(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207813
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】航空機ラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20170925BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20170925BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20170925BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B60C9/08 D
B60C9/18 H
B60C15/00 M
B60C15/06 C
B60C9/08 M
B60C15/06 K
B60C15/00 K
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-132515(P2012-132515)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-1390(P2013-1390A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/496,338
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】上横 清志
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−114841(JP,A)
【文献】
特開2010−137854(JP,A)
【文献】
特開平02−070501(JP,A)
【文献】
特開平04−260801(JP,A)
【文献】
特開2010−120476(JP,A)
【文献】
特開2007−182102(JP,A)
【文献】
特許第4424989(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/18
B60C 15/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側リムフランジを有するホイールに取り付けられる空気入り航空機タイヤであって、前記タイヤは、ラジアルカーカスと、トレッドと、前記タイヤの赤道面に対して5°以下の角度に周方向に対して向けられた補強コードによって形成された第1および第2のベルト層を有するクラウン補強部材と、を有し、前記クラウン補強部材は、前記第1および前記第2のベルト層の半径方向外側に位置し、前記タイヤの赤道面に対して0°から45°の間の角度に周方向に対して向けられたコードによって補強された、前記第1のベルト層の幅よりも小さく前記第2のベルトの幅よりも大きい幅を有するジグザグベルト層をさらに有し、前記タイヤのB/W比は0.6よりも大きく0.7よりも小さい値を有し、Bをリムフランジ間の幅、Wを定格圧力の下での断面幅とし、B/BW比は0.84から約1までの範囲にあり、ここでBWを最大ベルト幅とする、空気入り航空機タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤは、前記タイヤのヒール部と嵌り合う領域において楕円形の形状を有するフランジを備えるホイール上に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤビード部が約0.6から約2.1までの範囲にあるRa/Fr1の関係を有し、ここで、Raを膨張していない新品または未使用の状態でのタイヤビード部半径とし、前記半径Raの中心点は前記タイヤの外側に位置し、Fr1をホイールフランジ最大楕円半径とすることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
SW/TSは約0.1から約0.5までの範囲にあり、ここで、SWを膨張条件において200%定格荷重を受けているときの領域Aの上限の位置でのチェーファー厚さ、TSを膨張条件において200%定格荷重を受けているときの領域Aの上限でのサイドウォールゴムの総厚さとし、領域Aは、膨張し荷重を受けていない状態において前記フランジと前記タイヤとの間の接触点によって形成される下部半径方向端点と、前記タイヤが膨張し200%定格荷重を受けているときにタイヤとホイールフランジとの接触点によって形成される上部半径方向端点とを有するサイドウォール内の領域として定義されることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
