部77は、
図16に示すグラフ上において、上記の3つの経過時間T21、T22、T23と、それらの3つの経過時間T21、T22、T23が算出された3つの微分波形と対応する3つの吸着ノズル54の高さ位置と、に対応する3点P21、P22、P23を検出し、これらの3点P21、P22、P23から算出される指数近似式を上記近似関数とする。
【0119】
次に、制御部70の決定処理部77は、S226で算出した近似関数について、上記経過時間が所定の閾値となるときの吸着ノズル54の高さ位置に基づいて吸着高さ位置を決定し(S228)、吸着高さ位置検出処理を終了する。
図16に示す例では、上記閾値をTH2で示す。この閾値TH2は、0近傍の値で予め設定される。
図16に示す例では、曲線W20上において閾値TH2と対応する高さ位置H1が、吸着ノズル54の吸着高さ位置として決定される。なお、制御部70の決定処理部77がS220からS228で実行する処理は、決定処理の一例である。
【0120】
(実施形態3の効果)
以上説明したように本実施形態では、制御部70の決定処理部77は、上記経過時間と上記経過時間が算出された微分波形と対応する距離とから近似関数を算出し、算出された近似関数から吸着高さ位置を決定する。この近似関数は、
図16に示すように、波形の観測を少なくとも3回行うことで算出することができる。このため、波形の観測についてより少ない回数で吸着高さ位置を検出することができ、吸着高さ位置検出処理に要する時間を一層短縮することができる。
【0121】
(実施形態4)
次に、実施形態4の吸着高さ位置検出処理を説明する。実施形態4、実施形態5、実施形態6では、
図17に示すように、吸着ノズル54に負圧を発生させるための構成において、圧力センサ60(
図3参照)の替わりに流量センサ(測定部の一例)360が設けられている。表面実装機1のその他の構成については、実施形態1と同様である。流量センサ360は、吸着ノズル54近傍の吸引路56内を流れる吸気の流量を流量値として制御部70に出力する。吸引路56内の負圧が大きくなると吸引路56内の真空度が高くなり、吸引路56内を流れる吸気の流量が少なくなるので、このように吸引路56内の流量を測定することで、吸引路56内の負圧の大きさを間接的に測定することができる。
【0122】
本実施形態では、制御部70の観測処理部76及び決定処理部77は、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いて実施形態1で説明した吸着高さ位置検出処理と同様の処理を実行する。ここで、
図18のグラフは、実施形態1における
図8のグラフと対応するグラフである。
図18の横軸は時間軸であり、吸着ノズル54による電子部品E1の吸引が開始された時点、即ち制御部70によってバルブ62が開状態とされた時点を0としている。
図18の縦軸は流量センサ360から出力される流量値を示しており、グラフの下側にいくほど流量が少ない、即ち負圧が大きい(吸引路56内の真空度が高い)ものとされる。
【0123】
図18に示す波形W30は、
図8に示す基準波形W0と対応する基準波形であり、
図18に示す波形W31、W32、W33、W35は、それぞれ
図8に示す通常波形W1、W2、W3、W5と対応する通常波形である。即ち、基準波形W30は、吸着ノズル54の高さ位置が
図7(A)の位置にあるときにS12の処理(
図6参照)で観測される波形であり、通常波形W31、W32、W33、W35は、それぞれ吸着ノズル54の高さ位置が
図7(B)、
図7(C)、
図7(D)、
図7(F)の位置にあるときにS18の処理(
図6参照)で観測される波形である。
【0124】
図18の基準波形W30で示されるように、本実施形態においてS12の処理で測定される流量は、吸着ノズル54による吸引が開始されるのと同時に大きく立ち上がり、流量が一旦最大流量となった後、流量が負圧発生部64で発生される負圧の流量と等しくなるまで緩やかに下降しながら安定し、流量が一定となる。一方、基準波形W31は、吸引が開始されて流量が最大流量となった後、載置面から浮き上がった電子部品E1が吸着ノズル54に吸着されるまでの間、緩やかに下降しながら負圧発生部64で発生される負圧の流量に近づいていく。そして、基準波形W31は、電子部品E1が吸着ノズル54に吸着された時点TA1で再び大きく下降し(二度目の下降点)、上記所定時間が経過するまでの間、
図8のグラフ上で曲線を描きながら真空状態における流量値に収束する形で下降する。
【0125】
図19のグラフは、実施形態1における
図9のグラフと対応するグラフである。
図19の横軸は
図18の横軸と同様である。
図19の縦軸は流量の差分を示しており、グラフの下側にいくほど基準波形W30との流量の差分が大きいものとされる。
図19に示す波形D31、D32、D33、D35は、それぞれ
図9に示す差分波形D1、D2、D3、D5と対応する通常波形である。また、
図19に示すTH3は、
図9に示す所定の閾値と対応する閾値であり、
図19に示す時間T31、T32、T33、T35は、それぞれ
図9に示す経過時間T1、T2、T3、T5と対応する経過時間である。
【0126】
従って本実施形態では、次のようにして吸着高さ位置が検出される。即ち、経過時間T31、T32、T33、T35の差が、上記第1の所定値以下であり、かつ、経過時間T31、T32、T33、T35の差が第1の所定値以下であるとされた2つの差分波形のうち一方の差分波形についての経過時間が上記第3の所定値以下である場合、その経過時間が算出された差分波形と対応する通常波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定する。
