(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる検体検査装置を説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る検体検査装置の構成を示す図である。
図1に示すように、検体検査装置1は、分析機構2、分析機構制御部3、解析部4、表示部5、操作部6、記憶部7、及びシステム制御部8を備える。
【0026】
分析機構2は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。分析機構2は、検体検査装置の筐体に設けられている。分析機構2は、例えば、
図1に示すように、反応ディスク11、サンプルディスク13、第1試薬庫15、第2試薬庫17、サンプルアーム19―1、サンプルプローブ21―1、第1試薬アーム19―2、第1試薬プローブ21―2、第2試薬アーム19―3、第2試薬プローブ21―3、攪拌アーム23、攪拌子25、測光機構27、及び洗浄機構29を搭載する。
【0027】
反応ディスク11は、円周上に配列された複数の検査容器31を保持する。反応ディスク11は、既定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。後述するように、反応ディスク11には、各検査容器31内の検査液に対して磁場を印加するための磁石が設けられている。サンプルディスク13は、反応ディスク11の近傍に配置されている。サンプルディスク13は、検体が収容されたサンプル容器33を保持する。サンプルディスク13は、分注対象の検体が収容されたサンプル容器33が検体吸入位置に配置されるように回動する。第1試薬庫15は、検体の検査項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の第1試薬容器35を保持する。第1試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬容器35が第1試薬吸入位置に配置されるように回動する。第2試薬庫17は、反応ディスク11の近傍に配置される。第2試薬庫17は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の第2試薬容器37を保持する。第2試薬庫17は、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬容器37が第2試薬吸入位置に配置されるように回動する。
【0028】
本実施形態において、第1試薬または第2試薬として、検体に含まれる検査対象の分子に直接または間接に特異的に結合する磁性粒子を含む溶液が用いられる。磁性粒子を検査対象の分子が検体に微量に含まれる場合に用いると、検査対象の分子を高感度に定量分析することができる。
【0029】
反応ディスク11とサンプルディスク13との間にはサンプルアーム19―1が配置される。サンプルアーム19―1の先端には、サンプルプローブ21―1が取り付けられている。サンプルアーム19―1は、サンプルプローブ21―1を上下動可能に支持している。また、サンプルアーム19―1は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能にサンプルプローブ21―1を支持している。サンプルプローブ21―1の回動軌跡は、サンプルディスク13上のサンプル吸入位置や反応ディスク11上のサンプル吐出位置を通過する。サンプルプローブ21―1は、サンプルディスク13上のサンプル吸入位置に配置されているサンプル容器33から検体を吸入し、反応ディスク11上の検体吐出位置に配置されている検査容器31に検体を吐出する。
【0030】
反応ディスク11の外周近傍には第1試薬アーム19―2が配置される。第1試薬アーム19―2の先端には第1試薬プローブ21―2が取り付けられている。第1試薬アーム19―2は、第1試薬プローブ21―2を上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19―2は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第1試薬プローブ21―2を支持している。第1試薬プローブ21―2の回動軌跡は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置と反応ディスク11上の第1試薬吐出位置とを通る。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置に配置されている第1試薬容器35から第1試薬を吸入し、反応ディスク11上の第1試薬吐出位置に配置されている検査容器31に第1試薬を吐出する。
【0031】
反応ディスク11と第2試薬庫17との間には第2試薬アーム19―3が配置される。第2試薬アーム19―3の先端には第2試薬プローブ21―3が取り付けられている。第2試薬アーム19―3は、第2試薬プローブ21―3を上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19―3は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第2試薬プローブ21―3を支持している。第2試薬プローブ21―3の回動軌跡は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置と反応ディスク11上の第2試薬吐出位置とを通る。第2試薬プローブ21―3は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置に配置されている第2試薬容器37から第2試薬を吸入し、反応ディスク11上の第2試薬吐出位置に配置されている検査容器31に第2試薬を吐出する。
【0032】
反応ディスク11の外周近傍には攪拌アーム23が配置される。攪拌アーム23の先端には攪拌子25が取り付けられている。攪拌アーム23は、攪拌子25を上下動可能に支持する。また、攪拌アーム23は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に攪拌子25を支持している。攪拌子25は、反応ディスク11上の攪拌位置に配置された検査容器31内の検体と第1試薬との混合液、または、検体と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌する。以下、これら混合液を検査液と呼ぶことにする。
【0033】
図1に示すように、反応ディスク11近傍には、測光機構27が設けられている。測光機構27は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、測光機構27は、光源210と検出器220とを有している。光源210は、反応ディスク11内の測光位置にある検査容器31内の検査液に向けて光を照射する。検出器220は、測光位置にある検査容器31を挟んで光源に対向する位置に配置される。検出器220は、光源から照射され検査容器31及び検査液を透過した光、検査容器31及び検査液により反射された光、あるいは、検査容器31及び検査液により散乱された光を検出する。検出器220は、検出された光の強度に応じた計測値を有するデータ(以下、測光データと呼ぶことにする。)を生成する。生成された測光データは、解析部4に供給される。
【0034】
反応ディスク11の外周には、洗浄機構29が設けられている。洗浄機構29は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、洗浄機構29は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとが取り付けられている。洗浄機構29は、反応ディスク11の洗浄位置にある検査容器31を洗浄ノズルで洗浄し、乾燥ノズルで乾燥する。
【0035】
分析機構制御部3は、システム制御部8による制御に従って分析機構2の各装置や機構を作動する。解析部4は、測光データに基づいて、磁性粒子に由来する検査液の吸光度を算出したり、算出された吸光度に基づいて濁度を算出したりする。また、解析部4は、算出された検査液の濁度や吸光度に基づいて検査項目に応じた検査対象の分子を定量分析する。表示部5は、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを有する。表示部5は、解析部による解析結果を表示する。操作部6は、オペレータからの入力機器を介した各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。記憶部7は、検体検査装置1の動作プログラム等を記憶している。システム制御部8は、検体検査装置1の中枢として機能する。システム制御部8は、記憶部7から動作プログラムを読み出し、動作プログラムに従って各部3,4,5,7を制御する。
【0036】
以下、本実施形態に係る検体検査装置1について詳細に説明する。
【0037】
本実施形態に係る検体検査装置1は、検査容器31内の検査液に対して磁場を印加するための磁石を有している。本実施形態に係る磁石は、検査容器31内の検査液の全体に亘って磁場の磁束密度が略均一になるような幾何学的配置(ジオメトリ:geometry)を有している。
【0038】
図2は、反応ディスク11における検査容器31と磁石41との配列例を模式的に示す図である。
