(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係る梱包体1を示す。本実施形態では、梱包体1が直方体である。梱包体1は、梱包箱7に収容される。本発明の一実施形態に係る梱包集合体は、梱包体1と、梱包体1を収容する梱包箱7と、を備えている。
【0013】
梱包箱7は、例えばダンボール箱である。例えば、梱包箱7の内側面(4つの側面、底面及び天井面)には補強板が配置されていることにより、梱包箱7と梱包体1との間に補強板が配置されていることが好ましい。補強板としては、木板(ウッドプレート)、紙製の圧縮ボード、又は発泡性のプラスチックボードなどを用いることができる。梱包箱7と梱包体1との間に補強板が配置された梱包箱7を用いれば、梱包体1を外力から保護することができる。また、梱包体1と梱包箱7の一以上の内側面の一部又は全部との間に、補強板が接合されていてもよい。さらに、梱包体1と梱包箱7の一以上の内側面の一部又は全部との間に、弾性体又は気泡緩衝材などの緩衝材を設けてもよい。この場合、補強板は省略してもよい。このような構成によっても、梱包体1を外力から保護することができる。
【0014】
梱包箱7がダンボール箱の場合、梱包箱7は、表ライナー、裏ライナー及び波状の中芯ライナーで構成されている。中芯ライナーは、表ライナーと裏ライナーとの間で、表ライナー及び裏ライナーと接合されている。梱包箱7の段の高さ(表ライナーと裏ライナーとの間隔)は、例えば0.5mm〜5mmであり、1.5〜5mmが好ましい。また、表ライナー及び裏のライナーの1m
2当たりの質量は、例えば100〜300gであり、150〜280gが好ましい。中芯ライナーの1m
2当たりの質量は、例えば100〜200gであり、120〜180gが好ましい。また、緩衝性、圧縮強度及び破壊強度を高める観点から、段の高さが異なる2つの段を重ねたW段の段ボール箱を使用してもよい。この場合、段高さが3mmである段と段高さが5mmである段を組み合わせたW段の段ボールを使用することが好ましい。
【0015】
梱包体1は、
図2(a)及び(b)に示すように、立てられた状態の複数(図例では10個)の積層体5と、積層体5を包み込む梱包容器2とを備えている。本実施形態では、積層体5が5つずつ二列に配列されているが、積層体5は必ずしも二列に配列されている必要はない。例えば、積層体5は、一列に配列されていてもよいし、三列以上に配列されていてもよい。あるいは、梱包容器2は、1つの積層体5のみを包み込むように構成されていてもよい。
【0016】
各積層体5は、
図4に示すように、複数枚の脆性薄板材50を含む。積層体5は、例えば袋状の積層体保持材6により保持される。積層体保持材6は、複数枚の脆性薄板材50が分離することなく、積層体5の積層状態を保持し得る物であればよい。例えば、矩形状の二面が三辺で接合された封筒状、又は隣り合う二辺もしくは対面する二辺で接合されたファイル状をなしていてもよい。一面の厚さは例えば0.03〜1.5mmであり、好ましくは0.04mm〜1.0mmであり、より好ましくは0.04〜0.5mmである。例えば、積層体保持材6が封筒状である場合、積層体保持材6は、その内部に積層体5が挿入された後に、全面的に積層体5に密着するように開口側の一辺及び四隅が三角形状に折り返されてテープで固定される。これにより積層体5が保持され、脆性薄板材50の積層状態が維持される。他にも、積層体5を保持する包装用フィルムによって積層体保持材6を構成することもできる。この場合、積層体保持材6である包装用フィルムの内部を減圧して、減圧包装、真空包装することもできる。さらに、この場合、キャラメル包装、シュリンク包装、又はOPP(二軸延伸ポリプロピレン)袋による包装などを採用してもよい。
【0017】
積層体5は、脆性薄板材50のみが積層されることにより構成されていてもよいが、これに限られない。例えば、
図5に示すように、脆性薄板材50同士の間に、紙、シート状のスポンジ、又はポリエチレンシート等のスペーサー51が配置されていてもよい。この場合、複数のスペーサー51の一辺同士が接合された綴り収容材となっていてもよい。また、積層体5の外表面の少なくとも一部に緩衝材が取り付けられてもよい。
【0018】
積層体保持材6は、袋状のものに限定されない。例えば、
図6に示すように、積層体保持材は、積層体5を包装する一枚のシート63であってもよい。また、積層体保持材は、
図7に示すように、互いに対向する積層体5の2組の側面を取り囲む帯61であってもよい。さらに、
