特許第6207875号(P6207875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207875レンズ駆動装置の製造方法およびレンズ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207875
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置の製造方法およびレンズ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-99095(P2013-99095)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-219584(P2014-219584A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−062976(JP,A)
【文献】 特開2010−097016(JP,A)
【文献】 特開2008−281820(JP,A)
【文献】 特開2009−122360(JP,A)
【文献】 特開2009−122602(JP,A)
【文献】 特開2010−276850(JP,A)
【文献】 特開2008−122470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、前記可動体および前記固定体のいずれか一方に固定される駆動用コイルと前記可動体および前記固定体のいずれか他方に固定される駆動用磁石とを有し前記可動体を前記光軸方向へ駆動する駆動機構と、前記可動体の被写体側で前記可動体と前記固定体とを繋ぐ第1板バネと、前記可動体の反被写体側で前記可動体と前記固定体とを繋ぐ第2板バネとを備えるレンズ駆動装置の製造方法であって、
前記駆動用コイルに供給される単位電流当たりの前記可動体の移動量を前記可動体の移動分解能とすると、
前記移動分解能が所定の基準範囲内に収まるように前記第1板バネと前記第2板バネとを組み合わせて選択する板バネ選択工程と、前記板バネ選択工程で選択した前記第1板バネと前記第2板バネとを前記可動体と前記固定体とに取り付ける板バネ取付工程とを備え
前記板バネ選択工程では、前記第1板バネのバネ定数である第1バネ定数と、前記第2板バネのバネ定数である第2バネ定数との和が所定の範囲内に収まるように、前記第1板バネと前記第2板バネとを組み合わせて選択することを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項2】
前記板バネ選択工程では、所定の範囲ごとに区切られた前記第1バネ定数の範囲を縦方向および横方向のいずれか一方に配列するとともに、所定の範囲ごとに区切られた前記第2バネ定数の範囲を縦方向および横方向のいずれか他方に配列したマトリクス状のバネ組合せ表を用いて、前記第1板バネと前記第2板バネとを選択することを特徴とする請求項記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項3】
前記板バネ選択工程で選択される前記第1板バネおよび前記第2板バネのバネ定数は、予め測定されていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項4】
前記可動体に形成される可動側基準面と前記固定体に形成される固定側基準面とが当接して、前記光軸方向における前記可動体の可動範囲の反被写体側端に前記可動体があるときの前記可動体の位置を前記光軸方向における前記可動体の基準位置とすると、
前記第1板バネおよび前記第2板バネの少なくともいずれか一方は、前記基準位置にある前記可動体をさらに反被写体側に向かって付勢する初期付勢力付与バネであり、
前記初期付勢力付与バネは、前記可動体に固定される可動体固定部と、前記固定体に固定される固定体固定部と、前記可動体固定部と前記固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、
前記基準位置にある前記可動体が被写体側に向かって動き始めるときの前記駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、
前記レンズ駆動装置の製造方法は、前記始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、前記始動電流値が前記規格範囲内に収まるように、前記基準位置に前記可動体があるときの前記可動体固定部と前記固定体固定部との前記光軸方向の距離を調整する始動電流調整工程を備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項5】
前記駆動用磁石は、前記固定体に固定され、
前記可動体に形成される可動側基準面と前記固定体に形成される固定側基準面とが当接して、前記光軸方向における前記可動体の可動範囲の反被写体側端に前記可動体があるときの前記可動体の位置を前記光軸方向における前記可動体の基準位置とすると、
前記可動体には、前記駆動用磁石よりも被写体側に配置され前記駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって前記可動体を前記基準位置に向かって付勢する磁性部材が取り付けられ、
