(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る半導体装置及びインバータについて、添付図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体装置及びインバータシステムの構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの構成例を示すブロック図である。このモータ制御システム1は、インバータシステム(4、2)とモータ3とを具備している。インバータシステム(2、4)は、後述するように、制御された電流をモータ3に供給する。モータ3は、3相モータであり、インバータシステム(2、4)から供給される制御された電流で回転する。言い換えると、モータ3に流れる電流はインバータシステム(2、4)により制御される。この図では、モータ3のうち、モータコイルのみを図示している。また、以下の各実施の形態では、モータ3の相数やインバータシステム(4、2)の相数は、3相を例として説明するが、各実施の形態の相数はこれに限定されるものではない。
【0015】
インバータシステムは、インバータ回路4とマイクロコンピュータ2とを備えている。インバータ回路4は、モータ3に接続され、モータ3に電流を供給する。インバータ回路4は、シャント抵抗Rsを備えている。シャント抵抗Rsは、インバータ回路4の電流経路に設けられている。マイクロコンピュータ2(半導体装置)は、シャント抵抗Rsの電圧(モータ3に供給される電流に対応)に基づいて、インバータ回路4におけるモータ3への電流の供給を、駆動信号(PWM信号)により制御する。このとき、マイクロコンピュータ2は、後述の構成を有するので、シャント抵抗Rsの電圧について、ノイズをできるだけ除去しつつ、精度よく増幅を行うことができる。その結果、モータ3への電流の供給をより精度よく制御することができる。この図の例では、シャント抵抗Rsが一つである1シャントの例を示している。
【0016】
以下、インバータシステムについて更に説明する。
インバータ回路4は、更に、3相モータ駆動用のインバータINV1、INV2、INV3と、電源E0とを備えている。電源E0は、ノードn1とノードn2との間に接続されている。インバータINV1、INV2、INV3は、電源E0に並列に接続されている。
【0017】
インバータINV1は、スイッチ素子TR1、TR2を含んでいる。スイッチ素子TR1、TR2はそれぞれU相のPWM信号50、U相の逆相のPWM信号51によって駆動される。スイッチ素子TR1は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn2に接続され、エミッタがノードn3に接続され、ベースにU相のPWM信号50が入力される。スイッチ素子TR2は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn3に接続され、エミッタがノードn1に接続され、ベースにU相の逆相のPWM信号51が入力される。インバータINV1は、更に、帰還ダイオードD1、D2を含んでいる。帰還ダイオードD1は、アノードがノードn3に接続され、カソードがノードn2に接続されている。帰還ダイオードD2は、アノードがノードn1に接続され、カソードがノードn3に接続されている。
【0018】
インバータINV2は、スイッチ素子TR3、TR4を含んでいる。スイッチ素子TR3、TR4はそれぞれV相のPWM信号52、V相の逆相のPWM信号53によって駆動される。スイッチ素子TR3は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn2に接続され、エミッタがノードn4に接続され、ベースにV相のPWM信号52が入力される。スイッチ素子TR4は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn4に接続され、エミッタがノードn1に接続され、ベースにV相の逆相のPWM信号53が入力される。インバータINV2は、更に、帰還ダイオードD3、D4を含んでいる。帰還ダイオードD3は、アノードがノードn4に接続され、カソードがノードn2に接続されている。帰還ダイオードD4は、アノードがノードn1に接続され、カソードがノードn4に接続されている。
【0019】
インバータINV3は、スイッチ素子TR5、TR6を含んでいる。スイッチ素子TR5、TR6はそれぞれW相のPWM信号54、W相の逆相のPWM信号55によって駆動される。スイッチ素子TR5は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn2に接続され、エミッタがノードn5に接続され、ベースにW相のPWM信号54が入力される。スイッチ素子TR6は、NPN型トランジスタであり、コレクタがノードn5に接続され、エミッタがノードn1に接続され、ベースにW相の逆相のPWM信号55が入力される。インバータINV3は、更に、帰還ダイオードD5、D6を含んでいる。帰還ダイオードD5は、アノードがノードn5に接続され、カソードがノードn2に接続されている。帰還ダイオードD6は、アノードがノードn1に接続され、カソードがノードn5に接続されている。
【0020】
それぞれのインバータ出力であるノードn3、n4、n5は、モータ3を構成する3相のコイルに接続され、電流を供給している。ノードn3、n4、n5から供給される電流がモータ3を流れることでモータ3の回転が制御される。シャント抵抗Rsは、ノードn1と接地との間に接続されており、インバータ回路4の負荷電流が抵抗Rsを介して流れることで生成されるノードn1の電圧がマイクロコンピュータ2に供給される。インバータ回路4は、マイクロコンピュータ2から入力される6相のPWM信号に応じて、スイッチ素子TR1〜TR6をON/OFFさせることによりモータ3に供給する電流を調整する。スイッチ素子TR1〜TR6はNPN型トランジスタを例として示しているがこれに限定されない。
【0021】
マイクロコンピュータ2(半導体装置)は、ゲイン制御回路24とオペアンプ23とアナログ−デジタルコンバータ(ADC)25とタイマ回路22とCPU21とを備えている。ゲイン制御回路24とADC25とタイマ回路22とCPU21とがバス26を介して双方向通信可能に接続されている。ゲイン制御回路24は、オペアンプ23と共に、シャント抵抗Rsの電圧(ノードn1の電圧)27を増幅して、出力電圧Voutを生成する。オペアンプ(増幅器)23のゲインは、ゲイン制御回路24によって制御される。ADC25は、出力電圧Vout(アナログ値)をアナログ−デジタル変換して、出力信号(デジタル値)を生成する。CPU21は、出力信号(デジタル値)に基づいて、PWM信号のパルス幅を調整するための演算を行い、制御信号を生成する。タイマ回路22は、制御信号に基づいて、インバータ回路4の電流出力を制御するPWM信号(駆動信号)を生成する。タイマ回路22とCPU21とは一つの制御回路と見ることもできる。
【0022】
PWM信号は、インバータINV1〜INV3のスイッチ素子TR1〜TR6のON/OFFを制御している。スイッチ素子TR1〜TR6は、電源E0からモータ3へ供給される電流を調整している。インバータ回路4は、シャント抵抗Rsの一端であるノードn1の電圧をマイクロコンピュータ2に出力している。マイクロコンピュータ2は、このノードn1の電圧をモニタし、PWM信号のパルス幅を調整するフィードバック制御を行っている。
