(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るガス供給装置について、自動車としての燃料電池車に燃料ガスとしての圧縮水素ガスを充填するガス供給装置を例に、図面に基づいて説明する。なお、本発明に係るガス供給装置については、燃料電池車に圧縮水素ガスを充填するガス供給装置に限らず、例えば、CNG車に圧縮天然ガスを充填するガス供給装置や、或いはLPG車に液化天然ガスを充填するガス供給装置等、自動車に燃料ガスを充填するガス供給装置であるならば、適用可能である。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るガス供給装置のシステム構成図である。
【0020】
ガス供給装置10は、ガス供給ステーション(ガス充填所)90に設置され、ディスペンサユニット30によって、ガス蓄圧器(蓄ガス器)22に貯留されている燃料ガスとしての圧縮水素ガス(以下、水素ガスという)を、充填対象の燃料電池車(自動車)80の燃料タンク81に充填する。
【0021】
ガス蓄圧器22は、その流入口が圧縮機
21の吐出ポートと連通され、圧縮機21から、逆止弁23を介して、予め設定された設計圧力(例えば、75MPa)の水素ガスの供給を受ける。ガス蓄圧器22は、ガス供給源として、この設計圧力(75MPa)の水素ガスを貯留する。この場合、設計圧力(75MPa)は、充填対象の燃料タンク81における水素ガスの充填最高圧力(例えば、70MPa)よりも高くなるように、予め設定されている。
【0022】
圧縮機21には、例えば多段式圧縮機が用いられる。図示の例では、圧縮機21は、図示せぬガス蓄圧器に貯留されている低圧の水素ガスを加圧して、ガス蓄圧器22に貯留する設計圧力(75MPa)の水素ガスを生成し、ガス供給源であるガス蓄圧器22に貯留する。圧縮機21は、その一段目の吸入ポートが、前述の低圧の水素ガスを貯留するガス蓄圧器(図示せず)に接続されている。圧縮機21は、この低圧の水素ガスを段階的に圧縮して、設計圧力(75MPa)の水素ガスを生成する。
【0023】
通常、圧縮機21やガス蓄圧器22は、ガス充填作業を受ける燃料電池車80への安全面等の理由から、燃料電池車80の進入・退出やガス充填作業の邪魔にならない、ディスペンサユニット30とは離れたガス供給ステーション90の敷地内適所に、圧力発生ユニット20として設置される。そのため、ガス蓄圧器22に貯留されている水素ガスは、敷地面地下を延設されたガス供給配管91を介して、ガス充填作業エリアのディスペンサユニット30に供給されるようになっている。
【0024】
ディスペンサユニット30は、ガス蓄圧器22から水素ガスの供給を受け、これを燃料電池車80の燃料タンク81に充填する。ガス蓄圧器22は、少なくとも1台以上の燃料電池車80に充填可能な水素ガスを貯留可能になっており、ディスペンサユニット30に対するガス供給源になる。
【0025】
ディスペンサユニット30は、先端に充填カップリング(充填ノズル)52を備えた充填ホース51が、途中に緊急離脱カップリング(安全接手)53を配して、ディスペンサ筐体31から延設された構成になっている。
【0026】
充填カップリング52は、ガス充填作業時に、ガス充填作業を受ける燃料電池車80の燃料タンク81の接続口である充填口カップリング82に結合接続される。充填カップリング52及び充填口カップリング82には、それぞれ内部に常閉の弁(図示せず)が内蔵されており、両カップリング52、82が結合接続された接続状態では、各弁が開弁して両カップリング52、82間は連通状態になり、両カップリング52、82が切り離された結合解除状態では、各弁が閉弁した状態になり、両カップリング52、82それぞれは水素ガスが放出されない閉状態になり、ガスの流出が防止される。ガス充填作業を行われていない待機時は、充填カップリング52は、充填口カップリング82から切り離されて、通常、ディスペンサ筐体31に設けられた収納部33に掛止保持されている。燃料電池車80の充填口カップリング82は、逆止弁83を介して、燃料タンク81に連通接続されている。
【0027】
