(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下の実施の形態の構成は例示であり、本発明は実施の形態の構成に限定されない。
〈実施形態1〉
(1)位置情報提供システムの概要
図1は、本発明に係る位置情報提供システムの概略図である。
本例の位置情報提供システム10は、無線標識を送出する複数の標識モジュール1や、該無線標識に応じた位置情報をユーザ端末4に提供する位置情報サーバ2、ユーザ端末4と位置情報サーバ2との通信を中継する無線LAN基地局3とを備える。
【0018】
位置情報提供システム10は、ショッピングモールや地下街などのGPS信号が得られない場所で、位置情報を提供するシステムである。
先ず、位置情報を提供する対象エリアの照明器具5の位置情報をデータベース化し、この照明器具5のそれぞれに標識モジュールとしてのプレースステッカー(登録商標)1を貼付する。各プレースステッカー1は、この照明器具5からの照明光を無線標識、例えば無線LANのビーコンフレームに変換し、当該照明光の照射範囲と対応する範囲へ送出する。なお、この無線標識は、前記照明器具5の位置情報と対応付けて位置情報データベースに登録されている。
【0019】
そして、ユーザが測位を指示すると、ユーザ端末4は無線標識を受信し、この無線標識と対応する位置情報を位置情報サーバ2に要求する。
【0020】
この要求を受けた位置情報サーバ2は、位置情報データベースを参照して対応する位置情報を当該ユーザ端末4に提供する。
【0021】
これにより位置情報提供システム10は、位置情報としてユーザに現在位置や周辺の地図、周辺に存在する店舗の情報、現在位置から目的地までのナビゲーション情報などを提供できる。
【0022】
(2)位置情報サーバのハードウェア構成
図2は、位置情報サーバ2のハードウェア構成を示した図である。位置情報サーバ2は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、ブリッジ205と、外部バス206と、インタフェース207と、入力装置208と、出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、通信装置215とを備える。
【0023】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って位置情報サーバ2内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。
【0024】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Co
mponent Interconnect/Interface)バスなどの外部バス
206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0025】
入力装置208は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。位置情報サーバ2のオペレータは、該入力装置208を操作することにより、位置情報サーバ2に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0026】
出力装置210は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置およびランプなどの表示装置と、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置で構成される。出力装置210は、例えば、CPU201の処理結果を出力する。具体的には、入力されたデータやシステムの稼働状況等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、メッセージや警告音、コンテンツの音声データ等を音として出力する。
【0027】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる位置情報サーバ2の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置であり、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含むことができる。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置211は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。また、このスト
レージ装置211には、後述の位置情報データベースなどを記憶する。
【0028】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、情報処理サーバ2に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203に出力する。
【0029】
通信装置215は、例えば、通信網12に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置215は、無線LAN(Local Are
a Network)対応通信装置であっても、ワイヤレスUSB対応通信装置であって
も、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0030】
(3)本実施形態にかかる位置情報サーバの機能
図3は、本実施形態にかかる位置情報サーバ2の機能ブロック図である。当該位置情報サーバ2は、要求受信部231と、抽出部232と、位置情報送信部233を備える。これら要求受信部231、抽出部232、位置情報送信部233の機能は、主にCPU201がプログラムに従って処理を実行して通信装置215やストレージ装置211等の各部を制御して実現している。
【0031】
要求受信部231は、無線標識を受信したユーザ端末4から通信装置215を介して当該無線標識に対応する位置情報の要求(リクエスト)を受信する。
【0032】
抽出部232は、照明器具5の設置位置に係る位置情報と当該照明器具5による照明範囲と対応する範囲に送信される前記無線標識との対応関係を記憶した位置情報データベースを参照して、前記ユーザ端末から要求を受けた前記無線標識に対応する位置情報を抽出する。
位置情報送信部233は、抽出部232で抽出した位置情報をユーザ端末4に送信する。
【0033】
(4)プレースステッカーの構成
図4はプレースステッカーの平面図、
図5はプレースステッカーの分解斜視図である。
図4,
図5に示すように、プレースステッカー1は、太陽電池シート11と送信部12を備えている。
【0034】
太陽電池シート11は、照明器具5からの照明光を電力に変換し、送信部12に供給する。
送信部12は、太陽電池シート11からの電力を所定電圧に変換するDC−DCコンバータや識別情報等を記憶するROM、当該識別情報を所定形式の無線標識(ビーコンフレーム)として送信する送信回路等を含むICチップ121と、無線標識を送出するアンテナパターン122等を有している。
