(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207959
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ディビジョンバーのシール構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/265 20160101AFI20170925BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20170925BHJP
B60J 10/78 20160101ALI20170925BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B60J10/265
B60J10/76
B60J10/78
B60J5/04 M
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-210251(P2013-210251)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-74279(P2015-74279A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】来須 修司
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−276686(JP,A)
【文献】
実開平06−032217(JP,U)
【文献】
実開平02−017420(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00 − 10/90
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドア1、2の窓開口部3、4を仕切って分割するディビジョンバー29、35のシール構造であって、ディビジョンバー29、35が、一側に窓ガラス7、8の側縁が昇降可能に嵌挿されるグラスラン31、36を備えると共に、他側にグラスラン31、36とは逆向きに開口し、固定ガラス9、10の側縁が取付けられる凹部34、37を備え、前記ディビジョンバー一側のグラスラン31、36がディビジョンバー上端のグラスランの型成形部26に一体に形成され、前記型成形部26のディビジョンバー29との境目からルーフ側のグラスラン25が装着されるサッシュ又はドアフレームの間には、これらを跨るよう設けられた意匠部26Pを備え、
前記ルーフ側のグラスラン25は、そのほぼ全体が柔軟性のあるスポンジ体で成形され、
前記意匠部26Pは、前記型成形部26のディビジョンバー29との境目からサッシュ又はフレームの間に、この間を跨ってディビジョンバー29よりも車外側へ突出してエンドキャップがあるかのような形態をなしており、
ディビジョンバーを構成するグラスラン31、36がEPDM、熱可塑性エラストマー等のゴム様弾性体よりなって、車内側側壁31aと車外側側壁31bと、両側壁を連結する底壁31c、36cと、車内側及び車外側の側壁端よりそれぞれ内向きに延出し、窓ガラスの側縁に弾接するシールリップ31d、31e、36d、36eより構成され、シールリップを除く両側壁31a、31bと底壁31c、36cが硬質材で、シールリップが軟質材で形成されること
を特徴とするディビジョンバーのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの窓開口部を仕切って分割するディビジョンバーのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には例えば
図1に示す車両のように、ドア1、2の窓開口部3、4をそれぞれディビジョンバー5、6で仕切って二分割し、分割された窓開口部の一方の側に窓ガラス7、8を昇降可能に取付けると共に、他方の側に固定ガラス9、10を取付けたものが知られる。
【0003】
図2は、
図1に示す車両のリヤドア2におけるディビジョンバーの従来構造の一例を示すもので、ディビジョンバー12は鋼板製で、断面が略H状に形成され、その一側の凹部にグラスラン13が取付けられ、窓ガラス7、8の側縁が昇降可能に嵌挿されると共に、他側の凹部14に固定ガラスの側縁に取付けられる図示しないガラスシールが装着されている。
【0004】
ディビジョンバーは、上端部に固定される
図3に示すような倒L字形をなすブラケット15で図示しないサッシュ又はドアフレームにネジ止めされるようになっており、ディビジョンバー16の上端にはエンドキャップ17を取付け、該エンドキャップ17により図示しないサッシュ又はドアフレームとディビジョンバー上端との隙間を塞いでシールし、外観品質の向上を図っている。特許文献1に開示される既知のエンドキャップは、
図2の一点鎖線で示すように断面コ字形の脚17を有して、該脚17がディビジョンバー一側の凹部に嵌着され、その後にグラスラン13が取付けられるものであるが、エンドキャップ下端を外れた箇所では、グラスラン外側とディビジョンバー12との間に隙間δが発生し、これによりシール性が損なわれる、といった問題があった。
【0005】
上記の問題を解決するため、特許文献1に
図4及び
