(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シフト反応系統が、一段目シフト反応器と、前記一段目シフト反応器からの一段目の反応ガスが流出する一段目反応ガス流路と、前記一段目反応ガス流路に接続された二段目シフト反応器と、前記二段目シフト反応器からの二段目の反応ガスが流出する二段目反応ガス流路とを含み、
前記熱交換器が、前記一段目の反応ガスと水とを熱交換させる第1の熱交換器と、前記二段目の反応ガスと水とを熱交換させる第2の熱交換器とを含む、
請求項1に記載のシフト反応システム。
前記シフト反応系統が、一段目シフト反応器と、前記一段目シフト反応器からの一段目の反応ガスが流出する一段目反応ガス流路と、前記一段目反応ガス流路に接続された二段目シフト反応器と、前記二段目シフト反応器からの二段目の反応ガスが流出する二段目反応ガス流路と、前記二段目反応ガス流路に接続された三段目シフト反応器と、前記三段目シフト反応器からの三段目の反応ガスが流出する三段目反応ガス流路とを含み、
前記熱交換器が、前記一段目の反応ガスと水とを熱交換させる第1の熱交換器と、前記二段目の反応ガスと水とを熱交換させる第2の熱交換器と、前記三段目の反応ガスと水とを熱交換させる第3の熱交換器とを含む、
請求項1に記載のシフト反応システム。
前記加熱回路が前記スチームドラムの底部に開口している入口から下向きに流れる流路、前記熱交換器のいずれか一つを通る流路、前記スチームドラムに開口している出口に向けて上向きに流れる流路、および前記スチームドラム内を含む循環路に形成されている、請求項4に記載のシフト反応システム。
前記スチームドラムの少なくとも1つが、当該スチームドラムの内圧を検出する圧力センサと、前記スチームドラムに接続された排気路と、前記排気路に設けられた排気量調整弁とを備えており、
前記スチームドラムの内圧が所定圧力となるように、前記排気量調整弁により前記圧力センサの検出値に基づいて前記スチームドラムから前記排気路を通じて排出される水蒸気の流量が調整されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシフト反応システム。
前記反応ガス流路の少なくとも1つが、当該反応ガス流路から後段の前記シフト反応器へ流入する反応ガスの温度を検出する温度センサと、前記反応ガス流路と接続されており当該反応ガス流路が通る前記熱交換器をバイパスするバイパス路と、前記バイパス路に設けられた流量調整弁とを備えており、
前記反応ガス流路から後段の前記シフト反応器へ流入する反応ガスの温度が所定のシフト反応温度となるように、前記流量調整弁により前記熱交換器を通る反応ガスの流量が調整されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシフト反応システム。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭ガス化ガスから水素を製造するプロセスが知られている。このプロセスは、高温高圧のガス化炉で石炭系の燃料をガス化し、生成した石炭ガス化ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応器でシフト反応させ、生成した二酸化炭素と水素の混合ガスから二酸化炭素を分離して水素を回収するものである。このプロセスでは、生成するガス中の水素濃度を高めるためにシフト反応を利用している。なお、シフト反応は次式に示す発熱反応である。
【0003】
(シフト反応式) CO+H
2O←→CO
2+H
2+Qkcal
【0004】
上記プロセスを利用した設備として、例えば、特許文献1に記載された石炭ガス化発電プラントがある。この石炭ガス化発電プラントでは、石炭ガス化炉とシフト反応器に加えて、ガスタービン、排熱回収ボイラ、および発電機が接続された蒸気タービンを備えている。このガスタービンでは、回収された高濃度の水素ガスを燃料として利用している。排熱回収ボイラでは、ガスタービンの排熱を回収して水蒸気を生成している。蒸気タービンでは、排熱回収ボイラで生成した水蒸気でタービンを回して発電機を駆動している。
【0005】
特許文献1に記載された石炭ガス化発電プラントでは、排熱回収ボイラで生成した水蒸気がシフト反応器へ供給されている。シフト反応器ではシフト反応に十分な水蒸気が必要であるが、シフト反応器へ供給する水蒸気量を多くすると蒸気タービンの出力が上がらず発電効率が低下するという課題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載された石炭ガス化発電プラントは、特許文献1に記載されたものと同様の石炭ガス化発電プラントにおいて、複数段直列に連結したシフト変換部を備えている。各シフト変換部は、石炭ガス化ガスに水蒸気を供給する水蒸気供給手段、石炭ガス化ガスに水蒸気を供給した後で水スプレーを混合させる混合器、およびシフト反応器を備えている。この石炭ガス化発電プラントでは、石炭ガス化ガスに水スプレーを混合させることにより水蒸気供給手段つまり排熱回収ボイラからシフト反応器へ供給する水蒸気量を減らして、発電効率を向上させようとしている。
【0007】
