(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に水を溜める外槽と、前記外槽内に回転自在に配置され、洗濯物を収容する回転ドラムと、この回転ドラムを駆動するモータと、前記回転ドラムを支持する筐体と、前記洗濯物を出し入れするための投入口を塞ぐドアと、前記回転ドラム内に送風するための送風手段とを備え、乾燥時に、前記回転ドラムを回転させ、前記洗濯物が持ち上がり重力で落下する動きを繰り返しながら、この落下する前記洗濯物に風が当たるドラム式洗濯乾燥機において、前記送風手段から前記ドア側へ風を導く第1の風路と、前記ドアの内部に形成されて前記第1の風路からの風を前記回転ドラム内へ導く第2の風路を有し、該第2の風路は前記回転ドラム内へ風を吹き出す吹出部を有し、該吹出部は吹出口が低くなるように傾斜部を設けており、前記第2の風路の前記吹出部の近傍に通気蓋が設けられ、前記通気蓋を支持する支持具が前記第2の風路内に設けられ、前記支持具は前記第2の風路内に止め具で固定されることを特徴とするドラム式洗濯乾燥機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、第1の実施例に係るもので、ドラム式洗濯乾燥機の斜視図を示す。ベース1の上部には鋼板と樹脂成形品で組合わされて構成された外枠2が載せられている。外枠2の正面には洗濯物30を出し入れするドア3と前面カバー22及び背面には背面カバー23が設けられている。
【0013】
図2は、循環乾燥工程時の空気の流れを示すもので、ファン49で昇圧した空気を、ファン49出口に設けたヒータ50で加熱した後、回転ドラム29内に送風して、乾燥対象物である洗濯物30から水分を蒸発させ、その蒸気を含んだ空気を外槽20、送風ダクト40を通過させる間に上記外槽20、送風ダクト40と熱交換させて、蒸気の一部を結露させて除湿する。また
図3は、ファン49出口からドア内部風路55(第2の風路)へと導くファン出口ダクト56(第1の風路)周辺の内部構造を筐体の一部を切断して示した斜視図である。ファン49により昇圧され、さらにヒータ50により加熱された空気は、ファン出口ダクト56からドア内部風路55を通して、吹出部53から回転ドラム29内に吹出される。
【0014】
ドア3は、回転ドラム29側に凸となる形状で、その内部空間に、一端(上流側)をファン49出口に設けたダクトと連結する開口部54とし、他端(下流側)を回転ドラム29内側に向けた吹出部53とするドア内風路55を設けている。ファン出口ダクト56は、ドア3のヒンジ57を支える支持部材58に固定されている。またファン出口ダクト56内には、ファン49と前記支持部材58の間にジャバラホース部59を設けた構成としている。ファン出口ダクト56のジャバラホース部59よりも下流側は、支持部材58を介して基本的にはドア3やヒンジ57と同じ振動形態となる。しかしながらファン49はファンモータの振動や外槽20及び送風ダクト40からの振動を受けるため、支持部材58とは異なる振動形態となる。本実施例では、上記のような構成とすることにより、ジャバラホース部59にて異なる2つの振動形態からの振動を吸収させることができ、安定した運転が可能となっている。またドア3の開口部54との接触部にあたるファン出口ダクト56側には、パッキン38が設けられているので、循環空気が漏れる心配はない。
【0015】
このため、貫通する流路が内部に設けられたドア3で投入口を塞ぐ動作の結果、ドア内風路55の開口部54がファン49の下流側にあるファン出口ダクト54と接続され、ファン49からドア3を貫通して回転ドラム29内へと空気を導く風路が形成される。また本実施例では、洗濯物を出し入れするためにまず本体のドアを開き、さらに内蓋を開く必要のある、縦型の洗濯乾燥機と比べて、1回の開閉動作で洗濯物30を出し入れできるので操作性が高い。
【0016】
まず、本実施例におけるドラム式洗濯乾燥機の概略構造および洗濯工程について簡単に説明する。外枠2の内側には、内部に水を溜める外槽20が備えられる。外槽20は下部の複数個のサスペンション21により支持されている。外槽20の内側に回転自在に配置された回転ドラム29には、ドア3を開けて投入された洗濯物30があり、回転ドラム29の開口部の外周には、脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。また、回転ドラム29の側壁の内側には軸方向に延びる複数個のリフター33が設けられている。このため、洗濯や乾燥のときに回転ドラム29が回転すると、洗濯物30はリフター33と遠心力で側壁に沿って持ち上がり、重力で落下するような動きを繰り返す。回転ドラム20の回転中心軸は、水平または開口部側が高くなるように傾斜している。