ディスペンサ筐体31は、その底面に底面開口部32が形成され、ディスペンサ筐体31内には、一端側がこの底面開口部32から臨んでガス供給配管91との接続部になり、他端側が充填ホース51の基端側との接続部になったガス供給管路41が設けられている。図示の例では、ガス供給管路41は、一端側から他端側に、1次圧力センサ42、流量計43、流量調整弁44、遮断弁45、冷却器46、2次圧力センサ47、燃料温度センサ48が順次配設された構成になっている。
【0028】
1次圧力センサ42は、ガス蓄圧器22から供給される水素ガスの供給ガス圧を検出する。そのため、1次圧力センサ42は、流量調整弁44並びに遮断弁45に対して上流側(ガス蓄圧器側)のガス供給管路41に設けられている。
【0029】
流量計43は、燃料タンク81に供給された水素ガスのガス供給量を計測する。流量計30には、例えば、センサチューブと呼ばれる管路を振動させるコリオリ式質量流量計が適用される。コリオリ式質量流量計は、振動する管路内を流れる水素ガスのガス流量に応じたコリオリ力による管路の流入側と流出側との位相差が流量に比例することを基にして、ガス供給管路41を流れる水素ガスの質量流量を計測する。
【0030】
流量調整弁44は、燃料タンク81に供給される水素ガスの流量を制御する。図示の例では、流量調整弁44は、弁体を開閉調整するアクチュエータの駆動媒体に圧縮空気を利用した空圧作動式の開閉調整弁からなる。流量調整弁44は、圧縮空気による作動圧室の加圧状態に応じて弁開度を変化させ、水素ガスの流量(通過流量)を調整する構成になっている。
【0031】
図示の例では、アクチュエータとしての作動圧室は、パイロット44p1を介して、圧縮空気供給源93と連通される一方、パイロット44p2を介して、大気圧開放された構成になっている。パイロット44p1は、電動式の切換弁からなり、アクチュエータとしての作動圧室を圧縮空気供給源93又は大気圧雰囲気のいずれか一方に対して選択的に連通させる。また、パイロット44p2は、電動式の可変開閉弁からなり、アクチュエータの作動圧室と大気圧雰囲気との間の連通状態を、可変開閉弁の弁開量(全開〜全閉)に応じて調整する。
【0032】
このようなパイロット44p1,44p2を備えた流量調整弁44では、パイロット44p1を圧縮空気供給源93に連通させた圧縮空気の供給状態で、パイロット44p2の弁開状態が全閉状態に調整されていると、アクチュエータの作動圧室の圧力状態は、圧縮空気供給源93からの圧縮空気の供給圧力に対応した最大加圧状態になり、流量調整弁44の弁開量は最大(例えば、全開)となり、水素ガスの流量は最大になる。また、パイロット44p1を圧縮空気供給源93に連通させた圧縮空気の供給状態で、パイロット44p2の弁開状態が適宜開弁状態に調整されていると、アクチュエータの作動圧室からはパイロット44p2の弁開量に応じて圧縮空気供給源93から供給された圧縮空気が大気圧雰囲気へ放出され、アクチュエータの作動圧室の圧力状態は、この圧縮空気の放出量に応じた、最大加圧状態に対して減圧調整された圧力状態になる。この結果、流量調整弁44の弁開量は、アクチュエータの作動圧室の減圧状態に応じて絞られ、水素ガスの流量が調整される。また、パイロット44p1を大気圧雰囲気に連通させた、圧縮空気供給源93から圧縮空気が供給されない大気圧開放状態では、アクチュエータの作動圧室の圧力状態は大気圧状態に減圧され、流量調整弁44の弁開量は最小(例えば、全閉)になり、水素ガスの流量は最小(0も含む)になる。このように、流量調整弁44は、その弁開状態をアクチュエータの作動圧室の圧力状態に応じて調整することができ、水素ガスの流量を最大及び最小からなる流量範囲で任意調整することができる。
【0033】
遮断弁45は、ガス供給管路41を連通/遮断する。図示の例では、遮断弁45も、弁体を開閉するアクチュエータの駆動媒体に圧縮空気を利用した空圧作動式の開閉弁からなる。パイロット45pは、電動式の切換弁からなり、アクチュエータとしての作動圧室を圧縮空気供給源93又は大気圧雰囲気のいずれか一方に対して選択的に連通させる。遮断弁45は、パイロット45pの切り換えに応じて、アクチュエータの作動圧室が圧縮空気の供給状態又は大気圧開放状態になり、弁体が開弁状態(水素ガス供給状態)又は閉弁状態(水素ガス遮断状態)になる。
【0034】