前記基準位置にある前記可動体が被写体側に向かって動き始めるときの前記駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、
前記レンズ駆動装置の製造方法は、前記始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、前記始動電流値が前記規格範囲内に収まるような幅および/または厚みを有する前記磁性部材を選択して前記可動体に取り付ける始動電流調整工程を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項6】
前記駆動用磁石は、前記固定体に固定され、
前記可動体に形成される可動側基準面と前記固定体に形成される固定側基準面とが当接して、前記光軸方向における前記可動体の可動範囲の反被写体側端に前記可動体があるときの前記可動体の位置を前記光軸方向における前記可動体の基準位置とすると、
前記可動体には、前記駆動用磁石よりも被写体側に配置され前記駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって前記可動体を前記基準位置に向かって付勢する磁性部材が取り付けられ、
前記基準位置にある前記可動体が被写体側に向かって動き始めるときの前記駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、
前記レンズ駆動装置の製造方法は、前記始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、前記始動電流値が前記規格範囲内に収まるように、前記光軸方向における前記磁性部材の取付位置を調整して前記磁性部材を前記可動体に取り付ける始動電流調整工程を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法で製造されることを特徴とするレンズ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置の製造方法に関する。また、本発明は、かかるレンズ駆動装置の製造方法で製造されたレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構とを備えている。駆動機構は、可動体に取り付けられる駆動用コイルと、固定体に取り付けられる駆動用磁石とを備えている。また、このレンズ駆動装置は、可動体の被写体側で可動体と固定体とを繋ぐ板バネと、可動体の反被写体側で可動体と固定体とを繋ぐ板バネとを備えている。板バネは、たとえば、薄い金属板をエッチング加工することで製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−180513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レンズ駆動装置の特性の1つとして、駆動用コイルに供給される電流に応じた可動体の移動量が挙げられる。駆動用コイルに供給される単位電流当たりの可動体の移動量を可動体の移動分解能とすると、レンズ駆動装置では、移動分解能が所定の基準範囲内に収まっていることが要求される。移動分解能は、可動体と固定体とを繋ぐ板バネのバネ定数の影響を大きく受ける。
【0005】
上述のように、特許文献1に記載のレンズ駆動装置で使用される板バネは、薄い金属板をエッチング加工することで形成されているため、板バネの材料となる金属板の厚さのばらつきによって、板バネのバネ定数がばらつく。また、レンズ駆動装置で使用される板バネは非常に小さいため、エッチング加工で製造される板バネのバネ定数はばらつきやすい。バネ定数のばらつきの大きい板バネがレンズ駆動装置に使用されると、移動分解能がばらついて、移動分解能が基準範囲から外れる可能性が高くなる。したがって、移動分解能を基準範囲に収めるために、板バネのバネ定数のばらつきの許容範囲を狭くすることが好ましい。
【0006】
しかしながら、板バネのバネ定数のばらつきの許容範囲を狭くすると、板バネの歩留まりが低下して、板バネの製造コストが高くなる。また、板バネの製造コストが高くなると、レンズ駆動装置の製造コストも高くなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、可動体の移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、レンズ駆動装置に使用される板バネのバネ定数のばらつきの許容範囲を広げることが可能となるレンズ駆動装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるレンズ駆動装置の製造方法で製造されたレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置の製造方法は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体および固定体のいずれか一方に固定される駆動用コイルと可動体および固定体のいずれか他方に固定される駆動用磁石とを有し可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構と、可動体の被写体側で可動体と固定体とを繋ぐ第1板バネと、可動体の反被写体側で可動体と固定体とを繋ぐ第2板バネとを備えるレンズ駆動装置の製造方法であって、駆動用コイルに供給される単位電流当たりの可動体の移動量を可動体の移動分解能とすると、移動分解能が所定の基準範囲内に収まるように第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択する板バネ選択工程と、板バネ選択工程で選択した第1板バネと第2板バネとを可動体と固定体とに取り付ける板バネ取付工程とを備え、板バネ選択工程では、第1板バネのバネ定数である第1バネ定数と、第2板バネのバネ定数である第2バネ定数との和が所定の範囲内に収まるように、第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択することを特徴とする。
