(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信ユニットは、前記エコー信号からDCハーモニック信号成分を除去することで、前記ガイド波信号を抽出することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
前記送信ユニットは、前記第1の送信と前記第2の送信との間で、送信中心周波数、送信周波数帯域、送信波形のうちの少なくともいずれかを変更することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
前記画像生成ユニットは、前記ガイド波信号を含む領域において、当該ガイド波信号と前記穿刺針の先端からの散乱信号とを重畳された前記第1の画像を生成することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波診断装置について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図を示している。
【0013】
本超音波診断装置11は、超音波プローブ12、表示ユニット13、入力ユニット15、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット25、信号処理ユニット27、制御プロセッサ(CPU)28、画像生成ユニット29、画像メモリ33、画像合成ユニット35、内部記憶ユニット37を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0014】
超音波プローブ12は、送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0015】
なお、本超音波装置が具備する超音波プローブ12は、超音波振動子が一次元に配列された一次元アレイプローブ、或いは超音波振動子が二次元マトリックス状に配列された二次元アレイプローブのいずれであってもよい。
【0016】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0017】
表示ユニット13は、画像合成ユニット35からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(Bモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、これらの組み合わせを画像として表示する。
【0018】
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0019】
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ28の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信波形、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信周波数、送信波形については、後述するガイド波信号の映像化において、ガイド波信号の周波数に適宜切り替えられる。
【0020】
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、送受信ユニット21は、後述するガイド波信号の映像化において、ガイド波信号の周波数に適宜切り替えられる。
【0021】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、スキャンコンバータ25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0022】
ドプラ処理ユニット25は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0023】
信号処理ユニット27は、後述するガイド波信号の映像化において、超音波送受信によって得られたエコー信号からのガイド波信号の抽出、DCハーモニック信号の除去等の種々の信号処理を実行する。
【0024】
画像生成ユニット29は、信号処理ユニット27からの信号に基づいて、ガイド波表示用画像、組織画像等の超音波画像を生成する。また、画像生成ユニット25は、後述するガイド波信号の映像化において、ガイド波表示用画像と組織画像とを用いた差分処理、平滑化処理、エッジ強調、三次元画像再構成等の各種処理を実行する。なお、当該画像生成ユニット29に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0025】
制御プロセッサ31は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ28は、内部記憶部29からガイド波信号の映像化機能を実現するための専用プログラム、所定の画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0026】
画像メモリ(シネメモリ)33は、例えばフリーズする直前の複数フレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。この画像メモリ33に記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0027】
