(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被写体が位置決めされた位置決め時に前記検知された前記接触点の位置と、前記撮影要求時に前記検知された前記接触点の位置とを比較可能に表示する表示部をさらに有すること
を特徴とする請求項3に記載の撮影装置。
さらに、前記撮影禁止を解除するための指示を受けて、前記制御手段が、前記位置決め時における前記接触点の位置のみを前記表示部に表示させ、前記撮影装置を前記撮影禁止の状態から前記撮影許可の状態に制御する工程をさらに有すること、
を特徴とする請求項8に記載の撮影方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
位置決めされた被写体が撮影要求時までの間にずれるときがある。ずれ量が少ないとき、撮影ミスとならないため、撮影を続行すべきであるが、ずれ量が多いとき、撮影ミスとなるため、撮影を中止すべきである。
【0013】
そのためには、被写体が位置決めされた位置決め時から撮影要求時までの時間経過の中において、少なくとも2つの時点で被写体の位置を検出し、検出された被検体の位置に基づいてずれ量を求め、かつ、ずれ量に対し許容範囲を設け、検出されたずれ量が許容範囲内なら撮影を続行し、ずれ量が許容範囲外なら撮影を中止すればよい。なお、ずれ量の許容範囲は、ずれ量の種類、ずれ量を検出するための手段の種類、被写体の種類に応じて設ければよい。
【0014】
また、ずれ量の種類によって、被写体の位置を検出する時点が定まる。位置的なずれ量として例えば、X線検出器に対する被写体の位置ずれを求めるとき、被写体の位置を検出する時点は、位置決め時と撮影要求時となる。このように、位置決め時と撮影要求時とで、被写体の位置を検出し、検出した被写体の位置からずれ量を求め、求めたずれ量に基づいて、撮影を続行するかどうかを判断する構成については、以下の第1実施形態において説明する。
【0015】
これに対し、時間的なずれ量として例えば、撮影要求時から実際に撮影する時までの所定時間におけるX線検出器に対する被写体の位置ずれから単位時間当たりの位置ずれを求めるとき、被写体の位置を検出する時点は、撮影要求時とその時から所定時間経過した時となる。このように、撮影要求時と所定時間経過時とで、被写体の位置を検出し、検出した被写体の位置からずれ量を求め、求めたずれ量に基づいて、撮影を続行するかどうかを判断する構成については、以下の第2実施形態において説明する。
【0016】
<第1実施形態>
撮影装置の第1実施形態について各図を参照して説明する。
先ず、撮影装置の基本的な構成について
図1を参照して簡単に説明する。
図1は、撮影装置の構成ブロック図である。平面上において、互いに直交する一方の方向をX方向といい、他方の方向をY方向という場合がある。
【0017】
図1に示すように、撮影装置1は、X線源2、X線検出器3、タッチパネル4、および、コンソール(図示せず)を有する。X線源2、X線検出器3、および、タッチパネル4は、撮影室に設けられる。なお、撮影室およびコンソール(操作室)の両方に操作部7が設けられる。
【0018】
コンソールは、操作室に設けられる。コンソールは、位置検知部5、表示部6、操作部7、画像処理部8、記憶部9、および、制御手段10を有する。制御手段10は、ずれ量算出部11、判断部12、許容範囲記憶部13、および、許可/禁止制御部14を有する。
【0019】
(X線源2、X線検出器3)
X線源2は、支持台(図示せず)に配置される。X線源2は、許可/禁止制御部14により撮影指示の信号が出力されたことを受けて、X線を照射する。なお、操作部7による操作で撮影要求を受けても、ずれ量が多い(第1の許容範囲外)と判断部12により判断されたとき、撮影指示の信号が出力されず、そのため、X線源2からX線が照射されない。
【0020】
X線検出器3は、支持台に配置される。X線検出器3の前に後述するタッチパネル4を介して被写体が位置決めされる。X線検出器3は、X線源2から照射され、被写体およびタッチパネル4を透過したX線を検出する(投影データの取得)。
【0021】
(画像処理部8)
画像処理部8は、制御手段10の指示を受けて、取得された投影データに基づいて、被写体のX線画像を作成する。表示部制御部(図示せず)は、X線画像を表示部6に表示させる。
【0022】
(位置検知部5)
位置検知部5は、被写体の位置や有無を検出するものであり、種々な型があって、用途に応じて使い分けられる。
【0023】
以下、位置検知部5の種々の例を説明する。
位置検知部5が被写体の位置や有無を検出する方式には、接触式と非接触式とがある。接触式には、例えば、静電容量方式と、感圧方式と、メカニカルスイッチ方式とがある。
【0024】
