特許第6207941号(P6207941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207941
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】排熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/10 20060101AFI20170925BHJP
   F01K 23/06 20060101ALI20170925BHJP
   F02G 5/00 20060101ALI20170925BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F01K23/10 R
   F01K23/06 P
   F02G5/00 B
   F02G5/02 B
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-189101(P2013-189101)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-55195(P2015-55195A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193690(JP,A)
【文献】 特開2010−190185(JP,A)
【文献】 特開2012−041933(JP,A)
【文献】 特開2012−026452(JP,A)
【文献】 特開2008−274834(JP,A)
【文献】 特開2010−101283(JP,A)
【文献】 特開2011−214480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/06−10
F02G 5/00−04
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと、
クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と、
前記ランキンサイクルの起動時における消費動力に相関する第1相関値と、前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力に相関する第2相関値とに基づいて、前記クラッチの締結/非締結を制御するクラッチ制御部と、
を有し、
前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記第2相関値の絶対値が前記第1相関値の絶対値以上である場合に前記クラッチを非締結とする、
排熱回収装置。
【請求項2】
冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと、
クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と、
前記ランキンサイクルの起動時における消費動力に相関する第1相関値と、前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力に相関する第2相関値とに基づいて、前記クラッチの締結/非締結を制御するクラッチ制御部と、
を有し、
前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記第2相関値の絶対値が前記第1相関値の絶対値以上であり、かつ、前記ランキンサイクルの出力が減少傾向にある場合に、前記クラッチを非締結とする、
排熱回収装置。
【請求項3】
前記ランキンサイクルの出力を演算する出力演算部を有し、
前記第1相関値及び前記第2相関値は、前記出力演算部からの出力に基づいて算出される、請求項1又は2に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記ランキンサイクルの起動時における消費動力は、前記ランキンサイクルが起動してから前記ランキンサイクルの出力が正となるまでの間の前記ランキンサイクルの出力の積算値であり、
前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力は、前記ランキンサイクルの運転時における当該ランキンサイクルの負の出力の積算値である、
請求項に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと
クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と、
前記ランキンサイクルの出力を演算する出力演算部と
前記ランキンサイクルの起動時における消費動力に相関する第1相関値と、前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力に相関する第2相関値とに基づいて、前記クラッチの締結/非締結を制御するクラッチ制御部と、
を有し、
前記第1相関値及び前記第2相関値は、前記出力演算部からの出力に基づいて算出されるものであり、
前記ランキンサイクルの起動時における消費動力は、前記ランキンサイクルが起動してから前記ランキンサイクルの出力が正となるまでの間の前記ランキンサイクルの出力の積算値であり、
前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力は、前記ランキンサイクルの運転時における当該ランキンサイクルの負の出力の積算値である、
排熱回収装置。
【請求項6】
冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと、
クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と、
前記ランキンサイクルの出力を演算する出力演算部と、
前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの出力がゼロ又は負である状態が継続した場合に前記クラッチを非締結とするクラッチ制御部と、
を有し、
前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの負の出力の積算値の絶対値が所定の閾値以上となった場合に前記クラッチを非締結とする、
排熱回収装置。
【請求項7】
冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと、
クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と、
前記ランキンサイクルの出力を演算する出力演算部と、
前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの出力がゼロ又は負である状態が継続した場合に前記クラッチを非締結とするクラッチ制御部と、
を有し、
前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの負の出力の積算値の絶対値が所定の閾値以上であり、かつ、前記ランキンサイクルの出力が減少傾向にある場合に前記クラッチを非締結とする、
排熱回収装置。
【請求項8】
前記ポンプは、前記エンジンによって駆動される機械式ポンプである、請求項1〜のいずれか一つに記載の排熱回収装置。
【請求項9】
前記ポンプは、前記エンジンによって駆動される機械式ポンプであり、
前記出力演算部は、前記ランキンサイクルの高圧側と低圧側の圧力差、前記膨張機の回転数、及び前記機械式ポンプの回転数に基づいて、前記ランキンサイクルの出力を演算する、請求項3〜7のいずれか一つに記載の排熱回収装置。
【請求項10】
前記膨張機と前記機械式ポンプとが一体に連結されている、請求項8又は9に記載の排熱回収装置。
【請求項11】