ところで、シフト反応を利用した設備として、例えば、特許文献3に記載された燃料電池用燃料ガスの生成システムがある。この燃料電池用燃料ガスの生成システムでは、原料である炭化水素化合物を部分酸化部で部分酸化し、生成したガスをシフト部で水蒸気改質反応させることにより水素と二酸化炭素を発生させ、発生した水素を分離部で分離回収し、回収した水素を燃料ガスとして燃料電池へ送っている。この燃料電池用燃料ガスの生成システムでは、シフト部で利用する水蒸気を、部分酸化部から排出される生成ガスと水との熱交換によって生成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シフト反応には多量の高温高圧の水蒸気が必要である。しかし、この水蒸気の生成には多くの熱量が必要であり、これがシフト反応を含むプロセスの燃料費を増大させている。そこで、特許文献1−3に記載されたいずれの技術でも、排熱を有効利用して水蒸気を生成している。しかし、特許文献1,2の石炭ガス化発電プラントでは、排熱回収ボイラで生成した水蒸気をシフト反応に利用するため、発電効率が低下するという課題がある。また、特許文献3では、部分酸化反応で発生する熱量に変動が生じた場合に、その影響を受けて生成する水蒸気の温度や量に変動が生じ、水蒸気の安定供給が困難となる。特に、部分酸化反応で発生する熱量が非常に少ない場合には、水蒸気ではなく温水がシフト部へ流入することとなる。これは、ウォーターハンマー現象等の後段設備でのトラブルが発生する原因となりうる。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、シフト反応を行うシフト反応システムにおいて、シフト反応に必要な水蒸気を生成するために外部から導入する熱量を低減することを目的とする。ひいては、シフト反応を含むプロセスの燃料費を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明
の一態様に係るシフト反応システムは、
水性ガスシフト反応が行われるシフト反応器とその反応ガスが流出する反応ガス流路とが直列に複数段連結されて成るシフト反応系統と、
各段の前記反応ガス流路で反応ガスと水とを熱交換させる熱交換器を含み、水から水蒸気を生成する水蒸気生成流路と、
生成された水蒸気を一段目の前記シフト反応器へ供給する水蒸気供給流路と、
一酸化炭素を含む原料ガスを一段目の前記シフト反応器へ供給する原料ガス供給流路とを備えて
おり、
前記水蒸気生成流路に、低圧側と高圧側の2つのスチームドラムと、低圧側スチームドラムから高圧側スチームドラムへ水を送給するポンプとが設けられており、前記2つのスチームドラムが前記熱交換器で加熱された水および水蒸気を互いに異なる温度且つ異なる圧力で貯留しているものである。
【0012】
前記シフト反応システムは、例えば、前記シフト反応系統が、一段目シフト反応器と、前記一段目シフト反応器からの一段目の反応ガスが流出する一段目反応ガス流路と、前記一段目反応ガス流路に接続された二段目シフト反応器と、前記二段目シフト反応器からの二段目の反応ガスが流出する二段目反応ガス流路とを含み、前記熱交換器が、前記一段目の反応ガスと水とを熱交換させる第1の熱交換器と、前記二段目の反応ガスと水とを熱交換させる第2の熱交換器とを含むものとできる。
【0013】
また、前記シフト反応システムは、例えば、前記シフト反応系統が、一段目シフト反応器と、前記一段目シフト反応器からの一段目の反応ガスが流出する一段目反応ガス流路と、前記一段目反応ガス流路に接続された二段目シフト反応器と、前記二段目シフト反応器からの二段目の反応ガスが流出する二段目反応ガス流路と、前記二段目反応ガス流路に接続された三段目シフト反応器と、前記三段目シフト反応器からの三段目の反応ガスが流出する三段目反応ガス流路とを含み、前記熱交換器が、前記一段目の反応ガスと水とを熱交換させる第1の熱交換器と、前記二段目の反応ガスと水とを熱交換させる第2の熱交換器と、前記三段目の反応ガスと水とを熱交換させる第3の熱交換器とを含むものである。
【0014】
上記シフト反応システムによれば、水蒸気生成流路を流れる水と反応ガス流路を流れる反応ガスとが熱交換することにより、水が加熱され、反応ガスが冷却される。加熱された水は水蒸気となって水蒸気供給流路へ供給される。このように、シフト反応システムでは、シフト反応で発生する熱を利用してシフト反応で利用する水蒸気を生成することができる。換言すれば、シフト反応のために必要な熱量をシフト反応で発生する熱量で賄ったり補ったりすることが可能となる。これにより、シフト反応システムが外部から導入する熱量を低減することができ、シフト反応システムの燃料費を削減することができる。また、反応ガスが冷却されるので、反応に好適な温度の反応ガスを後段のシフト反応器に導入することができる。なお、シフト反応では、反応温度が低いほど水素転換率が高くなる。
【0016】
上記構成によれば、スチームドラムに水と生成された水蒸気が一旦貯まることによって、シフト反応器へ供給される水蒸気の圧力と温度の変動を緩和することができる。
【0018】
上記構成によれば、低圧側と高圧側の2段のスチームドラムが設けられることによって、水蒸気をより確実に目標の温度と圧力に調製することができる。
【0019】
本発明は上記シフト反応システムにおいて、前記水蒸気生成流路に前記スチームドラム内を一部に含む加熱回路が設けられており、前記加熱回路が前記熱交換器のいずれか一つを通っているものである。
【0020】
上記構成によれば、スチームドラム内の水が加熱回路を流れるうちに加熱されて水蒸気となり、水蒸気がスチームドラムに貯留される。
【0021】
上記において、前記加熱回路が前記スチームドラムの底部に開口している入口から下向きに流れる流路、前記熱交換器のいずれか一つを通る流路、前記スチームドラムに開口している出口に向けて上向きに流れる流路、および前記スチームドラム内を含む循環路に形成されていることがよい。
【0022】
上記構成によれば、自重により加熱回路の入口へ流入した水は、熱交換器で水蒸気となって流路を上昇してスチームドラムに還流する。このように、加熱回路では水の循環のためにポンプ等の動力を必要としない。よって、ポンプ等の設備費やその運転に係るエネルギーや費用を削減することができる。
【0023】
本発明は上記シフト反応システムにおいて、前記スチームドラムの少なくとも1つが、当該スチームドラムの内圧を検出する圧力センサと、前記スチームドラムに接続された排気路と、前記排気路に設けられた排気量調整弁とを備えており、前記スチームドラムの内圧が所定圧力となるように、前記排気量調整弁により前記圧力センサの検出値に基づいて前記スチームドラムから前記排気路を通じて排出される水蒸気の流量が調整されているものである。
【0024】