画像合成ユニット35は、画像生成ユニット29又から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号として表示ユニット13に出力する。また、画像合成ユニット35は、後述するガイド波信号の映像化において、位置センサによって算出されたガイド波信号の発生位置(三次元座標)に基づいて、ガイド波の軌跡(穿刺針の先端位置の軌跡)を超音波画像上に重畳させて表示する。
【0028】
内部記憶ユニット37は、所定のスキャンシーケンス、後述するガイド波信号の映像化機能を実現するための専用プログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶ユニット37中のデータは、図示していないインターフェースユニットを経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0029】
(ガイド波信号映像化機能)
次に、本超音波診断装置1が有するガイド波信号映像化機能について説明する。本機能は、穿刺針を超音波撮像によってモニタリングする際に、超音波走査によって得られたエコー信号に含まれるガイド波信号を積極的に映像化することで、穿刺針の視認性を向上させるものである。ここで、ガイド波とは、例えば配管の非破壊検査等に用いられている波であり、特殊な伝播形態の超音波である。ガイド波は、共振振動によって発生し、配管や穿刺針のような細長い物体であれば、その長手方向に伝播する。また、配管であれば欠損部、穿刺針であれば針の先端など、音響インピーダンスの境界で反射する。配管検査であれば、この反射エコーを受信することによって、欠損の有無がわかり、ガイド波の音速から距離を計算すれば欠損位置が分かる。
【0030】
なお、ガイド波信号に示すように線状に描出される(例えば、
図3(b)等参照)。この理由は、例えば文献”Imaging Artifacts of Medical Instruments in Ultrasound-Guided Interventions” , J Ultrasound Med. 2007 Oct;26(10):1303-22.に詳しい。端的には、ガイド波は、上記文献の
図6に示された伝播経路を通る。このガイド波信号を通常Bモード映像系でそのまま画像化すると、送信されてから上記の伝播経路を通って受信されるまでの経過時間を距離に換算して画像化するため、針の下側に描出される。これがビーム毎に起こるため、線状になって描出されることになる。
【0031】
図2は、第1の実施形態に係るガイド波信号映像化機能に従う処理(ガイド波信号映像化処理)の流れを示したフローチャートである。同図に従って、本実施形態に係るガイド波信号映像化処理について説明する。
【0032】
まず、操作パネル15を介してガイド波信号映像化機能の選択、当該患者情報、撮像条件が入力される(ステップS1)。このとき、通常のBモード撮像とは異なり、ガイド波周波数が受信中心周波数として設定される。この受信中心周波数の設定は、典型的には、内部記憶ユニット37に予め記憶されたテーブルに基づいて、使用される穿刺針の太さ、穿刺角度、材質等に基づいて自動的に設定されるか、操作パネル15からの入力操作に応答して実行される。
【0033】
制御プロセッサ31は、設定された受信中心周波数等を用いて、Bモードによる超音波送受信を実行する(ステップS2)。これにより、ガイド波周波数を受信周波数として受信された超音波に基づくエコー信号が取得される。信号処理ユニット27は、取得されたエコー信号を用いて、ガイド波信号を抽出する処理(例えば、フィルタ処理)を実行する(ステップS3)。画像生成ユニット29は、抽出されたガイド波信号を用いて、ガイド波表示用画像を生成する(ステップS4)。生成されたガイド波表示用画像は、単独で、通常のBモード画像と交互に或いは同時に(並列的に)、又は通常のBモード画像と重畳させて表示ユニット13に表示される(ステップS5a)。
【0034】
以上述べたステップS1〜S5の各処理は、リアルタイムで繰り返し実行される。これにより、穿刺針の現在の位置は、動画としてリアルタイムで表示ユニット13に表示されることになる。
【0035】
(実施例)
図3(a)〜(c)は、本ガイド波信号映像化機能を説明するための超音波画像を示している。
図3(a)〜(c)の3つの超音波画像は、すべて同じ対象部位(鶏肉)の画像であり、
図3(a)は、通常のBモードの受信設定で取得したエコー信号を用いて生成した超音波画像を、
図3(b)は、本ガイド波信号映像化機能を用いて取得したエコー信号を用いて生成した超音波画像を、
図3(c)は、
図3(b)に示した画像に複数の関心領域を置いた超音波画像を、それぞれ示している。各図において、穿刺針の先端位置は、矢印で示してある。
【0036】
図3(a)に示す様に、診断に用いる(高周波の)通常のBモードにおいては、穿刺針の先端は、非常に小さな点として描出される。一方、ガイド波信号映像化機能を用いて取得されたガイド波表示用画像は、
図3(b)、
図3(c)に示す様に、穿刺針の先端に対応するガイド波信号は、線状に描出されている。
【0037】
図4は、
図3(c)に示した複数の関心領域内の受信信号の周波数スペクトラムである。
図4中のAに対応する周波数スペクトラムは、
図3(c)のAに対応する関心領域内の受信信号の周波数スペクトラムであり、通常の映像化に用いる周波数よりもかなり低い周波数帯に大きな信号がある。これは、ガイド波信号に対応するものである。また、
図4中のBに対応する周波数スペクトラムは、