これに伴い、空圧作動式の流量調整弁44及び遮断弁45を用いた図示のディスペンサユニット30では、ディスペンサ筐体31内に、流量調整弁44、遮断弁45それぞれに駆動媒体である圧縮空気を供給するための圧縮空気管路49が配設されている。圧縮空気管路49は、一端側がディスペンサ筐体31の底面開口部32から臨んで圧縮空気供給配管92との接続部になり、他端側は分岐端となって、流量調整弁44のパイロット44p1、遮断弁45のパイロット45pそれぞれの圧縮空気流入ポートに接続されている。圧縮空気供給配管92は、ガス供給ステーション90に備えられている乾燥圧縮空気供給源93で生成した乾燥圧縮空気を、ディスペンサユニット30の流量調整弁44及び遮断弁45に供給するために、敷地内に配設された配管である。
【0035】
乾燥圧縮空気供給源93も、圧力発生ユニット20と同様に、燃料電池車80の進入・退出やガス充填作業の邪魔にならない、ディスペンサユニット30とは離れたガス供給ステーション90の敷地内適所に設置される。乾燥圧縮空気供給源93は、ディスペンサユニット30の流量調整弁44及び遮断弁45を含む、ガス供給ステーション90内の各装置の圧縮空気利用機器それぞれに駆動媒体として供給する乾燥圧縮空気を生成する。乾燥圧縮空気供給源93は、例えば、エアードライヤーが付設された圧縮機含み、供給先の装置の圧縮空気利用機器でドレンを生じさせない、乾燥圧縮空気を生成する。
【0036】
冷却器46は、充填直前のガスを氷点下(例えば、−20℃)に冷却して、燃料タンク81の温度がガス充填作業に伴って上昇することを防止する。冷却器46は、遮断弁45と2次圧力センサ47との間でガス供給管路41に設けられた熱交換器と、熱交換器に接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構が搭載されたチラーユニットとによって構成されている。チラーユニットは、通電によるその作動時には、例えばエチレングリコール等を含んだ冷却液を熱交換器との間に循環させる。
【0037】
2次圧力センサ47は、充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの充填ガス圧を検出する。燃料温度センサ48は、充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの温度を検出する。そのため、2次圧力センサ47、燃料温度センサ48は、流量調整弁44並びに遮断弁45に対して下流側(充填カップリング側)のガス供給管路41に設けられている。
【0038】
ディスペンサ筐体31の筐体面の作業者が操作し易い位置には、充填開始スイッチ62、充填停止スイッチ63、プリセットスイッチ64が備えられた操作部61が設けられている。充填開始スイッチ62は、ガス充填作業において、作業者によって充填カップリング52が燃料タンク81の充填口カップリング82に接続された後、流量調整弁44、遮断弁45を開弁させて燃料タンク81への水素ガスの充填を開始する際に、作業者によって操作される操作スイッチである。これに対し、充填停止スイッチ63は、ガス充填作業において、ガス充填中で開弁状態になっている流量調整弁44、遮断弁45を閉弁させて燃料タンク81への水素ガスの充填を終了させるため、作業者によってに操作される操作スイッチである。プリセットスイッチ64は、水素ガスの充填を開始する前に、予めガス充填量又はガス充填圧をプリセット値として設定入力するための操作スイッチである。
【0039】
また、ディスペンサ筐体31の視認し易い筐体面位置には、充填対象へのガス充填量、ガス充填圧力、単価等といったガス充填に関する情報を表示する表示器66が設けられている。
【0040】
制御装置70は、電源回路、メモリ,CPUを備えたマイクロコンピュータ等を含んで構成され、外部電源94から電源ライン95を介して電力供給を受け、ディスペンサユニット30の各部の作動を制御する。
【0041】