【0009】
本発明のレンズ駆動装置の製造方法では、板バネ選択工程において、移動分解能が所定の基準範囲内に収まるように第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択し、板バネ取付工程において、板バネ選択工程で選択した第1板バネと第2板バネとを可動体と固定体とに取り付けている。そのため、本発明では、第1板バネおよび第2板バネの個々のバネ定数のばらつきが大きくても、第1板バネと第2板バネとを組み合わせたときの2枚の板バネ全体のバネ定数のばらつきを小さくして、移動分解能を基準範囲内に収めることが可能になる。したがって、本発明の製造方法によれば、可動体の移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、レンズ駆動装置に使用される板バネの個々のバネ定数のばらつきの許容範囲を広げることが可能になる。
【0011】
本発明において、板バネ選択工程では、所定の範囲ごとに区切られた第1バネ定数の範囲を縦方向および横方向のいずれか一方に配列するとともに、所定の範囲ごとに区切られた第2バネ定数の範囲を縦方向および横方向のいずれか他方に配列したマトリクス状のバネ組合せ表を用いて、第1板バネと第2板バネとを選択することが好ましい。このように構成すると、板バネ選択工程において、第1板バネおよび第2板バネを容易に組み合わせて選択することが可能になる。
【0012】
本発明において、板バネ選択工程で選択される第1板バネおよび第2板バネのバネ定数は、予め測定されていることが好ましい。このように構成すると、板バネ選択工程において、短時間で第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択することが可能になる。
【0013】
本発明において、可動体に形成される可動側基準面と固定体に形成される固定側基準面とが当接して、光軸方向における可動体の可動範囲の反被写体側端に可動体があるときの可動体の位置を光軸方向における可動体の基準位置とすると、第1板バネおよび第2板バネの少なくともいずれか一方は、基準位置にある可動体をさらに反被写体側に向かって付勢する初期付勢力付与バネであり、初期付勢力付与バネは、可動体に固定される可動体固定部と、固定体に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ腕部とを備え、基準位置にある可動体が被写体側に向かって動き始めるときの駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、レンズ駆動装置の製造方法は、始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、始動電流値が規格範囲内に収まるように、基準位置に可動体があるときの可動体固定部と固定体固定部との光軸方向の距離を調整する始動電流調整工程を備えることが好ましい。このように構成すると、移動分解能を基準範囲内に収めるために第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択した結果、始動電流値が規格範囲から外れたとしても、始動電流値を規格範囲内に収めることが可能になる。
【0014】
本発明において、駆動用磁石は、固定体に固定され、可動体に形成される可動側基準面と固定体に形成される固定側基準面とが当接して、光軸方向における可動体の可動範囲の反被写体側端に可動体があるときの可動体の位置を光軸方向における可動体の基準位置とすると、可動体には、駆動用磁石よりも被写体側に配置され駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって可動体を基準位置に向かって付勢する磁性部材が取り付けられ、基準位置にある可動体が被写体側に向かって動き始めるときの駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、レンズ駆動装置の製造方法は、始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、始動電流値が規格範囲内に収まるような幅および/または厚みを有する磁性部材を選択して可動体に取り付ける始動電流調整工程を備えることが好ましい。このように構成すると、移動分解能を基準範囲内に収めるために第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択した結果、始動電流値が規格範囲から外れたとしても、始動電流値を規格範囲内に収めることが可能になる。
【0015】
