特許第6207922号(P6207922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6207922-長期常温保存可能なレバ刺し状食品 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207922
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】長期常温保存可能なレバ刺し状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/20 20160101AFI20170925BHJP
   A23L 13/30 20160101ALI20170925BHJP
   A23L 27/10 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
   A23L29/20
   A23L13/30
   !A23L27/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-168481(P2013-168481)
(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-35981(P2015-35981A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】平原 弘志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 知子
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−070541(JP,A)
【文献】 特開昭60−199337(JP,A)
【文献】 特開昭62−025955(JP,A)
【文献】 特開平02−203766(JP,A)
【文献】 特開昭63−233764(JP,A)
【文献】 特開2006−271377(JP,A)
【文献】 特開昭49−118860(JP,A)
【文献】 特開2013−031415(JP,A)
【文献】 特開平10−271958(JP,A)
【文献】 国際公開第94/025580(WO,A1)
【文献】 特開昭48−044455(JP,A)
【文献】 特開2008−099618(JP,A)
【文献】 特開平02−234642(JP,A)
【文献】 特開平08−173094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)動物のレバーを粉砕する工程、
(ii)(i)で得られた粉砕レバーを60〜120℃で加熱処理する工程、
(iii)(ii)で得られた加熱処理した粉砕レバーを、エンド型中性プロテアーゼ製剤、中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤、並びにペプチダーゼ製剤を用いて段階的に酵素処理する工程、
(iv)(iii)で得られた酵素処理した粉砕レバーを60〜100℃で加熱処理する工程、
(v)ろ過又は遠心分離により固形分を除く工程及び60〜100℃での加熱下で活性炭処理を行う工程、並びに
(vi)濃縮工程、を行い、レバーエキス濃縮液を製造し、
該レバーエキス濃縮液とローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガム及び寒天を含むゲル化剤を混合し、ゲル化させることを含む、レバ刺し状食品の製造方法。
【請求項2】
(v)の工程において、珪藻土処理を行う工程を含む、請求項1記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項3】
ゲル化のときに、60〜100℃で加熱処理する、請求項1又は2に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項4】
動物のレバーが牛のレバーである、請求項1〜のいずれか1項に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項5】
タンパク質を基質とするプロテアーゼを含む酵素製剤とタンパク質を基質とするプロテアーゼ及びペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤とを用いて酵素処理し、次いでペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤を用いて酵素処理する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項6】
タンパク質を基質とするプロテアーゼを含む酵素製剤がBacillus amyloliquefaciens由来のエンド型中性プロテアーゼ製剤であり、タンパク質を基質とするプロテアーゼ及びペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤がAspergillus melleus由来の中性プロテアーゼ製剤であり、ペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤がAspergillus oryzae由来のペプチダーゼ製剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項7】
製造されたレバーエキス濃縮液がペプチド及びアミノ酸を含み、脂質及びプリン体を含まない、請求項1〜のいずれか1項に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【請求項8】
さらに、ゲル化の際に着色剤、鉄分を添加する、請求項1〜のいずれか1項に記載のレバ刺し状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本物のレバ刺しに極めて近い風味と香りを持ちつつ、コレステロールやプリン体を除去した高品位のレバー刺身状食品とその製法に関する。凍結乾燥された本発明品は常温でも長期保存が可能であり、適量の水分で性状が復元する。
【背景技術】
【0002】
レバ刺しは生食製品であるため冷蔵以下の保管が必須となり、それでも商品化当日という極めて短い消費期限を余儀なくされる。
【0003】
