特許第6207929号(P6207929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207929永久磁石回転電機およびそれを用いたエレベータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207929
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】永久磁石回転電機およびそれを用いたエレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20170925BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501K
   H02K1/22 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-177478(P2013-177478)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-47023(P2015-47023A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】北村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 正司
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 秀樹
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−340340(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040247(WO,A1)
【文献】 特開2007−068310(JP,A)
【文献】 特開2011−030286(JP,A)
【文献】 特開平05−207690(JP,A)
【文献】 特開2010−110117(JP,A)
【文献】 特開2003−134768(JP,A)
【文献】 特開2004−104986(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114594(WO,A1)
【文献】 特開2013−034344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
前記固定子の径方向にエアギャップを介して対向する回転子と、
前記回転子の内周側に配置された第一の非磁性材と、を有し、
前記回転子は、回転周方向に複数に分割された回転子鉄心および複数に分割された永久磁石を有し、
前記複数の回転子鉄心および前記複数の永久磁石が回転子の回転周方向に交互に放射状に配置され、
前記複数の回転子鉄心は、前記第一の非磁性材の外周部で前記第一の非磁性材に嵌め合わされ、
前記回転子鉄心は、回転軸方向に前記回転子鉄心を貫通する鉄心穴を有し、
前記第一の非磁性材は、回転軸方向に前記第一の非磁性材を貫通する非磁性材穴を有し、
前記回転子の回転軸方向の両側には、二つの第二の非磁性材が設けられ、
前記二つの第二の非磁性材は、前記鉄心穴および前記非磁性材穴を通じて連結しており、
前記回転子と連結したシャフトと、
前記シャフトと連結した側板と、を有し、
前記二つの第二の非磁性材の回転軸方向の片側に前記側板が配置され、
前記二つの第二の非磁性材が、前記非磁性材穴を通じて回転軸方向に前記側板と連結している永久磁石回転電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記回転子鉄心が、ダブテールにより前記第一の非磁性材の外周部に嵌め合わされている永久磁石回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記鉄心穴の回転周方向の幅が、前記鉄心穴の中心を通る前記回転子鉄心の回転周方向幅の35%以下である永久磁石回転電機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記回転子鉄心の径方向の対称軸上において、
隣り合った一対の前記永久磁石の外周側と内周側の角を結んだ2本の線間の距離をa、
前記永久磁石の内周側の線から前記鉄心穴の中心点までの距離をbとしたとき、
b/aが50%以上95%以下である永久磁石回転電機。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記二つの第二の非磁性材が、ピンにより、前記鉄心穴を通じて回転軸方向に連結し、
前記二つの第二の非磁性材が、ボルトにより、前記非磁性材穴を通じて回転軸方向に前記側板と連結している永久磁石回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記二つの第二の非磁性材が、回転周方向に分割されている永久磁石回転電機。
【請求項7】
請求項において、
前記分割された二つの第二の非磁性材には、前記非磁性材穴を通じて連結する部分が2箇所以上ある永久磁石回転電機。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記分割された二つの第二の非磁性材には、回転軸方向において前記鉄心穴および前記非磁性材穴を覆う形状の第二一の非磁性材と、回転軸方向において前記鉄心穴を覆い、前
記非磁性材穴を露出させる形状の第二二の非磁性材と、があり、
第二一の非磁性材は、前記鉄心穴および前記非磁性材穴を通じて連結し、
