(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1決定処理は、前記航空機が前記目標機と対向するために必要とする前記方位角の変更量が少ない前記航空機ほど、ミサイルを発射する役割として高い評価値を与え、ミサイルの誘導範囲の端周辺に前記目標機及びミサイルが位置する前記航空機ほど、ミサイルを誘導する役割として高い評価値を与え、前記航空機の索敵範囲の端周辺に前記目標機が位置する前記航空機ほど、前記目標機を索敵や追尾する役割として高い評価値を与える請求項2記載の航空機管理装置。
前記ルールは、前記目標機と前記航空機との相対的な位置関係、及びミサイルが前記目標機へ到達するか否かを示した指数に応じた前記航空機の役割を示す請求項4記載の航空機管理装置。
前記ルールは、前記航空機及び前記目標機を特定する固有名称を用いずに、各々を特定しない一般名称を用いて、前記航空機の役割を示す請求項4又は請求項5記載の航空機管理装置。
前記ルールは、ランダムに生成されるのみならず、前記航空機のパイロットの判断を考慮にいれて、任意に生成される請求項4から請求項6の何れか1項記載の航空機管理装置。
前記航空機と前記目標機との交戦を模擬した交戦シミュレーションが、前記記憶手段に記憶される前の複数の前記ルールを時間経過と共に連続して用いられることで行われ、
前記交戦シミュレーションに用いられる前記ルールは、前記交戦シュミュレーションにおける所定のイベントの達成に応じた得点が前記ルールの評価値に加算され、該評価値に基づいて前記記憶手段に記憶される前記ルールが決定される請求項4から請求項7の何れか1項記載の航空機管理装置。
前記イベントを達成した前記ルールに至るまでに用いられた前記ルールは、前記イベントを達成した前記ルールに対する得点が傾斜配分される請求項8記載の航空機管理装置。
前記個体を構成する前記ルールを変化させるために2つの前記個体が交叉される場合、構成する前記ルールの数が少ない前記個体を基準に交叉が行われる請求項11記載の航空機管理装置。
前記演算手段は、前記目標機に対する前記航空機の役割を数値で表わし、該数値を変化させることで前記航空機の役割を複数回変更し、前記航空機の役割を変更する毎に、前記航空機の役割に基づいた前記航空機の前記目標機に対する優位性を示す評価値を算出し、該評価値から前記航空機の役割を決定する第3決定処理を行う請求項1記載の航空機管理装置。
前記第3決定処理は、前記目標機に対する前記航空機の役割及び前記航空機の初期配置位置を数値で表わし、該数値を変化させることで前記航空機の役割及び前記初期配置位置を変更し、前記航空機の役割及び前記初期配置位置を変更する毎に、前記評価値を算出する請求項13記載の航空機管理装置。
前記演算手段は、前記目標機に対する前記航空機の役割の組み合わせ毎に、前記航空機と前記目標機との交戦を模擬した交戦シミュレーションを行い、この結果から求められる前記航空機の前記目標機に対する優位性を示す評価値に基づいて、前記航空機の役割と前記航空機の軌道を決定する第4決定処理を行う請求項1記載の航空機管理装置。
前記演算手段は、全ての役割の組み合わせの前記交戦シミュレーションの所要時間が、予め定められた時間内に終了しない場合、脅威度に応じた所定数の前記目標機に対して、所定数の前記航空機のみが対応するとして前記第4決定処理を行う請求項17記載の航空機管理装置。
前記演算手段は、前記第1決定処理、前記第2決定処理、前記第3決定処理、及び第4決定処理のうち少なくとも二つによって求められた前記航空機の役割及び前記航空機の軌道のうち、一つを前記航空機の役割及び前記航空機の軌道として決定する請求項2、請求項4、請求項13、及び請求項17の何れか2項記載の航空機管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に、本発明に係る航空機管理装置、航空機、及び航空機管理方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0052】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0053】
図1は、本第1実施形態に係る航空機管理装置10の電気的構成を示すブロック図である。本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、編隊に参加している複数の航空機40(
図2参照)の役割及び航空機40の軌道を求める装置である。なお、航空機管理装置10は、航空機40に備えられている。
【0054】
本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)12、CPU12で実行される各種プログラム及び各種情報等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)14、CPU12による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)16、各種プログラム及びシミュレーションの対象となる航空機40の機体諸元等の各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)18を備えている。
【0055】
さらに、航空機管理装置10は、僚機情報や僚機の索敵や追尾により得られた目標機42(
図2参照)の情報(以下、「目標機情報」という。)等の各種情報を僚機から受信する受信部20、及びCPU12による演算結果や自機情報を僚機へ送信する送信部22を備えている。なお、僚機情報には、僚機の位置情報や僚機の速度等が含まれる。自機情報には、自機の位置情報や自機の速度等が含まれる。目標機情報には、目標機42の位置情報や目標機42の速度等が含まれる。
このように、本第1実施形態に係る航空機40は、各航空機40間で各種情報の送受信(データリンク)が可能とされている。すなわち、データリンクによって各航空機40は、自機情報、僚機情報、目標機情報、及び他の航空機40に対する指示情報等の各種情報を共有するためにネットワーク化されている。
【0056】
これらCPU12、ROM14、RAM16、HDD18、受信部20、及び送信部22は、システムバス24を介して相互に電気的に接続されている。
【0057】
図2は、本第1実施形態に係る航空機40の役割及び軌道を示す模式図である。なお、
図2では、一例として目標機42を一機のみ示しているが、これは一例であり、目標機42は複数であってもよい。
図2の例は、MRM(Medium Range Missiles)戦を模しており、航空機40から目標機42が視認できないほど離れた状態である。
【0058】
航空機40は、例えば、目標機42に対するミサイル44の発射、ミサイル44の誘導、及び目標機42の索敵や追尾が可能とされている。
【0059】
すなわち、航空機40の役割は、例えば、目標機42の索敵や追尾、ミサイル44の誘導、及びミサイル44の発射である。ミサイル44の誘導は、自機が発射したミサイル44の誘導であってもよいし、僚機が発射したミサイル44の誘導であってもよい。
図2において例えば、航空機40Aの役割がミサイル44の発射であり、航空機40Bの役割がミサイル44の誘導であり、航空機40Cの役割は、目標機42の索敵や追尾である。
【0060】
図2の例では、航空機40の索敵範囲、ミサイル44の誘導範囲、ミサイル44の射程範囲の順にその範囲は狭い。
【0061】
図2に示されるように、航空機40と目標機42とが向かい合って飛行している場合、航空機40Aは、目標機42と対向している状態(機首が向かい合う状態、所謂ヘッドオン)が、最もミサイル44の射程距離が長く、目標機42から離れて射撃することができるため好ましい。一方、航空機40Bは、誘導範囲の端周辺に目標機42及びミサイル44を捉えるように位置することが好ましい。航空機40Cは、索敵範囲の端周辺に目標機42を捉えるように位置することが好ましい。この理由は、目標機42の射程範囲を小さくすると共に、目標機42へ近づく速度が小さくなるため、航空機40が目標機42から可能な限り離れて交戦することができ、また目標機42の射程範囲に自機が近づいたとしても、素早く目標機42の射程範囲から離脱できるためである。
【0062】
次に、
図2を参照して各航空機40の目標機42に対する一連の役割及び軌道について説明する。
【0063】
航空機40Cは、目標機42の索敵や追尾を行い、目標機42の位置情報を航空機40A,40Bへ送信する。航空機40Aは、ミサイル44の射程範囲に目標機42が進入すると、目標機42へミサイル44を発射する。目標機42が航空機40Aのミサイル44の射程範囲に進入することは、すなわち、目標機42の射程範囲に航空機40Aが進入した可能性を示す。このため、航空機40Aは、ミサイル44の発射直後に目標機42に対して反転、離脱する。この結果、ミサイル44を発射した航空機40Aは、ミサイル44の誘導ができなくなるので、航空機40Aが発射したミサイル44の誘導を、航空機40Bが行うこととなる。
なお、航空機40Bは、目標機42及びミサイル44を誘導範囲の端周辺で捉えてミサイル44の誘導を行いながら目標機42からの回避を行う、所謂F−Poleをその軌道とする。同様に航空機40Cも、目標機42を索敵範囲の端周辺で索敵や追尾しながら目標機42からの回避を行うF−Poleをその軌道とする。
このように、目標機42に対する航空機40毎の役割に応じて、航空機40の軌道は決定される。
【0064】
そこで、本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、CPU12によって、航空機40と目標機42との相対的な位置関係に基づいて、目標機42に対する航空機40毎の役割、及び航空機40の役割に応じて定められた操縦行動に基づいた航空機40毎の軌道を決定する。航空機40と目標機42との相対的な位置関係には、航空機40と目標機42との方位角も含まれる。