上記構成によれば、シフト反応で発生する熱量が変動した場合であっても、スチームドラム内の水蒸気の圧力と温度を一定に保持することが可能となる。よって、シフト反応で発生する熱量が変動した場合であっても、シフト反応器へ供給する水蒸気の温度条件および圧力条件を一定に保持することができる。これにより、シフト反応を安定させることができる。
【0025】
上記において、前記排気路が、前記スチームドラムから排気された水蒸気を系内へ戻すように形成されていることが望ましい。このように過剰の水蒸気を系内へ戻すことにより、外部へ排出される熱エネルギーを低減し、熱エネルギーを有効に利用することができる。
【0026】
本発明は上記シフト反応システムにおいて、前記反応ガス流路の少なくとも1つが、当該反応ガス流路から後段の前記シフト反応器へ流入する反応ガスの温度を検出する温度センサと、前記反応ガス流路と接続されており当該反応ガス流路が通る前記熱交換器をバイパスするバイパス路と、前記バイパス路に設けられた流量調整弁とを備えており、前記反応ガス流路から後段の前記シフト反応器へ流入する反応ガスの温度が所定のシフト反応温度となるように、前記流量調整弁により前記熱交換器を通る反応ガスの流量が調整されているものである。
【0027】
上記構成によれば、シフト反応器に流入する反応ガスの温度を所定のシフト反応温度とすることができ、シフト反応を効率的且つ経済的に行うことができる。
【0028】
本発明は上記シフト反応システムにおいて、一段目の前記反応ガス流路を流れるガスと前記原料ガス供給
流路を流れる原料ガスを熱交換させる予熱器を備えているものである。
【0029】
上記構成によれば、反応ガス流路を流れる反応ガスと原料ガス供給
流路を流れる原料ガスとが熱交換することにより、反応ガスが冷却され、原料ガスが加熱される。原料ガスは加熱されることにより、シフト反応により好適な温度となってシフト反応器へ供給される。このように、シフト反応システムでは、シフト反応で発生する熱を利用してシフト反応で利用する原料ガスを予熱することができる。換言すれば、シフト反応のために必要な熱量をシフト反応で発生する熱量で賄ったり補ったりすることが可能となる。これにより、シフト反応システムが外部から導入する熱量を低減することができ、シフト反応システムの燃料費を削減することができる。
【0030】
本発明
の別態様に係るシフト反応システム
は、
水性ガスシフト反応が行われるシフト反応器とその反応ガスが流出する反応ガス流路とが直列に複数段連結されて成るシフト反応系統と、
各段の前記反応ガス流路で反応ガスと水とを熱交換させる熱交換器を含み、水から水蒸気を生成する水蒸気生成流路と、
生成された水蒸気を一段目の前記シフト反応器へ供給する水蒸気供給流路と、
一酸化炭素を含む原料ガスを一段目の前記シフト反応器へ供給する原料ガス供給流路とを備えており、前記水蒸気供給
流路にノックアウトドラムが設けられているものである。
【0031】
上記構成によれば、シフト反応器へ供給される水蒸気から液相が分離される。これによりシフト反応器へ流入する水蒸気は気相のみであり、シフト反応器への水分の流入、ウォーターハンマー現象等の後段設備でのトラブルを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、シフト反応器から流出する反応ガスと水とが熱交換することによって、反応ガスを冷却するとともに、水を加熱して水蒸気を生成することができる。つまり、シフト反応で発生する熱をシフト反応で必要な水素の製造のために利用することができる。この結果、シフト反応に必要な水蒸気を生成するために外部から導入する熱量を低減し、シフト反応を含むプロセスの燃料費を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の一実施形態に係るシフト反応システムを含む水素製造プロセスプラントから説明する。
【0035】
〔水素製造プロセスプラント10〕
図1は本発明の実施形態に係る水素製造プロセスフロー図である。
図1に示すように、水素製造プロセスプラント10は、ガス化炉11と、シフト反応システム12と、H
2S/CO
2分離回収装置13とを備えている。
【0036】
ガス化炉11は、石炭系固形燃料をガス化するものである。ガス化炉11には、原料である石炭(C,H,N,O,S)と酸素(O
2)とが投入され、これらが高温高圧下で部分酸化や熱分解されることにより、石炭ガス化ガスが生成される。石炭ガス化ガスには、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)等が含まれている。
【0037】
ガス化炉11で生成した石炭ガス化ガスは、シフト反応システム12へ供給される。シフト反応システム12では、外部から供給された高圧水を利用して石炭ガス化ガスをシフト反応させることにより、生成ガス中の水素量を高める。このシフト反応システム12については後ほど詳細に説明する。
【0038】
シフト反応システム12から排出されるガスには、高濃度の水素、硫化水素(H
2S)、二酸化炭素(CO
2)などが含まれている。シフト反応システム12から排出されたガスはH
2S/CO
2分離回収装置13に導入されて、硫化水素と二酸化炭素が分離回収される。その結果、高濃度となった水素を回収することができる。回収された高濃度の水素は、例えば、ガスタービンやガスエンジンの燃料として利用したり、アンモニア製造に利用したりすることができる。
【0039】
〔シフト反応システム12〕
続いて、シフト反応システム12について
図2を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の実施形態に係るシフト反応システムのプロセスフロー図である。
【0040】
<シフト反応システム12の構成>
シフト反応システム12は、シフト反応系統と、原料ガス供給系統と、水蒸気生成系統と、水蒸気供給系統の4つの流体流路系統を備えている。以下では、各流体流路系統に分けてその構成を詳細に説明する。
【0041】
(シフト反応系統)