【0023】
なお、本実施形態では、ゲイン制御回路24、オペアンプ23、ADC25、タイマ回路22及びCPU21が全てマイクロコンピュータ2に含まれている。しかし、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、それらのうち、CPU21を除いた構成要素の一部または全部がマイクロコンピュータ2の外部にあってもよい。
【0024】
次に、ゲイン制御回路24及びオペアンプ23について更に説明する。
図2は、本実施の形態に係るマイクロコンピュータ(半導体装置)2の構成例を示すブロック図である。この図において、タイマ回路22は記載を省略している。また、シャント抵抗Rsを除くインバータ回路4の記載も省略している。
【0025】
ゲイン制御回路24は、ゲイン切替用抵抗群41と、第1アナログスイッチ群43と、オフセット調整用抵抗群42と、第2アナログスイッチ群44と、ゲイン設定レジスタ40と、オペアンプ(第1増幅器)23とを具備している。ゲイン切替用抵抗群41は、複数の第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’が直列に接続されている。第1アナログスイッチ群43は、並列に接続された複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’を備えている。複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’は、複数の第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’の少なくとも一つを選択する。オフセット調整用抵抗群42は、複数の第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1が直列に接続されている。第2アナログスイッチ群44は、並列に接続された複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nを備えている。複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nは、複数の第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1の少なくとも一つを選択する。ゲイン設定レジスタ40は、設定された値に応じた信号を出力することにより、複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’の一つ及び複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nの一つを選択してONにする。オペアンプ(第1増幅器)23は、第1アナログスイッチ群43と第2アナログスイッチ群44とに接続されている。
【0026】
ゲイン切替用抵抗群41は、一端が第1アナログ入力端子AIN0、他端がオペアンプ23の出力電圧Voutに接続されている。言い換えると、第1抵抗R
1’の一端が第1アナログ入力端子AIN0に接続され、第1抵抗R
n+1’の他端がオペアンプ23の出力電圧Voutに接続されている。また、複数の第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’の各々の接続点(R
1’とR
2’との接続点、R
2’とR
3’との接続点、…、R
n’とR
n+1’との接続点)には複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’の各々の一端が接続されている。複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’の各々の他端がオペアンプ23の反転入力端子(−端子)に接続されている。言い換えると、第1抵抗R
i’とR
i+1’(iは1以上n以下の自然数)との接続点に、第1アナログスイッチS
i’の一端が接続されている。第1アナログスイッチS
i’の他端がオペアンプ23の反転入力端子(−端子)に接続されている。ゲイン切替用抵抗群41の各第1抵抗R’の抵抗値は、例えば、オーダーとして数kΩ〜100kΩで設計されている。第1アナログスイッチS’は、例えばトランスファゲートである。この図の例では、ゲイン切替用抵抗群41は、一端が第1アナログ入力端子AIN0を介して接地されている。
【0027】
オフセット調整用抵抗群42は、一端が第2アナログ入力端子AIN1、他端が基準電圧Vrに接続されている。言い換えると、第2抵抗R
1の一端が第2アナログ入力端子AIN1に接続され、第2抵抗R
n+1の他端が基準電圧Vrに接続されている。また、複数の第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1の各々の接続点(R
1とR
2との接続点、R
2とR
3との接続点、…、R
nとR
n+1との接続点)には複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nの各々の一端が接続されている。複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nの各々の他端がオペアンプ23の正転入力端子(+端子)に接続されている。言い換えると、第2抵抗R
iとR
i+1との接続点に、第2アナログスイッチS
iの一端が接続されている。第2アナログスイッチS
iの他端がオペアンプ23の正転入力端子(+端子)に接続されている。オフセット調整用抵抗群42の各第2抵抗Rの抵抗値は、例えば、オーダーとして数kΩ〜100kΩで設計されている。第2アナログスイッチSは、例えばトランスファゲートである。なお、基準電圧Vrは、ノードn1の電圧Vinがマイナス電位であっても、オペアンプ23の正転入力端子の入力電圧Vpがマイナスにならないような電圧とする。オペアンプ23で基準をGND(接地)にしているためである。
【0028】
ゲイン設定レジスタ40は、複数の第1アナログスイッチS
1’、S
2’、…、S
n’及び複数の第2アナログスイッチS
1、S
2、…、S
nに対して共通に用いられている。したがって、第1アナログスイッチS
i’が選択されONにされるとき、同時に第2アナログスイッチS
iが選択されONにされる。その場合、ゲイン切替用抵抗群41については、第1抵抗がR
1’+…+R
i’とR
i+1’+…+R
n+1’とに分割され、R
i’とR
i+1’との接続点が、第1アナログスイッチS
1’を介してオペアンプ23の反転入力端子(−端子)に接続される(入力電圧Vm)。また、オフセット調整用抵抗群42については、第2抵抗がR
1+…+R
iとR
i+1+…+R
n+1とに分割され、R
iとR
i+1との接続点がオペアンプ23の正転入力端子(+端子)に接続される(入力電圧Vp)。オペアンプ23は、反転入力端子の入力電圧Vmと正転入力端子の入力電圧Vpとに基づいて、差動増幅を行い、出力電圧Voutを出力する。
【0029】