そして、決定された航空機40の役割と軌道が、送信部22によって対応する航空機40毎に送信される。航空機40は、僚機で決定された自機の役割と軌道を受信すると、コックピット・パネルにそれらを表示する。役割と軌道を決定した航空機40は、自機の役割と軌道を自機のコックピット・パネルにそれらを表示する。
【0065】
なお、航空機管理装置10は、目標機42が複数存在している場合、全ての目標機42に対して、何らかの役割を与えられた航空機40を割り当てる。また、航空機管理装置10は、同一の目標機42に対して、同一の役割の航空機40を複数割り当てることはない。また、目標機42に対して航空機40の数が十分多い場合は、何ら役割を与えられない航空機40が存在してもよい。
【0066】
次に、航空機40の役割を決定する処理(以下、「役割決定処理」という。)、航空機40の役割に応じた軌道を決定する処理(以下、「軌道決定処理」という。)について詳細に説明する。
なお、役割決定処理及び軌道決定処理は、一例として編隊に参加している航空機40のうち指令機に備えられている航空機管理装置10によって行われるが、これに限らず、例えば、最初に目標機42を発見した航空機40が行ってもよい。
【0067】
本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、目標機42に対する航空機40の役割を数値で表わし、該数値を変化させることで航空機40の役割を複数回変更する。航空機管理装置10は、航空機40の役割を変更する毎に、航空機40の役割に基づいた航空機40の目標機42に対する優位性を示す評価値(以下、「役割決定評価値」という。)を算出する。そして、航空機管理装置10は、役割決定評価値から航空機40の役割として決定する。
本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、一例として、航空機40と目標機42とが最も接近する距離(以下、「最小彼我間距離」という。)を役割決定評価値として算出し、最小彼我間距離が最大となった航空機40の役割を、航空機40の役割として決定する。
最小彼我間距離は、長いほど、航空機40が目標機42によって撃破される可能性が低くなるため、航空機40の安全性が高まり、航空機40は目標機42に対して優位となる。
【0068】
図3は、本第1実施形態に係る航空機管理装置10の機能ブロック図である。
図3に示されるようにCPU12は、自機情報、僚機情報、及び目標機情報等が入力される。そして、CPU12は、役割決定処理によって航空機40の役割を求めると、求めた役割に基づいて軌道決定処理を行い、航空機40の軌道と共に役割決定評価値である最小彼我間距離を求める。役割決定処理は、航空機40の役割の変更を所定回数繰り返した後に、役割決定評価値である最小彼我間距離を最大とする航空機40の役割を抽出し、航空機40の役割として決定する。
その後、CPU12は、決定した各航空機40の役割及び軌道を示す情報を送信部22へ出力する。送信部22は、決定した役割及び軌道を対応する航空機40へ送信する。
【0069】
なお、数値を変化させることで航空機40の役割を変化させるために、例えば遺伝的アルゴリズム(genetic algorithm、以下、「GA」という。)等の進化的計算手法を用いる。GAを用いることの利点は、簡易に航空機40と役割との組み合わせを複数生成することができることのみならず、評価関数の微分情報を不要とし、何らかの解が必ず得られ、航空機40及び目標機42の増減にも容易に対応可能なことである。
【0070】
図4は、航空機40(B#1,B#2)と目標機42(R#1,R#2)との相対的な位置関係を示す模式図である。目標機42は、CASE2のように航空機40の正面に位置する場合や、CASE1やCASE3のように航空機40に対して角度をもって位置する場合もある。一例として、何れの場合でも目標機42は、現状の行動を維持して航空機40に対して接近する軌道をとると予測されて、航空機40の役割決定処理及び軌道決定処理が行われる。現状の行動を維持した軌道の予測とは、直線的な軌道をとる目標機42に対しては直線的な軌道を維持するものと予測し、旋回している目標機42に対してはその旋回軌道を維持するものと予測することである。なお、目標機42に対する軌道の予測は、上記の他に、例えば、目標機42の機体性能や役割等に基づくシミュレーションにより予測されてもよい。このように、目標機42の軌道を予測することによって、役割決定評価値をより精度高く求めることができる。
【0071】
図5は、GAを用いた役割決定処理の流れを示す模式図である。
【0072】
GAに用いる遺伝子表現について説明する。
図5の例は、目標機42に対してミサイル44の発射(SHT)及び目標機42の索敵や追尾(SNS)の何れかを航空機40が行う場合である。この場合、遺伝子表現の左端が目標機R#1へミサイル44を発射する航空機40を示している。遺伝子表現の左端から2番目が目標機R#1を索敵や追尾する航空機40を示している。遺伝子表現の左端から3番目が目標機R#2へミサイル44を発射する航空機40を示している。遺伝子表現の左端から4番目が目標機R#2を索敵や追尾する航空機40を示している。そして、数値が各々の役割を行う航空機40を示しており、「0」の場合が航空機B#1であり、「1」の場合が航空機B#2である。
【0073】
すなわち、
図5の例に示される遺伝子表現は、目標機R#1へのミサイル44の発射は航空機B#2が行い、目標機R#1の索敵や追尾は航空機B#1が行い、目標機R#2へのミサイル44の発射は航空機B#1が行い、目標機R#2の索敵や追尾は航空機B#2が行うことを示している。
【0074】
なお、航空機40の数の増加に伴い、上記数値も増加する。また、目標機42の数の増加に伴い、遺伝子表現が追加される。また、ミサイル44の誘導(GUI)を行う場合も、対応する遺伝子表現が追加される。
【0075】
このような遺伝子表現の個体は、数値を変えてランダムに複数個(M個)生成される。
そして、航空機40の役割を示した個体毎に、詳細を後述する軌道決定処理が行われ、求めた軌道から最小彼我間距離を役割決定評価値として算出する。
【0076】
各個体に対応する最小彼我間距離が軌道決定処理によって求められると、役割決定処理は、次の世代の個体を生成する。次の世代を生成するために役割決定処理は、M個の個体から交叉を行う個体を選択(例えばルーレット戦略)し、選択した個体同士で交叉(例えば2点交叉)を行う。また、役割決定処理は、所定の方法で選択(例えば確率的選択)された個体の数値を変化させる突然変異(例えばbit反転)を行う。
軌道決定処理は、このようにして生成された次の世代の個体毎に、航空機40の軌道及び最小彼我間距離を求める。
【0077】
そして、役割決定処理は、予め定められた世代(N世代)の個体毎の最小彼我間距離が得られると、全ての世代の全ての個体から最小彼我間距離が最も長くなる個体を選択し、選択した個体により示される役割を航空機40の役割として決定する。また、選択した航空機40の役割に対応する軌道が、航空機40の軌道として決定される。
【0078】
なお、本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、所定時間間隔毎(例えば10秒間隔毎)の航空機40の役割及び軌道を決定してもよい。
例えば、
図6に示されるように、時間t
0から時間t
1では、航空機B#2が目標機R#1へミサイル44を発射する役割をし、航空機B#1が目標機R#1の索敵や追尾を行う役割をする。そして、時間t
1において、航空機B#2が目標機R#1へのミサイル44の発射を実行する。その後、時刻t
2から時刻t
3において航空機B#2が目標機R#2へミサイル44を発射する役割をし、時間t
3において、航空機B#2が目標機R#2へのミサイル44の発射を実行する。その後、時刻t
4,t
5において航空機B#2が目標機R#1を索敵や追尾する。
【0079】
そして、航空機B#2のコックピット・パネルには、時間t
0から時間t
5までの間における目標機42対する役割及び軌道が時間と共に表示される。
これにより、航空機B#2のパイロットは、
図6の破線で示される矢印のように、実行するべき役割及び軌道を時系列で簡易に把握することができる。
【0080】
また、本第1実施形態に係る役割決定処理では、航空機40の初期配置位置をGAにより決定してもよい。
【0081】
図7は、本第1実施形態に係る初期配置位置を求める場合の航空機40と目標機42との相対的な位置関係を示す模式図である。
図7に示されるように航空機40の初期配置位置を定めることが可能な範囲(以下、「初期配置可能エリア」という。)は、予め定められており、初期配置可能エリア内で航空機40の初期配置位置が決定される。
初期配置可能エリアは、航空機40と目標機42とが予め定められた距離よりも離れている領域であり、航空機40が目標機42に対してミサイル44を発射するまでに十分な距離を有する距離である。すなわち、航空機40の初期配置位置を最適にすることで、目標機42に対して有利な攻撃等が可能となる。
【0082】
図8は、本第1実施形態に係る初期配置位置を求める場合のGAを用いた役割決定処理の流れを示す模式図である。
【0083】
図8に示されるように遺伝子表現には、航空機B#1のX方向の初期配置位置及びY方向の初期配置位置、並びに航空機B#2のX方向の初期配置位置及びY方向の初期配置位置が含まれる。
【0084】
役割決定処理は、航空機40の役割と同様に初期配置位置に対しても、交叉や突然変異を行うことによって変化させる。そして、軌道決定処理は、初期配置位置を加味した航空機40の軌道及び最小彼我間距離を求める。
【0085】
なお、本第1実施形態に係る役割決定処理及び軌道決定処理は、指令機で行われる場合に限らず、複数の航空機40にGAを分散処理させ、その結果を指令機に集約して航空機40の役割を決定してもよい。
【0086】