シフト反応系統は、水性ガスシフト反応が行われるシフト反応器とその反応ガスが流出する反応ガス流路とが直列に多段連結されて成る。本実施の形態に係るシフト反応系統は、配管等により直列に接続された3つのシフト反応器21,22,23を備えている。各シフト反応器21,22,23は入口と出口を有し、内部にシフト反応触媒を備えた反応容器として構成されている。一段目シフト反応器21の出口は、第1反応ガス流路24により二段目シフト反応器22と接続されている。第1反応ガス流路24には第1熱交換器61と予熱器41との2つの熱交換器が設けられている。これらの熱交換器61,41はいずれも一段目シフト反応器21からの排熱を利用するものである。なお、第1反応ガス流路24において第1熱交換器61が上流側、予熱器41が下流側に配置されている。二段目シフト反応器22の出口は、第2反応ガス流路25により三段目シフト反応器23の入口と接続されている。第2反応ガス流路25には第2熱交換器62が設けられている。第2熱交換器62は二段目シフト反応器22からの排熱を利用するものである。三段目シフト反応器23の出口は、第3反応ガス流路26と接続されている。第3反応ガス流路26はシフト反応システム12から反応ガスを排出して次工程へ送る流路である。本実施の形態では、第3反応ガス流路26がH
2S/CO
2分離回収装置13と直接的または間接的に接続されている。第1反応ガス流路24、第2反応ガス流路25および第3反応ガス流路26の各々は1以上の配管で形成されている。
【0042】
第1反応ガス流路24には、第1熱交換器61をバイパスする第1バイパス路65の両端が接続されている。第1バイパス路65には、流量調整弁66が設けられている。第1反応ガス流路24の予熱器41よりも下流側であって二段目シフト反応器22の入口近傍には、第1反応ガス流路24を流れる一段目反応ガスの温度を検出する温度センサ67が設けられている。そして、二段目シフト反応器22に流入する一段目反応ガスの温度が所定のシフト反応温度となるように、温度センサ67で検出される一段目反応ガスの温度に基づき、流量調整弁66により第1熱交換器61を流れる一段目反応ガスの流量(第1バイパス路65へ逃がす一段目反応ガスの流量)が調整されている。具体的には、温度センサ67で検出される一段目反応ガスの温度がシフト反応温度より高ければ第1熱交換器61を通る一段目反応ガスの流量を大きく、逆に温度センサ67で検出される一段目反応ガスの温度がシフト反応温度よりも低ければ第1熱交換器61を通る一段目反応ガスの流量を小さくするように流量調整弁66が動作する。ここで「シフト反応温度」とは、シフト反応器21,22,23へ流入するガスの好適な温度をいう。シフト反応では、反応温度が低いほど水素転換率が高くなるが、反応速度は反応温度が低くなるにしたがって急速に低下する。反応速度を高く維持しながら反応に必要な触媒量を経済的な量に抑えるために、シフト反応温度は250℃以上350℃以下の範囲に含まれる好適な値に設定される。本実施の形態では、シフト反応温度は255℃に設定している。
【0043】
第2反応ガス流路25には、第2熱交換器62をバイパスする第2バイパス路71の両端が接続されている。第2バイパス路71には、流量調整弁72が設けられている。第2反応ガス流路25の第2熱交換器62よりも下流側には、三段目シフト反応器23へ流入する二段目反応ガスの温度を検出する温度センサ73が設けられている。そして、三段目シフト反応器23に流入する二段目反応ガスがシフト反応温度となるように、温度センサ73で検出される二段目反応ガスの温度に基づいて、流量調整弁72により第2熱交換器62を流れる二段目反応ガス流量(第2バイパス路71へ逃がす二段目反応ガスの流量)が調整されている。具体的には、温度センサ73で検出される二段目反応ガスの温度がシフト反応温度より高ければ第2熱交換器62を通る二段目反応ガスの流量を大きく、逆に温度センサ73で検出される二段目反応ガスの温度がシフト反応温度よりも低ければ第2熱交換器62を通る二段目反応ガスの流量を小さくするように流量調整弁72が動作する。
【0044】
(原料ガス供給系統)
原料ガス供給系統は、一酸化炭素を含む石炭ガス化ガス(原料ガス)を一段目シフト反応器21へ供給する原料ガス供給流路27を備えている。原料ガス供給流路27は1以上の配管で形成されており、ここをガス化炉11から供給される石炭ガス化ガスが流れる。原料ガス供給流路27は混合流路28と接続されており、混合流路28は一段目シフト反応器21の入口と接続されている。原料ガス供給流路27を送られてきた石炭ガス化ガスは、混合流路28の入口で水蒸気供給流路52から送られてきた水蒸気と混合してから、一段目シフト反応器21へ流入する。
【0045】
原料ガス供給流路27は予熱器41を経由している。予熱器41では一段目シフト反応器21から排出された一段目反応ガスと石炭ガス化ガスが熱交換することにより、一段目反応ガスが冷却されるとともに石炭ガス化ガスが予熱される。
【0046】
第1反応ガス流路24には、予熱器41をバイパスする予熱器バイパス路68の両端が接続されている。予熱器バイパス路68には流量調整弁69が設けられている。混合流路28には、一段目シフト反応器21へ流入する石炭ガス化ガスと水蒸気の混合ガスの温度を検出する温度センサ70が設けられている。そして、一段目シフト反応器21へ流入する石炭ガス化ガスの温度がシフト反応温度となるように、温度センサ70で検出される混合ガスの温度に基づいて、流量調整弁69により予熱器41を流れる一段目反応ガスの流量(予熱器バイパス路68へ逃がす一段目反応ガスの流量)が調整される。具体的には、温度センサ70で検出される混合ガスの温度がシフト反応温度より高ければ予熱器41を通る一段目反応ガスの流量を小さく、逆に温度センサ73で検出される混合ガスの温度がシフト反応温度よりも低ければ予熱器41を通る一段目反応ガスの流量を大きくするように流量調整弁69が動作する。
【0047】
(水蒸気生成系統)