第二二の非磁性材は、前記鉄心穴を通じて連結している永久磁石回転電機。
【請求項9】
請求項において、
前記第二二の非磁性材の方が前記第二一の非磁性材より多い永久磁石回転電機。
【請求項10】
請求項8又は9において、
前記二つの第二の非磁性材のいずれかが回転周方向にずれて、前記二つの第二の非磁性材が連結している永久磁石回転電機。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の永久磁石回転電機を備えたエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石回転電機およびそれを用いたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーク構造の回転子を有する多極の永久磁石回転電機は、回転子内部の漏れ磁束低減と材料の歩留まり向上のため、回転子鉄心が分割されている。そのため、分割された回転子鉄心を何らかの方法で固定する必要がある。回転子鉄心の固定方法の一つとして、回転子鉄心の内周側に非磁性材を配置し、回転子鉄心を非磁性材の外周部に嵌め合わせて固定する方法がある。回転子鉄心を非磁性材の外周部に嵌め合わせて固定する技術として、特許文献1などの技術が開示されている。また、特許文献1では、回転子鉄心の外周部近傍に穴が形成され、その穴に挿入されたバーを回転軸方向の両端に配置されたプレートと連結し、プレートとシャフトを径方向に連結して回転子鉄心を固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−34344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転子鉄心が非磁性材の外周部に嵌め合わされている場合、個々の回転子鉄心の外周部にはトルク発生時に電磁応力が回転周方向に作用する。そして、回転子鉄心と非磁性材との嵌め合わせ部には曲げモーメントが作用する。特に、回転子鉄心が径方向に細長くなるような大径・多極の永久磁石回転電機では、曲げモーメントの腕が長く、電磁応力が大きいことから、嵌め合わせ部の塑性変形または座屈が問題となる。そのため、大径・多極などの永久磁石回転電機では、嵌め合わせ部の強度を確保することが重要である。
【0005】
特許文献1の技術では、回転子鉄心の外周側に作用するトルクを、回転子鉄心の外周部近傍の穴の中のバーと軸方向両端のプレートとを介してシャフトに伝達しているため、嵌め合わせ部には大きな曲げモーメントが作用しない。しかし、バーは、トルクの伝達に耐えられるだけの強度を確保しなければならないため、バーの幅を大きくする必要がある。その結果、バーの穴は回転子の磁束の流れを妨げて、トルクを低下させる。また、大径・多極の永久磁石回転電機では、回転子鉄心の回転周方向の寸法が大きく取れないことから、トルクの伝達に耐えられるバーの幅を確保することが難しい。
【0006】
以上より、特許文献1の技術は回転子鉄心の固定と永久磁石回転電機の性能を両立させる点に関して改良の余地がある。本発明は、永久磁石回転電機の性能を大幅に低下させることなく、回転子鉄心と非磁性材との嵌め合わせ部の強度を確保した永久磁石回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、例えば以下の通りである。
【0008】
固定子と、固定子の径方向にエアギャップを介して対向する回転子と、回転子の内周側に配置された第一の非磁性材と、を有し、回転子は、回転周方向に複数に分割された回転子鉄心および複数に分割された永久磁石を有し、複数の回転子鉄心および複数の永久磁石が回転子の回転周方向に交互に放射状に配置され、複数の回転子鉄心は、第一の非磁性材の外周部で第一の非磁性材に嵌め合わされ、回転子鉄心は、回転軸方向に回転子鉄心を貫通する鉄心穴を有し、第一の非磁性材は、回転軸方向に第一の非磁性材を貫通する非磁性材穴を有し、回転子の回転軸方向の両側には、二つの第二の非磁性材が設けられ、二つの第二の非磁性材は、鉄心穴および非磁性材穴を通じて連結している永久磁石回転電機。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、永久磁石回転電機の性能を大幅に低下させることなく、回転子鉄心と非磁性材との嵌め合わせ部の強度を確保した永久磁石回転電機およびそれを用いたエレベータ装置を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態における固定子と回転子の構成を示す回転軸方向の断面図。
図2図1の要部拡大図。
図3】本発明の第1実施形態における永久磁石回転電機の径方向の断面図。
図4】回転子鉄心の鉄心穴がトルク性能に及ぼす影響の計算で使用する変数の定義を示す図。
図5図4の計算結果を示す図。
図6】本発明の第2実施形態における固定子と回転子の構成を示す回転軸方向の断面図。
図7】本発明の第2実施形態における永久磁石回転電機の径方向の断面図。
図8】本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第1変形例の構成を示す回転軸方向の断面図。
図9】本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第2変形例の構成を示す回転軸方向の断面図。
図10】本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第3変形例の構成を示す回転軸方向の断面図。
