特許第6207934号(P6207934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207934
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】表面被覆アスコルビン酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/083 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61K6/083 530
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-181736(P2013-181736)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-48334(P2015-48334A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】渕上 清実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊秀
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−281140(JP,A)
【文献】 特開昭64−003119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00− 6/10
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸を芯物質とし、壁物質が少なくとも一種類以上の高級脂肪酸で構成されることを特徴とした医科歯科用の機能性複合微粒子であって、
前記高級脂肪酸がドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、cis-15-テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸およびトリアコンタン酸から選ばれることを特徴とする機能性複合微粒子を含有する歯科用硬化性組成物。
【請求項2】
機能性複合微粒子中の壁物質である高級脂肪酸量が2wt%から90wt%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医科歯科用硬化性組成物に使用されるレドックス重合開始剤の還元剤であるアスコルビン酸の表面を高級脂肪酸で被覆したことを特徴とする機能性複合微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
医科歯科分野において骨や歯牙の欠損を修復するために金属補綴物や合成樹脂成型物などが用いられている。それらの生体硬組織への接着にはフルオロアルミノシリケート粉末とポリアクリル酸等のポリカルボン酸の反応を利用したいわゆるグラスアイオノマーセメントやラジカル重合性モノマーの重合を利用したレジンセメント等が用いられている。さらに近年はそのグラスアイオノマーセメントとレジンセメントの利点を融合させたレジン系グラスアイオノマーセメントも開発されている。ここで、ラジカル重合性モノマーの重合を利用したセメントの場合には重合触媒(重合開始剤)の添加が必須となる。レジン系グラスアイオノマーセメントの重合触媒としては水溶性過酸化物とアスコルビン酸を用いたレドックス重合系が特に有用な重合システムである。何故ならばレジン系グラスアイオノマーセメントは水、ラジカル重合性水溶性モノマー、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸およびフルオロアルミノシリケート粉末を基本成分としているために重合触媒も好ましくは水溶性である必要があるからである。この必要性を以下に詳しく述べる。基本的にレジン系グラスアイオノマーセメントの硬化反応は二種類の化学反応が競争的に起こっている。すなわち、ポリカルボン酸とフルオロアルミノシリケート粉末の水を介したキレートイオン化反応いわゆるアイオノマー反応(1)と、ラジカル重合性水溶性モノマーの重合による高分子化反応(2)である。これらの反応が競争的に進行する事で、いわゆるIPN(Interpenetrating Polymer Networks)構造が硬化体中に生成し強靭な物理的特性を示す。つまり両反応を個別・単独的ではなく競争的に進ませる事がIPN構造生成の重要なポイントとなる。ここでIPN構造とは、相互侵入高分子網目構造と翻訳されている様に、異なる高分子鎖が絡み合った状態で存在する事を言う。すなわち、二つまたはそれ以上の橋かけ高分子網目構造体が全体的に相互連結した混合物と定義され、互いに共有結合を形成しない状態で永久的に絡み合った状態である。上述したレジン系グラスアイオノマーセメントの場合には、ポリカルボン酸とフルオロアルミノシリケート粉末の反応により生成した三次元網目構造体中をラジカル重合性水溶性モノマーの重合で生成した高分子鎖が絡み合った状態で侵入している。繰り返しになるが、この絡み合った状態を生成させるには両反応が競争的に進む必要がある。例えば、高分子化反応が優先的に起これば、ポリカルボン酸の自由度が制限され、キレートイオン化反応を遅延させるなどの影響を与える。結果として歯質等への接着強度が著しく損なわれる。そればかりではなく、ポリカルボン酸主鎖と新しく生成した高分子鎖の絡み合いが疎になりIPN構造が十分生成しない。逆にポリカルボン酸とフルオロアルミノシリケート粉末の水を介したキレートイオン化反応いわゆるアイオノマー反応が優先的に起これば、先と同様にIPN構造の生成に大きな影響を与え、結果として強靭な物理的特性が低下し粘りのない脆い硬化体となる。この様に同一場にて(1)および(2)の反応が進行しない限りIPN構造は生成し難い。また疎水性の重合触媒を用いた場合にはコアセルベーションと言われる相分離が生じるため、均質なIPN構造が生成しない。すなわち、硬化体内部において疎水性重合触媒を比較的多く溶解したラジカル重合性モノマーが豊富に硬化した相と、ポリカルボン酸、フルオロアルミノシリケート粉末および水が豊富に反応硬化した相に分離した状態となる。この様な相分離した状態ではIPN構造は生成しない。またアスコルビン酸は過酸化物を還元することでラジカルを発生させる役割を担うが、長期保存において空気中の酸素の作用でデヒドロアスコルビン酸になり化学的に失活する。ここで、アスコルビン酸はその構造中の二重結合π電子がヒドロキシ基とカルボニル基の間に伝わり高い酸性を示す(pKa1:4.12)。これは、プロトンを放出した後の共役塩基が共鳴構造を有し、負電荷を非局在化させて安定化出来るためである。このためアスコルビン酸は強い還元性を示す。しかしながら、その高い反応性ゆえに空気中の酸素の作用により容易にプロトンを二個放出してデヒドロアスコルビン酸に変わる。このデヒドロアスコルビン酸はアスコルビン酸の様に強い還元性を示さないために、過酸化物を還元できず、ラジカルを発生出来ない。すなわち、アスコルビン酸は化学的に失活する。またこの現象は空気中の水蒸気により顕著に促進される。これは、アスコルビン酸結晶表面が水蒸気により潮解することで、微視的には溶液中での反応となるためにアスコルビン酸のデヒドロアスコルビン酸への酸化が促進されるからである。逆に言えば、この強い還元性を示すからこそアスコルビン酸は食品等の酸化防止剤として多用される。したがって、アスコルビン酸を重合開始剤の還元剤として用いる歯科材料分野ではこの酸素および水蒸気のアスコルビン酸への影響を減少させるために製品容器として酸素・水蒸気不透過性ラミネート素材を用いる等の対策が講じられてきた。しかしながらこの対策では根本的解決にはならず、歯科医療従事者が用いた歯科材料容器の密栓が不十分な場合には硬化不良を引き起こすなどの問題を有していた。また高価な酸素・水蒸気不透過性ラミネート素材を用いることによる製品コストの上昇や持続型製品開発の必要性等の地球環境の観点からも解決されるべき課題であった。また安定的な製品寿命を得るために、レドックス重合システムを過酸化物およびアスコルビン酸誘導体塩とする特許も開示されている(例えば特許文献1)。しかしながら、該特許文献によると還元性物質としてのアスコルビン酸誘導体塩は水や酸の存在下で分解し易いとの記載がある。さらに、重合開始前においては少なくとも重合開始剤としての過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体(過酸化物)と還元性物質としてのアスコルビン酸誘導体塩は共存しない状態にあることが必要であると記載されている。