前記膨張機は、固定スクロールと可動スクロールを有し、前記固定スクロールと前記可動スクロールとの間に形成される膨張室で前記冷媒が膨張することによって動力を発生するスクロール型膨張機であり、前記可動スクロールの自転を阻止するために、ボールを転動部材として用いたボールカップリング式の自転阻止機構が設けられている、請求項1〜10のいずれか一つに記載の排熱回収装置。
【請求項12】
前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時において、前記膨張機に液冷媒が混入するおそれがある場合であっても、前記第2相関値の絶対値が前記第1相関値の絶対値以上となるまで又は前記ランキンサイクルの負の出力の積算値の絶対値が所定の閾値以上となるまでは前記クラッチの締結状態を維持する、請求項11に記載の排熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されてエンジンの排熱(廃熱を含む)を回収して動力を発生するランキンサイクルを備えた排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンと、このエンジンの廃熱を冷媒に回収して膨張機で動力として回生するランキンサイクルと、を備えた車両が記載されている。この特許文献1に記載の車両においては、前記エンジンと前記膨張機との間の動力伝達経路上にクラッチが設けられており、前記膨張機の回生動力(トルク)の予測値が正のときに前記クラッチが締結され、前記膨張機の回生動力(トルク)の予測値がゼロ又は負のときに前記クラッチに非締結とされるようになっている。すなわち、特許文献1に記載の車両では、前記膨張機のトルクの予測値がゼロ又は負となった時点で前記クラッチが非締結とされて前記ランキンサイクルの運転が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−190185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ランキンサイクルを起動するには、まず冷媒を循環させるポンプを駆動する必要があり、その後、膨張機がトルクを発生するようになるまでに所定の時間がかかる。そのため、ランキンサイクルは、その起動時においてはある程度の時間、エンジンの負荷とならざるを得ない。例えば、特許文献1に記載の車両と同様に、冷媒の循環に電動ポンプが用いられている場合、当該電動ポンプはバッテリからの電力によって駆動されるが、その際に消費した電力をエンジンによってバッテリに再充電する必要があるため、結果的にランキンサイクルがエンジンの負荷となる。また、冷媒の循環に機械式ポンプが用いられている場合、当該機械式ポンプはエンジンによって駆動されるため、ランキンサイクルがエンジンの負荷となる。
また、ランキンサイクルの運転時においても膨張機のトルクがゼロ又は負となると、ランキンサイクルはエンジンの負荷となり得る。しかし、ランキンサイクルの運転時に膨張機のトルクが負となった場合であってもその後すぐに膨張機のトルクが正に転ずるような場合には、ランキンサイクルによるエンジンへの負荷は比較的小さくて済むと言える。
したがって、特許文献1に記載の車両のように、膨張機のトルクの予測値がゼロ又は負となった時点で直ちにランキンサイクルの運転を停止してしまうと、ランキンサイクルを停止させずにそのまま運転させた場合よりも却ってランキンサイクルによるエンジンへの負荷が増加して、その結果、エンジンの燃費等を悪化させるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンの排熱を回収して膨張機で動力に変換するランキンサイクルを備えた排熱回収装置において、エンジンとランキンサイクルとの間の動力伝達経路上に設けられたクラッチの締結/非締結を適切に行うことによって、ランキンサイクルがエンジンの負荷となることを効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面による排熱回収装置は、冷媒の循環路に、エンジンの排熱によって冷媒を加熱して気化させる加熱器、この加熱器を経由した冷媒を膨張させて動力を発生する膨張機、この膨張機を経由した冷媒を凝縮させる凝縮器、及び、この凝縮器を経由した冷媒を前記加熱器へと送出するポンプが配設されたランキンサイクルと;クラッチを有し、当該クラッチの締結時に前記エンジンと前記ランキンサイクルとの間で動力の伝達が可能な動力伝達機構と;前記ランキンサイクルの起動時における消費動力に相関する第1相関値と、前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力に相関する第2相関値とに基づいて、前記クラッチの締結/非締結を制御するクラッチ制御部と;を含む。前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記第2相関値の絶対値が前記第1相関値の絶対値以上である場合に前記クラッチを非締結とし、又は、前記クラッチの締結時に、前記第2相関値の絶対値が前記第1相関値の絶対値以上であり、かつ、前記ランキンサイクルの出力が減少傾向にある場合に、前記クラッチを非締結とする。
本発明の他の側面による排熱回収装置は、前記ランキンサイクルと、前記動力伝達機構と、前記ランキンサイクルの出力を演算する出力演算部と、前記クラッチ制御部と、を含む。前記第1相関値及び前記第2相関値は、前記出力演算部からの出力に基づいて算出されるものであり、前記ランキンサイクルの起動時における消費動力は、前記ランキンサイクルが起動してから前記ランキンサイクルの出力が正となるまでの間の前記ランキンサイクルの出力の積算値であり、前記ランキンサイクルの起動後の運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力は、前記ランキンサイクルの運転時における当該ランキンサイクルの負の出力の積算値である。
本発明のさらに他の側面による排熱回収装置は、前記ランキンサイクルと、前記動力伝達機構と、前記出力演算部と、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの出力がゼロ又は負である状態が継続した場合に前記クラッチを非締結とするクラッチ制御部と、を含む。前記クラッチ制御部は、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの負の出力の積算値の絶対値が所定の閾値以上となった場合に前記クラッチを非締結とし、又は、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの負の出力の積算値の絶対値が所定の閾値以上であり、かつ、前記ランキンサイクルの出力が減少傾向にある場合に前記クラッチを非締結とする。
【発明の効果】
【0007】
前記排熱回収装置では、前記ランキンサイクルの起動時における消費動力に相関する第1相関値と、前記ランキンサイクルの運転時にその出力が負である場合における前記ランキンサイクルの消費動力に相関する第2相関値とに基づいて、前記クラッチの締結/非締結を制御する。あるいは、前記クラッチの締結時に、前記ランキンサイクルの出力がゼロ又は負である状態が継続した場合に前記クラッチを非締結とする。これにより、前記ランキンサイクルの運転時に前記クラッチを非締結として前記ランキンサイクルを停止させる(その後、前記ランキンサイクルを再起動させる)ことによって却って前記エンジンの負荷が増加してしまうことが抑制され、エンジンの燃費の悪化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による排熱回収装置の概略構成を示す図である。
図2】ポンプ一体型膨張機の構成を示す図である。
図3】第1実施形態におけるクラッチ制御の内容を示したフローチャートである。
図4】第1実施形態におけるクラッチの状態の一例を示すタイムチャートである。
図5】本発明の第2実施形態による排熱回収装置の概略構成を示す図である。