【0035】
太陽電池シート11は、可撓性の基材111の表面側に、裏面電極112、光吸収層113、表面電極114の順に積層している。光吸収層113は、例えばアモルファスシリコン薄膜や、CIGS系薄膜、色素増感型薄膜を用いることができる。光吸収層113に照明器具5からの照明光が照射されると、この光吸収層113を挟む電極112・114間に電位差が生じ、各電極112・114の端子112A・114Aから電力が得られる。
【0036】
送信部12のICチップ121は、上記電極112・114の端子112A・114A上に接続される。このとき基材111にアンテナパターン122を形成しておくことで、
ICチップ121を端子112A・114Aと接続するのと共に、ICチップ121のアンテナ端子をアンテナパターン122と接続する。
【0037】
また、太陽電池シート11の裏面には、粘着層13が設けられ、その更に裏面に剥離紙14が設けられる。これによりプレースステッカー1は、剥離紙14を剥がすだけで容易に照明器具5等へ貼り付けることができる。
なお、粘着層13及び剥離紙14の代わりに、マグネットシートを設けて、金属面に磁力で貼り付ける構成としても良い。
また、太陽電池シート11及び送信部12の表面に透明な保護層を設けても良い。
【0038】
(5)プレースステッカーの仕様例
プレースステッカー1の仕様は、照明器具5の照明光を電力に変換し、その電力により無線標識を送信出来れば良く、照明器具の照度や照明器具から床面までの高さ、照明器具の設置間隔等に基づいて任意に設定出来る。
【0039】
例えば、本実施形態のプレースステッカー1は、以下の仕様を採用している。
送信部12:
動作電圧=+2.8V〜+3.6V
消費電流=Tx:140mA
送信出力=0.6mW〜1.25mW
通信規格=IEEE802.11b/g両対応
なお、送信出力は、送信する無線標識の到達する範囲が、前記照明器具5から照射される照明光の照射範囲と対応するように設定されている。例えば無線標識の到達範囲が3m,5m,7m,10m等となるように送信部12を設計したプレースステッカー1をそれぞれ作成しておき、貼付する照明器具5の照明範囲と対応するプレースステッカー1を選択する。また、送信部12のROM等に無線標識の到達範囲を示す設定情報を書き込んでおき、この設定情報に従って無線標識の送信出力を調整する調整回路を送信部12が備える構成であっても良い。
【0040】
太陽電池シート11:
寸法=幅20mm×300mm
最大出力電力=0.6W
最大出力電圧=3V
最大出力電流=0.2A
なお、太陽電池シート11の寸法は、送信部12が必要とする電力を賄える面積であれば良い。例えば、15mm×250mmや65mm×78mmであっても良い。
【0041】
(6)プレースステッカーの設置例
図6,
図7は、蛍光灯を用いた照明器具5にプレースステッカー1を設置した例を示している。
図6,
図7の例では、プレースステッカー1を反射板51の反射面上であって、蛍光灯52の直上に貼付している。このようにプレースステッカー1を蛍光灯52に近接して配置することで、光源である蛍光灯52からの光束を効率良く受光できるので、送信部12の消費電力を賄うのに必要な太陽電池シート11の面積が抑えられる。更に、
図6,
図7の例では、太陽電池シート11の幅1Wに対して長さ1Lを3倍以上とした長細い形状を採用し、このプレースステッカー1の長手方向と直管蛍光灯52の長手方向とが平行となるようにプレースステッカー1を配置することにより、蛍光灯52からの光束を効率良く受光できるようにしている。
【0042】
また、プレースステッカー1を蛍光灯52の直上に配置した場合、蛍光灯5の下にいる
来場者から見てプレースステッカー1が蛍光灯52の裏に位置するので、プレースステッカー1を貼付したことによって来場者等へ悪影響を及ぼすことはない。例えプレースステッカー1が、蛍光灯52からの光を数%吸収したとしても、来場者が知覚できる程、照度が低下することは無く、照明効果に悪影響を与えることは無い。
【0043】
更に、
図6,
図7の例では、蛍光灯52を囲む反射板51の奥側、即ち蛍光灯52を挟んで反射板51の開口部53と反対側にプレースステッカー1を貼付した。IEEE802.11b/gの無線LANで使用する電波は、2.4〜2.5GHzと、比較的高い周波数であるので、直進性が高く、光に近い特性を示すので、反射板51の奥側に位置させることにより、無線標識の送出方向と照明光の照射方向とを近似させ、無線標識の到達範囲と当該照明器具5の照明範囲とを対応させることを容易にしている。
【0044】
図8は、電球を用いた照明器具5にプレースステッカー1を設置した例を示している。
図8の例では、プレースステッカー1を反射板54の反射面上に貼付している。このようにプレースステッカー1を電球55に近接して配置することで、光源である電球55からの光束を効率良く受光できる。
【0045】
図6−
図8の例では、照明器具5にプレースステッカー1を貼付しており、照明光の照射元である光源と無線標識の送出元である送信部12とを略同じ位置に置くことで、無線標識の到達範囲と当該照明器具5の照明範囲とを対応させることを容易にしている。このように照明器具5とプレースステッカー1とを同じ位置に配置することが好ましいが、これに限らずプレースステッカー1は、照明器具5からの照明光を受光できる位置に配置すれば良い。
【0046】
例えば、
図9に示すように照明器具5の直下の床面61、ベンチ62、植栽63等にプレースステッカー1を設けても良い。このように照明器具5とプレースステッカー1を離して配置しても水平面内で略同じ位置にあれば無線標識の到達範囲と当該照明器具5の照明範囲とを対応させることが容易である。更に、プレースステッカー1を床面61など来場者に近い位置に配置することで、無線標識の送信出力を低くした場合でもユーザ端末4で受信できるため、無線標識の到達範囲を絞ることで、高精度に位置を特定できるようにすることが可能になる。
【0047】
なお、本実施形態では、電波による無線標識(電波標識)を送信する例を示したが、照明器具5を識別するための識別情報をユーザ端末4に伝達できれば、これに限らず、光や音波などによる無線標識であっても良い。
【0048】
(7)ユーザ端末の構成
図10は、本実施形態におけるユーザ端末4の概略構成図である。ユーザ端末4は、ユーザに携帯されるコンピュータであり、例えば携帯電話、スマートフォン、ノート型PC(Personal Computer)、携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレーヤ
、カメラ、位置情報記録装置(ロガー)などである。
【0049】
図10に示すように、ユーザ端末4は、CPUやメインメモリ等よりなる演算処理部401、演算処理の為のデータやソフトウェアを記憶した記憶部(例えばフラッシュメモリ)403、入出力部404、通信制御部(CCU:Communication Control Unit)405等を備えている。
【0050】