静電容量方式は、一例としてタッチパネルを用い、タッチパネルと被写体によって形成されるコンデンサがX方向およびY方向に配列され、コンデンサの静電容量からギャップ(変位)を測定する方式である。測定されたギャップから、タッチパネルが被写体により接触されたところの接触場所がわかる。また、その接触場所を、接触点のXY座標として取得することが可能となる。なお、接触点を「ドット」という場合がある。
【0025】
感圧方式は、圧電素子を用い、圧電素子がX方向およびY方向マトリックス状に配列され、圧電素子が圧力を受けるとその表面に電荷が発生する(圧電効果)。発生した電荷に基づいて、圧力を受けるところの点(接触点)のXY座標を取得することが可能となる。
【0026】
メカニカルスイッチ方式は、スイッチと接点とを有し、例えば、被写体によりスイッチが押されると、接点がオンし、スイッチが押されないと、接点がオフする近接スイッチがある。
【0027】
非接触式には、例えば、超音波検知方式と、赤外線検知方式と、磁界検知方式とがある。
【0028】
超音波検知方式は、送波器により超音波を被写体に向け発信し、その反射波を受波器で受信することにより、被写体の有無や被写体までの距離を検出する方式である。
【0029】
赤外線検知方式は、赤外線センサを有し、赤外領域の光(赤外線)を受光し電気信号に変換して、必要な情報を取り出すことで、被写体の温度を測定できる方式である。
【0030】
磁界検知方式は、電磁波を用い、反射波の帰還時間の変化を測定したり、反射波の干渉を測定することで被写体との距離を測る方式である。
【0031】
(タッチパネル4)
図2は、被写体によりタッチパネルが接触されたときの接触点の図、
図3は、X線検出器の前面に配置されたタッチパネルの斜視図である。
【0032】
この第1実施形態では、タッチパネル4を有する位置検知部5について説明する。
【0033】
図2および
図3に示すように、タッチパネル4は、X線検出器3の前面に配置される。タッチパネルはX線を透過可能な材料により構成される。なお、タッチパネル4の全部または一部がX線を吸収するもので構成されるとき、画像処理部8は、取得された投影データに対し、タッチパネル4により吸収されたX線量を加算した上で、X線画像を作成すればよい。
【0034】
図4はタッチパネルの正面図、
図5は、検出された接触点のXY座標を示す図である。
図4に示すように、タッチパネル4は、被写体とでコンデンサを形成するもので、コンデンサがX方向およびY方向にマトリックス状に配列され、被写体との間の隙間(ギャップ)に応じて、静電容量が変化するように構成される。この静電容量の変化に基づき、位置検知部5は、被写体によりタッチパネル4が接触されたところの点(接触点)のXY座標を検出(取得)するように構成される。検出された接触点のXY座標を
図5に示す。
【0035】
図6はX線検出器の前に位置決めされる被写体の図、
図7は検出された接触点のXY座標を示す図である。
図6に示すように、被写体がX線検出器3の前に立たされ、位置決めされる。位置決めされた被検体によりタッチパネル4が接触される。被検体によりタッチパネル4が接触された接触点のXY座標を
図7に示す。
【0036】
以下、位置決め時および撮影要求時にそれぞれ取得された接触点のXY座標に基づいて、ずれ量を求める構成について説明する。第1実施形態において、「ずれ量」とは、位置的なずれ量をいい“δ”で表される。
【0037】
(スイッチSW1〜SW4、表示制御部、許容範囲記憶部13、制御手段10)
スイッチSW1〜SW4には半導体スイッチが用いられる。なお、スイッチSW1〜SW4には、機械リレーを含む機械的なスイッチが用いられてもよい。
【0038】
表示制御部(図示せず)は、画像処理部により作成された被写体のX線画像を表示部6表示させ、接触点のXY座標を表示させ、撮影に関する情報を表示部6に表示させる。表示部6は、「報知手段」の一例である。
【0039】
許容範囲記憶部13は、判断部12によりずれ量δと比較される第1の許容範囲を記憶する。
【0040】
制御手段10は、被写体が位置決めされた位置決め時から撮影要求時までの時間経過の中において、各時点で、スイッチSW1〜SW4、記憶部9、ずれ量算出部11、判断部12、許容範囲記憶部13、および、許可/禁止制御部14を制御するように構成される。
【0041】
制御手段10は、操作部7による位置決め時における接触点の取得要求、および、撮影要求を受けて、接触点のXY座標を表示部6、記憶部9、および、ずれ量算出部11に出力するようにスイッチSW1〜SW4を制御する。なお、操作部7による撮影要求を許可/禁止制御部14が受けただけでは、許可/禁止制御部14から撮影部(X線源2を含む)に撮影指示の信号が出力されない。さらに、判断部12(後述する)によりずれ量δが第1の許容範囲内であるとの判断結果を許可/禁止制御部14が受けたとき、始めて、撮影指示の信号が出力され、それにより、X線が照射される。