図3は、測光機構27と検査容器31と磁石41との位置関係を模式的に示す図である。測光機構27の光源210と検出器220とは、検体検査装置1の筐体内部の所定位置に固定されている。光源210から検出器220に向けて光が照射される。ここで光の照射方向をY方向に規定する。光源210から検出器220までの光路上の所定位置に測光位置が設けられている。検査容器31は、光源210からの光を測光位置で略直角に横切るように所定の時間間隔で反応ディスク11により回動される。検査容器31内の検査液は、測光位置を横切る毎に測光機構27により光学計測される。ここで、検査容器31の長軸A1に沿う方向をZ方向に規定し、Y方向とZ方向との両方に直交する方向をX方向に規定する。
【0039】
光源210としては、ハロゲンランプやLED(light-emitting diode)、あるいはレーザー発生器などを用いることができる。光源210から照射される光は、検査液の濁度あるいは吸光度を計測可能な波長帯域の光を含むものであることが好ましい。光源210がLEDやレーザー発生器等の単色光源の場合、照射される単色光の波長が、磁性粒子の濁度あるいは吸光度を計測可能な波長帯域に含まれると良い。光源210がハロゲンランプ等の白色光源を用いる場合、磁性粒子の濁度あるいは吸光度の検出感度を上げるため、必要に応じて光学フィルターや分光器などの波長弁別器を検出器の前段に設けるとよい。検出器220は、検査液の濁度あるいは吸光度を計測できる波長帯域の光を検出し、検出された光の強度を電気信号に変換する。具体的には、検出器220として、光電子増倍管やフォトダイオード、または、アレイ化された光電子増倍管やフォトダイオードが用いられる。検出のS/N比を良好にするため、必要に応じて光源210と検出器220との間に光学窓や集光器が配置されてもよい。
【0040】
検査容器31は、検査液を収容するための容器である。複数の検査容器31が反応ディスク11において円周状に所定のピッチで配列されている。検査容器31の面のうちの少なくとも光の入射面と出射面とは、測光機構27による光学計測が可能なように光学的に透明かつ平滑であると良い。また、検査容器31は、検体や試薬、洗浄液等によって腐食したり汚染されたりしない材質で形成されるとよい。具体的には、検査容器31は、光学ガラスや透明な樹脂等により形成されると良い。
【0041】
磁石41は、検査容器31内の検査液に対して磁場を印加するために反応ディスク11に設けられる。磁石41は、検査容器31内の検査液において磁場の磁束密度が略均一になるような幾何学的配置を有している。本実施形態において幾何学的配置とは、磁石41のサイズ、形状、検査容器31との相対的な位置関係、磁石41間の相対的な位置関係を意味する。磁石41は、光入射方向(Y方向)に対して直交するZ方向またはX方向に磁場が印加されるように、反応ディスク11内の検査容器31の近傍に配置される。例えば、
図2及び
図3に示すように、検査容器31を左右に挟むように2つの磁石41が配置される。この場合、2つの磁石41は、Y方向に水平に直交するX方向に沿って磁場を印加することができる。検査液に良好な磁場分布を有する磁場を印加するために、磁石の中心間を結ぶ線A2が検査容器31内の検査液を通るように一対の磁石41が配置される。なお、磁石41の配置はこれに限定されない。例えば、Y方向に鉛直に直交するZ方向に沿って磁場を印加するように、検査容器31の上下を挟むように2つの磁石41が配置されてもよい。
【0042】
検査容器31の上下に磁石41を配置する場合に比して、検査容器31の左右に磁石41を配置する場合は、検査容器31の上下方向への磁場の漏洩を低減することができる。また、検査容器31の左右に磁石41を配置する場合、磁石41を検査容器31の上方に配置する必要がなく、検査容器31の開口部近傍を常に開放できる。従って、検査容器31への検体や試薬等の吐出を妨げることがなく、装置構成を簡便にすることができる。
【0043】
本実施形態に係る磁石41としては、既存の如何なるものも適用可能である。例えば、本実施形態に係る磁石41として、フェライト磁石やアルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石を用いることが望ましい。検査容器31を挟むように配置される一対の永久磁石は、X方向に磁場が印加されるように、SN対向で磁化される。また、磁石41として、永久磁石と他の磁性材料とを組み合わせたものも適用可能である。さらに、磁石41は金属や合金、酸化物等の強磁性体を含んでも良い。この場合、一対の強磁性体の一部が検査容器31をX方向またはZ方向に挟んで対向される。一対の強磁性体の他の部分は、検査容器31から離れた位置で永久磁石(あるいは電磁石)に接続される。このように一対の強磁性体と永久磁石とは、磁石41(磁気回路)を構成する。検査容器31をX方向に挟むように一対の強磁性体が配置された場合、X方向に沿って磁場が印加され、検査容器31をZ方向に挟むように一対の強磁性体が配置された場合、Z方向に沿って磁場が印加される。さらに、磁石41は電磁石を含んでも良い。この場合、上記の強磁性体と同様に、電磁石と永久磁石または他の磁性体とからなる磁石41(磁気回路)が構成される。
【0044】
上述のように、磁石41は、検査容器31内の検査液において磁場の磁束密度が略均一になるような幾何学的配置を有している。次に、この幾何学的配置について詳細に説明する。
【0045】
図4は、検査容器31と磁石41とを重ねて示す図である。
図4に示すように、磁石41の面のうちの検査容器に対する面(以下、磁石正面)41fは、横方向に幅wmを有し、縦方向に長さhmを有しているとする。検査容器31の磁石41に対向する内壁のうちの検査液に接触する面(以下、検査液接触面)31cは、横方向に幅wsを有し、縦方向に長さhsを有しているとする。磁束密度の勾配を小さくし、磁束密度を検査液の全体に亘って平坦にするために、磁石41は、磁石正面41fの面積が検査液接触面31cの面積よりも大きくなるように形成される。例えば、幅wmが幅wsよりも長く、かつ、長さhmが長さhsよりも長くなるように磁石41が形成される。磁石正面41fと検査液接触面31cとを重ねた場合、磁石正面41fが検査液接触面31cを包含するように、磁石41が検査容器31に対して配置される。
【0046】
検査液の液量は、検体や磁性粒子、その他の試薬の量によって変化したり、検査項目に応じて変化したりする。検査液は、検査容器31に最小液量と最大液量との間の液量だけ収容される。なお、最大液量は、検体検査装置1に対して設定される液量であり、検査液の検査可能な最大の液量である。最小液量は、検体検査装置1に対して設定される液量であり、検査液の検査可能な最小の液量である。検査液の液量によって、磁石正面41fの面積が検査液接触面31cの面積よりも小さくなる場合を失くすため、幅wsと高さhsとはそれぞれ、検査容器31に最大液量の検査液が収容された場合の値に設定されると良い。
【0047】
図5A及び
図5Bは、検査容器31に対する大きさが異なる2つの磁石から発生される磁場の磁力線の分布を模式的に示す図である。
図5A及び
図5Bは、検査容器31を上方から眺めた図である。
図5Aは、本実施形態に係る磁石41(磁石正面41fが検査液接触面31cよりも大きい磁石)からの磁力線の空間分布を示し、
図5Bは、従来例に係る磁石410(磁石正面410fが検査液接触面31cよりも小さい磁石410)からの磁力線の空間分布を示している。
【0048】
磁石からの磁力線は、磁石の中央部に比して周辺部の方が空間的に歪む物理的性質を有している。一方、本実施形態に係る磁石41は、磁石正面41fが検査容器31の検査液接触面31cよりも大きくなるように形成され、従来例に係る磁石410は、磁石正面410fが検査液接触面31cよりも小さい。従って、
図5Aの磁石41からの磁場の磁束密度は、
図5Bの磁石410からの磁場の磁束密度に比して、検査容器31の検査液の全体に亘って空間的に略均一になる。磁石間の磁場の磁束密度の勾配をより小さくするため、各磁石は、検査容器に接近して設置されるとよい。
【0049】
なお、
図2に示すように、磁石41と検査容器31とは、例えば、反応ディスク11において円周に沿って交互に配列される。各磁石41は、検査容器31に向けてX方向に着磁される。各磁石41は、磁化の方向が反応ディスク11上の全ての磁石41について同一方向であると良い。なお、上記の説明において、磁石41と検査容器31とは円周に沿って交互に配列されるとした。しかしながら、検査容器31が二つの磁石41で挟むことが可能であれば、この配列に限定されない。
図6は、反応ディスク11における検査容器31と磁石41との他の配列例を模式的に示す図である。
図6に示すように、各検査容器を二つの磁石41で挟むために、一つの検査容器31について2つの磁石41が設けられても良い。この場合、検査容器31を挟む2つの磁石41を互いに平行に配置することができるため、磁束密度の空間分布の歪みを軽減することができる。
【0050】
本発明者達は、磁石正面41fが検査液接触面31cよりも大きい磁石41による効果を検証するためにシミュレーションを行った。以下にシミュレーションの各種条件を説明し、シミュレーションの結果について説明する。
【0051】
検査液中の磁性粒子は、磁場による磁力や重力、検査液の浮力、検査液の粘性抵抗力等を受けて運動する。これらの作用を受けた磁性粒子の運動を定式化し、濃度分布が均一な初期状態から任意の時間経過後まで磁性粒子の位置を計算することによって、検査液中における磁性粒子の濃度分布変化を数値的に見積もることができる。磁性粒子の運動計算では、磁性粒子の径、磁性粒子における磁性体が占める比率、密度、比帯磁率、飽和磁化等の磁性粒子の物性値や検査液の密度、粘性係数がパラメータになる。これらパラメータは、文献値を参考にし、本発明者達が実際に磁場を印加して磁性粒子の濃度変化を計測した結果に整合するように定められた。通常の条件下において、検査液の中を移動する磁性粒子の運動に対する検査液のレイノルズ数Reは、Re<1である。すなわち、検査液の抵抗力は、ストークス則によって表される。また、検査液中の粒子の粒径が1μm程度あるので、シミュレーションにおいて、熱エネルギーや粒子間相互作用の影響を無視した。