ラジアルカーカスと、トレッドと、クラウン補強部材と、を有する空気入り航空機タイヤであって、前記タイヤの赤道面に対して0°から45°の間の角度に周方向に対して向けられたコードによって補強された1つまたは2つ以上のベルト層またはストリップを有し、
前記クラウン補強部材は、前記タイヤの赤道面に対して5°以下の角度に周方向に対して向けられた補強コードによって形成された第1および第2のベルト層を有し、かつ、記第1および前記第2のベルト層の半径方向外側に位置し、
前記1つまたは2つ以上のベルト層またはストリップは、前記第1のベルト層の幅よりも小さく前記第2のベルトの幅よりも大きい幅を有するジグザグベルト層を含む、
前記タイヤのB/W比は約0.6から約0.7の間の範囲にあり、ここで、Bをホイールフランジ間の幅、Wを定格圧力の下での断面幅とし、
タイヤビード部は約0.6から約2.1までの範囲にあるRa/Fr1の関係を有し、ここで、Raを膨張していない新品または未使用の状態でのタイヤビード部半径とし、半径Raの中心点は前記タイヤの外側に位置し、Fr1を楕円半径のホイールフランジ最大半径とし、
SW/TSは約0.1から約0.5までの範囲にあり、ここで、SWを膨張条件において200%定格荷重を受けているときの領域Aの上限の位置でのチェーファー厚さ、TSを膨張条件において200%定格荷重を受けているときの領域Aの上限でのサイドウォールゴムの総厚さとし、Aは、膨張し荷重を受けていない状態において前記フランジと前記タイヤとの間の接触点によって形成される下部半径方向端点と、前記タイヤが膨張し200%定格荷重を受けているときにタイヤとホイールフランジとの接触点によって形成される上部半径方向端点AHとを有するサイドウォール内の領域として定義されることを特徴とする、空気入り航空機タイヤ。
【請求項6】
ホイールフランジ間の幅Bと定格圧力下での膨張時タイヤ幅Wとの比B/Wが0.63から0.7までの範囲にあることを特徴とする、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ホイールフランジ間の幅Bと最も広いベルト幅BWとの比B/BWが約0.84から約1.0までの範囲にあることを特徴とする、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
新品または未使用の状態でのホイール上のビードコアの下方の材料のビード圧縮率t1/Tは24%未満であり、ここで、t1を前記ビードコアの下方のゴムの干渉厚さとし、Tを前記ビードコアの半径方向内側および下方の材料総厚さとすることを特徴とする、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビード圧縮比t1/Tは18%未満であることを特徴とする、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
チェーファーの端部は、AHの半径方向外側に位置し、ここで、AHは前記タイヤが膨張し200%定格荷重を受けているときにタイヤとホイールフランジとの接触点によって形成されることを特徴とする、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルプライタイヤに関し、特に、非常に重い荷重、高圧、および高速を受けるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機タイヤは、タイヤ当たりの荷重が重いとともに航空機の速度が速いため、極端な動作条件にさらされる。荷重が重いため、航空機タイヤは乗用車またはトラックのタイヤよりも大きなたわみを受ける。
【0003】
航空機タイヤは一般的な2つの構成、すなわちバイアス構成およびラジアル構成を有する。航空機タイヤのうちの70%を超えるタイヤがバイアスタイヤであり、すなわち、これらの航空機タイヤは、トレッドの中心線に対して90度よりもかなり小さい互いに逆の角度に交互に配置された複数のプライ層で形成されたケーシングを有する。しかし、機体製造業者がより軽い重量を追及しているため、ラジアルタイヤがより一般的になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4893665号明細書
