(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スプロケットをモータで間欠駆動し、パーフォレーションが穿設されたテープを該パーフォレーションのピッチ以下のピッチで間欠送りさせるテープフィーダによる該テープの送り誤差を計測するテープフィーダ計測装置であって、 前記スプロケットの隣接する歯どうしの間を通過してくる光を受光する受光部と、該受光部との間に前記スプロケットの歯を挟んで該受光部に対面する位置に配置され、前記テープの走行方向に対する横方向から該スプロケットの歯に向けて、該スプロケットの歯に遮られた領域と該スプロケットの隣接する歯どうしの間を通過してきた領域とによる受光パターンを該受光部に生成させるだけの該走行方向の長さを有する平行光光束を照射する発光部とを有するセンサと、
前記センサで得られた、前記モータによる前記スプロケットの間欠駆動中の各停止時の各受光パターンに基づいて、該スプロケット一周分にわたる、前記テープの該各停止時の送り誤差を算出する誤差算出部とを備えたことを特徴とするテープフィーダ計測装置。
前記発光部が前記スプロケットの歯の、前記テープのスプロケットに挿入された部分に対する、該スプロケットの半径方向に隣接した部分に前記平行光を照射するものであることを特徴とする請求項1記載のテープフィーダ計測装置。
前記誤差算出部で算出された前記送り誤差が許容誤差以内であるか否かを判定する精度判定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のテープフィーダ計測装置。
前記誤差算出部で算出された、前記スプロケットの一周にわたる前記テープの前記各停止時の送り誤差に基づいて、前記モータによる該スプロケットの、該各停止時に対応する各停止角度ごとの駆動量の補正値を算出する補正値算出部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載のテープフィーダ計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上掲の特許文献1には、間欠送り誤差を正確に測定する方法として、スプロケットの上方にカメラを配置してそのカメラにより撮像された画像の処理を行なって撮像対象の位置認識を行い、画像処理により認識されたテープの停止位置と基準停止位置との誤差を測定する、と記載されている。しかしながら、この特許文献1には、これ以上の情報は記載されておらず、具体的にどのようにすると実際の停止位置を充分に正確に認識又は測定できるのか明らかではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、テープ送り誤差を正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明のテープフィーダ計測装置は、スプロケットをモータで間欠駆動し、パーフォレーションが穿設されたテープをそのパーフォレーションのピッチ以下のピッチで間欠送りさせるテープフィーダによるテープの送り誤差を計測するテープフィーダ計測装置であって、 スプロケットの隣接する歯どうしの間を通過してくる光を受光する受光部と、受光部との間に前記スプロケットの歯を挟んで受光部に対面する位置に配置され、テープの走行方向に対する横方向からスプロケットの歯に向けて、スプロケットの歯に遮られた領域とスプロケットの隣接する歯どうしの間を通過してきた領域とによる受光パターンを受光部に生成させるだけの走行方向の長さを有す
る平行光
光束を照射する発光部とを有するセンサと、
上記センサで得られた、モータによるスプロケットの間欠駆動中の各停止時の各受光パターンに基づいて、スプロケット一周分にわたる、テープの各停止時の送り誤差を算出する誤差算出部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明のテープフィーダ計測装置は、上記の平行光を利用したセンサを備えたことによりスプロケットの歯の各停止時における走行方向の位置が正確に測定され、この正確に測定された位置に基づいて正確な送り誤差を算出することができる。
【0013】
ここで、本発明のテープフィーダ計測装置において、上記発光部がスプロケットの歯の、テープのスプロケットに挿入された部分に対する、スプロケットの回転軸側に隣接した部分に平行光を照射するものであることが好ましい。
【0014】
テープを高精度に間欠送りさせる観点のみからすると、スプロケットの歯の、テープのパーフォレーションに挿し込まれる部分(テープの走行路)に平行光を照射することが好ましい。