また非加熱製品であるがゆえに菌的な汚染のリスクが伴う。特に牛レバ刺しは、生食用牛肉の食中毒事故を受けて食品衛生法により販売・提供が禁止されており、他の鳥獣のレバ刺しにおいても摂食を控えるよう行政が指導を行っている。一方で、これら食品は嗜好性が高く、代替品を望む声が根強く存在する。
【0004】
このような状況下、レバ刺しに形状、色を似せたコンニャク加工品が開発されている。該加工品は脱アルカリ技術を利用してコンニャク利用食品を製造する技術を用いて製造される(特許文献1及び2を参照)。この方法により製造されるものはレバ刺しに形状、色合いが似たコンニャクそのものである。また、ナタデココを用いて人造魚介類を製造することが報告されている(特許文献3を参照)。該方法においては、ナタデココ固形物を増粘安定剤や魚介類のエキス等に浸漬してナタデココ固形物の食感を改質し、風味を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3829211号公報
【特許文献2】特許第3905830号公報
【特許文献3】特許第3607536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レバ刺しに外観、色合い、風味、香り及び食感が似ており、生レバーが有する成分を多く含むレバ刺し状食品及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鳥獣の肝臓の生食製品であるレバ刺しの摂食に細菌、ウイルス感染のリスクが存在することに鑑み、レバ刺しを安全に楽しめる代替食品の開発を試みた。本発明者らは、単に外観や色合いだけでなく、風味、香り、色合い及び食感がレバ刺しに近いレバ刺し代替食品の製造方法について鋭意検討を行った。
【0008】
その結果、鳥獣由来の肝臓を複数の酵素を組み合わせて段階的に消化し、複数回に分けて加熱殺菌することで、レバーの風味は残しつつ、コレステロール、及びプリン体を除去したレバーエキスを製造し、該エキスと複数のゲル化剤を混合しゲル化することにより、外観や色合いだけでなく、風味、香り、色合い及び食感がレバ刺しに近いレバ刺し状食品を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
[1](i)動物のレバーを粉砕する工程、
(ii)(i)で得られた粉砕レバーを60〜120℃で加熱処理する工程、
(iii)(ii)で得られた加熱処理した粉砕レバーを、少なくともタンパク質を基質とするプロテアーゼ、及びペプチドを基質とするペプチダーゼを用いて段階的に酵素処理する工程、
(iv)(iii)で得られた酵素処理した粉砕レバーを60〜100℃で加熱処理する工程、
(v)ろ過又は遠心分離により固形分を除く工程及び60〜100℃での加熱下で活性炭処理を行う工程、並びに
(vi)濃縮工程、を行い、レバーエキス濃縮液を製造し、
該レバーエキス濃縮液と少なくとも1種の増粘多糖類であるゲル化剤を混合し、ゲル化させることを含む、レバ刺し状食品の製造方法。
【0010】
[2] (v)の工程において、珪藻土処理を行う工程を含む、[1]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0011】
[3] ゲル化のときに、60〜100℃で加熱処理する、[1]又は[2]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0012】
[4] 臭気成分を生成しない熱履歴で加熱処理を行う、[1]〜[3]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0013】
[5] 臭気成分が、カルボン酸類又は芳香族化合物である、[4]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0014】
[6] 動物のレバーが牛のレバーである、[1]〜[5]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0015】
[7] 酵素処理する工程を、タンパク質を基質とするプロテアーゼを含む酵素製剤、タンパク質を基質とするプロテアーゼ及びペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤、並びにペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤を用いて段階的に行う、[1]〜[6]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0016】
[8] タンパク質を基質とするプロテアーゼを含む酵素製剤とタンパク質を基質とするプロテアーゼ及びペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤とを用いて酵素処理し、次いでペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤を用いて酵素処理する、[7]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0017】
[9] タンパク質を基質とするプロテアーゼを含む酵素製剤がBacillus amyloliquefaciens由来のエンド型中性プロテアーゼ製剤であり、タンパク質を基質とするプロテアーゼ及びペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤がAspergillus melleus由来の中性プロテアーゼ製剤であり、ペプチドを基質とするペプチダーゼを含む酵素製剤がAspergillus oryzae由来のペプチダーゼ製剤である、[7]又は[8]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0018】
[10] 製造されたレバーエキス濃縮液がペプチド及びアミノ酸を含み、脂質及びプリン体を含まない、[1]〜[9]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0019】
[11] ゲル化剤がペクチン、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、マンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、アラビアガム、プルラン、ファーセレラン、トラガントガム、カラヤガム、アラビノガラクタン、メチルセルロース、カラギナンκタイプ、カラギナンιタイプ、カラギナンλタイプ、ジェランガム、キサンタンガム、寒天、ゼラチン及びカードランからなる群から選択される、[1]〜[10]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0020】