図3(c)のBに対応する関心領域内の受信信号の周波数スペクトラムであり、針の先端からの反射信号を含むものとなっている。
【0038】
さらに、
図3(a)と
図3(b)、
図3(c)を比較すると、針の先端からの信号のみによって穿刺針を映像化した
図3(a)に比して、
図3(b)、
図3(c)では、より大きな信号強度であるガイド波信号をも用いて穿刺針を映像化されているのがわかる。本実施例における両者の信号強度の差は、
図4に示した2つの周波数スペクトラムA,Bの最大値の差から、10dB以上と算出される。
【0039】
(変形例)
ガイド波表示用画像と通常のBモード画像とを重畳表示する場合、通常Bモード画像とガイド波表示用画像のカラーマップを独立に変更可能としてもよい。また、ガイド波表示用画像と通常のBモード画像との重畳画像と、通常のBモード画像とを並列表示することも可能である。ガイド波表示用画像のゲイン、ダイナミックレンジ(DR)も通常Bモード画像と独立に設定することができる。超音波診断装置の操作者は、操作パネル15のボタンやつまみ等により、重畳表示のON/OFF、並列表示のON/OFF、カラーマップの変更、ゲインやDRの変更等ができる。
【0040】
(効果)
以上述べた構成によれば、通常のBモードによる超音波モニタリングにおいて、受信中心周波数をガイド波信号周波数に設定してエコー信号を取得し、当該エコー信号からガイド波信号を抽出し、これを用いてガイド波表示用画像を生成することで、穿刺針の現在の位置を、明瞭且つ容易に映像化することができる。その結果、穿刺作業の正確性、効率を飛躍的に向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態の構成によれば、穿刺針自体に送受信器を付けなくても、針の先端を明瞭に映像化することができる。このため、送受信器を備えていない通常の穿刺針を用いることができ、費用削減に寄与することができる。また、ガイド波専用の送受信回路が不要であるため、例えば従来の超音波診断装置のバージョンアップ等により、簡単に実現することが可能である。さらには、ガイド波の音速を考慮した位置算出が不要であるため、位置算出精度不足による位置ずれの不安も全くない。
【0042】
(第2の実施形態)
受信設定(典型的には、受信中心周波数)の異なる2種類の画像間では、ガイド波信号の強度に大きな差が生じるため、例えば異なる受信設定によって得られた超音波画像を差分することで、ガイド波信号を抽出できる。本実施形態では、この点に着目し、ガイド波信号検出用の受信設定により作成したガイド波抽出用画像と、ガイド波信号検出用の受信設定以外の設定で作成した画像(典型的には、通常のBモードで撮像された組織画像)との差分処理を行うことにより、ガイド波信号のみを抽出し、これを用いてガイド波表示用画像を生成・表示する。
【0043】
図5は、第2の実施形態に係るガイド波信号映像化処理の流れを示したフローチャートである。本実施形態に係るガイド波信号映像化処理につき、同図に従って、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
【0044】
まず、
図2に示したステップS1〜ステップS3と同様の処理が実行され、エコー信号からガイド波信号が抽出される(ステップS1〜S3)。次に、画像生成ユニット29は、抽出されたガイド波信号を用いて、ガイド波抽出画像を生成する(ステップS4)、また、画像生成ユニット29は、ガイド波周波数とは異なる周波数を受信中心周波数として得られたエコー信号を用いて、組織画像を生成する(ステップS5)。
【0045】
画像生成ユニット29は、生成されたガイド波抽出画像と組織画像とを用いて差分処理を実行し、ガイド波信号による映像領域を抽出することで、ガイド波表示用画像を生成する(ステップS6)。生成されたガイド波表示用画像は、所定の形態にて、表示ユニット13に表示される。
【0046】
図6(a)はステップS4において生成されたガイド波抽出画像を、
図6(b)はステップS5bにおいて生成された組織画像を、
図6(c)はステップS6の差分処理によって生成されたガイド波表示用画像を、それぞれ示している。ガイド波表示用画像にはガイド波信号が大きく残り、周囲の組織信号はかなり消されている。なお、ガイド波表示用画像上の矩形は、ガイド波表示用画像において最大値を検出し、最大値の座標を中心にガイド波信号を含む領域として算出され描画されたものである。このように、最大値検出等の処理を行うことで、ガイド波信号を含む領域を限定することも可能である。
【0047】
(変形例1)
上記説明では、受信中心周波数の異なる2種類の画像を用いて差分処理を実行し、ガイド波表示用画像を生成した。しかしながら、二つの画像間でガイド波信号の強度に大きな差を生じさせる手法は、受信中心周波数の制御のみに限定されない。例えば、送信設定(例えば送信波形、送信中心周波数等)が異なる二種類の送信を行うようにしてもよい。さらに、送信設定、受信設定の両方を制御して、ガイド波信号の強度に差を発生させるようにしてもよい。送信設定を制御する場合には、通常Bモード用の送信と、ガイド波信号検出用の送信を時分割シーケンス等で行うことが望ましい。
【0048】
(変形例2)
ガイド波は、穿刺針と超音波との共振によって発生する。このため、針の太さや穿刺角度、材質によって送受信条件を制御するようにしてもよい。係る制御は、穿刺針の特性と送受信条件とを対応づけたテーブルを予め内部記憶ユニット37に記憶しておき、例えばガイド波信号映像化機能の選択操作をトリガとして、自動的に実行するようにしてもよい。また、受信した超音波信号の周波数解析などを行い、ガイド波信号が最も大きくなるように送受信設定を逐次変えるようにしてもよい。