図11】本発明の永久磁石回転電機を備えたエレベータ装置の構成を示す径方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0012】
まず、図1図5を用いて、本発明による第1の実施形態の永久磁石回転電機の構造について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における固定子と回転子の構成を示す回転軸方向の断面図である。図2は、図1の回転周方向の1/6領域の要部拡大図である。図3は、本発明の第1の実施形態における永久磁石回転電機の径方向の断面図である。図4は、本発明の回転子鉄心の鉄心穴がトルク性能に及ぼす影響の計算で使用する変数の定義を示す図である。図5は、図4の計算結果を示す図である。
【0013】
図1において、永久磁石回転電機1は、固定子2と回転子3と第二の非磁性材100とから構成される。
【0014】
図2において、固定子2は、固定子鉄心21と固定子巻線22とを備える。固定子鉄心21は、打ち抜き型等により打ち抜いた電磁鋼板を回転軸方向に積層して構成される。固定子鉄心21は、固定子2の外周部に設けられて固定子2の磁路を構成する固定子コアバック23と、固定子コアバック23より固定子2の内周に向かって放射状に所定角度ピッチで延設される固定子突極24とから構成される。図2に示すように、隣り合った一対の固定子突極24間と固定子コアバック23とで構成される空間はスロット25であり、固定子巻線22を収納する空間である。ここで、各固定子突極24には、1極に1個の固定子巻線22を巻回するものとする。
【0015】
一方、回転子3は、固定子2の径方向にエアギャップ4を介して対向して配置されている。シャフト35が回転子3に連結されている。シャフト35の外周面で回転子3の内周側に第一の非磁性材36が配置されている。回転子3は、第一の非磁性材36の外周面に設けられ、回転周方向に複数に分割された回転子鉄心31と、回転周方向に複数に分割された永久磁石34と、で構成される。永久磁石34と回転子鉄心31はそれぞれ、回転子3の外周に向かって放射状に、回転周方向に交互に配置されている。回転子鉄心31は、例えば、打ち抜き型等により打ち抜いた電磁鋼板を回転軸方向に積層して構成される。回転子鉄心31は、図示のように、回転周方向に極ごとに分割され、回転子3の回転周方向に沿って所定角度ピッチで並べて設けられている。回転子鉄心31は、回転子3の磁路を構成する回転子磁極32として機能する。
【0016】
図示のように、隣り合った一対の回転子磁極32と第一の非磁性材36とで構成される空間、すなわち磁石挿入スペース33には、永久磁石34が収納されている。このときの永久磁石34の磁化は回転子3の径方向に対して直角の方向を向き、回転子磁極32が回転子3の回転周方向に沿ってNSNS・・・と交互になるように配置される。永久磁石34は、接着剤等によって磁石挿入スペース33に固着されている。
【0017】
回転子鉄心31は、第一の非磁性材36の外周部で第一の非磁性材36に嵌め合わされている。第一の非磁性材36は、シャフト35の外周面のキー溝(図示していない)で固定されている。第一の非磁性材36は、回転子磁極32の内周側の漏れ磁束を小さくする効果がある。回転子鉄心31に作用するトルクは、第一の非磁性材36を介してシャフト35へ伝達される。回転子鉄心31は、回転子3の回転軸方向に回転子鉄心31を貫通する鉄心穴37を有し、第一の非磁性材36は、回転子3の回転軸方向に第一の非磁性材36を貫通する非磁性材穴38を有する。本実施例において、回転子鉄心31の外周側に作用するトルクは,回転子鉄心31→回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部→第一の非磁性材36→シャフト35の順に伝達する。本実施例の場合、トルクの主な伝達経路がバーではないため、従来に比べてバーを大きくしなくてよい。
【0018】
図3において、固定子2は固定子コアバック23を介してフレーム5に回転軸方向に固定され、回転子3と連結したシャフト35はベアリング6を介して、フレーム5に取り付けられている。また、回転子3には回転軸方向に永久磁石回転電機1の制御を行うためのエンコーダ7が接続されている。シャフト35は、回転子3に連結されている。側板39はシャフト35に連結されている。二つの第二の非磁性材100の回転軸方向の片側に側板が配置されている。
【0019】
回転子3の回転軸方向の両側には、二つの第二の非磁性材100が設けられ、二つの第二の非磁性材100は、鉄心穴37および非磁性材穴38を通じて回転軸方向に連結されている。
【0020】
以上の構成のように、回転子鉄心31の外周側を第二の非磁性材100で固定することで、回転子鉄心31の外周面に作用する電磁応力の回転周方向成分により発生する、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の曲げモーメントを弱めることができ、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の強度を確保できる。また、回転子鉄心31の電磁振動も抑える働きがあることから低騒音化につながる。さらに、回転子鉄心31にフェライト磁石を使用した場合、回転子鉄心31の振動抑制により、フェライト磁石の欠けを防止でき、エアギャップ中4に磁石の磁粉が飛び出すのを防ぐことができる。
【0021】