[12] ゲル化剤がローカストビーンガム、カラギナン及びキサンタンガムである、[11]のレバ刺し状食品の製造方法。
【0021】
[13] さらに、ゲル化の際に着色剤、鉄分を添加する、[1]〜[12]のいずれかのレバ刺し状食品の製造方法。
【0022】
[14] [1]〜[13]のいずれかの方法で製造された、生レバーの外観、風味、香り、色合い、食感を有する、レバ刺し状食品。
【0023】
[15] [1]〜[13]のいずれかの方法で製造されたレバ刺し状食品を、さらに凍結乾燥させることを含む、常温で長期保存でき、水で復元できるレバ刺し状食品の製造方法。
【0024】
[16] [15]の方法で製造された、常温で長期保存できる凍結乾燥レバ刺し状食品。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法により、本物のレバ刺しに極めて近い外観、色合い、風味、香り及び食感を有するレバ刺しの代替食品となり得るレバ刺し状食品を製造することができる。本発明のレバ刺し状食品は、本物のレバ刺しに極めて近い外観、色合い、風味、香り及び食感を有するとともに、コレステロールやプリン体等の健康上過剰摂取が問題となる物質を除去した、健康弱者でも摂取可能な高品位のレバ刺しのイミテーション食品である。また、本発明のレバ刺し状食品は凍結乾燥することも可能であり、凍結乾燥することにより、常温でも長期保存が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のレバ刺し状食品を製造するためのレバーエキス濃縮液及び比較製品の臭い成分の分析結果を、GCチャートにより示す図である。
図2】本発明のレバ刺し状食品を製造するためのレバーエキス濃縮液及び比較製品の臭い成分の分析結果を、含まれる臭い成分のリストにより示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレバ刺し状食品は、動物肝臓から製造したレバーエキス濃縮液をゲル化剤と混合し、ゲル化させ固化することにより製造することができる。本発明のレバ刺し状食品は生のレバ刺しに似ていて、レバ刺しの代替となり得る食品であり、レバ刺し代替食品、レバ刺しイミテーション食品、あるいはレバ刺しコピー食品と呼ぶこともできる。
【0028】
1.レバーエキス濃縮液の製造
レバーエキス濃縮液は、鳥獣等の動物レバー(肝臓)をミンチ状に粉砕し、加熱処理し、タンパク質分解酵素で処理し、ろ過、遠心分離、活性炭による処理等を適宜、単独であるいは組合わせて行い、固形物、脂質、核酸等を除去し、さらに、加熱処理して製造する。
【0029】
動物レバーは牛、豚、馬、鹿、鯨、鶏等の食用動物の肝臓をいい、好ましくは牛肝臓を用いる。
動物レバーは、最初にチョッパー(ミンチ機)を用いて、細かく粉砕し、ミンチ状にする。ミンチ状にしたレバーに原料レバーと同重量程度の水を加え、ミンチの成分を水に懸濁させた状態で加熱する。この酵素処理前の加熱は、タンパク質分解酵素のインヒビターを失活させるために行う。加熱は、60℃以上、例えば60〜120℃で5〜120分行えばよく、また、90℃に達温するまで行ってもよい。加熱したレバーミンチを冷却した後、タンパク質分解酵素で処理する。
【0030】
酵素処理は異なる複数種類のプロテアーゼ又はペプチダーゼを用いて段階的に行う。異なる3種のプロテアーゼ又はペプチダーゼを組み合わせて段階的に分解処理を行うことで、プロテアーゼ又はペプチダーゼへの耐性が高い肝臓を低分子ペプチドあるいはアミノ酸レベルまで分解することができる。さらに、段階的に酵素を用いることにより、最初に添加する酵素を、その後に添加する酵素により分解し、失活させることができる。
【0031】
α-アミノ酸がペプチド結合により重合した化合物であり分子量が大きいタンパク質や分子量が比較的小さいペプチドを分解するペプチド加水分解酵素には、高分子タンパク質を基質とし高分子タンパク質の内側からペプチド鎖を切断し高分子タンパク質を分解し得るエンドペプチダーゼ等の酵素とペプチドを基質としペプチド鎖のアミノ末端又はカルボキシ末端のペプチド結合を加水分解するエキソペプチダーゼ等の酵素がある。前者により高分子タンパク質が内部から分解され、高分子タンパク質の断片であるペプチドが生成し、後者によりアミノ酸が遊離する。前者をプロテイナーゼと呼び、後者をペプチダーゼと呼ぶこともある。本発明においては、高分子のタンパク質を基質とするエンドペプチダーゼ活性を有する酵素をプロテアーゼといい、比較的低分子のペプチドを基質とするエキソペプチダーゼ活性を有する酵素をペプチダーゼと呼ぶ。また、プロテアーゼを主成分とする酵素製剤をプロテアーゼ酵素製剤と呼び、ペプチダーゼを主成分とする酵素製剤をペプチダーゼ製剤と呼ぶ。プロテアーゼ酵素製剤はペプチダーゼを含んでいてもよく、またペプチダーゼ酵素製剤はプロテアーゼを含んでいてもよい。また、両者を含む酵素製剤を、例えば、プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤と呼ぶこともある。
【0032】
本発明のレバーエキス濃縮液の製造において、プロテアーゼとペプチダーゼの両者を段階的に用いることにより、プロテアーゼで肝臓のタンパク質をペプチドレベルまで分解し、さらに、ペプチダーゼで肝臓のペプチドあるいはタンパク質の分解により生じたペプチドをアミノ酸レベルまで分解することができる。従って、肝臓をプロテアーゼとペプチダーゼで処理することにより、肝臓エキス中には、分解産物であるペプチドやアミノ酸が含まれるようになる。
【0033】
例えば、最初にプロテアーゼで処理し、次いでペプチダーゼで処理すればよい。また、最初にプロテアーゼで処理し、次いでプロテアーゼとペプチダーゼで処理し、最後にペプチダーゼで処理してもよい。さらに、最初にプロテアーゼとペプチダーゼで処理し、次にペプチダーゼで処理してもよい。
【0034】
例えば、プロテアーゼとして、金属プロテイナーゼであるエンド型中性プロテアーゼ、セリンプロテイナーゼである中性プロテアーゼ等が挙げられ、ペプチダーゼとしてα-アミノアシルペプチド加水分解酵素であるペプチダーゼ等が挙げられる。