そのため、制御装置70には、操作部61からは充填開始スイッチ62、充填停止スイッチ63、プリセットスイッチ64それぞれの操作信号、1次圧力センサ42からのガス蓄圧器22から供給される水素ガスの供給ガス圧の検出出力、流量計43からの燃料タンク81に供給されている水素ガスの質量流量の計測出力、2次圧力センサ47からの充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの充填ガス圧、燃料温度センサ48からの充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの充填ガス圧、燃料温度センサ48からの充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの温度の検出出力が、それぞれ入力される。
【0042】
制御装置70は、これら操作信号、検出出力、及び計測出力の入力に基づいて、流量調整弁44、遮断弁45、冷却器46、及び表示器65を作動制御して、ディスペンサユニット30による燃料電池車80の燃料タンク81に対してのガス充填作業を、次のようにして実行制御する。
【0043】
図2は、制御装置によって実行制御されるディスペンサユニットによるガス充填作業の一実施例のフローチャートである。
【0044】
制御装置70は、外部電源94からの電源供給を受け、ディスペンサユニット30の稼動中、燃料温度センサ48の検出出力を随時読み込み、充填対象に供給される水素ガスの温度、若しくは充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスの温度が所定設定温度(例えば、−20℃)より上昇しないように、冷却器46を作動制御している。
【0045】
その上で、充填カップリング52がディスペンサ筐体31に設けられた収納部33に掛止保持されているガス充填作業の待機時は、充填カップリング52が収納部33から取り外されて燃料電池車80の充填口カップリング82に結合接続され、操作部61の充填開始スイッチ62が操作されて、ガス充填作業の開始が指示されたか否かを、制御装置70は、充填開始スイッチ62の操作信号の入力を基に監視している(ステップS1)。
【0046】
そして、ガス充填作業の開始の指示を検出すると、制御装置70は、操作部61の充填開始スイッチ62の操作と併せてプリセットスイッチ64の操作によりガス充填量又はガス充填圧のプリセット値が予め設定されている否かを確認し、プリセット値が設定されている場合にはこの設定されたプリセット値を記憶した上で、流量調整弁44のパイロット44p1,44p2、遮断弁45のパイロット45pをそれぞれ作動制御して、それぞれのアクチェータの作動圧室へ圧縮空気供給源93から乾燥圧縮空気を供給することによって流量調整弁44、遮断弁45を開弁作動し、充填対象の燃料電池車80の燃料タンク81への水素ガスの充填を開始する(ステップS2)。
【0047】
そして、制御装置70は、上述した冷却器46の作動制御に加え、随時、1次圧力センサ42、2次圧力センサ47の検出出力、及び流量計43、燃料温度センサ48の計測出力を取り込み、これらに基づき、流量調整弁44による水素ガスの流量制御、表示器65に表示する充填対象へのガス充填量等の演算表示制御を行っている。
【0048】
例えば、制御装置70は、これら検出出力や計測出力を監視しつつ、流量調整弁44の弁開度等を予め設定された制御方式で調整することにより、ガス供給管路41を介して燃料電池車80の燃料タンク81に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な状態に制御する。この場合、予め設定された制御方式としては、例えば、定圧上昇制御方式や定流量制御方式等が該当する。
【0049】
定圧上昇制御方式では、ガス充填時、2次圧力センサ47により検出された圧力値から得られる、充填対象の燃料タンク81側の圧力上昇率が、予め設定された所定の圧力上昇率に一致するようにパイロット44p1,44p2を作動制御して、流量調整弁44の弁開度を制御する。一方、定流量制御方式では、ガス充填時、流量計43より計測された単位時間当たりの流量が、予め設定された所定の流量に一致するようにパイロット44p1,44p2を作動制御して、流量調整弁44の弁開度を制御する。
【0050】
また、制御装置70は、これら流量調整弁44による水素ガスの流量制御とともに、ガス充填量等の演算表示制御として、流量計43からの計測出力である流量パルスを積算して水素ガスの充填量(体積)を演算し、この演算された充填量を、2次圧力センサ47により検出された、充填カップリング52が結合接続された充填対象の燃料タンク81に充填されている水素ガスのガス充填圧力等とともに、表示器65に表示制御する。