本発明において、駆動用磁石は、固定体に固定され、可動体に形成される可動側基準面と固定体に形成される固定側基準面とが当接して、光軸方向における可動体の可動範囲の反被写体側端に可動体があるときの可動体の位置を光軸方向における可動体の基準位置とすると、可動体には、駆動用磁石よりも被写体側に配置され駆動用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって可動体を基準位置に向かって付勢する磁性部材が取り付けられ、基準位置にある可動体が被写体側に向かって動き始めるときの駆動用コイルの電流値を始動電流値とすると、レンズ駆動装置の製造方法は、始動電流値が所定の規格範囲から外れているときに、始動電流値が規格範囲内に収まるように、光軸方向における磁性部材の取付位置を調整して磁性部材を可動体に取り付ける始動電流調整工程を備えることが好ましい。このように構成すると、移動分解能を基準範囲内に収めるために第1板バネと第2板バネとを組み合わせて選択した結果、始動電流値が規格範囲から外れたとしても、始動電流値を規格範囲内に収めることが可能になる。
【0016】
本発明のレンズ駆動装置は、上述のレンズ駆動装置の製造方法で製造されている。このレンズ駆動装置では、移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、使用される板バネのバネ定数のばらつきの許容範囲を広げることが可能になる。したがって、このレンズ駆動装置では、移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、使用される板バネの歩留まりを向上させて板バネの製造コストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のレンズ駆動装置の製造方法によれば、可動体の移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、レンズ駆動装置に使用される板バネのバネ定数のばらつきの許容範囲を広げることが可能になる。また、本発明のレンズ駆動装置の製造方法で製造されたレンズ駆動装置では、移動分解能を所定の基準範囲内に収めることが可能であっても、使用される板バネの歩留まりを向上させて板バネの製造コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の斜視図である。
図2図1のE−E断面の断面図である。
図3図1に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
図4図1に示すレンズ駆動装置において、駆動用コイルに供給される電流の値と可動体の移動量との関係を説明するためのグラフである。
図5図1に示すレンズ駆動装置で使用される第1板バネおよび第2板バネを選択するときに使用するバネ組合せ表の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(レンズ駆動装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すレンズ駆動装置1の分解斜視図である。図4は、図1に示すレンズ駆動装置1において、駆動用コイル20に供給される電流の値と可動体2の移動量との関係を説明するためのグラフである。以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
本形態のレンズ駆動装置1は、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるものであり、図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ駆動装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向と上下方向とから形成される平面または前後方向と上下方向とから形成される平面と略平行になっている。
【0022】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0023】
レンズ駆動装置1は、図1図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動する駆動機構4とを備えている。また、レンズ駆動装置1は、図2図3に示すように、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6を備えている。すなわち、可動体2は、板バネ5、6を介して固定体3に移動可能に保持されている。板バネ5は、可動体2の上端側に配置されており、可動体2の上端側で可動体2と固定体3とを繋いでいる。板バネ6は、可動体2の下端側に配置されており、可動体2の下端側で可動体2と固定体3とを繋いでいる。本形態の板バネ5は、第1板バネであり、板バネ6は、第2板バネである。
【0024】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の上端面およびレンズ駆動装置1の側面の上端側部分を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の側面の下端側部分およびレンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11と、板バネ5の一部が固定されるスペーサ12とを備えている。スリーブ8の上端側には、軟磁性材料で形成された円環状の磁性部材13が固定されている。ベース部材11には、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル20へ電流を供給するための一対の給電端子14が固定されている。なお、図3では、レンズホルダ7の図示を省略している。