【0035】
酵素は純度の高い精製酵素を用いてもよいが、酵素製剤を用いてもよい。酵素製剤として、例えば、微生物由来の酵素製剤が挙げられる。微生物由来の酵素製剤は、酵素を産生する微生物を培養し、得られた酵素を精製した製剤であり、酵素以外の成分が含まれることもあり、複数の酵素が混在していることもある。
【0036】
例えば、プロテアーゼを主成分とする酵素製剤、プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤及びペプチダーゼを主成分とする酵素製剤を段階的に用いることができる。
【0037】
さらに、酵素処理に用いる異なる複数種類のプロテアーゼ又はペプチダーゼ系酵素製剤の由来微生物は異なることが望ましい。酵素製剤の由来微生物が異なると酵素の至適pH、至適温度等も異なり、これらの酵素製剤を段階的に用いることにより、肝臓タンパク質を効率的に確実に分解することができる。
【0038】
例えば、Bacillus amyloliquefaciens由来のタンパク質分解酵素製剤、Aspergillus melleus由来のタンパク質分解酵素製剤及びAspergillus oryzae由来のタンパク質分解酵素製剤が挙げられる。Bacillus amyloliquefaciens由来のタンパク質分解酵素製剤及びAspergillus melleus由来のタンパク質分解酵素製剤タンパク質分解酵素製剤は、同程度の至適温度を有するが、Aspergillus oryzae由来のタンパク質分解酵素製剤の至適温度は、これらの酵素製剤の至適温度よりも低い。Bacillus amyloliquefaciens由来のタンパク質分解酵素製剤、Aspergillus melleus由来のタンパク質分解酵素製剤及びAspergillus oryzae由来のタンパク質分解酵素製剤として、例えば、Bacillus amyloliquefaciens由来のエンド型中性プロテアーゼ製剤、Aspergillus melleus由来の中性プロテアーゼ製剤及びAspergillus oryzae由来のペプチダーゼ製剤が挙げられる。Bacillus amyloliquefaciens由来のエンド型中性プロテアーゼ製剤は、金属プロテイナーゼであるエンドプロテアーゼを主成分とする。高分子タンパク質を分解し、至適pHはpH7.0であり、pH5.0〜7.0で安定であり、至適温度は50〜55℃であり、50℃以下で安定である。さらに、pH8.0においてフォリン法で測定した場合に、70,000u/g以上のタンパク分解力を有する。Aspergillus melleus由来の中性プロテアーゼ製剤は、セリンプロテイナーゼであるエンドペプチダーゼを主成分とするが、ペプチダーゼ(エキソペプチダーゼ)も含んでいる、プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤である。至適pHはpH7.0〜8.0であり、至適温度は40℃である。また、pH8.0においてフォリン法で測定した場合に、300,000u/g以上タンパク分解力を有する。Aspergillus oryzae由来のペプチダーゼ製剤は、α-アミノアシルペプチド加水分解酵素であるエキソプロテアーゼを主成分とするが、プロテアーゼも含んでいる。該酵素製剤は高いアミノ酸遊離機能を有する。至適pHはpH7.0であり、至適温度は70℃である。また、pH7.0においてLNA法で測定した場合に、1,400u/g以上のペプチダーゼ力を有する。
【0039】
酵素製剤を段階的に用いる場合の上記の3種類の酵素製剤を用いる順序は限定されない。プロテアーゼを主成分とする酵素製剤、プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤及びペプチダーゼを主成分とする酵素製剤の3種の酵素製剤をこの順番で用いてもよいし、第1段階目でプロテアーゼを主成分とする酵素製剤及びプロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を用い、第2段階でペプチダーゼを主成分とする酵素製剤を用いてもよい。好ましくは第1段階の酵素処理で、Bacillus amyloliquefaciens由来のタンパク質分解酵素製剤及びAspergillus melleus由来のタンパク質分解酵素製剤を同時に用い、次いで、第2段階の酵素処理でAspergillus oryzae由来のペプチダーゼ製剤を用いればよい。
【0040】
これらの酵素製剤は、肝臓をミンチにし、水を加えた状態で添加すればよいが、添加量は原料肝臓に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜0.25重量%で添加すればよい。第1段階の酵素処理は、20〜60℃、好ましくは45〜50℃で0.5〜24時間、好ましくは1〜3時間行えばよい。また、第2段階の酵素処理は第1段階の酵素処理を行った反応液に第2段階で用いる酵素を添加すればよく、20〜70℃、好ましくは50〜55℃で0.5〜24時間、好ましくは1〜3時間行えばよい。第2段階の酵素処理の際には、第1段階で用いた酵素も残存している。従って、第1段階の酵素処理を0.5〜24時間行い、第1段階の酵素処理の途中で第2段階の酵素処理に用いる酵素製剤を添加するということもできる。第1段階の酵素処理で用いた酵素は、第2段階で用いる酵素により分解され失活し得る。第2段階で用いる酵素は、最終的に加熱により失活させればよい。
【0041】
酵素処理を行った後、酵素の失活、主に第2段階の酵素処理で用いた酵素の失活のために加熱する。加熱は、60℃以上、例えば60〜100℃で5〜120分行えばよく、また、80〜100℃、好ましくは90℃に達温するまで行ってもよい。酵素処理後に加熱処理を行った後に、さらに、加熱処理する。
【0042】
その後、固形分等を除去する。固形物の除去には振動篩、ロータリースクリーン、遠心分離機、スクリュープレス等を用いることができる。
【0043】