【0015】
しかしながらこの場合、テープを走行させるとテープが邪魔となるためテープの走行なしでの空のスプロケットの状態で測定することになり、テープ走行の負荷がかかった状態と同じ停止位置からずれた位置に停止するおそれがある。
【0016】
これと比べ、スプロケットの歯の、テープのスプロケットに挿入された部分に対するスプロケットの半径方向に隣接した部分に平行光を照射する構成にすると、テープを実際に間欠走行させながらスプロケットの歯の位置を測定することができる。
【0017】
この平行光を照射する部分は、スプロケットの半径方向外側であってもよく、半径方向内側であってもよい。
【0018】
本発明のテープフィーダ計測装置において、上記誤差算出部で算出された送り誤差が許容誤差以内であるか否かを判定する精度判定部をさらに備えることが好ましい。
【0019】
本発明のテープフィーダ計測装置は、この精度判定部を備えて、テープフィーダを選別する装置として利用してもよい。
【0020】
また、本発明のテープフィーダ計測装置において、誤差算出部で算出された、スプロケットの一周にわたるテープの各停止時の送り誤差に基づいて、モータによるスプロケットの、各停止時に対応する各停止角度ごとのモータの駆動量の補正値を算出する補正値算出部をさらに備えることも好ましい態様である。
【0021】
この補正値算出部を備えると、元々の送り精度が低いテープフィーダであっても、算出された補正値を用いてテープを高精度に間欠送りさせることができる。
【0022】
尚、この補正値算出部は、上述の精度判定部と併用して、十分な精度のないテープフィーダのみについて補正値を算出してもよく、あるいは、上述の精度判定部を備えることなく、機械的に補正値を算出することとしてもよい。
【0023】
また、本発明のテープフィーダ計測装置での計測対象のテープフィーダがスプロケットの絶対回転角度を検出するアブソリュートエンコーダを備えたものであって、このテープフィーダ計測装置の補正値算出部が、アブソリュートエンコーダで得られたスプロケットの絶対回転角度に対応づけた補正値を算出するものであることが好ましい。
【0024】
このアブソリュートエンコーダは、前記ロータリエンコーダと同等の精度でスプロケットの回転角度を計測することができなくても、ロータリエンコーダに比べて安価で、取付スペースをそれほど必要としないものであることが好ましい。
【0025】
ここでは、テープフィーダの動作を一旦停止させた場合について考察する。テープフィーダが上記のアブソリュートエンコーダを備えずにスプロケットの初期位置(回転角度ゼロ)のみ検知することができるものであった場合、テープフィーダの動作を再開した後、直ちには高精度な間欠送りは実現できず、スプロケットが初期位置を通過した後に高精度な間欠送りが実現される。したがってスプロケットが初期位置を通過するまでの間のテープ上の電子部品はテープ上からの取り出しに失敗するおそれがある。このため、スプロケットが初期位置を通過することによって高精度な間欠送りが再開するまでテープ上の電子部品をテープ上に残したまま廃棄することになる。
【0026】
これに対し、補正値をアブソリュートエンコーダで得られたスプロケットの絶対回転角度に対応づけておくことにより、テープフィーダが動作を一旦停止して再開したとき、スプロケットの現在の絶対回転角度を知ってその絶対回転角度に対応する補正値を用いて補正することができる。こうすることにより、スプロケットが初期位置を通過するのを待つことなく、直ちに高精度な間欠送りを行なうことができる。
【0027】
尚、アブソリュートエンコーダは、スプロケットの絶対回転角度を検出するものであるが、そのアブソリュートエンコーダがスプロケット自体に備えられていて、スプロケットの絶対回転角度を直接に検出するものに限らない。例えば、モータからギア列を介在させてスプロケットに駆動力が伝達される構成の場合、アブソリュートエンコーダは、直接的にはそのギア列を構成するいずれかのギアの絶対回転角度を検出するものであって、そのギアの絶対回転角度からスプロケットの絶対回転角度に換算されるものであってもよい。
【0028】
また、上記目的を達成する本発明のテープフィーダは、スプロケットをモータで間欠駆動し、パーフォレーションが穿設されたテープをパーフォレーションのピッチ以下のピッチで間欠走行させるテープフィーダであって、テープの、スプロケットに隣接したプロケットの、パーフォレーションに挿し込まれている歯を間に置いた両側に、光を通過又は透過させる窓又は切欠きを有することを特徴とする。
【0029】