図6】第2実施形態におけるクラッチ制御の内容を示したフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態による排熱回収装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による排熱回収装置1Aの概略構成を示している。この排熱回収装置1は、車両に搭載されてエンジン10の排熱を回収して利用する。図1に示すように、排熱回収装置1Aは、エンジン10の排熱を回収して動力に変換(動力を発生)するランキンサイクル2Aと、ランキンサイクル2Aとエンジン10との間で動力の伝達を行う動力伝達機構3Aと、排熱回収装置1A全体の作動を制御する制御ユニット4Aと、を含む。
【0010】
エンジン10は、水冷式の内燃機関であり、冷却水流路11を循環するエンジン冷却水によって冷却される。冷却水流路11には、後述するランキンサイクル2Aの加熱器22が配置されており、エンジン10から熱を吸収したエンジン冷却水が加熱器22内を流通するようになっている。
【0011】
ランキンサイクル2Aの冷媒循環路21には、加熱器22、膨張機23、凝縮器24及びポンプ25がこの順に配設されている。
加熱器22は、エンジン10から熱を吸収したエンジン冷却水と冷媒との間で熱交換を行わせることによって冷媒を加熱して過熱蒸気とする熱交換器である。なお、エンジン冷却水に代えて、エンジン10の排気と冷媒との間で熱交換を行わせるように加熱器22を構成してもよい。
【0012】
膨張機23は、スクロール型膨張機であり、加熱器22で加熱されて過熱蒸気となった冷媒を膨張させて回転エネルギーに変換することによって動力(ここでは、トルク)を発生する。
凝縮器24は、膨張機23を経由した冷媒と外気との間で熱交換を行わせることによって冷媒を冷却して凝縮(液化)させる熱交換器である。
【0013】
ポンプ25は、凝縮器24で液化された冷媒(液冷媒)を加熱器22へと送出する機械式ポンプである。そして、凝縮器24で液化された冷媒がポンプ25によって加熱器22へと送出されることによって冷媒がランキンサイクル2の前記各要素を循環する。
【0014】
ここで、本実施形態においては、膨張機(スクロール型膨張機)23とポンプ(機械式ポンプ)25とが共通の回転軸26によって一体に連結された「ポンプ一体型膨張機27」として構成されている。すなわち、ポンプ一体型膨張機27の回転軸26は、膨張機23の出力軸としての機能及びポンプ25の駆動軸として機能を有している。
【0015】
動力伝達機構3Aは、電磁クラッチ31と、この電磁クラッチ31を介してポンプ一体型膨張機27の回転軸26に取り付けられたプーリ32と、エンジン10のクランクシャフト10aに取り付けられたクランクプーリ33と、プーリ32及びクランクプーリ33に巻回されたベルト34と、を有している。そして、動力伝達機構3Aは、電磁クラッチ31がON(締結)/OFF(非締結)されることによって、エンジン10とランキンサイクル2(具体的にはポンプ一体型膨張機27)との間で動力を伝達/遮断できるようになっている。なお、電磁クラッチ31は、エンジン10とランキンサイクル2との間で動力を伝達/遮断できればよく、その設置位置は問わない。
【0016】
制御ユニット4Aは、エンジン10を制御するエンジン制御装置(図示省略)との間で互いに情報の送受信が可能に構成されている。例えば、制御ユニット4は、前記エンジン制御装置からエンジン10の回転数Neやエンジン冷却水の温度Twなどの各種情報を入手することができる。また、制御ユニット4Aには、ランキンサイクル2Aの高圧側圧力PHを検出する第1圧力センサ101、ランキンサイクル2Aの低圧側圧力PLを検出する第2圧力センサ102及びポンプ一体型膨張機27の回転数Nexp(=膨張機23の回転数=ポンプ25の回転数)を検出する回転センサ103などの各種センサの検出信号が入力される。
【0017】
ここで、ランキンサイクル2Aの高圧側圧力PHとは、ポンプ25(の出口)から加熱器22を経て膨張機23(の入口)に至るまでの区間における冷媒循環路21内の圧力をいい、ランキンサイクル2Aの低圧側圧力PLとは、膨張機23(の出口)から凝縮器24を介してポンプ25(の入口)に至るまでの区間における冷媒循環路21内の圧力をいう。本実施形態において、第1圧力センサ101は膨張機23入口側(加熱器22の出口側)の圧力をランキンサイクル2Aの高圧側圧力PHとして検出し、第2圧力センサ102はポンプ25入口側(凝縮器23の出口側)の圧力をランキンサイクル2Aの低圧側圧力PLとして検出している。
【0018】
また、回転センサ103を省略することもできる。この場合、制御ユニット4Aは、エンジン10の回転数Ne(及びプーリ31とクランクプーリ32のプーリ比)に基づいてポンプ一体型膨張機27の回転数Nexpを算出することができる。
【0019】
制御ユニット4Aは、入力された各種センサの検出信号や前記エンジン制御装置からの情報に基づいて電磁クラッチ31の制御(締結/非締結)を含む各種制御を実行する。
例えば、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aの起動条件が成立した場合には、電磁クラッチ31をON(締結)する。これにより、エンジン10によってポンプ25(ポンプ一体型膨張機27のポンプ部分)が駆動されてランキンサイクル2Aが起動する。したがって、ランキンサイクル2Aの起動時においては、ランキンサイクル2Aのポンプ25及びこれと回転軸26を共通とする膨張機23(すなわち、ポンプ一体型膨張機27)がエンジン10の負荷となる。なお、ランキンサイクル2Aの前記起動条件は、適宜設定することができる。例えば、エンジン冷却水の温度Twが所定温度以上であることやランキンサイクル2を停止してから所定時間が経過していることを前記起動条件とすることができる。
【0020】
ランキンサイクル2Aが起動すると、ポンプ25(ポンプ一体型膨張機27のポンプ部分)によって冷媒が冷媒循環路21を循環し、膨張機23(ポンプ一体型膨張機27の膨張機部分)が動力を発生し始める。その後、膨張機23が十分な動力(トルク)を発生するようになると(すなわち、ランキンサイクル2の起動が完了すると)、膨張機23で発生した動力の一部がポンプ25を駆動し、その余の動力が動力伝達機構3Aを介してエンジン10に伝達されてエンジン10の出力をアシストする。これにより、エンジン10の燃費を向上させることができる。
【0021】
また、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aの運転中に、例えばランキンサイクル2Aを停止させる必要があると判断した場合や前記エンジン制御装置からランキンサイクル2Aの停止要求を受けた場合には、電磁クラッチ31をOFF(非締結)としてランキンサイクル2Aを停止させる。
【0022】
ところで、起動(完了)後のランキンサイクル2Aの通常運転時にランキンサイクル2Aの出力(ここでは、ポンプ一体型膨張機27のトルク)がゼロ又は負となると、ランキンサイクル2Aがエンジン10の負荷となってしまう。例えば、膨張機23の上流側の冷媒過熱度が十分でない場合や凝縮器24の熱負荷が大きい場合などにおいては、膨張機23前後の圧力差が十分取れず、膨張機23の発生動力(トルク)≦ポンプ25の駆動トルクとなる場合がある。すなわち、ランキンサイクル2Aの出力(すなわち、ポンプ一体型膨張機27のトルク=膨張機23の発生トルク−ポンプ25の駆動トルク)がゼロ又は負となることがある。このような場合には、エンジン10の燃費を向上させるための排熱回収装置1Aがエンジン10の負荷(エンジン10の燃費を悪化させる原因)となってしまい、好ましくない。
【0023】