【0025】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されている。このレンズホルダ7の内周側には、複数のレンズが固定されている。スリーブ8は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略筒状に形成されている。具体的には、スリーブ8は、光軸方向から見たときの内周面の形状が略円形状となり、光軸方向から見たときの外周面の形状が略正方形状となる略筒状に形成されている。このスリーブ8は、その内周側でレンズホルダ7を保持している。
【0026】
スリーブ8の下端には、ベース部材11に形成される後述の基準面11bに当接して、光軸方向における可動体2の基準位置を決める突起部8aが下方向へ突出するように形成されている。突起部8aは、光軸Lを略中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。突起部8aの下端面は、光軸方向に直交する平面状に形成されている。
【0027】
スリーブ8の外周側には、径方向の外側へ突出する鍔部8bが形成されている。鍔部8bは、スリーブ8の上端側および下端側の2箇所に形成されている。2個の鍔部8b間には、駆動機構4を構成する駆動用コイル20が巻回されている。スリーブ8の上端側には、磁性部材13を搭載するための搭載面8cが形成されている。搭載面8cは、レンズを囲むように略円環状に形成されている。この搭載面8cは、光軸方向に略直交する平面状に形成されている。また、搭載面8cは、上端側に形成される鍔部8bの上面よりも上側に形成されている。
【0028】
また、スリーブ8の上端側には、搭載面8cの内周側から上側に向かって立ち上る内壁部8dが形成されている。内壁部8dは、光軸Lを軸中心とする略円筒状に形成されており、内壁部8dの内周面は、スリーブ8の内周面の一部を構成している。さらに、スリーブ8の上端側には、搭載面8cの外周側から上側に向かって立ち上る4個の外壁部8fが形成されている。外壁部8fは、光軸Lを曲率中心とする略円弧状の曲面状に形成されており、4個の外壁部8fは、光軸Lを中心にして略90°ピッチで形成されている。上下方向における内壁部8dの高さは、外壁部8fの高さよりも高くなっている。
【0029】
カバー部材10は、磁性を有する金属材料で形成されている。また、カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。上側に配置される底部10aの中心には、貫通孔10cが形成されている。このカバー部材10は、可動体2および駆動機構4の外周側を覆っている。
【0030】
ベース部材11は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。また、ベース部材11は、光軸方向から見たときの形状が略正方形となるブロック状に形成されている。このベース部材11は、カバー部材10の下端側に取り付けられている。ベース部材11の中心には、貫通孔11aが形成されている。また、ベース部材11の上面には、光軸方向における可動体2の基準位置を決めるための基準面11bが、光軸方向に直交する平面状に形成されている。基準面11bは、光軸Lを略中心とする90°ピッチで4箇所に形成されている。
【0031】
本形態では、スリーブ8の突起部8aの下端面が基準面11bに当接して、上下方向(光軸方向)における可動体2の可動範囲の下端(反被写体側端)に可動体2があるときの可動体2の位置が、光軸方向における可動体2の基準位置となっている。本形態の突起部8aの下端面は、可動側基準面であり、基準面11bは、固定側基準面である。
【0032】
スペーサ12は、たとえば、樹脂材料で形成されるとともに、略正方形の扁平なブロック状に形成されている。また、スペーサ12は、枠状に形成されており、その中心には、貫通孔が形成されている。このスペーサ12は、カバー部材10の底部10aの下面に固定されている。スペーサ12の四隅のそれぞれの下面側には、板バネ5を構成する後述の固定体固定部が接着固定されている。
【0033】
板バネ5は、金属材料によって板状に形成されている。この板バネ5は、スリーブ8の外壁部8fの上端面に固定される可動体固定部と、スペーサ12に固定される4個の固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ4本の腕部とを備えている。可動体固定部は、円環状に形成されている。固定体固定部は、略等脚台形状に形成されており、可動体固定部よりも外周側に配置されている。腕部は、板バネ5の所望のバネ特性を得ることができるように略1/4円弧状に形成されている。
【0034】
板バネ5は、その厚み方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8およびスペーサ12に固定されている。固定体固定部は、可動体2の可動範囲において、可動体固定部よりも下側に配置されており、板バネ5は、腕部が常時、撓んでいる状態で、スリーブ8およびスペーサ12に固定されている。そのため、可動体2は、板バネ5の付勢力によって、常時、下側へ付勢されている。すなわち、可動体2は、可動体2の可動範囲の全域において、板バネ5の付勢力によって、スリーブ8の突起部8aの下端面がベース部材11の基準面11bに当接する基準位置に向かって付勢されている。本形態の板バネ5は、基準位置にある可動体2をさらに反被写体側に向かって付勢する初期付勢力付与バネである。