また、該特許にて実施されている保存試験では保存容器の素材の規定が明確でないばかりではなく、密栓したままでの保存試験となっている。しかしながら、このような保存試験は実用的な方法とは言い難い。何故ならば、歯科医療従事者による製品の使用開始から終了までは通常100回程度の開け締めが繰り返されるために、大気中の水蒸気への暴露は避けがたいためである。したがって、該特許による製品安定化は根本的な解決手段とは言い難い。また、レドックス還元剤に第三級アミンまたは第三級芳香族アミンを用いる特許も開示されている(例えば特許文献2および3)。しかしながら、該特許に記載の第三級アミンや第三級芳香族アミンは疎水性であるために、前述したようにラジカル重合性水溶性モノマーとポリカルボン酸等を用いたレジン系グラスアイオノマーセメントに応用した場合には相分離を起こし十分な強度発現が得られない。さらに該特許でも第三級アミンと過酸化物とは別々の包装に分割されている必要があると記載されている。つまり、レドックス開始剤系を用いた現存するシステムでは過酸化物と還元性物質の共存は不可能である。さらにレドックス重合開始剤系において有用な還元性物質であるアスコルビン酸を酸素や水蒸気から積極的に保護する根本的な技術開示はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−88086
【特許文献2】特開2005−170813
【特許文献3】特表平6−2651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように従来から提案されている様な過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体(過酸化物)とアスコルビン酸誘導体塩を用いたレドックス重合開始剤系や容器素材等の技術的手法では根本的な解決には至っておらず、歯科医療従事者による容器密栓不備等によるアスコルビン酸の化学的な失活は完全には防止できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らの鋭意検討の結果、アスコルビン酸を高級脂肪酸にて表面被覆することで酸素によるアスコルビン酸の化学的な失活を防止するとともに、水蒸気による失活促進の低減効果を発見し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって提供される機能性複合微粒子は芯物質であるアスコルビン酸を高級脂肪酸にて被覆することによって、酸素や水蒸気から保護することを特徴とする。この被覆により、アスコルビン酸の劣化が起こらず保存安定性を向上させることができた。そのため本発明の機能性複合微粒子をレジンセメントやレジン系グラスアイオノマーセメントに用いた場合においても、高価な酸素・水蒸気不透過性ラミネート素材の包装容器を用いる必要がないために、製品のコストも引き下げることが可能となった。また、歯科医療従事者の密栓不備に起因する硬化遅延などの使用上における品質の低下も抑制することができる。さらに、本来アスコルビン酸と過酸化物は同一組成物内において安定な状態で共存できないが、本発明の機能性複合微粒子を用いることによって、機能性複合微粒子の壁物質として用いている高級脂肪酸の融点以下であれば、壁物質を溶解しないラジカル重合性モノマー類や溶媒、及び過酸化物等と同一組成物内での共存が可能となる。また、この時、壁物質である高級脂肪酸の融点以上の温度を外部又は内部から加えることにより重合も開始できることから、本発明の機能性複合微粒子は優れた酸素や水蒸気に対する安定性とともに、温度応答性の重合触媒機能も有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の機能性複合微粒子は芯物質であるアスコルビン酸を壁物質である高級脂肪酸で被覆することを特徴とする。壁物質として用いる高級脂肪酸を具体的に例示すると、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、cis-15-テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸およびトリアコンタン酸が挙げられる。機能性複合微粒子中の壁物質である高級脂肪酸量は2wt%〜95wt%が好ましく、より好ましくは5wt%〜85wt%からであり、さらに好ましくは10wt%〜80wt%からである。高級脂肪酸量が95wt%を越える場合には高い安定性を有するものの、反応等量のアスコルビン酸を得るためには多量の高級脂肪酸が必要になり経済的ではないばかりか、硬化反応に寄与しない高級脂肪酸量が過剰となり、重合反応性に問題が生じる。また、2wt%より少ない場合にはアスコルビン酸の表面被覆量が少なくなるため、被覆していないものよりは安定性は得られるものの、耐水性が劣るなどの保存安定性に問題が生じる。これらの高級脂肪酸は単独で使用してもよいが、複数の高級脂肪酸を組み合わせてよい。複数の高級脂肪酸を組み合わせることによってアスコルビン酸を被覆する高級脂肪酸被覆膜の融点を制御することができるため好ましい態様である。具体的にはドデカン酸の融点である約44℃からトリアコンタン酸の融点である約94℃の範囲までを自在に制御することができる。本発明の機能性複合微粒子は壁物質として用いている高級脂肪酸を溶解しないラジカル重合性モノマーと共存することができる。この状態では当然のことながら機能性複合微粒子の芯物質であるアスコルビン酸の放出が出来ないため、重合触媒としての機能が働かず、重合が開始できない状態である。しかし、この共存状態において機能性複合微粒子の壁物質である高級脂肪酸の融点まで外部又は内部から温度を掛けることにより、高級脂肪酸が溶解しアスコルビン酸が放出されるため共存しているラジカル重合モノマーの重合を開始することが可能となる。したがって、本来はアスコルビン酸と過酸化物は同一組成物内において安定な状態で共存できないが、本発明の機能性複合微粒子の壁物質として用いている高級脂肪酸の融点以下であれば、壁物質を溶解しないラジカル重合性モノマー類や溶媒、及び過酸化物等と同一組成物内での共存が可能となる。また、この時、壁物質である高級脂肪酸の融点以上の温度を外部又は内部から加えることにより重合も開始できることから、本発明の機能性複合微粒子は優れた酸素や水蒸気に対する安定性とともに、温度応答性の重合触媒機能も有することができる。すなわち、本発明の機能性複合微粒子はラジカル重合性モノマー、フィラー(充填材)、過酸化物、ポリカルボン酸、水または有機溶媒と組み合わせることにより、高い保存安定性を有する粉液タイプ歯科用硬化性組成物、ペーストペーストタイプ歯科用硬化性組成物、ワンペーストタイプ歯科用硬化性組成物の製造が可能となる。さらに、本発明の機能性複合微粒子を含む歯科材料は温暖な気候地域に輸送供給されるだけではなく、平均気温が30℃を越える高温な地域にも輸送供給され、また輸送供給時においては非常に高い温度環境に曝される可能性もある。そのような状況おいては、本発明の機能性複合微粒子の壁物質に用いている高級脂肪酸被膜の融点を高めに設定することにより、芯物質であるアスコルビン酸の失活化を未然に防ぐことができる。この高級脂肪酸被膜の融点を調整するために複数の高級脂肪酸を組み合わせることは有用な手段である。
【0008】
本発明の機能性複合微粒子の製造方法は芯物質であるアスコルビン酸の表面を壁物質である高級脂肪酸で被覆することができれば製造方法には特に制限はなく、いずれの製造方法も用いることができる。製造方法の具体的に例示すると液中乾燥法、融解分散冷却法、メカノケミカル法等があげられるが、廃液等を最小限に抑え環境に優しいとされるメカノケミカル法が好ましい製造方法である。
【実施例】
【0009】
本発明の機能性複合微粒子の製造方法について以下に詳しく説明するが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。
【0010】
以下の実施例において機能性複合微粒子の調製を行い、得られた機能性複合微粒子の表面被覆化効率評価及び耐水性評価、並びに歯科材料としての保存安定性試験を実施した。
【0011】
実施例1
(機能性複合微粒子1の調製)
直径28mm、筒長45mmのナイロン製容器に平均粒子径20μmのL(+)-アスコルビン酸2.5g(A)、ドデカン酸1.0g(B)および被覆助剤としてエタノール0.3gを加えた。メディアとしては直径7mmのナイロン製ボール2gを充填した。被覆混合時間は60rpmで6時間とした。被覆混合完了後、真空ポンプを用い室温下にて24時間の真空乾燥を行い、得られた機能性複合微粒子1(C)の重量を測定した。