【0017】
回転ドラム29は金属製フランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用モータ36に直結されている。外槽20の開口部には弾性体からなるゴム系のベローズ4が取付けられている。このベローズ4は外槽20内とドア3との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転ドラム29は、側壁に遠心脱水および通風用の多数の貫通孔(図示せず)を有する。外槽20の底壁に開口した排水孔37は、排水弁8を介して排水ホース9に接続する。またオーバーフローホース17はドラム背面の送風ダクト40に取り付けられており、排水弁8手前で排水口37からのホースと合流させる。即ち、排水弁8が開となれば、排水ホース9と連通される構成となっている。
【0018】
回転ドラム29内の洗濯物30に送風を導くファン出口ダクト56と送風手段たるファン49とヒータ50を含む乾燥装置6は、外槽20から離して外枠2に固定(図示せず)されている。また排水孔37には排水温度サーミスタ27が、ファン49の吸込口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。このように構成したドラム式洗濯乾燥機は、洗い工程においては、回転ドラム29内に洗濯物30を投入し、排水弁8を閉じた状態で給水して外槽20に洗濯水を溜め、回転ドラム29を回転させて洗濯物30を洗濯する。ドラム式洗濯乾燥機の場合、回転ドラム29の回転に伴って、リフター33により洗濯物30をドラム最上部付近に持ち上げた後、重力により回転ドラム29底部に落とすたたき洗いが主流となる。オーバーフローホース17が送風ダクト40に接続されているため、場合によっては送風ダクト40のオーバーフローホース17の位置まで洗濯水は流入してくる。また洗い工程中に、送風ダクト40内のリントを洗い流すために、送風ダクト40上部に設けた注水具(図示せず)より送風ダクト40内に注水する場合もある。外槽20背面部と送風ダクト40下部をつなぐジャバラホース52ならびに外槽側取付部18に、送風ダクト40から外槽20背面部に向かって下り傾斜をつけてあるため、流入してきた水は、洗い及びすすぎ終了時には、速やかに外槽20から排水口39を通して機外へ排水される。
【0019】
また、脱水工程においては、排水弁8を開いて外槽20内の洗濯水を排水した後、回転ドラム29を回転させて遠心脱水する。脱水された水の一部が送風ダクト40側に巻き上げられてきても、ジャバラホース52ならびに外槽側取付部18に下り傾斜をつけてあるため、速やかに外槽側に戻すことが出来る。またドア内風路55においても、回転ドラム29の背面側への傾斜に合わせて、前面カバー22側に対して吹出部53側が低くなる傾斜を設けている。これにより、もし洗濯水がドア内風路55側に浸入してきても、速やかに回転ドラム29側に戻すことができる。
【0020】
脱水回転数を上げて、回転ドラム29が高速回転すると、外槽20にも振動が伝わり、外槽20自身も僅かながら振動する。送風ダクト40は筐体に固定されているため、ジャバラホース52が連動して、振動の一部を吸収する。さらに回転ドラム29の高速回転に伴って、振動がドア3側にも伝わるが、ファン出口ダクト56のジャバラホース部59により、ファン49への振動伝播を吸収して防ぐことができる。
【0021】
乾燥工程の前半では、
図2に示したように、ファン49による断熱圧縮で昇温した空気を回転ドラム29内へ吹出部53を通して送風して、洗濯物30と熱交換させるとともに洗濯物30から水分を蒸発させる。蒸発した水分を含んで高湿となった空気を、送風ダクト40を通してファン49の吸込口に導き、再び昇圧した後、回転ドラム29内へ送風する。吸気弁13は送風ダクト40の壁面の一部を形成して、送風ダクト40の内と外を隔離した全閉状態としている。高湿な空気は、外槽20及び送風ダクト40を通るときに、外槽20及び送風ダクト40とも熱交換して、もし露点温度以下となれば、飽和蒸気圧が下がる分の水分を外槽20及び送風ダクト40の壁面において凝縮させる。送風ダクト40内で凝縮した水分は、やがて送風ダクト下部からジャバラホース52に溜まってくるが、送風ダクト40から外槽20の背面部に向かって下り傾斜をつけてあるため、凝縮水も外槽20を介して排水口39付近まで移送できる。もし凝縮量を増やして乾燥時間の短縮を図る場合は、送風ダクト40内上部に冷却水散水部(図示せず)を設けて、送風ダクト40内に散水して空気を露点以下まで強制的に冷やして、除湿しても何ら差し支えない(水冷除湿方式との併用)。