図8に示すように、積層体保持材は、積層体5の積層方向の両面を覆う2枚のシート65A、65Cと、シート65Aとシート65Cとを接続する接続部65Bにより構成されていてもよい。この場合、脆性薄板材50同士の間に配置されたスペーサー51の一辺が接続部65Bに接合されていてもよい。ただし、積層体5の保護を高める観点から、積層体保持材6は、積層体5の全体を覆う構成であることが好ましい。特に、積層体保持材6は積層体5の全体を覆う袋状であることが好ましい。
【0019】
袋状である積層体保持材6の材料は特に制限されるものではないが、埃付着防止の観点から、非帯電性を有する袋を用いることが好ましい。ただし、ポリエチレン又はポリプロピレンからなっていてもよい。ここで、非帯電性とは、20℃、15%RH条件下で表面抵抗率10
10Ω/□以下、好ましくは10
9Ω/□以下であることをいう。
【0020】
1つの積層体5を構成する脆性薄板材50の枚数は、例えば5〜500枚、好ましくは10〜200枚程度である。なお、積層体保持材6の内部では、脆性薄板材50同士が直接積層されていてもよいし、脆性薄板材5が個別に又は複数枚ごとに別の袋に収容されていてもよい。また、脆性薄板材5が後述するように表面と裏面が異なる材料からなる構造体である場合も、同一面同士が向き合うように脆性薄板材5を交互に反転しながら積層してもよいし、異なる面同士が向き合うように脆性薄板材5を同じ向きで積層してもよい。
【0021】
脆性薄板材50は、梱包時や輸送時などに割れ、欠け、変形を生じる可能性のある薄くて脆い板材であり、その代表例は薄板状のセラミック成形体である。例えば、薄板状のセラミック成形体としては、電子回路基板や固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電解質シートやセパレータなどに用いられる緻密質体、SOFCの電極などに用いられる多孔質体、複数の緻密質体が組み合わされた構造体、緻密質体と多孔質体が組み合わされた構造体、緻密質体の両側に多孔質体が配置された構造体(例えば、燃料電池のセル)、複数の多孔質体が組み合わされた構造体などがある。
【0022】
電子回路基板に用いられる緻密質体の材料としては、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、ムライト、コージェライト、アルミナ/ホウケイ酸ガラスの混合物、コージェライト/ホウケイ酸ガラスの混合物などを用いることができる。
【0023】
SOFCの電解質支持型セル用の電解質シートに用いられる緻密質体の材料としては、希土類元素やアルカリ土類元素等の酸化物が添加された安定化ジルコニア、LaGaO
3、LaSrGaMgO
3等のランタンガレート系ペロブスカイト型複合酸化物、ガドリニウムドープセリア又はサマリアドープセリア等のセリア系複合酸化物などを用いることができる。
【0024】
安定化ジルコニアの具体例は、3モル%〜15モル%のイットリアで安定化されたジルコニア、3モル%〜15モル%のスカンジアで安定化されたジルコニア、3モル%〜15モル%のイッテルビアで安定化されたジルコニア、8モル%〜12モル%スカンジア0.5モル%〜3モル%セリアで安定化されたジルコニア、3モル%〜15モル%のイットリア・スカンジアで安定化されたジルコニア(ただし、0モル%<イットリア、スカンジア≦15モル%)などである。
【0025】
SOFCのセパレータに用いられる緻密質体の材料としては、LaCrO
3、LaCa
CrO
3、LaSrCrO
3等のランタンクロマイト系ペロブスカイト型複合酸化物などを用いることができる。
【0026】
SOFCの燃料極支持型セル用の燃料極基板などに用いられる多孔質体の材料としては、酸化ニッケル/上記安定化ジルコニアの混合物、酸化ニッケル/上記セリア系複合酸化物、酸化ニッケル/上記安定化ジルコニア/上記セリア系複合酸化物の混合物などを用いることができる。
【0027】
SOFCの空気極支持型セル用の空気極基板などに用いられる多孔質体の材料としては、LaCoO
3、LaSrCoO
3、LaMnO
3、LaSrMnO
3、LaNiFeO
3等のペロブスカイト型等の複合酸化物、前記ペロブスカイト型複合酸化物/上記安定化ジルコニアの混合物、前記ペロブスカイト型複合酸化物/上記セリア系複合酸化物、前記ペロブスカイト型複合酸化物/上記安定化ジルコニア/上記セリア系複合酸化物の混合物などを用いることができる。
【0028】
なお、上述した材料は単独で使用されてもよいし、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0029】