ADC25は、タイマ回路22からのトリガ信号A1〜A3に応答して、オペアンプ23の出力電圧Vout(アナログ値)を取り込んでデジタル値に変換する。そして、そのデジタル信号をCPU21へ出力する。トリガ信号A1〜A3は、それぞれインバータINV1〜INV3に対応している。
【0030】
上述のように、シャント抵抗Rsは、アナログ入力端子ANI1とアナログ入力端子ANI0との間に接続されている。シャント抵抗Rsの一端は、(インバータ回路4のスイッチ素子TRを介して)モータ3に、他端はGNDに接続されている。シャント抵抗Rsの抵抗値は、例えば、オーダーとして数mΩ〜100mΩで設計されている。
【0031】
この
図2のゲイン制御回路24及びオペアンプ23は、プログラマブル・ゲインアンプと見ることができる。このプログラマブル・ゲインアンプのゲインと同相除去比を求めると、以下のようになる。
【0032】
例として、ゲイン設定レジスタ40に第1アナログスイッチS
iと第2アナログスイッチS
i’がオンする値を設定した場合を考える。オペアンプ23の正転入力端子の入力電圧をVpとし、オペアンプ23の反転入力端子の入力電圧をVmとし、アナログ入力端子ANI1に入力される入力電圧をVin、AIN0に入力される入力電圧とVss、基準電圧をVrとする。また、オペアンプ23の正転入力端子Vpと反転入力端子Vmは仮想接地されるため同電位となり、この電位をVaとする。R
1+…+R
iとR
i+1+…+R
n+1に流れる電流は同じであることから以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0033】
また、R
1’+…+R
i’とR
i+1’+…+R
n+1’に流れる電流が同じことから式(2)が成り立つ。
【数2】
【0034】
式(1)、式(2)からVoutを求めると式(3)となる。
【数3】
【0035】
ここで差動ゲインG
Dは、Vssを基準にVssからの差電圧をVinとして求めると、式(3)の
Vssを0とし、Vrの項はVinが変化しても変わらないゲインに無関係な項なので削除でき、式(4)を求めることができる。
【数4】
【0036】
また、同相ゲインG
Cは、同じ信号が入力されたときのゲインなので、式(3)のVssをVinとし、Vrの項はVinが変化しても変わらないゲインに無関係な項なので削除でき式(5)を求めることができる。
【数5】
【0037】
したがって、同相除去比CMRRは、以下の式(6)のようになる。
【数6】
【0038】
ここで、
(R
i+1+…+R
n+1)/(R
1+…+R
i)=
(R
i+1’+…+R
n+1’)/(R
1’+…+R
i’)
とすると式(3)は式(7)となる。
【数7】
【0039】
また、式(6)は式(8)となる。
CMRR=∞ …(8)
【0040】
本実施の形態に係るプログラマブル・ゲインアンプ(ゲイン制御回路24及びオペアンプ23)は、ゲイン及び同相除去比を設定するゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42の電流が流れる経路に、抵抗値を切り替えるためのアナログスイッチを設けていない。それにより、アナログスイッチのオン抵抗の影響を除去することができる。その結果、ゲインを精度良く設計することが可能となる。
【0041】
また、そのプログラマブル・ゲインアンプは、ゲイン設定レジスタ40の設定値により、ゲイン切替用抵抗群41における複数の第1抵抗R’の抵抗値やとオフセット調整用抵抗群42における複数の第2抵抗Rの抵抗値を適宜設定することができる。それにより、同相除去比を最適に設定することができる。
【0042】
また、そのプログラマブル・ゲインアンプは、ゲイン切替用抵抗群41における複数の第1抵抗R’の抵抗値の比(R
i+1’+…+R
n+1’)/(R
1’+…+R
i’)とオフセット調整用抵抗群42における複数の第2抵抗Rの抵抗値の比(R
i+1+…+R
n+1)/(R
1+…+R
i)とを等しくすることが好ましい。それにより、同相除去比を改善することが可能になる。
【0043】
更に抵抗素子の製造上のバラツキを抑制するためには、同一の抵抗値で同一の形状とした方が良い。この条件を満たすようにするためには、以下の条件を満たすことが好ましい。具体的には、R
1’=R
1=R
2’=R
2=…=R
n+1’=R
n+1である。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、オペアンプ23は、第1アナログスイッチS
i’や第2アナログスイッチS
iのオン抵抗の影響を受けずに精度良く増幅することができる(式(3)より)。また、(R
i+1+…+R
n+1)/(R
1+…+R
i)=(R
i+1’+…+R
n+1’)/(R
1’+…+R
i’)となる抵抗値で設計すれば、良好な同相除去比を得ることができる(式(8)より)。
【0045】
図3は、本実施の形態に係るマイクロコンピュータ(半導体装置)2のタイマ回路22の構成例を示すブロック図である。タイマ回路22は、アップ/ダウンカウンタ211と、PWM発生回路220と、A/Dトリガ発生回路230とを備えている。
【0046】
アップ/ダウンカウンタ211は、マイクロコンピュータ2内部のクロック発生回路(図示せず)から供給されるカウント用クロックCLKに基づいて、最小値の0から最大値のM(Mは整数)までカウントアップし、その後に0までカウントダウンする。そして、カウント値215を、PWM発生回路220とA/Dトリガ発生回路230とに出力する。アップ/ダウンカウンタ211は、カウント用クロックCLKの供給により上記のカウントアップとカウントダウンの動作を繰り返す。
【0047】
PWM発生回路220は、カウント値215に基づいて、インバータ回路4を制御するPWM信号を発生し、インバータ回路4へ出力する。具体的には、PWM発生回路220は、U相用のPWMタイマと、V相用のPWMタイマと、W相用のPWMタイマとを備えている。U相用のPWMタイマは、U相のPWM信号50とU相の逆相に対応したPWM信号51を出力する。V相用のPWMタイマは、V相のPWM信号52とV相の逆相に対応したPWM信号53を出力する。W相用のPWMタイマは、W相のPWM信号54とW相の逆相に対応したPWM信号55を出力する。
【0048】
U相用のPWMタイマは、比較回路224と、比較値設定レジスタ221とを含んでいる。比較値設定レジスタ221は、PWM信号50の所定周期におけるパルス幅を設定する。比較回路224は、アップ/ダウンカウンタ211のカウント値215と比較値設定レジスタ221とを比較し、両者が一致したときの出力であるPWM信号50を反転させる。それに伴い、PWM信号50の反転信号であるPWM信号51も反転する。そして、その動作を繰り返すことでPWM信号の出力を周期的に繰り返す。
【0049】
同様に、V相用のPWMタイマは、比較回路225と、比較値設定レジスタ222とを含んでいる。比較値設定レジスタ222は、PWM信号52の所定周期におけるパルス幅を設定する。比較回路225は、アップ/ダウンカウンタ211のカウント値215と比較値設定レジスタ222とを比較し、両者が一致したときの出力であるPWM信号52を反転させる。それに伴い、PWM信号52の反転信号であるPWM信号53も反転する。そして、その動作を繰り返すことでPWM出力を周期的に繰り返す。
【0050】