【0022】
乾燥工程の後半では、吸気弁13および排水弁8を開く。
図4に、乾燥工程後半におけるドラム式洗濯乾燥機内の空気の流れを示す。ファン49吸込側にある吸気弁13を送風ダクト40の内側(風路内)に折り曲げるようにして開く。開度θは、送風ダクト40の風路を大略(漏洩レベルは無視)塞ぐように開いた全開状態θTに対して、本実施例では略半分開く(0<θ<θT)。吸気弁13から送風ダクト40外の筐体内空気を吸い込み、循環空気の一部と混ぜて、回転ドラム29内へ送風する。回転ドラム29から押し出される空気は、排水孔37より排水ホース9を通り、排水口39に排出される。一般的な排水トラップの場合、水封じ高さは50〜80mm程度あるため、この工程の初めに、吸気弁13を全開にして、ドラム内圧力を上げて水封じを破っておく。水封じを破るには排水ホース9側の圧力は約1000Pa以上必要となるので、適度にファン49の回転数を上げて昇圧するのが好ましい。また乾燥が進むにつれ、凝縮水が生じ、排水トラップ10に溜まって来る。このため、一定間隔をおいて、水封じを破る動作を行なう。
【0023】
回転ドラム29からの排気は、排水孔37から排水弁8までの接続ホースと、オーバーフローホース17とを通して排気させる。一方、主に筐体底部から筐体内に取り込まれた吸気は、筐体上部にある吸気弁13までの間に、回転ドラム駆動用モータ36やファンモータ51の周囲を通されるため、高温となって吸気弁13から送風ダクト40内に取り込まれる。このため通常は、ファン49出口に設けてあるヒータ50は通電する必要はない。回転ドラム29からオーバーフローホース17を通して排水弁8から排気する排気経路内に、外槽20背面部の外槽側取付部18とジャバラホース52が含まれるが、外槽20背面部から送風ダクト40に対しては上り傾斜となり、排気の送風ダクト40への流入角は、90度よりも大きい鈍角となり、排気経路の風路損失を減らすことが出来る。
【0024】
図5は、本実施例における乾燥工程のヒータ50の入力、ファン49の回転数、吸気弁13の開閉状態の設定パターンと、回転ドラム29に送り込むファン49の出口空気(吹出し空気)、ファン入口空気、ドラム出口空気の温度変化を模式的に示したものである。乾燥工程前半では、空気を、回転ドラム29と送風ダクト40の間でファン49により循環させる。このため、ファン入口空気とドラム出口空気は、送風ダクト40を通過する際の放熱損失などにより、数℃低下するが,おおよそ同じ温度レベルとなる。この工程では、ファン49出口に設けたヒータ50による加熱で、循環空気は温度上昇していく。それとともに循環空気は、回転ドラム29内で洗濯物30と熱交換し、その熱の一部で蒸発した水分を含むことにより、高湿となる。高湿となった空気は回転ドラム29から外槽20、続いて送風ダクト40を介してファン49吸込みに戻される。このとき、外槽20や送風ダクト40による冷却で、露点以下となる場合は、外槽20、送風ダクト40内壁で凝縮し、除湿される。これにより、外槽20や送風ダクト40は循環空気とともに序々に温度が上がり、循環系にも熱を蓄えることができる。
【0025】
乾燥工程の後半では、ファン49吸込側にある吸気弁13を開くことにより、送風ダクト40外の筐体内空気を吸い込み、循環空気の一部と混合させた後、ファン49により回転ドラム29内へ送風する。即ちこの工程では、ファンモータ51や回転ドラム駆動用モータ36の排熱により温められた筐体内空気を循環空気内に取り込むので、外気よりも温度の高い空気を、ヒータ50を使わずに回転ドラム29に送ることができる。このとき、取り込んだ空気と同量の循環空気を、オーバーフローホース17を介して機外へ排気する。
【0026】
乾燥終了後は、排水口39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン49の回転数を下げて、給水電磁弁28(図示せず)を開いて水を流し、排水トラップ10の水封じを回復させて乾燥工程終了となる。
【0027】