【0052】
検査液に対してZ方向に磁場を印加する場合、磁力が重力に比べて十分大きければ、Z方向に沿う磁性粒子の濃度分布は、X方向と同様に変化すると考えられる。簡単のため、シミュレーションに使用する磁場分布は、検査液に対してX方向に印加される磁場を想定し、X方向に沿う一次元の磁場分布であるとした。検査液を挟んで平板状の2つの磁石をSN対向させて配置したとき、検査液内部におけるX方向の磁束密度分布は、近似的に座標Xの2次関数で表される。このシミュレーションにおいては、検査容器内の検査液はX方向に沿う幅を4mmであるとした。また、検査容器内の検査液のX方向に関する中心は、X座標0とした。
【0053】
図7は、本実施形態の係る磁石と従来例に係る磁石とから発生される磁場の磁束密度[T]のX方向に沿う分布を重ねて示すグラフを示す図である。
図7の点線は、従来例の磁束密度[T]のX方向に沿う分布を示し、
図7の実線は、本実施形態の磁束密度[T]のX方向に沿う分布を示す。なお従来例とは、磁石正面が検査液接触面よりも相対的に小さい場合であり、本実施形態とは、磁石正面が検査液接触面よりも相対的に大きい場合である。
図7に示すように、本実施形態は、従来例に比して、X方向に沿う検査液の中央部分の磁束密度の凹みが小さい。また、本実施形態は、従来例に比して、全体的に磁束密度が大きい。このように、本実施形態に係る検体検査装置は、検査液接触面よりも相対的に大きい磁石正面を有する磁石を利用することにより、検査液接触面よりも相対的に小さい磁石正面を有する磁石を利用する場合に比して、光入射方向(Y方向)に直交するX方向に沿って勾配が小さく、平坦な磁束密度を印加することができる。
【0054】
図8A及び
図8Bは、本実施形態に係る磁石と従来例に係る磁石とから発生される磁場が印加された検査液内における磁性粒子の濃度分布の時間変化を示すグラフを個別に示す図である。
図8Aのグラフは本実施形態に係る濃度分布の時間変化を示し、
図8Bのグラフは従来例に係る濃度分布の時間変化を示している。
図8A及び
図8Bにおいて、初期状態では磁性粒子は検査液中において均一に分散しているものとする。検査液内における磁性粒子の濃度は、初期状態の濃度を用いて規格化している。濃度分布は30秒間隔で計算され、各時間の濃度分布は異なる線種で示されている。磁力によって磁性粒子が検査容器の壁面に吸引されるため、時間経過と共に濃度が全体に低下していく。なお壁面に吸着された磁性粒子は計算に加味されていない。
【0055】
図8Bに示すように、磁石正面が検査液接触面よりも相対的に小さい磁石により磁場を印加する従来例の場合、検査液の中央では内壁付近に比べて濃度の低下速度が遅く、そのため、磁性粒子の濃度分布が時間経過に伴って不均一になることが見出される。本発明者達は、磁場分布の磁束密度の勾配を変えて同様の計算を行った。その結果、磁束密度勾配が大きくなるほど磁性粒子の濃度分布は大きく不均一化することが見出された。磁性粒子に作用する磁力は、磁性粒子の位置における磁束密度と磁束密度勾配との積に比例する。検査液中央では磁束密度と磁束密度勾配との両方が内壁近傍に比して小さいため、磁力は内壁近傍に比して検査液中央が小さい。従来例に係る磁場分布のような検査液中央の磁束密度が大きく凹んだ分布においては、検査液中央と検査容器の内壁付近とでこの磁力の差が大きくなるため、内壁付近の濃度低下が速く、濃度分布が不均一化してしまう。
【0056】
図8Aに示すように、磁石正面31cが検査液接触面41fよりも相対的に大きい磁石41により磁場を印加する本実施形態の場合、検査液中央の磁束密度の低下量が小さい。従来例の磁場分布と同程度の速さで磁性粒子が内壁に引き寄せられるようにするためには、磁束密度が高く勾配が小さい磁場を印加すればよい。これにより、検査液中央と検査容器31の内壁付近との磁性粒子に作用する磁力の差が小さくなり、時間経過に伴う濃度の低下速度は検査液中の位置に依らず均一になる。
図8Aに示すように、検査液接触面31cよりも大きい磁石正面41fを有する磁石41を利用することにより、時間経過に伴って全体的に濃度は低下するが、各時刻においてX方向に沿って濃度値を略一定にし、磁性粒子の濃度分布を検査液の全体に亘って略均一に保つことができる。
【0057】
本発明者達は、磁性粒子の粒径、磁性粒子内に磁性体が占める比率、検査液の粘性係数等の物性値を変えて同様の計算を行った。これら物性値に応じて磁性粒子の濃度の時間変化度合いは変化したが、磁性粒子の濃度分布の均一性はこれらの物性値に応じて概ね変化しないことが見出された。すなわち、磁石正面41fが検査液接触面31cよりも相対的に大きい磁石41を利用して磁場を検査液に印加することにより、磁性粒子の濃度分布の均一性が向上し、その結果、空間位置に応じた検査液の吸光度や濁度等の計測値のばらつきを低減することができる。
【0058】
検査容器31のサイズや設置位置のばらつきによって検査容器31と磁石41との相対的な位置関係がずれる場合がある。本発明者達は、検査容器31と磁石41との相対的な位置をX方向にずらした場合の磁性粒子の濃度分布の時間変化をシミュレーションした。
【0059】
図9A及び
図9Bは、検査容器31がX方向に0.4mmずれた場合における、本実施形態の係る磁石41と従来例に係る磁石とから発生される磁場が印加された検査液内における磁性粒子の濃度分布の時間変化を示すグラフを個別に示す図である。
図9Aのグラフは本実施形態に係る濃度分布の時間変化を示し、
図9Bのグラフは従来例に係る濃度分布の時間変化を示している。
図9Bに示すように、従来例に係る磁場分布においては、検査容器31が磁場分布の中心から横にずれるにつれて、磁性粒子の濃度分布の不均一度合いはさらに増してしまう。その結果、従来例の場合、検査容器31が磁場分布の中心から離れるにつれて、計測結果のばらつきが増大してしまう。これに対し、
図9Aに示すように、本実施形態に係る磁場分布においては、検査容器31が磁場分布の中心から横にずれた場合であっても、磁性粒子の濃度分布の均一性を保つことができる。すなわち、磁石正面41fが検査液接触面31cよりも相対的に大きい磁石41を利用する場合、磁石正面が検査液接触面よりも相対的に小さい磁石を利用する場合に比して、検査容器31と磁石41との相対的な位置ずれに起因する濃度分布の不均一性及びそれに伴う計測値のばらつきを低減することができる。
【0060】
上述のように、磁性粒子に作用する磁力は、その位置における磁束密度と磁束密度勾配との積に比例する。従って、濃度分布の均一性を保つために磁束密度勾配を小さくするにつれて磁力が弱くなり、濃度変化速度が遅くなって検査時間が増大してしまう。検体検査を迅速に実施するためには、磁束密度を大きくすることが必要である。本発明者達は、磁束密度を変更させた場合の検査液内における磁性粒子の濃度分布をシミュレーションした。このシミュレーションにより、本発明者達は、対向する磁石の中央を通るX軸上の磁束密度[T]を0.1T以上にすることによってX軸上以外の領域でも十分磁束密度を高く保つことが可能になり、検査液内における磁性粒子の濃度分布の均一性を確保しつつ短い時間で濃度変化させることができることを見出した。従って本実施形態に係る磁石41は、磁束密度[T]が0.1T以上である磁場を印加可能に構成及び配置されると良い。これにより本実施形態に係る検体検査装置1は、検査時間を短縮することが可能になる。
【0061】
検査液に印加する磁場は、磁束密度と磁束密度勾配とを変更することによって様々な磁場分布をシミュレーションにより計算することができる。本発明者達は、磁束密度と磁束密度勾配とを変更しながら磁性粒子の濃度分布をシミュレーションした。シミュレーションの結果、本発明者達は、磁束密度の勾配が小さいほど濃度分布の均一性は高まり、逆に磁束密度の勾配が大きいほど磁性粒子の濃度分布は不均一性が高まるという傾向を確認した。また、シミュレーションにより、本発明者達は、対向する磁石の中央を通るX軸上の磁束密度の変動を0.04T/mm以下にすることにより、X軸上以外の領域でも磁束密度の勾配を低減することができ、検査液中において濃度分布の均一性を高く保つことが可能になることを見出した。従って、本実施形態に係る磁石41は、X方向に沿う磁束密度の変動[T/mm]が0.04T/mm以下である磁場を印加可能に構成及び配置されると良い。これにより本実施形態に係る検体検査装置1は、磁性粒子の濃度分布の均一性を保ち、計測ばらつきを低減することができる。
【0062】
次に磁石のサイズと形状との違いに応じた磁場分布の変化について説明する。本発明者達は、異なるサイズ及び形状を有する複数の磁石による磁場分布を計算した。磁石として角型ネオジム磁石(ネオマグ(株)、材質:N48M、厚さ:3.0mm)を用い、この2個の角型ネオジム磁石を検査容器31を挟むようにSN対向させて設置した。角型ネオジム磁石間の距離は6mmに設定した。検査容器31として、X方向の幅が6mm、Y方向の幅が7mmである角型ガラスセルを用いた。また、ガラスセルのガラス厚さを1mmとした。従って、ガラスセル内の検査液はX方向の幅が4mm、Y方向の幅が5mmである。
【0063】
磁場分布の計算において磁石の磁石正面の形状は正方形と長方形とを採用した。
図10A及び
図10Bは、正方形の磁石正面を有する磁石による磁場分布の計算結果を示す図である。
