特許第6207891号(P6207891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207891
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20170925BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C09K3/14 520C
   C09K3/14 520F
   C09K3/14 520G
   F16D69/02 C
   F16D69/02 E
   C09K3/14 520K
   C09K3/14 520M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-131751(P2013-131751)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-4037(P2015-4037A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年5月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(72)【発明者】
【氏名】梶 真也
(72)【発明者】
【氏名】田村 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢口 光明
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−093110(JP,A)
【文献】 特開平06−129455(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/066966(WO,A1)
【文献】 特開平08−135701(JP,A)
【文献】 特開2004−035871(JP,A)
【文献】 特開2012−107205(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/066965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキパッドに使用される摩擦材であって、摩擦材組成物を成型してなる摩擦材において、前記摩擦材組成物は、硫化第一鉄粒子を潤滑材として摩擦材組成物全量に対し10〜15重量%と、黒鉛粒子を膨張させて膨張黒鉛とした後、その膨張黒鉛を粉砕して製造された平均粒子径1〜100μmの薄片状黒鉛粒子を潤滑材として摩擦材組成物全量に対し3〜5重量%、結合材を摩擦材組成物全量に対し6〜12重量%、有機繊維を摩擦材組成物全量に対し2〜7重量%、有機摩擦調整材を摩擦材組成物全量に対し5〜8重量%含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して0重量%であることを特徴とする摩擦材。
【請求項2】
前記薄片状黒鉛粒子がバインダを使用せずに造粒した凝集物の形態で摩擦材組成物に含有されることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のディスクブレーキパッドに使用される、NAO(Non-Asbestos-Organic)材の摩擦材組成物を成型した摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の制動装置として、ディスクブレーキが使用されており、その摩擦部材として、金属製のベース部材に摩擦材が貼り付けられたディスクブレーキパッドが使用されている。
【0003】
摩擦材は、繊維基材としてスチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%以上60重量%未満含有するセミメタリック摩擦材と、繊維基材の一部にスチール繊維を含み、且つ、スチール繊維を摩擦材組成物全量に対し30重量%未満含有するロースチール摩擦材と、繊維基材としてスチール繊維およびステンレス繊維等のスチール系繊維を含まないNAO材に分類されている。
【0004】
ブレーキノイズの発生が少ない摩擦材が求められている近年においては、スチール繊維とスチール系繊維を含まず、かつ、結合材、繊維基材、潤滑材、チタン酸金属塩、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等から成る、NAO材の摩擦材を使用したディスクブレーキパッドが広く使用されるようになってきている。
【0005】
ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材には、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性を確保するため、銅や銅合金の繊維又は粒子等の銅成分が必須成分として摩擦材組成物全量に対し、5〜20重量%程度添加されている。
【0006】
しかし近年、このような摩擦材は制動時に摩耗粉として銅を排出し、この排出された銅が河川、湖、海洋に流入することにより水域を汚染する可能性があることが示唆されている。
【0007】
このような背景から、アメリカのカリフォルニア州やワシントン州では、2021年以降、銅成分を5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止し、その数年後に、銅成分を0.5重量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止する法案が可決している。