【特許文献2】米国特許第4155394号明細書
【特許文献3】米国特許第6799618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジアルタイヤは、プライがトレッド中心線に対して実質的に90度に向けられるという点で乗用車タイヤに類似している。航空機タイヤには、ある範囲の複数のサイズが使用されているが、H型サイズの範囲は従来、バイアスタイヤである。現代の傾向によって、ラジアル航空機タイヤはH型サイズで利用できることが望ましい。このことは従来、このようなタイヤが荷重を受けて屈曲するためにサイドウォールがより顕著にたわむため不可能であった。その結果、ラジアルタイヤは、タイヤのビード領域において熱の発生および機械的疲労が増大する可能性がある。ビード領域においてビードに亀裂が入ったりスカッフィングが生じたりするとともに、ビードコアの下方のゴムが変形する恐れもある。
【0006】
したがって、耐久性および曲げに対する抵抗性の向上した、改良されたラジアルタイヤが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ラジアルカーカスと、トレッドと、クラウン補強部材と、を有し、タイヤの赤道面に対して0°から45°の間の角度に周方向に対して向けられたコードによって補強された1つまたは2つ以上のベルト層またはストリップを含む空気入り航空機タイヤである。タイヤのB/Wは60%から70%の範囲であり、この場合、Bはホイールフランジ間のタイヤの幅であり、Wは定格圧力の下での膨張時タイヤ幅である。
【0008】
本発明の第2の態様は、ラジアルカーカスと、トレッドと、クラウン補強部材と、を有し、タイヤの赤道面に対して0°から45°の間の角度に周方向に対して向けられたコードによって補強された1つまたは2つ以上のベルト層またはストリップを含む空気入り航空機タイヤである。このタイヤは、約0.6から約0.7(60%〜70%)の範囲のB/Wを含み、この場合、Bはホイールフランジ間のタイヤの幅であり、Wは定格圧力の下での膨張時タイヤ幅である。このタイヤは任意に、約0.6から約2.1の範囲のRa/Fr1の関係を有するタイヤビード部をさらに含んでよく、この場合、Raは、膨張していない新品未使用状態でのビードサイドウォールのタイヤ半径であり、Fr1はホイールフランジ最大半径である。このタイヤは任意に、約0.1から約0.5の範囲のSW/TS比をさらに含んでよい。ここで、SWは、領域Aにおけるチェーファー厚さであり、TSは、領域A
Hにおける総サイドウォールゴム厚さであり、Aは、膨張しており荷重を受けていない状態においてフランジとタイヤとの間の接触点によって形成される下部半径方向端点と、タイヤが膨張しておりかつ200%の定格荷重を受けているときのホイールフランジ接触点によって形成される上部半径方向端点A
Hとを有するサイドウォール内の領域として定義される。
定義
「エイペックス」は、ビードコアの半径方向上方に位置する補強されていないエラストマを意味する。
【0009】
タイヤの「アスペクト比」は、百分率によって表すために100%を掛けたタイヤの断面高さとタイヤの断面幅との比を意味する。
【0010】
「軸方向の」および「軸方向に」は、タイヤの回転軸に平行なラインまたは方向を意味する。
【0011】
「ビード」は、プライコードによって覆われるかあるいは他の方法によってプライコードに取り付けられ、設計リムに嵌るようにフリッパ、チッパ、エイペックス、トウガード、およびチェーファーのような他の補強部材を含むように形作られることも含まないように形作られることもある、環状の引張部材を有するタイヤの部分を意味する。
【0012】
「ベルトまたはブレーカ補強構造」は、織物または不織布であり、トレッドの下に位置し、ビードに固定されておらず、タイヤの赤道面に対して5°から45°の範囲の左右両方のコード角度を有する、互いに平行なコードの少なくとも2つのプライ層を意味する。
【0013】
「バイアスプライタイヤ」は、タイヤを対角方向に横切り、ビードコアからビードコアまでタイヤの赤道面に対して25°〜65°の角度に延びる補強コードをカーカスプライ内に含むカーカスを有するタイヤを意味する。コードは、互いに向かい合う層内を交互に互いに逆の角度に延びている。