【0035】
板バネ6は、互いに電気的に分離された2個のバネ片15によって構成されている。バネ片15は、金属材料によって板状に形成されている。バネ片15は、スリーブ8の下端側に固定される可動体固定部と、ベース部材11に固定される2個の固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ2本の腕部とを備えている。バネ片15には、駆動機構4を構成する後述の駆動用コイル20の端部が電気的に接続されている。バネ片15は、その厚み方向と光軸方向とが略一致するように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。また、バネ片15は、後述の駆動用コイル20に電流が供給されておらず、可動体2が基準位置にあるときに、バネ片15による可動体2の付勢力が生じないように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。
【0036】
給電端子14は、導電性を有する金属材料によって形成されている。2個の給電端子14のうちの一方の給電端子14には、2個のバネ片15の一方が電気的に接続され、他方の給電端子14には、他方のバネ片15が電気的に接続されている。給電端子14は、ベース部材11に固定されている。
【0037】
駆動機構4は、スリーブ8の外周面に巻回される駆動用コイル20と、レンズ駆動装置1の4つの側面のそれぞれに沿って配置される駆動用磁石21とを備えている。駆動用コイル20は、2個の鍔部8bの間に巻回されており、スリーブ8に固定されている。駆動用磁石21は、略矩形の平板状に形成されている。この駆動用磁石21は、前後方向または左右方向において駆動用コイル20の外周面と対向するようにカバー部材10の筒部10bの内側面に固定されている。本形態のカバー部材10は、磁気回路を形成するためのヨークの機能を果たしている。
【0038】
磁性部材13は、スリーブ8の搭載面8cに固定されている。本形態では、搭載面8cは、可動体2の可動範囲において、常に、駆動用磁石21よりも上側に配置されている。すなわち、磁性部材13は、可動体2の可動範囲において、常に、駆動用磁石21よりも上側(被写体側)に配置されている。そのため、磁性部材13と駆動用磁石21との間に生じる磁気的吸引力によって、可動体2は、常時、下側へ付勢されている。すなわち、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力によって、可動体2は、光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。また、上述のように、板バネ5の付勢力によっても、可動体2は、光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。すなわち、可動体2は、板バネ5の付勢力と、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力とによって、光軸方向の基準位置に向かって付勢されている。
【0039】
以上のように構成されたレンズ駆動装置1では、駆動用コイル20に供給される電流の値(電流値)に応じて、可動体2が光軸方向へ所定量、移動する。すなわち、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力および板バネ5の付勢力によって光軸方向の基準位置に向かって付勢され基準位置にある可動体2は、駆動用コイル20に供給される電流値が所定の値になると上側に向かって動き始める。このときの駆動用コイル20の電流値が始動電流値である。
【0040】
また、基準位置と上限位置(被写体側の移動限界位置)との間を可動範囲とする可動体2の基準位置からの移動量と、駆動用コイル20の電流値とは、理想的には、図4に示すように、比例する。駆動用コイル20の電流値と基準位置からの可動体2の移動量との関係を示すグラフの傾きは、駆動用コイル20に供給される単位電流当たりの可動体2の移動量である可動体2の移動分解能である。なお、本形態では、スリーブ8の内壁部8dの上端面とカバー部材10の底部10aの下面とが当接可能となっており、内壁部8dの上端面と底部10aの下面とが当接しているときの可動体2の位置が可動体2の上限位置である。
【0041】
(レンズ駆動装置の製造方法)
図5は、図1に示すレンズ駆動装置1で使用される板バネ5、6を選択するときに使用するバネ組合せ表の一例を示す表である。
【0042】
レンズ駆動装置1の製造過程では、可動体2の移動分解能が所定の基準範囲内に収まるように板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択する(板バネ選択工程)。また、板バネ選択工程で選択した板バネ5と板バネ6とを可動体2と固定体3とに取り付ける(板バネ取付工程)。レンズ駆動装置1で使用される板バネ5、6のバネ定数は、予め測定されている。すなわち、板バネ選択工程で選択される板バネ5のバネ定数(第1バネ定数)と板バネ6のバネ定数(第2バネ定数)とは、予め測定されており、板バネ選択工程では、板バネ5のバネ定数と板バネ6のバネ定数との和が所定の範囲内に収まるように、板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択する。