脆性薄板材50の形状は、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、矩形、角が丸められた矩形などの何れであってもよい。あるいは、脆性薄板材50は、ガス流通用の穴のある形状、例えばドーナツ状であってもよい。また、脆性薄板材50の表面には、スクライブ用の溝やディンプル状の凹凸が形成されていてもよい。
【0030】
脆性薄板材50の外形面積(輪郭で規定される、穴の有無に依らない面積)は、例えば25cm
2以上1000cm
2以下である。脆性薄板材50の外形面積は、好ましくは50cm
2以上900cm
2以下であり、より好ましくは80cm
2以上600cm
2以下である。
【0031】
脆性薄板材50の厚さは、例えば0.03mm以上0.5mm以下である。脆性薄板材50の厚さは、好ましくは0.1mm以上0.3mm以下であり、より好ましくは0.12mm以上0.25mm以下である。
【0032】
脆性薄板材50がアルミナ系の材料である場合、脆性薄板材50の外形面積は、好ましくは25cm
2以上250cm
2以下であり、より好ましくは30cm
2以上150cm
2以下であり、さらに好ましくは50cm
2以上100cm
2以下である。また、脆性薄板材50の厚さは、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下であり、より好ましくは0.12mm以上0.45mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以上0.4mm以下である。
【0033】
脆性薄板材50がジルコニア系の材料である場合、脆性薄板材50の外形面積は、好ましくは50cm
2以上1000cm
2以下であり、より好ましくは80cm
2以上900cm
2以下であり、さらに好ましくは100cm
2以上600cm
2以下である。また、脆性薄板材50の厚さは、好ましくは0.03mm以上0.45mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上0.4mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.35mm以下である。
【0034】
梱包容器2の材料は特に限定されないが、梱包容器2の少なくとも一部が発泡体であるとよい。この発泡体を構成する材料には、例えば安価なポリスチレンを用いることができる。ただし、梱包容器2の強度の観点からは、強化ポリプロピレンを用いてもよい。また、発泡体を構成する材料として、ポリウレタンを用いてもよい。例えば、梱包容器2のうち、積層体5又は積層体保持材6と接する本体部4の凹部41及び蓋部3が発泡体で形成されているとよい。また、梱包容器2は、ダンボール箱、紙製の圧縮ボード等により構成されていてもよい。さらに、梱包容器2の外表面には凹凸が設けられていてもよい。
【0035】
また、梱包容器2の少なくとも一部が発泡体である場合は、脆性薄板材へのクッション性の観点から、その発泡体の発泡倍率は、10倍以上90倍以下が好ましく、20倍以上80倍以下がより好ましく、30倍以上70倍以下がさらに好ましい。さらに、発泡体は全体が同一の発泡倍率である必要はない。例えば、積層体5又は積層体保持材6と接している、本体部4の凹部41及び蓋部3において、発泡体の発泡倍率が40倍〜90倍、好ましくは50〜80倍であり、それ以外の部分において、発泡体の発泡倍率が10倍〜60倍、好ましくは20〜50倍であってもよい。ここで、発泡倍率とは、かさ密度の逆数である単位質量あたりの体積を意味し、その単位は体積/質量となる。本明細書では、この単位に替えて「倍」と表記している。
【0036】
本体部4は、複数の凹部41(
図3(b)では10個)を有する。各積層体5が積層体保持材6と共に凹部41に嵌め込まれる。各積層体5は、例えば、積層体5の積層方向に形成された面が凹部41の底面と向かい合った状態で、積層体保持材6と共に凹部41に嵌め込まれている。本実施形態では、凹部41の深さが脆性薄板材50の一辺の長さよりも小さく、立てられた状態の積層体5の上部が本体部4から突出している。
【0037】