図5に示すように、ディビジョンバー上端に位置するグラスラン18のコーナの型成形部18aにディビジョンバー19の上端部を覆うシールリップ20を一体形成し、該シールリップ20をルーフ側のサッシュ21の下縁とディビジョンバー上端との間に介在させて、これらの間をシールする構造のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−224810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4及び
図5に示されるディビジョンバー上端のシール構造では、ルーフ側のグラスラン18が長さのバラ付きにより短くなったり、或いは窓ガラスの昇降により車両の前方へ引きずられることにより、
図6に示すようにディビジョンバー上部でグラスラン18及び該グラスラン18と一体化されているシールリップ20がディビジョンバー
19より側方にずれてはみ出し、シール性や外観性が損なわれるおそれがあるうえ、
図5に示すようにディビジョンバー上端にグラスラン18の型成形部をシールリップ20がディビジョンバー上端部に被さるようにして組付ける際、組付けにくい、という問題を有している。
【0008】
本発明は、ルーフ側のグラスランが長さのバラ付きにより短くなり、或いは窓ガラスの昇降により車両の前方へ引きづられるようなことがあってもディビジョンバーよりずれてはみ出し、これによりシール性が損われたり、外観が悪化することのないディビジョンバーのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両用ドアの窓開口部を仕切って分割するディビジョンバーのシール構造であって、ディビジョンバーが、一側に窓ガラスの側縁が昇降可能に嵌挿されるグラスランを備えると共に、他側にグラスランとは逆向きに開口し、固定ガラスの側縁が取付けられる凹部を備え、前記ディビジョンバーのグラスランがディビジョンバー上端のグラスランの型成形部に一体に形成され、前記型成形部のディビジョンバーとの境目からルーフ側のグラスランが装着されるサッシュ又はドアフレームの間には、これらを跨るよう設けられた意匠部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、ディビジョンバーの上端にエンドキャップを被せてサッシュ又はドアフレームとディビジョンバー上端との隙間を塞ぐ必要がない。またディビジョンバー上端部のグラスランの型成形部とディビジョンバーのグラスランを一体形成することにより、グラスランの型成形部とディビジョンバーの組付けが不要となり、しかもルーフ側のグラスランに寸法上のバラ付きにより短くなったり、ガラスの昇降によりサッシュ又はドアフレーム沿いに動こうとしてもグラスランはディビジョンバーと一体をなすため、グラスランがディビジョンバーより側方にずれてはみ出すことはなく、シール性及び外観性が損われることがない。
またシールリップを軟質材で形成することにより、窓ガラスへのシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】窓開口部を分割するディビジョンバーを備えた車両の側面図。
【
図2】
図1のa部におけるディビジョンバーの従来構造を示す断面図。
【
図3】
図1のa部におけるディビジョンバーの上端にエンドキャップとブラケットを取付けたディビジョンバーとルーフ側グラスランの要部を示す正面図。
【
図5】
図4に示すグラスランにディビジョンバーを組付けた断面図。
【
図6】
図1のa部におけるルーフ側のグラスランの長さが短くなった場合のディビジョンバーとの組付状態を示す要部の正面図。
【
図7】ディビジョンバーを組み込んだリヤドア側のグラスランの全体の概略構造を示す正面図。
【
図10】
図7のb部におけるコーナ部における詳細図。
【
図11】ディビジョンバーの別の実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態のディビジョンバーのシール構造について図面により説明する。
【0015】
図7は、例えば
図1に示すような車両のリヤドア2における窓開口部4のうち、窓ガラス8の開口部を形成するルーフ側のサッシュ又はドアフレームに装着されるグラスラン25と、該グラスラン25と型成形部26を介して連結されるグラスランを備えたディビジョンバー29の概略構造を示すもので、各グラスランは型成形部26を含め、EPDM、熱可塑性エラストマー等のゴム様弾性体で成形されている。
【0016】
図8は、
図7のA−A線断面で示すルーフ側のグラスラン25を示すもので、このグラスラン25自体は、本発明の特徴部分ではないため、詳細な説明は省略するが、多くのグラスランとは底壁25aが中空状であり、そのほぼ全体が柔軟性のあるスポンジ体で成形される点で異なっているのみで、他の構造は従来のグラスランと変わりがない。
【0017】
図9は、
図7のB−B線断面で示すディビジョンバー29を示すもので、該ディビジョンバー29は
図9の一側においてグラスラン31を備え、該グラスラン31は車内側側壁31aと、車外側側壁31bと、両側壁31a、31bを連結する底壁31cと、車内側側壁端及び車外側側壁端よりそれぞれ内向きに底壁31cに向かって延出するシールリップ31d、31eと、前記両側壁31a、31bと底壁31cにインサートされるコ形断面の芯金32よりなり、該芯金32は図示していないが、端部が
図7に示す型成形部26の付近にてサッシュ又はフレームにネジ止めするための金属製などによる硬質のブラケット33をリベットやネジにて取付けるか、或いは該芯金32の一部を露出して溶接にて固着されている。(