また、GAはランダム性を有しているため、同じ自機情報、僚機情報、及び目標機情報で役割決定処理を行ったとしても、その結果は、必ずしも同じになるとは限らない。そのため、各航空機40が各々役割決定処理及び軌道決定処理を行い、その結果、最小彼我間距離が最大となる航空機40の役割が、航空機40の役割として決定されてもよい。
【0087】
また、本第1実施形態に係る役割決定処理は、予め定められたN世代に達するまで、GAを繰り返すが、これに限らず、予め定められた時間でGAを繰り返したり、軌道決定処理により求められた最小彼我間距離の変化量が所定値以下となるまでGAを繰り返してもよい。
【0088】
また、本第1実施形態に係る役割決定処理は、航空機40と目標機42との距離に応じてGAを繰り返す回数を変化させてもよい。例えば、初期配置可能エリアに航空機40が位置している場合、役割決定処理は、より多い回数(時間)GAを繰り返し、初期配置可能エリアよりも航空機40と目標機42とが接近した場合に、より少ない回数GAを繰り返す。
【0089】
次に、軌道決定処理について説明する。
【0090】
軌道決定処理は、PGG(Plan Goal Graph)形式で記述された行動データベースに基づいて、航空機40の軌道を決定する。なお、行動データベースは、航空機40のHDD18に記憶されている。行動データベースは、実際に航空機40を操縦するパイロットの経験則等に基づいて、予め作成されているものであり、ある目的を達成するために、航空機40の状況に応じて選択すべき最適な操縦行動を示したデータである。
【0091】
図9は、PGG形式で記述された行動データベースの内容を示す模式図である。
PGG形式で記述された行動データベースは、主に、目標機42に対する最終的な目的を示すゴール、ゴールを達成するための行動計画を示すプラン、及びプランを実行するための操縦行動を示すアクションで構成されている。
【0092】
なお、行動データベースは、プランから派生するゴールであるサブゴールを決定し、決定したサブゴールを達成するための行動計画を示すサブプランも構成要素に含んでもよい。換言するとサブゴールとは、ゴールの下位概念であり、プランから導き出されるより具体的なゴールである。
【0093】
サブゴールが決定されると、リソース(条件)に基づいてサブプランが選択され、サブプランに応じたアクションが決定される。ここでいうリソースとは、プランを実行する航空機40に関する各種情報であり、例えば、航空機40の索敵範囲、誘導範囲、射程範囲、ミサイル44の種類、及びミサイル44の残弾数等の装備内容等、すなわち戦力である。
【0094】
図10は、CPU12によって実行される軌道決定処理(空戦軌道プログラム)の流れを示すフローチャートであり、軌道決定プログラムはHDD18の所定領域に予め記憶されている。なお、軌道決定プログラムは、航空機40毎の軌道を決定するためのプログラムであり、複数の航空機40の軌道を決定する場合は、各航空機40毎に本プログラムが実行される。
【0095】
軌道決定処理の開始時には、予め各航空機40の役割が決定されており、CPU12には、航空機40と目標機42との相対的な位置関係、すなわち、自機情報、僚機情報、及び目標機情報から得られる各航空機40の位置、速度、及び向き(姿勢)、並びに各目標機42の位置、速度、及び向き(姿勢)等の情報(以下、「状況データ」という。)が入力されている。
【0096】
なお、目標機42は、例えば、航空機40の編隊に対して直線移動しているとのように軌道を予測して、軌道決定処理が行われるが、これに限らず、上述した他の軌道予測の方法を用いて目標機42の軌道を予測してもよい。
【0097】
まず、ステップ100では、プランが設定される。プランは、すなわち、役割決定処理で決定された航空機40の役割である。
【0098】
ステップ102では、サブゴールを設定する。
図11の行動データベースの模式図に示されるように、行動データベースには、プランに応じて設定可能なサブゴールが複数存在するため、状況データに基づいてサブゴールが決定される。なお、行動データベースに含まれる複数のサブゴールには、予め優先順位が付されており、状況データに基づいて優先順位の最も高いサブゴールが選択されることとなる。
【0099】
次のステップ104では、サブゴールを達成するためのサブプランを選択する。
【0100】
次のステップ106では、選択したサブプランが複数であるか否を判定し、肯定判定の場合は、ステップ108へ移行し、否定判定の場合は、ステップ108の処理を実行することなく、ステップ110へ移行する。
【0101】
ステップ108では、サブプラン毎に評価値(以下、「サブプラン評価値」という。)を導出し、該サブプラン評価値に基づいてサブプランを選択する。サブプラン評価値は、各サブプラン毎に固定値として与えられていてもよいし、各サブプランを選択するために用いた航空機40の状況データを変数とした関数から導出されてもよい。
【0102】
サブプラン評価値を関数から導出する場合について説明する。
この関数は、各サブプランに応じて予め与えられている。また、変数とされる航空機40の状況データは、航空機40と軌道の予測結果を用いた目標機42との相対的な位置関係、ミサイル44の状態(発射準備中、誘導中、又はアクティブ等)を数値化したものである。なお、航空機40の状況データをさらに細分化し、例えば、航空機40の高度、速度、進行方向、姿勢角、及びミサイル44の残弾数、並びにレーダー情報、RWR(Radar Warning Receiver)情報、及びデータリンク情報等によって情報を数値化し、関数に対する変数としてもよい。
そして、複数のサブプラン評価値のうち、最も高いサブプラン評価値を有するサブプランが選択される。
【0103】
ステップ110では、サブプランに応じたアクションを決定する。なお、アクションは、サブプランに関連付けられている。また、アクションには、航空機40と目標機42との相対的な位置関係に基づいたアクションを起こす位置が関連付けられる。
【0104】
図12は、行動データベースの具体例を示した模式図であり、
図12は、ゴールを「対空攻撃」とした場合の具体例である。例えば、アクションであるミサイル44の発射位置までの飛行や、ミサイル44の誘導のためにレーダー照射を行いつつF−Poleを行う飛行が、軌道決定処理によって求められる航空機40の軌道である。
【0105】
このようにして求められる航空機40の軌道と目標機42の軌道の予測結果に基づいて、役割決定評価値である最小彼我間距離が算出される。そして、最小彼我間距離が最大となった航空機40の役割が、航空機40の役割として決定され、決定された役割に基づいた航空機40の軌道が、航空機40の軌道として決定される。
【0106】
役割決定処理及び軌道決定処理によって決定された航空機40の役割及び軌道は、役割決定処理及び軌道決定処理を行った航空機40から編隊に参加している他の航空機40へ送信部22を介して各々送信される。
【0107】
以上説明したように、航空機管理装置10は、航空機40と目標機42との相対的な位置関係に基づいて、目標機42に対する航空機40毎の役割、及び航空機40の役割に応じて定められた操縦行動に基づいた航空機40毎の軌道を決定する。
【0108】
そして、本第1実施形態に係る航空機管理装置10は、目標機42に対する航空機40の役割を数値で表わし、該数値を変化させることで航空機40の役割を複数回変更し、航空機40の役割を変更する毎に、最小彼我間距離を算出し、最小彼我間距離が最大となる航空機40の役割を、航空機40の役割として決定する。
【0109】
なお、役割決定評価値として最小彼我間距離のみならず、他の指標が用いられてもよい。他の指標は、例えば、航空機40のミサイル44の残弾数(以下、「我側ミサイル残弾数」という。)や目標機42と航空機40との損失機数の比(以下、「交換比」という。)である。
【0110】
我側ミサイル残弾数が多いほど、航空機40は目標機42に対して優位となる。
我側ミサイル残弾数は、例えば軌道決定処理により決定されるアクションおけるミサイル44の発射の回数によって求められる。
【0111】
交換比をより具体的に説明すると、例えば、複数機の航空機40と目標機42とが交戦し、交戦の終了までに損失した目標機42と航空機40との機数の比である。交換比が大きいほど、航空機40は目標機42に対して優位となる。
交換比は、軌道決定処理が目標機42の航空機40への攻撃もシミュレーションすることで求められる。なお、このシミュレーションは、従来既知の方法で行われればよい。
【0112】
また、例えば、最小彼我間距離、我側ミサイル残弾数、及び交換比について重み付け線形和を算出し、この算出結果が役割決定評価値とされてもよい。
【0113】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0114】
なお、本第2実施形態に係る航空機管理装置10の電気的構成は、
図1に示す第1実施形態に係る航空機管理装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0115】
図13は、本第2実施形態に係る航空機管理装置10の機能ブロック図である。
【0116】
HDD18は、航空機40と目標機42との相対的な位置関係に応じた航空機40の役割を示した複数のルールを記憶している。このルールは、一例として、IF−THENルールであり、航空機40と目標機42との相対的な位置関係をIFとし、それに応じた航空機40の役割をTHENとして表わしている。IF−THENルールは、例えば地上設備等で予め生成され、その後、航空機40のHDD18に記憶される。
【0117】
CPU12は、役割決定処理によって、目標機42と航空機40との相対的な位置関係に応じたIF−THENルールをHDD18から選択し、選択したIF−THENルールから航空機40の役割を決定する。そして、CPU12は、役割決定処理によって航空機40の役割を求めると、求めた役割に基づいて軌道決定処理を行う。その後、CPU12は、決定した航空機40の役割及び軌道を示す情報を送信部22へ出力する。送信部22は、役割及び軌道を対応する航空機40へ送信する。なお、軌道決定処理は、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0118】