水蒸気生成系統は、水蒸気を水から生成して後述する水蒸気供給流路52へ供給する水蒸気生成流路29を備えている。水蒸気生成流路29は、各段の反応ガス流路24,25,26で反応ガスと水とを熱交換させる熱交換器61,62,63を含んでいる。そして、水蒸気生成流路29では、外部の高圧水供給源30から供給された高圧水を各段の反応ガスと熱交換させることにより加熱して、水蒸気を生成する。水蒸気生成流路29は、高圧水供給路33、低圧側スチームドラム32、低圧側加熱回路34、送液路38、ポンプ39、高圧側スチームドラム31、高圧側加熱回路43および熱交換器61,62,63等により構成されている。水蒸気生成系統では、高圧側スチームドラム31と低圧側スチームドラム32の2つのスチームドラムを設け、系統内で2種類の温度と圧力の水蒸気を生成している。そして、高圧側スチームドラム31と低圧側スチームドラム32の熱源には、異なるシフト反応器で発生する2種類の温度域の反応熱を利用している。
【0048】
高圧水供給源30は、1以上の配管で形成された高圧水供給路33によって低圧側スチームドラム32と接続されている。高圧水供給路33には、導水量調整弁83が設けられている。低圧側スチームドラム32には、低圧側スチームドラム32内の水位を検出する液レベルセンサ84が設けられている。そして、液レベルセンサ84の検出値に基づいて、導水量調整弁83により高圧水供給路33を通じて高圧水供給源30から低圧側スチームドラム32への高圧水の供給量が調整される。このようにして低圧側スチームドラム32の水位は一定に保たれる。
【0049】
高圧水供給路33は第3熱交換器63を経由している。この第3熱交換器63では、高圧水供給路33を流れる高圧水と、三段目シフト反応器23から第3反応ガス流路26へ流出した三段目反応ガスとが熱交換する。これにより、三段目反応ガスが冷却されるとともに高圧水が加熱される。
【0050】
低圧側加熱回路34は、低圧側スチームドラム32内の温水を加熱する回路であって、低圧側スチームドラム32内をその一部に含んでいる。低圧側加熱回路34は、低圧側スチームドラム32の底部に開口している入口から下向きに流れる流路、第2熱交換器62を通る流路、低圧側スチームドラム32に開口している出口に向けて上向きに流れる流路、および低圧側スチームドラム32内を含んで形成されている。低圧側加熱回路34は、流れが下向きから上向きに切り替わる部分またはその近傍で第2熱交換器62を通っている。第2熱交換器62では、低圧側加熱回路34を流れる温水と二段目シフト反応器22から第2反応ガス流路25へ流出した二段目反応ガスとが熱交換する。このように第2熱交換器62で加熱された温水および水蒸気が低圧側スチームドラム32に貯留されている。
【0051】
低圧側スチームドラム32の上部には、1以上の配管で構成された排気路35が接続されている。排気路35には排気量調整弁36が設けられており、低圧側スチームドラム32には内部の圧力を検出する圧力センサ37が設けられている。そして、低圧側スチームドラム32の内圧が所定圧力(本実施の形態では3MPa)となるように、圧力センサ37の検出値に基づいて、排気量調整弁36により低圧側スチームドラム32から排気路35を通じて排出される水蒸気の流量が調整されている。このようにして、低圧側スチームドラム32内の圧力が一定に保たれる。なお、低圧側スチームドラム32から排気路35を通じて排出された水蒸気は、外部で利用することができる。
【0052】
低圧側スチームドラム32と高圧側スチームドラム31は、送液路38で接続されている。送液路38には、水を送給するポンプ39が設けられている。ポンプ39が作動することにより、低圧側スチームドラム32内の温水が送液路38を通じて高圧側スチームドラム31へ送られる。
【0053】
送液路38に流量調整弁40が設けられており、高圧側スチームドラム31に液レベルセンサ42が設けられている。そして、流量調整弁40は、液レベルセンサ42で検出された高圧側スチームドラム31の液面高さに基づいて低圧側スチームドラム32から高圧側スチームドラム31へ流れる温水の流量を調整する。このようにして各スチームドラム31,32間の水量調整を、送液路38に設けられたポンプ39と流量調整弁40で行っている。
【0054】
高圧側加熱回路43は、高圧側スチームドラム31内の温水を加熱する回路であって、高圧側スチームドラム31内をその一部に含んでいる。高圧側加熱回路43は、高圧側スチームドラム31の底部に開口している入口から下向きに流れる流路、第1熱交換器61を通る流路、高圧側加熱回路43に開口している出口に向けて上向きに流れる流路、および高圧側加熱回路43内を含んで形成されている。高圧側加熱回路43は、流れが下向きから上向きに切り替わる部分またはその近傍で第1熱交換器61を通っている。第1熱交換器61では、高圧側加熱回路43を流れる温水と一段目シフト反応器21から第1反応ガス流路24へ排出された一段目反応ガスとが熱交換する。このようにして、高圧側スチームドラム31は第1熱交換器61で加熱された温水および水蒸気を貯留している。
【0055】
(水蒸気供給系統)
水蒸気供給系統は、水蒸気生成系統で生成された水蒸気を一段目シフト反応器21へ供給する水蒸気供給流路52を備えている。1以上の配管から成る水蒸気供給流路52は、高圧側スチームドラム31と混合流路28を接続している。高圧側スチームドラム31の水蒸気は、水蒸気供給流路52を通じて混合流路28へ流入し、混合流路28で原料ガス供給流路27から送られてきた石炭ガス化ガスと混合してから一段目シフト反応器21へ流入する。
【0056】
水蒸気供給流路52に流量調整弁54が設けられており、高圧側スチームドラム31に内部の圧力を検出する圧力センサ55が設けられている。そして、高圧側スチームドラム31の内圧が所定圧力(本実施の形態では5MPa)となるように、圧力センサ55の検出値に基づいて、流量調整弁54により高圧側スチームドラム31から水蒸気供給流路52を通じて排出される水蒸気の流量が調整されている。このようにして、高圧側スチームドラム31内の圧力が一定に保たれる。
【0057】