【0042】
図8は位置決めされた被写体の図、
図9は、位置決め時における接触点のXY座標を示す図、
図10は撮影要求時における被写体の図、
図11は、撮影要求時における接触点のXY座標を示す図である。
図8に、位置決めされた被写体の一例として、開いたときの手を示し、
図10に、撮影要求時における被写体の一例として、閉じたときの手を示す。なお、
図8および
図10は、位置決めされた被写体が撮影要求時までの間にずれたときのずれ量を、説明をわかりやすくするために、あえて大きくしたものである。なお、
図9および
図11に示される接触点のXY座標は、表示部6に表示されるXY座標でもある。
【0043】
図12は、制御手段10によるスイッチSW1〜SW4の制御がどのように進行するかを示すタイミングチャート、
図13は、「撮影中止」の情報が表示された表示部の図、
図14は、同時表示(比較表示)された位置決め時の接触点のXY座標、および、撮影要求時の接触点のXY座標の図である。
図12に、位置決め時を“T0”で示し、撮影要求時を“T1”で示し、撮影要求時から所定時間経過した時を“T3”で示し、実際に撮影する時を“T5”で示す。
【0044】
位置検知部5は、スイッチSW1を介して表示部6に接続される。制御手段10は、スイッチSW1を常時オン、撮影要求時T1以降にオフするように制御する。それにより、表示制御部(図示せず)は、位置きめ時T0から撮影要求時T1まで、リアルタイムで取得される接触点のXY座標を表示部6に表示させる。リアルタイムで表示される接触点は「白丸」で示される。
【0045】
さらに、位置検知部5は、スイッチSW2を介して記憶部9に接続される。制御手段10は、スイッチSW2を常時オフ、位置決め時T0にオンするように制御する。それにより、位置決め時T0における接触点のXY座標が記憶部9に記憶される。
【0046】
さらに、位置検知部5は、スイッチSW3を介してずれ量算出部11に接続される。制御手段10は、スイッチSW3を常時オフ、撮影要求時T1にオンするように制御する。それにより、撮影要求時T1における接触点のXY座標が記憶部9に記憶される。
【0047】
さらに記憶部9はスイッチSW4を介して表示部6に接続される。制御手段10は、スイッチSW4を常時オフ、位置決め時T0および撮影要求時T1にオンするように制御する。表示制御部は、位置決め時T0および撮影要求時T1における接触点のXY座標を表示部6に表示させる。それにより、位置決め時T0および撮影要求時T1における接触点のXY座標が同時表示(比較表示)される。
【0048】
さらに、制御手段10は、ずれ量が第1の許容範囲外であるとの判断結果を受けて、判断結果を表示部6に出力する。表示制御部は、「位置決めに問題があるため、撮影中止しました」(以下、「撮影中止」という)の情報を表示部6に表示させる(
図13参照)。この「撮影中止」の情報を表示させるときのタイミングを
図12に“T2”で示す。タイミングT2は、撮影要求時T1から実際に撮影する時T5までの所定時間(T1〜T3)内である。
【0049】
位置決め時T0において表示部6に表示される接触点のXY座標を
図9に「黒丸」で示す。撮影要求時T1において表示部6に表示される接触点のXY座標を
図11に「白丸」で示す。さらに、同時表示(比較表示)される接触点のXY座標を
図14に示す。
【0050】
(操作部7)
操作部7は、撮影室および操作室(コンソール)の両方に設けられる(前述する)。それにより、両方において、操作者は、操作部7を用いて、位置決め時における接触点の取得要求および撮影要求を出力することが可能となる。
【0051】
(記憶部9)
記憶部9は、位置決め時および撮影要求時において取得された接触点のXY座標を記憶する。
【0052】
(ずれ量算出部11、重心算出部)
ここでは、重心算出部の機能をずれ量算出部11に設けたものとして説明するが、ずれ量算出部11とは別に設けてもよいことはいうまでもない。ずれ量算出部11は、位置決めされた被写体が撮影要求時までの間にずれるときのずれ量を求める。
【0053】
ここで、被写体の位置が静電容量方式の位置検知部5により検出されるものとし、検出された被写体の位置として、被写体によりタッチパネルが接触されたところの接触点のXY座標とする。
【0054】
ずれ量算出部11は、被写体が位置決め時から撮影要求時までの時間経過の中で、異なる2つの時点(ここでは、位置決め時および撮影要求時)の接触点のXY座標の変化の大きさ(ずれ量)を求める。
【0055】