次に、IF−THENルールの詳細について説明する。以下の説明では、航空機40である航空機B#1,B#2の2機が目標機42である目標機R#1,R#2と交戦する場合について説明する。
【0119】
なお、本第2実施形態では、航空機B#1,B#2を表わす名称として航空機Bα,Bβを用い、目標機R#1,R#2を表わす名称として目標機Rα,Rβを用いる。
【0120】
この理由は、以下の通りである。
IF−THENルールを定義する場合に、航空機B#1,B#2や目標機R#1,R#2といった固有名詞を用いてもよい。しかし、このような固有名詞を用いると、例えば、航空機B#1と航空機B#2とが入れ替わった様な同様の2つの状況に対し、各々IF−THENルールを生成し、HDD18に記憶させる必要が生じる。
【0121】
このため、本第2実施形態に係るIF−THENルールでは、航空機40及び目標機42を特定する固有名称を用いずに、各々を特定しない一般名称、すなわち航空機Bα,Bβや目標機Rα,Rβを用いる。これにより、航空機B#1,B#2の位置関係が入れ替わった様な2つの状況の場合でも、1つのIF−THENルールによりこの2つの状況を表現できる。従って、航空機40及び目標機42を特定しない一般名称を用いることで、HDD18に記憶させるIF−THENルールの数を削減することができる。
そして、IF−THENルールを選択する際に、一般名称化された航空機40及び目標機42に対して、固有名称化した航空機40及び目標機42が当て嵌められることにより、航空機40の役割が決定される。
【0122】
図14はIF文の構成及びTHEN文の構成を示した模式図である。なお、
図14は、目標機Rαに対するIF文の構成及びTHEN文の構成を示しているが、目標機Rβに対するIF文の構成及びTHEN文の構成も同様である。
【0123】
図14に示されるIF文は、航空機Bα,Bβと目標機Rαとの相対的な位置関係及びミサイルステータスから構成される。
相対的な位置関係とは、航空機40と目標機42との位置に基づく角度、及び航空機40と目標機42との距離である。
【0124】
ここで、航空機40と目標機42との位置に基づく角度は、アングル・オフ(Angle Off)及びアスペクト・アングル(Aspect Angle)で定義される。
【0125】
アングル・オフは、航空機40の機首と目標機42の機首とのなす角であり、航空機40と目標機42とが対向している場合は180°であり、航空機40と目標機42とが同じ方向を向いている場合は0°であり、航空機40と目標機42との進行方向が直交している場合は90°又は270°である。
【0126】
アスペクト・アングルは、機首の向きは関係なく、航空機40が目標機42に対して位置する角度である。目標機42の機首方向が180°であり、目標機42の機尾方向が0°であり、目標機42の機軸に対する左右の垂直方向が各々270°、90°である。
【0127】
図14においてアスペクト・アングルはAAで示され、アングル・オフはAOで示される。また、航空機40と目標機42との距離はRngで示される。
【0128】
一方、ミサイルステータスMSL
statusは、ミサイル44と目標機42との関係を表わしており、ミサイル44が目標機42へ到達するか否かを示した指数であり、例えばミサイル44の余剰距離より値が決定される。
ミサイル44の余剰距離R
exは、目標機42の速度V
R、ミサイル44の速度V
MSL、ミサイル44の残燃焼時間t
f、ミサイル44と目標機42の相対速度V
R-MSL、ミサイル44と目標機42の距離Rng
R-MSLから求められる。
【0129】
なお、ミサイル44の速度V
MSLは、目標機42の進行方向を正としている。
このため、ミサイル44と目標機42との進行方向が同様の場合は、V
R−MSL=V
R−V
MSLとされる。一方、ミサイル44と目標機42と対向する場合は、V
R−MSL=V
R−(−V
MSL)=V
R+V
MSLとされる。
【0130】
そして、余剰距離は、下記(1)式によって算出される。
R
ex=V
R−MSL×t
f−Rng
R−MSL ・・・(1)
(1)式によって算出された余剰距離R
ex>0の場合、ミサイル44は、目標機42に到達するため、ミサイルステータスMSL
statusは1とされる。一方、余剰距離R
ex≦0の場合、発射されたミサイル44は、目標機42に到達しないため、ミサイルステータスMSL
statusは0とされる。また、ミサイル44を発射していない場合も、目標機42にミサイル44が到達しないことと同意であるため、余剰距離R
ex≦0とされ、これによりミサイルステータスMSL
statusは0とされる。
【0131】
なお、ミサイル44が目標機42へ到達するか否かは、上記方法に限らず、目標機42の進行方向を予測し、その予測した目標機42に対してミサイル44が到達するか否かで判定されてもよい。このような判定方法は、航空機40に予め搭載されているシステムで行われているものであり、このシステムからの情報に基づいてミサイルステータスMSL
statusが判定される。
【0132】
また、
図14に示されるTHEN文は、一例として目標機Rαへミサイル44を発射(SHT)する航空機Bα又は航空機Bβが記述されると共に、目標機Rαへのミサイル44の誘導(GUI)を行う航空機Bα又は航空機Bβが記述される。また、目標機Rαの索敵や追尾(SNS)を行う場合も、SNSを行う航空機Bα又は航空機Bβが記述される。
【0133】
IF−THENルールの具体例は、以下の通りである。なお、下記に示すIF−THENルールは、目標機Rαに対する航空機40の役割を決定する場合のIF−THENルールであり、目標機Rβに対する航空機40の役割を決定する場合のIF−THENルールも同様に記述される。
IF
AAx≦AA(Bα,Rα)≦AAy&AOx≦AO(Bα,Rα)≦AOy&Rngx≦Rng(Bα,Rα)≦Rngy
&AAx≦AA(Bβ,Rα)≦AAy&AOx≦AO(Bβ,Rα)≦AOy&Rngx≦Rng(Bβ,Rα)≦Rngy
&MSL
status(MSL,Rα)>0
THEN
SHT=Bα
GUI=Bβ
【0134】
なお、IF−THENルールは、下記表1の例に示されるように、1〜3ビット列(例えば3ビット列のグレイコード)を列挙した表現で表わされる。
【表1】
【0135】
表1の例では、例えば「AA」が「000」の場合アスペクト・アングルの範囲が0°以上45°未満(AAx=0°、AAy=45°)とされ、「AA」が「010」の場合アスペクト・アングルの範囲が135°以上180°未満(AAx=135°、AAy=180°)とされる。
また、「AO」が「001」の場合、アングル・オフの範囲が45°以上90°未満(AOx=45°、AOy=90°)とされ、「AO」が「110」の場合、アングル・オフの範囲が180°以上225°未満(AOx=180°、AOy=225°)とされる。
また、「Rng」が「011」の場合、航空機40と目標機42との距離の範囲が20NM以上30NM未満(Rngx=20NM、Rngy=30NM)とされる。
このように、3ビットでアスペクト・アングル、アングル・オフ、距離の範囲が予め定められており、1ビットでミサイルステータスが表わされている。また、役割は、「0」が航空機Bαを示し、「1」が航空機Bβを示す。なお、「###」は任意の値を取りえることを示す。
【0136】
次にIF−THENルールの生成(最適化)について説明する。上述したようにIF−THENルールは、地上設備等で予め生成され、航空機40のHDD18に記憶される。
【0137】
まず、地上設備において複数のIF−THENルールが生成され、航空機40と目標機42との交戦を模擬した交戦シミュレーションが、航空機40のHDD18に記憶される前の複数のIF−THENルールを時間経過と共に連続して用いることで行われる。この交戦シミュレーションは、交戦シミュレーション装置50(
図16参照)によって行われる。
そして、交戦シミュレーションにおける所定のイベントの達成に応じた得点がIF−THENルールの評価値に加算され、該評価値に基づいてHDD18に記憶されるIF−THENルールが決定される。
【0138】
このように、HDD18に記憶されるIF−THENルールが、交戦シミュレーション装置50で行われる交戦シミュレーションによって決定されることとなる。交戦シミュレーション装置50は、例えば地上設備に設けられので、交戦シミュレーションに十分時間をかけてルールを決定することができる。
【0139】
また、交戦シミュレーションに用いられるIF−THENルールは、交戦シミュレーションによる所定のイベントの達成に応じて評価値が増減する。イベントは、目標機42へのミサイル44の発射や撃破等であり、目標機42へのミサイル44の発射や撃破のイベントを達成できたIF−THENルールにより示される航空機40の役割は、状況に応じた適切な航空機40の役割を示していることとなる。
【0140】
交戦シミュレーションの詳細及びIF−THENルールの得点の加算方法について詳細に説明する。
【0141】
まず、交戦シミュレーションは、模擬される航空機40と目標機42との初期位置を定め、模擬される目標機42を時間と共に予め設定された通りに移動させる。一方、模擬される航空機40の役割は、模擬される航空機40と目標機42との相対的な位置関係に基づいたIF−THENルールによって時間毎に決定され、模擬される航空機40の軌道は軌道決定処理(空戦軌道プログラム)により決定される。交戦シミュレーションによる交戦最大時間は、例えば10分のように予め定められている。交戦最大時間が過ぎると、航空機40と目標機42とが交戦中であっても、交戦シミュレーションは終了する。航空機40が目標機42を全て撃墜すると交戦最大時間に達していなくても、交戦シミュレーションは終了する。