同様に、W相用のPWMタイマは、比較回路226と、比較値設定レジスタ223とを含んでいる。比較値設定レジスタ223は、PWM信号54の所定周期におけるパルス幅を設定する。比較回路226は、アップ/ダウンカウンタ211のカウント値215と比較値設定レジスタ223とを比較し、両者が一致したときの出力であるPWM信号54を反転させる。それに伴い、PWM信号54の反転信号であるPWM信号53も反転する。そして、その動作を繰り返すことでPWM出力を周期的に繰り返す。
【0051】
PWM信号50、52、54の比較値設定レジスタ221、222、223の内容はCPU21からバス26を介して転送される。PWM信号51、53、55はPWM信号50、52、54を反転した信号として得られる。CPU21の設定に基づいて、U相、V相、W相に対応した異なるパルス幅のPWM信号が出力される。
【0052】
A/Dトリガ発生回路230は、カウント値215に基づいて、ADC25のA/D変換開始用のトリガ信号を発生し、ADC25へ出力する。具体的には、A/Dトリガ発生回路230は、U相用のADCタイマと、V相用のADCタイマと、W相用のADCタイマとを備えている。U相用のADCタイマは、U相のトリガ信号A1を出力する。V相用のタイマは、V相のトリガ信号A2を出力する。W相用のADCタイマはW相のトリガ信号A3を出力する。
【0053】
U相用のADCタイマは、比較回路234と、比較値設定レジスタ231とを含んでいる。比較値設定レジスタ231は、PWM信号50の出力に伴って変化するインバータ回路4からのアナログ信号27の電圧(ノードn1の電圧Vinであり、ここではオペアンプ23で増幅された出力電圧Vout)をA/D変換するタイミングを生成するための値を設定する。比較回路234は、カウントアップのときに、カウント値215と比較値設定レジスタ231とを比較し、両者が一致したときの出力であるA/D変換開始のトリガ信号A1を出力する。そして、その動作を繰り返すことでトリガ信号A1の出力を周期的に繰り返す。
【0054】
V相用のADCタイマは、比較回路235と、比較値設定レジスタ232とを含んでいる。比較値設定レジスタ232は、PWM信号52の出力に伴って変化するインバータ回路4からのアナログ信号27の電圧(ノードn1の電圧Vinであり、ここではオペアンプ23で増幅された出力電圧Vout)をA/D変換するタイミングを生成するための値を設定する。比較回路235は、カウントアップのときに、カウント値215と比較値設定レジスタ232とを比較し、両者が一致したときの出力であるA/D変換開始のトリガ信号A2を出力する。そして、その動作を繰り返すことでトリガ信号A2の出力を周期的に繰り返す。
【0055】
W相用のADCタイマは、比較回路236と、比較値設定レジスタ233とを含んでいる。比較値設定レジスタ233は、PWM信号54の出力に伴って変化するインバータ回路4からのアナログ信号27の電圧(ノードn1の電圧Vinであり、ここではオペアンプ23で増幅された出力電圧Vout)をA/D変換するタイミングを生成するための値を設定する。比較回路236は、カウントアップのときに、カウント値215と比較値設定レジスタ233とを比較し、両者が一致したときの出力であるA/D変換開始のトリガ信号A3を出力する。そして、その動作を繰り返すことでトリガ信号A3の出力を周期的に繰り返す。ここで、比較回路234、235,236はカウントダウンもしくはカウントアップとカウントダウンの両方にもトリガ信号A1、A2,A3を出力することもできる。
【0056】
トリガ信号A1、A2、A3の比較値設定レジスタ231、232、233の内容はCPU21からバス26を介して転送される。CPU21の設定に基づいて、U相、V相、W相に対応した異なるタイミングのトリガ信号が出力される。
【0057】
次に、本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの動作について説明する。
図4は、本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの動作を示すタイミングチャートである。(a)は、カウント値215を示す。(b)は、アナログ信号27(ノードn1の電圧Vin)を示す。(c)〜(h)は、PWM信号50〜55をそれぞれ示す。(i)〜(j)はカウントアップ時のトリガ信号A1〜A3を示す。
【0058】
事前に、CPU21は、ゲイン設定レジスタ40にモータ3の制御に適した値を格納する。その値は、ユーザに入力されても良いし、データベース(図示されず)内のモータ3に関連付けられた値を参照しても良いし、予め設定された値を用いても良い。ここでは、例えば、第1アナログスイッチS1’〜Sn’及び第2アナログスイッチS1〜Snのうち、第1アナログスイッチSi’及び第2アナログスイッチSiを選択する値が、ゲイン設定レジスタ40に格納されているものとする。そのゲイン設定レジスタ40の値より、第1アナログスイッチSi’及び第2アナログスイッチSiが選択される。その結果、第1抵抗R
i’と第1抵抗R
i+1’との間の接続点がオペアンプ23の反転入力端子(−端子)に接続される。また、第2抵抗R
iと第2抵抗R
i+1との間の接続点がオペアンプ23の正転入力端子(+端子)に接続される。なお、ゲイン設定レジスタ40の値は、インバータシステムが動作中であっても、CPU21により変更可能である。
【0059】
図4の(a)のアップ/ダウンカウンタ211のカウント値215は、0からカウントアップし、カウント値p、q、r(p,q,rは自然数でp<q<r)を経て最大値Mに達する。その後、カウントダウンし、カウント値r、q、pを経て0になる。その後、再びカウントアップする。例えば、アップ/ダウンカウンタ211が16ビットカウンタの場合、0から65535(十進数)までカウントアップし、その後カウントダウンして0になると再びカウントアップする。
【0060】
図4の(c)のPWM信号50は、カウント値215が0から増加してpとなるt1のタイミングでローレベル(“0”)からハイレベル(“1”)に立ち上る。そして、カウント値215が減少して再びpとなるt11のタイミングで立ち下がる。カウント値215が0になると再度カウント値215が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
図4の(d)のPWM信号51は、PWM信号50の反転出力である。
図4の(e)のPWM信号52は、カウント値215が0から増加してqとなるt3のタイミングでローレベル(“0”)からハイレベル(“1”)に立ち上る。そして、カウント値215が減少して再びqとなるt9のタイミングで立ち下がる。カウント値215が0になると再度カウント値が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
図4の(f)のPWM信号53は、PWM信号52の反転出力である。
図4の(g)のPWM信号54は、カウント値215が0から増加してrとなるt5のタイミングでローレベル(“0”)からハイレベル(“1”)に立ち上る。そして、カウント値215が減少して再びrとなるt7のタイミングで立ち下がる。カウント値215が0になると再度カウント値が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