【0008】
そして、今後このような規制は世界中に波及するものと予想されることから、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することが急務となっており、NAO材の摩擦材に含まれる銅成分を削減することにより低下する、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の改善が課題となっている。
【0009】
特許文献1には、金属スズ又はスズ合金を摩擦材組成物全量に対し0.5〜50重量%と、銅を摩擦材組成物全量に対し0.001〜4.999重量%含有する摩擦材組成物を成型してなる摩擦材が記載されている。
【0010】
特許文献2には、結合材、有機充填材、無機充填材及び繊維基材を含む摩擦材組成物であって、該摩擦材組成物中の銅の含有量が銅元素として5質量%以下であり、銅及び銅合金以外の金属繊維の含有量が0.5質量%以下であり、チタン酸塩及び三硫化アンチモンを含有し、該チタン酸塩の含有量が10〜35質量%であるノンアスベスト摩擦材組成物及び、前記ノンアスベスト摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを用いて形成される摩擦部材が記載されている。
【0011】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の摩擦材は銅成分の含有量について上記の法規を満足しているが、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の要求性能を十分に確保しているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国公開特許2010/0331447号公報
【特許文献2】特開2012−255051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の要求性能を確保できる摩擦材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、潤滑材として硫化第一鉄(FeS)粒子を特定量含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対し5重量%未満である摩擦材組成物を使用することにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成した。
【0015】
本発明は、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材であって、以下の技術を基礎とするものである。
【0016】
(1)ディスクブレーキパッドに使用される摩擦材であって、摩擦材組成物を成型してなる摩擦材において、前記摩擦材組成物は、潤滑材として硫化第一鉄粒子を摩擦材組成物全量に対し1〜15重量%含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満であることを特徴とする摩擦材。
【0017】
(2)前記摩擦材組成物は、潤滑材としてさらに平均粒子径1〜100μmの薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物全量に対し0.3〜5重量%含有することを特徴とする(1)に記載の摩擦材。
【0018】
(3)前記薄片状黒鉛粒子が凝集物の形態で摩擦材組成物に含有されることを特徴とする請求項2に記載の摩擦材。
【0019】
(4)前記摩擦材組成物は、結合材を摩擦材組成物全量に対し4〜12重量%、有機繊維を摩擦材組成物全量に対し1〜7重量%、有機摩擦調整材を摩擦材組成物全量に対し3〜8重量%含有することを特徴とする請求項1および請求項3に記載の摩擦材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用されるNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性を確保できる摩擦材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明においては、ディスクブレーキパッドに使用される摩擦材組成物を成型した摩擦材において、潤滑材として硫化第一鉄粒子を摩擦材組成物全量に対し1〜15重量%含有し、摩擦材組成物に含まれる銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満である摩擦材組成物を使用する。
【0022】
硫化第一鉄粒子は耐摩耗性を向上させる潤滑材として作用すると共に、高速高負荷制動時においてはブレーキの効きを向上させる摩擦調整材として作用する。
【0023】
これは、硫化第一鉄の、無酸素の環境で1100℃の温度に曝されると、鉄と硫黄に分解するという特性によるものと推定される。
【0024】
高速高負荷制動時には、摩擦材と相手部材である鋳鉄製のディスクロータの接触面の温度は瞬間的に1100℃以上に達する。それと同時に摩擦材に含まれている有機物が酸化するため、接触面近傍は酸素が著しく減少した状態になる。
【0025】
このような状態に達すると、摩擦材の摩擦面に露出する硫化第一鉄粒子は鉄と硫黄に分解し、摩擦材の摩擦面には硫化第一鉄粒子に由来する鉄成分の被膜が形成される。
【0026】
この鉄成分の被膜と、相手部材の鉄成分が凝着摩擦を発生させ、ブレーキの効きが向上するのである。