このような窓又は切欠き
が形成されたカバー部材を有するテープフィーダであれば、本発明のテープフィーダ計測装置を適用してテープの間欠送りの精度の判定あるいは補正値の算出を行なうことができる。
【0030】
また、上記目的を達成する本発明のテープフィーダ制御方法は、上記の補正値を算出する態様の本発明のテープフィーダ計測装置を用いてテープフィーダの補正値を取得するステップと、
取得した補正値を、又はその補正値により補正された、モータによるスプロケットの各停止角度ごとの補正済駆動量を、テープフィーダに記憶させるステップと、
上記モータに、スプロケットを、上記補正値により補正された補正済駆動量に基づいて駆動させるステップとを有することを特徴とする。
【0031】
本発明のテープフィーダ制御方法によれば、テープフィーダを使ってテープを高精度に間欠送りさせることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の本発明によれば、テープフィーダによるテープの間欠送り誤差が正確に計測される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1は、テープフィーダの概要を示した斜視図である。
【0036】
また、
図2は、
図1に斜視図を示したテープフィーダの側面図である。
【0037】
これら
図1,
図2には、テープフィーダ10に加え、さらに電子部品を吸着する吸着ノズル21が示されている。この吸着ノズル21は、テープフィーダ10自体に備えられている部品ではなく、後述する電子部品実装装置の部品である。
【0038】
また
図3は、テープの一部分を示した平面図である。
【0039】
ここでは先ず、この
図3を参照してテープの構造について説明する。
【0040】
このテープ30には、一例として4mmピッチでパーフォレーション31が形成されている。また、このテープ30には、1mmピッチで電子部品32がそのテープ30に埋め込まれるようにして配置されており、それらの電子部品32を覆うように、
図3にハッチングで示すカバーテープ33が貼り付けられている。
【0041】
このテープ30のパーフォレーション31には、
図1,
図2に示すテープフィーダ10に備えられているスプロケット11の歯が入り込む。モータ12の間欠回転により、その駆動力がギア列13を介してスプロケット11に伝達されてスプロケット11が間欠回転し、これによりテープ30を間欠送りする。
【0042】
ここで、このテープフィーダ10のスプロケット11は、テープ30に穿設されたパーフォレーション31のピッチ(4mm)と同一ピッチの歯111(
図6参照)を有する。テープ30上の電子部品32は、1mmピッチで配列されているため、このスプロケット11は、歯111のピッチ(4mm)の1/4のピッチ(1mm)で間欠駆動され、テープ30を1mmずつ間欠送りさせる。
【0043】
このスプロケット11は、一周に30本の歯111が形成されている。したがって歯111のピッチは、このスプロケット11の回転角度にして12°となる。ここでは、その1/4のピッチで間欠回転を繰り返すため、1回の回転角度は3°となる。
【0044】
図1,
図2に示すように、テープ30はテープリール40に巻回されており、テープフィーダ10に設けられている通路を通り、カバー部材14に案内されてスプロケット11の歯111と係合し、そのスプロケット11の間欠回転により間欠送りされる。そのスプロケット11の歯111と係合する直前の位置でテープ30からカバーテープ33が剥がされ、そのカバーテープ33は、テープリール40側に引き戻される。
【0045】
テープ30からカバーテープ33が剥がされた直後の位置には、吸着ノズル21が移動してきてテープ30の走行が停止するたびにテープ30上の電子部品32が1つずつ吸着され、テープ30から取り出される。このテープ30上から取り出された電子部品32は、図示しない回路基板上に配置される。
【0046】
図4は、吸着ノズルの動作位置(
図4(a))とモータ動作速度(
図4(b))との対応関係を示した図である。
【0047】
また、
図5は、
図4の動作を図解した模式図である。
【0048】
ここでは、吸着ノズルは、ここでの関心のある上下方向の動きのみ示してあり、電子部品を回路基板に配置するための動きは図示を省略している。
【0049】
図5(a)〜(e)は、それぞれ
図4に示すA〜Eの各タイミングに対応している。
【0050】
・タイミングAでは、
図5(a)に示すように吸着ノズル21が下降中であり、かつモータは回転速度を緩めながら動作中である。