このように、乾燥終了後に、排水ホース9側の圧力を所定以上に保ちながら排水ホース9を経由して排水口39に水を供給することにより、排水口39からの臭気を抑えながら排水トラップ10の水封じを回復させることができる。なお、この排水トラップ10の回復は、排水ホース9側の圧力を高く保っていれば、(排水ホース排気の)乾燥工程の最後又は乾燥工程の終了後のいずれでも良い。
【0028】
図6は、洗濯乾燥機の制御装置41のブロック図である。26はマイクロコンピュータで、各スイッチ24,24a,24bに接続される操作ボタン入力回路25や水位センサ44,温度センサ45と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ26からの出力は、駆動回路5に接続され、給水電磁弁28,排水弁8,ドラム駆動用モータ36,ファンモータ51,本実施例の加熱手段であるヒータ50,吸気弁13などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯乾燥機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオード表示器7や発光ダイオード15,ブザー19に接続される。マイクロコンピュータ26は、電源スイッチ47が押されて電源が投入されると起動し、
図7に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0029】
ステップS101
洗濯乾燥機の状態確認及び初期設定を行う。
【0030】
ステップS102
操作パネル48の表示器7を点灯し、操作ボタンスイッチ24bからの指示入力にしたがって洗濯/乾燥コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯/乾燥コースまたは前回実施の洗濯/乾燥コースを自動的に設定する。例えば、操作ボタンスイッチ24aを指示入力された場合は、乾燥の高仕上げコースを設定する。
【0031】
ステップS103
操作パネル48のスタートスイッチ11からの指示入力を監視して処理を分岐する。
【0032】
ステップS104
センシング動作により負荷レベルを自動計測して、洗剤投入量の指標を表示した後、洗濯運転を実行する。このとき、負荷レベルの確認の後でも乾燥運転の変更は可能とする。洗濯は洗い,中間脱水,すすぎ,最終脱水を順次実行するが、通常のドラム式洗濯乾燥機と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0033】
ステップS105
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。洗濯コースのみが設定されている場合は、運転を終了する。
【0034】
ステップS106
洗濯乾燥コースが設定されている場合は、高速脱水を実行する。高速脱水は、ファン49を中低速回転で運転し、昇圧により温度上昇した空気を回転ドラム29内に吹込み、衣類を温める。同時に、回転ドラム29を段階的に高速まで回転させ、温まった衣類から効果的に水分を脱水する(温度が上がると水の粘性が低下するため効率よく脱水できる)。
【0035】
洗濯から脱水までに送風ダクト40に流入した水は、外槽20背面部に向かって下り傾斜をなすジャバラホース52及び外槽側取付部18を通して速やかに排水孔37から機外へ除去できるため、乾燥時の熱損失を低減できる。またドア内風路55においても、吹出部53側が低くなるように傾斜を設けてあるため、もし洗濯水がドア内風路55に侵入してきても、速やかに回転ドラム29側に戻すことができるので、乾燥時の風路損失の増加や熱損失の増加を回避できる。
【0036】
脱水の終了後は、洗濯物30どうしの絡まりをほぐす動作が入る。具体的には、回転ドラム29を低速(例えば毎分20〜50回転)で左右に回転させて、絡みをとる。
【0037】
ステップS107
乾燥工程前半を実行する。ファン49は高速回転、回転ドラム29の正逆回転を繰り返し、回転ドラム29内の洗濯物30の位置を入れ替えながら、ファン49での昇圧とヒータ50での加熱により温度上昇した大風量高風速の空気を、ファン出口ダクト56、ドア内風路55の順に通して、吹出部53から回転ドラム29内の洗濯物30に吹き付ける。吸気弁13は閉とし、ドラム出口空気は全量、送風ダクト40を通してファン49の吸込側に戻される。このとき送風ダクト40内で高湿空気から除湿された凝縮水は、送風ダクト40底部から外槽20背面部に向かって下り傾斜をなすジャバラホース52及び外槽側取付部18を通して速やかに排水孔37付近まで除去できるため、凝縮水が温風に対して熱損失となることを回避できる。また、短時間で乾燥させる速乾コースや厚手の洗濯物を比較的高温の風で乾燥させるしっかり乾燥コースが洗濯されている場合は、送風ダクト40内部設けてある冷却水散水部(図示せず)に通水して、送風ダクト40内に散水することで、循環空気を露点以下まで冷やして強制除湿させる。