そこで、制御ユニット4Aは、所定周期毎にポンプ一体型膨張機27のトルクTexp(ランキンサイクル2Aの出力)を演算し、ランキンサイクル2Aの起動後の通常運転時にポンプ一体型膨張機27のトルクがゼロ又は負となった場合には、ON(締結)されている電磁クラッチ31をOFF(非締結)としてエンジン10とランキンサイクル2Aとの間の動力の伝達を遮断し、ランキンサイクル2Aを停止させる。これにより、ランキンサイクル2Aがエンジン10の負荷となってしまうことを抑制する。
【0024】
但し、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aの出力(ポンプ一体型膨張機27のトルクTexp)がゼロ又は負となったときに直ちに電磁クラッチ31をOFFするのではなく、ランキンサイクル2Aの出力(トルクTexp)がゼロ又は負である状態が継続した場合又は負である状態が継続することが予測される場合に電磁クラッチ31をOFFとする。これは、上述したように、ランキンサイクル2Aはその起動時においてエンジン10の負荷となることから、ランキンサイクル2Aの出力(トルクTexp)がゼロ又は負となった時点でランキンサイクル2Aの運転を停止してしまうと、ランキンサイクル2Aを停止させずにそのまま運転させた場合よりも却ってエンジン10への負荷が増加してしまうおそれがあるからである。
【0025】
具体的には、本実施形態において、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aの起動後の運転時にその出力が負である場合におけるランキンサイクル2Aの消費動力(又はその相関値)が、ランキンサイクル2Aの起動時における消費動力(又はその相関値)以上となった場合又はそうなることが予測される場合に、ONされている電磁クラッチ31をOFFとしてランキンサイクル2Aを停止させる。
なお、本実施形態において、ランキンサイクル2Aの起動時における消費動力とは、停止状態にあるランキンサイクル2Aを起動させてから(ポンプ25の駆動開始から)、ランキンサイクル2Aの出力が「正」となるまでの間にランキンサイクル2A(主にポンプ一体型膨張機27)によって消費される動力のことをいう。
【0026】
また、制御ユニット4Aは、電磁クラッチ31をOFFとした後、例えば前記起動条件が成立すると、電磁クラッチ31を再びONしてランキンサイクル2Aを起動(再起動)させることができる。
すなわち、本実施形態において、制御ユニット4Aは、本発明の「クラッチ制御部」及び「出力演算部」としての機能を有している。
【0027】
ここで、図1に破線で示すように、膨張機23を迂回するバイパス流路28及びこのバイパス流路28を開閉するバイパス弁29が設けられ、制御ユニット4Aが必要に応じてバイパス弁29を開閉するように構成してもよい。この場合、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aを起動させる際に、バイパス弁29を開いた状態で電磁クラッチ31をONし、膨張機23を迂回して冷媒を流通させた後にバイパス弁29を閉じるように、バイパス弁29及び電磁クラッチ31を制御することができる。また、制御ユニット4Aは、ランキンサイクル2Aを停止させる際に、まずバイパス弁29を開き、膨張機23を迂回して冷媒を流通させた後に電磁クラッチ31をOFFするように、バイパス弁29及び電磁クラッチ31を制御することができる。
【0028】
次に、図2を参照してポンプ一体型膨張機27の構成を説明する。
図2に示すように、ポンプ一体型膨張機27は、膨張機(スクロール型膨張機)23として機能する膨張ユニット50と、ポンプ(機械式ポンプ)25として機能するポンプユニット60と、膨張ユニット50とポンプユニット60との間に配設された従動クランク機構70と、を備えている。
【0029】
膨張ユニット50は、固定スクロール51と、可動スクロール52と、を含む。固定スクロール51と可動スクロール52は、互いのスクロール部51a、52aが噛み合うように配置され、固定スクロール51のスクロール部51aと可動スクロール52のスクロール部52aとの間に膨張室53が形成される。この膨張室53には、固定スクロール51の基部51bに形成された冷媒通路51cを介して、加熱器22を通過した冷媒が導入される。そして、膨張室53に導入された冷媒が膨張することにより、可動スクロール52が固定スクロール51に対して旋回運動を行う。
【0030】
ここで、旋回運動中の可動スクロール52の自転を阻止すると共に可動スクロール52に作用するスラスト力を受けるため、可動スクロール52の基部52bの背面側(スクロール部52aとは反対側)には、ボールを転動部材として用いたボールカップリング式の自転阻止機構54が設けられている。
【0031】
膨張ユニット50(膨張機23)内に液冷媒が混入すると、液冷媒によって内部の潤滑油が流されてしまったり、内部の潤滑油の粘度が低下したりして、内部の摺動部分や回転部分(特に、自転阻止機構54及びその周辺部分)が潤滑不足に陥るおそれがある。このため、膨張ユニット50の入口側における冷媒の過熱度(SH)が低いときなど膨張ユニット50内に液冷媒が混入するおそれがある場合には、膨張ユニット50を停止させる、すなわち、ランキンサイクル2を停止させるようにするのが好ましい。
【0032】
しかし、膨張ユニット50内に液冷媒が混入するおそれがある場合にランキンサイクル2を停止させるようにすると、特に冬季などエンジン冷却水の温度Twが低い場合にランキンサイクル2Aを頻繁に停止させることとなってランキンサイクル2Aの運転機会が大幅に減少してしまうおそれがある。また、結果として、ランキンサイクル2Aを起動させる機会が増加することになるため、エンジン10への負荷も増加するおそれがある。
【0033】
この点、ボールを転動部材として用いたボールカップリング式の自転阻止機構54は、潤滑不足の状態においても焼付き等の不具合が発生せず、高い耐久性を有することが確認されている。そこで、本実施形態においては、ランキンサイクル2Aの運転中に膨張ユニット50内に液冷媒が混入するおそれが生じた場合であっても、その出力が負である場合におけるランキンサイクル2Aの消費動力が、ランキンサイクル2Aの起動時の消費動力以上となるまで又はそうなることが予測されるまでは、電磁クラッチ31をON状態を維持し、膨張ユニット50を作動させる(ランキンサイクル2を運転させる)ようにする。これにより、エンジン10への負荷が増加することを抑制しつつ、ランキンサイクル2の運転機会が減少することを防止している。もちろん、このようにすることで、膨張ユニット50の入口側における冷媒の過熱度SH等を検知するためのセンサ類を必要としなくても済むという利点もある。
【0034】
図2に戻って、ポンプユニット60は、ギヤポンプとして構成されており、回転軸26に固定された駆動ギヤ61と、回転軸26と平行に配設された従動軸62と、従動軸62に固定されて駆動ギヤ61と噛み合う従動ギヤ63と、を含む。回転軸26及び従動軸62は軸受によって回転自在に支持されている。回転軸26の一端側(図では左側)には、上述したように、電磁クラッチ31を介してプーリ32が取り付けられており、回転軸26の他端側(図では右側)は、従動クランク機構70を介して可動スクロール52に連結されている。
【0035】
従動クランク機構70は、例えば公知のスイングリンク式の従動クランク機構であり、可動スクロール52の旋回運動を回転軸26の回転運動に変換することができ、また、回転軸26の回転運動を可動スクロール52の旋回運動に変換することができる。
【0036】
次に、ランキンサイクル2Aの起動完了後の通常運転時において、制御ユニット4Aが実施するクラッチ制御(電磁クラッチ31の制御)について説明する。
図3は、かかるクラッチ制御の内容を示すフローチャートである。
このフローチャートは、ランキンサイクル2Aの起動完了後、所定時間(例えば、10ms)毎に実行される。
【0037】
図3において、ステップS1では、第1圧力センサ101及び第2圧力センサ102からランキンサイクル2Aの高圧側圧力PH及び低圧側圧力PLを取得する。