凹部41は、立てられた状態の積層体5の下側部分とほぼ同じ形状を有している。すなわち、凹部41の幅は脆性薄板材の他の一辺の長さよりも僅かに大きく、凹部41の奥行きは積層体5の厚さよりも僅かに大きい。このため、積層体5が包装体6と共に凹部41内に嵌め込まれると、その状態で保持される。ここで、積層体5の中心を挟んで互いに向かい合う一対の積層体5の面が凹部41によって固定されていることが好ましい。この場合に、積層体5の中心を挟んで互いに向かい合い積層体5の積層方向に形成された一対の積層体5の面が凹部41によって固定されていることが好ましい。これらにより、梱包体1の輸送時の振動によって脆性薄板材が破損するおそれを低減できる。なお、積層体5の中心とは、積層体5の一端に配置された脆性薄板材50の面中心と、積層体5の他端に配置された脆性薄板材50の面中心とを結ぶ線分の中点である。
【0038】
なお、積層体5の積層方向における隣り合う凹部41同士の間隔D1(
図3(b)参照)は、積層体5の大きさによって適宜決めてもよいが、20mm以下であればよく、梱包容器2の小型化の観点から、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは8mm以下であり、さらに好ましくは6mm以下である。積層体5を保護する観点から、凹部41同士の間隔Dは、例えば1mm以上であり、好ましくは2mm以上である。
【0039】
梱包体1は凹部41の上方で積層体5を覆う蓋部3をさらに備えている。蓋部3は、本体部4の上方で積層体5を覆っている。本実施形態では、蓋部3にも各積層体5が積層体支持材6と共に嵌め込まれる凹部31が設けられている。ここで、積層体5の中心を挟んで互いに向かい合い積層体5の積層方向に形成された一対の積層体5の面が、凹部41及び蓋部3によって固定されていることが好ましい。換言すると、積層体5の中心を挟んで互いに向かい合う積層体5の端面が、凹部41及び蓋部3によって固定されていることが好ましい。これにより、輸送時などに積層体5が動いて梱包容器2に衝突することを抑制することができる。そのため、脆性薄板材50が破損するおそれを低減することができる。蓋部3には、
図9に示すように、全ての積層体5の上部を取り囲む相対的に大きな窪み35が設けられていてもよい。この場合、窪み35の底面によって積層体5が凹部41に押圧されている。あるいは、本体部4の凹部41の深さが脆性薄板材50の一辺の長さよりも僅かに大きな場合には、蓋部3はフラットな板状であってもよい。ただし、この場合には、積層体5と蓋部3との隙間を、緩衝材を含むスペーサー等で埋めることにより、蓋部3によって積層体5が凹部41に押圧されるようになっている。積層体保持材6がこのスペーサーを兼ねていてもよい。なお、梱包箱7の上面が蓋部3を兼ねるように構成されていてもよい。さらに、一又は複数の凹部41を覆う複数の蓋部を備えていてもよい。
【0040】
図10に示すように、凹部41は斜めに傾いて形成されていてもよい。この構成によれば、梱包容器2の高さを抑えることができる。
【0041】
図11に示すように、本体部4に設けられる凹部41の深さは脆性薄板材50の一辺の長さよりも大きくてもよい。この場合、蓋部3が凹部41に嵌り込む凸部37をさらに有していてもよい。これにより、蓋部3の凸部37により積層体50を凹部41に押圧することができる。また、積層体50が梱包容器2の外面から離れた位置で保持されるので、外部からの衝撃を低減することができる。
【0042】
本体部4の高さと蓋部3の高さの大小関係は特に限定されない。本体部4の高さが蓋部3の高さより大きくてもよいし、蓋部3の高さが本体部4の高さよりも大きくてもよい。本体部4の高さと蓋部3の高さが同一であってもよい。ただし、より深い凹部によって積層体5を保護するためには、本体部4の高さ又は蓋部3の高さは、一方が他方よりも大きいことが好ましい。
【0043】
蓋部3の下面の周縁部には、
図3(a)に示すように矩形筒状の周壁32が形成されている。一方、本体部4の上面の周縁部には、
図3(b)に示すように周壁32が嵌り込む段差部42が形成されている。凹部が周壁32に、凹部に係合する凸部が段差部42にそれぞれ形成されていてもよい。また、凹部が段差部42に、凹部に係合する凸部が周壁32にそれぞれ形成されていてもよい。凹部に凸部が係合することにより、蓋部3が本体部4から外れにくい。
【0044】
図12に示すように、蓋部3の凹部31の側面又は本体部4の凹部41の側面には、凸部31A、41Aが形成されていてもよい。この凸部31A、41Aによって、積層体5の中心を挟んで互いに向かい合う一対の積層体5の端面が固定されていてもよい。凸部の形状は、特に限定されず、積層体5又は積層体保持材6と点状に接触するディンプル形状であってもよい。また、凸部の形状は、積層体5又は積層体保持材6と線状に接触する形状であってもよい。さらに、凸部の形状は、積層体5又は積層体保持材6と接触する面が断続的に並んだ形状であってもよい。