(表面被覆化効率評価)
得られた機能性複合微粒子1:1.0gを50mLの冷水に分散させた後に濾過・洗浄を経て凍結乾燥を行った。この操作により表面が高級脂肪酸にて被覆されていないアスコルビン酸を予め除去した。その後、この凍結乾燥した機能性複合微粒子1:0.5gを精秤(1mg精度)し40mLの蒸留水に分散させた後に70℃まで加熱して高級脂肪酸であるドデカン酸を分離した。その溶液を再度冷却することによって分離した高級脂肪酸を固化させ、濾過分離した。その濾液をHPLCにて定量分析(カラム:GLS製Inertsil
NH2 (5μm, 250×4.6mmI.D.)、展開液:A)CH3CN, B)H2O, C)CH3COOH ,
A/B/C= 87/11/2 Vol%、流量:2.0mL/min, カラム温度:40℃、検出:PDA(243nm)を行い、機能性複合微粒子1中のアスコルビン酸量(D)を検出した。なお、検量線は機能性複合微粒子の調製時に用いたアスコルビン酸の各濃度におけるHPLC分析を行って作成した。
表面被覆化効率Fcおよび収率Yは以下に示す式で算出した。

Fc=
HPLC測定で検出した機能性複合微粒子に含まれるアスコルビン酸量(D)/機能性複合微粒子の調製時に添加したアスコルビン酸量(A)