更に、不溶物質や脂質等の不要成分を除去する。固形分や脂質の除去は、遠心分離、ろ過及び活性炭による処理を適宜組合せて行う。遠心分離又はろ過により不溶物質が除かれる。また、ろ過や遠心分離の際に澱下げ剤で処理してもよい。澱下げとは、エキス等中に存在する濁り、不溶浮遊成分を沈殿させて、ろ過等の操作により濁り、不溶浮遊成分を除去することをいう。澱下げ剤としては、珪藻土、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、セルロース、ベントナイト、キトサン、アルギン酸Na等を用いることができる。エキスに珪藻土等を添加して澱下げし、その後ろ過又は遠心分離を行い不溶成分を除去してもよいし、ろ過する際に珪藻土等をろ過補助剤として用いてもよい。珪藻土をろ過補助剤として用いてろ過することを珪藻土ろ過という。珪藻土としては、炭酸ナトリウムと共に焼成した珪藻土であるセライト(登録商標)を用いることができる。活性炭処理は、エキスに活性炭を添加することにより行うことができる。活性炭は、原料肝臓に対して0.5〜10重量%、好ましくは4〜6重量%、さらに好ましくは5重量%添加すればよい。活性炭処理は10〜100℃、好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは10〜95℃、さらに好ましくは60〜95℃、さらに好ましくは70〜95℃、さらに好ましくは90℃に加熱し、5〜480分間、好ましくは20〜40分間、さらに好ましくは30分間行えばよい。活性炭処理により、脂質、プリン体等の不要成分および臭気成分などを除去することができる。珪藻土処理と併用することによりろ過がより容易になる。
ろ過の際、固形分が多くろ過が困難な場合、適宜遠心分離を行い固形物を除去すればよい。
【0044】
例えば、澱下げ剤を使用しない場合は、遠心分離した液に活性炭、あるいは活性炭と珪藻土を添加し、活性炭をプレコートしたろ過器でろ過を行えばよい。また、澱下げ剤を使用しない場合は、遠心分離した液に活性炭と珪藻土を添加し、活性炭をプレコートしたろ過器でろ過を行えばよい。
【0045】
加熱による酵素の失活後、さらにもう1回加熱処理する。加熱処理は、上記の遠心分離、ろ過又は活性炭処理の前でも後でも途中でもよい。例えば、上記のように活性炭処理の際に加熱処理を行ってもよい。また、この加熱処理は、得られたレバーエキスを濃縮する前に行っても濃縮後に行ってもよい。
【0046】
本発明のレバーエキス濃縮液の製造において、3種類の酵素製剤を用いて段階的に酵素処理を行うことにより、レバーのタンパク質が効率的にかつ確実にペプチド、アミノ酸に分解される。また、加熱処理を3回に分けて行うので、過度の加熱を行わずに済む。本発明において、加熱処理を3回に分けて行うことを、加熱処理を段階的に行うということがある。通常、肉類のエキスを製造する場合、加熱処理は焦げ臭さを発する物質の生成をもたらすことがあり、好ましくない。本発明においては、加熱処理を分けて行うことにより、過度の加熱を避けることができ、焦げ臭さを発する物質の生成を避けることができる。さらに、ろ過、遠心分離、活性炭処理等により、固形物のみならず脂質やプリン体等の核酸関連物質を除去することができる。
【0047】
得られたレバーエキスを濃縮することにより、レバーエキス濃縮液を得ることができる。濃縮は、真空濃縮機あるいは加熱による濃縮を用いて行えばよい。濃縮は、糖度計を指標にして行えばよく、例えば、ブリックス(Bx)値が10〜70、好ましくは30〜60になるまで濃縮すればよい。
【0048】
このようにして得られたレバーエキス濃縮液は無色透明〜乳灰褐色であり、レバーの風味物質が含まれる。一方、焦げ臭さを発する物質は含まれない。
【0049】
本発明のレバーエキス濃縮液の製造のプロトコールをまとめると以下のとおりである。
(1)レバーをミンチ状にする。
(2)タンパク質を凝固させるために加熱処理する。
(3)ミンチ状のレバーを異なる複数の酵素で段階的に処理する。
(4)酵素を失活させるために加熱処理する。
(5)固形物、脂質、プリン体等をろ過、遠心分離、活性炭処理等により除去し、濃縮し、その前後で加熱処理する。この際、活性炭処理を行うときに、臭気成分や不要成分を活性炭に吸着させるために加熱処理を行うことが好ましい。
【0050】
以上のように、レバーエキス濃縮液の製造工程において、3回加熱を行う。後述のように、本工程で製造したレバーエキス濃縮液をゲル化剤と混合する際に、さらに加熱することが好ましく、レバ刺し状食品を製造する工程において、トータルで4回加熱処理を行う。加熱処理は、加熱温度×加熱時間で表される熱履歴が少なくなるように行う。上記のように、60℃以上で5〜120分の加熱、あるいは、80〜100℃、好ましくは90℃に達温するまでの加熱により、熱履歴の少ない加熱処理を達成できる。すなわち、高温短時間で加熱するか、あるいは、ある程度長時間の加熱を行う場合は、加熱時間を短時間に抑えればよい。高温短時間による熱履歴が好ましく、レバーエキス濃縮液製造工程において、3回の80〜100℃達温、好ましくは3回の90℃達温の熱履歴となるように加熱すればよい。また、レバ刺し状食品の全製造工程においては、4回の80〜100℃達温、好ましくは4回の90℃達温の熱履歴となるように加熱すればよい。高温で長時間処理を行い、あるいは低温でも著しい長時間の処理を行うという熱履歴が多くなる加熱を行うと、臭気成分や不要な成分が生成してしまう。本願発明の方法においては、臭気成分や不要な成分の発生を抑えるために、少ない熱履歴で加熱処理を行う。すなわち、臭気成分や不要な成分が発生しないような熱履歴で加熱処理を行う。
【0051】
本発明の方法で製造したレバーエキス濃縮液は、天然調味料メーカーで製造したレバーエキス濃縮液に比較して、焦げ臭さ等の不快な臭いの原因となる有機酸、芳香族化合物や含窒素化合物が少ない。不快な臭いの原因となる有機酸や含窒素化合物として、カルボン酸類、芳香族化合物等が挙げられる。
【0052】
2.レバーエキス濃縮液のゲル化によるレバ刺し状食品の製造
1.で製造したレバーエキス濃縮液をゲル化剤を用いてゲル化させ、固化することによりレバ刺し状食品を得ることができる。
【0053】