図10Aは、正方形の磁石正面を有する磁石と検査容器との位置関係を示し、
図10Bは、
図10Aの磁石による磁束密度のX方向に関する空間分布を示すグラフである。
図10Aに示すように、磁石正面のZ方向に沿う長さをSaとし、磁石正面のY方向に沿う長さをSbとしている。
図10Bのグラフには、長さSa及び長さSbが3、5、8、10mmの各々の場合における磁束密度を示している。
図10Bの磁束密度は、一対の角型ネオジム磁石の中央を貫く軸A2上の磁束密度を示している。
図10Bに示すように、長さSa及びSbが短くなるにつれて、磁束密度は検査容器31のX方向の中央部で大きく低下し、長さSa及びSbが長くなるにつれて磁束密度が均一に近くなる。上述のように、磁石の中心から周縁部に向かうにつれて磁場分布は歪む。一辺が3mmの磁石の場合、検査液接触面が磁石正面よりも大きい。そのため、一辺が3mmの磁石の場合、磁石の周縁部または周縁部の外側に面した検査液の領域では磁束密度が大きく低下してしまうため、磁性粒子の濃度分布は著しく不均一化する。これに対し、一辺が10mmの磁石では、例えば、検査液の高さを10mmよりも十分低くすれば、検査液接触面よりも磁石正面を大きくすることができる。このとき、A2上だけでなく、他の領域でも磁束密度分布が平坦化されるため、時間経過に因らず磁性粒子の濃度分布を検査液の全体に亘って均一にすることができる。
【0064】
図11A及び
図11Bは、長方形の磁石正面を有する磁石による磁場分布のシミュレーション結果を示す図である。
図11Aは、長方形の磁石正面を有する磁石と検査容器との位置関係を示し、
図11Bは、
図11Aの磁石による磁束密度のX方向に関する空間分布を示すグラフである。
図11A及び
図11Bにおいては、磁石のZ方向の長さSaは20mmで共通とし、Y方向の長さSbが3、5、8、10mmの各々の磁場分布を示している。
図11Bの磁束密度は、一対の角型ネオジム磁石の中央を貫く軸A2上の磁束密度を示している。長さSbが短くなるにつれて軸A2上の磁束密度は検査容器31の中央部で大きく低下し、長さSbが長くなるにつれて軸A2上の磁束密度が略均一になる。長さSbが3mmの磁石のように、検査液接触面よりも磁石正面が小さい磁石を配置した場合、磁性粒子の濃度分布は大きく歪む。これに対し、例えば、長さSbが10mmの磁石のように、検査液接触面よりも磁石正面が大きい磁石を配置した場合、検査液の全体に亘って磁束密度が略均一になる。これに伴い、検査液接触面よりも磁石正面が大きい磁石を配置した場合、時間経過に因らず磁性粒子の濃度分布を検査液の全体に亘って均一にすることができる。
【0065】
前述のように、磁性粒子の濃度分布が不均一であると、検査液の液量の変化に応じて検査液の吸光度や濁度等の計測結果が変化する。本発明者達は、磁石の幾何学的配置と検査液の液量とを変化させて吸光度を光学的に計測した。以下に、この吸光度計測について詳細に説明する。
【0066】
この吸光度計測において、本発明者達は、検体および第1試薬としてダミーの緩衝液を用い、第2試薬としてチッソ(株)(マグナビート株式会社)の磁性粒子Therma−Max(R)を緩衝液で希釈したものを用いた。37℃の恒温槽に浸された検査容器31に対して、まず検体と第1試薬とが吐出および攪拌され、次に第2試薬が吐出および攪拌された。磁性粒子Therma−Max(R)は、低温の保管状態では粒子径100nm程度であるが、温度上昇に伴い互いに凝集し、磁力により吸引されやすくなる。本発明者達は、磁性粒子を検査容器31に吐出した後、検査液の吸光度を光学的に計測し、磁性粒子の濃度変化を計測した。
【0067】
吸光度計測において、磁石の幾何学的配置として磁石のサイズと検査容器への磁石の設置位置とが考慮され、磁石のサイズとしては、1×5×5mm(正方形)と1×5×10mm(長方形)とが採用された。磁石としては、角型ネオジム磁石が用いられた。本発明者達は、各磁石配置において検査液の総液量を変化させて吸光度の時間変化を計測した。本計測において、検査液の総液量は、
図12に示す4段階に設定された。
図12は、4段階の検査液の総液量[μL]毎の検体の液量[μL]、第1試薬の液量[μL]、第2試薬の液量[μL]、押水の液量[μL]、及び液高さ[mm]を示している。
図12に示すように、検査液の総液量は、110μL、165μL、220μL、275μLに設定された。各総液量において検査液中における磁性粒子の混合比率は一定に保たれている。計測波長は416nmに設定された。測光位置は、検査容器31の内底面、すなわち、検査液の底面から2.5mmの高さに設定された。検査容器31の内壁の寸法はX方向×Y方向=4×5mmである。各総液量における検査液の高さ(液高さ)は
図12に示す通りである。
【0068】
図13A及び
図13Bは、検査容器31の外底面に磁石A(X方向長さ×Y方向長さ×Z方向長さ=5×5×1mm)が配置された場合における、
図12の検査液総液量毎の吸光度の時間変化曲線を示す図である。
図14A及び
図14Bは、検査容器の検査液接触面に対向する外壁面に磁石Aが配置された場合における、
図12の検査液総液量毎の吸光度の時間変化曲線を示す図である。
図15A及び
図15Bは、検査容器の検査液接触面に対向する外壁面に磁石B(X方向長さ×Y方向長さ×Z方向長さ=1×5×10mm)が配置された場合における、
図12の検査液総液量毎の吸光度の時間変化曲線を示す図である。なお、この吸光度計測において本発明者達は、各幾何学的配置について磁石と検査容器との組合せを5組用意した。5組の組合せの各々について4つの総液量における吸光度が計測された。
図13B、
図14B、及び
図15Bに示す時間変化曲線は、5組の時間変化曲線の平均を示している。なお、同一の幾何学的配置における5組間では、時間変化曲線のばらつきが十分小さく、同一の幾何学的配置における5組間で有意な差異は無いということが見出された。一方、
図13B、
図14B、及び
図15Bに示すように、本発明者達は、総液量が異なる場合、時間変化曲線が有意に異なることを見出した。以下に各幾何学的配置における吸光度の時間変化について詳細に説明する。
【0069】
図13Aに示すように、磁石Aを検査容器31の外底面に貼り付けた場合、時間経過に伴う吸光度の低下量が比較的少なく、また、検査液の液量が多いほど時間経過に伴う吸光度の低下量が少ない。この磁石が検査容器31の外底面に貼り付けられているため、検査液中の磁性粒子は磁石に向かって下方に引き寄せられる。検査容器31の外底面に磁石Aが貼り付けられた場合、検査液の外底面から離れるにつれて磁場は急激に減衰する。これに伴い、検査容器31の外底面から離れるにつれて、検査液中の磁束密度が減衰し、磁性粒子の移動速度が遅くなる。そのため、検査容器31の外底面に磁石が貼り付けられた場合、検査容器31の外壁面に磁石が貼り付けられた場合に比して、測光位置よりも上方にある磁性粒子が測光位置を通り過ぎて検査容器31の外底面に到達するまでの時間が長く、吸光度の低下速度が遅い。また、検査液の総液量が増えるにつれて、測光位置の上方から下方へ移動する磁性粒子の数が増加する。換言すれば、総液量が増えるにつれて時間経過に伴う吸光度の低下量が小さくなる。
【0070】
図14Aに示すように、磁石Aを検査容器31の検査液接触面に対応する外壁下部に貼り付けた場合も、
図13Aと同様に、検査液の総液量が増すにつれて時間経過に伴う吸光度の低下量が減る。しかし、総液量が110μLの場合、総液量が165μL以上の場合に比して、時間経過に伴って吸光度が急激に低下する。この理由は以下の通りである。総液量110μLの場合、検査液の液面の高さが5.5mmであり磁石Aの上端の高さに略等しい。これに対し、総液量165μL以上の場合、検査液の液面の高さが8.3mmであり磁石Aの上端の高さよりも高い。すなわち、総液量110μLの場合、測光位置より上方に存在する磁性粒子はごくわずかだが、総液量165μL以上の場合、測光位置より上方に磁性粒子が多く存在する。総液量165μL以上の場合、磁石Aよりも上方に分布する磁性粒子が時間経過に伴って下方に移動する。そのため、総液量165μL以上の場合、測光位置における磁性粒子の濃度は、総液量100μLの場合に比べて大きくなる。換言すれば、総液量165μL以上の場合、総液量110μLの場合に比して、時間経過に伴う吸光度の低下量が小さくなる。
【0071】
図15Aに示すように、磁石Bを検査容器31の検査液接触面に貼り付けた場合、何れの総液量においても時間経過に伴って吸光度が急激に変化する。また、総液量110μLと総液量165μLとで時間変化曲線が略一致している。総液量110μLの場合、検査液の高さは5.5mmであり、総液量165μLの場合、検査液の高さは8.3mmである。すなわち、総液量110μLと総液量165μLとの場合、検査液の高さは磁石Bの高さよりも低い。従って、総液量110μLと総液量165μLとの場合、磁石Bよりも高い位置に磁性粒子が存在しえず、測光位置の上方から測光位置へ向けて磁性粒子が移動することがなく、結果的に総液量が異なるにもかかわらず吸光度が略同一である。すなわち、磁石Bの高さを検査液の高さよりも高くすることにより、測光位置の上方から測光位置へ向けて磁性粒子が移動することを防止し、総液量の変化に起因する吸光度のばらつきを低減することができる。
【0072】
上述の予備計測試験結果を踏まえ、本発明者達は、検査容器31内の検査液の全体に亘って磁束密度が均一な磁場を印加する磁石41を備えた検体検査装置1を製作した。以下、本実施形態に係る検体検査装置1の詳細な構造について説明する。
【0073】