【0027】
なお、硫化鉄としては、硫化第一鉄の他に、硫化第二鉄(Fe)と二硫化鉄(FeS)があるが、硫化第二鉄や二硫化鉄は上記のような効果は望めない。
【0028】
硫化第一鉄粒子としては、例えば、CATALISE社製のEUROLUB−1010が挙げられ、商業的に入手することができる。
【0029】
また本発明は、さらに潤滑材として平均粒子径1〜100μmの薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物全量に対し0.3〜5重量%含有することを特徴とする。
【0030】
薄片状黒鉛粒子は、天然鱗片状黒鉛,キッシュ黒鉛,熱分解黒鉛等の黒鉛粒子を高濃度の硫酸、硝酸及び酸化剤を添加し、適宜の温度で適宜の時間反応させて硫酸―黒鉛層間化合物を合成し、これを水洗した後、1000℃の高温に加熱することにより、黒鉛粒の厚さ方向に100〜300倍膨張させて得られる膨張黒鉛を、膨張黒鉛粒子の空隙内に液体を充填した状態又は該液体を凍結した状態で粉砕する方法や、膨張黒鉛粒子を液体中に分散させ、液体中で超音波を作用させる方法や、膨張黒鉛粒子を液体中に分散させ、液体中にてメディアを作用させて磨砕する方法や、膨脹黒鉛を分散媒体に浸漬した後、粗粉砕して黒鉛スラリーとし、スラリーを摩砕機で微粉砕する方法等により製造される、高い熱伝導性を有する黒鉛粒子である。
【0031】
この薄片状黒鉛粒子を摩擦材組成物に適量添加することにより、高速高負荷制動時に瞬間的に上昇する摩擦材の温度を速やかに低下させることができ、硫化第一鉄の過度な分解を抑制することができる。
【0032】
薄片状黒鉛粒子としては、例えば、ASBURY
CARBONS, INC.製のSURFACE ENHANCED FLAKE GRAPHITEシリーズが挙げられ、商業的に入手することができる。
【0033】
また、薄片状黒鉛粒子は凝集物の形態で摩擦材組成物に含有されることが好ましい。
【0034】
薄片状黒鉛粒子を凝集物の形態で摩擦材組成物に添加することにより、薄片状黒鉛粒子を摩擦材中に均一に分散させることができる。造粒物は平均粒子径30〜500μmであることが好ましい。
【0035】
薄片状黒鉛粒子の凝集物は、薄片状黒鉛粒子をローラーコンパクターで圧縮し、整粒機で整粒する方法や、回転式ドラム造粒装置や流動層造粒装置や転動流動層造粒装置等の通常の造粒装置を用いて造粒する方法等、通常実施される造粒方法を用いて製造される。
【0036】
薄片状黒鉛粒子の凝集物としては、例えば、TIMCAL
S.A.製のC−THERM(米国登録商標)シリーズが挙げられ、商業的に入手することができる。
【0037】
なお、本発明において、平均粒径はレーザー回折粒度分布法により測定した50%粒径の数値を用いた。
【0038】
さらに本発明は、摩擦材組成物に、結合材を摩擦材組成物全量に対し4〜12重量%、有機繊維を摩擦材組成物全量に対し1〜7重量%、有機摩擦調整材を摩擦材組成物全量に対し3〜8重量%含有させることを特徴とする。
【0039】
有機物である結合材、有機繊維、有機摩擦調整材の含有量を上記の量にすることにより、耐摩耗性を低下させることなく、高速高負荷制動時に摩擦材とディスクロータの接触面近傍を無酸素の状態に近づけることができる。
【0040】
上記の摩擦材組成物を使用することにより、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷制動時のブレーキの効きと耐摩耗性の要求性能を確保できる摩擦材を提供することができる。
【0041】
本発明の摩擦材は、上記の硫化第一鉄、薄片状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子の凝集物の他に、通常摩擦材に使用される結合材、繊維基材、チタン酸塩、潤滑材、無機摩擦調整材、有機摩擦調整材、pH調整材、充填材等を含む摩擦材組成物から成る。
【0042】
結合材として、ストレートフェノール樹脂や、フェノール樹脂をカシューオイルやシリコーンオイル、アクリルゴム等の各種エラストマーで変性した樹脂、フェノール類とアラルキルエーテル類とアルデヒド類とを反応させて得られるアラルキル変性フェノール樹脂、フェノール樹脂に各種エラストマー、フッ素ポリマー等を分散させた熱硬化性樹脂等の摩擦材に通常用いられる結合材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。結合材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して4〜12重量%とするのが好ましく、5〜8重量%とするのがより好ましい。
【0043】
繊維基材としては、アラミド繊維,セルロース繊維,ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維,アクリル繊維等の摩擦材に通常使用される有機繊維や、銅繊維,青銅繊維,真鍮繊維,アルミニウム繊維,亜鉛繊維等の摩擦材に通常使用される金属繊維が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
有機繊維の含有量は、摩擦材組成物全量に対して1〜7重量%とするのが好ましく、2〜4重量%とするのがより好ましい。
【0045】
金属繊維の含有量は、摩擦材組成物全量に対して7重量%未満とするのが好ましく、4重量%未満とするのがより好ましい。銅成分を含有する金属繊維を使用する場合は、銅成分の総量が摩擦材組成物全量に対して5重量%未満、好ましくは0.5重量%未満となるようにする。なお、環境負荷低減の観点から摩擦材組成物には銅成分を含まないことがより好ましい。