【0142】
図15は、IF−THENルールの履歴とイベントが発生した場合の得点の配分を示す模式図である。
図15に示されるように、模擬される航空機40に対して時間毎(t
1〜t
n)にIF−THENルール(1〜n)が選択される。
【0143】
そして、例えば、時間t
nにおけるIF−THENルールnでイベントが達成されると、IF−THENルールnには、イベントに応じた得点が評価値に加算される。
【0144】
イベントと得点の詳細は下記表2に示されている。
【表2】
【0145】
ミサイル44を発射した場合は、達成したIF−THENルールの評価値に+X(X<1)が加算され、時間切れによりミサイル44を発射できなかった場合は、その交戦シミュレーションの最後のIF−THENルールの評価値に−1が加算される。また、目標機42を撃破した場合は、達成したIF−THENルールの評価値に+Yが加算され、ミサイル44が未到達で目標機42を撃破できなかった場合は、IF−THENルールの評価値に得点は加算されない。
【0146】
ミサイル44を発射した場合に加算される得点(+X)は、一定値ではなく、ミサイル44を発射した時点での航空機40と目標機42との距離L
BRを、ミサイル44の最大射程距離L
MSLで除算(L
BR/L
MSL)した値、すなわち距離L
BRを最大射程距離L
MSLで正規化した値である。
【0147】
目標機42を撃破した場合に加算される得点(+Y)は、一定値ではなく、ミサイル44を発射してから目標機42を撃破するまでの間の最小彼我間距離L
minBRを、ミサイル44の最大射程距離L
MSLで除算(L
minBR/L
MSL)した値、すなわち距離L
minBRを最大射程距離L
MSLで正規化した値である。
【0148】
なお、IF−THENルールは、生成された直後は評価値として初期値(例えば0.1)が与えられ、評価値はこの初期値よりも小さくなることはない。このように、評価値には最小値が定められ、最小値は常に正の値とされている。従って、評価値の正負を考慮する必要が無いので、評価値の大小の判定が容易である。
【0149】
そして、
図15に示されるように、イベントを達成したIF−THENルールに至るまでに用いられたIF−THENルールは、イベントを達成したIF−THENルールの評価値に加算される得点が傾斜配分される。イベントは、最終的に用いられたIF−THENルールのみならず、それまでに用いられたIF−THENルールが適正(又は不適正)であるから達成できる(又は達成できない)と考えられる。このように、本第2実施形態では、イベントの達成又は未達成に対する貢献度を示す得点を、イベントを達成又は未達成するまでに用いられたIF−THENルール、すなわち過去にさかのぼって、傾斜配分するので、より適切な得点をIF−THENルールの評価値に加算することができる。
【0150】
なお、IF−THENルールは、交戦シミュレーションで用いられた利用回数も関連付けられる。
【0151】
図16は、交戦シミュレーションを用いたIF−THENルールの評価値を変更するクラシファイアシステム(classifier system)52の模式図である。なお、評価値は、クラシファイアシステム52において信頼度という概念に相当し、得点は報酬という概念に相当する。
【0152】
クラシファイアシステム52は、ミシガンアプローチ(Michigan Approach)とも呼ばれる分類子システムの一つである。本第2実施形態では、IF−THENルールの集合を用いて得られる交戦シミュレーションの結果に基づいて、交戦シミュレーションに使用したIF−THENルールの信頼度を変更し、所定のタイミングでIF−THENルールに対してGAを行い新しいIF−THENルールを生成する。なお、以下の説明において、IF−THENルールを個体とも称呼する。すなわち、一つのIF−THENルールが一つの個体である。
【0153】
まず、クラシファイアシステム52は、IF−THENルールをコーディングし、初期の個体集合として所定数をランダムに生成する。生成された個体集合は、クラシファイア・ストア54に記憶される。なお、クラシファイアシステム52は、生成したIF−THENルールに対してGAを用いて新しいIF−THENルールを生成するので、世代Tを示すカウンタをT=1とし、交戦シミュレーションの実行回数Rを示すカウンタをR=1とする。なお、初期の個体集合に含まれるIF−THENルールの利用回数は0であり、評価値は初期値とされる。
【0154】
次に、クラシファイアシステム52は、交戦シミュレーションを開始し、ルール選択部56によって、交戦シミュレーションの時間軸である時間t
nにおける航空機40と目標機42の相対的な位置関係に適合したIF−THENルールを選択し、交戦シミュレーションに用いる。なお、適合するIF−THENルールが複数ある場合は、それらの評価値及び利用回数の少なくとも一方に応じた確率で1つのIF−THENルールを選択し、交戦シミュレーションに用いる。すなわち、評価値及び利用回数が高いIF−THENルールほど交戦シミュレーションに用いられる確率が高くなる。
【0155】
なお、適合するIF−THENルールが個体集合に含まれていない場合、交戦シミュレーションの時間軸である時間t
nにおける航空機40と目標機42の位置関係に適合したIF−THENルールを新たに生成する被覆を行う。この場合、新たに生成されたIF−THENルールは、個体集合に追加される。
【0156】
なお、新たに生成されるIF−THENルールは、IF文が航空機40と目標機42の位置関係に適合するように記述される一方、THEN文はランダムに記述され、利用回数は1、評価値は初期値とされる。
【0157】
そして、クラシファイアシステム52は、交戦シミュレーションの時間t
nが予め定められた時間t
Nに至るまで、各時間毎にIF−THENルールの選択、選択したIF−THENルールを用いた交戦シミュレーションを繰り返す。
【0158】
ここで、交戦シミュレーションにおいてイベントが発生すると、信頼度分配部58によって、イベントを発生させたIF−THENルールの評価値に得点が加算されると共に、イベントを達成するまでに用いられたIF−THENルールに得点が傾斜配分される。
【0159】
交戦シミュレーションの時間軸が時間T
Nに至ると、1回の交戦シミュレーションが終了し、交戦シミュレーションの実行回数Rはインクリメントされる。そして、同一の個体集合を用いた交戦シミュレーションが所定回数実行されると、GA実行部60によってIF−THENルールの個体集合に対するGAが行われる。なお、同一の個体集合を用いて交戦シミュレーションを所定回数実行する理由は、同一の個体集合を用いたとしても、選択されるIF−THENルールが変わる可能性があるため、交戦シミュレーションの結果が必ずしも毎回同じになるとは限らないためである。
なお、1回の交戦シミュレーションが終了する度に、個体集合に対するGAが行われてもよい。
【0160】
GA実行部60によるGAは、次のようなステップで行われる。
【0161】
まず、GA実行部60は、IF−THENルールを利用回数の多い順にソートし、利用回数が多い上位所定割合の個体集合と、それ以外の下位の個体集合に分ける。
【0162】
次に、GA実行部60は、下位の個体集合におけるIF−THENルールのうち、評価値が所定値以上であるIF−THENルールを、上位の個体集合に属する評価値の低いIF−THENルールと入れ替える。なお、入れ替えられる個体数は、個体集合に含まれる個体数に対する予めきめられた割合とされる。
【0163】
次にGA実行部60は、下位の個体集合に含まれるIF−THENルールに交叉を行う。交叉されるIF−THENルールは、交叉率により選定され、交叉点はランダムに決定される。
【0164】
次にGA実行部60は、下位の個体集合の所定割合に対して突然変異を起こさせる。
【0165】
このようにして、IF−THENルールに対してGAが行われる。すなわち、利用回数及び評価値の高い上位所定割合のIF−THENルールに対してはGAが行われない一方、利用回数及び評価値の低い下位所定割合のIF−THENルールに対してGAが行われるので、より利用回数及び評価値の高いIF−THENルールが残ることとなる。
【0166】
なお、GAにより生成されたIF−THENルールは、評価値が初期値とされ、利用回数が0とされる。
【0167】
GAが終了すると世代Tがインクリメントされ、GAが行われた個体集合を用いて、次の交戦シュミュレーションが行われる。そして、世代Tが予め定められた回数に達するまで、交戦シミュレーションが繰り返される。
【0168】
この結果、航空機40のHDD18に記憶するべきIF−THENルールが残ることとなる。そして、この残ったIF−THENルールが、航空機40のHDD18に記憶される。残ったIF−THENルールのうち、同じIF文であってもTHEN文が異なるものが存在している場合は、より評価値の高いIF−THENルールがHDD18に記憶されることとなる。
【0169】
また、IF−THENルールは、ランダムに生成されるのみならず、実際の航空機40のパイロットの判断を考慮にいれて、任意に生成されてもよい。これにより、IF−THENルールの確かさが増すこととなる。
【0170】
以上説明したように、本第2実施形態に係る航空機管理装置10は、航空機40と目標機42との相対的な位置関係に応じた航空機40の役割を示した複数のIF−THENルールを記憶したHDD18を備え、目標機42と航空機40との相対的な位置関係に応じたIF−THENルールをHDD18から選択し、選択したIF−THENルールから航空機40の役割を決定する。
従って、本第2実施形態に係る航空機管理装置10は、より最適な航空機40の役割を短い処理時間で決定できる。
【0171】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0172】
なお、本第3実施形態に係る航空機管理装置10の電気的構成は、