【0043】
具体的には、板バネ選択工程では、所定の範囲ごとに区切られた板バネ(第1板バネ)5のバネ定数の範囲を横方向に配列するとともに、所定の範囲ごとに区切られた板バネ(第2板バネ)6のバネ定数の範囲を縦方向に配列したマトリクス状のバネ組合せ表(図5参照)を用いて、板バネ5と板バネ6とを選択する。図5に示すバネ組合せ表において、A1〜A7は、板バネ5のバネ定数を表しており、A1は、板バネ5のバネ定数の許容下限値であり、A7は、板バネ5のバネ定数の許容上限値である。また、図5に示すバネ組合せ表において、B1〜B6は、板バネ6のバネ定数を表しており、B1は、板バネ6のバネ定数の許容下限値であり、B6は、板バネ6のバネ定数の許容上限値である。
【0044】
図5に示す例では、バネ定数がA1〜A2の範囲の板バネ5をバネ定数がB5〜B6の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合、バネ定数がA2〜A3の範囲の板バネ5をバネ定数がB3〜B6の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合、バネ定数がA3〜A4の範囲の板バネ5をバネ定数がB2〜B5の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合、バネ定数がA4〜A5の範囲の板バネ5をバネ定数がB1〜B5の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合、バネ定数がA5〜A6の範囲の板バネ5をバネ定数がB1〜B4の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合、および、バネ定数がA6〜A7の範囲の板バネ5をバネ定数がB1〜B2の範囲の板バネ6と組み合わせて選択した場合に、板バネ5のバネ定数と板バネ6のバネ定数との和が所定の範囲内に収まって、可動体2の移動分解能が基準範囲内に収まる。
【0045】
そのため、板バネ選択工程では、たとえば、バネ定数がA1〜A2の範囲の板バネ5を選択する場合には、板バネ5のバネ定数と板バネ6のバネ定数との和が所定の範囲内に収まるように、バネ定数がB5〜B6の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択する。また、板バネ選択工程において、たとえば、バネ定数がA2〜A3の範囲の板バネ5を選択する場合には、板バネ5のバネ定数と板バネ6のバネ定数との和が所定の範囲内に収まるように、バネ定数がB3〜B6の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択する。
【0046】
同様に、板バネ選択工程において、たとえば、バネ定数がA3〜A4の範囲の板バネ5を選択する場合には、バネ定数がB2〜B5の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択し、バネ定数がA4〜A5の範囲の板バネ5を選択する場合には、バネ定数がB1〜B5の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択する。また、板バネ選択工程において、バネ定数がA5〜A6の範囲の板バネ5を選択する場合には、バネ定数がB1〜B4の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択し、バネ定数がA6〜A7の範囲の板バネ5を選択する場合には、バネ定数がB1〜B2の範囲の板バネ6をこの板バネ5と組み合わせて選択する。
【0047】
板バネ選択工程で選択された板バネ5、6が可動体2および固定体3に取り付けられたレンズ駆動装置1では、可動体2の移動分解能は、所定の基準範囲内に収まっているが、図4の二点鎖線で示すように、始動電流値が所定の規格範囲から外れてしまうことがある。この場合には、始動電流値が規格範囲内に収まるように、可動体2が基準位置にあるときの板バネ5の可動体固定部と固定体固定部との光軸方向の距離を調整する(始動電流調整工程)。すなわち、この場合には、板バネ5の付勢力を調整することで、始動電流値を規格範囲内に収める。たとえば、外壁部8fの上端面と板バネ5の可動体固定部との間に薄いスペーサを入れることで、板バネ5の可動体固定部と固定体固定部との光軸方向の距離を調整して、始動電流値を規格範囲内に収める。
【0048】