【0038】
またファン49の起動は、通常乾燥運転では加熱手段であるヒータ50の入力を伴うため、電流制御などによる回転数の上昇速度の調整を必要に応じて行なう。
【0039】
ステップS108
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。規定時間は速乾コース,通常コース,しっかり乾燥コースそれぞれに対して、設けておく。以下、規定時間のコース別設定についての説明は省略する。
【0040】
ステップS109
乾燥開始から規定の時間が経過した場合、ファン49を一端低速に落とし、吸気弁13を全開にする(送風ダクト側の風路は全閉)。
【0041】
ステップS110
ファン49を高速回転に戻して、回転ドラム29内の圧力を上げて、排水トラップ10の水封じを破る。
【0042】
ステップS111
吸気弁13を半開にもどし、ファン49を再び高速回転として、乾燥工程後半を実行する。ステップS102において、ヒータ50を使用しない乾燥コースを選択されているか否かを確認して、もしヒータ50を使用するコースを選択している場合には、ヒータ50に通電する。
【0043】
ステップS112
排水温度サーミスタ27により外槽下部排水口温度T1aと外気温度サーミスタ42により外気温度T2aを測定する(初期温度の設定)。
【0044】
ステップS113
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0045】
ステップS114
終了判定のための外槽下部排水口温度T1bと外気温度T2bを測定する。
【0046】
ステップS115
排気開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0047】
ステップS116
外槽下部排水口温度と外気温度の各々中間温度と終了判定温度との差を求め(ΔT1=T1a−T1b、ΔT2=T2a−T2b)、さらにそれらの温度差(ΔT1−ΔT2)が規定温度以上であるかどうかを確認して処理を分岐する。
【0048】
ステップS117
排気開始から規定の時間が経過した場合、もしくは中間温度と終了温度の差が規定の温度より大きくなった場合、洗濯物の乾燥度が(=乾布の質量/湿布の質量)が1.0以上となり乾燥が終了したと判断し、排水口39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン49の回転数を下げて給水電磁弁28を開いて冷却水を流し、排水トラップ10の水封じを回復させる。このとき、ヒータ50を使用するコースを選択している場合には同時に本実施例の加熱手段であるヒータ50をオフにする。
【0049】
ステップS118
給水電磁弁28を開いてからの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0050】
ステップS119
水位センサ44の圧力が規定の圧力になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0051】
ステップS120
給水電磁弁28を開いてから規定の時間が経過した場合、もしくは水位センサ44の圧力が規定の圧力より大きくなった場合、排水トラップ10の水封じが回復したと判断し、ファン49を停止、ドラム駆動用モータ36を停止、吸気弁13を閉じ、給水電磁弁28を閉じて乾燥工程が終了する。
【0052】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機は、ファン49出口からの空気を回転ドラム29内の洗濯物30に吹き付けるまでの風路に、ドア3内部の空間を有効に利用したドア内風路55を設ける。従来のように外槽とドアの間から風を吹き出そうとすると風路は狭くせざるを得ず、大風量を実現するのは難しかったが、本実施例では、低損失にて大風量の空気を洗濯物30に吹き付けることができる。ファン出口から吹出口までの風路抵抗を小さくすることでファン49の入力が0.5%低減できれば、消費電力量が約0.5%削減できる。さらに洗濯物30に大風量の空気を吹きつけることで約1%乾燥効率を向上できれば、乾燥時間を約1%短縮でき、消費電力量を約1%削減できる。本実施例では、風量が1.0m