図1に示す第1実施形態に係る航空機管理装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0173】
図17は、本第3実施形態に係る航空機管理装置10の機能ブロック図である。
図17に示されるようにCPU12は、自機情報、僚機情報、及び目標機情報等が入力される。そして、CPU12は、役割決定処理を行って航空機40の役割を決定した後に、決定した役割に基づいて軌道決定処理を行い、航空機40の軌道を決定する。その後、CPU12は、決定した役割及び軌道を示す情報を送信部22へ出力する。送信部22は、決定した役割及び軌道を対応する航空機40へ送信する。なお、軌道決定処理は、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0174】
本第3実施形態に係るCPU12は、役割決定処理として、航空機40と目標機42との方位角に基づいた評価値によって、航空機40の役割を決定する。航空機40の目標機42に対する向きはミサイル44の発射や索敵や追尾にとって重要な要素となりえるので、本第3実施形態に係る役割決定処理は、より最適な航空機40の役割を決定できる。
【0175】
より具体的には、本第3実施形態に係る役割決定処理は、航空機40が目標機42と対向するために必要とする方位角の変更量(以下、「方位角変化量」という。)が少ない航空機40ほど、ミサイル44を発射する役割として高い評価値を与える。また、役割決定処理は、ミサイル44の誘導範囲の端周辺に目標機42及びミサイル44が位置する航空機40ほど、ミサイル44を誘導する役割として高い評価を与える。また、航空機40の索敵範囲の端周辺に目標機42が位置する航空機40ほど、目標機42を索敵や追尾する役割として高い評価値を与える。
【0176】
表3は、目標機42に対して航空機40でミサイル44を発射する場合の評価値(以下、「SHT評価値」という。)を示したSHT評価マトリクスである。
表3において、航空機B#1が目標機R#1にミサイル44を発射する場合のSHT評価値がV
S11である。航空機B#2が目標機R#1にミサイル44を発射する場合のSHT評価値がV
S21である。航空機B#1が目標機R#2にミサイル44を発射する場合のSHT評価値がV
S12である。航空機B#2が目標機R#2にミサイル44を発射する場合のSHT評価値がV
S22である。
【表3】
【0177】
ミサイル44を発射する航空機40としては、航空機40が目標機42に対して、ヘッドオンとなるための方位角変化量が小さいほど適している。この理由は、方位角変化量が小さいほど、目標機42に対してヘッドオンとなるために消費するエネルギーが小さいためである。
そこで、本第3実施形態に係る役割決定処理では、航空機40と目標機42とのアングル・オフが180°に近いほど、SHT評価値を高くする。また、本第3実施形態に係る役割決定処理では、アスペクト・アングルが180°に近いほどSHT評価値を高くし、航空機40と目標機42との距離が短いほどSHT評価値を高くする。
【0178】
表4は、目標機42に対して航空機40がミサイル44の誘導を行う場合の評価値(以下、「GUI評価値」という。)を示したGUI評価マトリクスである。すなわち、航空機B#1が目標機R#1にミサイル44を誘導する場合のGUI評価値がV
G11である。航空機B#2が目標機R#1にミサイル44を誘導する場合のGUI評価値がV
G21である。航空機B#1が目標機R#2にミサイル44を誘導する場合のGUI評価値がV
G12である。航空機B#2が目標機R#2にミサイル44を誘導する場合のGUI評価値がV
G22である。
【表4】
【0179】
本第3実施形態に係る役割決定処理では、航空機40と目標機42を結ぶ直線上にミサイル44がある場合、航空機40と目標機42とのアングル・オフが0°あるいは180°に近いほど、GUI評価値を高くする。また、本第3実施形態に係る役割決定処理では、航空機40と目標機42を結ぶ直線上にミサイル44がある場合、例えば誘導範囲をZ°とすると、アスペクト・アングルがZ/2°又は360°−Z/2°(アングル・オフが0°近辺の場合)あるいは180°±Z/2°(アングル・オフが180°近辺の場合)に近いほどGUI評価値を高くし、ミサイル44の誘導範囲の端周辺に目標機42が位置するほどGUI評価値を高くする。
すなわち、航空機40の誘導範囲とGUI評価値との関係を示す模式図である
図18に示されるように、GUI評価値は、誘導範囲の中心よりも誘導範囲の端周辺の方が高い。この理由は、前述したように、ミサイル44を誘導する航空機40は、目標機42を誘導範囲の端周辺で捉える方が好ましいためである。
【0180】
そして、本第3実施形態に係る役割決定処理は、算出したSHT評価値及びGUI評価値の合計が最も大きくなる組み合わせを選択し、選択した組み合わせを航空機40の役割として決定する。
【0181】
なお、目標機42の索敵や追尾を行う航空機40を決定する場合の評価値は、GUI評価値と同様に求められる。
【0182】
また、本第3実施形態に係る役割決定処理は、より適している航空機40ほどSHT評価値及びGUI評価値が大きくなるように算出しているが、これに限らず、より適している航空機40ほどSHT評価値及びGUI評価値が小さくなるように算出してもよい。
【0183】
以上説明したように、本第3実施形態に係る航空機管理装置10は、航空機40と目標機42との方位角に基づいた評価値によって、航空機40の役割を決定するので、簡易により最適な航空機40の役割を決定できる。
【0184】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
【0185】
本第4実施形態では、IF−THENルールの生成(最適化)について説明する。
IF−THENルールは、地上設備等で予め生成され、航空機40のHDD18に記憶される。上述した第2実施形態では、分類子システムとしてミシガンアプローチを用いて地上設備でIF−THENルールを最適化したが、本第4実施形態では、分類子システムとしてピッツアプローチ(Pitts Approach)を用いてIF−THENルールを最適化する。
なお、IF−THENルールの詳細については、第2実施形態に詳述しているのでその説明を省略する。また、本第4実施形態で行う軌道決定処理は、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0186】
本第4実施形態では、
図19に示されるように、初期世代生成処理によって、所定数m(例えば30)のIF−THENルールの集合を一つの個体とし、所定数n(nは例えば30)の個体を初期世代として生成する。
次に、所定数のIF−THENルールを用いた航空機40と目標機42との交戦を模擬した交戦シミュレーションによって、航空機40の軌道が個体毎に決定される。
そして、評価値算出処理によって、航空機40の目標機42に対する優位性を示す評価値が個体毎に算出される。
その後、GAによって、個体を構成するIF−THENルールを変化させて新たな世代とする毎に評価値算出処理が行われ、IF−THENルールの変化が所定のN世代(Nは例えば100)に達した場合に、最も高い評価値の個体に基づいて、HDD18に記憶されるIF−THENルールが決定される。
【0187】
以下、本第4実施形態に係るIF−THENルールの最適化について詳細に説明する。
【0188】
まず、初期世代生成処理は、IF−THENルールをコーディングし、初期のIF−THENルールとしてn×m個のIF−THENルールをランダムに生成する。そして、初期世代生成処理は、生成したIF−THENルールをm個ずつに分けn個の個体とする。
【0189】
次に行われる交戦シミュレーションは、上述した第2実施形態と同様に、模擬される航空機40と目標機42との初期位置を定め、模擬される目標機42を時間と共に予め設定された通りに移動させる。一方、模擬される航空機40の役割は、模擬される航空機40と目標機42との相対的な位置関係に基づいたIF−THENルールによって時間毎に決定され、模擬される航空機40の軌道は軌道決定処理(空戦軌道プログラム)により決定される。交戦シミュレーションによる交戦最大時間は、例えば10分のように予め定められている。交戦最大時間が過ぎると、航空機40と目標機42とが交戦中であっても、交戦シミュレーションは終了する。航空機40が目標機42を全て撃墜すると交戦最大時間に達していなくても、交戦シミュレーションは終了する。
【0190】
図20は、交戦シミュレーションにおいて模擬される航空機40と目標機42との位置関係の一例を示す図である。
図20の例では、航空機40は2機(B#1、B#2)で目標機42は1機(R#1)である。そして、予め定められた距離間隔及び飛行高度が、初期位置として与えられる。また、航空機40は、IF−THENルールから目標機42に対して、索敵や追尾(SNS)、ミサイル44の発射(SHT)、又はミサイル44の誘導(GUI)の少なくとも何れかの役割が与えられる。全ての目標機42には、何らかの役割を与えられた航空機40が割り当てられる。
【0191】
そして、空戦軌道プログラムに基づいて、航空機40の軌道が決定されつつ、航空機40と目標機42との交戦がシミュレーションされる。このとき、IF−THENルールに従い、航空機40の役割分担の変更もあり得ることとなる。
【0192】
また、個体を構成するIF−THENルールは、交戦シミュレーションに基づいて消去及び追加が行われる。
【0193】
具体的には、交戦シミュレーションにおいて、航空機40と目標機42の位置関係に適合したIF−THENルールがその個体中にない場合、IF−THENルールを新たに生成する被覆が行われる。この場合、新たに生成されたIF−THENルールは、その個体に追加される。
また、個体中に重複する(同じ)IF−THENルールが存在する場合、重複するIF−THENルールからランダムに一つが選択され、選択されたIF-THENルールが用いられる。一方、選択されなかったIF−THENルールは個体から消去される。