レバーエキス濃縮液をゲル化させるためのゲル化剤としては、増粘多糖類を用いることができる。増粘多糖類として、ペクチン、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、マンナン、グルコマンナン、タマリンドガム、アラビアガム、プルラン、ファーセレラン、トラガントガム、カラヤガム、アラビノガラクタン、メチルセルロース、カラギナンκタイプ、カラギナンιタイプ、カラギナンλタイプ、ジェランガム、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、カードラン等が挙げられ、これらの少なくとも1つを用いることができ、好ましくはこれらの2種類又は3種類を混合して用いる、さらに、上記のゲル化剤の中でも、ローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガムが好ましい。カラギナンは、カラギナンκ-タイプ、カラギナンι-タイプ、カラギナンλタイプのいずれを用いることもできる。これらの少なくとも1種〜5種を用いることができる。2種類を混合して用いる場合、ローカストビーンガムとカラギナン、ローカストビーンガムとキサンタンガム、又はカラギナンとキサンタンガムを組合せて用いることができる。好適には、ローカストビーンガム、カラギナン及びキサンタンガムの3種を組合せて用いればよい。更にローカストビーンガム、カラギナン及びキサンタンガムの3種に寒天等を併用してもよい。
【0054】
また、でん粉、加工でん粉をゲル化補助剤として用いてもよい。でん粉、加工でん粉は単体でゲル化剤として用い得るが、本発明においては、主要なゲル化剤として増粘多糖類を主体とするゲル化剤を用いており、でん粉、加工でん粉は増粘多糖類を主体とするゲル化剤の欠点を補い、最終製品であるレバ刺し状食品に適切な食感等を付与するために用いられる。その観点から、本発明においては、でん粉、加工でん粉を補助ゲル化剤と呼ぶ。加工でん粉とは、でん粉を種々の官能基の導入等により加工処理したものをいい、でん粉の由来植物は限定されず、トウモロコシでん粉、小麦でん粉、馬鈴薯でん粉等いずれの由来のでん粉も用いることができる。また、架橋でん粉も含まれる。本発明において用い得る加工でん粉として、食品添加物として認められている、アセチルリン酸化架橋でん粉、アセチル化酸化でん粉、アセチル化アジピン酸架橋でん粉、オクテニルコハク酸でん粉ナトリウム(オクテニルコハク酸でん粉Na)、酢酸でん粉、酸化でん粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でん粉、ヒドロキシプロピルでん粉、リン酸化でん粉、リン酸架橋でん粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋でん粉等が挙げられる。
【0055】
副原料としては、でん粉以外の多糖類が挙げられる。でん粉以外の多糖類としては、イヌリン、グリコーゲン、カードラン、デキストリン等が挙げられる。
【0056】
さらに、原料となるレバーには鉄分が多く含まれているが、レバーエキス濃縮液製造工程で鉄分も除去される。除去された鉄分を補うために鉄分を添加してもよい。鉄分の補充には、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム(クエン酸鉄ナトリウム)、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、ヘム鉄、フェリチン、又はラクトフェリンの1種又は複数を添加すればよい。さらに、レバー原料に多く含まれる脂溶性のビタミンA等を添加してもよい。
【0057】
その他、レバ刺し状食品にレバーの色を与える色素を着色剤として添加してもよく、またその他風味を付与するための風味剤や調味料を添加してもよい。着色剤は、レバ刺し状食品に赤色〜赤茶色の色を付与するものを添加すればよく、天然色素でも合成色素でもよく、これらを組合せて用いてもよい。例えば、ベニコウジ色素やカラメル色素を用いることができる。
【0058】
レバーエキス濃縮液は、レバ刺し状食品のゲル化剤を含む原料全体に対して、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15重量%添加すればよい。ゲル化剤は、上記のゲル化成分をトータルでレバ刺し状食品の原料全体に対して、数十重量%、例えば、10〜80重量%、好ましくは20〜40重量%添加すればよい。色素はレバ刺し状食品の原料全体に対して、0.1〜5重量%添加すればよい。また、水をレバ刺し状食品の原料全体に対して、20〜60重量%、好ましくは30〜70重量%添加する。
【0059】
レバーエキス濃縮液をゲル化剤と混合する際に加熱することが好ましい。この工程における加熱は、ゲル化剤の溶解、混合及び殺菌を目的とする。このときの加熱処理は70℃以上で5〜60分行えばよく、また、90℃に達温するまで行ってもよい。
【0060】
このように配合した組成物を加熱し、冷却することによりゲル化により固化し、レバ刺し状食品を製造することができる。固化したゲルをレバ刺し状にスライスして食すればよい。
【0061】
得られたレバ刺し状食品は、冷蔵(10℃以下)又はチルド(5℃以下)あるいは冷凍(-20℃以下)状態で保存することができる。また、得られたレバ刺し状食品を凍結乾燥等により乾燥することもできる。乾燥することにより、室温(1〜30℃)あるいは常温(5〜35℃)で長期間、例えば、1か月以上、好ましくは3ヶ月以上、さらに好ましくは6か月以上、特に好ましくは1年以上保存することができる。乾燥させたレバ刺し状食品は、用時に適量の水を用いて復元すればよい。例えば、凍結乾燥したレバ刺し状食品1を10倍重量以上の水中に投入し、復元すればよい。
【0062】
本発明のレバ刺し状食品は、単に外観や色合いをレバ刺しに似せただけの食品ではなく、原料としてレバーエキス濃縮液を含んでいるため、レバーの風味、香り、食感が再現されている。また、コレステロールやプリン体等の健康上の理由から過剰摂取が好ましくない成分は除去されているので、これらの成分の摂取を避けるべき生活習慣病患者や入院患者や要介護者等の健康弱者も安心して摂食することができる。さらに、鉄分やビタミンA等を添加することにより、生レバー原料が元々有する栄養成分を摂取することもできる。
【実施例】
【0063】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
実施例1 レバーエキス濃縮液の製造
レバーエキスの製造において、3種類の酵素製剤(エンド型中性プロテアーゼ製剤、中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤、並びにペプチダーゼ製剤)を用いた。本実施例で用いた酵素製剤の詳細は以下のとおりである。
【0065】
エンド型中性プロテアーゼ製剤
タンパク質を基質とした加水分解反応を触媒
活性構造からの分類:金属プロテイナーゼ
至適pH:pH7.0
至適温度:50〜55℃
【0066】
中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤
中性プロテアーゼ製剤であり、中性プロテアーゼの他にペプチダーゼを有する
活性構造からの分類:セリンプロテイナーゼ
至適pH:pH7.0〜8.0
至適温度:40℃
【0067】
ペプチダーゼ製剤
ペプチダーゼ製剤であり、プロテアーゼを有する
高いアミノ酸遊離能を有する
活性構造からの分類:α-アミノアシルペプチド加水分解酵素
至適pH:pH7.0
至適温度:70℃
【0068】
その1
冷凍牛肝臓15個(約110kg)を冷蔵庫に入れ、一晩置いて半解凍した。チョッパー(ミンチ機)を用いて、ミンチとした。得られたミンチを二重釜に入れ、100kgの水を添加し、90℃に達するまで加熱し、その後に二重釜の外側(ジャケット)に水道水を通すことにより冷却し、40℃まで冷却した。次いで、3種類の酵素製剤を用いて2段階の酵素処理を行った。1段階目は、エンド型中性プロテアーゼ製剤を100g(原料肝臓の約0.1重量%)及び中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を100g(原料肝臓の約0.1重量%)添加し、45℃で2時間酵素処理した。次いで、2段階目は、ペプチダーゼ製剤を100g(原料肝臓の約0.1重量%)添加し、55℃で2時間酵素処理した。
【0069】
その後、90℃に達するまで加熱し酵素を失活させた。冷却した酵素処理ミンチを振動篩を用いてろ過し原料肝臓の1.5重量%の珪藻土(セライト(登録商標))(セライト社)を添加し処理(澱下げ)した。一晩冷蔵庫に入れ、5℃まで冷却し、連続型の円筒型遠心分離機で10000rpmで遠心分離を行った。上清に原料肝臓の5重量%の活性炭を添加し、90℃で30分間処理した。次いで、ジャケットに水道水を通し、70℃まで冷却した後、フィルタープレスを用いてろ過を行った。ろ過液を減圧濃縮器を用いて濃縮した。濃縮はBx40になるまで行った。濃縮したものをレバーエキス濃縮液として用いた。レバーエキス濃縮液には、固形物は含まれず、乳灰褐色であった。
【0070】
その2
冷凍牛肝臓2個(約13kg)を冷蔵庫に入れ、一晩置いて半解凍した。チョッパー(ミンチ機)を用いて、ミンチとした。得られたミンチを二重釜に入れ、13kgの水を添加し、90℃に達するまで加熱し、その後に二重釜の外側(ジャケット)に水道水を通すことにより40℃まで冷却した。次いで、3種類の酵素製剤を用いて2段階の酵素処理を行った。1段階目は、エンド型中性プロテアーゼ製剤を26g(原料肝臓の0.2重量%)及び中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を26g(原料肝臓の0.2重量%)添加し、45℃で2時間酵素処理した。次いで、2段階目は、ペプチダーゼ製剤を10g(原料肝臓の0.08重量%)添加し、55℃で2時間酵素処理した。
【0071】
その後、90℃に達するまで加熱し酵素を失活させた。一晩冷蔵庫に入れ冷却し、冷却した酵素処理ミンチを珪藻土ろ過によりろ過した(珪藻土としては、ボディーフィードセライト(セライト社)260g(原料肝臓の2重量%)及びプリコートセライト(登録商標)(セライト社)520g(原料肝臓の4重量%)を用いた)。ろ液に活性炭650g(原料肝臓の5重量%)を添加し、90℃、30分間処理した。活性炭処理したものを加圧式濾過機を用いてろ過し、ろ過液を減圧濃縮器を用いて濃縮した。濃縮はBx40〜50になるまで行った。濃縮したものを90℃に達するまで加熱し、得られたものをレバーエキス濃縮液として用いた。レバーエキス濃縮液には、固形物は含まれず、乳灰色であった。
【0072】
その3
冷凍牛肝臓15個(約100kg)を冷蔵庫に入れ、一晩置いて半解凍した。チョッパー(ミンチ機)を用いて、ミンチとした。得られたミンチをレオニーダー(横型加熱攪拌機)に入れ、100kgの水を添加し、90℃に達するまで加熱し、その後レオニーダーの外側(ジャケット)に水道水を通すことにより40℃まで冷却した。次いで、3種類の酵素製剤を用いて2段階の酵素処理を行った。1段階目は、エンド型中性プロテアーゼ製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)及び中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)添加し、45℃で2時間酵素処理した。次いで、2段階目は、ペプチダーゼ製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)添加し、55℃で2時間酵素処理した。
【0073】
その後、90℃に達するまで加熱し酵素を失活させた。冷却した酵素処理ミンチをろ過又は遠心分離処理を行い原料肝臓の1.5重量%の珪藻土(セライト)(セライト社)を添加し処理(澱下げ)した。一晩冷蔵庫に入れ、5℃まで冷却し、連続型の円筒型遠心分離機で10000rpmで遠心分離を行った。上清に原料肝臓の5重量%の活性炭(セライト社)を添加し、90℃で30分間処理した。次いで、ジャケットに水道水を通し、70℃まで冷却した後、フィルタープレスを用いてろ過を行った。ろ過液を減圧濃縮器を用いて濃縮した。濃縮はBx40になるまで行った。濃縮したものをレバーエキス濃縮液として用いた。レバーエキス濃縮液には、固形物は含まれず、無色透明であった。
【0074】
その4
冷凍牛肝臓2個(約15kg)を冷蔵庫に入れ、一晩置いて半解凍した。チョッパー(ミンチ機)を用いて、ミンチとした。得られたミンチをレオニーダー(横型加熱攪拌機)に入れ、15kgの水を添加し、90℃で10分加熱し、その後レオニーダーの外側(ジャケット)に水道水を通すことにより40℃まで冷却した。次いで、3種類の酵素製剤を用いて2段階の酵素処理を行った。一段階目は、エンド型中性プロテアーゼ製剤を30g(原料肝臓の0.2重量%)及び中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を30g(原料肝臓の0.2重量%)添加し、50℃で酵素処理した。1段階目の酵素処理を2時間行ったときに、ペプチダーゼ製剤を10g(原料肝臓の0.067重量%)添加し、さらに50℃で2時間2段階目の酵素処理を行った。
【0075】
その後、90℃に加熱し酵素を失活させ、一晩冷蔵庫(5℃)に入れ冷却した。