ステップS2では、回転センサ103からポンプ一体型膨張機27の回転数Nexpを取得する。あるいは、エンジン10の回転数Neと、プーリ31とクランクプーリ32のプーリ比とに基づいてポンプ一体型膨張機27の回転数Nexpを算出する。
【0038】
ステップS3では、前記高圧側圧力PH、前記低圧側圧力PL及びポンプ一体型膨張機27の回転数Nexpに基づいてポンプ一体型膨張機27のトルクTexp(すなわち、ランキンサイクル2Aの出力)を演算する。例えば、制御ユニット4Aは、下記推定式に基づいてポンプ一体型膨張機27のトルクTexpを算出する。
Texp=M・(PH−PL)−M・Nexp−K
ここで、M、(−M)は係数、Kは定数である。
【0039】
ステップS4では、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpが正(Texp>0)であるか否かを判定する。ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ又は負であればステップS5に進む。一方、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpが正であればステップS9に進む。
【0040】
ステップS5では、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexp(≦0)を記憶する。
ステップS6では、記憶されたトルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│を算出する。これにより、ステップS4においてポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ又は負と判定されるたびに当該ゼロ又は負のトルクTexpが加算される。すなわち、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ又は負である状態が継続するほど、トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が大きくなる(積算値Σ(Texp)は小さくなる)。この「トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│」が、本発明の「第2相関値」に相当する。
【0041】
ステップS7では、トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が閾値TH1以上であるか否かを判定する。前記トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が閾値TH1以上であればステップS8に進み、閾値TH1未満であれば本フローを終了する。閾値TH1は、ランキンサイクル2Aに応じて設定されるものであって、0よりも大きく、かつ、ランキンサイクル2Aの起動時における消費動力に相当する値又はそれ以下の所定値とすることができる。例えば、ランキンサイクル2Aが起動してから(ポンプ25の駆動開始から)、前記トルクTexpが「正」となるまでの間に演算された各トルクTexpの積算値の絶対値、当該絶対値の1/2、又はこれらの間の所定値、換言すれば、各トルクTexpの積算値の絶対値に所定の係数K(0.5〜1.0)を乗算した値を閾値TH1とすることができる。この閾値TH1が、本発明の「第1相関値」に相当する。なお、閾値TH1は、固定値として事前に設定されてもよいが、ランキンサイクル2Aを起動するたびに、前記トルクTexpが正となるまでの間の各トルクTexpの積算値(の絶対値)を算出して更新されてもよい。
【0042】
ステップS8では、電磁クラッチ31に制御信号を出力して電磁クラッチ31をOFFする(非締結とする)。これにより、エンジン10とランキンサイクル2Aとの間の動力の伝達が遮断され、ランキンサイクル2Aはエンジン10の負荷とならなくなる。
ステップS9では、記憶された前記トルクTexp及び算出された前記トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│をクリアする。
【0043】
図4は、ランキンサイクル2Aの起動完了後の通常運転時における電磁クラッチ31の状態の一例を示すタイムチャートである。
時刻t1において、ポンプ一体型膨張機27は正のトルクを発生しており(すなわち、ランキンサイクル2Aの出力は正であり)、排熱回収装置1Aによるエンジン10のアシストが行われている。その後、エンジン10の回転数Neが上昇すると、これに伴ってポンプ一体型膨張機27の回転数Nexpも上昇する。すると、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpが低下し、場合によっては、時刻t2においてポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ以下となる。この時刻t2の時点でランキンサイクル2Aはエンジン10の負荷になり始めるが、本実施形態では、電磁クラッチ31はONのままである。
【0044】
そして、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexp(≦0)の積算値の絶対値│Σ(Texp)│(図4中のハッチング領域Aを参照)が閾値TH1以上となると(時刻t3)、電磁クラッチ31がOFFされる(非締結とされる)。これにより、ランキンサイクル2Aがエンジン10から切り離される(ランキンサイクル2Aが停止する)。その後、ランキンサイクル2Aの起動条件が成立すると(時刻t4)、電磁クラッチ31が再びON(締結)されてランキンサイクル2が起動する。ここで、図4中のハッチング領域Bが、ランキンサイクル2Aが起動してから前記トルクTexpが正となるまでの間に演算された各トルクTexpの積算値の絶対値に相当し、本実施形態では、この各トルクTexpの積算値の絶対値(ハッチング領域B)を閾値TH1(係数K=1)としている。
【0045】
上述のように、電磁クラッチ31をOFFするとランキンサイクル2Aを停止させることとなる。一方、ランキンサイクル2Aを起動(再起動)させるには、ある程度の時間、ランキンサイクル2Aがエンジン10の負荷とならざるを得ない。このため、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ又は負となった時点で電磁クラッチ31をOFFしてしまうと、電磁クラッチ31をONに維持した場合よりも却ってエンジン10の負荷が増加してしまうおそれがある。また、ランキンサイクル2Aの運転機会が大幅に減少してしまうおそれもある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、ランキンサイクル2Aの運転中にポンプ一体型膨張機27のトルクTexpがゼロ又は負となった時点で直ちに電磁クラッチ31をOFFするのではなく、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が閾値TH1以上となったときに電磁クラッチ31をOFFする。すなわち、ランキンサイクル2Aの運転時にその出力が負であるときにランキンサイクル2Aによって消費される動力に相関する値が、ランキンサイクル2Aの起動時に必要とされる動力に相関する値以上となったときに、電磁クラッチ31をOFFしてランキンサイクル2Aを停止させる。これにより、電磁クラッチ31をOFFすることによって却ってエンジン10の負荷が増加してしまうことが抑制され、エンジン10の燃費の悪化を抑制することができる。また、前記トルクTexpが一時的に負となるような場合にランキンサイクル2Aを停止させなくて済むので、ランキンサイクル2Aの運転機会の減少も抑制される。さらに、膨張ユニット50内に液冷媒が混入するおそれがある場合であっても、それを理由にランキンサイクル2Aを停止させないので、このことによってもランキンサイクル2Aの運転機会の減少が抑制される。