ずれ量算出部11がずれ量δを求める方法の一例として、以下(1)〜(4)の方法がある。
【0056】
(1)の方法
接触点のXY座標が位置決め時と撮影要求時とで変化するとき、変化した接触点の数vをずれ量δとして求める(δ=v)。
【0057】
なお、撮影要求時における接触点の数がなく、または、極めて少ないとき、被写体がタッチパネル4から離れた非接触の状態にあるといえる。そこで、第1の許容範囲を設け、撮影要求時における接触点の数が第1の許容範囲外であるとき、撮影中止をするとともに、「撮影中止」を報知するようにしてもよい。
【0058】
(2)の方法
位置決め時における接触点のXY座標と、撮影要求時における接触点のXY座標との類似度を求める。求められた値をずれ量δとする。
【0059】
このとき、ずれ量δを、次の式で求めることができる。
【0061】
ここで、撮影要求時における接触点のXY座標において、位置決め時における接触点のXY座標と一致する数をQとし、一致しない数をRとする。このとき、一致率であるずれ量δの第1の許容範囲をパーセント(例えば、80%以上)で設定すればよい。
【0062】
なお、これに対し、不一致率(=R/Q+R)をずれ量δとしてもよい。このとき、第1の許容範囲を、20%未満に設定すればよい。
【0063】
(3)の方法
XY座標上に複数の接触点が分布するとき、接触点が分布する領域の重心を、被写体によりタッチパネル4が接触されたところの接触場所の一例としてみることができる。そこで、重心算出部により、位置決め時における分布する領域の重心のXY座標と撮影要求時における分布する領域の重心のXY座標とを求め、求められた分布領域の重心のXY座標の変化量を、ずれ量δとして求める。
【0064】
次に、(3)の方法の一例について説明する。なお、XY座標上に複数nの接触点が分布するものとする。ここで、一つの接触点が一定の面積sを有すると考えれば、分布領域の重心のXY座標は、平面図形の図心を求める方法と同じ方法により求めることができる。
【0065】
分布領域の重心のX座標x
g、Y座標y
gを次の式で求めることができる。
【0067】
【数3】
ここで、x
iを接触点のX座標とし、y
iを接触点のY座標とする。
【0068】
重心のXY座標のずれ量δを、次の式により求める。
【0069】
【数4】
ここで、x
g1を撮影要求時のX座標、x
g0を位置決め時のx座標、y
g1を撮影要求時のY座標、y
g0を位置決め時のY座標とする。
【0070】
(3)の方法では、単に接触点ではなく、接触点が分布する領域(接触面)として、被写体を検出することが可能となる。
【0071】
(4)の方法
XY座標上に複数の接触点が分布するとき、位置決め時における分布する領域の外形と撮影要求時における分布する領域の外形とを求め、位置決め時と撮影要求時とで、外形により囲まれた面積の変化量を求める。この方法では、求められた変化量がずれ量δとなる。
【0072】
次に、(4)の方法の一例について説明する。ここでは、複数の接触点が分布されるXY座標における原点を、例えば、上述の方法(3)により求められた分布領域の重心とする。
【0073】
位置決め時における接触点および撮影要求時における接触点に基づき、次の工程をそれぞれ行う。
【0074】
(1)まず、原点を通り、XY座標のX軸に対する角度が20°、40°、60°、…340°、360°のように20°の整数倍をなす直線を引き、互いに隣接する直線を一つの範囲とすることにより、XY座標を18分割にする。
【0075】
(2)次に、分割された範囲に含まれる複数mの接触点P
jに番号を付し(1、2、…、j、…m)、それら接触点P
jの中で、原点から最も離れたところの接触点を求める。
例えば、範囲0°〜20°において、5個の接触点が含まれ、原点からのぞれぞれの距離が、5、6、9、5、3であるとき、5個の接触点のうち、最大の距離は、“9”である。したがって、最大の距離“9”を有する接触点を求めることができる。
【0076】
(3)同様にして、各範囲において、最大距離を有する接触点を求める。
【0077】
(4)次に、求められた接触点を、領域の外形上の点とし、直線(または所定の曲線であってもよい)により繋ぐことにより、領域の外形を求める。
【0078】
(5)次に、外形により囲まれた領域の面積を求める。
なお、外形により囲まれた領域は、三角形の領域の集合体であるといえるため、三角形の領域の面積をそれぞれ求め、その面積を合計することで、外形により囲まれた領域の面積を求めることができる。
【0079】
三角形の領域の面積Sは、次の式で求めることができる。
【0080】
【数5】
ここで、三角形の頂点のXY座標を、(a,b)、(c,d)、(e,f)とする。
【0081】