【0051】
さらに、制御装置70は、これら水素ガスの流量制御、ガス充填量等の演算表示制御とともに、水素ガスの充填開始後は、ガス充填量等の演算表示制御で演算された充填量が予め操作部61のプリセットスイッチ64の操作により設定されたプリセット値に達したか否か、操作部61の充填停止スイッチ63の操作信号が入力されたか否か、2次圧力センサ47により検出された圧力値が燃料タンク81の上限圧力である水素ガスの充填最高圧力(70MPa)に達したか否かを随時監視することによって、水素ガスの充填を終了させるか否かを監視している(ステップS3)。
【0052】
そして、制御装置70は、充填量のプリセット値への到達、充填停止スイッチ63の操作、又は燃料タンク81の上限圧力への到達の中のいずれ1つが生じたのを検出することによりガス充填の終了を検出すると、流量調整弁44については、パイロット44p1を圧縮空気供給源93からの乾燥圧縮空気の供給状態からアクチュエータの作動圧室内の大気圧開放状態に切り換えて、アクチュエータの作動圧室に供給され、かつ貯留されている既存の乾燥圧縮空気が大気圧開放されて流量調整弁44が閉弁する状態にし、遮断弁45についても、パイロット45pを圧縮空気供給源93からの圧縮空気の供給状態からアクチュエータの作動圧室内の大気圧開放状態に切り換えることにより、アクチュエータの作動圧室に貯留されている既存の乾燥圧縮空気が大気圧開放されて遮断弁45が閉弁する状態にする。すなわち、制御装置70は、流量調整弁44、遮断弁45それぞれのアクチュエータの作動圧室に貯留されている既存の乾燥圧縮空気を大気圧開放し、作動圧室の圧力状態を大気圧状態にすることによって、遮断弁45、流量調整弁44を閉弁する。これにより、燃料電池車80の燃料タンク81への水素ガスの充填を終了させる(ステップS4)。
【0053】
このガス充填の終了後、燃料電池車80の充填口カップリング82に結合されていた充填カップリング52は、作業者により取り外され、ディスペンサ筐体31に設けられた収納部33に掛止保持されて戻される。
【0054】
次に、本実施の形態に係るガス供給装置に備えられている結露の発生防止・除去機構について、
図1、
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0055】
図3は、
図1にシステム構成を示したガス供給装置のディスペンサユニットの外観正面図である。
【0056】
図4は、
図3に示したディスペンサユニットのX−X矢視方向の部分断面図である。
【0057】
なお、
図3、
図4においては、ディスペンサユニット30の
図1で既に説明した構成については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0058】
ガス供給装置10のディスペンサユニット30は、ガス充填作業を受ける燃料電池車80が進入・退出し易い敷地内の充填エリアの近傍に、
図3に示すようにして、敷地面にピット96を形成して設置される。
【0059】
ピット96は、コンクリート製若しくは鉄製の枠部材によって周囲の地中と画成された筒型若しくは枡型形状の凹みからなり、ディスペンサユニット30との取り合い用開口部97を敷地面に臨ませて地中に埋設して形成される。ピット内空間には、圧力発生ユニット20のガス蓄圧器22からの敷地面地下を延設されたガス供給配管91の接続口、圧縮空気供給源93からの敷地面地下を延設された圧縮空気供給配管92の接続口、さらに圧力発生ユニット20との間の信号線(図示省略)や外部電源94からの電源ライン95を内部に収容した電線管98の開口が露出して臨んでいる。そして、ガス供給配管91の接続口、圧縮空気供給配管92の接続口は、ディスペンサ筐体31の底面開口部32を介して、ガス供給管路41、圧縮空気管路49の一端側と接続され、信号線や電源ライン95は、同様に底面開口部32を介して、制御装置70の電源回路等に案内接続されている。ディスペンサユニット30は、ピット96の取り合い用開口部97にディスペンサ筐体31の底面開口部32を合わせて、ピットの取り合い用開口部を覆うようにして敷地面上にコンクリート製のベース(基台)99を介して設置されている。