【0047】
なお、以上では、ランキンサイクル2Aの通常運転時におけるポンプ一体型膨張機27のトルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が、閾値TH1以上となったときに電磁クラッチ31をOFFしているが、これに限るものではない。
例えば、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が閾値TH1(係数K<1.0)以上であり、かつ、前記トルクTexpが減少傾向にある場合(例えば、前記トルクTexpの今回算出値が前回算出値よりも小さい場合)に、電磁クラッチ31をOFFするようにしてもよい。この場合には、前記トルクTexpが負である状態が継続する可能性が高く、ランキンサイクル2Aの運転時における消費動力が、ランキンサイクル2Aの起動時における消費動力以上となることが予測されるからである。好ましくは、この場合の閾値TH1は、ランキンサイクル2Aが起動してから前記トルクTexpが正となるまでの間に演算された各トルクTexpの積算値の絶対値の1/2とする(すなわち、係数K=0.5とする)。このようにしても上記実施形態と同様に、電磁クラッチ31をOFFすることによって却ってエンジン10の負荷が増加してしまうことやランキンサイクル2Aの運転機会が減少してしまうことが抑制される。
【0048】
また、ポンプ一体型膨張機27のトルクTexpの積算値が負であり、かつ、前記トルクTexpのさらなる減少が予測される場合に(すなわち、閾値TH1との比較を行うことなく)電磁クラッチ31をOFFするようにしてもよい。この場合も前記トルクTexpが負である状態が継続する可能性が高く、ランキンサイクル2Aの運転時における消費動力が、ランキンサイクル2Aの起動時における消費動力以上となることが予測され、エンジン10の燃費がより悪化すると考えられるからである。ここで、前記トルクTexpのさらなる減少が予測される場合とは、エンジン10の回転数Ne、すなわち、ポンプ一体型膨張機27(特にポンプユニット60)の回転数Nexpが上昇(特に急上昇)する場合であり、例えば前記車両の運転者によってアクセルペダルが所定量以上踏み込まれた場合や車両のシフトダウン操作がなされた場合が該当する。このようにしても、電磁クラッチ31をOFFすることによって却ってエンジン10の負荷が増加してしまうことやランキンサイクル2Aの運転機会が減少してしまうことが抑制される。
【0049】
さらに、これらを適宜組み合わせて適用することもできる。例えば、(1)前記トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が閾値TH1(係数K=1.0)以上となった場合、(2)前記トルクTexpの積算値の絶対値│Σ(Texp)│が前記閾値TH1(0.5<係数K<1.0)以上であり、かつ、前記トルクTexpが減少傾向にある場合、又は、(3)前記トルクTexpの積算値が負であり、かつ、エンジン10の回転数が所定量以上増加した場合に電磁クラッチ31をOFFするように構成することができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態による排熱回収装置1Bの概略構成を示している。
第1実施形態による排熱回収装置1Aでは、ランキンサイクルの構成要素である膨張機23とポンプ25とが共通の回転軸26によって一体に連結された「ポンプ一体型膨張機27」として構成されている。これに対し、第2実施形態による排熱回収装置1Bでは、膨張機(スクロール型膨張機)23とポンプ(機械式ポンプ)25とが別々に設けられている。なお、第1実施形態(図1)と同一の要素については同一の符号を付しており、その機能も同様であるものとする。
【0051】
図5に示すように、第2実施形態による排熱回収装置1Bは、膨張機23とポンプ25とが別体で構成されたランキンサイクル2Bと、動力伝達機構3Bと、制御ユニット4Bと、を含む。ランキンサイクル2Bの基本的な構成は、前記第1実施形態におけるランキンサイクル2Aと同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
動力伝達機構3Bは、エンジン10のクランクシャフト10aに取り付けられたクランクプーリ33と、膨張機クラッチ35と、膨張機クラッチ35を介して膨張機23の出力軸23aに取り付けられた膨張機プーリ36と、ポンプクラッチ37と、ポンプクラッチ37を介してポンプ25の駆動軸25aに取り付けられたポンププーリ38と、クランクプーリ33、膨張機プーリ36及びポンププーリ38に巻回されたベルト39と、を有する。
【0053】
制御ユニット4Bには、ランキンサイクル2Bの高圧側圧力PHを検出する第1圧力センサ101、ランキンサイクル2Bの低圧側圧力PLを検出する第2圧力センサ102、膨張機23の回転数Nexを検出する第1回転センサ104及びポンプ25の回転数Npを検出する第2回転センサ105などの各種センサの検出信号が入力される。そして、制御ユニット4Bは、入力された各種センサの検出信号や前記エンジン制御装置からの情報に基づいて、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ36の制御(締結/非締結)を含む各種制御を実行する。
【0054】
例えば、制御ユニット4Bは、ランキンサイクル2Bの起動条件が成立すると、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をON(締結)する。具体的には、まずポンプクラッチ37をONし、その後、膨張機23が十分なトルク(例えば、ポンプ25の駆動トルク以上のトルク)を発生する状態となると膨張機クラッチ35をONする。前記起動条件は前記第1実施形態と同様である。したがって、ランキンサイクル2Bの起動時においては、ランキンサイクル2Bの主にポンプ25がエンジン10の負荷となる。
【0055】
ここで、図5に破線で示すように、膨張機23を迂回するバイパス流路28及びこのバイパス流路28を開閉するバイパス弁29が設けられている場合には、制御ユニット4Bは、バイパス弁29を開いた状態で膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をONし、その後、バイパス弁29を閉じるように、又は、バイパス弁29を開いた状態でポンプクラッチ37をONし、膨張機クラッチ35のONとほぼ同じタイミングでバイパス弁29を閉じるように、バイパス弁29、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37を制御することができる。
【0056】
また、制御ユニット4Bは、ランキンサイクル2Bの運転中に、例えばランキンサイクル2Bを停止させる必要があると判断した場合や前記エンジン制御装置からランキンサイクル2Bの停止要求を受けた場合には、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFして(非締結として)ランキンサイクル2Bを停止させる。好ましくは、先にポンプクラッチ37をOFFし、その後、膨張機クラッチ35をOFFする。
【0057】
ここで、バイパス流路28及びバイパス弁29が設けられている場合には、制御ユニット4Bは、例えば、ポンプクラッチ37をOFFした後にバイパス弁29を開き、その後に膨張機クラッチ35をOFFするように、バイパス弁29、膨張機クラッチ36及びポンプクラッチ37を制御することができる。
【0058】