このような手順により、位置決め時における面積と、撮影要求時における面積との変化量を、ずれ量δとして求める。
【0083】
ここで、位置決め時における外形により囲まれた面積S0、撮影要求時における外形により囲まれた面積S1とする。
【0084】
(判断部12)
判断部12は、ずれ量δと許容範囲記憶部13に記憶された第1の許容範囲とを比較し、ずれ量δが第1の許容範囲内であるとき、第1の許容範囲内の信号を出力し、ずれ量δが第1の許容範囲外であるとき、第1の許容範囲外の信号を出力する。
【0085】
接触点のXY座標を検出する場合、ある程度の領域が検出できなければX線検出器3と被写体とが接触していないと判断する。第1の許容範囲(パラメータ)として、被写体の部位毎の最小検出領域を設定する。
【0086】
表示制御部は、ずれ量δが第1の許容範囲外であるとの信号を受けて、「撮影中止」の情報を表示部6に表示させる。
【0087】
(許可/禁止制御部14)
許可/禁止制御部14は、ずれ量δが第1の許容範囲内であるとの信号を受けて、撮影装置1を撮影許可状態に維持する。すなわち、操作部7による撮影要求を許可/禁止制御部14が受けただけでは、許可/禁止制御部14から撮影部(X線源2を含む)に撮影指示の信号が出力されない。さらに、判断部12によりずれ量δが第1の許容範囲内であるとの判断結果を許可/禁止制御部14が受けたとき、撮影許可状態が維持されて、撮影指示の信号がX線源2に出力され、それにより、X線が照射される。一方、許可/禁止制御部14は、ずれ量δが第1の許容範囲外であるとの信号を受けて、撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。それにより、撮影が禁止されるので、撮影ミスを防止することが可能となる。また、このとき、表示制御部は、「撮影中止」の情報を表示部6に表示させるので、二重に撮影ミスを防止することができる。
【0088】
〔動作〕
以上に、第1実施形態に係る撮影装置1の構成を簡単に説明した。
次に、撮影装置1の一連の動作について
図15を参照して説明する。
図15は、撮影装置により撮影するときの一連の動作を示すフローチャートである。
【0089】
なお、ずれ量算出部11によりずれ量を求める方法として、位置決め時における接触点のXY座標と、撮影要求時における接触点のXY座標との類似度を、ずれ量δとして求める上記(2)の方法が用いられるものとする。
【0090】
(撮影の前段階)
検査開始時、選択した検査名に対応した位置検知部5の情報(ルーチン検査で注意すべき情報)が表示部6に表示される。操作者は検査情報を装置に登録する。その際、検査部位などの付帯情報も登録される。なお、以下、検査目的を胸部X線撮影として説明する。
【0091】
(S1:被写体の位置決め)
操作者は被写体(被検者)を撮影室へ誘導し検査目的に沿った位置決めの指示を行う。被写体をX線検出器3の前に立たせて、胸部をタッチパネル4に接触させる。
【0092】
(S2:接触点の座標を取得)
位置決めが確定した際、撮影室側の操作部7を用いて、操作者が位置決め確定操作を行う。操作者の被曝を避けるため、操作者は被検者より離れ撮影室にて撮影を行う。
【0093】
(S3:位置決め時の接触点の座標を記憶、表示)
制御手段10は、操作部7による操作を受けて、スイッチSW1をオンするように制御する。それにより、位置決め時における接触点のXY座標が記憶部9に記憶される。さらに、制御手段10は、操作部7による操作を受けて、スイッチSW4をオンするように制御する。それにより、表示制御部は、位置決め時における接触点のXY座標を表示部6に表示させる。
【0094】
(S4:リアルタイムで接触点の座標を表示)
制御手段10は、スイッチSW1を常時オンするように制御する。それにより、表示制御部は、位置決め時以降、リアルタイムで取得される接触点のXY座標を表示部6に表示させる。
【0095】
(S5:撮影要求の有無を判断)
操作者は撮影室側の操作部7を用いて撮影要求の操作を行う。制御手段10は、操作部7による操作を受けて、操作要求の有無を判断する。
【0096】
(S6:撮影要求時の接触点の座標を記憶、表示)
制御手段10は、操作部7による撮影要求の操作を受けて、スイッチSW3をオンするように制御する。それにより、撮影要求時における接触点のXY座標が記憶部9に記憶される。さらに、制御手段10は、操作部7による撮影要求の操作を受けて、スイッチSW4をオンするように制御する。表示制御部は、撮影要求時における接触点のXY座標を表示部6に表示させる。
【0097】
(S7:ずれ量の算出)
ずれ量算出部11は、位置決め時における接触点のXY座標と、撮影要求時における接触点のXY座標との類似度を、ずれ量として求める。なお、類似度は、前述したように、撮影要求時における接触点のXY座標において、位置決め時における接触点のXY座標と一致する数(一致率)である。