本実施形態に係る検体検査装置1は、各検査容器31に対して、上記の幾何学的配置を有する磁石41を搭載する磁場印加モジュールを有している。
【0074】
図16は、磁場印加モジュール43の斜視図である。
図16に示すように、磁場印加モジュール43は、磁石41とスペーサ45とを有している。2つの磁石41は、検査容器をX方向に沿って挟むようにSN対向で配置されている。磁石41は、永久磁石411と軟磁性板413とにより構成される。例えば、永久磁石411として、上述のようにネオジム磁石等が用いられる。永久磁石411と検査容器31との間には、軟磁性板413が設けられている。典型的には、軟磁性板413は、永久磁石411の検査容器31側の面に貼り付けられている。軟磁性板413は、軟磁性材料を板状に成形加工することにより形成される。軟磁性材料としては、鉄やニッケル、コバルト等の金属、パーマロイやスーパーマロイ等の合金、磁性ステンレスなどが用いられると良い。なお、上記において磁石41は永久磁石411と軟磁性板413とにより構成されるとした。しかしながら、本実施形態は、これに限定されない。例えば、磁石41は、永久磁石411の代わりに電磁石を有していても良い。
【0075】
軟磁性板413は、永久磁石411から発生される磁場の均一度を向上させるために設けられる。以下、軟磁性板413による磁場の均一度の向上のメカニズムについて説明する。永久磁石411、特に希土類元素を含む永久磁石411は強い磁場強度を発生可能である。しかし、材質のばらつきや着磁のばらつきによって磁場分布が歪むことがある。磁場分布の歪みに起因して、磁性粒子の濃度分布が不均一になり、検査容器31毎に計測値がばらついてしまう。軟磁性板413は、高い透磁率を有する軟磁性材料により形成される。永久磁石411から発生される磁束が軟磁性板413を通るように永久磁石411と検査容器31との間に軟磁性板413を配置することによって、磁石41の正面の磁束密度の均一性を向上させることができる。その結果、検査液中の磁場分布の歪みが低減させることができ、磁性粒子の濃度分布の不均一化や検査容器31毎の計測結果のばらつきを低減することができる。磁石411の正面の磁束密度の均一性を高めるため、軟磁性板413と永久磁石411との互いに向き合う面は、略同一の面積を有するとよい。なお、軟磁性板413は、永久磁石411の検査容器31とは逆側の面に設けられても良いし、永久磁石411の両面に設けられても良い。例えば、本実施形態においては、永久磁石411は材質がN48M(信越化学製)で寸法はX方向長さ×Y方向長さ×Z方向長さ=1.5×10×22mm(磁化はX方向)であり、軟磁性板413の寸法はX方向長さ×Y方向長さ×Z方向長さ=0.3×10×22mmであるとよい。軟磁性板413を永久磁石411の検査容器31に向う面に貼り付けて磁石41を形成した。
【0076】
2つの磁石41は、上記の幾何学的配置を有するようにスペーサ45を介して結合される。具体的には、X方向に沿う磁石41の間隔は、6.2mmに設定される。すなわち、X方向に沿うスペーサ45の幅は、X方向に沿う磁石41の間隔と略同一な略6.2mmである。スペーサ45は、例えば、第1のスペーサ45−1、第2のスペーサ45−2、及び第3のスペーサ45−3を有している。2つの磁石41間を所定間隔に固定するために、2つの磁石41は、第1のスペーサ45−1、第2のスペーサ45−2、及び第3のスペーサ45−3を介して結合される。2つの磁石41の上部には、検査容器31を磁場印加モジュール43に挿入可能な空間を形成するために、第1のスペーサ45−1と第2のスペーサ45−2とが結合される。2つの磁石41の下部には、検査容器31を載置可能な第3のスペーサ45−3が結合される。磁石41と各スペーサ45とにより囲まれる空間に検査容器が収容される。各磁石41の下端が第3のスペーサ45−3の上面よりも下方に2mm突き出るように、2つの磁石41が第3のスペーサ45−3を介して結合される。この構造により、磁場印加モジュール43に検査容器31が挿入された場合、磁石41の下端が検査容器100の外底面から2mmだけ下方に突き出る。またY方向の順方向及び逆方向に関して磁石が検査容器よりもそれぞれ1mm及び2mm外側に突き出るように、2つの磁石がスペーサを介して結合される。磁場印加モジュール43は、弓形プレート47に装着する際、円周状に配列するため、円周の内側に比べて外側ではより磁場が低下する傾向になる。そこで、スペーサのY方向の長さを45−1では1mm、45−2では2mmとし、スペーサ45−2が外周側になるように磁場印加モジュール43を弓形プレートに装着する。これによって円周の外側での磁場の低下を抑え、Y方向の磁場均一性を高めることができる。検査容器の底板の厚さが1mmなので、検査容器31の内底面から検査液の液面までの高さを略19mm以下に収めることにより、検査液接触面よりも磁石正面を大きくすることができる。
【0077】
反応ディスク11は、円周状に配列された複数の弓形プレート47を搭載している。
図17は、弓形プレート47の斜視図である。
図17に示すように、各弓形プレート47は、弓形状を有し、複数の磁場印加モジュール43を着脱可能に保持する支持具である。弓形プレート47が反応ディスク11に収容可能なように、弓形プレート47と反応ディスク11との曲率は略同一に設定される。複数の磁場印加モジュール43は、各弓形プレート47において等間隔で配列される。例えば、各弓形プレート47は、15個の磁場印加モジュール43を保持可能な構造を有している。光源210からの光が磁石41間を通過可能なように、各磁場印加モジュール43は、互いに磁石41を向き合わせて配列される。
【0078】
各弓形プレート47は、具体的には、第1のプレート471と第2のプレート472とからなる。第1のプレート471は、検査容器31の上方を支持する支持具であり、第2のプレート472は、検査容器31の下方を支持する支持具である。第1のプレート471には、検査容器31を磁場印加モジュール43から出し入れするための開口471aが形成されている。開口471aの配列ピッチは、磁場印加モジュール43の配列ピッチと略同一に設定される。第1のプレート471と第2のプレート472とは、複数の検査容器31を上下方向から挟んだ状態で固定される。磁場印加モジュール43が弓形プレート47に装着された状態で、弓形プレート47は反応ディスク11に収容される。これにより、磁場印加モジュール43を反応ディスク11内で固定することができる。磁場印加モジュール43が反応ディスク11内で固定されることにより、磁場印加モジュール43の位置ずれに伴う計測値のばらつきを低減することができる。
【0079】
なお前述の説明において、磁場印加モジュール43は、弓形プレート47に装着されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。磁場印加モジュール43が反応ディスク11に直接的に固定可能であれば、磁場印加モジュール43を弓形プレート47に装着せずに、直接的に反応ディスク11内に配置してもよい。
【0080】
本発明者達は、一個の弓形プレート47に保持される15本の検査容器31の各々について吸光度を光学的に計測した。吸光度の計測は、
図12の4段階の検査液の総液量について行われた。吸光度計測は、検査容器31毎に3回実施された。弓形プレート47の両端に保持される2本の検査容器では、残り13本の検査容器に比べて計測値が異なった。弓形プレート47の両端以外の残りの13本の検査容器については、計測毎の計測値のばらつきや検査容器31間のばらつきは許容範囲に収まった。
【0081】
図18は、本実施形態に係る幾何学的配置を有する磁石41を利用した場合における、
図12の検査液総液量毎の吸光度の時間変化曲線を示す図である。なお、
図18の時間変化曲線は、弓形プレート47の両端以外の残りの13本の検査容器についての計測値の平均である。
図18に示すように、本実施形態に係る幾何学的配置を有する磁石41を利用した場合、総液量の違いによらず吸光度の時間変化曲線が略一致する。
図13、
図14、及び
図15の場合に比して、
図18の場合、検査液の液量の変化に伴う吸光度のばらつきが低減されている。すなわち、検査液接触面31cよりも磁石正面41fが相対的に大きい場合、検査液接触面31cよりも磁石正面41fが相対的に小さい場合に比して、検査液中における磁性粒子の濃度分布を均一にし、検査液の液量の違いに由来する吸光度のばらつきを低減することができる。
【0082】
前述のように、測光位置における磁束密度は、磁石との相対的な位置関係に従って変化する。本発明者達は、測光位置の変化に応じた磁束密度の変化を低減可能な磁石41の幾何学的配置を見出した。以下、この幾何学的配置について詳細に説明する。
【0083】
図19は、磁石41と測光位置との位置関係を示す図である。
図19に示すように、測光位置は、検査容器31内の検査液に光が通るような高さに設定される。検査容器31のX方向に関する両側には、2つの磁石41が配置されている。2つの磁石41は、距離間隔dを空けて配置される。また、測光位置のZ方向に関する中心と磁石41の下端との高さの差は、hに設定される。磁石41は、磁束密度を空間的に略均一にするため、検査液接触面31cよりも大きい磁石正面41fを有する。典型的には、磁石正面41fは、Z方向に長い長方形を有している。さらに、測光位置における磁束密度を低減するため、磁石41は、d≦hを満たすような幾何学的配置を有すると良い。この理由は、以下の通りである。
【0084】