図4の(h)のPWM信号55は、PWM信号54の反転出力である。
【0061】
図4の(i)のトリガ信号A1は、カウント値215が0から増加して(p+α1)となるt2のタイミングでワンショットパルスとして出力される。カウント値215が減少して0になると再度カウント値215が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
図4の(j)のトリガ信号A2は、カウント値215が0から増加して(q+α2)となるt4のタイミングでワンショットパルスとして出力される。カウント値215が減少して0になると再度カウント値215が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
図4の(k)のトリガ信号A3は、カウント値215が0から増加して(r+α3)となるt6のタイミングでワンショットパルスとして出力される。カウント値215が減少して0になると再度カウント値215が増加して行き、以降は同様の動作を繰り返す。
【0062】
なお、PWM信号50とPWM信号51の変化タイミングが重ならないよう、一般的にデッドタイムと呼ばれる期間が設けられて変化タイミングが互いに前後するよう出力制御される。しかし、本実施の形態では理解をし易くするためにデッドタイムがない場合のタイミングで説明する。PWM信号52とPWM信号53、PWM信号54とPWM信号55、においても同様とする。
【0063】
上記6相のPWM信号50〜55により、インバータ回路4のスイッチ素子TR1〜TR6がON又はOFFする。それにより、
図4の(b)に示すようにマイクロコンピュータ2へのアナログ信号27が変化する。具体的には以下のようになる。
【0064】
まず、t0からt1の期間では、PWM信号50、PWM信号52、PWM信号54がいずれも“0”出力のため、スイッチ素子TR1、TR3、TR5が全てOFFする。その結果、モータ3に電流が流れず、ノードn1はローレベルV0、すなわちアナログ信号27はローレベルV0となる。
【0065】
その後、t1からt3の期間では、PWM信号50、PWM信号53、PWM信号55が“1”出力のため、スイッチ素子TR1、TR4、TR6がONになり、スイッチ素子TR2、TR3、TR5はOFFになる。その結果、ON状態のスイッチ素子とモータ3とを経由して電流が流れることによりノードn1の電圧が0から上昇し、アナログ信号27がV1となる。そして、t2において、V1となったアナログ信号27をADC25が検出する。
【0066】
次に、t3とt5の期間では、PWM信号50、PWM信号52、PWM信号55が“1”出力のため、スイッチ素子TR1、TR3、TR6がONになり、スイッチ素子TR2、TR4、TR5がOFFになる。その結果、ON状態のスイッチ素子とモータ3とを経由して電流が流れることによりノードn1の電圧がV1から上昇し、アナログ信号27がV2となる。なお、ローレベルV0は0[V]とは限らず、インバータ回路4の設計条件により変わる。そして、t4において、V2となったアナログ信号27をADC25が検出する。
【0067】
続いて、t5からt7の期間では、PWM信号51、PWM信号53、PWM信号55の出力が全て“0”出力となるため、スイッチ素子TR2、TR4、TR6が全てOFFになる。その結果、モータ3に電流が流れず、ノードn1はローレベルV0、すなわちアナログ信号27はローレベルV0となる。そして、t6において、V0となったアナログ信号27をADC25が検出する。
【0068】
次に、t7からt9の期間では、PWM信号50、PWM信号52、PWM信号55が“1”出力のため、スイッチ素子TR1、TR3、TR6がONになり、スイッチ素子TR2、TR4、TR5がOFFになる。その結果、ON状態のスイッチ素子とモータ3とを経由して電流が流れることによりノードn1の電圧が再び上昇し、アナログ信号27がV2となる。
【0069】
続いて、t9からt11の期間では、PWM信号50、PWM信号53、PWM信号55が“1”出力となるため、スイッチ素子TR1、TR4、TR6がONになり、スイッチ素子TR2、TR3、TR5がOFFになる。その結果、ON状態のスイッチ素子とモータ3を経由して電流が流れることによりノードn1の電圧がV2から下降し、アナログ信号27がV1となる。
【0070】
次に、t11からt13の期間では、PWM信号50、PWM信号52、PWM信号54がいずれも“0”出力のため、スイッチ素子TR1、TR3、TR5が全てOFFになる。その結果、モータ3に電流が流れず、ノードn1はローレベルV0、すなわちアナログ信号27はローレベルV0となる。
【0071】
t13からt26の期間は6相のPWM出力はt0からt13の期間と同じタイミングで出力される例を示しており、従って、アナログ信号27もt0からt13の期間と同様に変化する。
【0072】
以上のようにして、本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムは動作する。
【0073】
本実施の形態では、ゲイン設定レジスタ40の設定で第1アナログスイッチ群43及び第2アナログスイッチ群44をON/OFFすることにより、同相除去比やゲインに関わるゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42の抵抗値を自在に調節することができる。それにより、同相除去比を適切に調整することができ、ノイズを適切に抑制することが可能となる。また、本実施の形態では、第1アナログスイッチ群43及び第2アナログスイッチ群44に電流を流さないようにすることができる。それにより、それらアナログスイッチのオン抵抗の影響を排除し、精度よく信号増幅を行うことがでる。
【0074】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、マイクロコンピュータ2のゲイン制御回路24aにおける基準電圧Vrを自在に設定可能である点で第1の実施の形態のゲイン制御回路24と相違している。以下では、その相違点について主に説明する。
【0075】
ゲイン制御回路24a及びオペアンプ23について更に説明する。
図5は、本実施の形態に係るマイクロコンピュータ(半導体装置)2の構成例を示すブロック図である。この図において、タイマ回路22は記載を省略している。また、シャント抵抗Rsを除くインバータ回路4の記載も省略している。
【0076】
ゲイン制御回路24aは、第1の実施の形態の構成(ゲイン切替用抵抗群41、第1アナログスイッチ群43、オフセット調整用抵抗群42、第2アナログスイッチ群44、及びゲイン設定レジスタ40)に加えて、基準電圧源45を更に備えている。基準電圧源45は、オフセット調整用抵抗群42の他端に接続され、基準電圧Vrを変更可能に供給する。言い換えると、オフセット調整用抵抗群42へ供給される基準電圧Vrは、基準電圧源45により変更が可能である。
【0077】
同相除去比を最適化する場合、オフセット調整用抵抗群42とゲイン切替用抵抗群41とは、同じ箇所のアナログスイッチ(S
i’=S