冷却した酵素処理ミンチに原料肝臓の5重量%の活性炭を添加し、90℃で30分間処理し、加圧式濾過機を用いてろ過した。ろ過液を減圧濃縮器を用いて濃縮した。濃縮はBx40〜50になるまで行った。次いで、再度90℃に加熱し、得られたものをレバーエキス濃縮液として用いた。レバーエキス濃縮液には、固形物は含まれず、無色透明であった。
【0076】
その5
冷凍牛肝臓15個(約100kg)を冷蔵庫に入れ、一晩置いて半解凍した。チョッパー(ミンチ機)を用いて、ミンチとした。得られたミンチをレオニーダー(横型加熱攪拌機)に入れ、100kgの水を添加し、90℃に達するまで加熱し、その後レオニーダーの外側(ジャケット)に水道水を通すことにより40℃まで冷却した。次いで、3種類の酵素製剤を用いて2段階の酵素処理を行った。1段階目は、エンド型中性プロテアーゼ製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)及び中性プロテアーゼとペプチダーゼの混合酵素製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)添加し、45℃で2時間酵素処理した。次いで、2段階目は、ペプチダーゼ製剤を100g(原料肝臓の0.1重量%)添加し、55℃で2時間酵素処理した。
【0077】
その後、90℃に達するまで加熱し酵素を失活させた。冷却した酵素処理ミンチを振動篩を用いてろ過し原料肝臓の1.5重量%の珪藻土(セライト)(セライト社)を添加し処理(澱下げ)した。一晩冷蔵庫に入れ、5℃まで冷却し、連続型の円筒型遠心分離機で10000rpmで遠心分離を行った。上清に原料肝臓の5重量%の活性炭(セライト社)を添加し、90℃で30分間処理した。次いで、珪藻土ろ過によりろ過した(珪藻土としては、ボディーフィードセライト(セライト社)1.5kg(原料肝臓の1.5重量%)及びプリコートセライト(セライト社)1.5kg(原料肝臓の1.5重量%)を用いた)。ろ過液を減圧濃縮器を用いて濃縮した。濃縮はBx40になるまで行った。濃縮したものをレバーエキス濃縮液として用いた。レバーエキス濃縮液には、固形物は含まれず、無色透明であった。
【0078】
実施例2 レバ刺し状食品の製造
実施例1で製造したレバーエキス濃縮液を他の原料と表1の配合で混合した。
表1の原料中、澱粉加工澱粉寒天ゲル化剤製剤、ゲル化剤製剤中に配合されているゲル化素材はローカストビーンガム、カラギナン、キサンタンガム、寒天で、補助的に澱粉、加工澱粉が配合されている。味や風味は牛レバーエキス、うまみ調味料、三温糖で整えた。
【0079】
配合したものを、急速凍結機にて-20℃以下に凍結し、固化させた。固化したものの色は牛の生の肝臓とほぼ同じ赤色〜赤茶色であった。
【0080】
固化させたものをレバースライス状に薄くスライスし、レバ刺し状食品とした。得られたレバ刺し状食品を食したところ、レバ刺しの食感、風味及び香りを有し、焦げ臭さ等の不快臭はなかった。
【0081】
常温で長期保存可能なレバ刺し状食品を製造するために、得られたレバ刺し状食品をフリーズドライにより、乾燥させた。乾燥させた後、水に戻して復元したところ、製造時の性状を有するレバ刺し状食品が得られた。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例3 牛レバーエキス濃縮液の臭い成分分析
レバーエキス等の肉類エキスの製造の際に、過度の加熱等により焦げ臭さ等が発生することがある。そこで、本発明の実施例1の方法で製造した牛レバーエキス濃縮液の臭い成分について、他の方法で製造した牛レバーエキス及び牛レバー原料と比較分析した。
【0084】
サンプルは以下のものを用いた。
(A)牛レバーエキス(本発明の実施例1その3の方法で製造した牛レバーエキス濃縮液)
(B)牛レバーエキス(別法で製造した牛レバーエキス濃縮液)
(B)の牛レバーエキスの製造は、原料→ミンチ→加水→酵素分解→加熱→固液分離→珪藻土で澱下げ→遠心分離→活性炭添加処理→濾過→濃縮→殺菌→包装の工程で行われ、(A)の本発明の製造の工程と部分的に類似しているが、(B)の方法においては、(A)の本発明の方法に比べ、加熱時間が長い。また、(A)の本発明の方法においては、レバーエキスの製造工程においてレバーエキスを濃縮した後に加熱をしていないが、(B)のレバーエキス製造においては濃縮後に加熱をしている。また、(B)の製造においては、(A)の本発明の方法に比べ、濃縮速度が速い。従って、(B)の方法では、(A)の本発明の方法に比べ、熱履歴が多い。
(C)牛レバー(原料)
分析方法は以下のとおりであった。
【0085】
サンプル(4g)をあらかじめ香気成分を吸着させるための樹脂(Twister)が入ったバイアル瓶に加え、密封した。なお、(C)牛レバー(原料)については、粉砕を行った後にバイアル瓶に加えた。各サンプルとも室温にて3時間静置して樹脂に香気成分を吸着させた。3時間経過後、香気成分が吸着された樹脂をガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS/O)に供することで測定を行った。なお測定時には臭い嗅ぎ装置(01factory Spectroscopy)を用い、カラムにて分離された香気成分を嗅ぎながら分析を行った。
【0086】
3サンプルの測定を行ったところ、(B)牛レバーエキス濃縮液は(A)牛レバーエキス濃縮液と比較して多くのにおいが感じられ、特に焦げ臭や蒸れた足の裏様の不快なにおいが感じられた。図1に、サンプル(A)、(B)及び(C)、並びに3種のサンプルのチャートを合成したもののGCチャートを示す。図中、※は吸着樹脂由来のピークを示す。図に示すように、(A)と(B)とでピークが異なっている。図2にGCチャートから化合物ライブラリー(NIST05)を用いて推測された各サンプルの主要な含有化合物のリストを示す。
【0087】
感じられたにおいとGCチャートを比較すると(B)では多くの酸や含窒素化合物が検出された。これらは少量では好ましい焙煎臭となるが、大量に存在すると不快な臭いとなる。また(C)原料に関しては(A)や(B)と比較して感じられたにおいも少なく、GCチャート上で確認できた物質も少なかった。
【0088】
酸は腐敗や分解によって生じ、含窒素化合物は加熱によって生じることが多い。よって(A)と(B)との違いは、(A)の製造方法と(B)の製造方法の違いに起因するものであると推測された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のレバ刺し状食品は、高品位のレバ刺しの代替食品として用いることができる。
図1
図2