Z方向に長い2つの磁石41を対向させて配置した場合、2つの磁石41の間の領域に形成される磁場分布は、磁石間の距離dに対して磁石のZ方向に関する長さSaの方が長くなるにつれて、磁石41のZ方向に関する中央部近傍の磁束密度はZ方向に関して略平坦になる。磁石41のZ方向に関する両端部近傍においては、磁力線が磁石41の外側に向かって散逸するため、磁束密度は低下する。ゆえに、この磁石41間に検査容器31を設置した場合、磁石41の下端近傍の磁束密度低下の影響を受けずに磁性粒子の濃度分布の均一性を確保するためには、検査容器31の外底面を磁石の下端よりも高い位置に設置する必要がある。物理的に、磁石の下端からの高さが距離d程度までの領域では磁束密度が低下する。すなわち、高さhが距離d以上となるように磁石41と検査容器31とを設置すれば、検査液内の測光位置付近においては上下方向(Z方向)に沿って磁束密度勾配がほとんど生じない。このように磁石の幾何学的配置を設定することによって、検査液内の測光位置付近における磁性粒子の濃度分布の不均一化を防止することができる。
【0085】
測光位置は、検体検査装置1の設定に応じて異なる場合がある。従って、磁石41の設置時においては、構造的に測光可能な最も低い測光位置(以下、最低測光位置)と磁石41の下端との高さの差をhとして、d≦hの関係を満たすように磁石41を設置すると良い。この場合、測光位置が最低測光位置よりも高い位置に変更されたとしてもd≦hの関係は保たれるため、測光位置の変更が計測結果に及ぼす影響を最低限に抑えることができる。
【0086】
本発明者達は、d≦hの関係を満たす場合と満たさない場合との吸光度を計測した。以下、この計測結果について説明する。
【0087】
図20A及び
図20Bは、測光位置A及び測光位置Bでの吸光度の時間変化曲線を示すグラフを、本実施形態に係る幾何学的配置を有する磁石と比較例に係る幾何学的配置を有する磁石とを利用した場合とで個別に示す図である。
図20Aは、本実施形態に係る幾何学的配置を有する磁石を利用した場合における測光位置A及び測光位置Bでの吸光度の時間変化曲線を示し、
図20Bは、比較例に係る幾何学的配置を有する磁石を利用した場合における測光位置A及び測光位置Bでの吸光度の時間変化曲線を示している。
図20Aと
図20Bとにおいて、検査液の総液量は220μLに設定され、検査液内の各溶液の液量は
図12に従って設定された。
図20A及び
図20Bの時間変化曲線は、弓形プレート47内の15本の検査容器31のうちの両端以外の13本の検査容器31の時間変化曲線の平均である。なお、計測値の検査容器31間のばらつきは許容範囲に収まっている。
【0088】
まず、
図20Bにおける比較例に係る幾何学的配置について説明する。磁石の永久磁石として、信越化学製のネオジム磁石を用いた。このネオジム磁石は、材質がN48Mであり、寸法が22×10×1.5mmであり、磁化方向がX方向(ネオジム磁石の厚さ方向)であり、Niでメッキされている。また軟磁性板として、材質SUS430、寸法22×10×0.3mmを用いた。検査容器31の側壁の厚さは1.0mmである。磁石間の距離dは、6.2mmに設定された。磁石の下端が検査容器31の外底面よりも2mm下方に位置するように磁石が配置された。測光位置Aは、検査容器31の検査液接触面の下端から2.5mm上方に設定された。測光位置Aの場合、高さhは5.5mmとなる。測光位置Aとの比較のため測光位置Aよりも2.7mm上方に測光位置Bが設定された。すなわち、測光位置Bの場合、高さhは8.2mmである。従って、
図20Bの場合、測光位置Aはd>hであり、測光位置Bはd≦hである。
【0089】
図20Bに示すように、比較例に係る幾何学的配置の場合、測光位置Aと測光位置Bとで時間変化曲線がわずかにずれる。測光位置Aに関する時間変化曲線は測光位置Bに関する時間変化曲線よりも時間経過に伴う吸光度の低下量が大きい。同一の測光位置において計測終了時点での吸光度の検査容器31間のばらつきは標準偏差で0.0035程度であり、異なる測光位置での平均吸光度の差は0.0315であった。すなわち、異なる測光位置での平均吸光度の差は、検査容器31間のばらつきよりも一桁程度大きく、有意な差といえる。以上の結果から、本発明者達は、比較例に係る幾何学的配置では測光位置の違いが計測結果に影響を及ぼしていることを見出した。
【0090】
次に、
図20Aにおける本実施形態に係る幾何学的配置について説明する。永久磁石411としては、信越化学製のネオジム磁石(材質N48M)を用いた。永久磁石は、寸法が24×10×1.5mmであり、磁化方向がX方向(ネオジム磁石の厚さ方向)であり、Niでメッキされている。また、軟磁性板413としては、材質SUS430、寸法24×10×0.3mmを用いた。従来例と同様に、検査容器31の側壁の厚さは1.0mmであり、磁石41間の距離dは、6.2mmに設定された。本実施形態に係る幾何学的配置においては、磁石41の下端が検査容器31の外底面よりも4mm下方に位置するように磁石41が配置された。測光位置Aは、検査容器31の検査液接触面の下端から2.5mm上方に設定された。測光位置Aの場合、高さhは7.5mmである。測光位置Bは、測光位置Aよりも2.7mm上方に設定された。すなわち、測光位置Bの場合、高さhは10.2mmである。従って、
図20Aの場合、測光位置Aと測光位置Bとの両方においてd≦hである。
【0091】
図20Aに示すように、本実施形態に係る幾何学的配置の場合、測光位置Aに係る吸光度の時間変化曲線と測光位置Bに係る吸光度の時間変化曲線とは略一致している。同一の測光位置での吸光度の検査容器間のばらつきは、異なる測光位置での平均吸光度の差とほぼ同程度である。すなわち、本実施形態に係る幾何学的配置の場合、異なる測光位置において時間変化曲線に有意な差はない。上記の計測結果から、d≦hを満たすような幾何学的配置を有する磁石を利用することによって、測光位置を変更することに伴う計測結果のばらつきを防止できることが実証された。従って、d≦hを満たすような幾何学的配置を有する磁石41を利用することによって、装置構成に依存せずに安定した計測結果を得ることができる。
【0092】
なお、比較例に係る幾何学的配置において、測光位置Aと測光位置Bとで時間変化曲線が異なるのは、測光位置Aと測光位置Bとの磁場環境が異なるためと考えられる。本発明者達は、X方向に関する磁束密度のZ方向に沿う分布を磁場解析によって計算した。
【0093】
図21は、比較例に係る幾何学的配置(磁石の下端が検査容器の外底面よりも下方に2mm突出)と本実施形態に係る幾何学的配置(磁石の下端が検査容器の外底面よりも下方に4mm突出)とにおけるX方向に関する磁束密度のZ方向に沿う位置変化曲線を示す図である。
図21において、Z=0が検査容器31の内底面、すなわち、検査液の下端に対応し、検査液の上側でZが正の値を取るようにZ軸の座標を設定した。測光位置AはZ=2.5、測光位置BはZ=5.2に相当する。
図21に示すように、比較例においては、検査液の底近くの領域から−Z方向に向けて磁束密度の低下が開始している。従って、検査液内の底近くの領域の磁束密度勾配は、それより+Z方向の領域における磁束密度勾配に比して大きくなる。そのため、測光位置Aの場合、測光位置Bに比して、磁性粒子が迅速に磁石に引き寄せられ、その結果、時間経過に応じた吸光度の低下量が大きくなる。このような測光位置に応じた吸光度の時間変化のばらつきを低減するためには、検査液の下端付近での磁束密度低下を抑制し、Z方向に沿って平坦な磁場密度を有する領域を増やせばよい。このためには、d≦hを満たすような幾何学的配置を設定すればよい。
図21に示すように、本実施形態に係る幾何学的配置においては、磁場分布が平坦な領域がZ=0まで伸びており、明らかに検査液の下端付近での磁場分布の平坦性が向上している。
【0094】
なお、
図2に示すように、磁石41と検査容器31とを円周に沿って交互に配列する場合、検査容器31を挟む一対の磁石41を平行に配置できない場合がある。この場合、
図22に示すように、磁石間距離dがY方向の位置に応じて異なってしまう。この場合、検査液を通る複数のY方向位置での磁石間距離のうちの最大の磁石間距離が距離dに設定されるとよい。例えば、検査容器31の内側面のうちのX方向に平行する面31xに接する直線Lxを考える。この直線Lxと各磁石41の磁石正面41fとの交点P1、P2間の距離が距離dに設定されるとよい。また、上述のように、高さhは最低測光位置と磁石41の下端との間の距離に設定されるとよい。このように設定された距離dと高さhとがd≦hを満たすような幾何学的配置で磁石41が設けられることにより、測光位置の違いによる計測値のばらつきを抑制することができる。
【0095】
本実施形態に係る検体検査装置1は、反応ディスク11、磁石41、及び測光機構27を備えている。反応ディスク11は、検体と磁性粒子とを含む検査液のための検査容器31を収容する。磁石41は、検査容器31内の検査液に対して磁場を印加する。測光機構27は、光源210と検出器220とを有する。光源210は、検査容器31内の検査液に向けて光を照射する。検出器220は、検査容器31を挟んで光源210に対向する位置に設けられ、検査液からの光を検出する。磁石41は、検査容器31内における検査液において磁場の磁束密度が略均一となるような幾何学的配置を有する。具体的には、磁石41としては、磁石正面41fが検査容器31の検査液接触面31cよりも大きいものが利用される。また、測光位置と磁石41の下端との間の高さの差hが磁石間距離dよりも大きくなるように磁石41が配置される。
【0096】