該入出力部404には、キーボードやボタン、ダイヤル、ポインティングデバイス、タッチパネル等の入力デバイス、そしてディスプレイやスピーカ表示ライト等の出力デバイスが適宜備えられる。
【0051】
CCU405は、ネットワークを介して他のコンピュータと通信を行うものである。CCU405は、例えば無線LANユニットやブルートゥース(登録商標)ユニットであり、プレースステッカー1からの無線標識の受信も行う。
【0052】
記憶部403には、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトがインストールされている。
【0053】
演算処理部401は、前記OSやアプリケーションプログラムを記憶部403から適宜読み出して実行し、入出力部404やCCU405から入力された情報、及び記憶部403から読み出した情報を演算処理することにより、位置情報取得部や、位置情報要求部、出力制御部としても機能する。
【0054】
この位置情報取得部としては、ユーザから測位の指示を受けた場合、或いは所定のタイミングでCCU405を制御してプレースステッカー1からの無線標識を受信する。
位置情報要求部は、無線標識に含まれる照明器具5の識別情報やユーザの識別情報などを位置情報サーバ2に送り、無線標識に対応する位置情報の提供を要求する。
出力制御部は、位置情報サーバ2から受信した位置情報に基いて、位置情報の表示や音声出力といった位置情報の出力処理を行う。なお、この出力処理は、ユーザ端末が例えばカメラやロガーである場合に、位置情報を記憶媒体に書き込む処理であっても良い。また、出力処理は、位置情報を他の装置に送信する処理であっても良い。
【0055】
(8)位置情報提供方法
図11は、上記位置情報提供システム10によって実行される位置情報提供方法の説明図である。
【0056】
先ず、照明器具5が点灯されると、この照明器具5からの照明光をプレースステッカー1が光電変換し、所定の周期(例えば100ms)で無線標識を送出する(ステップS1)。
【0057】
ユーザが測位を指示すると、ユーザ端末4の位置情報取得部がプレースステッカー1からの無線標識を取得する(ステップS2)。
ユーザ端末4の位置情報要求部は、無線標識に基き、無線LAN基地局3(アクセスポイント)を介して位置情報サーバ2に位置情報を要求する(ステップS3)。
【0058】
位置情報サーバ2は、ユーザ端末4からの位置情報の要求を要求受信部で受信すると(ステップS4)、抽出部が位置情報データベースを参照して、当該無線標識に対応する位置情報を求める(ステップS5)。
【0059】
そして位置情報サーバ2の位置情報送信部は、ステップS5で抽出した位置情報を要求元のユーザ端末4に送信する(ステップS6)。
位置情報を受信したユーザ端末4は、この位置情報の表示といった位置情報の出力処理を行う(ステップS7)。
【0060】
(9)具体例
図12は、測位対象エリアにおける照明器具の設置例を示す図である。
図12において、網掛け部分が店舗であり、この店舗間の白抜き部分が通路である。照明器具5は、この店舗及び通路に設置されている。なお、
図12において照明器具5は、測位対象エリア全域にわたって多数配置されているので、便宜上左下の一つにのみ符号5を付したが、この符号5を付した図形と同じものが全て照明器具5を示している。
【0061】
位置情報サーバ2は、これらの照明器具5の位置情報と無線標識(照明器具5の識別情報)とを対応付けた位置情報データベースをストレージ装置211に格納している。
図13は、位置情報データベースの一例を示す図である。
【0062】
図13において、照明器具の識別情報は、少なくとも測位対象エリア毎にユニークな情報である。
図13の例では、この照明器具の識別情報と対応付けられた位置情報は、座標情報、位置関連情報、地図などの位置関連ファイルを有している。座標情報は、緯度・経度など、照明器具の設置位置を示す情報である。位置関連情報は、当該設置位置の周囲にある店舗名や周囲の店舗で行っているサービス、周囲にある電話や自動販売機等の施設の情報など、当該設置位置に係る情報である。位置関連ファイルは、測位対象エリアのフロアマップやイベントのスケジュール、周辺店舗のクーポンなど、ユーザ端末4に提供するファイルである。
【0063】
位置情報サーバ2は、
図13の位置情報データベースを参照することにより、無線標識に基づく照明器具5の識別情報と対応する位置情報をユーザ端末4に提供することができる。
【0064】
また、位置情報サーバ2は、位置情報の要求時にユーザ端末4からユーザの識別情報を受けた場合に、当該ユーザが会員登録している店舗の情報などを位置情報データベースの位置関連情報から抽出してユーザ端末4に送信できる。これによりユーザが登録している店舗に近づいた際、タイムリーにその店舗の情報を提供できる。
【0065】
また、位置情報サーバ2は、位置情報の要求時にユーザ端末4から目的地の情報を受けた場合に、位置関連ファイルのフロアマップを読み出し、当該ユーザ端末4の現在位置から目的地までの経路を追記してユーザ端末4に提供しても良い。
【0066】
(10)測位手法
図14は、
図11のステップS5で、位置情報を求める際の測位手法の説明図である。
図14は、プレースステッカー1が所定の間隔を空けて配置された例を示している。なお、
図14では、プレースステッカー1を個別に示す場合には、プレースステッカー1−1,1−2,1−3のように個別の符号を用いて説明する。
【0067】
(10-1)測位手法の最も簡単な例としては、個々のプレースステッカー1−1,1−2,1−3の識別情報と位置情報とを一対一に対応付けて位置情報データベース記憶しておき、プレースステッカーの識別情報を取得した場合に、対応する位置情報を得るものである。
【0068】
例えば、フロア61上のユーザがプレースステッカー1−1の下でユーザ端末4を操作し、測位を開始すると、プレースステッカー1−1からの無線標識:2434321321を受信する。そしてユーザ端末4が、この無線標識:2434321321を位置情報サーバ2に送信し、この無線標識と対応する位置情報を位置情報サーバ2に要求すると、
図13の例では、例えば座標情報(135,256)が得られ、位置関連ファイルとして得られる地図上に、そ
の座標点が現在位置として表示される。
【0069】
この場合、受信した無線標識によって特定されるプレースステッカー1の設置位置をユーザの現在位置とみなすので、各プレースステッカー1からの無線標識の受信可能範囲が狭い程、ユーザの位置を狭い範囲に特定することができ、測位精度が向上することになる。なお、複数の無線標識を受信した場合には、最も電波強度の強い無線標識を選択すれば良い。
【0070】
(10-2)複数のプレースステッカー1からの無線標識を受信し、各プレースステッカーからの距離を求め、当該距離と各プレースステッカーの位置とからユーザの現在位置を求めても良い。
【0071】
例えば、プレースステッカー1から出力される無線標識の電界強度は、距離と共に低下するので、プレースステッカー1による無線標識の出力を予め定めておき、受信した無線標識の電界強度から距離を算出する。