【0046】
チタン酸塩としては、板状の形状や、複数の凸部を有する不定形の形状をしたものが好ましく、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸カリウムマグネシウム等の摩擦材に通常使用されるチタン酸塩が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。チタン酸塩の含有量は摩擦材組成物全量に対して7〜35重量%とするのが好ましく、17〜25重量%とするのがより好ましい。
【0047】
潤滑材としては、上記の硫化第一鉄粒子、薄片状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子の凝集物の他に、二硫化モリブデン,硫化亜鉛,硫化スズ,複合金属硫化物等の金属硫化物系潤滑材や、上記薄片状黒鉛粒子以外の黒鉛,石油コークス,活性炭,酸化ポリアクリロニトリル繊維粉砕粉等の炭素質系潤滑材等の摩擦材に通常使用される潤滑材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。潤滑材の含有量は、上記の硫化第一鉄、薄片状黒鉛粒子、薄片状黒鉛粒子と合わせて摩擦材組成物全量に対して2〜21重量%とするのが好ましく、10〜16重量%とするのがより好ましい。
【0048】
無機摩擦調整材として、マイカ,バーミキュライト,四三酸化鉄,ケイ酸カルシウム水和物,ガラスビーズ,酸化マグネシウム,酸化ジルコニウム,ケイ酸ジルコニウム,アルミナ,炭化ケイ素等の粒子状無機摩擦調整材や、ウォラストナイト,セピオライト,バサルト繊維,ガラス繊維,生体溶解性人造鉱物繊維,ロックウール等の繊維状無機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機摩擦調整材の含有量は、上記のマイカと合わせて摩擦材組成物全量に対して15〜50重量%とするのが好ましく、20〜45重量%とするのがより好ましい。
【0049】
有機摩擦調整材として、カシューダスト,タイヤトレッドゴムの粉砕粉や、ニトリルゴム,アクリルゴム,シリコーンゴム,ブチルゴム等の加硫ゴム粉末又は未加硫ゴム粉末等の摩擦材に通常使用される有機摩擦調整材が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機摩擦調整材の含有量は、摩擦材組成物全量に対して3〜8重量%とするのが好ましく、4〜7重量%とするのがより好ましい。
【0050】
pH調整材として水酸化カルシウム等の通常摩擦材に使用されるpH調整材を使用することができる。pH調整材は、摩擦材組成物全量に対して2〜6重量%とするのが好ましく、2〜3重量%とするのがより好ましい。
【0051】
摩擦材組成物の残部としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の充填材を使用する。
【0052】
本発明のディスクブレーキに使用される摩擦材は、所定量配合した摩擦材組成物を、混合機を用いて均一に混合する混合工程、得られた摩擦材原料混合物と、別途、予め洗浄、表面処理し、接着材を塗布したバックプレートとを重ねて熱成形型に投入し、加熱加圧して成型する加熱加圧成型工程、得られた成型品を加熱して結合材の硬化反応を完了させる熱処理工程、粉体塗料を塗装する静電粉体塗装工程、塗料を焼き付ける塗装焼き付け工程、回転砥石により摩擦面を形成する研磨工程を経て製造される。なお、加熱加圧成型工程の後、塗装工程、塗料焼き付けを兼ねた熱処理工程、研磨工程の順で製造する場合もある。
【0053】
必要に応じて、加熱加圧成型工程の前に、摩擦材原料混合物を造粒する造粒工程、摩擦材原料混合物を混練する混練工程、摩擦材原料混合物又は造粒工程で得られた造粒物、混練工程で得られた混練物を予備成型型に投入し、予備成型物を成型する予備成型工程が実施され、加熱加圧成型工程の後にスコーチ工程が実施される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0055】
[実施例1〜15・比較例1〜4の摩擦材の製造方法]
表1、表2及び表3に示す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーにて5分間混合し、成型金型内で30MPaにて10秒間加圧して予備成型をした。この予備成型物を、予め洗浄、表面処理、接着材を塗布した鋼鉄製のバックプレート上に重ね、熱成型型内で成型温度150℃、成型圧力40MPaの条件下で10分間成型した後、200℃で5時間熱処理(後硬化)を行い、研磨して摩擦面を形成し、乗用車用ディスクブレーキパッドを作製した(実施例1〜15、比較例1〜4)。
【0056】
得られた摩擦材において、高速高負荷時のブレーキの効き、耐摩耗性を評価した。評価結果を表1、表2及び3に、評価基準を表4に示す。
なお、実施例番号1、4、7、9、10、12〜14は、参考例として示すものである。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、ディスクブレーキパッドに使用される、NAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、高速高負荷時のブレーキの効き、耐摩耗性を確保できる摩擦材を得ることができ、きわめて実用的価値の高いものである。