また、交戦シミュレーションの終了後に、使用されたIF−THENルールのみを残し、使用されていないIF−THENルールは個体から消去される。
【0194】
このように、IF−THENルールの追加及び消去が行われることによって、個体は可変長となるが、IF−THENルールの不足や重複に対応しつつ、評価値算出処理の再現性が確保されることとなる。
【0195】
次に評価値算出処理の詳細について説明する。
評価値は、交戦シミュレーションにおける最小彼我間距離に基づいて決定される。また、評価値は、航空機40からのミサイル44の発射状況、目標機42の撃破数、航空機40が搭載するミサイル44の残弾数等を加味し、各々重み付けを行ってもよい。
【0196】
下記(1)式は、評価値を算出する算出式の一例である。なお、(1)式に含まれる各項は、次元が異なる値となるため、それを正規化するための値で適宜除算されてもよい。
【数1】
【0197】
第1項は、交戦シミュレーションにおける最小彼我間距離である。最小彼我間距離が大きいほど、航空機40は目標機42から離れて交戦できているため、航空機40の目標機42に対する優位性が高い。
【0198】
第2項は、発射したミサイル44が目標機42に近づいた距離を評価するものである。ミサイル彼間距離は、ミサイル44が最も目標機42に近づいた時の距離であり、ミサイル44が目標機42に当たると、ミサイル彼間距離は0(零)となり、第2項の値がより大きくなる。すなわち、第2項は、ミサイル彼間距離が小さいほど、航空機40の目標機42に対する優位性が高いことを示している。
【0199】
第3項は、航空機40が撃破した目標機42の数に応じて与えられる評価値である。
【0200】
第4項は、航空機40が搭載するミサイル44の残弾数に応じて与えられる評価値である。
図21は、残弾数評価値の算出方法の一例を示す図である。
横軸は、航空機40が搭載するミサイル44の残弾数である。航空機40は、一例として、1機につきミサイル44を4発搭載しているとする。このため、
図20の例では、航空機40は2機であるため、航空機40が搭載しているミサイル44の総数は8発である。縦軸は、残弾数評価値である。
【0201】
そして、残弾数が8発の場合、目標機42に対してミサイル44を発射できる状況とならなかったため、残弾数評価値は最も低くなっている。そして、残弾数が7発の場合は、1発のミサイル44で目標機42を撃破したこととなるので、最も残弾数評価値は高い。残弾数が7発から少なくなるにつれて、残弾数評価値は低くなる。残弾数が少なくなるほど、航空機40の目標機42に対する優位性が低下するためである。
【0202】
第5項は、交戦シミュレーションを終えるまでに要した時間である。航空機40が、予め定められた交戦最大時間より短い交戦時間で目標機42を全て撃墜すると、第5項の値がより大きくなる。
【0203】
なお、(1)式で示される評価値は、第4実施形態だけに限らず、他の実施形態で用いられてもよい。さらに、(1)式を構成する第1項から第5項のうち、何れか1つ又は複数が組み合わされて、他の実施形態で用いられてもよい。
【0204】
以上のように、各個体に対する評価値が算出されると、IF−THENルールの変化がGAにより行われ、新たな世代の個体が生成される。
【0205】
なお、評価値算出処理において他の個体に比べて最も評価値が高かった個体は、GAの対象とはせず、次の世代でもそのまま残される。
【0206】
次の世代を生成するためにGAでは、n個の個体から交叉を行う個体を選択(例えばルーレット戦略)し、選択した個体のうちから2つの個体間で交叉(例えば2点交叉)を行う。また、GAは、個体を構成するIF−THENルールに対して所定の方法で選択(例えば確率的選択)された値を変化させる突然変異を行う。選択、交叉、及び突然変異が行われて新たな世代とされたM個の個体は、再び交戦シミュレーション及び評価値算出処理が行われる。
そして、予め定められたN世代に達すると、新たな世代を作るためのGAは行われず、最も高い評価値の個体が、HDD18に記憶されるIF−THENルールとして決定される。
【0207】
次に、GAで行われる交叉の詳細について説明する。
【0208】
本第4実施形態に係るGAは、選択された個体のうちから、2つの個体ずつの組み合わせに対して乱数(以下、「交叉乱数」という。)を生成し、交叉乱数が予め定められた交叉率以下の場合に、この2つの個体を交叉させる。なお、交叉乱数は、一例として0〜1であり、交叉率は0.8である。
【0209】
ここで、本第4実施形態に係る個体は、上述したように、個体を構成するIF−THENルールの数(以下、「構成ルール数」という。)が増減する。
図22は、本第4実施形態に係る交叉させる個体の模式図である。縦方向は、構成ルール数n
a,n
bを示している。なお、
図22の例ではn
a<n
bである。横方向は、IF−THENルールの長さを示している。なお、IF−THENルールは、上記第2実施形態の表1で示しているように、一例として21ビットで構成されており、この長さは不変である。
【0210】
そして、交叉は、構成ルール数の少ない個体を基準として行われる。これにより、個体の構成ルール数が異なる2つの個体間で交叉を行う場合でも、確実に交叉が行われる。構成ルール数の多い個体を基準とすると、構成ルール数が少ない個体に交叉させる対象が存在しない場合がある。
【0211】
本第4実施形態では、交叉を行う場合、その範囲を決定するために縦方向及び横方向に2つずつランダムに数値(以下、「RND値」という。)が生成される。そして、生成されたRND値の範囲に含まれるIF−THENルールの値が交叉される。
具体的には、交叉乱数が所定値(例えば0.4)以下の場合、
図23(a)に示されるように、RND値で囲まれる範囲のうち、AND条件となる範囲(
図23(a)においてハッチングされた範囲)が交叉される。一方、交叉乱数が所定値を超える場合、
図23(b)に示されるように、RND値で囲まれる範囲のうち、OR条件となる範囲(
図23(b)においてハッチングされた範囲)が交叉される。
なお、同じ値のRND値は、生成されない。RND値で囲まれる範囲が決定できなくなるためである。
【0212】
以下の説明において、
図23(a)で示される交叉方法を交叉パターン1といい、
図23(b)で示される交叉方法を交叉パターン2という。
【0213】
そして、交叉させる2つの個体のうち、構成ルール数の多い個体の縦方向に対してRND値を新たに生成する。生成したRND値を基準位置として交叉パターンが、構成ルール数の多い個体に当てはめられ、交叉パターンで決定された範囲で2つの個体間で交叉が行われる。
図24(a)は、交叉パターン1が当てはめられた構成ルール数の多い個体の模式図である。
図24(b)は、交叉パターン2が当てはめられた構成ルール数の多い個体の模式図である。なお、交叉パターン2では、構成ルール数の少ない個体の全体が、構成ルールの多い個体に含まれるようにRND値が選択される。
【0214】
次に、GAで行われる突然変異の詳細について説明する。
本第4実施形態に係るGAは、各個体を構成する全てのIF−THENルールの全ての値の位置(以下、「遺伝子座」という。)毎に対応する乱数(以下、「突然変異乱数」という。)を生成する。そして、GAは、突然変異乱数が予め定められた突然変異率以下の場合に、突然変異を起こさせる。なお、突然変異乱数は、一例として0〜1であり、突然変異率は0.3である。
【0215】
具体的には、突然変異させる遺伝子座がIF文にあたる位置であり、「#」である値は
、「0」又は「1」にランダムに変化される。なお、「#」である値が前後合わせた3ビットで意味をなす場合、その前後もまとめて変化される。
また、突然変異させる遺伝子座がIF文にあたる位置であり、「0」である値は、「1」に変化される。突然変異乱数が所定値以下の場合、該値は「#」に変化されてもよい。
また、突然変異させる遺伝子座がIF文にあたる位置であり、「1」である値は、「0」に変化される。突然変異乱数が所定値以下の場合、該値は「#」に変化されてもよい。
なお、「0」又は「1」を「#」に変化させる場合、前後合わせた3ビットで意味をなす場合、その前後をまとめて「#」に変化させる。
【0216】
さらに、突然変異させる遺伝子座がTHEN文にあたる位置である場合、「0」である値は「1」に変化され、「1」である値は「0」に変化される。
【0217】
以上説明したように、本第4実施形態によれば、IF−THENルールの集合を一つの個体とし、所定数の個体が初期世代として生成され、IF−THENルールを用いた航空機40と目標機42との交戦を模擬した交戦シミュレーションによって決定した航空機40の軌道に基づいて、評価値が個体毎に算出される。そして、個体を構成するIF−THENルールを変化させて新たな世代とする毎に評価値が算出され、IF−THENルールの変化が所定世代に達した場合に、最も高い評価値の個体に基づいてHDD18に記憶されるIF−THENルールが決定される。従って、航空機40の役割を決定するための適切なIF−THENルールが、航空機40のHDD18に記憶されることとなる。
【0218】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
【0219】
なお、本第5実施形態に係る航空機管理装置10の電気的構成は、
図1に示す第1実施形態に係る航空機管理装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0220】
本第5実施形態に係るCPU12は、目標機42に対する航空機40の役割の組み合わせ毎に、航空機40と目標機42との交戦を模擬した交戦シミュレーションを行う。そして、CPU12は、交戦シミュレーションの結果から求められる航空機40の目標機42に対する優位性を示す評価値に基づいて、航空機40の役割と航空機40の軌道を決定する。以下の説明において、上記処理を役割分担検証処理という。