【0072】
図15は、複数のプレースステッカー1からの無線標識を用いて測位する手法の説明図である。
図15では、プレースステッカー1−1,1−2,1−9からの3つの無線標識を受信した場合を示している。
【0073】
各プレースステッカー1−1,1−2,1−9からの無線標識の出力を1.6mWと設定しておき、ユーザ端末4は、受信した各無線標識の電界強度から各プレースステッカー1−1,1−2,1−9との距離を求める。
【0074】
ここで、プレースステッカー1−1との距離がr1であった場合、プレースステッカー1−1の設置位置(135,256)を中心とした半径r1の円周R1上にユーザ端末4
が存在することがわかる。同様に、プレースステッカー1−2との距離がr2であった場合、プレースステッカー1−2の設置位置(235,256)を中心とした半径r2の円
周R2上にユーザ端末4が存在し、プレースステッカー1−9との距離がr9であった場合、プレースステッカー1−9の設置位置(185,356)を中心とした半径r9の円
周R9上にユーザ端末4が存在することがわかる。従って、円周R1,R2,R9の交わる箇所91がユーザ端末4の現在位置であることが求まる。
【0075】
なお、上記の例では3つの標識情報を用いたが、これに限らず4つ以上の標識情報を用いても良い。また、2つの標識情報を用いた場合、例えば
図15の例で、プレースステッカー1−1,1−2の標識情報を用いた場合、円周R1,R2の交わる箇所は90,91の2箇所となり、一つに絞ることができないが、2箇所90,91の中間をとる或いは前回の測位地点に近い方をとる等、選択条件を予め定めておき、2つの標識情報からユーザ端末4の位置を求められるようにしても良い。
【0076】
複数の無線標識を受信したユーザ端末が、各無線標識の識別情報と電界強度を位置情報サーバ2に送信すると、位置情報サーバ2は当該識別情報と対応する各プレースステッカー1の位置情報と電界強度に基づく距離とから、
図15のようにユーザ端末4の現在位置を特定し、位置情報をユーザ端末4に送信する。このように位置の特定は、位置情報サーバ2で行うのが望ましいが、これに限らず、ユーザ端末4が求めても良い。例えば、受信した無線標識の識別情報を位置情報サーバ2へ送り、各プレースステッカー1の座標情報を取得して、この座標情報と電界強度に基づく各プレースステッカーとの距離に基づいて
図15のようにユーザ端末4の現在位置を求めても良い。
【0077】
また、上記の例では、受信した無線標識の電界強度に基づいてプレースステッカー1との距離を求めたが、これに限らず、無線標識がプレースステッカー1から出力されてユーザ端末4に受信されるまでにかかった時間に基づいてプレースステッカー1とユーザ端末4との距離を求め、この各プレースステッカー1との距離と各プレースステッカーの識別情報とから上記のようにユーザ端末4の位置を求めても良い。
【0078】
(11)配置レイアウト
上記のように本実施形態では、プレースステッカー1の無線標識に基づいて測位を行う
ため、測位を行う可能性があるエリアには適切にプレースステッカー1を配置する必要がある。
【0079】
特に、複数の無線標識に基づいて測位を行う場合、測位するユーザ端末4を囲むようにプレースステッカー1が配置されているのが良い。このため、少なくとも部屋の隅や壁際に、プレースステッカー1が存在していることがのぞましい。また、少ない数のプレースステッカー1で広い範囲を効率よくカバーするためには、プレースステッカー1をハニカム状に配置するのが望ましい。
図16は、プレースステッカー1をハニカム状に配置した例を示す図である。
【0080】
図16に示すように、ハニカム状に並ぶ正六角形の頂点と中心にプレースステッカー1を配置する。各プレースステッカー1を中心に同じ直径で描いた円がムラなく並ぶことからもわかるように、このハニカム状の配置とすることで無駄なく広い範囲をカバーすることができる。
【0081】
また、通路のように、細長い空間では、プレースステッカー1をジグザグに配置しても良い。
図17は、通路80にプレースステッカー1をジグザグに配置し、各プレースステッカー1を中心に、隣接するプレースステッカー1との距離を二分する半径で描いた円が隣同士で接するように配置した。
【0082】
そして、隣接するプレースステッカー1の間隔は、各プレースステッカー1による無線標識の出力に基づいて適切に設定している。例えば、プレースステッカー1から出力される無線標識の電界強度は、プレースステッカー1からの距離の2乗に反比例して低下する。
【0083】
図18は、無線標識の電界強度とプレースステッカー1からの距離との関係を示す図である。
図18では、横軸にプレースステッカーからの距離rをとり、縦軸に無線標識の電界強度をとる。また、横軸上のA1は、プレースステッカー1−1の設置位置、即ちプレースステッカー1−1からの距離が0の位置を示す。同様に横軸上のA2は、プレースステッカー1−2の設置位置、即ちプレースステッカー1−2からの距離が0の位置を示す。
【0084】
ライン81が、プレースステッカー1−1から出力される無線標識の電界強度と距離との関係を示している。ライン81が示すように、プレースステッカー1−1から近い範囲84では、ライン81の傾き83が、プレースステッカー1−1から遠い範囲85と比べて急であり、距離の変化に対する電界強度の変化量が大きい。一方、プレースステッカー1−1から遠い範囲85では、距離の変化に対する電界強度の変化量が小さい。このため、に、プレースステッカー1−1から近い範囲(急激減衰範囲)84では、プレースステッカー1−1から出力された無線標識の電界強度に基づいて距離が精度良く求められるのに対し、プレースステッカー1−1から遠い範囲85では、プレースステッカー1−1から出力された無線標識の電界強度に基づく距離の精度が低下する。
【0085】
そこで、プレースステッカー1−1から、隣接するプレースステッカー1−2との中間点付近までをプレースステッカー1−1から出力された無線標識の電界強度に基づいて距離が精度良く求められる範囲84でカバーし、プレースステッカー1−2から、中間点付近までをプレースステッカー1−2から出力された無線標識の電界強度に基づいて距離が精度良く求められる範囲でカバーするように、プレースステッカー1−1,1−2の間隔を設定する。ここで距離が精度良く求められる範囲84とは、傾き83が急な範囲であり、式(1)で示すように無線標識の電界強度f(r)のプレースステッカー1−1からの距離rの1次微分が所定値以下の範囲である。同様に、プレースステッカー1−2から中
間点までの範囲も式(1)の関係とする。
【0086】
即ち、各プレースステッカー1の出力に基づき、各プレースステッカー1から中間点までの範囲が式(1)の関係となるようにプレースステッカー1の間隔を設定する。
なお、
図16,
図17では、各プレースステッカー1から中間点までの範囲を円で示している。
【0087】
このように各プレースステッカー1を適切に配置することにより、少ないプレースステッカー1で精度良く測位を行うことができる。