また、水蒸気供給流路52に排気路81が設けられている。排気路81には排気量調整弁82が設けられている。生成された水蒸気量が一段目シフト反応器21へ供給すべき水蒸気量を大きく上回った場合、つまり、高圧側スチームドラム31内が過圧となる場合には、圧力センサ55の検出値に基づいて水蒸気供給流路52の水蒸気が排気路81より排出される。排気路81は、系外へ水蒸気を送るように形成されていてもよいが、系内、例えば、低圧側スチームドラム32へ水蒸気を送るように形成されていることが望ましい。このように過剰の水蒸気を系内へ戻すことにより、外部へ排出される熱エネルギーを低減し、熱エネルギーを有効に利用することができる。上述のように、高圧側スチームドラム31と低圧側スチームドラム32では、各々に圧力センサ37,55と排気量調整弁36,82と流量調整弁54とを備えて、それぞれの圧力を一定に保持している。したがって、例えば、シフト反応で発生する熱量が変動した場合であっても、スチームドラム31,32内の水蒸気の圧力と温度を一定に保持することが可能となる。よって、シフト反応で発生する熱量が変動した場合であっても、シフト反応器へ供給する水蒸気の温度条件および圧力条件を一定に保持することができ、シフト反応を安定させることができる。
【0058】
水蒸気供給流路52には、流量調整弁54よりも下流側にノックアウトドラム53が設けられている。ノックアウトドラム53では、高圧側スチームドラム31から水蒸気供給流路52へ流入した水蒸気から液体が分離される。よって、水蒸気供給流路52のノックアウトドラム53よりも下流側では完全に気相の水蒸気のみが流れる。これにより一段目シフト反応器21へ液体が流入することや、ウォーターハンマー現象等の後段設備でのトラブルが発生したりすることを防止できる。
【0059】
また、水蒸気供給流路52には、ノックアウトドラム53よりも下流側に流量調整弁56が設けられている。この流量調整弁56で、水蒸気供給流路52を通じて混合流路28へ送られる水蒸気が減圧される。
【0060】
さらに、水蒸気供給流路52には、補助水蒸気供給路57が接続されている。補助水蒸気供給路57には、外部のボイラ設備(図示せず)から水蒸気が供給される。そして、低負荷時などのシフト反応器21からの排熱が水蒸気の生成に不十分なときに、補助水蒸気供給路57を通じて外部から水蒸気供給流路52へ補助的に水蒸気が供給される。
【0061】
<シフト反応システム12の動作>
続いて、上記構成のシフト反応システム12のシフト反応およびこれに関連するプロセスについて説明する。以下では、設定されたシフト反応温度を約255℃とし、高圧側圧力を約5MPaとし、低圧側圧力を約3MPaとしているが、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。また、説明中例示される反応ガス、水蒸気および石炭ガス化ガスの温度および圧力は各ガスの温度状況を平易に説明するための参考数値であって、実際は設備ごとの最適な数値となる。よって、これらについても例示された数値に限定されるものではない。
【0062】
シフト反応のプロセスをシフト反応のエネルギー収支と併せて説明する。
図3はシフト反応のエネルギー収支を説明するブロック図である。
図3では、シフト反応に関する流体(石炭ガス化ガス、水蒸気、これらの混合ガス、および反応ガス)の温度T[℃]と圧力P[MPa]と量M[Kmol/hr]とエンタルピーE[GJ/hr]が四角内に示されており、これらが変化する様子が矢印の流れによって示されている。
【0063】
図2および3に示すように、一段目シフト反応器21には、約257℃で約3.8MPaの水蒸気と石炭ガス化ガスとの混合ガスが流入する。一段目シフト反応器21では、石炭ガス化ガス中のおよそ80%の一酸化炭素がシフト反応に利用される。よって、一段目シフト反応器21から流出する一段目反応ガスは、一段目シフト反応器21へ流入した混合ガスと比較して一酸化炭素の割合が減少し、二酸化炭素と水素の割合が増加している。
【0064】
シフト反応は発熱反応であり、一段目シフト反応器21から流出する一段目反応ガスの温度は約440℃である。この一段目反応ガスの熱、つまり、一段目シフト反応器21の排熱は、第1熱交換器61と予熱器41を通じてそれぞれ水蒸気生成と石炭ガス化ガス予熱のために利用される。第1熱交換器61では一段目反応ガスが約440℃から約293℃まで冷却され、高圧側加熱回路43を流れる温水が加熱される。また、予熱器41では、一段目反応ガスが約293℃から約255℃まで冷却され、石炭ガス化ガスが約215℃から約260℃まで加熱される。このようにして、一段目反応ガスは約255℃まで冷却された状態で二段目シフト反応器22へ流入する。
【0065】
二段目シフト反応器22では、触媒の作用により一段目反応ガス中の一酸化炭素と水蒸気がシフト反応を起こし、水素と二酸化炭素を生成する。二段目シフト反応器22では元の石炭ガス化ガス中のおよそ10%の一酸化炭素がシフト反応に利用される。二段目シフト反応器22から流出する二段目反応ガスの温度は約277℃である。この二段目反応ガスの熱、つまり、二段目シフト反応器22の排熱は、第2熱交換器62を通じて水蒸気生成のために利用される。第2熱交換器62では、二段目反応ガスが約277℃から255℃まで冷却され、低圧側加熱回路34を流れる温水が加熱される。このようにして、二段目反応ガスは255℃まで冷却された状態で三段目シフト反応器23へ流入する。
【0066】
三段目シフト反応器23では、触媒の作用により二段目反応ガス中の一酸化炭素と水蒸気がシフト反応を起こし、水素と二酸化炭素を生成する。三段目シフト反応器23では元の石炭ガス化ガス中のおよそ5%の一酸化炭素がシフト反応に利用される。三段目シフト反応器23から流出する三段目反応ガスの温度は約257℃である。この三段目反応ガスの熱、つまり、三段目シフト反応器23の排熱は、第3熱交換器63を通じて水蒸気生成のために利用される。第3熱交換器63では、三段目反応ガスが約257℃から205℃まで冷却され、高圧水供給路33を流れる高圧水が加熱される。このようにして、三段目反応ガスは205℃まで冷却された状態で系から排出される。
【0067】