前述の構成により、検査液中の磁性粒子の濃度分布を均一に保ったまま、磁石41による磁力により検査液から磁性粒子を分離することができる。その結果、検査液の液量や測光位置の変化による計測値のばらつきを低減することができ、計測結果に及ぼす影響を抑制することができる。従って、本実施形態に係る検体検査装置1は、高精度の検査結果を得ることができる。また、検体検査装置1の開発コストを低減することができる。また、検査容器31のサイズや固定位置等の製作公差によって異なる検査容器31間で検査液と磁石41との相対的な位置関係がばらついたとしても、異なる検査容器31間の検査結果のばらつきを低減することができる。
【0097】
次に、本実施形態に係る検体検査装置の応用例について説明する。
【0098】
[応用例1]
上記の実施形態に係る検体検査装置1は、磁石41からの磁場が検査容器31に対して常に印加される構成であった。この場合、磁性粒子が検査容器31に吐出された直後から、磁性粒子が磁石41により検査容器31の内壁に引き寄せられる。このため、磁性粒子と計測対象の微量分子との反応効率が十分でない場合がある。また、洗浄機構29により検査容器31を洗浄する際、磁石41により磁性粒子が検査容器31の内壁に引き寄せられているため、検査容器31から磁性粒子を洗い流しづらい。
【0099】
応用例1に係る検体検査装置1は、検査容器31に対する磁場の印加及び不印加を切替え可能な構成を有している。
図23は、応用例1に係る検体検査装置1の反応ディスク11周辺の模式的な平面図である。
図23に示すように、応用例1に係る検体検査装置1は、ステージ上の反応ディスク11の外部に着脱機構51を搭載している。なお
図23において、攪拌機構23や洗浄機構29等の他の機構は省略している。
【0100】
着脱機構51は、反応ディスク11上の着脱位置Paに配置された検査容器31を反応ディスク11に対して着脱可能な構成を有している。着脱機構51は、分析機構制御部3からの制御に従って着脱機構51を作動する駆動装置を内蔵している。具体的には、着脱機構51は、分析機構制御部3からの制御に従って、検査容器31を磁場から退避させるために反応ディスク11から検査容器31を取り外したり、検査容器31に磁場を印加するために検査容器31を反応ディスク11に取り付けたりする。より詳細には、着脱機構51は、分析機構制御部3による制御に従って、着脱位置Paに配置された検査容器31を反応ディスク11外の退避位置Pbに移動させる。また、分析機構制御部3による制御に従って、退避位置Pbに配置された検査容器31を着脱位置Paに移動させる。着脱機構51による検査容器31の移動手段は、検査容器31を移動可能であれば如何なる手段でもよい。着脱機構51は、一本の検査容器31を着脱可能であってもよいし、
図23に示すように、複数本の検査容器31を着脱可能であってもよい。複数本の検査容器31を着脱可能な場合、着脱機構51は、複数の検査容器をまとめて移動させてもよいし、個別に移動させてもよい。
【0101】
なお、着脱機構51による着脱対象は、検査容器31のみに限定されない。例えば、着脱機構51は、検査容器31の代わりに磁石41を着脱させてもよい。この場合、磁場を印加させない検査容器31を挟む一対の磁石41が着脱機構51により着脱される。また、検査容器31と磁石41とをまとめて着脱させてもよい。
【0102】
磁石41を反応ディスク11上の着脱位置Paから移動する場合、移動した磁石41の周囲に配置された目的外の検査容器31に印加される磁場の磁束密度が変動してしまう。この結果、目的外の検査容器31内の磁性粒子の濃度分布が不均一になってしまい、計測結果に悪影響を及ぼしてしまう場合がある。従って、着脱機構51による着脱対象は、磁石41よりは検査容器31の方が望ましい。
【0103】
また上記の説明において、検体検査装置1は、検査容器31への磁場の印加と不印加とを切替えるために、検査容器31や磁石41を機械的に移動可能な着脱機構51を搭載するとした。しかしながら、本実施形態に係る磁場の印加と不印加との切り替え手段は、これに限定されない。例えば、磁石41が電磁石により構成される場合、検体検査装置11は、磁場の印加と不印加との切り替え手段として、電流制御装置を搭載するとよい。電流制御装置は、分析機構制御部3からの制御に従って、電磁石への電流供給を制御する。例えば、電流制御装置は、目的の検査容器31への磁場印加を停止するために、目的の検査容器31を挟む一対の電磁石への電流供給を停止する。一方、目的の検査容器31への磁場印加を開始するために、電流制御装置は、目的の検査容器31を挟む一対の電磁石への電流供給を開始する。
【0104】
上記説明の通り、応用例1に係る検体検査装置1は、目的の検査容器31への磁場の印加と不印加とを切替える手段を搭載している。これにより、検査容器31に磁性粒子を吐出した後に、この検査容器31への磁場の印加を停止することにより、磁性粒子と計測対象の微量分子との反応を促進させることができる。また、洗浄対象の検査容器31への磁場の印加を停止することにより、この検査容器の洗浄を高精度に行うことができる。
【0105】
[応用例2]
図24は、応用例2に係る検体検査装置1の反応ディスク11周辺の模式的な平面図である。
図24に示すように、応用例2に係る検体検査装置1は、反応ディスク11の外部に脱離機構53と装着機構55と搬送機構57とを搭載している。
【0106】
脱離機構53は、反応ディスク11上の脱離位置Pcに配置された検査容器31を反応ディスク11から取り外し可能な構成を有している。脱離機構53は、分析機構制御部3からの制御に従って脱離機構53を作動する駆動装置を内蔵している。具体的には、脱離機構53は、分析機構制御部3からの制御に従って、検査容器31を磁場から退避させるために脱離位置Pcから検査容器を取り外し、磁石41からの磁場の影響を無視可能な位置に配置された退避位置Pdに配置する。退避位置Pdは、搬送機構57上に設けられる。
【0107】
装着機構55は、搬送機構57上の待機位置Peに配置された検査容器31を、反応ディスク11上の装着位置Pfに取り付け可能な構成を有している。装着機構55は、分析機構制御部3からの制御に従って装着機構55を作動する駆動装置を内蔵している。具体的には、装着機構55は、分析機構制御部3からの制御に従って、検査容器31を磁場に印加させるために、待機位置Peに配置された検査容器31を装着位置Pfに配置する。待機位置Peは、磁石41からの磁場の影響を無視可能な位置に配置されている。
【0108】
搬送機構57は、ステージ上の反応ディスク11の外部であって、磁石41からの磁場の影響を無視可能な位置に設置されている。搬送機構57は、退避位置Pdに配置された検査容器31を待機位置Peまで搬送可能な構成を有している。搬送機構57は、分析機構制御部3からの制御に従って、搬送機構57を作動する駆動装置を内蔵している。具体的には、搬送機構57は、分析機構制御部3からの制御に従って、一定の時間間隔で移動と停止とを繰り返し、退避位置Pdから待機位置Peまで検査容器31を間欠的に搬送させる。搬送機構57としては、例えば、ベルトコンベヤにより実現される。搬送機構57上の退避位置Pdと待機位置Peとの間には退避位置Pd側から順番に洗浄位置Pgと攪拌位置Phとが設けられる。
【0109】
洗浄機構29は、分析機構制御部3からの制御に従って、搬送機構57上の洗浄位置Pgに配置された検査容器31を洗浄液で洗浄する。攪拌機構23は、分析機構制御部3からの制御に従って、搬送機構57上の攪拌位置Phに配置された検査容器31内の検体と磁性粒子とを攪拌子25で攪拌する。
【0110】
次に、応用例2に係る分析機構制御部3による動作例を説明する。分析機構制御部3は、操作部6を介して計測対象の微量分子の定量処理の開始指示がなされることを契機として、応用例2に係る処理を開始する。まず、検査容器31が磁石41による磁場から退避された状態において、計測対象の微量分子を含む検体と磁性粒子を含む試薬とが検査容器31内に吐出される。検体と磁性粒子とは、例えば、搬送機構57上で吐出される。検体と磁性粒子とが吐出された検査容器31は、搬送機構57により移動と停止とを繰り返しながら攪拌位置Phに搬送される。攪拌位置Phに配置されると検査容器31内の検体と磁性粒子とが、攪拌機構23により攪拌子25で攪拌される。攪拌後の検査容器31は、搬送機構57により待機位置Peに搬送される。待機位置Peに配置さると検査容器31は、装着機構55により反応ディスク11上の装着位置Pfに取り付けられる。反応ディスク11に取り付けられることにより、検査容器31は、磁石41から磁場が印加される。上述のように、磁石41は、磁束密度が略均一になるような幾何学的配置を有している。従って、検査容器31内の検査液において磁性粒子の濃度分布が空間的に略均一なまま変化する。装着位置Pfに取り付けられた検査容器31は、反応ディスク11により回動と停止とを繰り返しながら既定回数だけ反応ディスク11上の測光位置を横切る。検査容器31が測光位置を横切る毎に測光機構27により、検査容器31内の検査液に対して光学計測が行われる。既定回数の光学計測後、検査容器31は、反応ディスク11により回動と停止とを繰り返しながら反応ディスク11上の脱離位置Pcに配置される。脱離位置Pcに配置された検査容器31は、脱離機構53により反応ディスク11から搬送機構57上の退避位置Pdに移動される。反応ディスク11から取り外されることにより検査容器31には、磁石41からの磁場から退避される。退避位置Pdに配置された検査容器31は、搬送機構57により移動と停止とを繰り返しながら洗浄位置Pgに搬送される。洗浄位置Pgに配置された検査容器31は、洗浄機構29により洗浄液で洗浄される。
【0111】
これにより分析機構制御部3による検査容器31に対する一回の定量処理が終了される。分析機構制御部3は、上述の処理を各検査容器に対して並列的に繰り返し実行する。これにより、複数の検査容器31に対して並列的に計測対象の微量分子の定量処理を実行することができる。