【0014】
「カーカス」は、プライの上方のベルト構造トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールゴムを除くが、ビードを含むタイヤ構造を意味する。
【0015】
「周方向の」は、軸方向に垂直な環状のトレッドの表面の周囲に沿って延びるラインまたは方向を意味する。
【0016】
「チェーファー」は、コードプライをリムから保護し、たわみをリムの上方に分散させ、かつタイヤを密封するようにビードの外側に配置された材料の狭いストップを指す。
【0017】
「コード」は、タイヤ内のプライを構成する複数の補強ストランドの1つを意味する。
【0018】
「赤道面(EP)」は、タイヤの回転軸に垂直であり、タイヤのトレッドの中心を通過する平面を意味する。
【0019】
「フリッパ」は、ビードコアを覆う補強された織物を意味する。
【0020】
「フットプリント」は、速度が零でありかつ標準荷重および標準圧力下にあるときに平坦な面を有するタイヤトレッドの接触部領域を意味する。
【0021】
「H型タイヤ」は、60%から70%の間のB/W範囲を意味し、この場合、Bはホイールフランジ間の幅であり、Wは定格圧力下の膨張時タイヤ幅である。
【0022】
「インナーライナ」は、チューブレスタイヤの内面を形成し、かつタイヤ内に膨張流体を閉じ込めるエラストマまたは他の材料の1つまたは2つ以上の層を意味する。
【0023】
「ネット対グロス比」は、フットプリント内に位置する間に路面に接触するタイヤトレッドゴムを、溝などの非接触部を含むフットプリント内のトレッドの面積で割った比を意味する。
【0024】
「標準空気圧」は、タイヤの使用条件についての然るべき標準化機構によって決められた特定の設計空気圧および設計荷重を指す。
【0025】
「断面幅」は、定格圧力まで膨張しておりかつ荷重を受けていないときにタイヤの最も広い部分において測定されるタイヤのサイドウォール同士の間の距離を意味する。
【0026】
「ジグザグベルト補強構造」は、複数のコードの少なくとも2つの層、または各リボンに1〜20個のコードを有し、かつ各ベルト層の横縁部同士の間を5°から30°の間の角度に延びる交互パターンに積み重ねられた互いに平行なコードのリボンを意味する。
【0027】
本発明について、一例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明のビードコア構成を使用する空気入りラジアルタイヤの断面図である。
【
図3】本発明に関するタイヤビードの熱の発生と回転距離とのプロットである。
【
図4】
図1のタイヤについてのベルトパッケージの一方の半部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、ラジアルタイヤプライ100の断面図が示されている。タイヤ100は、図示のように、航空機タイヤとして使用される構成である。タイヤ100は、一例として高い内圧および極めて重い荷重にさらされるラジアル航空機タイヤである。本発明は、航空機タイヤに限定されず、土工機械、商用トラックのタイヤ、および不斉地用タイヤのような他のタイヤ上で使用することができる。
【0030】
タイヤ100は、チューブレスタイヤ構成のラジアルプライタイヤである。タイヤ100は、流体すなわち空気を圧力下に閉じ込める空気不浸透性のインナーライナ22を有している。インナーライナ22の半径方向外側に1つまたは2つ以上のラジアルプライ20が位置している。各プライは、一般にはビードコア30と呼ばれる環状の引張部材から延びている。図示のように、各プライ20はビードコア30を覆い、軸方向外側上方に折り返されてプライ折り返し部を形成するか、あるいは軸方向内側にかつビードコア30の下方に折り返される。各プライは、当業者に公知の他の構成を利用してビードに固定してもよい。
【0031】
これらのカーカスプライ20のそれぞれは、適切な任意のコード、通常は、タイヤの赤道面EPに実質的に垂直に延びる(すなわち、タイヤの半径方向に延びる)ナイロン66コードのようなナイロンコードを有してよい。ナイロンコードは1890デニール/2/2構成または1890デニール/3構成を有することが好ましい。1つまたは2つ以上のカーカスプライは、アラミド・ナイロンコード構造、たとえば、ハイブリッドコード、高エネルギーコード、またはマージコードを有してもよい。適切なコードの例は、特許文献1、特許文献2、または特許文献3に記載されている。各プライコードは、好ましくは8%よりも高くかつ30%よりも低く、より好ましくは9%よりも高くかつ28%よりも低い破断伸び率を有している。