【0098】
(S8:ずれ量と第1の許容範囲との比較)
判断部12は、ずれ量が第1の許容範囲内(80%以上)であるかどうかを判断し、判断結果を表示部6および許可/禁止制御部14に出力する。
【0099】
(S9:撮影許可状態を維持)
ずれ量が第1の許容範囲内であるとの判断されたとき(S8:Yes)、許可/禁止制御部14は、撮影装置1を撮影許可状態に維持する。
【0100】
(S10:撮影禁止状態に制御)
ずれ量が第1の許容範囲外であるとの判断されたとき(S8:No)、許可/禁止制御部14は、撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。撮影禁止状態に制御することにより、撮影装置1が撮影動作を停止する。
【0101】
さらに、表示制御部は、ずれ量が第1の許容範囲を超えたことを表示部6に表示させる。それにより、撮影動作が停止されたことを操作者へ報知する。さらに、位置決め時および撮影要求時における接触点のXY座標が表示部6に表示されるため、どこのXY座標において、位置ズレが発生したか判別できる。
【0102】
(S11:撮影禁止の解除を判断)
次に、制御手段10は、操作部7による操作を受けて、撮影禁止の解除が指示されたかどうかを判断する。
【0103】
(S12:撮影許可状態に制御)
撮影禁止の解除が指示されたと判断されたとき(S11:Yes)、制御手段10は、撮影装置1を撮影禁止状態から撮影可能状態に制御する。操作者は、そのまま撮影を継続してもよく、再度位置決め指示を行うことで撮影を継続してもよい。
【0104】
なお、撮影禁止の解除が指示されないと判断されたとき(S11:Yes)、被写体の位置決めを行うステップS1に戻る。
【0105】
上記第1実施形態では、ずれ量δが第1の許容範囲外であるとき、(1)表示制御部が「撮影中止」の情報を表示部6に表示させると共に、(2)許可/禁止制御部14が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する構成を示したが、(1)または(2)のいずれか一方を行うように構成してもよい。一方を行うだけでも、撮影ミスを防止することが可能である。以下の各種実施形態においても同様である。
【0106】
<第2実施形態>
次に、撮影装置1の第2実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0107】
位置的なずれ量δが第1の許容範囲内であっても、撮影要求時から実際に撮影する時までの所定時間内における単位時間当たりのずれ量(時間的なずれ量)が多ければ(第2の許容範囲外)であれば、撮影ミスの要因になるため、撮影を中止すべきである。
【0108】
第1実施形態では、位置決め時における接触点のXY座標を取得し、さらに、撮影要求時における接触点のXY座標を取得し、位置決め時における接触点のXY座標と撮影要求時における接触点のXY座標とにより、ずれ量算出部11がずれ量δとして求め、ずれ量δが第1の許容範囲内であるかどうかの判断結果に基づいて撮影装置1および表示部6を制御する構成を示した。これに対し第2実施形態では、さらに、撮影要求時から実際に撮影する時までの所定時間経過した時における接触点のXY座標を取得し、取得されたXY座標と先の撮影要求時における接触点のXY座標とにより、ずれ量算出部11が所定時間内における単位時間当たりのずれ量を求め、単位時間当たりのずれ量が第2の許容範囲内であるかどうかの判断結果に基づいて撮影装置1および表示部6を制御するように構成される。
【0109】
なお、単位時間当たりのずれ量(dδ/dt)は、次の式で表される。
【0111】
ここで、δを撮影要求時におけるXY座標と所定時間経過した時におけるXY座標との差とし、T1を撮影要求時とし(
図12参照)、T3を撮影要求時から所定時間経過した時とする(
図12参照)。
【0112】
なお、第2実施形態において、第1実施形態の制御とは関係なく、単独で、撮影装置1等の制御をするように構成してもよい。
【0113】
(許容範囲記憶部13)
さらに、許容範囲記憶部13は、判断部12によりずれ量と比較される第2の許容範囲を記憶する。
【0114】
(制御手段10、スイッチSW1〜SW4)
次に、制御手段10等について、
図12を参照して説明する。
図12に、位置決め時を“T0”で示し、撮影要求時を“T1”で示し、撮影要求時から所定時間経過した時を“T3”で示し、実際に撮影する時を“T5”で示す。
【0115】