【0112】
上述のように、磁場から脱離した状態で検査容器31に磁性粒子が吐出され、攪拌される。従って、検体に含まれる微量分子と磁性粒子との反応効率が向上し、微量分子の検出感度を高めることが可能になる。上記の幾何学的配置を有する磁石41による磁場の下で光学計測を実行することで、磁性粒子の濃度分布の均一性を確保した状態で吸光度や濁度等の計測値の時間変化を計測でき、液量や測光位置に依存せず、ばらつきの少ない計測結果を得ることができる。磁場から脱離した状態で検査容器31を洗浄することによって、磁性粒子の洗浄効率を向上させて試薬類のキャリーオーバーを防ぐことができる。また、定量処理における一連の工程の間、磁石41の幾何学的配置は変化しないため、検査容器31の着脱は、反応ディスク11に装着されている他の検査容器31に印加される磁場に影響を与えることはない。
【0113】
[変形例]
ここで、本実施形態の変形例に係る検体検査装置について説明する。上記の実施形態に係る検体検査装置は、磁石正面41fが検査液接触面31cよりも大きい磁石41を搭載することにより、検査液における磁場の磁束密度を空間的に略均一にするとした。変形例に係る検体検査装置は、検査液に印加する磁場を発生する磁石の他に、検査液における磁場の空間的均一性を高めるための強磁性体を搭載する。以下、変形例に係る検体検査装置について説明する。なお以下の説明において、上記実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0114】
図25Aは、変形例に係る磁石61と強磁性体63との配置例を模式的に示す図であり、検査容器31をY方向から眺めた図である。
図25Bは、
図25Aの検査容器31をX方向から眺めた図である。なお
図25Bにおいては、簡単のため、磁力線の図示を省略している。
図25Aと
図25Bとに示すように、検査容器31をX方向に関して挟むように二つの磁石61−1と磁石61−2とが配置される。磁石61−1はN極に帯磁され、磁石61−2はS極に帯磁されているとする。磁石61−1から磁石61−2への磁力線は、X軸に沿って直進するのが理想である。測光機構27の光源210からの光は、Y軸に沿って進行する。ここで、検査容器31の4側面のうちの光路に直交する2面を光路面と呼び、光路に平行する2面を非光路面と呼ぶことにする。すなわち、二つの磁石61−1と磁石61−2とは、検査容器31の非光路面側に設けられている。以下、磁石61−1と61−2とを区別しない場合、単に磁石61と表記する。
【0115】
各磁石61は、従来例に係る磁石と略同一の大きさを有している。すなわち、磁石61の磁石正面の大きさは、検査液接触面の大きさよりも大きくない。従って磁石61から発生される磁場の磁力線は、検査容器31の周辺部において大きく歪む。換言すれば、磁石61から発生される磁場の磁場密度は、検査容器31の中央部に比して周辺部の方が著しく劣化する。
【0116】
変形例においては、磁束密度の空間的均一性を高めるための強磁性体63が検査容器31の周囲に配置される。強磁性体63は、磁石61から発生される磁場の磁力線を吸い寄せる物性を有している。強磁性体63としては、磁化率が比較的大きい如何なる物質であっても適用可能である。例えば、強磁性体63としては鉄の塊(以下、鉄片と呼ぶ)が用いられると良い。鉄片63の配置場所や大きさ、形状、個数等の幾何学的配置は、磁石61から発生される磁場の磁束密度の空間的均一性が高まるように決定される。鉄片63の幾何学的配置は、シミュレーション等により最適に決定されると良い。
【0117】
例えば、
図25Aや
図25Bにおいて鉄片63は、検査容器31の底面側に設けられている。これにより、磁石61−1から磁石61−2へのX軸方向に関する磁力線を略直線にすることができる。なお鉄片63の配置箇所は、特に限定されず、検査容器31の底面側以外にも、光路面側、非光路面側、及び開口側の何れに配置されても良い。しかし、測光機構27の光源210からの光を遮断してしまう。従って鉄片63を光路面側に配置する場合、光源210からの光が検出器220に到達できるように、鉄片63の配置場所や大きさ、形状、個数等の幾何学的配置が決定されると良い。例えば、光の光路に交わることがないように、光路面側において光路を挟んで上側と下側との各々に鉄片63−1,63−2が配置されても良いし、光を通過させるための貫通孔が設けられても良い。
【0118】
次に、
図26Aと
図26Bとを参照しながら鉄片65の他の配置例を説明する。
図26Aは、他の配置例に係る磁石61と鉄片65との配置例を模式的に示す図であり、検査容器31を上方から眺めた図である。
図26Bは、
図26Aの検査容器31をY方向から眺めた図である。
図26Aと
図26Bとに示すように鉄片65は、磁石61から発生された磁場の磁力線が磁石61と鉄片65とを介して閉回路を形成するような幾何学的配置を有している。具体的には、鉄片65は、磁石61−1と磁石61−2との両方に接触し、検査容器31の磁石配置面と底面とを囲むように配置される。閉回路の場合、
図25A及び
図25Bの非閉回路の場合に比して、磁石61から外部への漏れ磁場を低減することができる。従って、鉄片65により閉回路を形成することにより、磁束密度の空間的均一性をさらに高めることができる。
【0119】
なお、
図26A及び
図26Bにおいて、鉄片65は検査容器31の磁石配置面と底面とを囲むように設けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、鉄片65は、検査容器31の4側面(磁石配置面及び磁石非配置面)と底面とを囲むように設けられても良い。この場合、測光機構27の光源210からの光を遮断することがないよう、上記の通り、鉄片の幾何学的配置が決定されると良い。
【0120】
かくして、変形例によれば、磁石を大きくすることなく、磁石からの磁場の磁束密度を空間的に略均一にすることができる。また、当該変形例の場合、磁石を大きくする場合に比して、磁石の製造コストや廃棄コスト等を低減することができる。
【0121】
なお上記の鉄片の幾何学的配置例は一例に過ぎない。磁石61からの磁場の磁束密度の空間的均一性を高めることが可能であれば、鉄片の幾何学的配置は任意に決定可能である。例えば、鉄片は、検査容器31の開口を塞ぐように、検査容器31の上部に設けられても良い。この場合、検査容器31への試料等の分注時や洗浄時等において鉄片が検査容器31の上部から退避されると良い。
【0122】
また、磁束密度の空間的均一性を更に高めるため、鉄片に光路のための切欠き等を設けることなく検査容器の周囲を鉄片で囲っても良い。この場合、測光機構27による検査液の光学計測は、反応ディスク11ではなく上記の搬送機構57で行われると良い。この場合、搬送機構57に測光機構27が設けられる。そして、光学計測対象の検査液を収容する検査容器31が反応ディスク11から搬送機構57に移動され、搬送機構57において測光機構27により当該検査液が光学計測されると良い。これにより、磁束密度の空間的均一性を更に高めることができる。
【0123】
[総論]
本実施形態に係る検体検査装置は、反応ディスク11、磁場発生部、及び測光機構27を備えている。反応ディスク11は、検体と磁性粒子とを含む検査液のための検査容器31を収容する。磁場発生部は、検査容器31内の検査液に対して印加される磁場を発生する。測光機構27は、光源210と検出器220とを有する。光源210は、検査容器31内の検査液に向けて光を照射する。検出器220は、検査容器31を挟んで光源210に対向する位置に設けられ、検査液からの光を検出する。磁場発生部は、検査容器31内における検査液において磁場の磁束密度が略均一となるような幾何学的配置を有する。具体的には、磁場発生部は、2つのタイプに大別される。第1のタイプの磁場発生部は、磁石41を有する。磁石41は、検査容器31内における検査液において磁場の磁束密度が略均一となるような幾何学的配置を有する。磁石41としては、磁石正面41fが検査容器31の検査液接触面31cよりも大きいものが利用される。また、測光位置と磁石41の下端との間の高さの差hが磁石間距離dよりも大きくなるように磁石41が配置される。第2のタイプの磁場発生部は、磁石61と強磁性体63又は強磁性体65とを有する。磁石61は、検査液に印加される磁場を発生し、強磁性体63又は強磁性体65は、検査容器31内における検査液において磁場の磁束密度が略均一となるような幾何学的配置を有する。
【0124】
前述の構成により、検査液中の磁性粒子の濃度分布を均一に保ったまま、磁石41又は磁石61による磁力により検査液から磁性粒子を分離することができる。その結果、検査液の液量や測光位置の変化による計測値のばらつきを低減することができ、計測結果に及ぼす影響を抑制することができる。従って、本実施形態に係る検体検査装置1は、高精度の検査結果を得ることができる。また、検体検査装置1の開発コストを低減することができる。また、検査容器31のサイズや固定位置等の製作公差によって異なる検査容器31間で検査液と磁石41又は磁石61との相対的な位置関係がばらついたとしても、異なる検査容器31間の検査結果のばらつきを低減することができる。
【0125】
かくして、本実施形態によれば、磁性粒子自体に由来する検査液の濁度あるいは吸光度を光学的に計測することによる検出対象分子を定量する検体検査装置において、高精度な検査結果を得ることが実現する。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。