【0088】
(12)無線標識の放射範囲の制御
上述のように受信した無線標識から距離を求める場合、プレースステッカー1からの直接波を受信することが肝要であり、反射波の影響が少ないことが望ましい。
【0089】
そこで本実施形態では、無線標識の放射範囲を制限している。
図19は、プレースステッカー1の送信部12付近を示す図である。
【0090】
図19(a)に示すように、プレースステッカー1の端部には、送信部12が設けられて、太陽電池シート11の光吸収層113と電気的に接続されている。
【0091】
送信部12には、無線標識を出力するためのアンテナ122が設けられており、少なくともこのアンテナ122(本実施形態ではアンテナ122を含む送信部12)を金属筐体15で被っている。金属筐体15は、矩形状の開口部151を備え、この開口部151によって、アンテナ122からの無線標識の放射範囲を制限している。
【0092】
ここで、開口部151の長辺151aを無線標識の波長以上とし、開口部の長手方向(長辺方向)とアンテナ122の長手方向とを平行に配置する。
【0093】
そして、開口部151の短辺151bを拡げることにより、無線標識の放射範囲を広げ、短編151bを狭めることにより、無線標識の放射範囲を狭めるように設定する。また、開口部151をアンテナ122に近づけることにより、無線標識の放射範囲を広げ、開口部151をアンテナ122から遠ざけることにより、無線標識の放射範囲を狭めるように設定する。
【0094】
これにより無線標識の放射範囲を適切に設定でき、反射波の影響を少なくすることができる。
【0095】
(13)発電素子の配置
プレースステッカー1は、電力を確保するため、発電素子である太陽電池シート11を光源に近づけて配置するのが良い。
【0096】
図20は、支持部16を用いてプレースステッカー1を光源52と当接又は近接させた例を示す図である。なお、本実施形態において、この近接とは、プレースステッカー1と光源との距離を10mm以下、好ましくは5mm以下で配置することとした。
【0097】
支持部16は、平面形状がプレースステッカー1と同じ厚みのあるシートで、一方の面とプレースステッカー1の裏面とを接着し、他方の面が反射板51と接着することで、プレースステッカー1を光源である蛍光管52と当接或いは近接させて配置する。
【0098】
支持部16の材質は、特に限定されないが、例えば軽くて柔軟なスポンジやゴム等のシ
ートが望ましい。
このようにプレースステッカー1を光源の近くに保持したことにより、発電量を最大限に確保できる。
【0099】
図21は、複数の太陽電池シートを備えたプレースステッカー1の例を示す図である。
図21の例では、複数の太陽電池シート11をヒンジ120で連結している。このためヒンジ120で太陽電池シート11の角度を自在に変えることができる。
図21(b),
図21(c)は、直径の異なる光源に対してプレースステッカー1を配置した例を示す図である。
図21(b),
図21(c)に示すように、複数の太陽電池シート11の角度を調整可能としたことにより、光源の直径に合わせてプレースステッカー1を配置することができ、摂取光量を最大化できる。
【0100】
なお、複数の太陽電池シート11は、電気的に接続されていれば良く、ヒンジ120を省略しても良い。例えば、支持部16によってそれぞれの太陽電池シート11を光源に沿わせて配置しても良い。この場合、太陽電池シート11の幅方向(短手方向)の中心が光源52と当接或いは近接するように配置するのが良い。
【0101】
同様に、
図22は、複数の太陽電池シートを備えたプレースステッカー1の例を示す図である。
【0102】
図22の例では、3枚の太陽電池シート11をヒンジ120で連結している。このためヒンジ120で太陽電池シート11の角度を自在に変えることができる。
図22(b),
図22(c)は、直径の異なる光源に対してプレースステッカー1を配置した例を示す図である。
図22(b),
図22(c)に示すように、複数の太陽電池シート11の角度を調整可能としたことにより、光源の直径に合わせてプレースステッカー1を配置することができ、摂取光量を最大化できる。
【0103】
なお、複数の太陽電池シート11は、電気的に接続されていれば良く、ヒンジ120を省略しても良い。例えば、支持部16によってそれぞれの太陽電池シート11を光源に沿わせて配置しても良い。この場合、太陽電池シート11の幅方向(短手方向)の中心が光源52と当接或いは近接するように配置するのが良い。
【0104】
図23は、プレースステッカー1を光源52に沿って曲げて配置した例である。
図23のプレースステッカー1は、太陽電池シート11をフレキシブル基板上に色素増感型等の薄膜太陽電池を形成したものであり、曲面状に曲げることが可能である。
【0105】
図23の例では、支持部16の光源側に凹の曲面にプレースステッカー1を貼付し、他方の面を反射板51に接着することで、光源52を囲むようにプレースステッカー1を近接させて配置した。これによりプレースステッカー1の摂取光量を最大化できる。
【0106】
図24は、太陽電池シート11と送信部12とを別体に構成した例を示す図である。プレースステッカー1は、送信部12が太陽電池シート11から電力が得られるようにコード17等で電気的に接続されていれば、太陽電池シート11と送信部12とを別体としても良い。このように太陽電池シート11と送信部12とを別体としたことにより、送信部が光源と近接していなくても良く、プレースステッカー1の設置の自由度が増す。例えば、太陽電池シート11を上記と同様に光源52と近接して配置し、送信部12を光源52から離して配置しても良い。
【0107】
(14)送信部12の構成
図25は、本実施形態のプレースステッカー1における送信部12の構成を示す図であ
る。送信部12は、無線標識(ビーコン)を出力するビーコン送信回路221や、ビーコン送信回路20に所定の電力を供給する定電圧回路222、太陽電池シート11からの電力を平滑化するキャパシタ223、他の装置との通信を制御する通信制御部224を備える。
【0108】
送信部12は、エネルギーハーベスティングによって動作するため、可能な限り省電力であることが望ましい。例えば消費電力を少なく出来れば、より小さな太陽電池シートで電力を賄うことができるようになる。
【0109】
図26は、一般的な無線LANの方式で無線標識を出力した場合の消費電力を示す図である。
図26の例では、スタンバイから復帰した期間1)に、4.52mAh消費し、CPUの駆動2)で1.50mAh消費し、CSMA/CAの衝突回避3)に8.93mAh消費する。また、無線標識の送信4)に1.84mAh、ACK受信5)に0.71mAh、スタンバイ時間6)に0.004mAhそれぞれ消費し、合計17.5mAh消費している。なお、各期間1)〜6)は、50msを1サイクル(ビーコン間隔)として繰り返し実行される。
【0110】
従って、この場合、無線標識の送信4)の際に170mAの電流を供給できるサイズの太陽電池シート11が用いられる。
【0111】