次に、水蒸気生成のプロセスを説明する。高圧水供給路33を通る高圧水は第3熱交換器63で220℃まで加熱されて、低圧側スチームドラム32へ流入する。低圧側スチームドラム32内の温水は、自重により低圧側加熱回路34へ流入し、第2熱交換器62で加熱されてその一部が水蒸気となり、低圧側加熱回路34の第2熱交換器62よりも下流側を上昇して低圧側スチームドラム32へ戻る。
【0068】
低圧側スチームドラム32は、下部に温水が溜まり、上部に3MPaの水蒸気が溜まった状態となっている。低圧側スチームドラム32の温水は、ポンプ39で5MPaまで昇圧されて送液路38を通じて高圧側スチームドラム31へ送られる。高圧側スチームドラム31の温水は、自重により高圧側加熱回路43へ流入し、第1熱交換器61で加熱されてその一部が水蒸気となり、高圧側加熱回路43の第1熱交換器61よりも下流側を上昇して高圧側スチームドラム31へ戻る。このように、高圧側加熱回路43および低圧側加熱回路34では温水の循環のためにポンプ等の動力を必要としない、自然循環方式が採用されている。よって、ポンプ等の設備費やその運転に係るエネルギーや費用を削減することができる。
【0069】
続いて、水蒸気供給と水蒸気生成のプロセスを、水蒸気生成のエネルギー収支と併せて説明する。
図4は水蒸気生成のエネルギー収支を説明するブロック図である。
図4では、水蒸気生成に関する流体(水、水蒸気)の温度T[℃]と圧力P[MPa]と量M[Kmol/hr]とエンタルピーE[GJ/hr]が四角内に示されており、これらが変化する様子が矢印の流れによって示されている。
【0070】
図2および4に示すように、水蒸気生成系統では、低圧側スチームドラム32の水位が所定レベルに保持されるように、高圧水供給源30から高圧水供給路33を通じて低圧側スチームドラム32へ3.3MPaで105℃の高圧水が供給される。高圧水供給路33を通じる高圧水は、第3熱交換器63で220℃まで加熱される。低圧側スチームドラム32内の温水は低圧側加熱回路34へ流入する。低圧側加熱回路34へ流入した約228℃の温水は、第2熱交換器62で加熱されて一部水蒸気となって低圧側スチームドラム32内へ戻る。このようにして低圧側スチームドラム32内には、約2.7MPaで約228℃の温水と水蒸気とが蓄えられている。
【0071】
低圧側スチームドラム32内の温水は、高圧側スチームドラム31の水位が所定レベルに保持されるように、送液路38を通じて高圧側スチームドラム31へ送られる。温水は送液路38を通るうちにポンプ39によって2.7MPaから5.0MPaまで加圧される。高圧側スチームドラム31内の温水は高圧側加熱回路43へ流入する。高圧側加熱回路43へ流入した約263℃の温水は、第1熱交換器61で加熱されて一部水蒸気となって高圧側スチームドラム31内へ戻る。以上の水蒸気生成のプロセスにより、高圧側スチームドラム31内には、5.0MPaで約263℃の温水と水蒸気とが蓄えられている。
【0072】
水蒸気供給系統では、高圧側スチームドラム31からの水蒸気が水蒸気供給流路52を通じて混合流路28へ供給される。水蒸気供給流路52を通じる水蒸気は、ノックアウトドラム53を経由し、ここで液体が分離回収されて完全に気体となる。さらに、水蒸気供給流路52を通じる水蒸気は、流量調整弁56を経由して、3.7MPaまで減圧されてから混合流路28へ流入する。このようにして、3.7MPaで249℃の水蒸気が混合流路28へ供給される。
【0073】
以上説明したシフト反応システム12では、水蒸気生成流路29を流れる水と反応ガス流路24,25,26を流れる反応ガスとが熱交換することにより、水が加熱され、反応ガスが冷却される。加熱された水は水蒸気となって水蒸気供給流路52を通じて一段目シフト反応器21へ供給される。このように、シフト反応システム12では、シフト反応で発生する熱を利用してシフト反応で利用する水蒸気を生成することができる。換言すれば、シフト反応のために必要な熱量をシフト反応で発生する熱量で賄ったり補ったりすることが可能となる。これにより、シフト反応システム12が外部から導入する熱量を低減することができ、シフト反応システムの燃料費を削減することができる。例えば、水素製造プラントに上記シフト反応システム12が組み込まれれば、外部から導入する熱量を低減することができ水素製造コストを削減することができる。また、例えば、石炭ガス化発電プラントに上記シフト反応システム12が組み込まれれば、排熱回収ボイラで生成した水蒸気をシフト反応に利用しないので発電効率の低下させることがなく、エネルギー収支比を向上させることができる。
【0074】
また、上記シフト反応システム12では、シフト反応器21,22,23からの反応ガスが冷却されるので、反応に好適な温度の反応ガスを後段のシフト反応器に導入することができる。なお、シフト反応では、反応温度が低いほど水素転換率が高くなるが、反応速度は反応温度が低くなるにしたがって急速に低下する。したがって、シフト反応で一旦上昇した反応ガスの温度を所定温度(シフト反応温度)まで低下させてから後段のシフト反応器へ導入することによって、反応速度を高く維持しながら反応に必要な触媒量を経済的な量に抑えることができる。
【0075】
さらに、上記シフト反応システム12では、水蒸気生成系統において、異なるシフト反応器で発生する少なくとも2種類の温度域の反応熱を利用して、水蒸気を生成している。具体的には、水蒸気生成流路29を流れる水が、一段目シフト反応器21からの反応熱と、二段目シフト反応器22からの反応熱と、三段目シフト反応器23からの反応熱との各々の異なる温度域の反応熱を利用して加熱される。このようにして、各シフト反応器21,22,23からの排熱を無駄なく利用することを可能にするとともに、水蒸気生成流路29を流れる水をより効果的に加熱できるようにしている。
【0076】