【0127】
(実施形態4の効果)
以上説明したように本実施形態では、流量を測定することで負圧の大きさを間接的に測定する場合であっても、負圧の大きさの時間変化を基準波形及び通常波形として観測することができ、基準波形及び通常波形から差分波形を算出することができる。このため、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いながら、様々な電子部品E1について、高い精度で吸着高さ位置を決定することができる。
【0128】
(実施形態5)
次に、実施形態5の吸着高さ位置検出処理を説明する。本実施形態では、制御部70の観測処理部76及び決定処理部77は、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いて実施形態2で説明した吸着高さ位置検出処理と同様の処理を実行する。ここで、
図20、
図21のグラフは、実施形態2における
図11、
図12のグラフと対応するグラフである。
【0129】
図20に示す波形W41、W42、W43、W45は、それぞれ
図11に示す波形W11、W12、W13、W15と対応する波形である。また、
図20におけるTA41、TA42、TA43、TA45は、それぞれ各波形W41、W42、W43、W45の二度目の下降点を示している。また、
図21における各ピークPK41、PK42、PK43、PK45は、各波形W41、W42、W43、W45から算出される各微分波形についての2回目のピークを示している。また、
図21におけるT41、T42、T43、T45は、各微分波形についての上記経過時間を示しており、各微分波形についての2回目のピークPK41、PK42、PK43、PK45が発生した時点と対応している。
【0130】
従って本実施形態では、次のようにして吸着高さ位置が検出される。即ち、経過時間T41、T42、T43、T45の差が、上記第2の所定値以下であり、かつ、経過時間T41、T42、T43、T45の差が第2の所定値以下であるとされた2つの微分波形のうち一方の微分波形についての経過時間が上記第3の所定値以下である場合、その経過時間が算出された微分波形と対応する波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定する。
【0131】
(実施形態5の効果)
以上説明したように本実施形態では、流量を測定することで負圧の大きさを間接的に測定する場合であっても、負圧の大きさの時間変化を波形として観測することができ、観測された波形から微分波形を算出することができる。このため、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いながら、高い精度で吸着高さ位置を決定することができ、さらに、吸着高さ位置検出処理に要する時間を短縮することができる。
【0132】
(実施形態6)
次に、実施形態6の吸着高さ位置検出処理を説明する。本実施形態では、制御部70の観測処理部76及び決定処理部77は、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いて実施形態3で説明した吸着高さ位置検出処理と同様の処理を実行する。ここで、
図22、
図23、
図24のグラフは、実施形態3における
図14、
図15、
図16のグラフと対応するグラフである。なお、
図24では、横軸と縦軸が
図16のものと逆とされている。
【0133】
図22に示す波形W51、W52、W53は、それぞれ
図14に示す波形W21、W22、W23と対応する波形である。また、
図20におけるTA51、TA52、TA53は、それぞれ各波形W51、W52、W53の二度目の下降点を示している。また、
図23における各ピークPK51、PK52、PK53は、各波形W51、W52、W53から算出される各微分波形についての2回目のピークを示している。また、
図23におけるT51、T52、T53は、各微分波形についての上記経過時間を示しており、各微分波形についての2回目のピークPK51、PK52、PK53が発生した時点と対応している。
【0134】
図24に示す直線L50は、S226の処理において算出される近似関数の一例であり、次のように算出される。即ち、制御部70の決定処理部77は、
図24に示すグラフ上において、上記の3つの経過時間T51、T52、T53と、それらの3つの経過時間T51、T52、T53が算出された3つの微分波形と対応する3つの吸着ノズル54の高さ位置と、に対応する3点P51、P52、P53を検出し、これらの3点P21、P22、P23から最小二乗法を用いて算出される直線近似式を上記近似関数とする。また、
図24では、上記経過時間についての所定の閾値をTH4で示す。従って本実施形態では、次のようにして吸着高さ位置が検出される。即ち、
図24で示される近似関数(直線L50)上において閾値TH4と対応する高さ位置H2が、吸着高さ位置として決定される。
【0135】
(実施形態6の効果)
以上説明したように本実施形態では、流量を測定することで負圧の大きさを間接的に測定する場合であっても、負圧の大きさの時間変化を波形として観測することができ、観測された波形から微分波形を算出し、さらに微分波形に基づいて近似関数を算出することができる。このため、圧力センサ60の替わりに流量センサ360を用いながら、高い精度で吸着高さ位置を決定することができ、さらに、吸着高さ位置検出処理に要する時間を一層短縮することができる。