【0045】
次に、梱包体1を形成する方法を説明する。
【0046】
まず、
図4に示すように複数の脆性薄板材50を含む積層体5を積層体保持材6に保持する。例えば、積層体5を袋状の積層体保持材6に収容する。このとき、上述したように積層体5を積層体保持材6で密封することが好ましい。ついで、梱包容器2の本体部4の複数の凹部41に、積層体5の積層方向に形成された面が凹部41の底面と向かい合う状態で、積層体保持材6と共に嵌め込む。さらに、前記凹部41の上方で積層体5を覆うように蓋部3をかぶせてもよい。このようにして、積層体5を蓋部3により覆う。本実施形態では、この作業を、蓋部3の凹部31に積層体5を差し込みながら行ってもよい。これにより、梱包体1が形成される。
【0047】
形成された梱包体1は、運搬用のパレット上に直接積み重ねてもよいが、
図1に示す内側面に補強板が接合された梱包箱7に収容されることが好ましい。フォークリフトのツメが誤って梱包箱7に当たったとしても、梱包箱7及び梱包体1の変形を防止できるからである。
【0048】
図13に、本発明の他の実施形態に係る梱包容器2を示す。蓋部3は、一つの面が開口した箱状体である。一方、本体部4は、ベース部45と、ベース部45の上で配列するように配置された複数の仕切部47と、を備えている。そして、隣り合う仕切部47同士の側面とベース部45よって凹部49が形成されている。積層体5は、積層体保持材6と共に凹部49に嵌め込まれる。本体部4にはベース部45の周端にベース部45を取り囲むように段差部45Aが形成されている。蓋部3の開口端39と段差部45Aが嵌り合うように蓋部3を本体部4に乗せることにより、本体部4の上方で積層体5を覆う。この場合に、蓋部3の底面が、凹部49の一部を形成しているベース部45に前記積層体50を押圧する。これにより、積層体5を梱包容器2に保持することができる。
【0049】
図13において、複数の仕切部47は、2列の凹部49を形成するように、2列に配列されているが、一列に配列されていてもよく、3列以上に配列されていてもよい。また、一又は複数の凹部49が形成されるように複数の仕切部47が設けられていればよい。凹部49同士の間隔D2(仕切部47の厚み)の範囲は、凹部41同士の間隔D1の範囲と同様である。
【0050】
以上説明した本実施形態の梱包体1では、梱包容器2と積層体保持材6とで脆性薄膜板50を二重に保護することができるため、脆性薄板材50の破損を防止することができる。
【0051】
特に脆性薄板材50がジルコニア系である場合には、破損が特に発生しやすい脆性薄板材50の端面や平面の「欠け」、「ヒビ」、「へこみ」を抑制する顕著な効果が得られる。
【実施例】
【0052】
次に、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の一例に関するものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
(自由落下試験)
まず、実施例及び比較例に関する評価方法について説明する。実施例及び比較例に係る、梱包体又は梱包集合体をJIS(日本工業規格) Z0202−1994に準拠して、落下姿勢が面落下となるように、高さ60cmの位置から床に自由落下させた。床の構造は、コンクリートの表面にウレタン塗装を施したものであった。試験後に、梱包体又は梱包集合体に収容されていた全ての8YSZ(8モル%のイットリアで安定化されたジルコニア)シートについて、シートの破損(割れ)を目視で確認した。また、全ての8YSZシートについて、表面の「欠け」、「ヒビ」を透過型光電センサーにより検出した。破損又は欠陥が確認された8YSZシートの枚数を、検査した8YSZシートの全枚数で除して、破損率及び欠陥発生率を算出した。
【0054】
(傾斜衝撃試験)
実施例及び比較例に係る、梱包体又は梱包集合体を、JIS Z0205−1998に準拠してレールの上の滑走車荷台に載せ、10°の角度に傾斜させて衝撃板に追突させる傾斜衝撃試験を行った。試験後に、梱包体又は梱包集合体に収容されていた全ての8YSZシートについて、シートの破損(割れ)を目視で確認した。また、全ての8YSZシートについて、表面の「欠け」、「ヒビ」、を透過型光電センサーにより検出した。破損又は欠陥が確認された8YSZシートの枚数を検査した8YSZシートの全枚数で除して、破損率及び欠陥発生率を算出した。
【0055】
(実施例1)