図10参照)。
【0018】
グラスラン29は前述するようにゴム様弾性体で形成されるが、シールリップ29d、29eと、それ以外の部分で硬度を異にしている。すなわちシールリップ31d、31eを除く側壁31a、31b及び底壁31cが比較的硬度の高い硬質材で形成される一方、シールリップ31d、31eは
図1に示す窓ガラス8とのシール性が高められるように、硬度が比較的低い軟質材で形成されている。
【0019】
ディビジョンバー29の他側は、グラスラン31の底壁31cと、該底壁31cより側壁31a、31bの延長上にそれぞれ側壁31a、31bと逆向きに突出形成される突片31f、31gによって、前記グラスラン31とは逆向きに開口する凹部34を構成し、該凹部内に前記固定ガラス10の側縁が常法のようにシール材、例えばガラスシールで包まれて嵌着され固定されている。
【0020】
ディビジョンバー29とルーフ側のグラスラン25は、
図10に示されるように型成形部26により連結されているが、この型成形部26には、型成形部26のディビジョンバー29との境目からサッシュ又はフレームの間に、この間を跨ってディビジョンバー29よりも車外側へ突出し、エンドキャップがあるかのような形態をした意匠部26Pを備えている。
【0021】
このように従来であれば、別体のエンドキャップを挿入してディビジョンバーとサッシュ又はフレームの間の意匠性を高めていたが、ルーフ側とピラー側のグラスランを連続して一体化するコーナ部にエンドキャップに相当した意匠部26Pを備えているため、コーナ部を成型し、グラスランを組付けるだけでよく、別体のエンドキャップを準備する必要もないし、エンドキャップ単体を挿入する必要もない。また、このエンドキャップの機能を備えた意匠部26Pはグラスラン25を一体化して備えるディビジョンバー29とも一体化され、しかもビジョンバー29がサッシュ又はフレームにブラケット33によって強固に固着されていることから、グラスランのズレやエンドキャップのズレが発生することはなく、意匠性を損なうことがないし、ディビジョンバーの上端にエンドキャップを被せてサッシュ又はドアフレームとディビジョンバー上端との隙間を塞ぐ必要もない。
【0022】
ここで、意匠部26Pはディビジョンバー29よりも車外側へ突出している必要はなく、ディビジョンバー29と面一であってもディビジョンバー29より車内側へ窪んでいてもよく、ディビジョンバー29の上部の車両に求められる意匠性に合わせて調整される。また意匠部26Pは型成形部26の一部であるため、コーナ部と同様な弾性と剛性を備えた材質からなり、ディビジョンバー29とサッシュ又はフレームの間の隙間がばらついてもこれに柔軟に対応できる。
【0023】
図11は、ディビジョンバーの別の態様を示すもので、該ディビジョンバー35は芯金となる鋼板を折曲加工することにより形成され、車内側壁部35aと、車外側壁部35bと、両側壁部35a及び35bを中央部において連結する連結部35cよりなって断面H形状をなし、車内側壁部35aの一半と、車外側壁部35bの一半が連結部35cを含め、
図9に示すグラスラン31と同一構造のグラスラン36にインサートされて前記芯金32と同一機能を果たし、車内側壁部35aと車外側壁部35bの各他半がグラスラン36の底壁36cより突出して、これら両側壁のうち、少なくとも車外側壁部35bは、その表面が意匠面となっており、両側壁部35a及び35bは前記底壁36cと共に前記固定ガラス10の側縁部固定用の凹部37を構成している。
【0024】
前記実施形態のグラスラン31及び36は、シールリップ31d、31e、36d、36eがそれぞれ比較的硬度の低い軟材質で、シールリップを除く部分が比較的硬度の高い硬質材で形成されているが、シールリップを含むグラスラン31、36の全体を既知のグラスランと同様、同じ硬度の材質で形成してもよい。
【0025】
前述するように、車外側壁部35bの他半がグラスラン36の底壁36cより突出した芯金を意匠面とする場合であっても、該ディビジョンバー35と一体化されるグラスラン36は、その上部端末にルーフ側のグラスランと連続して一体化されるコーナ部を成型することができる。図示しない該コーナ部にも車外側壁部35bの一半であるグラスラン36の上部だけでなく、車外側壁部35bの他半の外観面となっている芯金の側面にもエンドキャップに似せた形態を作ることができる。これによれば、グラスランのズレやエンドキャップのズレが発生することはなく、意匠性を損なうことがない。従ってディビジョンバーの上端にエンドキャップを被せてサッシュ又はドアフレームとディビジョンバー上端との隙間を塞ぐ必要がない。
【0026】
前記実施形態のディビジョンバー29、35は
図1に示す車両のリヤドア2における窓開口部4を分割するディビジョンバー6に適用した例を示すものであるが、フロントドア1における窓開口部3を分割するディビジョンバー5も同様に構成することができ、また
図1に示す車両以外の窓開口部をディビジョンバーで分割する車両においても、ディビジョンバーを同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0027】
25、31、36・・グラスラン
26・・型成形部
29、35・・ディビジョンバー
32・・芯金
33・・ブラケット
34、37・・凹部