さらに、制御ユニット4Bは、所定周期毎にランキンサイクル2Bの出力Tr(=膨張機23のトルクTex−ポンプ25の駆動(負荷)トルクTp)を演算し、起動完了後のランキンサイクル2Bの通常運転時に、ランキンサイクル2Bの出力(トルク)Trがゼロ又は負である状態が継続した場合に又は負である状態が継続することが予測される場合に、ONされている膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFとする。これにより、エンジン10とランキンサイクル2Bとの間の動力の伝達を遮断し、ランキンサイクル2Bを停止させる。例えば、膨張機23の上流側の冷媒過熱度が十分でない場合や凝縮器24の熱負荷が大きい場合などにおいては、膨張機23前後の圧力差が十分取れず、膨張機23のトルクTexがポンプ25の駆動トルクTp以下となる場合がある。また、急加速時などエンジン回転数が急激に増加したときに、過膨張によって膨張機23のトルクTexが負となる場合がある。このような場合にランキンサイクル2Bの出力Trがゼロ又は負となり得る。
【0059】
具体的には、第1実施形態と同様、制御ユニット4Bは、ランキンサイクル2Bの起動後の運転時にその出力が負である場合におけるランキンサイクル2Aの消費動力(又はその相関値)が、ランキンサイクル2Bの起動時における消費動力(又はその相関値)以上となった場合又はそうなることが予測される場合に、ONされている膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFとしてランキンサイクル2Bを停止させる。
なお、本実施形態において、ランキンサイクル2Bの起動時における消費動力とは、停止状態にあるランキンサイクル2Bを起動させてから(ポンプ25の駆動開始から)、ランキンサイクル2Bの出力が「正」となるまでの間にランキサイクル2B(主にポンプ25)によって消費される動力のことをいう。
【0060】
また、制御ユニット4Bは、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFした後、前記起動条件が成立すると膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37を再びONしてランキンサイクル2Bを起動させることができる。
【0061】
図6は、制御ユニット4Bが実施するクラッチ制御(膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37の制御)の内容を示すフローチャートである。このフローチャートは、ランキンサイクル2Bの起動完了後、所定時間(例えば、10ms)毎に実行される。
【0062】
図6において、ステップS11では、第1圧力センサ101及び第2圧力センサ102からランキンサイクル2Bの高圧側圧力PH及び低圧側圧力PLを取得する。
ステップS12では、第1回転センサ104及び第2回転センサ105から膨張機23の回転数Nex及びポンプ25の回転数Npを取得する。もちろん、エンジン10の回転数Ne及びプーリ比に基づいて、膨張機23の回転数Nex及びポンプ25の回転数Npをそれぞれ算出してもよい。
【0063】
ステップS13では、前記高圧側圧力PH、前記低圧側圧力PL及び膨張機23の回転数Nexに基づいて膨張機23のトルクTexを算出する。例えば、下記推定式に基づいて、膨張機23のトルクTexを算出する。
Tex=M・(PH−PL)−M・Nex−K
ここで、M、(−M)は係数、Kは定数である。
【0064】
ステップS14では、前記高圧側圧力PH、前記低圧側圧力PL及びポンプ25の回転数Npに基づいてポンプ25の駆動トルク(負荷トルク)Tpを算出する。例えば、制御ユニット4Bは、冷媒圧力差(PH−PL)、ポンプ25の回転速度Np及びポンプ25の駆動(負荷)トルクTpが対応付けられたポンプ負荷マップを有しており、前記冷媒圧力差(PH−PL)及びポンプ25の回転速度Npに基づいて、前記ポンプ負荷マップを参照することによってポンプ25の駆動トルクTpを算出する。より簡易に、ポンプ25の回転数Npのみに基づいてポンプ25の駆動トルクTpを算出してもよい。
【0065】
ステップS15では、膨張機23のトルクTexからポンプ25の駆動トルクTpを減算してランキンサイクル2Bの出力Tr(=Tex−Tp)を算出する。
ステップS16では、ランキンサイクル2Bの出力が正であるか否かを判定する。そして、ランキンサイクル2Bの出力Trが正であればステップS21に進み、ランキンサイクル2Bの出力Trがゼロ又は負であればステップS17に進む。
【0066】
ステップS17では、ランキンサイクル2Bの出力Tr(≦0)を記憶する。
ステップS18では、記憶されたランキンサイクル2Bの出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│を算出する。これにより、ステップS16においてランキンサイクル2Bの出力Trがゼロ又は負と判定されるたびに当該ゼロ又は負の出力Trが加算され、この結果、ランキンサイクル2Bの出力Trがゼロ又は負である状態が継続するほど、出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│は徐々に大きくなる(積算値Σ(Tr)は徐々に小さくなる)。このランキンサイクル2Bの出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│が、本発明の「第2相関値」に相当する。
【0067】
ステップS19では、前記出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│が閾値TH2以上であるか否かを判定する。前記出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│が閾値TH2以上であればステップS20に進み、閾値TH2未満であれば本フローを終了する。閾値TH2は、ランキンサイクル2Bに応じて予め設定されるものであり、0よりも大きく、かつ、ランキンサイクル2Bの起動時における消費動力に相当する値又はそれ以下の所定値とすることができる。例えば、ランキンサイクル2Bが起動してから(ポンプ25の駆動開始から)前記出力Trが正となるまでの間に演算される各出力Tr(=Tex−Tp=0−Tp)の積算値の絶対値、当該絶対値の1/2、又はこれらの間の所定値、換言すれば、各出力Trの積算値の絶対値に所定の係数K(0.5〜1.0)乗算した値を閾値TH2とすることができる。この閾値TH2が、本発明の「第1相関値」に相当する。第1実施形態と同様、この閾値TH2は、固定値としてもよいし、ランキンサイクル2Bを起動するたびに更新してもよい。
【0068】
ステップS20では、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37に解放信号を出力して両クラッチ35,37をOFFする(非締結とする)。これにより、エンジン10とランキンサイクル2Bとの間の動力の伝達が遮断される。ここで、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37を同時に非締結としてもよいが、好ましくは、上述したランキンサイクル2Bを停止させる場合の制御と同様に、先にポンプクラッチ37をOFFし、その後、膨張機クラッチ35をOFFする。
【0069】
ステップS21では、記憶された前記出力Tr及び算出された前記出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│をクリアする。
【0070】