なお、太陽電池シート11の受光量は通常一定であるので、得られる電流も一定であるのに対し、送信部12の消費電流は
図26に示すように、CPUの駆動2)からACK受信5)までの短い間に大きな電流が流れ、その他の待機時には、大きな電流が必要無いことがわかる。このため、無線標識の送信4)の際に170mAの電流を供給できるサイズの太陽電池シート11を採用した場合、その他の期間1),6)等では供給電流が過剰になる。
【0112】
そこで本実施形態では、太陽電池シート11と定電圧回路222の間に、キャパシタ223を設け、待機期間1),6)でキャパシタ223に蓄えた電力を無線標識の送信等の期間2)〜5)に用いることにより、消費電力の平滑化を行っている。これによりピーク時の電流(170mA)を賄える太陽電池シート11を備えるのではなく、平滑化した電力を賄える太陽電池シート11を備えれば良いので、比較的小さな太陽電池シート11で送信部12の消費電力を賄うことができる。これによりプレースステッカー1の小型化が図れ、設置に必要な領域を小さく抑えることができる。
【0113】
通信制御部224は、ZigBee
(登録商標)やブルートゥースなど、無線で通信できるものであればどのような方式であっても良いが、本実施形態では、低消費電力であることからZigBeeを採用している。
【0114】
通信制御部224は、他の装置と通信して情報の送受信を行うことができる。例えば、メンテナンス用の管理装置と通信し、設定変更命令を受信した場合、当該設定変更命令をビーコン送信回路221に通知して設定を変更させる。
【0115】
ここで、設定の変更とは、無線標識の送信間隔や、無線標識の送信チャネル、無線標識の出力の変更等である。例えば、無線標識の送信チャネルが、同じエリアで他の通信に使われている場合、管理装置からチャネルの変更命令をプレースステッカー1に送信すると、プレースステッカー1の通信制御部224が当該変更命令を受信し、ビーコン送信回路221に送信チャネルを変更させる。同様に、無線標識の送信間隔を代えたい場合、管理装置に変更後の値を入力し、送信間隔の変更命令と変更後の値とをプレースステッカー1に送信する。そして、当該送信間隔の変更命令を受信したプレースステッカー1の通信制
御部224は、ビーコン送信回路221に無線標識の送信間隔を指定の値に変更させる。また、無線標識の出力を代えたい場合、管理装置に変更後の値を入力し、出力の変更命令と変更後の値とをプレースステッカー1に送信する。そして、当該出力の変更命令を受信したプレースステッカー1の通信制御部224は、ビーコン送信回路221に無線標識の出力を指定の値に変更させる。
【0116】
これにより設定変更を行う場合にも光源と近接するように高所に設置したプレースステッカー1を取り外す等の必要がなく、容易にメンテナンスを行うことができる。
【0117】
(15)メンテナンス方法
図28は、本実施形態における管理装置6の概略構成図である。管理装置6は、メンテナンス者に携帯されるコンピュータであり、例えば携帯電話、スマートフォン、ノート型PC(Personal Computer)などである。
【0118】
図28に示すように、管理装置6は、CPUやメインメモリ等よりなる演算処理部601、演算処理の為のデータやソフトウェアを記憶した記憶部(例えばフラッシュメモリ)603、入出力部604、通信制御部(CCU:Communication Control Unit)605等を備えている。
【0119】
該入出力部604には、キーボードやボタン、ダイヤル、ポインティングデバイス、タッチパネル等の入力デバイス、そしてディスプレイやスピーカ表示ライト等の出力デバイスが適宜備えられる。
【0120】
CCU605は、ネットワークを介して他のコンピュータと通信を行うものである。CCU605は、例えば無線LANユニットやブルートゥース(登録商標)ユニットであり、プレースステッカー1からの無線標識の受信も行う。また、本実施形態では、ZigBeeにより、プレースステッカー1の通信制御部224との通信も行う。
【0121】
記憶部603には、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトがインストールされている。
【0122】
演算処理部601は、前記OSやアプリケーションプログラムを記憶部603から適宜読み出して実行し、入出力部604やCCU605から入力された情報、及び記憶部403から読み出した情報を演算処理することにより、位置情報取得部や、位置情報要求部、測定位置受付部、比較部、変更要求部、出力制御部としても機能する。
【0123】
この位置情報取得部としては、所定のタイミングでCCU605を制御してプレースステッカー1からの無線標識を受信する。
【0124】
位置情報要求部は、無線標識に含まれる照明器具5の識別情報やユーザの識別情報などを位置情報サーバ2に送り、無線標識に対応する位置情報の提供を要求する。
【0125】
基準位置受付部としては、メンテナンス者がプレースステッカー1の校正のために基準となる位置情報を入力し、これを基準位置として記憶する。なお、基準位置の入力方法としては、座標等の位置情報を直接入力するほか、管理端末に地図を表示させ、メンテナンス処理(校正)を行う位置を選択し、この場所の位置情報を基準情報として記憶しても良い。
【0126】
比較部としては、位置情報取得部で求めた位置情報と基準位置とを比較し、基準位置との差(誤差)が所定の範囲内か否かを判定する。
【0127】
変更要求部としては、前記比較の結果、誤差が所定の範囲以上の場合、プレースステッカー1に変更命令を送信して設定変更を要求する。
【0128】
出力制御部は、位置情報サーバ2から受信した位置情報に基いて、位置情報の表示や音声出力といった位置情報の出力処理を行う。なお、この出力処理は、位置情報を記憶媒体に書き込む処理や、位置情報を他の装置に送信する処理であっても良い。
【0129】
図29は、上記管理装置6によって実行されるメンテナンス方法(校正方法)の説明図である。
【0130】
先ず、メンテナンス者は、プレースステッカー1の直下や、メンテナンスの為の所定の測定地点など、正確な位置が分かっている場所に管理装置6を配置させ、管理装置6にメンテナンス処理(校正処理)を開始させて、この位置の情報を管理装置6に入力すると、基準位置受付部がこの位置の情報を基準位置として記憶する(ステップS10)。
【0131】
次に管理装置6の位置情報取得部や位置情報要求部が、前述のユーザ端末4と同様にプレースステッカー1からの無線標識に基づいて測位を行う(ステップS20)。
【0132】