【0060】
ディスペンサ筐体31内には、
図1に示したように、流量計43,流量調整弁44,遮断弁45等の機器が介在させられたガス供給管路41や、流量調整弁44,遮断弁45といった空圧作動機器のアクチュエータに動力としての乾燥圧縮空気を供給する圧縮空気管路49が配設されている。また、ディスペンサ筐体31には、制御装置70が収容され、操作部61及び表示器65がその操作面及び表示面を、
図3に示すように外部に臨ませて設けられている。
【0061】
より具体的に、表示器65は、
図4に示すように、表示パネル66やその駆動回路(図示省略)を、耐圧防爆構造からなる表示器ケース67の内部に収容された構成になっている。表示器ケース67には、そのケース筐体面に、透明板68によって閉塞された開口窓69が形成されており、この開口窓69には表示パネル66の表示面が臨んだ構成になっている。
【0062】
これに対し、ディスペンサ筐体31の表示部部分35は、ディスペンサ筐体31に形成された、強化ガラスや透明アクリル板のような透明板36によって閉塞される表示部筐体開口部37に、表示器65の表示器パネル66の表示面を臨ませる表示開口部38が形成された化粧板パネル39を配置した構成になっている。
【0063】
そして、表示器65は、表示パネル66の表示面が臨んだ表示器ケース67の開口窓69を、ディスペンサ筐体31の表示部筐体開口部37に配置された化粧板パネル39の表示開口部38に合致させるようにして、ディスペンサ筐体31内に配置固定されている。これにより、ディスペンサ筐体31の外部から、透明板36によって閉塞される表示部筐体開口部37、化粧板パネル39の表示開口部38を介して、表示器65の表示器パネル66の表示面が視認できるようになっている。
【0064】
このような
図1,
図3,
図4に基づく構成のガス供給装置10のディスペンサユニット30において、例えば、ピット96の枠部材に形成された配管導入孔やディスペンサ筐体の底面で覆われた取り合い用開口部97に生じた隙間からピット内に雨水等の水分が侵入すると、この侵入した水分より発生した湿気が、ディスペンサ筐体31の底面開口部32を介してディスペンサ筐体31の筐体内に侵入し、表示器65の透明板36の表面(外面)やディスペンサ筐体31の透明板36の裏面(内面)で結露し、表示器65の表示内容が見えづらくなる。
【0065】
このような表示器65の透明板68の表面(外面)やディスペンサ筐体31の透明板36の裏面(内面)での結露の発生を防止し、また、発生してしまった結露を除去するため、ディスペンサユニット30には結露発生防止・除去機構100が設けられている。
【0066】
結露発生防止・除去機構100は、ディスペンサユニット30に備えられた流量調整弁44や遮断弁45のアクチュエータの駆動媒体としての乾燥圧縮空気を利用した構成になっている。
【0067】
結露発生防止・除去機構100は、
図1,
図4に示すように、乾燥圧縮空気を案内する空気配管110と、空気配管を介して供給される乾燥圧縮空気を噴出させるノズル120とから構成される。
【0068】
図示の例では、空気配管110は、例えば可撓性を有する剛性チューブで構成されている。その上で、空気配管110は、一端側が、
図1に示すように、空圧作動式の開閉調整弁からなる流量調整弁44のアクチュエータの圧縮空気排出ポートに連通接続されている。ここで、流量調整弁44のアクチュエータの圧縮空気排出ポートは、
図2に示したガス充填作業のフローチャートで、流量調整弁44が閉弁する際(ステップS4)、作動圧室の大気圧開放のためにアクチェータの作動圧室に貯留されている既存の乾燥圧縮空気が放出される流量調整弁44のアクチュエータに備えられたポートである。具体的に、
図1に示した流量調整弁44においては、パイロット44p2の圧縮空気排出ポートが該当する。これにより、ガス充填作業時に、定圧上昇制御方式又は定流量制御方式といった予め設定された流量制御方式で流量調整弁44の弁開度の調整が行われている際、流量調整弁44の弁開度に応じて開弁調整されたパイロット44p2を介し、流量調整弁44のアクチュエータの作動圧室か排出される乾燥圧縮空気が、空気配管110の一端側から随時導入されるようになっている。
【0069】
そして、空気配管110は、