これにより、本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、ランキンサイクル2Bの運転時にその出力が負であるときにランキンサイクル2Bによって消費される動力に相関する値が、ランキンサイクル2Bの起動時に必要とされる動力に相関する値以上となったときに、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFしてランキンサイクル2Bを停止させる。これにより、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFする、すなわち、ランキンサイクル2Bをエンジン10から切り離すことによって却ってエンジン10の負荷が増加してしまうことが抑制されて、エンジン10の燃費の悪化を抑制することができる。また、ランキンサイクル2Bの運転機会が大幅に減少してしまうことも抑制できる。
【0071】
ここで、前記第1実施形態と同様、ランキンサイクル2Bの出力Trの積算値の絶対値│Σ(Tr)│が、閾値TH2(係数K<1.0、好ましくはK=0.5)以上であり、かつ、前記出力Trが減少傾向にある場合に膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFするようにしてもよい。また、ランキンサイクル2Bの出力Trが負であり、かつ、前記出力Trのさらなる減少が予測される場合(エンジン10の回転数が所定量以上増加した場合等)に膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFFするようにしてもよい。さらに、これらを適宜組み合わせて適用してもよい。すなわち、ランキンサイクル2Bの運転時のその出力が負であるときにランキンサイクル2Bによって消費される動力が、ランキンサイクル2Bの起動時に必要な動力以上となることが予測されたときに、膨張機クラッチ35及びポンプクラッチ37をOFF(非締結)としてランキンサイクル2Bを停止させるようにしてもよい。
【0072】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態による排熱回収装置1Cの概略構成を示している。
前記第2実施形態による排熱回収装置1Bでは、ランキンサイクルの構成要素であるポンプ25がエンジン10によって駆動される機械式ポンプとして構成されている。これに対し、第3実施形態による排熱利用装置1Cでは、ランキンサイクルを構成するポンプが図示省略したバッテリからの電力によって駆動される電動ポンプ29として構成されている。なお、第1実施形態(図1)及び/又は第2実施形態(図5)と同一の要素については同一の符号を付しており、その機能も同様であるものとする。
【0073】
図7に示すように、第3実施形態による排熱回収装置1Cは、冷媒を循環させるポンプとして電動ポンプ29を有するランキンサイクル2Cと、動力伝達機構3Cと、制御ユニット4Cと、を含む。ランキンサイクル2Cの構成は、ポンプを除き、第2実施形態におけるランキンサイクル2Bと同じであるので、その説明を省略する。なお、電動ポンプ29の作動は、制御ユニット4Cによって制御される。
【0074】
また、動力伝達機構3Cは、エンジン10のクランクシャフト10aに取り付けられたクランクプーリ33と、膨張機クラッチ35と、膨張機クラッチ35を介して膨張機23の出力軸23aに取り付けられた膨張機プーリ36と、クランクプーリ33及び膨張機プーリ36に巻回されたベルト40と、を有する。
【0075】
制御ユニット4Cは、ランキンサイクル2Cの起動条件が成立すると、まず前記バッテリから電動ポンプ29に電力を供給して電動ポンプ29を作動させ、その後、膨張機23が所定のトルクを発生する状態となると膨張機クラッチ35をONする。前記起動条件については、前記第1、第2実施形態と同様である。
電動ポンプ29は、前記バッテリからの電力によって駆動されるものの、その際に消費した電力分をエンジン10によって(再)充電する必要がある。このため、ランキンサイクル2Cの起動時において、ランキンサイクル2C(主に電動ポンプ29)は結果的にエンジン10の負荷となる。なお、「膨張機23が十分なトルクを発生する状態」とは、例えば、電動ポンプ29によって消費されるバッテリ電力分を充電するためのエンジン10の負荷に相当するトルク(以下単に「負荷相当トルク」という)を膨張機23が発生する状態であり、この状態が、ランキンサイクル2Cの出力が「正」となる状態である。
【0076】
また、起動完了後のランキンサイクル2Cの通常運転時に、例えば、膨張機23の上流側の冷媒過熱度が十分でない場合や凝縮器24の熱負荷が大きい場合などにおいては、膨張機23前後の圧力差が十分取れない。このような場合、膨張機23は、前記負荷相当トルクを発生することができず、すなわち、電動ポンプ29に電力消費分を前記バッテリ等に充電するためのエンジン10の負荷をアシストできず、エンジン10にとっては電動ポンプ29を含めたランキンサイクル2Cが負荷となる。すなわち、ランキンサイクル2Cの出力が「負」となる。
【0077】
したがって、本実施形態において、制御ユニット4Cは、所定周期毎にランキンサイクル2Cの出力Tr(=膨張機23のトルクTex−前記負荷相当トルク)を演算し、起動完了後のランキンサイクル2Cの通常運転時に、ランキンサイクル2Cの出力(トルク)がゼロ又は負である状態が継続した場合に又は負である状態が継続することが予測される場合に、ONされている膨張機クラッチ35をOFFとする。
【0078】
具体的には、制御ユニット4Cは、第1、第2実施形態と同様、ランキンサイクル2Cの運転時にその出力が負である場合におけるランキンサイクル2Cの消費動力(又はその相関値)が、ランキンサイクル2Cの起動時の消費動力(又はその相関値)以上となった場合又はそうなることが予測される場合に、ONされている膨張機クラッチ35をOFFとしてランキンサイクル2Cを停止させる。
なお、本実施形態において、ランキンサイクル2Cの起動時における消費動力とは、停止状態にあるランキンサイクル2Cを起動させてから(電動ポンプ29の駆動開始から)、ランキンサイクル2Cの出力Trが「正」となるまでの間にランキンサイクル2C(主に電動ポンプ29)によって消費される動力のことをいう。
【0079】
また、本実施形態において、制御ユニット4Cは、第2実施形態における、ポンプ25の回転数Npを電動ポンプ29の回転数と読み替え、ポンプの駆動トルクTpを前記負荷相当トルクと読み替え、閾値TH2を閾値TH3と読み替え、「ポンプクラッチ37をOFFする」を「電動ポンプ29を停止する」と読み替えて、クラッチ制御(図6参照)を実施することができる。
この場合において、前記負荷相当トルクは、例えば次のようにして算出することができる。すなわち、電動ポンプ29の回転数と前記負荷相当トルクとが対応付けられた負荷相当トルクマップを予め設定しておき、電動ポンプ29の回転数に基づいて前記負荷相当トルクマップを参照することよって前記負荷相当トルクを算出する。また、閾値TH3については、ランキンサイクル2Cが起動してから(電動ポンプ29の駆動開始から)、ランキンサイクル2Cの出力Trが正となるまでの間における各出力Tr(=0−負荷相当トルク)の積算値、当該絶対値の1/2、又はこれらの間の所定値、換言すれば、各出力Trの積算値の絶対値に所定の係数K(0.5〜1.0)乗算した値を閾値TH3とすることができる。その他については、基本的に第2実施形態と同様である。
【0080】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
1A,1B,1C…排熱回収装置、2A,2B,2C…ランキンサイクル、3A,3B,3C…動力伝達機構、4A,4B,4C…制御ユニット、10…エンジン、21…冷媒循環路、22…過熱器、23…膨張機、24…凝縮器、25…ポンプ(機械式ポンプ)、27…ポンプ一体型膨張機、29…電動ポンプ、31…電磁クラッチ、35…膨張機クラッチ、37…ポンプクラッチ、50…膨張ユニット(膨張機)、51…固定スクロール、52…可動スクロール、54…自転阻止機構、60…ポンプユニット(機械式ポンプ)、101,102…圧力センサ、103,104,105…回転センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7