回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の径方向の深さが浅く、回転子鉄心31の内周側の先端形状が尖っている場合、回転子3の製造時に回転子鉄心31の位置決めが困難になり、回転子3の外径真円度が悪化し、低トルク脈動の実現が難しい。そこで、本実施例のように、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部をダブテール構造にすることで、回転子鉄心31の位置決めが容易になり、回転子3の外径真円度を向上できることから、低トルク脈動を実現できる。
【0022】
図4図5から、回転子鉄心31の鉄心穴37がトルク性能に及ぼす影響を示す。図示のように、回転子鉄心31の径方向の対称軸上において、隣り合った一対の永久磁石34の外周側と内周側の角を結んだ2本の線間の距離をa、永久磁石34の内周側の線から鉄心穴37の中心点までの距離をbとする。aを一定値とし、bを変化させたときのトルクの変化を辺要素有限要素法による磁界解析で計算した。
【0023】
本実施例では、発生トルクを数千Nmクラスと想定していることから、これに相当する電磁応力を想定し、鉄心穴37の大きさはM6、M8ボルト相当とした。図5では、M6ボルト相当の鉄心穴37を空けた場合のトルク低減率を実線、M8ボルト相当の鉄心穴37を空けた場合のトルク低減率を点線で示している。図中の結果から、トルクは鉄心穴37の位置が外周側にあるほど低下し、鉄心穴37が大きいほど低減率が大きいことがわかる。ここで、トルクの低減率を3%まで許容できるとした場合、M6ボルト相当の鉄心穴37の位置は95%(b/a×100の値で表記)程度まで、M8ボルト相当の鉄心穴37の位置は75%程度まで配置できる。鉄心穴37の位置が50%未満になると、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の曲げモーメントを弱める効果が小さくなることから、鉄心穴37の位置は50%以上95%以下、好ましくは70%以上95%以下、さらに好ましくは90%以上95%以下であることが望ましい。また、鉄心穴37の位置の範囲において、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の曲げモーメントを弱める効果が最も大きい鉄心穴37の位置95%では、M6ボルト相当の鉄心穴37の回転周方向の幅が、その鉄心穴37の中心を通る回転子鉄心31の回転周方向の幅の30%程度であることから、鉄心穴37の回転周方向幅は、その鉄心穴37の中心を通る回転子鉄心31の周方向の幅の35%以下、好ましくは、28%以上32%以下であることが望ましい。
【0024】
シャフト35の外周面にキー溝を作ることが困難な場合は、シャフト35と連結した側板39に二つの第二の非磁性材100を非磁性材穴を通じて連結させ、側板39を介してトルクをシャフト35へ伝達させてもよい。これにより、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の強度確保と、シャフト35へのトルク伝達を同時に行うことができる。
【実施例2】
【0025】
図6図7を用いて、本発明による第2の実施形態の永久磁石回転電機の構造について説明する。図6は、本実施例における固定子と回転子の構成を示す回転軸方向の断面図である。図7は、本実施例における永久磁石回転電機の径方向の断面図である。
【0026】
図6図7において、二つの第二の非磁性材100は、ピン110により回転子鉄心31の鉄心穴37を通じて回転軸方向に連結し、ボルト120により第一の非磁性材36の非磁性材穴38を通じて回転軸方向に連結し、側板39と連結している。
【0027】
本実施例のような多極の永久磁石回転電機では、多数の回転子鉄心31を有するため、鉄心穴37の数が多くなり、これらを全てボルト120で連結しようとすると、生産リードタイムが大幅に増えるといった問題がある。これに対して、ピン110を使用することで、連結作業を複数同時に行うことが可能になることから、生産リードタイムを短縮化できる。ピン110の形状は、図中の丸型だけでなく、多角形でもよい。ただし、長方形の場合は長辺の方向を径方向側に向けて配置することで、磁束の流れを極力妨げることなく、二つの第二の非磁性材100を連結することができる。
【0028】
一方で、第一の非磁性材36の非磁性材穴38の数は鉄心穴37の数に比べて少ないことから、ボルト120を使用しても生産リードタイムが大幅に増えることはない。そこで、第一の非磁性材36の非磁性材穴38にボルト120を使用して、回転子鉄心31の保持とトルクの伝達を同時に行わせることが可能である。また、第二の非磁性材100から側板39にトルクを伝達させるためには、第一の非磁性材36と第二の非磁性材100と側板39の回転軸方向の締結力を確保する必要があることから、ピン110よりボルト120を使用した方が回転軸方向の締結力を確保でき、安定したトルク伝達が可能である。
【0029】
本実施例では、回転周方向の全周にわたって、鉄心穴37と非磁性材穴38にピン110とボルト120を使用した例を示したが、必ずしも全て使用する必要はない。回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の強度に余裕がある場合は、例えば、回転周方向に1個飛ばしでピン110とボルト120を使用する方法を採ってもよい。
【実施例3】
【0030】