【0051】
・タイミングBは、モータが回転を停止した瞬間を示している。吸着ノズル21は未だ下降中である。
【0052】
・タイミングCは、モータは停止中であって吸着ノズルが最下部にて電子部品を吸着しているタイミングである。
【0053】
・タイミングDは、吸着ノズルが部品を吸着したまま、吸着ノズルとテープ上の電子部品との間の干渉を避ける位置まで上昇した瞬間を示している。モータは回転を開始する。
【0054】
・タイミングEは、モータの回転が最大速度に達したタイミングである。吸着ノズル21は未だ上昇を続けている。
【0055】
以上のA〜Eの動作を繰り返すことにより、テープ30上の電子部品32が1つずつ、テープの間欠送りと同期して吸着ノズルにより取り出される。
【0056】
図6は、
図1、
図2に示すテープフィーダの、テープ駆動機構の概要を示した図である。
【0057】
前述の通り、モータ12が回転すると、その回転駆動力がギア列13を介してスプロケット11に伝達される。モータ12は回転と停止を繰り返し、これによりスプロケット11が間欠的に回転する。スプロケット11の歯111はテープ30(
図1参照)のパーフォレーション31に入り込み、スプロケット11が間欠的に回転することによりテープ30が間欠的に送り出される。
【0058】
このモータ12は、制御部15によって、その回転、停止が制御される。この制御部15には補正値が記録された補正テーブル(後述する)を記憶する記憶部151が備えられており、この制御部15は、その記憶部151に記憶された補正テーブルに従ってモータ12の一回ごとの回転量を制御する。これにより、テープ30(
図1,
図2参照)を高精度に一定ピッチで間欠送りさせることができる。
【0059】
本実施形態では、スプロケット11にアブソリュートエンコーダ50が配備されており、このアブソリュートエンコーダ50によりスプロケット11の絶対回転角度が検出される。ただし、このアブソリュートエンコーダ50は、これのみでテープ30を必要な精度を保って一定ピッチで間欠送りさせるまでの分解能はない。
【0060】
図7は、アブソリュートエンコーダの概要を示した図である。
【0061】
このアブソリュートエンコーダ50は、スプロケット11に刻設された凹凸パターン51と、その凹凸パターン51を検出するアブソリュートセンサ52とを有する。
【0062】
凹凸パターン51は、スプロケット11の半径方向に一定ピッチを持つとともに回転方向に符号化された凹凸パターンが刻設されたものであり、半径方向の複数の凹凸パターンの組合せがアブソリュートエンコーダ50の絶対回転角度を表わしている。
【0063】
アブソリュートセンサ52は、凹凸パターン51の半径方向のピッチと同一ピッチで並んだ複数の検出素子521を有し、凹凸パターン51上に破線で示した位置に、その凹凸パターン51に近づけて配置されて、半径方向の凹凸パターンを読み取るセンサである。このアブソリュートセンサ52は光電センサであってもよく、磁気センサであってもよく、凹凸パターンに準じる位置(角度)情報を読み取ることができれば、その検出原理の如何を問うものではない。
【0064】
このアブソリュートセンサ52はテープフィーダ10のフレームに固定されており、スプロケット11の回転によって凹凸パターン51が回転し、これによりアブソリュートセンサ52で検出される凹凸パターンが変化し、スプロケット11の絶対回転角度が検出される。
【0065】
図8は、電子部品実装装置の概要を示した外観斜視図である。
【0066】
この電子部品実装装置60には、図示のようにテープフィーダ10が横に並べられて複数台装着される。これは、回路基板(図示せず)には多数個、多数種類の電子部品が搭載されるため、それらの多数の電子部品それぞれが配置された複数種類のテープを、この電子部品実装装置60に送り込む必要があるからである。
【0067】
この電子部品実装装置60には、矢印W方向に、ガイド部材62に案内されながら回路基板(図示せず)が送り込まれる。この電子部品実装装置60に送り込まれた回路基板には、各テープフィーダ10により送り込まれた各テープ上の電子部品が、この電子部品実装装置60内に備えられている吸着ノズル21(
図1,
図2参照)によりテープ上から取り出されて回路基板上に配置される。電子部品が実装された回路基板は、送り込まれた側とは反対の側から送り出される。
【0068】
この電子部品実装装置60の上部には、何かエラーが発生したときに点灯するランプ63が備えられている。
【0069】