Y=実施例で得られた機能性複合微粒子の質量(C)/調製時に添加したアスコルビン酸と高級脂肪酸の総量(A+B)
【0012】
(耐水性評価)
得られた機能性複合微粒子1:約0.5gを1mg精度にて精秤(E)し40mLの蒸留水に分散させた後にマグネティックスターラーにて機械的に機能性複合微粒子が壊れない程度に緩やかに30分間攪拌し濾過洗浄した。本操作にてカプセル化されていないアスコルビン酸を除去するとともに被覆の弱い、すなわち耐水性に劣る部位のアスコルビン酸が除去された。次に残った機能性複合微粒子を再度40mLの蒸留水に分散させた後に70℃まで加熱させ高級脂肪酸を分離させた。その溶液を再度冷却し分離した高級脂肪酸を固化させ濾過分離した。その濾液をHPLCにて定量した(F)。カラムはGLS製Inertsil NH2 (5μm, 250×4.6mmI.D.)、展開液A)CH3CN, B)H2O, C)CH3COOH
, A/B/C= 87/11/2 Vol%、流量2.0mL/min, カラム温度40℃、検出:PDA(243nm)で分析を行った。なお、検量線はカプセル化前のアスコルビン酸を用いて同様の定量をHPLCにて行った。これらの値から耐水性率(H)を算出した。