【0032】
このタイヤは、一方のビードから他方のビードまで延び、
図1にBとして示されているリムフランジ幅を有するリムフランジ上に取り付けられているように示されている。このタイヤの断面幅は、
図1にはWとして示されており、標準空気圧まで膨張しておりかつ荷重を受けていないときの最も広い部分におけるタイヤの断面幅である。本発明の航空機タイヤは、好ましくは約0.63から約0.7の範囲、より好ましくは約0.65から約0.68の範囲のB/Wの比を有するH定格タイヤである。また、リムフランジ幅と最大ベルト幅の比B/BWは、好ましくは約0.84から約1の範囲であり、より好ましくは約0.86から約0.92の範囲、最も好ましくは約0.88から約0.9の範囲である。
【0033】
ビードコア30の半径方向上方に第1のゴムエイペックス40が位置している。第1のゴムエイペックスは、好ましくは三角形であり、かつ好ましくは、以下に詳しく説明する点A
Hを超えた位置までは延びない。フリッパ31は、第1のエイペックスおよびビードコアのまわりに巻かれており、エイペックス40の半径方向内側に端部を有している。好ましくは、プライ20の半径方向下方に、ビードの半径方向内側の位置からビードトウまで延び、次にビードヒール、すなわちビードの半径方向外側の位置まで延び、点C
H13の所で終わるチェーファー11を有している。Aは、荷重を受けている状態でのタイヤの、ホイールフランジとの接触領域であり、膨張時において荷重を受けていない状態での接触縁部によって形成される下限A
Iと、膨張条件において200%定格荷重を受けているときの上限A
Hとを有している。
【0034】
プライ20の軸方向外側には、チェーファーに隣接してビードの半径方向外側を延びるエラストマ材料の細長いストリップである第2の任意のエイペックス43が位置している。このエイペックス43は、サイドウォール9とチェーファー11とプライ20との間に挿入されている。
【0035】
カーカスプライ20の半径方向外側にはベルトパッケージ50が位置している。ベルトパッケージ50の半径方向外側に織物層53が示されている。織物層53の上方にトレッド18が示されている。トレッド18は、周方向に連続する複数の溝17を有している。
【0036】
図4に示されているベルトパッケージ50は、カーカスに隣接して配置された第1のベルト層51を有している。第1のベルト層51は、好ましくは中央周方向面に対して10°以下、より好ましくは5°以下の角度を有するコードによって形成されている。第1のベルト層51は、複数のコードを周方向に対してらせん状に巻くことによって作られた2つまたは3つ以上のコードのゴム引きストリップによって形成されることが好ましい。第1のベルト層51は、ベルトパッケージ50の最も狭いベルト構造であり、リム幅(フランジ間の幅)の約13%から約100%の範囲の幅を有している。
【0037】
図4に示されているように、ベルトパッケージ50は、第1のベルト層51の半径方向外側に配置された第2のベルト層60をさらに有している。第2のベルト層60は、中央周方向面に対して5°以下の角度を有する複数のコードによって形成されることが好ましい。第2のベルト層60は、複数のコードを周方向に対してらせん状に巻くことによって作られた2つまたは3つ以上のコードのゴム引きストリップによって形成されることが好ましい。第2のベルト層は、リム幅の約101%から約120%の範囲の幅を有し、かつ第1のベルト層51よりも大きい幅を有している。第2のベルト層60は、ベルトパッケージ50の最も広いベルト層であることがより好ましい。また、最も狭いベルト層と最も広いベルト層の比BWs/BWは、好ましくは約0.3から約0.6の範囲であり、より好ましくは約0.4から約0.5の範囲である。
【0038】