そして比較部が、ステップS20の測位の結果と基準位置とを比較し、これらの差(誤差)が所定値を超えたか否かを判定し、所定値を超えた場合(ステップS30,Yes)、各プレースステッカー1と基準位置との距離(基準距離)を求め、ステップS20で測位した際の距離と比較して、この差を無くすように出力の変更要求を各プレースステッカー1に送信する(ステップS40)。即ち、ステップS20で求めたプレースステッカー1との距離が基準距離よりも小さい場合、周囲の環境等の影響によって、当該プレースステッカー1から到達した無線標識が設計値よりも減衰しているので、この減衰量に相当する出力の値を算出し、出力を上げて、この値とするように当該プレースステッカー1へ出力の変更命令を送信する。一方、ステップS20で求めたプレースステッカー1との距離が基準距離よりも大きい場合、周囲の環境等の影響によって、当該プレースステッカー1から到達した無線標識の電界強度が設計値よりも大きくなっているので、この増加量に相当する出力の値を算出し、出力を下げて、この値とするように当該プレースステッカー1へ出力の変更命令を送信する。
【0133】
この出力の変更要求の後、或いはステップS30で誤差が所定値以下と判定された場合(ステップS30,No)、各プレースステッカー1から受信した無線標識のチャネルが他の通信で使われているか否かを判定する(ステップS50)。即ち、CCU605が、各無線標識のチャネルで、プレースステッカー1以外からの電波を受信すれば、使用されていると判定し、所定期間他の通信の電波、特に他の無線標識が無ければ使用されていないと判定する。
【0134】
無線標識と同じチャネルで他の通信が行われている場合(ステップS50,Yes)、チャネルの変更をプレースステッカー1に送信する。例えば変更要求部が、他の通信で使われていないチャネルへの変更命令をプレースステッカー1へ送信する。
【0135】
そして、このチャネルの変更要求後、或いはステップS50で同じチャネルが使用されていないと判定した場合(ステップS50,No)、メンテナンス処理を終了する。
【0136】
このように、既知の位置情報と測位結果を比較することで、測位結果の誤差を求めて出力を調整することや、使用チャネルがバッティングした場合に空きチャネルへ変更することにより、各プレースステッカー1を設置環境に適合させる。
【0137】
(16)不正利用の防止
プレースステッカー1からの無線標識は、暗号化して送信しても良い。暗号化された無線標識を受信したユーザ端末4は、所定の鍵により無線標識を復号化し、上記と同様に測位を行う。
【0138】
これにより、所定の鍵を持たない第三者が不正に本システムの無線標識を利用することが防止できる。
【0139】
また、無線標識を暗号化することに限らず、無線標識の割り当てを適宜変更しても良い。例えば、管理装置6がプレースステッカー1の通信制御部224と通信を行い、無線標識の識別情報を変更しても良い。ここで識別情報は、新規に設定するものでも良いし、他のプレースステッカー1と入れ替えるように変更しても良い。勿論、位置情報データベースの識別情報も、この変更と合わせて更新する。これにより、変更後の識別情報を知らない第三者が不正に本システムの無線標識を利用することが防止できる。
【0140】
更に、識別情報の変更は、ビーコン送信回路221ビーコン送信部211が定期的に行うようにしても良い。例えばビーコン送信回路221ビーコン送信部211がタイマーを備え、時間の経過に伴って所定のロジックで変更を行うようにしても良い。この場合、位置情報データベースにおける識別情報も同じロジックで更新する。これにより、変更のための所定のロジックを知らない第三者が不正に本システムの無線標識を利用することが防止できる。
【0141】
(17)本実施形態の効果
以上のように本実施形態によれば、既存の照明器具にプレースステッカーを貼付することで、位置情報システムを構築することができ、位置情報を容易に提供できる。
【0142】
また、本実施形態では、照明器具に係る位置情報をデータベース化して測位に用いており、従来の無線アクセスポイント等と異なり、レイアウト変更などで、位置が変わるようなことが無く、高い信頼性が得られる。
【0143】
更に、標識モジュールを照明器具に設置したことにより、従来と比べ無線LANアクセスポイントの設置位置や電源供給を確保する必要がなくなり、システムを簡素化できる。
【0144】
本実施形態のように、ユーザ端末が無線標識を取得して位置情報を要求し、この位置情報に基づいてユーザ端末が当該無線標識の到達範囲内にいることを特定するシステムでは、無線標識の到達範囲を狭くすることでユーザ端末の位置をピンポイントに特定できる、即ち高精度に測位できる。しかし、従来のシステムにおいて、無線標識の到達範囲を狭くしてしまうと、この無線標識をユーザ端末で受信するのが困難になってしまう。これに対し本実施形態では、無線標識の到達範囲を照明器具の照明範囲と対応つけているので、無線標識の到達範囲を狭めたとしても、ユーザが照明器具の下へ移動する、例えば照明器具の並び方向に沿って移動することで無線標識を確実に取得できる。即ちユーザが、照明器具の照明光によって、無線標識の到達範囲を視覚的に確認できるので、無線標識の到達範囲を絞って測定精度を高めることができる。
【0145】
〈変形例1〉
前述の実施形態では、
図26に示したように送信部12の駆動電流を17.5mAhとした。この場合、CSMA/CAの衝突回避によって多くの電力が消費されていることが分かった。そこで、無線LANの電波の混雑が少ない環境では、CSMA/CAによる衝突回避を省略した構成とする。
本変形例1では、CSMA/CAによる衝突回避を省略したことにより、
図27のように送信部12の駆動電流を大幅に低減(ほぼ半減)できる。即ち、前述の実施形態と比べて太陽電池シート11の更なる小型化が図れる。
【0146】
また、本変形例1では、衝突回避を行わないため、無線標識の送信間隔を通常の無線LANにおける無線標識の送信間隔(ビーコン送信間隔)よりも短く設定する。これにより、万一、無線標識が他の通信と衝突しても、次の無線標識が得られるようにしている。例えば、一般的なアクセスポイントの無線標識の送信間隔は、100msecであるが、本実施形態では、無線標識の送信間隔を50msecとしている。
【0147】
なお、本変形例1において、無線LANの電波の混雑が少ない環境とは、例えば所定期間電波の使用状況をモニターし、プレースステッカー1の無線標識と同じチャネルにて他の通信が行われた時間が閾値以下の場合である。地下街やショッピングモール等の施設内では、外部からの電波の影響が限られるので、無線LANの無線標識とプレースステッカー1の無線標識とに異なるチャネルを割り当てることで、プレースステッカー1からの無線標識が衝突することの少ない環境とすることができる。
【0148】
また、本変形例1では、衝突回避を省略したが、全てのプレースステッカー1において衝突を行わないことに限定されるものではなく、窓際や他の施設との境界部分等には他の通信の影響を考慮して衝突回避を行うプレースステッカー1を配置し、その他の部分には衝突回避を省略するプレースステッカーを配置するようにプレースステッカー1を混在させても良い。
【0149】
〈変形例2〉
前述の実施形態では、
図25に示したようにキャパシタ223により太陽電池シート11からの電力を平滑化して利用する構成としたが、これに限らず、キャパシタ223に代えて
図30に示すように二次電池225を用いても良い。
図30は、二次電池を用いた変形例を示す図である。
【0150】