この電子部品実装装置60自体は本発明および本実施形態のテーマではなく、ここでは、電子部品実装装置60についてのこれ以上の説明は省略する。
【0070】
次に、テープフィーダ計測装置の実施形態について説明する。
【0071】
以下に説明するテープフィーダ計測装置は、これまで説明してきたテープフィーダ10を動作させたときのテープの間欠送り誤差を計測し、その送り精度を向上させるための補正値を算出する装置である。ここで算出された補正値は、
図6に示す制御部15内の記憶部151に記憶され、制御部15によるテープの高精度な間欠送り制御に用いられる。
【0072】
図9は、テープフィーダに、本実施形態のテープフィーダ計測装置を構成するセンサを取り付けた状態を示した斜視図である。
【0073】
このセンサ70は、発光部71と受光部72とを有する。発光部71からは、テープ30の走行方向に対する横方向から、スプロケット11の歯に向けて、受光部72に、スプロケットの歯に遮られた領域とスプロケットの隣接する歯どうしの間を通過してきた領域とによる受光パターンを生成させるだけの、走行方向の長さを有するスリット状の平行光73が照射される。
【0074】
また、受光部72では、発光部71から発光された平行光73のうちの、スプロケット11の隣接する歯どうしの間を通過してきた光が受光される。そして、この発光部71では、その受光により、モータ12によるスプロケット11の間欠駆動中の各停止時における、発光部71から発光された平行光73のうちの、スプロケット11の歯に遮られた領域とスプロケット11の隣接する歯どうしの間を通過してきた領域とによる、テープ走行方向の受光パターンが生成される。このセンサ70としては、例えば、いわゆるレーザマイクロメータ等を利用することができる。このセンサ70による受光パターンの計測は、テープ30を間欠送りさせながら行なわれる。
【0075】
図10は、センサの発光部で発光された平行光とスプロケットの歯との位置関係を示した図である。
【0076】
発光部71(
図9参照)からは、スプロケット11の歯111に向けてテープ30の走行方向に対する横方向から平行光73が照射される。テープフィーダ10のカバー部材14(
図1,
図2を合わせて参照)には、その平行光を通過させる窓141が形成されている。この
図10では窓141が示されているが、4辺で囲まれた窓に代わり、
図1,
図2のようにカバー部材14の上面の、吸着ノズル21が入り込む穴と繋がった切欠きを形成してもよい。また平行光73の通過箇所がその平行光73を透過させる材質のプラスチック等で覆われていてもよい。
【0077】
この平行光73は、スプロケット11の歯111の、テープ30のパーフォレーション31(
図3参照)に挿入された部分に対する、スプロケット11の回転軸側に隣接した部分に照射される。
【0078】
図11は、各テープ送り量ごとのスプロケットの歯の位置を示した図である。
【0079】
図12は、
図11(a)〜(d)に示す各位置にあるときの受光パターンを示した図である。
【0080】
図11,
図12中のA,Bの符号は平行光73の通過領域A〜Bの各端を表わしている。
【0081】
本実施形態におけるスプロケット11の歯111のピッチは、
図3に示したテープ30のパーフォレーション31のピッチと同じ4mm相当であり、一方、テープ30上の電子部品32の配列のピッチは1mmである。そこでここでは、スプロケット11は、テープ30の1mm相当分ずつ回転し、スプロケット11の歯111は、誤差を無視したとき
図11(a)〜(d)の4つの位置関係となる。したがって、受光パターンも、
図12(a)〜(d)に示すように、基本的に4つのパターンが繰り返されることになる。ただし、これは、誤差を無視したときの話であり、実際は誤差が含まれるため、
図11(a)〜(d)の各位置、および
図12(a)〜(d)の各受光パターンは、スプロケット11の歯111ごとに変動することになる。
【0082】
図13は、本実施形態のテープフィーダ計測装置の概要を示した図である。
【0083】
このテープフィーダ計測装置90は、
図9に示した、発光部71と受光部72とからなるセンサ70のほか、さらに演算部80を備えている。
【0084】
図14は、
図13の演算部で実行される処理を表わしたフローチャートである。
【0085】
ここでは、テープ30の間欠送りを行ないながら、スプロケット11の一周分について、そのテープ30の各停止時におけるアブソリュートセンサ52(
図7参照)の角度と受光部72による受光パターン(