i)が選択される。その場合、基準電圧Vrが固定であると、オペアンプの入力電圧Vpがオペアンプ23の入力できる電圧範囲からはずれたり、オペアンプ23の出力電圧Voutがオペアンプの出力できる範囲を超えてしまったりする場合が生じうる。このような場合は、オペアンプ23の出力Voutが歪んだり、ADC25の入力レンジが有効に使えなかったりするなど、変換精度を悪化させる原因となる。これを回避するために、本実施の形態では、基準電圧源45を用いて基準電圧Vrを可変とし、オペアンプ23の入出力の範囲を最適に利用し、ADC25の入力範囲を有効に使用し、精度を向上させる。
【0078】
基準電圧源45は、基準電圧用オペアンプ(第2増幅器)451と、デジタル−アナログ変換器(DAC)452と、基準電圧設定レジスタ453とを備えている。基準電圧設定レジスタ453は、DAC452の設定を行う設定値(デジタル値)を格納している。その設定値は、基準電圧Vrに対応しており、CPU21により書き換え可能である。
【0079】
DAC452は、基準電圧設定レジスタ453のデジタル値(設定値)をアナログ値に変換する。この図の例では、抵抗ストリング型DACであり、複数の抵抗と、複数のスイッチとを備えている。複数の抵抗は、同じ値であり、直列に接続され(抵抗ストリング)、両端に基準電圧を供給される。抵抗ストリングにおける複数の接続点の各々の一端に複数のスイッチの各々の一端が接続される。複数のスイッチの各々の他端は基準電圧用オペアンプ451の正転入力端子(+端子)に接続される。基準電圧設定レジスタ453の設定値(デジタル値)に対応して、複数のスイッチの一つが選択される。選択されたスイッチの位置の電圧(アナログ値)は、抵抗ストリングでの分圧比の電圧で基準電圧用オペアンプ451へ出力される。DAC452は、他のタイプのDACであっても良い。
【0080】
基準電圧用オペアンプ(第2増幅器)451は、ボルテージフォロワで使用される。すなわち、正転入力端子(+端子)がDAC452に接続され、反転入力端子(−端子)が出力端子に接続されている。基準電圧用オペアンプ451は、DAC452からの出力電圧を基準電圧Vrとしてオフセット調整用抵抗群42へ供給する。
【0081】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、オペアンプ23の同相除去比を最適化するために、(R
i+1+…+R
n+1)/(R
1+…+R
i)=(R
i+1’+…+R
n+1’)/(R
1’+…+R
i’)となるように、同じ箇所のスアナログイッチ(S
i=S
i’)が選択される。そのとき、本実施の形態では、オペアンプ23の正転入力端子(+端子)に印加される入力電圧Vpがオペアンプ23の入力可能な範囲になるように、基準電圧設定レジスタ453の値を設定することで、入力電圧Vinの電圧レベルにオフセットを加えている。このとき、オペアンプ23の出力電圧VoutがADC25の入力範囲を超えないように各設定レジスタ40、453を設定する。
【0082】
以上のように、基準電圧源45は、CPU21を介して基準電圧設定レジスタ453に格納された値をDAC452でアナログ値に変換し、基準電圧用オペアンプ451から基準電圧Vrとしてオフセット調整用抵抗群42へ供給する。
【0083】
次に、基準電圧Vrと、アナログ入力電圧Vin、オペアンプ正転入力電圧Vp及びオペアンプ出力電圧Voutとの間の関係の、ゲイン依存性について説明する。
図6A〜
図6C、
図7A〜
図7C及び
図8A〜
図8Cは、基準電圧Vrと、アナログ入力電圧Vin、オペアンプ正転入力電圧Vp及びオペアンプ出力電圧Voutとの間の関係の、ゲイン依存性を示すグラフである。ただし、
図6A、
図7A及び
図8Aでは、縦軸はアナログ入力電圧Vin、横軸は時間tを示す。
図6B、
図7B及び
図8Bでは、縦軸はオペアンプ正転入力電圧Vp、横軸は時間tを示す。
図6C、
図7C及び
図8Cでは、縦軸はオペアンプ出力電圧Vout、横軸は時間tを示す。ここで、ADC25の入力範囲は、例えば、0〜5Vで、共通とする。R
1+R
2+…+R
i=R
1’+R
2’+…+R
i’=12kΩ、R
i+1+R
i+2+…+R
n+1=R
i+1’+R
i+2’+…+R
n+1’=28kΩとする。シャント抵抗Rsの抵抗値は10mΩとする。
【0084】
図6A〜
図6Cを参照して、基準電圧Vr=2.5Vのとき、アナログ入力電圧Vinの振幅が−0.5V〜+0.5Vの場合(
図6A)、オペアンプ正転入力電圧Vpの振幅は+0.1V〜+0.9Vである(
図6B)。そして、ゲインを4.0倍とすれば、オペアンプ出力電圧Voutの振幅は+0.5V〜+4.5Vとなり(
図6C)、ADC25の入力範囲を有効に利用できる。
【0085】
ここで、
図7A〜
図7Cを参照して、基準電圧Vr=2.5V固定で、アナログ入力電圧Vinの振幅が0V〜+1.0Vの場合(
図7A)、オペアンプ正転入力電圧Vpの振幅は+0.75V〜+1.45Vである(
図6B)。そして、ゲインを2.33倍とすれば、オペアンプ出力電圧Voutの振幅は+2.5V〜+4.83Vとなり(
図7C)、ADC25の入力範囲に収めることができる。逆にいえば、ゲインが2.33倍を超えると、オペアンプ出力電圧Voutの振幅はADC25の入力範囲を超えてしまう。更に、この場合、オペアンプ出力電圧Voutの振幅は+2.5V〜+4.83Vとなるから、ADC25の入力範囲の半分しか利用できていない。
【0086】
そこで、
図8A〜
図8Cを参照して、基準電圧Vrを可変とし、例えば基準電圧Vr=0.5Vにする。その場合、アナログ入力電圧Vinの振幅が0V〜+1.0Vとすると(
図8A)、オペアンプ正転入力電圧Vpの振幅は+0.1V〜+0.9Vである(
図8B)。そして、ゲインを4.0倍とすれば、オペアンプ出力電圧Voutの振幅は+0.5V〜+4.5Vとなり(
図8C)、ADC25の入力範囲を有効に利用できるようになる。
【0087】
以上のように、基準電圧Vrを可変とし、アナログ入力電圧Vinの振幅に応じて変更することで、ADC25の入力範囲を有効に使用することができ、増幅の精度を向上させることができる。
なお、シャント抵抗Rsの抵抗値は10mΩで、第1抵抗R’と第2抵抗Rは10kΩのオーダーであり、10の6乗の違いがあるので、シャント抵抗Rsは計算上省略した。
【0088】
本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの動作については、事前に、又は、動作中に、CPU21が基準電圧設定レジスタ453の値を変更することで基準電圧Vrの値を調整する他は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0089】
本実施の形態についても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、基準電圧Vrを可変とし、アナログ入力電圧Vinの振幅に応じて変更することができ、ADC25の入力範囲を有効に使用することができ、増幅の精度を向上させることができる。
【0090】
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、マイクロコンピュータ2のゲイン制御回路24bにおける、第1アナログスイッチS
i及び第2アナログスイッチS
iの設定レジスタが、共用ではなく、個別に設けられている点で第2の実施の形態のゲイン制御回路24aと相違している。以下では、その相違点について主に説明する。