H=HPLC分析より得たアスコルビン酸質量(F)/耐水試験前のアスコルビン酸の質量(G)

ただし、G=E×仕込みAA量×Fc/(仕込みAA量+仕込み壁材量)×Y
【0013】
(歯科材料としての保存安定性試験)
CX-Plus粉末(株式会社松風製)100gおよび調製した機能性複合微粒子1〜17(実施例1〜17)及び比較用アスコルビン酸粒子(比較例1)1.5gを十分に混合した後に直径20cmのガラス製シャーレに広げ、蒸留水を底部に満たしたデシケータ仕切り板上に保存した。なお保存条件は25℃にて4週間とした。また、硬化時間の測定に用いる液材としてメチルメタアクリレート(MMA)/2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-HEMA)/蒸留水=1:1:1(wt)の混合液70gにポリアクリル酸(重合度100)26g、酒石酸3gおよび過硫酸カリウム1.0gを添加混合を行い調製した。デシケータ保存前および保存後の粉材と調製した液材を粉液比=粉材/液材(2g/1g)にてISO9917-2:2010に準拠した硬化時間(S.T)を測定し比較した。なお、練和時間30秒、試験室環境は室温23℃-相対湿度50%で行った。
【0014】
実施例2
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をテトラデカン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子2を得た。

実施例3
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をペンタデカン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子3を得た。

実施例4
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をヘキサデカン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子4を得た。

実施例5
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をヘプタデカン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子5を得た。

実施例6
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をオクタデカン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子6を得た。

実施例7
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をエイコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子7を得た。

実施例8
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をドコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子8を得た。

実施例9
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をテトラコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子9を得た。

実施例10
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をcis-15-テトラコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子10を得た。

実施例11
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をヘキサコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子11を得た。

実施例12
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をオクタコサン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子12を得た。

実施例13
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸をトリアコンタン酸に変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子13を得た。

実施例14
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸量を0.15gに変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子14を得た。

実施例15
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸量を0.30gに変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子15を得た。

実施例16
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸量を10gに変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子16を得た。

実施例17
実施例1の(機能性複合微粒子調製)において壁物質として用いた高級脂肪酸であるドデカン酸量を22.5gに変えた以外は実施例1同様の操作を行い機能性複合微粒子17を得た。

比較例1
実施例1で高級脂肪酸であるドデカン酸を未添加にした以外は実施例1同様の操作を行い比較用アスコルビン酸粒子を得た。
【0015】
評価結果表1に実施例で得られた機能性複合微粒子の表面被覆化効率評価結果、耐水性評価結果および歯科材料としての保存安定性試験結果を示す。これらの評価結果より、調製した高級脂肪酸による表面被覆アスコルビン酸(機能性複合微粒子)は高い表面被覆化効率および収率を示すことが分かる。また、高疎水性の高級脂肪酸で被覆されているために、耐水性も向上していることが分かる。その効果として歯科材料としての保存安定性試験では、高級脂肪酸により被覆されていない比較例ではアスコルビン酸が完全に失活し硬化しなかったのに対し、本発明による表面被覆アスコルビン酸を使用した系は大幅な硬化遅延を認めなかった。これらの評価結果より明らかなように、従来技術では達し得なかった高い保存安定性を有する歯科材料の提供が可能となった。
【0016】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0017】
本技術を用いれば、酸素・水蒸気の影響を減少させるための酸素・水蒸気不透過性ラミネート素材製品容器を用いる等の対策は不要となる。結果として高価な酸素・水蒸気不透過性ラミネート素材を用いることによる製品コストの上昇を回避出来、医療費抑制に貢献できる。従って、本技術の産業上の利用の可能性は高いものである。