【0049】
(変形例3)
図5のステップS6に示したガイド波信号による映像領域の抽出処理は、差分処理に拘泥されない。例えば、除算や相関等、2つの信号の違いを反映する処理であれば何でもよい。また、抽出処理を行うのは画像同士に限定されず、例えばIQ信号でもよい。
【0050】
(変形例4)
ステップS7においてガイド波表示用画像を表示する手法は、第1の実施形態で示した手法に拘泥されない。例えば、ガイド波信号を、時間方向に最大値保持(maxhold)することで、ガイド波信号の軌跡を描出することができる。すなわち、穿刺針を刺し進める場合、画像上のガイド波信号の位置が動く。このため、ガイド波信号を時間方向に最大値保持することで、その軌跡を線状に描出することができ、針の先端の視認性を飛躍的に向上させることができる。
【0051】
また、最大値保持に加え、現在時間から時間的に遠いほど弱く表示することもできる。さらに、輝度値に時間の係数を掛けたり、透過度を制御するようにしてもよい。これにより、針の先端の動きに伴って描出される軌跡を、残像のように表示することができ、針の先端及びその軌跡を、周囲の組織の視認性を極力保ったまま視認できる。なお、このような軌跡表示は、操作者が操作パネル15においてON/OFFできることが好ましい。
【0052】
(効果)
以上述べた構成によれば、第1の実施形態の効果に加えて、例えば高分解能のB画像で腫瘍等のターゲットを視認しながら、ガイド波信号で針の先端位置や軌跡を容易に視認することができる。その結果、穿刺作業の正確性、効率を飛躍的に向上させることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
本実施形態は、第2の実施形態において算出したガイド波信号を含む領域内に、別の受信設定で作成した画像を重畳表示することで、穿刺針の先端の視認性をより向上させるものである。
【0054】
例えば、針の先端からの散乱信号強度が大きい、送信波形の中心周波数付近の周波数帯域の信号を受信するように、ステップS1において受信条件を設定する。これにより、ガイド波信号を含む領域内に、針の先端を示す信号が比較的大きな点として描出することができる。針の先端は先に行くほど細くなっており、超音波の波長に対して十分小さい場合は散乱体とみなすことができ、針の先端で超音波が散乱して超音波診断装置で受信される。波長が大きいほど、散乱体とみなせる領域が増えるため、散乱信号が大きくなる。この特性を生かし、送信波形の周波数成分において、出来るだけ周波数が低く、かつ十分な強度のある周波数帯域を受信条件として設定する。係る設定にて得られた超音波画像を、ガイド波信号を含む領域内に重畳表示することで、針の先端からの散乱信号をより明示的に表示することができる。
【0055】
なお、上述した受信設定において得られるエコー信号は、穿刺針の散乱信号だけでなく、組織からの反射・散乱信号も含まれる。このため、本実施形態の如く、ガイド波信号を含む領域内といった具合に重畳領域を限定しないと、どの信号が針の先端からの信号なのかを判別するのが困難になる場合がある。
【0056】
(第4の実施形態)
本実施形態は、位置センサを利用して特定されたガイド波の三次元座標を用いて、穿刺針の先端位置を常に超音波画像上に表示可能とするものである。
【0057】
すなわち、制御プロセッサ31は、ステップS3において抽出されたガイド波信号の三次元座標を、例えば超音波プローブ12の三次元位置を算出する位置センサと、超音波走査領域内のガイド波信号の三次元位置とに基づいて算出する。画像合成ユニット35は、算出された三次元座標に基づいて、断面としての超音波画像に対する穿刺針の先端位置をマーカ等によって強調表示する。表示ユニット13は、穿刺針の先端位置及び組織画像等を、所定の形態にて表示する。また、既述の手法により、穿刺針の先端位置を軌跡として表示するようにしてもよい。
【0058】
一般に、針の先端は非常に小さく、かつ超音波画像は断面像であるがゆえ、穿刺中に針の先端を常に超音波断面上に表示し続けるのは困難である。このため、穿刺術の超音波モニタリングにおいても、「針の先端を見失う」ことは非常によくあることである。しかしながら、断層としての超音波画像に加え、当該3次元空間上にガイド波の軌跡を表示することで、断面と針の先端の位置関係を視認することができ、軌跡が表示されている位置の断面を表示するようにプローブを動かすことができる。よって、穿刺中に針の先端が超音波断面から外れた場合でも直ちに針の先端を含む断面を表示させることができる。その結果、操作者の負担を軽減し、穿刺作業の正確性、効率を上げることが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0060】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0061】
(2)例えば、ステップS3の信号処理において、
図7に示す様にDCハーモニック成分の除去を行う様にしてもよい。係る処理により、ガイド波信号のS/N比をより向上させることが可能となる。
【0062】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。