図12参照)が取得され(ステップS11,S12)、一旦、バッファに格納される。スプロケット一周分についてアブソリュートセンサの角度と受光パターンの取得が終了すると、各停止時における各受光パターンに基づいてスプロケット歯の位置(テープ走行方向の位置)が算出される(ステップS13)。
図13に示す演算部80内には、スプロケット11の、
図11(a)〜(d)の各姿勢におけるスプロケット歯111の、テープ走行方向(Y方向とする)の理論上の位置のデータ(「理論値」と称する)が記憶されている。この理論値は、スプロケット11の形状や1回あたりのモータ12の回転量等から計算される、テープ間欠送りの誤差がゼロであるとしたときの値である。これは理論値なので、
図11に示す4パターンだけでスプロケット一周分について使うことができる。
【0086】
図14のステップS13でスプロケット歯の実際の位置(「測定値」と称する)が算出されると、テープ走行方向(Y方向)についての、測定値の、理論値からの誤差(スプロケット歯のY方向のずれ誤差)が算出される(ステップS14)。ここでは、この誤差を「dY」と称する。この誤差dYが、スプロケットの一周分の各停止位置についてそれぞれ算出される。
【0087】
次に、この誤差dYが基準値と比較される(ステップS15)。この基準値は、これ以内の誤差であればテープ30上の電子部品32が吸着ノズル21により確実に吸着されて取り出されることが保証される値である。
【0088】
次いで、スプロケット一周分に渡る各停止位置の誤差dYが全て基準値以内か、あるいは基準値から外れている誤差dYが存在するかが判定される(ステップS16)。スプロケット一周分に渡る誤差dYが全て基準値以内であったときは、これ以上補正する必要がなく、この時点で終了する。
【0089】
基準値から外れる誤差dYが存在していたときは、その誤差dYからスプロケットの角度θが算出される。
【0090】
図15は、誤差dYと角度θとの関係を表わした図である。
【0091】
ここでは、スプロケット11の歯111を模式的に三角形で示している。破線で示した歯111aは、理論的な位置(理論値)である。また、実線で示した歯111bは測定された位置(測定値)である。テープ走行方向(Y方向)の測定値の、理論値からの誤差が誤差dYであり、その誤差dYをスプロケット11の回転角度に換算した値が角度θである。
【0093】
ステップS17で角度θの算出が行なわれると、以下において
図16〜
図18を参照しながら説明するテーブルへの書込みが行なわれる(ステップS18)。このテーブルの内容は、
図13に示す制御部15(
図6を合わせて参照)中の記憶部151に記憶される。この制御部15は、この記憶部151に記憶されたテーブル中の値を補正値として使って、テープ1回あたりの送り量を、一回ごとに、スプロケット全周について調整する。
【0094】
図16は、計測前のテーブルを示した図である。
【0095】
図16(a)はスプロケットの回転角度[°]と、スプロケットの歯の番号と、前述の誤差dY(
図15参照)との関係を表わしたテーブルである。
【0096】
この
図16(a)のテーブルを、ここでは「スプロケット誤差テーブル」と称する。
【0097】
スプロケット11には、回転角度12°ごとに歯111が設けられており、この回転角度12°がテープ30の走行距離4mm、すなわち、テープ30に設けられているパーフォレーション31の間隔4mmに対応する。
【0098】
これに対し、テープの間欠送りにおける1回の走行距離は1mmである。これは、スプロケットの回転角度3°に相当する。したがって、この
図16(a)の「スプロケット誤差テーブル」の「スプロケットの回転角度[°]」の欄には、スプロケット一周分にわたって3度ずつの値が記入されている。また、テープの1回の走行距離1mmはスプロケットの歯のピッチ(4mm相当)に換算すると、1ピッチの0.25倍である。このため、この「スプロケット誤差テーブル」の「スプロケットの歯の番号」の欄には、ピン番号1番以降、0.25ずつの値が記入されている。誤差dYの欄には、初期値として全てゼロが書き込まれている。
【0099】
図16(b)は、アブソリュートセンサにより計測される角度が書き込まれるテーブルである。ここでは、このテーブルを「補正テーブルA」と称する。
【0100】
この補正テーブル内の値は、書き込まれる前は不定であってもよい。
【0101】
また、
図16(c)は、補正角度[°]が書き込まれるテーブルである。ここでは、この補正角度は、
図16(a)のスプロケット誤差テーブル中の誤差dYがスプロケットの回転角度に換算された角度θである(
図15参照)。この補正テーブルBにも、
