(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207911
(24)【登録日】2017年9月15日
    
      
        (45)【発行日】2017年10月4日
      
    (54)【発明の名称】空気入りタイヤ用リム
(51)【国際特許分類】
   B60B  21/02        20060101AFI20170925BHJP        
【FI】
   B60B21/02 H
【請求項の数】2
【全頁数】6
      (21)【出願番号】特願2013-150373(P2013-150373)
(22)【出願日】2013年7月19日
    
      (65)【公開番号】特開2015-20595(P2015-20595A)
(43)【公開日】2015年2月2日
    【審査請求日】2016年5月9日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代  哲司
          (74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野  直美
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】江口  集
              
            
        
      
    
      【審査官】
        鈴木  敏史
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          実開昭52−033801(JP,U)      
        
        【文献】
          実公昭40−001603(JP,Y1)    
        
        【文献】
          特開2008−132949(JP,A)      
        
        【文献】
          実開昭59−174902(JP,U)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B    21/02        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  空気入りタイヤのビード部のビード底面と接するリムフランジ底面と、前記ビード部の外側面と接するリムフランジ側面とを有するリムフランジを備えた空気入りタイヤ用リムであって、
  前記リムフランジ側面に、径方向に延びる凸条を設ける加工が施されており、
  前記凸条が、平面視においてS字状に湾曲するように、複数形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ用リム。
【請求項2】
  前記凸条が、前記リムフランジ側面からの高さが0.5mm以下、幅が2.0mm以下に形成されて、径方向に10.0mm以下の長さ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ用リム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、空気入りタイヤ用リムに関し、詳しくは車両走行時におけるリムずれの発生を抑制することにより、タイヤ/リムAssyでのユニフォミティーを良好に維持することができる空気入りタイヤ用リムに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  空気入りタイヤは、タイヤのビード部分をリムに組み付けるリム組みを行うことによりタイヤ/リムAssyとされて、車両に装着されるが、車両の駆動や制動などにより、タイヤとリムの間にずれ(リムずれ)を生じる場合がある。
【0003】
  このようなリムずれが発生した場合、車両側とタイヤ側の回転に力学的なロスが発生するだけでなく、位相がずれることによりタイヤ/リムAssyでのユニフォミティーの悪化を招いて、運転時に振動を引き起こす可能性がある。
【0004】
  そこで、このようなリムずれの発生を防止するため、タイヤ側とリム側の両面から種々の対策が講じられている。
【0005】
  例えば、タイヤ側からは、一般的にビード部分の内径を小さく設計することにより、タイヤとリムの嵌合圧を大きくして、リムずれの発生を防止することが行われている。
【0006】
  また、リム側からは、従来より、ビード下部のビードトゥからヒールに至る箇所が接するリムフランジの底面から側面にかけての箇所に凸条を形成することにより、滑りを防止してリムずれの発生を防止することが行われている(例えば、特許文献1)。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−132949号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
  本発明は、車両走行時におけるリムずれの発生を防ぐと共に、タイヤとリムとの嵌合不良の発生やユニフォミティーの悪化を抑制することができ、さらに、容易にタイヤとリムとの位相合わせを行うことができる空気入りタイヤ用リムを提供することを課題とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  請求項1に記載の発明は、
  空気入りタイヤのビード部のビード底面と接するリムフランジ底面と、前記ビード部の外側面と接するリムフランジ側面とを有するリムフランジを備えた空気入りタイヤ用リムであって、
  前記リムフランジ側面に、径方向に延びる凸条を設ける加工が施されて
おり、
  前記凸条が、平面視においてS字状に湾曲するように、複数形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ用リムである。
【0010】
  請求項2に記載の発明は、
  前記凸条が、前記リムフランジ側面からの高さが0.5mm以下、幅が2.0mm以下に形成されて、径方向に10.0mm以下の長さ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ用リムである。
 
【発明の効果】
【0012】
  本発明によれば、車両走行時におけるリムずれの発生を防ぐと共に、タイヤとリムとの嵌合不良の発生やユニフォミティーの悪化を抑制することができ、さらに、容易にタイヤとリムとの位相合わせを行うことができる空気入りタイヤ用リムを提供することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る空気入りタイヤ用リムにタイヤを組み付けたときの断面の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤ用リムに設けられた凸条のA−A断面図である。
【
図3】空気入りタイヤ用リムに設けられた凸条の形状の他の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の空気入りタイヤ用リムに設けられた凸条を拡大した斜視図である。
 
【発明を実施するための形態】
【0014】
  以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
 
【0015】
  図1は本実施の形態に係る空気入りタイヤ用リムにタイヤを組み付けたときの断面の一部を示す斜視図である。
 
【0016】
  図1に示すように、空気入りタイヤ用リム1は、空気入りタイヤBのビード部B1の底面B11と接するリムフランジ底面2aと、ビード部B1の外側面B13と接するリムフランジ側面4aとを有するリムフランジ3を備えている。そして、リムフランジ3のリムフランジ側面4aにのみリム1の径方向に沿って延びる凸条5が設けられている。
 