図8図10を用いて、本発明の第3の実施形態における永久磁石回転電機を説明する。図8は、本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第1変形例の構成を示す回転軸方向の断面図である。図9は、本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第2変形例の構成を示す回転軸方向の断面図である。図10は、本発明の第3実施形態における第二の非磁性材の第3変形例の構成を示す回転軸方向の断面図である。
【0031】
図8において、二つの第二の非磁性材100は、回転周方向に分割されており、分割された第二の非磁性材100のそれぞれに、第一の非磁性材36の非磁性材穴38を通じて連結する部分が2箇所ある。
【0032】
第二の非磁性材100を回転周方向に分割することで材料の歩留まり向上につながる。また、分割された第二の非磁性材100において、第一の非磁性材36の非磁性材穴38を通じて連結する部分を2箇所以上にすることで、第二の非磁性材100の内周側で発生する電磁振動を低減することができ、低騒音化につながる。
【0033】
第二の非磁性材100の材料歩留まりのさらなる向上策として、図9図10の構成がある。図9では、分割された第二の非磁性材100には、回転軸方向において鉄心穴37および非磁性材穴38を覆う形状の第二一の非磁性材300と、回転軸方向において鉄心穴37を覆い、非磁性材穴38を露出させる形状の第二二の非磁性材310の2種類がある。換言すれば、第二二の非磁性材310は、鉄心穴37付近だけを覆う形状をしている。2種類の第二一の非磁性材300、第二二の非磁性材310を回転周方向に交互に配置し、第二一の非磁性材300は鉄心穴37および非磁性材穴38を通じて連結し、第二二の非磁性材310は鉄心穴37だけを通じて連結している。
【0034】
図10では、第二二の非磁性材310の方が第二一の非磁性材300より多い構成である。これにより、第二の非磁性材100の使用量を削減できる。
【0035】
第二二の非磁性材310には、回転周方向に力が作用することから、回転周方向に隣り合う、第二二の非磁性材310を経由して、第二一の非磁性材300まで力を伝えることで、第二二の非磁性材310に連結された回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の強度を確保することができる。
【0036】
図9図10の構成の場合、回転子3のアンバランス・ウェイトにより、回転子3の振動が問題になる。そこで、二つの第二の非磁性材100の片側をある角度だけ回転周方向にずらして連結することで回転子3のアンバランス・ウェイトが分散され、回転子3の振動を防ぐことができる。図9の場合は、二つの第二の非磁性材100の片側のみを60度だけ回転周方向にずらして連結すればよい。図10の場合は、二つの第二の非磁性材100の片側のみを90度だけ回転周方向にずらして連結すればよい。
【実施例4】
【0037】
図11を用いて、本発明の一実施形態における永久磁石回転電機を備えたエレベータ装置の構造について説明する。図11は、本発明の一実施形態における永久磁石回転電機を備えたエレベータ装置の構成を示す径方向の断面図である。
【0038】
図11において、エレベータ装置400は、永久磁石回転電機1、回転体201、ブレーキ202、ブレーキドラム203、シーブ204で構成される。図11において、固定子2は回転軸方向に固定子コアバック23を介してフレーム5にボルト121で固定され、回転子3と連結したシャフト35はベアリング6を介してフレーム5に取り付けられている。また、回転子3には回転軸方向に永久磁石回転電機1の制御を行うためのエンコーダ7が接続されている。回転体201は外周側に配置されたブレーキ202のシューを受けるためのブレーキドラム203と、ロープに力を伝達するためのシーブ204から構成される。フレーム5は昇降路内のマシンベース、または建屋の最上階の機械室のマシンベースに固定される。
【0039】
本発明の一実施形態における永久磁石回転電機1を使用することで、回転子鉄心31と第一の非磁性材36との嵌め合わせ部の強度を確保でき、大きなトルクを発生させるエレベータ装置において、高信頼性のエレベータ装置400を提供できる。また、低振動・低騒音のエレベータ装置400を提供できる。さらに、本発明の一実施形態における永久磁石回転電機1では、フェライト磁石を使用してもネオジム磁石並みの性能を得ることができることから、資源セキュリティーの影響を受けにくいエレベータ装置400を提供できる。
【0040】
以上では、本発明の永久磁石回転電機と備えたエレベータ装置について示したが、本発明は、高トルクと低トルク脈動が要求されるサーボや電動パワー・ステアリングの永久磁石回転電機への利用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:永久磁石回転電機
2:固定子
3:回転子
4:エアギャップ
5:フレーム
6:ベアリング
7:エンコーダ
21:固定子鉄心
22:固定子巻線
23:固定子コアバック
24:固定子突極
25:スロット
31:回転子鉄心
32:回転子磁極
33:磁石挿入スペース
34:永久磁石
35:シャフト
36:第一の非磁性材
37:鉄心穴
38:非磁性材穴
39:側板
100:第二の非磁性材
110:ピン
120、121:ボルト
201:回転体
202:ブレーキ
203:ブレーキドラム
204:シーブ
300:第二一の非磁性材
310:第二二の非磁性材
400:エレベータ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11