【0221】
図25は、役割分担検証処理が行われる状況を示した模式図である。
図25では、一例として、航空機40が2機(B#1、B#2)又は4機(B#1〜B#4)の編隊を構成している。一方、目標機42が4機(R#1〜R#4)又は8機(R#1〜R#8)の編隊を構成している。
【0222】
本第5実施形態に係るCPU12は、
図26に示されるように、全ての目標機42に対する航空機40の役割の組み合わせを生成する。
図26の例は、航空機40が2機(B#1、B#2)であり、目標機42が4機(R#1〜R#4)であり、航空機40にミサイル44の発射(SHT)又は目標機42の索敵や追尾及び目標機42へのミサイル44の誘導(SNS&GUI)の少なくとも何れかの役割が与えられる場合である。すなわち、
図26のSHT及びSNS&GUIには、B#1を示す「0」又はB#2を示す「1」が当てはめられる。
そして、
図26の例では、(2×2)
4=256通りの役割分担の組み合わせが生じる。
【0223】
また、例えば、航空機40が4機(B#1〜B#4)であり、目標機42が8機(R#1〜R#8)の場合、(4×4)
8=4294967296通りの役割分担の組み合わせが生じる。さらに、航空機40のSNS&GUIの役割を、目標機42の索敵や追尾(SNS)とミサイル44の誘導(GUI)の二役に分割すると、(4×4×4)
8≒2814×10
14通りの役割分担の組み合わせが生じる。
【0224】
本第5実施形態に係る役割分担検証処理では、全ての役割分担の組み合わせに対して、交戦シミュレーションを行う。
交戦シミュレーションは、模擬される航空機40と目標機42との初期位置を僚機情報、自機情報、及び目標機情報に基づいて定め、模擬される目標機42を時間と共に予め設定された通りに移動させる。一方、模擬される航空機40の役割は、役割分担の組み合わせに基づいて決定され、模擬される航空機40の軌道は軌道決定処理(空戦軌道プログラム)により決定される。
なお、役割分担検証処理における評価値の算出方法は、上述した第4実施形態における評価値の算出と同様である。
【0225】
そして、CPU12は、最も評価値が高い役割分担の組み合わせをコックピット・パネルに表示させる。表示された役割分担を航空機40のパイロットが受け入れない場合、CPU12は、次に評価値が高かった役割分担の組み合わせをコックピット・パネルへ表示し、パイロットに受け入れられるまで、それを繰り返す。
なお、役割分担検証処理は、一例として編隊に参加している航空機40のうち指令機に備えられている航空機管理装置10によって行われる。そして、指令機のパイロットに受け入れられた役割分担は、他の航空機40へ送信される。
【0226】
また、全ての役割分担の組み合わせの交戦シミュレーションの所要時間が、予め定められた終了時間内に終了しない場合がある。例えば、上述した航空機40が4機、目標機42が8機等、航空機40や目標機42の機数が多い場合である。この場合、CPU12は、脅威度に応じた所定数の目標機42に対して、所定数の航空機40のみが対応するとして、役割分担の組み合わせを小規模にする。
終了時間内に交戦シミュレーションが終了するか否かは、航空機40及び目標機42の機数に基づいて判断される。また、目標機42の脅威度は、例えば、彼我間距離、目標機42の編隊形状、目標機42の搭載兵器、及び目標機42の方位角等により判断される。目標機42の搭載兵器は、地上設備や空中警戒管制機(AWACS)等によって判断される。
上記処理により、役割分担検証処理に要する負荷が小さくなり、その結果、役割分担検証処理に要する時間が短くなる。
【0227】
具体的には、CPU12は、例えば彼我間距離が短いほど脅威度が高いとして、目標機42をソートする。
図25の例では、目標機42は、R#1、R#2、R#3、R#4、・・・・、R#8の順にソートされることとなる。
そして、CPU12は、R#1、R#2の目標機42を前方に位置する航空機40であるB#1、B#2で対応し、R#3、R#4の目標機42を後方に位置する航空機40であるB#3、B#4で対応するとして、役割分担検証処理を行う。
このため、
図27に示されるように、R#1、R#2の目標機42に対するSHT及びSNS&GUIには、B#1を示す「0」又はB#2を示す「1」が当てはめられる。また、R#3、R#4の目標機42に対するSHT及びSNS&GUIには、B#3を示す「2」又はB#4を示す「2」が当てはめられる。
【0228】
この結果、R#1、R#2の目標機42及びR#3、R#4の目標機42に対しては、各々(2×2)
2=16通りの役割分担の組み合わせが生じる。また、航空機40のSNS&GUIの役割を、目標機42の索敵や追尾(SNS)とミサイル44の誘導(GUI)の二役に分割しても、役割分担の組み合わせは、各々(2×2×2)
2=64通りとなり、役割分担の組み合わせは劇的に減少する。
なお、R#5〜R#8の目標機42に対する役割分担検証処理は、R#1〜R#4の目標機42に対する役割分担検証処理が終了した後に、別途行われる。
【0229】
以上説明したように、本第5実施形態に係る航空機管理装置10は、目標機42に対する航空機40の役割の組み合わせ毎に、航空機40と目標機42との交戦を模擬した交戦シミュレーションを行う。そして、航空機管理装置10は、交戦シミュレーションの結果から求められる航空機40の目標機42に対する優位性を示す評価値に基づいて、航空機40の役割と航空機40の軌道が決定される。従って、航空機管理装置10は、より最適な航空機40の役割を決定できる。
【0230】
〔第6実施形態〕
以下、本発明の第6実施形態について説明する。
【0231】
なお、本第6実施形態に係る航空機管理装置10の電気的構成は、
図1に示す第1実施形態に係る航空機管理装置10の構成と同様であるので説明を省略する。
【0232】
本第6実施形態に係る航空機管理装置10は、上述した第1実施形態に係る役割決定処理と軌道決定処理との組み合わせた第1リソース管理処理、上述した第2実施形態に係る役割決定処理と軌道決定処理との組み合わせた第2リソース管理処理、上述した第3実施形態に係る役割決定処理と軌道決定処理との組み合わせた第3リソース管理処理を行う。そして、航空機管理装置10は、第1リソース管理処理、第2リソース管理処理、及び第3リソース管理処理によって求められた航空機40の役割及び軌道のうち、一つを航空機40の役割及び軌道として決定する。
【0233】
図28は、本第6実施形態に係る航空機管理装置10の機能ブロック図である。
図28に示されるようにCPU12は、第1リソース管理処理を行う第1リソース管理処理部70、第2リソース管理処理を行う第2リソース管理処理部72、及び第3リソース管理処理を行う第3リソース管理処理部74を備える。
【0234】
さらに、CPU12は、第1判定値算出部76、第2判定値算出部78、第3判定値算出部80、及び比較部82を備える。
【0235】
第1判定値算出部76は、第1リソース管理処理によって求められた航空機40の役割及び軌道から、予め定められた判定値を算出する。
【0236】
第2判定値算出部78は、第2リソース管理処理によって求められた航空機40の役割及び軌道から、予め定められた判定値を算出する。
【0237】
第3判定値算出部80は、第3リソース管理処理によって求められた航空機40の役割及び軌道から、予め定められた判定値を算出する。
【0238】
なお、判定値は、例えば、最小彼我間距離やミサイル44の残弾数等である。
【0239】
比較部82は、第1判定値算出部76、第2判定値算出部78、及び第3判定値算出部80によって算出された判定値を比較し、最も好ましい航空機40の役割及び軌道を出力する。
【0240】
なお、判定値として最小彼我間距離を用いた場合、比較部82は、最小彼我間距離が最も長い航空機40の役割及び軌道を出力する。また、判定値としてミサイル44の残弾数を用いた場合、比較部82は、ミサイル44の残弾数が最も多い航空機40の役割及び軌道を出力する。さらに、判定値として最小彼我間距離及びミサイル44の残弾数についての重み付き線形和を用いる場合は、この値が最も大きい航空機40の役割及び軌道を出力する。
【0241】
また、第1リソース管理処理、第2リソース管理処理、及び第3リソース管理処理が、各々異なる航空機40で行われ、それぞれで決定された航空機40の役割及び軌道並びに判定値が、所定の航空機40に送信され、該航空機40が判定値を比較してもよい。
【0242】
また、第4判定値処理部が更に備えられてもよい。第4判定値処理部は、役割分担検証処理(第4リソース管理処理)によって求められた航空機40の役割及び軌道から、予め定められた判定値を算出する。そして、比較部82は、第1判定値算出部76、第2判定値算出部78、第3判定値算出部80、及び第4判定値処理部によって算出された判定値を比較し、最も好ましい航空機40の役割及び軌道を出力する。
【0243】
さらに、第1から第4リソース管理処理の全ての結果を用いるのではなく、第1から第4リソース管理処理のうち少なくとも二つによって求められた航空機40の役割及び航空機40の軌道のうち、一つが航空機40の役割及び航空機40の軌道として決定されてもよい。
【0244】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0245】
例えば、上記各実施形態では、役割決定処理及び軌道決定処理は航空機40が行う形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、役割決定処理及び軌道決定処理は、編隊に参加している航空機40全てで分散処理しても良いし、航空機40から各種情報を受信した地上設備が行い、決定した航空機40の役割及び軌道を各航空機40へ送信する形態としてもよい。
【0246】
また、上記各実施形態で説明した役割決定処理及び軌道決定処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。