120mm角、厚さ120μmの8YSZシート(日本触媒社製)を125枚積層した積層体を、積層体保持材である市販の非帯電性ポリエチレン袋(厚さ:0.05mm、表面抵抗率:10
8Ω/□)に入れた。その袋の開口に封をして、その開口周辺を折り返して袋の外表面に接着した。また、袋の四隅を三角状に折り返して袋の外表面に接着した。このようにして、積層体を積層体保持材に保持させた。次に、積層体保持材に保持された積層体10組を、
図1に示すような発泡倍率が約50倍であるポリスチレン発泡体製の梱包容器に収容した。具体的には、積層体の積層方向が横向きとなる状態(積層体の積層方向に形成された面が梱包容器の本体部の凹部の底面と向かい合う状態)で積層体保持材と共に梱包容器の本体部の凹部に積層体をそれぞれ嵌め込み、上から蓋部をかぶせた。凹部及び蓋部によって、積層体の一対の端部(上端及び下端が)が固定されていた。このようにして、実施例1に係る梱包体を作製した。
【0056】
次に、上記の梱包体を、
図1に示すような梱包箱に入れ、梱包体と梱包箱との隙間全体発泡倍率が約30倍である発泡スチロール板を挿入した。梱包箱は、約5mmの高さの段と約3mmの高さの段の2つの段からなるW段の段ボール箱であった。また、このダンボールのライナーの1m
2あたりの重さは約180gであった。このようにして、実施例1に係る梱包集合体を作製した。実施例1に係る梱包体及び梱包集合体について上記の通り、自由落下試験及び傾斜衝撃試験を実施した。自由落下試験の結果を表1に、傾斜衝撃試験の結果を表2に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様に作製した、積層体保持材に保持された積層体10組を、
図1に示すような、ポリスチレン発泡体製の梱包容器の本体部の凹部に差し込み、上から蓋部をかぶせた。凹部及び蓋部によって、積層体の一対の端部が固定されていた。梱包容器は、主材として発泡倍率が約40倍である発泡体が使用されていた。また、梱包容器は、積層体保持材と接する面に発泡倍率が60倍である発泡体シートが接着材によって主材に接合された構造を有していた。このようにして、実施例2に係る梱包体を作製した。
【0058】
上記の梱包体を
図1に示すような、梱包箱に入れ、梱包体と梱包箱との隙間全体に補強板としてベニヤ合板を挿入した。なお、梱包箱は、段高さが約3mmであり、ライナーの1m
2当たりの重さが約220gである、段ボール箱であった。このようにして、実施例2に係る梱包集合体を作製した。次いで、実施例1と同様に、自由落下試験、傾斜衝撃試験を行い、内部に収容された8YSZシートの全量を検査した。自由落下試験結果を表1に、傾斜衝撃試験結果を表2に示す。
【0059】
(比較例1)
上記の8YSZシートを10枚単位にして、
図8に示すような、120mm角の平面形状である紙製の綴り収容材に保持させ、8YSZシート250枚の積層体を作成した。この積層体の上面及び下面に端部緩衝材を配置し、ポリプロピレン製テープ(積水化学社製、商品名:P.P.バンド15mm幅)で十字状に巻回し緊締固定して包装体を得た。このとき、8YSZシートに加わっている面圧力は200gf/cm
2であった。この端部緩衝材は、151mm角、厚さ10mm、密度が0.086g/cm
3のポリエチレンフォーム(林フェルト社製、商品名:サンベルカL1400)であり、積層体の両端部が収まるように中央部に凹部(凹部形状:122mm角、凹部深さ:5mm)を有していた。次いで、4つの包装体をそれぞれ市販の非帯電性の袋に収容した。さらに、袋に収容した包装体をそれぞれトレイ状の緩衝保持材に積層体の積層方向が縦向き(積層体の積層方向に形成された面が凹部の側面と向かい合う状態)となるように入れた。最後に、これをジュラルミン製キャリングケースからなる輸送容器に収容した。輸送容器と非帯電性の袋に入った包装体の隙間にはポリエチレン製クッション剤(旭化成社製、商品名:アスパックサラサラ)を充填した。このようにして、比較例2に係る梱包集合体を作製した。次いで、この梱包集合体に対して、実施例1と同様に、自由落下試験、傾斜衝撃試験を行い、内部に収容された1000枚の8YSシート全量を検査した。自由落下試験結果を表1に、傾斜衝撃試験結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
上記試験の結果、実施例1及び実施例2に係る梱包体、梱包集合体を用いることの有用性が確認された。実施例1及び実施例2の破損率は、比較例1の破損率よりも小さかった。また、実施例1及び実施例2の欠け、ヒビに関する欠陥発生率は、比較例1の欠け、ヒビに関する破損率よりも小さかった。