(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207849
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】同軸型高周波カプラおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05H 7/02 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
H05H7/02
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-46162(P2013-46162)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-175133(P2014-175133A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阪本 尚己
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−046000(JP,U)
【文献】
特開2010−267430(JP,A)
【文献】
特開平06−215898(JP,A)
【文献】
実開平04−092801(JP,U)
【文献】
実開昭62−155502(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 3/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内導体と円筒状の外導体とを同軸に有するカプラ本体と、
熱電対、およびこの熱電対が固定されたリングを有し、このリングが前記内導体の内周面に設置されている温度測定手段と
を具備していることを特徴とする同軸型高周波カプラ。
【請求項2】
前記内導体と前記リングとが、および前記リングと前記熱電対とが、それぞれろう接されている
ことを特徴とする請求項1記載の同軸型高周波カプラ。
【請求項3】
円筒状の内導体と円筒状の外導体とを同軸に有する同軸型高周波カプラの製造方法であって、
リングに熱電対を配置するとともに前記内導体の内周面に前記リングを配置し、前記リングと前記熱電対との間および前記内導体と前記リングとの間を同時にろう接する工程と、
前記内導体と前記外導体とを同軸に組み立てる工程と
を具備していることを特徴とする同軸型高周波カプラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加速器に高周波を供給する同軸型高周波カプラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波カプラは、クライストロンなどの高周波発生装置からの高周波を加速器の加速空胴に供給するものである。
【0003】
高周波カプラとしては、円筒状の内導体とこの内導体を収容する円筒状の外導体とを同軸に有する同軸型高周波カプラがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−267430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波カプラは、高周波損失による発熱があり、各部の温度上昇を知ることは高周波カプラの設計にとって、および加速器の動作の健全性にとって、好ましいものである。
【0006】
しかしながら、同軸型高周波カプラでは、内導体が外導体の内部に収容されているため、外部から内導体の温度を測定することが難しく、また、内導体の温度を高い信頼性で測定することが困難であった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、内導体の温度を高い信頼性で測定できる同軸型高周波カプラおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の同軸型高周波カプラは、円筒状の内導体と円筒状の外導体とを同軸に有するカプラ本体と、
熱電対、およびこの熱電対が固定されたリングを有し、このリングが前記内導体の内周面に設置され
ている温度測定手段とを具備しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態を示す同軸型高周波カプラの断面図である。
【
図2】同上同軸型高周波カプラの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、
図1および
図2を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、同軸型高周波カプラ10は、円筒状のカプラ本体11を有し、このカプラ本体11の軸方向の一端側にクライストロンなどの高周波発生装置が結合される結合部12が形成され、軸方向の他端側に加速器が結合される結合部13が形成されている。
【0012】
カプラ本体11は、円筒状の内導体14とこの内導体14を収容する円筒状の外導体15とを同軸に有し、これら内導体14と外導体15との間を通じて高周波発生装置から加速器へ高周波を所定のモードで伝送する。
【0013】
内導体14は、外導体15の内部に複数の支持体16によって支持されており、一端側には外部にアクセスするための図示しない導管が接続され、他端側には加速器の加速空胴に配置されるアンテナ部17が形成されている。内導体14の一端側と他端側との間の中間部においては、内導体14が軸方向に複数の内導管18に分割されており、これら内導管18が複数のベローズ19によって連結されている。ベローズ19は、軸方向に伸縮可能で、加速器の加速空胴に侵入するアンテナ部17の位置調整を可能とするとともに、超伝導加速空洞ユニットに組み込まれ、加速器の運転で生じる熱変形を吸収するために用いられている。
【0014】
内導体14の内部には、この内導体14の温度を測定するための温度測定手段21が設置されている。温度測定手段21は、内導体14の例えば2箇所に設置されており、それぞれ、内導体14の内周面に設置されたリング22、およびこのリング22に設置された熱電対23を備えている。
【0015】
リング22は、例えば銅製で、ベローズ19の近傍の内導管18の内周面に、例えば9金ろうなどのろう材24によってろう接されている。
【0016】
熱電対23としては、例えば、高温用のシース熱電対(株式会社岡崎製作所 Supercouple 1000H シース径0.5mm)が用いられる。リング22に形成された挿通孔22aに熱電対23の先端が挿入され、リング22の挿通孔22aの周辺部が熱電対23にかしめられているとともに、熱電対23がリング22に例えば9金ろうなどのろう材24によってろう接されている。熱電対23は、内導体14の内部および内導体14の一端側に接続された導管の内部に沿って配置され、その導管を通じて熱電対23の先端とは反対側の基端が外部に導出されて測定器に接続されている。
【0017】
そして、同軸型高周波カプラ10を製造するには、内導体14の組立工程において予めリング22と熱電対23とを固定した温度測定手段21を内導体14に組み込み、この内導体14と外導体15とを支持体16を介して組み立てる。
【0018】
内導体14に組み込む温度測定手段21は、リング22の挿通孔22aに熱電対23の先端を挿入し、リング22の挿通孔22aの周辺部を熱電対23にかしめ、リング22と熱電対23とを固定している。
【0019】
内導体14の組立工程においては、内導管18とベローズ19とを結合する前に、熱電対23を固定したリング22を内導管18の内側に配置し、熱電対23とリング22との間およびリング22と内導管18との間のそれぞれを例えば9金ろうなどのろう材24によって同時にろう接する。その後、内導管18とベローズ19とを銀ろうなどのろう材24によってろう接し、内導体14を組み立てる。なお、内導管18とベローズ19とを銀ろうなどのろう材24によってろう接する際に、同時に、9金ろうなどのろう材24によってろう接されている熱電対23とリング22との間およびリング22と内導管18との間をさらに銀ろうなどのろう材24によってろう接してもよい。
【0020】
このように構成された同軸型高周波カプラ10では、熱電対23によって内導体14の温度を測定できる。
【0021】
しかも、熱電対23を内導体14に直接設置することは困難を要するが、リング22を介することにより熱電対23を内導体14に容易に設置できるとともに、高い熱伝導度を有するリング22を通じて内導体14の温度を測定できる。
【0022】
さらに、熱電対23とリング22との間およびリング22と内導管18との間をろう接することにより、それらの部材間での高い熱伝導が得られ、熱電対23により内導体14の温度を高い信頼性で測定することができる。
【0023】
また、内導体14は表面積の大きいベローズ19の部分が最も温度が高くなりやすいが、このベローズ19の近傍にリング22を介して熱電対23を設置することにより、内導体14の高温部を測定することができる。
【0024】
また、内導体14の軸方向に異なる2箇所にリング22を介して熱電対23を設置し、これら2つの熱電対23でそれぞれ測定される温度から内導体14の温度勾配も監視することができる。また、近傍の2箇所を測定することにより、熱電対23の健全性も確認できる。
【0025】
また、内導体14の組立工程において、内導体14にリング22および熱電対23を組み込むことにより、その後の同軸型高周波カプラ10の組立工程におけるろう接や熱処理を可能にできる。
【0026】
さらに、内導体14の組立工程において、熱電対23とリング22との間およびリング22と内導管18との間を同時にろう接することにより、組立性を向上できる。
【0027】
なお、温度測定手段21は、内導体14の少なくとも1箇所に設置されていればよく、あるいは3個所以上に設置してもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10 同軸型高周波カプラ
11 カプラ本体
14 内導体
15 外導
体
21 温度測定手段
22 リング
23 熱電対