【0091】
ゲイン制御回路24b及びオペアンプ23について更に説明する。
図9は、本実施の形態に係るマイクロコンピュータ(半導体装置)2の構成例を示すブロック図である。この図において、タイマ回路22は記載を省略している。また、シャント抵抗Rsを除くインバータ回路4の記載も省略している。
【0092】
ゲイン制御回路24bは、第2の実施の形態の構成(ゲイン切替用抵抗群41、第1アナログスイッチ群43、オフセット調整用抵抗群42、第2アナログスイッチ群44、ゲイン設定レジスタ40及び基準電圧源45)に加えて、オフセット設定レジスタ460を更に備えている。すなわち、ゲイン制御回路24bは、ゲイン切替用抵抗群41/第1アナログスイッチ群43用のレジスタとしてゲイン設定レジスタ40を有し、かつ、オフセット調整用抵抗群42/第2アナログスイッチ群44用のレジスタとしてオフセット設定レジスタ460を有している。オフセット設定レジスタ460は、設定された値に応じた信号を出力することにより、複数の第2アナログスイッチS1、S2、…、Snの一つを選択してONにする。なお、ゲイン設定レジスタ40とオフセット設定レジスタ460とを併せて設定レジスタ46ともいう。
【0093】
それにより、ゲイン切替用抵抗群41の抵抗R
i’とオフセット調整用抵抗群42の抵抗R
iとを、ゲイン設定レジスタ40とオフセット設定レジスタ460とを用いて、別々に独立に設定することができる。この場合、同相除去比が低下する可能性があるが、同相ノイズが少ない場合や、同相除去比を重視しないシステムでは問題ない。そして、同相ノイズが少ない場合や、同相除去比を重視しないシステムでは、ゲイン切替用抵抗群41の抵抗R
i’とオフセット調整用抵抗群42の抵抗R
iとを互いに独立して設定することで、プログラマブル・ゲインアンプのゲイン及びオフセット電圧レベルの自由度を上げることができる。
【0094】
また、同相除去比の低下が問題となる場合には、ゲイン設定レジスタ40とオフセット設定レジスタ460とに同じ値を設定すればよい。また、この構成では、ゲイン切替用抵抗群41の抵抗R
i’の構成とオフセット調整用抵抗群42の抵抗R
iの構成とが相違する場合、ゲイン設定レジスタ40とオフセット設定レジスタ460をそれぞれ適切に設定することで、(R
i+1+…+R
n+1)/(R
1+…+R
i)=(R
i+1’+…+R
n+1’)/(R
1’+…+R
i’)とすることができ、同相除去比の低下を防止できる。
【0095】
本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの動作は、事前(又は動作中)に、CPU21がゲイン設定レジスタ40及びオフセット設定レジスタ460の値を設定して、ゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42の抵抗を設定する他は、第2の実施の形態と同様である。したがって、その説明を省略する。
【0096】
本実施の形態についても、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態ではゲイン切替用抵抗群41の抵抗とオフセット調整用抵抗群42の抵抗R
iとを互いに独立して設定することで、プログラマブル・ゲインアンプのゲイン及びオフセット電圧レベルの自由度を上げることができる。また、設定レジスタ46は、第1の実施の形態にも適用可能である。
【0097】
(第4の実施の形態)
本実施の形態では、マイクロコンピュータ2が、1シャント用ではなく、3シャント用である点で第3の実施の形態のマイクロコンピュータ2と相違している。言い換えると、マイクロコンピュータ2は、3相分のプログラマブル・ゲインアンプ(PGA:ゲイン制御回路24bとオペアンプ23とを含む)を有している。以下では、その相違点について主に説明する。
【0098】
ゲイン制御回路24b及びオペアンプ23について更に説明する。
図10は、本実施の形態に係るマイクロコンピュータ(半導体装置)2の構成例を示すブロック図である。この図において、タイマ回路22は記載を省略している。また、シャント抵抗Rs1〜Rs3を除くインバータ回路4の記載も省略している。
【0099】
この図の例では、インバータ回路4(
図1)は、3シャント用のインバータ回路であり、3個のシャント抵抗Rs1〜Rs3を有している。すなわち、シャント抵抗Rs1はインバータ回路4のU相用の回路(
図1:電源E0、ノードn1、n3、n2を通る回路)に設けられている。シャント抵抗Rs2はインバータ回路4のV相用の回路(
図1:電源E0、ノードn1、n4、n2を通る回路)に設けられている。シャント抵抗Rs3はインバータ回路4のW相用の回路(
図1:電源E0、ノードn1、n5、n2を通る回路)に設けられている。U相用の回路と、V相用の回路と、W相用の回路とは、電源E0に対して並列に接続されている。
【0100】
マイクロコンピュータ2では、3個のシャント抵抗Rs1〜Rs3に対応して3相分のプログラマブル・ゲインアンプ(PGA)61〜63を備えている。PGA61〜63は、いずれもゲイン制御回路24bとオペアンプ23とを備えている。ゲイン制御回路24bは、第3の実施の形態の構成(ゲイン切替用抵抗群41、第1アナログスイッチ群43、オフセット調整用抵抗群42、第2アナログスイッチ群44、基準電圧源45及び設定レジスタ46)を備えている。ただし、ゲイン制御回路は、第1、2の実施の形態の構成を有していても良い。
【0101】
PGA61〜63の第1アナログ入力端子AIN0は、マイクロコンピュータ2の共通の端子VSSとして設けられている。また、PGA61〜63の第2アナログ入力端子AIN1は、それぞれマイクロコンピュータ2の端子ANI1、端子ANI2、端子ANI3として個別に設けられている。アナログ入力端子ANI1はシャント抵抗Rs1の一端、アナログ入力端子ANI2はシャント抵抗Rs2の一端、アナログ入力端子ANI3はシャント抵抗Rs3の一端に接続されている。各シャント抵抗Rs1〜Rs3の他端はGNDに接続され、マイクロコンピュータ2のVSS端子に接続されている。
【0102】
PGA61〜63の各々は、分担する相に応じて、ゲイン切替用抵抗群41、オフセット調整用抵抗群42及び基準電圧源45を、他のPGAに対して独立に設定できる。言い換えると、PGA61は、例えばU相について、ゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42での抵抗の値、基準電圧源45での基準電圧の値を、CPU21より、他のPGA62、63に対して独立に設定できる。また、PGA62は、例えばV相について、ゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42での抵抗の値、基準電圧源45での基準電圧の値を、CPU21より、他のPGA61、63に対して独立に設定できる。また、PGA63は、例えばW相について、ゲイン切替用抵抗群41及びオフセット調整用抵抗群42での抵抗の値、基準電圧源45での基準電圧の値を、CPU21より、他のPGA61、62に対して独立に設定できる。したがって、PGA61〜63の各々は、シャント抵抗Rs1〜Rs3の電圧Vinを、相ごとに、より適切に増幅して、出力電圧Voutとして出力することができる。