ベルトパッケージ50は、少なくとも1つのジグザグベルト補強構造70をさらに有している。ジグザグベルト補強構造70は、互いに織り交ぜた2つのコード層によって構成されており、各コード層は概ね周方向に傾斜し、一方、横ベルト縁部同士の間を交互に延びるように傾斜している。このストリップは、このようなジグザグ経路に沿って何度も巻かれ、一方、互いに隣接するストリップ同士の間に隙間を形成しないように周方向に所望の量だけずらされる。その結果、各コードは、周方向に延び、一方、両端部における折り返し点の所において曲げ方向を変更している。このジグザグベルト構造の各コードは、通常は、ストリップが上述のように円周の360°ごとにプライの両側の端部間を少なくとも1度往復するときに、タイヤの赤道面EPに対して5°から30°のコード角度で互いに交差する。各ジグザグベルト構造に形成された複数のコードの2つの層は、ベルト層に埋め込まれており分離不能であり、ベルトの外側横端部の所に切断された端部は存在しない。
【0039】
ジグザグベルト構造70はベルトパッケージ50の半径方向において最も外側のベルト構造であることが好ましい。また、ジグザグベルト構造70は第1のベルト構造51よりも幅広いことが好ましく、かつ第1のベルト構造51よりも幅広いが第2のベルト構造60よりも狭い幅を有することがより好ましい。ジグザグベルト幅BWzと第2のベルト構造幅BWsとの比は以下の通りであることが好ましい。
【0041】
上述のらせんまたはジグザグベルト層のうちのいずれの層のコードも、ナイロン、ナイロン66、アラミド、または当業者に公知のマージ構成、ハイブリッド構成、高エネルギー構成を含む上記の繊維の組み合わせであってよい。ベルトコード、カーカスコード(またはその両方)に適したコード構成の一例には、3300dtexで6.7撚りの構成を有するポリアミド(アラミド)と、1880dtexで4.5撚りの構成を有する1つのナイロンまたはナイロン6/6コードとを含む、アラミドとナイロンの複合物を含んでよい。全体的なマージケーブル撚りは6.7である。ベルトコードは、破断伸び率が約8%よりも高くかつ約26%よりも低く、破断強さが約400Nを超えることが好ましい。ベルトコードは、破断伸び率が約9%から約25%の範囲であることがより好ましい。また、プライコードは、ベルトコードよりも高い破断伸び率を有することが好ましい。破断伸び率、線密度、および引張強さのようなコード特性は、浸漬工程が終了してからタイヤを加硫させるまでの間に得られたコードサンプルから求められる。
【0042】
上述のようなタイヤ構造100は、ビードコア30を利用することのできる本発明のタイヤ構造の1つの種類の例である。図示のタイヤ100は航空機タイヤ構造であるが、本発明は、たとえばトラックタイヤ、不斉地用タイヤ、または高荷重耐久タイヤのような他のタイヤに使用することもできる。
図2を参照すると、本発明のビードコア30が示されている。
図2A及び
図2Bでは、中央コア36は、360°に巻かれた単一のワイヤまたはロッド35として示されている。ワイヤ35の端部同士を溶接して連続した1つのフープまたは中央コア36を形成することが好ましい。中央コア36は、アルミニウムの合金、またはマグネシウムやチタンのような軽量金属の合金、もしくは鋼よりも小さい重量を有する任意の金属合金によって作られている。
【0043】
アルミニウムは、鋼と一緒に使用されたときに優れた耐食性を示し、また溶接点での強度が非常に高いという点で理想的な合金である。アルミニウムを焼き戻して、中央コア36の引張強さをさらに高くすることができる。6061アルミニウム合金の引張強さは6061T
0の場合の125MPaから6061T
6の場合の310MPaまでの範囲で変化しうる。6061T
4範囲のアルミニウム合金は、優れた延性を維持しつつ高い強度比を有する。
【0044】
さらに図示されているように、中央コア36は、2つまたは3つ以上のシース層35、好ましくは少なくとも2つのシース層のシースによって包まれている。これらのシース層のワイヤ35は、中央コア36の周りにらせん状に巻かれた鋼である。本発明は、図示のビードコアに限定されず、他のビード構成を利用してもよい。
【0045】
本発明のビード領域構成は、タイヤホイール接触圧力を低下させ、熱の発生量を低減させることによって、ビードの亀裂および変形の問題を軽減する。
図2に最もよく示されているように、このタイヤは、チェーファー11がリムフランジに接触する領域においてリムフランジ接触半径Raを有している。Raは、未使用または新品のタイヤ上において、タイヤがリムに取り付けられる前に測定される。半径Raの中心点はタイヤの外側に配置されており、それによって、タイヤのリム接触点上に凹状の湾曲が形成されている。使用するフランジとして選択されたフランジが、最大半径F