制御手段10は、スイッチSW2を常時オフし、撮影要求時T1にオンするように制御する。さらに、制御手段10は、スイッチSW3を常時オフし、撮影要求時T1から所定時間経過した時T3にオンするように制御する。制御手段10は、スイッチSW4を常時オフし、撮影要求時T1およびその時から単位時間(1秒)経過した時にそれぞれオンするように制御する。なお、制御手段10がスイッチSW1を常時オンし、撮影要求時T1以降オフするように制御する。
【0116】
制御手段10は、スイッチSW2をオンし、撮影要求時T1における接触点のXY座標を記憶部9に記憶させる。制御手段10は、記憶された撮影要求時T1における接触点のXY座標をずれ量算出部11に出力させる。制御手段10は、スイッチSW3をオンし、撮影要求時T1から所定時間経過した時T3の接触点のXY座標をずれ量算出部11に出力させる。
【0117】
それにより、ずれ量算出部11は、撮影要求時T1における接触点のXY座標と所定時間経過した時T3の接触点のXY座標とに基づき、単位時間当たりのずれ量を求める。
単位時間当たりのずれ量を求める方法は、例えば、撮影要求時T1とその時から所定時間経過した時T3とで、分布領域の重心のXY座標の変化量を、ずれ量δとして求める前述した(3)の方法による。
【0118】
判断部12は、ずれ量算出部11により求められた単位時間当たりのずれ量が第2の許容範囲内であるかどうかを判断し、そのずれ量が第2の許容範囲外であるとの判断結果を表示部6および許可/禁止制御部14に出力する。そのずれ量が第2の許容範囲外であるとの判断結果を受けて、表示制御部は、「被写体が動いたため、撮影中止します」の情報を表示部6に表示させる。この「撮影中止」の情報を表示させるときのタイミングを
図12に“T4”で示す。タイミングT4は、所定時間経過した時T3から実際に撮影する時T5までの間である。その判断結果を受けて、許可/禁止制御部14が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。それにより、被写体の撮影が中止される。そのため、被写体の体動によるアーチファクトを防ぐことができる。なお、前述の特許文献1では、被写体が位置検知部の接触面(検出面)から離れたかどうかを検出するのみであるが、本実施形態では、接触面から離れたかどうかを検出するのみでなく、接触面に対する被写体の単位時間当たりの位置の変化を検出するように構成したので、接触面に対する被写体の急な変化を検出することができる。それため、被写体の静止状態を検出可能という効果がある。
【0119】
ずれ量が第2の許容範囲内であるとの判断結果を受けて、許可/禁止制御部14は撮影装置1を撮影許可状態に維持する。それにより、X線源2からX線が照射され、被写体が撮影される。
【0120】
<第3実施形態>
次に、撮影装置1の第3実施形態について
図16、
図17、および、
図18を参照して説明する。
図16はX線検出器の前に立たされた被検体の温度情報を示す図、
図17は位置決めされた被検体の温度情報を示す図、
図18は撮影要求時における被検体の温度情報を示す図である。
【0121】
なお、第3実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0122】
第1実施形態では、被写体の位置を検知する位置検知部5として、タッチパネル4を有し、被写体によりタッチパネル4が接触されたところの接触点のXY座標を検出する静電容量方式のものを示したが、位置検知部5としては、これに限らない。例えば、赤外線を用いて、非接触で、被写体の温度を測定できる赤外線検知方式の位置検知部5であってもよい。このような位置検知部5は、温度分布センサと称される。
【0123】
赤外線検知方式においても、位置検知部5は、取得された被写体の温度情報のXY座標を検出(取得)する。被写体の温度情報をXY座標上に分布させたものを
図16に示す。
【0124】
ずれ量算出部11は、温度情報のXY座標から各時点(位置決め時および撮影要求時)における分布領域の面積を求める。位置決めされた被検体の温度情報を
図17に示す。撮影要求時における被検体の温度情報を
図18に示す。さらに、ずれ量算出部11は、撮影要求時における面積に対し、位置決め時における面積との一致率を、ずれ量として求める。判断部12は、ずれ量が許容範囲内であるかどうかを判断する。60%の許容範囲を
図19に示す。制御手段10は、判断部12による判断結果を、表示部6および許可/禁止制御部14に出力させる。
【0125】
<第4実施形態>
次に、撮影装置1の第4実施形態について、
図19を参照して説明する。
図19は、被写体の種類毎、および位置検知部の種類毎に設定される、許容範囲(パラメータ)の登録画面を示す図である。なお、第4実施形態において、単に「許容範囲」というときは、第1の許容範囲および/または第2の許容範囲を意味する。
【0126】