図1,
図4に示すように、ディスペンサ筐体31内における表示器65の透明板68の表面(外面)とディスペンサ筐体31の透明板36の裏面(内面)との間の空間S又はその近傍に到るように、ディスペンサ筐体31内を配設され、空気配管110の他端側はノズル120と連通接続されている。
【0070】
ノズル120は、一乃至複数の噴出口を有し、図示の例では、乾燥圧縮空気を主にディスペンサ筐体31の透明板36の裏面(内面)側に噴きつけるように噴出口の向きを調整されて固定配置されている。このノズル120の噴出口の向きは、空間Sと透明板68を挟んだ表示器ケース67内との温度差よりも、空間Sと透明板36を挟んだ外部雰囲気との温度差の方が大きくなり易く、透明板68の表面(外面)よりも透明板36の裏面(内面)の方が結露が発生し易いことに基づくものである。そして、ノズル120の噴出口は、乾燥圧縮空気を透明板36の裏面(内面)側に噴きつける際は、透明板36の裏面に対してシャワー状に乾燥圧縮空気を噴きつけることが可能な形状になっている。
【0071】
次に、この結露発生防止・除去機構100による結露発生防止・除去動作について、
図2のフローチャートで示したディスペンサユニット30によるガス充填作業と関連させて説明する。
【0072】
結露発生防止・除去機構100では、流量調整弁44の開閉調整により弁体が閉弁調整され、アクチュエータに備えられた圧縮空気排出ポートからその閉弁調整量に応じた乾燥圧縮空気が排出されるとき、この排出された乾燥圧縮空気が空気配管110を介してノズル120に供給され、ノズル120から噴出される。
【0073】
そのため、
図2のフローチャートで示したディスペンサユニット30によるガス充填作業では、例えば、ステップS2で、流量調整弁44、遮断弁45それぞれのアクチェータの作動圧室へ圧縮空気供給源93から乾燥圧縮空気を供給することによって開弁作動させた後、制御装置70が、1次圧力センサ42、2次圧力センサ47の検出出力、及び流量計43、燃料温度センサ48の計測出力を取り込んで、これら出力に応じて、流量調整弁44を用いて水素ガスの流量制御を行う際に、流量調整弁44の開弁量を調整するためパイロット44p2からアクチュエータの作動圧室内の乾燥圧縮空気が排出されている場合は、その都度、圧縮空気排出ポートから排出される乾燥圧縮空気が空気配管110を介してノズル120に供給され、ノズル120から噴出される。
【0074】
また、ステップS4で、ガス充填の終了時に、流量調整弁44を閉弁するためアクチュエータの圧縮空気排出ポートから作動圧室内の乾燥圧縮空気が排出される場合にも、この排出される乾燥圧縮空気がパイロット44p2から空気配管110を介してノズル120に供給されることとなり、ノズル120から噴出される。
【0075】
これにより、ディスペンサ筐体31内における表示器65の透明板68の表面(外面)とディスペンサ筐体31の透明板36の裏面(内面)との間の空間Sの雰囲気を、乾燥圧縮空気による湿度が極めて低い雰囲気に置き換えることができ、空間Sの雰囲気の湿度を下げて、透明板68の表面(外面)や透明板36の裏面(内面)に結露を発生しにくくすることができる。
【0076】
また、仮に、透明板36の裏面(内面)に結露が発生している場合であっても、ノズル120から湿度が極めて低い乾燥圧縮空気を透明板36の裏面(内面)に結露に噴きつけることができるので、結露の蒸発が促進され、結露の除去性能が向上する。
【0077】
さらに、空間Sへの乾燥圧縮空気の噴出は、空圧作動機器としての流量調整弁44におけるアクチュエータの圧縮空気排出ポートからの作動圧室の乾燥圧縮空気の排出を利用することによって、結露発生防止・除去機構100はこの乾燥圧縮空気を空気配管110を介してノズル120に導く構成で済み、ディスペンサ筐体に結露防止専用の圧縮機等の機器をわざわざ設ける必要もないので、コストアップを抑制することができる。
【0078】
加えて、透明板36の裏面(内面)に噴きつける乾燥圧縮空気に、流量調整弁44のアクチュエータの圧縮空気排出ポートから排出される乾燥圧縮空気を利用することによって、流量調整弁44の作動に応じて、スポット的に結露の発生防止及び除去を自動で行うことができる。
【0079】