また、上記シフト反応システム12では、水蒸気生成系統において、高圧側スチームドラム31と低圧側スチームドラム32の2つのスチームドラムを設け、系統内で2種類の温度と圧力の水蒸気を生成している。水蒸気生成流路29にスチームドラムを備えることによって、スチームドラムに水と生成された水蒸気が一旦蓄えられることとなり、シフト反応器へ供給される水蒸気の圧力と温度の変動を緩和することができる。さらに、2つのスチームドラムを設けて水蒸気を段階的に生成することにより、目標であるシフト反応に適した温度と圧力の水蒸気を確実に調整できるようにしている。これにより、シフト反応に適した温度と圧力の水蒸気を安定してシフト反応系統へ供給することができる。
【0077】
また、上述のシフト反応システム12では、シフト反応のために必要な熱量をシフト反応で発生する熱量で賄えるようにしている。例えば、
図3に示すように、500Kmol/hrの石炭ガス化ガスとシフト反応するために必要な水蒸気は85Kmol/hrであるが、
図4に示すように、このシフト反応の排熱を利用して生成可能な水蒸気は約96Kmol/hrである。つまり、上述のシフト反応システム12においてシフト反応の排熱を利用してシフト反応に必要な水蒸気を十分に生成することができる。ただし、シフト反応で発生する熱量がシフト反応のために必要な熱量を下回るときは、外部から熱量を補ってもよい。
【0078】
〔変形例1〕
次に、上記実施形態に係る水素製造プロセスプラント10に含まれるシフト反応システム12の変形例1を説明する。上記実施形態のシフト反応系統は、シフト反応器とその反応ガスが流出する反応ガス流路とが直列に3段連結されて成るが、変形例1ではシフト反応器と反応ガス流路とが直列に2段連結されて成る。
図5は変形例1に係るシフト反応システムのプロセスフロー図である。同図に示すように、変形例1に係るシフト反応システム12は、前述の実施形態に係るシフト反応システム12から、シフト反応系統と水蒸気生成系統の一部を変更したものである。よって、本変形例の説明においては、シフト反応系統と水蒸気生成系統について特に詳細に説明し、前述の実施形態と同一又は類似の構成に関しては図面に同一の符号を付し説明を省略する。
【0079】
(シフト反応系統)
シフト反応系統は、配管等により直列に接続された2つのシフト反応器21,22を備えている。各シフト反応器21,22は入口と出口を有し、内部にシフト反応触媒を備えた反応容器として構成されている。一段目シフト反応器21の出口は、第1反応ガス流路24により二段目シフト反応器22と接続されている。第1反応ガス流路24には第1熱交換器61と予熱器41との2つの熱交換器が設けられている。二段目シフト反応器22の出口は、第2反応ガス流路25と接続されている。第2反応ガス流路25は、シフト反応システム12から反応ガスを排出して次工程へ送る流路である。本実施の形態では、第2反応ガス流路25がH
2S/CO
2分離回収装置13と直接的または間接的に接続されている。第1反応ガス流路24および第2反応ガス流路25はそれぞれ1以上の配管で形成されている。
【0080】
第1反応ガス流路24には、第1熱交換器61をバイパスする第1バイパス路65の両端が接続されている。第1バイパス路65には、流量調整弁66が設けられている。第1反応ガス流路24の予熱器41よりも下流側であって二段目シフト反応器22の入口近傍には、第1反応ガス流路24を流れる一段目反応ガスの温度を検出する温度センサ67が設けられている。そして、二段目シフト反応器22に流入する一段目反応ガスの温度が所定のシフト反応温度となるように、温度センサ67で検出される一段目反応ガスの温度に基づき、流量調整弁66により第1熱交換器61を流れる一段目反応ガス流量が調整されている。
【0081】
(水蒸気生成系統)
水蒸気生成系統は、水蒸気を水から生成して後述する水蒸気供給流路52へ供給する水蒸気生成流路29を備えている。水蒸気生成流路29は、高圧水供給路33、スチームドラム31、ポンプ39および加熱回路43等により構成されている。
【0082】
スチームドラム31は、外部の高圧水供給源30と1以上の配管で形成された高圧水供給路33で接続されている。高圧水供給路33には、流体を昇圧して送り出すポンプ39が設けられており、高圧水供給路33を通じて高圧水供給源30からスチームドラム31へ高圧水が供給される。高圧水供給路33は第2熱交換器62を経由している。この第2熱交換器62では、高圧水供給路33を流れる高圧水と、二段目シフト反応器22から第2反応ガス流路25へ流出した二段目反応ガスが熱交換する。これにより、二段目反応ガスが冷却されるとともに高圧水が加熱される。
【0083】
加熱回路43は、スチームドラム31内の温水を加熱する回路であって、スチームドラム31内を一部に含んでいる。加熱回路43は、スチームドラム31の底部に開口している入口から下向きに流れる流路、第1熱交換器61を通る流路、加熱回路43に開口している出口に向けて上向きに流れる流路、および加熱回路43内を含んで形成されている。加熱回路43は、流れが下向きから上向きに切り替わる部分またはその近傍で第1熱交換器61を通っている。第1熱交換器61では、加熱回路43を流れる温水と一段目シフト反応器21から第1反応ガス流路24へ排出された一段目反応ガスとが熱交換する。このようにしてスチームドラム31には、第1熱交換器61で加熱された温水および水蒸気を貯留している。
【0084】
次に、上記構成の水蒸気生成系統での水蒸気生成のプロセスを説明する。水蒸気生成系統では、約3.3MPaで約105℃の高圧水が高圧水供給源30から高圧水供給路33へ供給される。高圧水は高圧水供給路33を通過するうちに、ポンプ39で5Mpaまで昇圧されて、第2熱交換器62で二段目シフト反応器22の排熱を利用して約255℃まで加熱される。加熱された高圧水は、スチームドラム31へ流入する。
【0085】
スチームドラム31内の温水は、自重により加熱回路43へ流入し、第1熱交換器61で加熱されてその一部が水蒸気となり、加熱回路43の第1熱交換器61よりも下流側を上昇してスチームドラム31へ戻る。このようにして、スチームドラム31には下部に温水が溜まり、上部に約5MPaの水蒸気が溜まる。そして、スチームドラム31の約5MPaで約263℃の水蒸気が水蒸気供給流路52と混合流路28を介して一段目シフト反応器21へ供給される。