図16(a)のスプロケット誤差テーブルの誤差dYの欄に初期値ゼロが書き込まれていることに対応して、全て初期値ゼロが書き込まれている。
【0102】
図17は、計測終了時のテーブルを示した図である。
【0103】
図17(a),(b),(c)は、それぞれ
図16(a),(b),(c)に対応しており、計測終了後の、スプロケット誤差テーブル(
図17(a))、補正テーブルA(
図17(b))、および補正テーブルB(
図17(c))である。
【0104】
図17(a)のスプロケット誤差テーブルには、誤差dYが書き込まれている。
【0105】
ここでは、dY1,dY1.25,・・・等の記号で示されているが、ここには計測により得られた実際の誤差dY(
図15参照)が書き込まれる。
【0106】
図17(b)の補正テーブルAには、アブソリュートセンサから得られた、各停止時の角度が書き込まれる。
【0107】
この補正テーブルAは、テープフィーダが動作を一旦停止した後、動作を再開する際に参照される。この補正テーブルAを参照することにより、スプロケットの現在の姿勢(回転角度)を、スプロケットの歯の番号を特定できる程度の精度で知ることができる。
【0108】
図17(c)の補正テーブルBには、
図17(a)のスプロケット誤差テーブルにおける誤差dYがスプロケットの角度に変換された各値θ1,θ1.25,θ1.5・・・が書き込まれる(
図15参照)。
【0109】
これら補正テーブルAと補正テーブルBがテープフィーダ10の制御部15内の記憶部151に記憶される(
図6,
図13参照)。
【0110】
このテープフィーダ10の制御部15は、必要なときには、補正テーブルAから現在のスプロケットの歯の番号(
図17(a)参照)を知り、補正テーブルBからその歯の番号に応じた補正角度を知り、モータ12(
図1,
図2,
図6参照)をそれに応じた回転角度に制御する。こうすることにより、テープ30は、テープフィーダ10により、正確に1mmずつ間欠送りされる。
【0111】
図18は、補正テーブルの第2例を示した図である。
【0112】
図18(a)の補正テーブルAは、
図17(b)の補正テーブルAと同一であり、テープフィーダ10の制御部15内の記憶部151に記憶される。
【0113】
図18(b)の補正済テーブルCは、テープフィーダ10の制御部15内の記憶部151に、
図17(c)の補正テーブルBに代えて記憶されるテーブルである。
【0114】
この補正済テーブルCには、補正テーブルAのアブソリュートセンサ角度にそれぞれ対応する、補正後の回転角度、すなわち0−θ1[°],3−θ1.25[°],・・・が書き込まれている。
【0115】
図17(c)の補正テーブルBを参照するときは、制御部15内で
図18(b)の補正済テーブルC相当の各回転角度、すなわち0−θ1,3−θ1.25・・・などを演算し、モータをその演算後の回転角度相当の回転量となるように制御することになる。
【0116】
これに対し、
図18(b)の補正テーブルCを参照するときは、既に演算済であるため、制御部15は、モータ12を、その補正テーブルCに書き込まれている回転角度相当の回転量となるように制御すればよい。
【0117】
尚、これまで説明してきた実施形態では、
図14のフローチャートに示す通り、理論値と測定値とを比較し(ステップS15)、スプロケット一周にわたる全ての測定値の誤差dYが基準値以内のときを除き、補正値(
図17に示す補正テーブルA,B)を算出することとしている。
【0118】
ただし、本発明のテープフィーダ計測装置は、必ずしも補正値を算出する装置に限られるものではなく、測定対象のテープフィーダの送り誤差dYが基準値以内かどうかを判定して、テープフィーダの選別に役立てるものであってもよい。
【0119】
また、
図14のステップS11,S12では、スプロケット一周分に渡るアブソリュートセンサの角度取得、および受光パターンの取得を行なうものとして説明したが、テープフィーダ計測装置90の演算部80(
図13参照)での演算速度が間に合うときは、テープの間欠送りの1回の停止時に、その停止時1回分のアブソリュートセンサ角度、および受光パターンを取得し、それに引き続いてステップS13〜S18を実行し、その後、次の停止時のアブソリュートセンサ角度、および受光パターン取得(ステップS11,S12)に移ってもよい。この場合、ステップS15では、その1回の停止時について基準値と測定値との比較が行なわれるが、ステップS16では、その1回の停止時の誤差dYが基準値以内であったときに、いきなり終了するのではなく、スプロケット全周分についての誤差dYが基準値以内となるまでは、ステップS11に戻るものとする。