特に、流量調整弁44を用いることによって、ガス充填作業時における充填対象への供給ガス(充填ガス)の流量調整中、ガス充填停止時若しくは終了時には、制御弁の閉弁によってアクチュエータから排出された乾燥圧縮空気が表示窓の内面に噴きつけられるので、ガス充填作業のガス充填中並びにガス充填終了時における、充填対象へのガス充填量、ガス充填圧力、単価等といったガス充填に関する情報の確認を、結露の影響なく確実に行うことができる。
【0080】
なお、上記した実施の形態では、空気配管110の一端側は、流量調整弁44のパイロット44p2の圧縮空気排出ポートに接続したが、パイロット44p1の圧縮空気排出ポートにも分岐接続される構成であってもよく、要は、流量調整弁44の圧縮空気排出ポートに接続されていればよい。また、流量調整弁44の具体的な構成についても、上記した実施の形態では、パイロット44p1は、圧縮空気供給源93からの圧縮空気の供給状態とアクチュエータの作動圧室内の大気圧開放状態とを切り換える構成としたが、単に圧縮空気供給源93からの圧縮空気の供給・遮断状態を行う構成とし、アクチュエータの作動圧室内の大気圧開放は、このパイロット44p1を遮断状態にしてパイロット44p2の開放によって行う構成であってもよく、図示の構成に限定されない。さらに、上記した実施の形態では、空気配管110の一端側は、流量調整弁44のアクチュエータの圧縮空気排出ポートに接続した構成としたが、遮断弁45のアクチュエータの圧縮空気排出ポートに接続した構成としてもよい。
【0081】
また、上記した実施の形態では、乾燥圧縮空気を、ディスペンサユニット30に備えられた流量調整弁44、遮断弁45といった空圧作動機器のアクチュエータの圧縮空気排出ポートから排出される乾燥圧縮空気を利用する構成としたが、空圧作動機器のアクチュエータに乾燥圧縮空気を供給する圧縮空気管路49に、空圧作動機器と並列に、結露発生防止・除去機構100の空気配管110を接続する構成とすることも可能である。ただし、この場合は、流量調整弁44、遮断弁45といった空圧作動機器を、透明板36の裏面(内面)への乾燥圧縮空気の噴きつけを制御する制御機構としてそのまま利用できなくなるが、乾燥圧縮空気の噴きつけを制御する開閉弁を空気配管110又はノズル120に設けることにより、ガス充填作業の実施に応じて乾燥圧縮空気の噴きつけを行うことができる。
【0082】
このように、本発明に係るガス供給装置の実施の形態は、ディスペンサユニット30に備えられた流量調整弁44、遮断弁45といった空圧作動機器のアクチュエータの駆動媒体である乾燥圧縮空気を用い、この乾燥圧縮空気を表示器65の表示面(開口窓69が該当)が臨むディスペンサ筐体31の表示窓(透明板36によって閉塞された表示部筐体開口部37が該当)の内面に噴きつけることにより、結露の発生を防止し、また発生した結露を除去するものであれば、その具体的な構成は上述した実施の形態に限定されず、種々の変形例が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 ガス供給装置、 20 圧力発生ユニット、 21 圧縮機、
22 ガス蓄圧器、 23 逆止弁、 30 ディスペンサユニット、
31 ディスペンサ筐体、 32 底面開口部、 33 収納部、
35 表示部部分、 36 透明板、 37 表示部筐体開口部、
38 表示開口部、 39 化粧板パネル、 41 ガス供給管路、
42 1次圧力センサ、 43 流量計、 44 流量調整弁、
45 遮断弁、 46 冷却器、 47 2次圧力センサ、
48 燃料温度センサ、 49 圧縮空気管路、 51 充填ホース、
52 充填カップリング、 53 緊急離脱カップリング、
61 操作部、 62 充填開始スイッチ、 63 充填停止スイッチ、
64 プリセットスイッチ64、 65 表示器、 66 表示パネル、
67 表示器ケース、 68 透明板、 69 開口窓、
70 制御装置、 80 CNG車、 81 燃料タンク、
82 充填口カップリング、 90 ガス供給ステーション、
91 ガス供給配管、 92 圧縮空気供給配管、
93 圧縮空気供給源、 94 外部電源、 95 電源ライン、
96 ピット、 97 取り合い用開口部、 98 電線管、 99 ベース、
100 結露発生防止・除去機構、 110 空気配管、 120 ノズル。