【0136】
(実施形態7)
次に、実施形態7の吸着高さ位置検出処理について、
図25に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態は、吸着高さ位置検出処理の一部が実施形態1のものと異なっている。本実施形態の吸着高さ位置検出処理では、制御部70の観測処理部76は、まず、
図25に示すS10、S12、S14、S16、S18、S20の処理を順に実行する。これらの処理は、実施形態1におけるS10、S12、S14、S16、S18、S20(
図6参照)の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0137】
制御部70の観測処理部76は、S214の処理が終了すると、
図6に示すS22と対応する処理を実行することなく、S24に移行する。その後、制御部70の決定処理部77は、
図25に示すS24、S26、S28の処理を順に実行する。これらの処理は、実施形態1におけるS24、S26、S28(
図6参照)の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0138】
制御部70の決定処理部77は、S28の処理が実行すると、
図6に示すS30、S32と対応する処理を実行することなく、S334に移行する。制御部70の決定処理部77は、S334では、S28で算出した経過時間が第3の所定値以下であるのか否か判断する。この第3の所定値は、実施形態1で説明したものと同様であり、表面実装機1毎に評価試験に基づいて予め設定される。
【0139】
制御部70の決定処理部77は、S334で経過時間が第3の所定値以下であると判断すると(S334:YES)、第3の所定値以下とされた経過時間が算出された差分波形と対応する通常波形について、その通常波形が観測されたときの吸着ノズル54の高さ位置を吸着高さ位置として決定し(S36)、吸着高さ位置検出処理を終了する。制御部70の決定処理部77は、S334で経過時間が第3の所定値以下でないと判断すると(S334:NO)、S16に戻る。
【0140】
(実施形態7の効果)
以上説明したように本実施形態は、吸着高さ位置検出処理において、第1の所定値を用いた判断を実行することなく、第3の所定値を用いた判断のみで吸着高さ位置を決定する点で実施形態1と異なっている。例えば、S28で算出された経過時間が十分に小さい場合には、実施形態1における「経過時間の差」を算出しなくとも、吸着ノズル54が電子部品E1に近接しているものとみなすことができ、第3の所定値を用いた判断のみで吸着高さ位置を決定することができる。このように本実施形態では、実施形態1と比べて簡単な決定方法で吸着高さ位置を決定することができる。
【0141】
(他の実施形態)
本明細書で開示される技術は上記既述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記の各実施形態では、吸着ノズルが上下に昇降する構成を例示したが、吸着ノズルが上下方向に固定されており、電子部品が載置された載置面が上下に昇降する構成であってもよい。この場合、載置面の高さ位置を変えることで、電子部品と吸着ノズルの間の距離を変えることができ、吸着高さ位置決定処理では、各電子部品について最適な載置面の高さ位置を検出することができる。
【0142】
(2)上記の各実施形態では、電子部品の一例としてブロック状の電子部品を例示したが、電子部品の形状やサイズ等は限定されない。電子部品が凹部や凸部を有する構成であってもよい。また、吸着ノズルによって吸着される電子部品の部位は電子部品の上面に限定されず、吸着ノズルの先端部が密閉される部位を吸着部位としてもよい。例えば吸着対象とされる部品がレンズを有する部品である場合、レンズ部分を回避した部位を吸着部位としてもよい。また、吸着ノズルが吸着する部品は電子部品に限定されない。
【0143】
(3)上記の各実施形態では、吸着高さ位置の検出が、自動運転中の搬送状態に実行される例、又は、自動運転の停止中に、入力部が吸着高さ位置の検出を開始させるための入力を外部から受け付けることで実行される例を示したが、これに限定されない。例えば、自動運転の停止中に、フィーダ型供給装置の各フィーダが交換された際に吸着高さ位置の検出を実行されてもよい。
【0144】
(4)上記の各実施形態では、部品供給装置の一例としてフィーダ型供給装置を例示したが、これに限定されない。例えばトレイ上に複数の電子部品が載置されたトレイ型の部品供給装置であってもよい。
【0145】
(5)上記の各実施形態では、測定部の一例として圧力センサ及び流量センサを例示したが、吸着部における負圧の大きさを直接的又は間接的に測定できるものであればよく、圧力センサ及び流量センサに限定されない。
【0146】
(6)上記の各実施形態以外にも、表面実装機の構成については、適宜に変更可能である。
【0147】
(7)上記の実施形態7では、実施形態1の吸着高さ位置検出処理において、第1の所定値を用いた判断を実行することなく、第3の所定値を用いた判断のみで吸着高さ位置を決定する例を示したが、実施形態2の吸着高さ位置検出処理において、第2の所定値を用いた判断を実行することなく、第3の所定値を用いた判断のみで吸着高さ位置を決定してもよい。
【0148】
以上、各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。