【0120】
誤差や、その誤差から換算される補正角度は、スプロケットの理論値と測定値との差異として算出される。ここで、スプロケットの理論値は、スプロケットの機械的な寸法や形状等から算出されるため、この理論値の算出はスプロケットの具体的な寸法や形状などに依存する。
【0121】
以下では、スプロケットの機械的な寸法や形状の一例を示して、そのスプロケットを例に取り上げて、理論値や誤差、さらに補正角度の算出方法を例示しておく。
【0122】
図19は、スプロケットの形状(
図19(a))、およびそのスプロケットの歯の形状(
図19(b))の一例を示した図である。
【0123】
ここでは、
図19(a)、(b)に示すように、
歯先端までの直径:R
スプロケットの歯の回転角度:θ
歯先端の幅:a
歯根元の幅:b
歯の高さ:c
歯先端送り側エッジ:A
歯根元送り側エッジ:B
エッジの円弧の中心:D
スプロケットと同心で円周がD上を通過する円の直径:r
エッジの円弧の半径:R
0
θ回転後歯先端送り側エッジ:A’
θ回転後根元送り側エッジ:B’
θ回転後送り側エッジ上平行光照射位置:X’
θ回転後エッジの円弧の中心:D’
とする。ここで、
図19(b)に示すように、スプロケットの歯の基準位置の中心を通る様にy軸、歯底円の接線方向にx軸を定める。
【0124】
平行光を基準位置におけるスプロケットの歯の送り側エッジの根元Bに照射する。
【0125】
スプロケットが基準位置からθ回転した場合、平行光が送り側エッジに照射される位置はX’に移動する。
【0126】
X’の位置は以下の計算により求められる。
【0127】
エッジ円弧の中心D,D’の座標をそれぞれ以下の様に定める。
【0134】
である。y=0を代入してxについて解くと
【0136】
となる。
図19(b)より、大きい方の解が求めたい座標である。
【0137】
(x’
0,y’
0)を代入してX’の座標を求めると以下の様になる。
【0139】
図20は、スプロケットの歯の測定値と歯の位置との関係を示した図である。
【0140】
図20に示すように測定値xから、スプロケット歯の位置として、ここでは送り側エッジの位置Xを求める。測定値xは窓の端からスプロケット送り側エッジまでの幅である。
【0141】
平行光を基準位置におけるスプロケット歯の送り側エッジの根元に照射する。
【0142】
窓の端からy軸までの距離をeとすると、送り側エッジの位置Xは以下の式で求められる。
【0144】
送り側エッジ位置の理論値X’の算出方法は2通りの方法がある。
【0145】
図21,
図22は、送り側エッジの理論値X’の算出方法の説明図である。
【0146】
(1)
図21のように初期位置を基準にして理論値を求める。
【0147】
(2)
図22のように一つ前の停止位置を基準にして理論値を求める。
【0148】
以下、(1),(2)のそれぞれについて説明する。
【0149】
(1)初期位置を基準にする(
図21参照)。
【0150】
テープ送り量0[mm]の状態を基準にして、1,2,3[mm]のスプロケット歯の位置を求める。
【0151】
スプロケットの形状と理論上の回転角度θ’から送り側エッジ位置の理論値X’は以下のようになる。
・テープ送り量0[mm]のとき
【0153】
・テープ送り量1,2,3[mm]のとき
【0155】
送り側エッジ位置Xと理論値X’からスプロケット歯位置誤差dを求める。
スプロケット歯位置誤差dは
図21に示すように、歯底円の接線方向とする。
【0157】
補正値αは1つ前の測定位置のずれを考慮して求める。
【0159】
(2)一つ前の停止位置を基準にする(
図22参照)。
・テープ送り量0[mm]のとき
テープ送り量0[mm]の場合は歯の理論上の角度θ’=0としてエッジ位置の理論値X’を求める。
【0161】
・テープ送り量1,2,3[mm]のとき
テープ送り量1,2,3[mm]の場合は一つ前に停止した実際の角度θを基準にして理論値X’を求める。一つ前の停止位置の送り側エッジ位置Xから求めた歯の角度θに、理論上の回転量Δθを足して理論上のスプロケット歯の角度θ’=θ+Δθを足して送り側エッジ位置Xから歯の角度θは次の方程式をθについて解いて得る。
【0163】
理論上のスプロケット歯の角度θ’は以下のようになる。
【0165】
よって、送り側エッジ位置の理論値X’は次で求められる。
【0167】
送り側エッジ位置Xと理論値X’からスプロケット歯位置誤差dを求める。
スプロケット歯位置誤差dは
図22に示すように、歯底円の接線方向とする。