【0103】
そして、CPU21は、増幅されデジタル変換された出力電圧Voutに基づいて、各相のPWM制御を実行する。言い換えると、CPU21は、ADC25でデジタル信号に変換されたPGA61、PGA62、PGA63の出力電圧Voutに基づいて、タイマ回路22のU相、V相、W相のPWM制御を行う。なお、CPU21によるU相、V相、W相の各相のPWM制御は、他の相の出力電圧Voutを利用して行っても良い。
【0104】
本実施の形態に係るインバータシステムを備えたモータ制御システムの動作は、事前(又は動作中)に、CPU21が、相ごとにPGAの各レジスタを設定して、抵抗や基準電圧を設定する点や、動作中に相ごとに得られる出力電圧Voutに基づいてPWM制御する点以外は、第3の実施の形態と同様である。したがって、その説明を省略する。
【0105】
本実施の形態についても、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では相ごとにPGAの抵抗や基準電圧を設定する点や、動作中に相ごとに得られる出力電圧に基づいて制御することで、インバータシステムの制御を精度良く行うことができる。また、各PGA61〜63の第1アナログ入力端子AIN0をマイクロコンピュータ2の内部で結線して、VSS端子を共通化することにより、ゲインの精度、同相除去比を損なわずに、マイクロコンピュータ2に必要な端子数を減らすことができる。また、PGA61〜63は、第1、2の実施の形態のプログラマブル・ゲインアンプ(ゲイン制御回路及びオペアンプ)を用いることも可能である。
【0106】
(第5の実施の形態)
本実施の形態では、マイクロコンピュータ2の第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’と第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1のレイアウト点で第1〜5の実施の形態と相違している。以下では、その相違点について主に説明する。
【0107】
図11A〜
図11Cは、本実施の形態に係る第1抵抗及び第2抵抗のレイアウトの一例を示す模式図である。
図11Aは抵抗が2個ずつの場合、
図11Bは抵抗が4個ずつの場合、
図11Cは抵抗が8個ずつの場合を示している。
【0108】
第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’と第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1とは、近傍に配置されることが好ましい。それにより、製造ばらつきの影響を削減でき、R
1’=R
1=R
2’=R
2=…=R
n+1’=R
n+1とすることができる。その結果、プログラマブル・ゲインアンプの同相除去比や、ゲインの精度を改善することができる。
【0109】
更に、第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’及び第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1は、同じ点に対して、同じような点対称(又は線対称)に配置される(レイアウトされる)ことが好ましい。それにより、マイクロコンピュータ2のチップ上の製造ばらつきの影響を受けずに、R
1’+R
2’+…+R
i’、R
i+1’+R
i+2’+…+R
n+1’R
1+R
2+…+R
i、R
i+1+R
i+2+…+R
n+1の相対精度を向上することができる。その結果、プログラマブル・ゲインアンプの同相除去比や、ゲインの精度を改善することができる。
【0110】
具体的には、例えば以下のとおりである。
図11Aにおいて、第1抵抗R
1’、R
2’と第2抵抗R
1、R
2とは、近傍に配置されている。更に、第1抵抗R
1’と第2抵抗R
1とは近傍に配置され、第1抵抗R
2’と第2抵抗R
2とは近傍に配置されている。また、第1抵抗R
1’、R
2’及び第2抵抗R
1、R
2は、同じ点Cに対して、同じような点対称の配置を有している(2回対称)。
【0111】
図11Bにおいて、第1抵抗R
1’〜R
4’と第2抵抗R
1〜R
4とは、近傍に配置されている。更に、第1抵抗R
1’と第2抵抗R
1とは近傍に配置され、第1抵抗R
2’と第2抵抗R
2とは近傍に配置され、第1抵抗R
3’と第2抵抗R
3とは近傍に配置され、第1抵抗R
4’と第2抵抗R
4とは近傍に配置されている。また、第1抵抗R
1’〜R
4’及び第2抵抗R
1〜R
4は、同じ点Cに対して、同じような点対称の配置を有している(4回対称)。
【0112】
図11Cにおいて、第1抵抗R
1’〜R
8’と第2抵抗R
1〜R
8とは、近傍に配置されている。更に、第1抵抗R
1’と第2抵抗R
1とは概ね近傍に配置され、第1抵抗R
2’と第2抵抗R
2とは概ね近傍に配置され、第1抵抗R
3’と第2抵抗R
3とは近傍に配置されている。更に、第1抵抗R
4’と第2抵抗R
4とは近傍に配置され、第1抵抗R
5’と第2抵抗R
5とは近傍に配置され、第1抵抗R
6’と第2抵抗R
6とは近傍に配置され、第1抵抗R
7’と第2抵抗R
7とは近傍に配置され、第1抵抗R
8’と第2抵抗R
8とは近傍に配置されている。また、第1抵抗R
1’〜R
8’及び第2抵抗R
1〜R
8は、同じ点Cに対して、同じような点対称の配置を有している(2回対称)。
【0113】
以上に示すように、マイクロコンピュータ2の第1抵抗R
1’、R
2’、…、R
n+1’と第2抵抗R
1、R
2、…、R
n+1を、近傍に配置したり、点対称に配置したりする等のレイアウトを採用することにより、プログラマブル・ゲインアンプの同相除去比や、ゲインの精度を改善することができる。
【0114】
本実施の形態についても、第1〜4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、
図11A〜
図11Cに例示されるレイアウトにより、プログラマブル・ゲインアンプの同相除去比や、ゲインの精度を改善することができる。
【0115】
上記第1〜第5の実施の形態では、マイクロコンピュータ2を1チップとして説明してきたが、複数のチップで形成されていても良い。
図12は、マイクロコンピュータの変形例を示す模式図である。この図は、マイクロコンピュータ2が複数のチップので構成された一例(2チップ)を示している。マイクロコンピュータ2は、マイクロコンピュータ2bと、マイクロコンピュータ2aとを備えている。マイクロコンピュータ2bは、1チップとして構成され、プログラマブル・ゲインアンプの部分(ゲイン制御回路及びオペアンプ)を含んでいる。この図では、第3の実施の形態のゲイン制御回路24bとオペアンプ23とを含む例を示している。マイクロコンピュータ2aは、1チップとして構成され、CPU21とADC25とタイマ回路22とを含んでいる。マイクロコンピュータ2bとマイクロコンピュータ2aとはバスや配線により双方向通信可能に接続されている。しかし、各実施の形態はこれに限定されるものではなく、マイクロコンピュータ2が更に別の構成を有する複数のチップで構成されていてもよい。
【0116】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。