3/min以上から低損失であるドア内風路55の効果が出てくる。
【0053】
このとき、回転ドラム29の回転に伴い落下する洗濯物30に対してドア3から直接風が当たるので、風の力によって洗濯物30のシワが伸ばされる。特に、50m/s以上の高速風を吹きつければ、シワを伸ばす効果は更に顕著となる。なお、ドラム駆動用モータ側から大風量の空気を吹き付ける方式の場合、モータとの締結部を含むドラム底板が障壁となり、風速を上げると騒音が発生しやすくなるため、ドラムの開口部側から吹き付ける方式の方が望ましい。
【0054】
また、吸気弁13を開いて筐体内空気をファン49の吸込みに取り入れた場合、それに伴って筐体内に外部空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、筐体内において外槽20,ドラム駆動用モータ36,ファン49などの排熱により温められる。直接外部空気を吸込んだ場合と比較して乾燥工程の消費電力量全体の約7%を削減できる。また、外部空気を吸込んでも排水ホース9より洗濯物30の水分を排水口39に排出するため室内の環境を悪化させることはない。外槽20背面部と送風ダクト40下部をつなぐジャバラホース52の外槽側取付部18に、洗濯乾燥機設置面に対して、外槽20から送風ダクト40に向けて上り傾斜を持たせてある。さらに、外槽20背面部の取付部位置よりも送風ダクト40底部の取付部位置を高くして、ジャバラホース52にも傾斜をつけた構造とすることにより、洗濯から脱水までの残水の送風経路からの除去による熱損失、さらには排気工程時の風路損失を低減できる。
【0055】
本実施例では、ステップS111の乾燥後半において吸気弁13を半開としているが、全開にすると、前述のように送風ダクト40内の風路をおおよそ完全に塞ぐ状態(漏えいレベルは無視)となる。よって回転ドラム29から押し出された全風量は、排水孔37もしくはオーバーフローホース17を介して排水ホース9を通り、排水口39に排出される。よって大半の送風空気を周囲外気と入れ替えるため、送風空気の温度レベルは下がるが、湿度レベルも下げられる。このため、吸気弁13の開度は負荷容量や布質によって調整するのが好ましい。全開としても基本動作及び本実施例の効果については何ら影響しない。
【0056】
また、本実施例では加熱手段としてヒータ50を用いたが、ファン49による昇圧に伴う空気の温度上昇が乾燥に対して十分なレベルまで得られるのであれば、ヒータ50の入力レベルは小さくすることができ、さらにはオフにしても何ら差し支えない。またヒータ50に限らず、ヒートポンプや熱電素子などの別方式の加熱手段を用いたものでも何ら差し支えない。
【0057】
図8及び
図9は、温風の加熱源と除湿源にヒートポンプ60を用いたもので、第1の実施例の変形例にかかるものである。
図8は前面カバー22の一部を切断して、ヒートポンプ60の蒸発器61と凝縮器62のレイアウトを示した斜視図である。また
図9は、背面カバー23の一部を切断して、ヒートポンプ60の圧縮機63を示した斜視図である。本実施例ではファン49からドア3の吹出部53までの風路抵抗を極力少なくし且つ放熱損失も極力減らすために、ドラム出口空気を除湿する蒸発器61と、蒸発器61での除湿の際に冷却媒体(図示せず)で吸熱した熱と圧縮機63で冷却媒体を圧縮した際の圧縮熱とで再度、空気を加熱する凝縮器62を、回転ドラム29上部に設けた構成としている。一方、圧縮機63は、ヒートポンプ60の構成要素のうちで最も重い部品であるため、洗濯乾燥機の設置安定性の確保と筐体内スペースの観点から、外槽20背面側の下部に設けた構成としている。またこのような構成とすることで、圧縮機63の振動をファン出口ダクト56のジャバラホース部59で吸収させる必要がなくなり、ジャバラホース部59の磨耗を防ぐことができる。またヒートポンプ60の中で最も高温となる圧縮機63を筐体内下部に置くことで、圧縮機63排熱で温められた筐体内空気が筐体内に自然対流を生じさせるので、筐体内全体を効率よく温めることができ、外槽20の保温性を向上させることができる。
【0058】