R1の楕円形状を有する場合、Raは、F
r1の0.6倍から2.1倍の範囲、より好ましくはF
r1の約1.3倍から約2.1倍の範囲であるべきである。これによって、ビードがフランジにこすれることによって生じる熱の発生量が低減する。
【0046】
本発明のビードは、約24%未満、より好ましくは約18%未満のビード圧縮比を有するように構成されている。ビード圧縮比はt1/Tによって定めることができ、この場合、t1は、ビードコアの中心の下方においてタイヤビード座面14に垂直に測定される、リムとタイヤとの間のチェーファーゴムの干渉厚さである。t1は、リムフランジ半径からビード座半径を引くことによって算出することができる。Tは、半径方向においてビードコア中心線に沿って測定される、ビードコア30の半径方向において最も内側の縁部15からビード領域14の半径方向において最も内側の縁部までの、ビードコア30の下方の総材料厚さである。
【0050】
ビードの耐久性を向上させるために、重要な他のパラメータが以下の関係によって定められる。
【0052】
上式において、Wは、点A
Hでのサイドウォールのゲージ厚である。Aは、タイヤとホイールフランジとの接触面積であり、膨張しているが荷重を受けていない状態において接触縁部によって形成される下限A1と、膨張条件において200%定格荷重を受けているときの上限A
Hとを有する。TSは、サイドウォールおよびプライの軸方向外側に位置するエイペックスのような他のゴム構成要素について、点A
Hの所で測定される総ゴム厚さである。
【0053】
以下の表1は、タイヤ例1〜6についての値および結果を表に示したものである。すべてのタイヤは、H37.5x12.0R19 20PRのサイズを有しており、ホイールサイズがH37.5x12.0R19であり、楕円フランジ形状を有し、ホイールフランジ間の幅が7.75インチ(19.69cm)であるホイールに取り付けられた。パラメータRa、Fr1、T、t1、TS、SWを求めた。定格荷重25600ポンド(11611.96kg)、定格圧力212psi(1.4621MPa)、試験荷重41000ポンド(18597.29kg)の下での試験速度40mphにおいてダイナミックタイヤテスター上で試験された各タイヤ上で測定された地上走行距離指数に、表1のすべてのタイヤを従わせた。タイヤをパンクするまで試験条件で連続的に走行させた。
【0054】
表1の各タイヤ構成に対してFAA TSO試験を実施した。試験後、目視検査を実施しかつビード領域における亀裂の幅、深さ、および長さを測定することによって各タイヤについてチェーフィング性指数を求めた。ビードコアの下方のビード座の所のビード変形についても、変形の深さを測定することによって測定した。3つの指数のすべてについて、数値が大きいほど性能が優れている。したがって、3つの指数のすべてについて最高の性能を有するタイヤは、本発明の例5および6であった。
【0056】
図3は、例1のタイヤ、例2のタイヤ、および例6のタイヤについてのビード温度対距離(指数)に関する実際の試験データを示している。低いビード温度が望まれる場合、例6のタイヤがより優れた性能を示した。
【0057】
タイヤが少なくとも1つのベルトプライ層を有する上述の実施形態のうちのいずれの実施形態の空気入りタイヤも、破断伸び率が約30%未満、より好ましくは26%未満であり、破断強さが約400Nよりも大きい複数のコードを有する。
【0058】
上述の実施形態のうちのいずれの実施形態の空気入りタイヤでも、1つまたは2つ以上のカーカスプライは、ナイロンによって作られた複数のコードを有する。
【0059】
上述の実施形態のうちのいずれの実施形態の空気入りタイヤでも、1つまたは2つ以上のカーカスプライコードはベルトコードよりも高い破断伸び率を有する。
【0060】
上述の実施形態のうちのいずれの実施形態の空気入りタイヤでも、チェーファーは、約5MPaから約15MPaの300%弾性係数(M300)範囲を有するゴムで作られている。
【符号の説明】
【0061】
11 チャーファー
18 トレッド
20 ラジアルプライ
30 ビードコア
36 中央コア
51 第1のベルト層
60 第2のベルト層
70 ジグザグベルト構造
100 ラジアルプライタイヤ
BWz ジグザグベルト幅
EP 赤道面
F
R1 最大半径
Ra リムフランジ接触半径