【0017】
  このような空気入りタイヤ用リム1は、通常、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属材料を鋳造あるいは鍛造してリム本体を作製した後、リムフランジ側面4aにのみ、凸条5を設ける加工を施すことにより作製される。
 
【0018】
  このように、リムフランジ側面4aに空気入りタイヤB側に突出した凸条5が設けられたリム1は、リム組み時、容易にタイヤとリムとの位相合わせを行って、タイヤBのビード部B1の外側面B13を凸条5に圧接させることにより、タイヤBをリム1に充分に係止することができるため、タイヤBのビードトゥB14からビードヒールB12に至る箇所が接するリムフランジの底面2aから湾曲面3aにかけて凸条を設けた従来のリムと異なり、ユニフォミティーの悪化を招いて、運転時に振動を引き起こすことがない。
 
【0019】
  また、タイヤBをリム1に充分に係止することができるため、ビード内径を必要以上に小さくしたタイヤとする必要がないため、タイヤとリムの嵌合不良が発生する恐れがなく、前記したような、加硫工程時における上付きによるDFMや、FV測定時におけるリム外れ不良などが発生する恐れもない。
 
【0020】
  なお、リムフランジ側面4aに設けられる凸条5の形状としては、タイヤBを充分に係止することができる形状であれば特に限定されないが、
図2に示すように、空気入りタイヤB側に突出した頂部が平面になっていると、タイヤBをより充分に係止することができ好ましい。
 
【0021】
  そして、
図2に示す凸条5としては、リムフランジ側面4aからの高さaが0.5mm以下、幅Wが2.0mm以下に形成されて、径方向の長さHが10.0mm以下に設定されていることが好ましい。そして、凸条5の高さaは0.2〜0.5mm、幅Wは1.0〜2.0mm、径方向の長さHは5.0〜10.0mmであればより好ましい。なお、径方向の長さHは、リムフランジ側面4aの湾曲に沿って測定した値である。
 
【0022】
  また、凸条5はリム1の径方法に延びていればよく、必ずしも
図1に示すようにリム径方向に沿って直線的に延びた形状でなくてもよく、径方向に曲線状に形成されていてもよい。例えば、
図3および
図4に示すように、凸条5の形状を、平面視においてS字状に湾曲するように形成すると、凸条とタイヤとの接触距離が増し、リムずれ防止効果がより向上するため好ましい。
 
【0023】
  このようなS字状の凸条5であっても、高さaを0.5mm以下、幅W1、W2を2.0mm以下、リムの径方向の長さHを10.0mm以下に設定することが好ましい。但し、凸条5の上端の幅W1と下端の幅W2は同一(W1=W2)である必要はない。
 
【0024】
  なお、リムずれ防止効果を更に向上させるために、凸条5がリムフランジ側面4aに復数設けられていてもよく、それぞれの凸条5が、その長辺が対向するようにリム周方向に沿って一定の間隔を空けて設けていることが好ましい。
 
【実施例】
【0025】
  以下実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0026】
1.タイヤ/リムAssyの作製
(実施例)
  試験体として、サイズ195/65R15のタイヤを、
図3および
図4に示すようなS字状の凸条がリムフランジ側面に形成されたリム(サイズ15×6J)にリム組みし、タイヤ内圧230kPaのタイヤ/リムAssyを作製した。なお、凸条の高さaは0.5mm、径方向の長さHは10mm、幅W1、W2は2.0mmとした。
【0027】
(比較例)
  タイヤのビード下部のビードトゥからヒールに至る箇所が接するリムフランジの底面から側面にかけての箇所に凸条が形成されたリムを用いたこと以外は、実施例と同様にして、リム組みを行い、タイヤ/リムAssyを作製した。
【0028】
2.評価
  作製された各タイヤ/リムAssyのリムずれを目視にて判断し、評価を行った。なお、上記サイズのタイヤにおけるリムずれの規格値は8mm以内である。
【0029】
  上記試験の結果、実施例のリムずれは1mm、比較例のリムずれは4mmであった。この結果より、実施例と比較例のいずれもがリムずれ規格を満たしているが、実施例の方が、比較例よりもリムずれ防止に顕著な効果を発揮することが確認された。
【0030】
  以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
 
 
【符号の説明】
【0031】
1            (空気入りタイヤ用)リム
2a          リムフランジ底面
3            リムフランジ
3a          リムフランジ湾曲面
4a          リムフランジ側面
5            凸条
B            (空気入り)タイヤ
B1          ビード部
B11        ビード底面
B12        ビードヒール
B13        ビード外側面
B14        ビードトウ
a            高さ
W            幅
W1          上端の幅
W2          下端の幅
H            長さ