または、始動電流値が所定の規格範囲から外れてしまう場合に、始動電流値が規格範囲内に収まるような幅および/または厚みを有する磁性部材13を選択してスリーブ8に取り付ける(始動電流調整工程)。あるいは、始動電流値が所定の規格範囲から外れてしまう場合に、始動電流値が規格範囲内に収まるように、光軸方向における磁性部材13の取付位置を調整してから磁性部材13をスリーブ8に取り付ける(始動電流調整工程)。たとえば、搭載面8cと磁性部材13との間に薄いスペーサを入れることで、あるいは、磁性部材13と搭載面8cとの間に塗布される接着剤の厚みを変えることで、光軸方向における磁性部材13の取付位置を調整する。すなわち、始動電流値が所定の規格範囲から外れてしまう場合には、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を調整することで、始動電流値を規格範囲内に収める。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、板バネ選択工程において、可動体2の移動分解能が基準範囲内に収まるように板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択し、板バネ取付工程において、板バネ選択工程で選択した板バネ5、6を可動体2と固定体3とに取り付けている。そのため、本形態では、板バネ5のバネ定数のばらつきが大きく、また、板バネ6のバネ定数のばらつきが大きくても(すなわち、板バネ5および板バネ6の個々のバネ定数のばらつきが大きくても)、板バネ5と板バネ6とを組み合わせたときの板バネ5、6全体のバネ定数のばらつきを小さくして、移動分解能を基準範囲内に収めることが可能になる。したがって、本形態では、可動体2の移動分解能を基準範囲内に収めることが可能であっても、レンズ駆動装置1に使用される板バネ5、6の個々のバネ定数のばらつきの許容範囲を広げることが可能になる。その結果、本形態では、可動体2の移動分解能を基準範囲内に収めることが可能であっても、使用される板バネ5、6の歩留まりを向上させることが可能になり、板バネ5、6の製造コストを低減して、レンズ駆動装置1のコストを低減することが可能になる。
【0050】
本形態では、板バネ選択工程において、バネ組合せ表を用いて、板バネ5と板バネ6とを選択している。そのため、本形態では、板バネ選択工程において、組み合わされる板バネ5と板バネ6とを容易に選択することが可能になる。また、本形態では、板バネ選択工程で選択される板バネ5、6のバネ定数が予め測定されているため、板バネ選択工程において、短時間で板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択することが可能になる。
【0051】
本形態では、板バネ選択工程で選択された板バネ5、6が可動体2および固定体3に取り付けられたレンズ駆動装置1において、始動電流値が所定の規格範囲から外れてしまう場合、板バネ5の付勢力を調整することで、あるいは、磁性部材13と駆動用磁石21との間の磁気的吸引力を調整することで、始動電流値を規格範囲内に収めている。そのため、本形態では、移動分解能を基準範囲内に収めるために板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択した結果、始動電流値が規格範囲から外れたとしても、始動電流値を規格範囲内に収めることができる。
【0052】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0053】
上述した形態では、レンズ駆動装置1は、可動体2と固定体3とを繋ぐ板バネ5、6を備えている。この他にもたとえば、レンズ駆動装置1は、板バネ5、6に加えて、可動体2と固定体3とを繋ぐ別の板バネをさらに備えていても良い。この場合には、板バネ選択工程において、可動体2の移動分解能が所定の基準範囲内に収まるように、この板バネと板バネ5と板バネ6とを組み合わせて選択する。
【0054】
上述した形態では、板バネ5は、基準位置にある可動体2をさらに下側へ向かって付勢するように、スリーブ8およびスペーサ12に固定され、板バネ6は、可動体2が基準位置にあるときに板バネ6による可動体2の付勢力が生じないように、スリーブ8およびベース部材11に固定されている。この他にもたとえば、可動体2が基準位置にあるときに板バネ5による可動体2の付勢力が生じないように、スリーブ8およびスペーサ12に板バネ5が固定され、基準位置にある可動体2をさらに下側へ向かって付勢するように、スリーブ8およびベース部材11に板バネ6が固定されても良い。この場合には、板バネ6が初期付勢力付与バネとなる。また、基準位置にある可動体2をさらに下側へ向かって付勢するように、スリーブ8およびスペーサ12に板バネ5が固定されるとともに、基準位置にある可動体2をさらに下側へ向かって付勢するように、スリーブ8およびベース部材11に板バネ6が固定されても良い。この場合には、板バネ5および板バネ6が初期付勢力付与バネとなる。
【0055】
上述した形態では、スリーブ8に駆動用コイル20が固定され、カバー部材10に駆動用磁石21が固定されているが、スリーブ8に駆動用磁石21が固定され、カバー部材10に駆動用コイル20が固定されても良い。また、上述した形態では、駆動機構4は、スリーブ8の外周面に巻回される1個の駆動用コイル20を備えているが、駆動機構4は、光軸方向に所定の間隔をあけた状態でスリーブ8の外周面に巻回される2個の駆動用コイル20を備えていても良い。また、上述した形態では、スリーブ8に磁性部材13が取り付けられているが、スリーブ8の磁性部材13が取り付けられていなくても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 レンズ駆動装置
2 可動体
3 固定体
4 駆動機構
5 板バネ(第1板バネ、初期付勢力付与バネ)
6 板バネ(第2板バネ)
11b 固定側基準面
13 磁性部材
20 駆動用コイル
21 駆動用磁石
L 光軸
Z 光軸方向
Z1 被写体側
Z2 反被写体側
図1
図2
図3
図4
図5