このように二次電池を備えることで、太陽電池シート11からの電力の平滑化だけでなく、停電等によって照明が消えた場合に、電力をバックアップし、無線標識の出力を継続できる。
【0151】
この場合、停電等によって照明が消えた為に二次電池225から電力を供給すべき状況なのか、利用時間(営業時間等)が終了して照明を消した為、二次電池225からの電力の供給が不要な状況なのかを判別できることが望ましい。
【0152】
この状況を判別できないと、利用時間が終了して照明を消すたびに二次電池225の電力を放出することになってしまう。
【0153】
そこで、ビーコン送信回路221にタイマーを備え、利用時間内か否かを判断し、利用時間内であれば、停電等によって太陽電池シート11からの電力の供給が無い場合でも二次電池225からの電力を用いて無線標識の出力を行い、利用時間外であれば、太陽電池シート11からの電力供給が所定値以下となった時点で無線標識の出力を停止する。即ち、二次電池225からの放電を停止する。なお、タイマーは、単に時間だけでなく、日付や曜日、
祝祭日、本システムを設置した施設の営業スケジュールなどを記憶し、利用時間の判断を行えるようにしても良い。
【0154】
また、上記構成に限らず、利用時間が終了して二次電池225からの電力の供給が不要であることを位置情報サーバ2や管理装置6等の他の装置が判定し、一部のプレースステ
ッカー1に停止命令を通知すると、この停止命令を隣接するプレースステッカー1に転送し、転送を受けたプレースステッカー1が、更に隣接するプレースステッカー1へ転送することを繰り返して全体のプレースステッカー1を停止させるようにしても良い。そして、各プレースステッカー1は、太陽電池シート11からの電力が回復した場合に、無線標識の出力を再開させる。
【0155】
以上のように、本変形例によれば、二次電池を備えることで、太陽電池シート11からの電力の平滑化し、太陽電池シート11を必要最小限の大きさに抑えることができると共に、停電等によって照明が消えた場合にも無線標識の出力を継続できる。
【0156】
なお、上記実施形態1や変形例において、プレースステッカー1は、太陽電池シート11から電力を得る構成としたが、必ずしも全てのプレースステッカー1が、太陽電池シート11を有していなくても良い。例えば、イベント会場や工事中の場所、照明器具5が少ない場所等では、太陽電池シート11を備えず、二次電池やAC電源からの電力を受けて動作するプレースステッカーを用いても良い。
【0157】
また、本変形例2では、送信部12が実施形態1と同じく衝突回避を行っても良いし、変形例1と同じく衝突回避を省略しても良い。
【0158】
〈変形例3〉
前述の変形例1では、衝突回避を省略したプレースステッカー1の例を示したが、常に衝突回避を行わないのではなく、本変形例3では、無線LANの電波の混雑状況を検出し、混雑していない場合に衝突回避を省略する構成とした。なお、その他の構成は変形例1や変形例2と同じであるので、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略している。特にハードウェア構成は変形例2と同じであり、混雑していないと判定した場合の処理は変形例1と、混雑していると判定した場合の処理は実施形態1と同じである。
本変形例3のプレースステッカー1は、
図30に示すように二次電池を備え、送信部12が通常衝突回避を行わないモードで無線標識の送信を行いつつ、無線標識を送信するチャネルの混雑状況を検出する。ここで、混雑している場合には衝突回避を行
うモードに移行して無線標識の送信を行い、混雑していない場合には衝突回避を行わないモードのままとする。衝突回避を行
うモードに移行した場合、所定時間経過後に衝突回避を行わないモードに戻る。この衝突回避を行わないモードに戻るまでの所定時間は、例えば数分から1時間程度とし、混雑が収まると推定される時間を任意に設定する。
なお、衝突回避を行うモードに移行すると、送信部12の駆動電流が増加することになるが、これは二次電池から放出される電力で補う。即ち、太陽電池シート11の放電容量は、変形例1と同じく、衝突回避を行わない場合の小さなものとし、混雑時は二次電池からの電力で衝突回避を行う。
これにより本変形例3のプレースステッカー1は、太陽電池シート11を変形例1と同様に比較的小型にしつつ衝突回避も行うことができる。
【0159】
〈実施形態2〉
前述の実施形態1では、ユーザ端末4が無線標識を受信し、この無線標識と対応する位置情報を位置情報サーバ2から取得する構成としたが、これに限らず、ユーザ端末4が位置情報データベースを備え、無線標識を
受信した場合に対応する位置情報をユーザ端末4が位置情報データベースから抽出する構成であっても良い。なお、この他の構成は、前述の実施形態1と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
図31は実施形態2に係るユーザ端末4の概略図である。本実施形態2のユーザ端末4は、
図10の構成と比べて、演算処理部401で実現する機能、及び記憶部403が位置情報データベースを備える点が異なり、その他の構成は同じである。
本実施形態2の演算処理部401は、OSやアプリケーションプログラムを記憶部403から適宜読み出して実行し、入出力部404やCCU405から入力された情報、及び記憶部403から読み出した情報を演算処理することにより、位置情報取得部や、抽出部、出力制御部として機能する。
【0160】
この抽出部としては、位置情報取得部によってプレースステッカー1から受信した無線標識の識別情報と対応する位置情報を位置情報データベースから抽出する。
出力制御部は、抽出部によって抽出した位置情報に基いて、位置情報の表示や音声出力といった位置情報の出力処理を行う。
図32は、実施形態2のユーザ端末4によって実行される位置情報取得方法の説明図である。
【0161】
先ず、照明器具5が点灯されると、この照明器具5からの照明光をプレースステッカー1が光電変換し、所定の周期(例えば100ms)で無線標識を送出する(ステップS1)。
【0162】
ユーザが測位を指示すると、ユーザ端末4の位置情報取得部がプレースステッカー1からの無線標識を取得する(ステップS2)。
ユーザ端末4の抽出部は、記憶部403の位置情報データベースを参照して、当該無線標識に対応する位置情報を求める(ステップS5)。
【0163】
そして位置情報を抽出したユーザ端末4は、この位置情報の表示といった位置情報の出力処理を行う(ステップS7)。
以上のように、本実施形態2によれば、ユーザ端末単体で位置情報を取得できる。なお、位置情報データベースは、アプリケーションの提供時に合わせてインストールすれば良い。例えば、イベント会場の位置情報を提供するアプリや、特定の商業施設内の位置情報を提供するア
プリといった形態で提供することが考えられる。
【0164】
〈その他〉
本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、上記の各要素を組み合わせるなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。