本実施例における洗濯物30を乾燥させるための循環空気の流れは以下のようになる。ヒートポンプ60の蒸発器61、次いで凝縮器62を通過した空気は、ファン49の吸込に送られる。ファン出口空気はドア内風路55を通して回転ドラム29内の洗濯物30に吹き付ける。洗濯物30から蒸発した湿気を多く含むドラム出口空気は、送風ダクト40を通してヒートポンプ60の蒸発器61に戻される。ヒートポンプ60では、蒸発器61での熱交換量よりも凝縮器62での熱交換量が、圧縮機63での圧縮仕事相当分多くなる。このため本実施例のように、循環空気を蒸発器61にて冷却除湿し、その後に凝縮器62にて加熱する場合、凝縮器62での熱交換量が多い分、循環空気の温度レベルは上がり続ける。循環空気の温度レベルを安定させるには、圧縮仕事相当分の熱量を外部に放出させる必要がある。本実施例では、ドラム出口空気の一部を、送風ダクト40に設けた排気ダクト64から、洗濯乾燥機の外へ排気する。これに伴い、蒸発器61と凝縮器62の間に設けた吸気口65から、排気した空気と同量の空気を補う。吸気口65が筐体内上部で且つファンモータ51近傍に設けてあるので、ドラム出口の高湿な空気を排気して,外気湿度のまま外槽20,ドラム駆動用モータ36,ファン49などの排熱により温められた空気を取り込むことができる。言い換えれば、循環空気の温度レベルは低下させずに、循環空気の湿気のみを機外へ排出することができる。以上のことから、同じ吹出し空気温度に対して、排熱を利用することで圧縮機入力を低減することができ、さらに吹出し空気の湿度を下げることで、洗濯物30からの蒸発速度を上げられるので,乾燥時間を短縮できる。
【0059】
図10は第2の実施例に係るもので、洗濯乾燥機全体の断面図を示す。本実施例は、ドア内風路55に洗剤の発泡検知のための電極66を設け、ファン出口ダクト56内にはファン出口ダクト56からドア内風路55までを洗浄できる洗浄ノズル67を設けた構成となっている。洗濯物30の量に対して洗剤量を誤って投入したときなどや洗濯水が軟水であると、泡立ちが良くなり発泡しやすい。本実施例では、風路抵抗を小さくするために断面積を大きくしたドア内風路55の端(吹出部53)が、回転ドラム29内空間に開放された基本構成となるため、発泡した泡はドア内風路55に進入しやすい。洗濯から脱水までの通常の洗濯運転では、ドア内風路55に泡が残っていると、洗濯物30を取り出し時に泡が回転ドラム29内に落ちてくる場合がある。また洗濯乾燥運転では、乾燥開始時にドア内風路55に泡が残っていると、乾燥時に送風した際に泡が洗濯物30に降りかかってしまう。本実施例では、洗濯時に泡がドア内風路55に進入してくると、泡検知の電極66間が泡で満たされて通電状態となる。通電を検知した後、洗浄ノズル67から散水して泡消し動作を行い、ドア内風路55の泡を消すことができる。なお本実施例では、ドア内風路55の上部内壁と下部内壁をそれぞれ洗浄できるように洗浄ノズル67を2本設けているが、風路の形状に適した本数とするのが好ましく、本数が変わっても基本動作に変わりはない。
【0060】
図11は第3の実施例に係るもので、洗濯乾燥機全体の断面図を示す。本実施例は、ドア内風路55の吹出部53近傍に、着脱可能な通気蓋68を設けた構成となっている。なお図中には、通気蓋68近傍をA部として、拡大して示してある。本実施例では、風路抵抗を小さくするために断面積を大きくしたドア内風路55の吹出部53が、回転ドラム29内空間に開放された基本構成となるため、洗濯や洗濯乾燥運転時に、靴下などの比較的小さな洗濯物30が、ドラム内風路55に侵入しやすい。本実施例によれば、ファン49からの空気は通気できるが、回転ドラム29側からドア内風路55に侵入しようとする洗濯物30を阻止することができる。このような構成とすることにより、運転時におけるドア内風路55への洗濯物30充填を回避できるので、安定した乾燥運転ができる。またドア開放時には、ドア内風路55の上部端である開口部54が開放となるため、誤って異物を入れてしまう恐れがある。このとき、通気蓋68があると、ドア内風路55の下部端(吹出部53)から異物を容易に取り出せなくなってしまうが、本実施例のように通気蓋68は、支持具77に対してナットのような止め具78で固定して脱着可能なつくりとすること(A部詳細 参照)で、異物が取り出せなくなる不具合も回避できる。
【0061】