図19に示すように、被写体の動きを判断するため、被写体の各部位に対応する許容範囲(パラメータ)が登録される。許容範囲の登録は、撮影対象である被検体の部位毎に、許容範囲を被写体の部位と対応づけて、許容範囲記憶部13に記憶することにより行われる。被写体の部位を撮影するとき、それに対応づけられる許容範囲の全てを使用してもよく、許容範囲の一部のみ使用してもよい。
【0127】
前記実施形態では、一つの位置検知部5により被写体の位置を検出し、検出された被写体の位置からずれ量を求め、求められたずれ量と許容範囲とを比較するように構成されるものを示した。これに対し、第4実施形態では、二以上の位置検知部5を組み合わせ、各位置検知部5により被写体の各部の位置を検出し、各部のずれ量を求め、各部のずれ量において、ずれ量とその許容範囲とを比較するように構成される。各部のずれ量における比較結果を総合的に判断し、総合的な判断結果から撮影装置1を制御する。
【0128】
図19は、被写体の種類毎、およびX線検出器3の種類毎に設定される、ずれ量の許容範囲(パラメータ)の登録画面を示す図である。ずれ量の許容範囲は、前述する許容範囲記憶部13に記憶される。
【0129】
図19に示すように、位置検知部の種類として、アゴ載せ台にメカニカルスイッチが配置されたアゴ載せ台センサ、ワイヤレスでデータの送受信可能に構成されるテーブル置き型のX線検出器3、ワイヤレスでデータの送受信可能に構成される床置き型のX線検出器3、ワイヤレスでデータの送受信可能に構成される手持ち型のX線検出器3がある。
【0130】
被写体が胸部(chest)であるとき、第1実施形態と同じ、タッチパネル4を有する位置検知部5と、アゴ載せ台にメカニカルスイッチが配置されたアゴ載せ台センサとが組み合わされる。なお、メカニカルスイッチがオンであることが、ずれ量の許容範囲となる。メカニカルスイッチがオフのとき、X線検出器3と被写体とが接触していないと判断することができる。
【0131】
この構成では、メカニカルスイッチがオフ、または、各検出時点における接触点のXY座標の差から求められるずれ量が許容範囲外の少なくとも一方であるとき、制御手段10が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。
【0132】
さらに、被写体が手(finger)であるとき、テーブル置き型のX線検出器3と、温度分布センサとが組み合わされる。なお、温度分布センサにより検出された所定温度以上を示す領域の面積の一致率60%が許容範囲となる。
【0133】
この構成では、各検出時点における面積の差から求められるずれ量が許容範囲外であるとき、制御手段10が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。
【0134】
さらに、被写体がひざ(knee)であるとき、床置き型のX線検出器3と、位置検知部とが組み合わされる。なお、位置の一致率20%が許容範囲となる。
【0135】
この構成では、各検出時点における位置の差から求められるずれ量が許容範囲外であるとき、制御手段10が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。
【0136】
さらに、被写体がひざであるとき、手持ち型のX線検出器3と、第1実施形態と同じ、タッチパネル4を有する位置検知部5とが組み合わされる。なお、静止状態の継続時間5[sec]が許容範囲となる。例えば、撮影要求から5秒以前に一致率が許容範囲でない状態(許容範囲外)が発生したとき、撮影装置1が撮影禁止状態に制御される。
【0137】
この構成では、各検出時点における接触点のXY座標の差から求められるずれ量が許容範囲外であるとき、制御手段10が撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御する。
【0138】
図19に示されないが、前述した種々の位置検知部5を組み合わせて用いてもよい。種々の位置検知部5により、被写体の様々な部位の位置ずれを検出することにより、位置ずれの検出精度を向上させ、撮影ミスをさらに防止することが可能となる。
【0139】
複数種類の位置検知部5の組み合わせの一例としては、静電容量方式の位置検知部5と、赤外線検知方式の位置検知部5との組み合わせがある。この構成では、静電容量方式の位置検知部5により取得された接触点のXY座標によれば、ずれ量が許容範囲外であっても、赤外線検知方式の位置検知部5により取得された被写体のずれ量がその許容範囲内であれば、撮影装置1を撮影許可状態から撮影禁止状態に制御せず、撮影を可能にすることもできる。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。