図12は第4の実施例に係るもので、洗濯乾燥機全体の断面図を示す。本実施例は、ファン出口ダクト56内に、開閉可能な開閉蓋69を設けた構成となっている。また図中には、開閉蓋69周辺をB部として、拡大して示してある。なお、開閉蓋69は支持部材58で固定されている箇所近傍に設けてあり、開閉動作は以下のとおりである。ファン出口ダクト56上部に接して、ファン出口ダクト56の軸方向でスライド可能とするマグネット70aが設けられている。このマグネット70aには、ドア3側からファン49側に圧縮されるとドア3方向に反発力が作用する形で、ばね71aが設けられている。ファン出口ダクト56内には、上部内壁に回転支持部72をもち、回転支持部72を回転支点として、ドア3側に跳ね上がる開閉蓋69が設けられている。さらに開閉蓋69には、跳ね上がったときにファン出口ダクト56内壁と接する箇所にマグネット70bが設けられている。反対側となるファン49側には跳ね上がらないように、ファン出口ダクト56下部内壁には止め具73が設けられている。また止め具73に開閉蓋69を押し付ける方向に、バネ力が働くように、回転支持部72にはバネ71bが取り付けられている。ドア3が閉められた状態(B部詳細のドア閉時を参照)では、ドア3に取り付けられている突起物74がマグネット70aをファン49側に押した状態となる。このときのマグネット70aの位置は、開閉蓋69がファン出口ダクト56上部内壁に跳ね上がったときのマグネット70bの位置と概ね一致する。すなわちこの状態でファン49を回し、ファン出口ダクト56内に送風すれば、開閉蓋69はバネ力に打ち勝って跳ね上げられ、マグネット70a、70bどうしの引力で、開閉蓋69はファン出口ダクト56上部内壁に保持される。ドア3が開けられると(B部詳細のドア開時を参照)、突起物74で押されていたマグネット70aは、突起物74から開放されるので、バネ71aのバネ力でドア3側に移動する。マグネット70aの引力が弱まり、開閉蓋69はバネ71bのバネ力によって、ファン出口ダクト56の下部に下ろされる。このような構成とすることにより、ドア3を閉めての運転時は、ファン出口ダクト56は通風可能状態にでき、運転停止時にドア3を開けた状態では、ファン出口ダクト56を、開閉蓋69によりふさがれた状態にできるため、洗濯乾燥機本体側のファン出口ダクト56やファン49内に、誤って異物を挿入する危険性を軽減できる。
【0062】
図13は第5の実施例に係るもので、洗濯乾燥機全体の断面図を示す。本実施例は、ドア3内壁面のうち吹出部53がある面を除いた面に、遮熱シート75を貼付した構成となっている。乾燥工程においてヒータ50で加熱された空気は、ドア内風路55を通して吹出部53から回転ドラム29内の洗濯物30に吹き付けられる。このときの空気温度は、通常乾燥では50℃から70℃、強めに乾燥させるしっかり乾燥コースでは80℃ないし90℃のレベルとなる。ドア3の内部にドア内風路55を設けているため、ドア3内部やドア3自身も外気に比べて高温となる。ドア3が回転ドラム29内の洗濯物30の様子を視認できるように、透過性のあるプラスチックや強化ガラスの組み合わせで作られていると、輻射による放熱損失を伴う。本実施例のような構成とすることで、ドア3からの放熱損失を防ぐことができるので、損失分の消費電力量を削減できる。またドア3を密閉構造とし、ドア3内部を減圧すれば、ドア3の内部空気の自然対流を弱めることで、ドア3の温度上昇を抑えられるので、さらにドア3からの放熱損失を防ぐことができる。
【0063】
図14は第6の実施例に係るもので、洗濯乾燥機全体の断面図を示す。本実施例は、ドア内風路55とファン出口ダクト56にそれぞれサーミスタ76a,76bを設けた構成とし、これらサーミスタ76a,76bから検知した信号の温度換算値の差を演算して、その演算値がしきい値以上のときに、操作パネル48に異常を知らせる表示と、乾燥運転を停止させる動作アルゴリズムを設けた構成となっている。基本とする制御動作は以下となる。乾燥運転に入る前にファン49を駆動してサーミスタ76a,76bからの信号を読み取り、温度換算値の差を演算する。もしファン出口ダクト56もしくはドア内風路55が、異物のつまりなど何らかの原因により、風が通りにくくなっていれば、ある測定時間における前記温度換算値の値が大きくなっている。この演算値が予め定めたしきい値以上のときは、つまりと判断する。その後、操作パネル48に異常を知らせる表示と、乾燥運転を停止させる動作に入る。このような構成及びアルゴリズムを設けることで、異物誤挿入などによる通風困難状態を検知でき、そのまま運転を継続してしまうことによる過熱を防止することで安全性を高めることができる。なお、ファン49を駆動する際、温度換算値の差を顕著とするために、ヒータ50など加熱源を使用しても何ら差し支えない。