特許第6207962号(P6207962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207962
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】アレイアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20170925BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01Q23/00
   H01Q21/06
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-214465(P2013-214465)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-80016(P2015-80016A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】西方 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕貴
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−115717(JP,A)
【文献】 特開2012−109670(JP,A)
【文献】 特開2008−098890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 23/00
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部と、
前記保持部の一方の面に配置された複数のモジュールと
前記複数のモジュールに含まれる第1のモジュールおよび前記保持部の間に接続された第1の入力用給電線と、
前記第1のモジュールおよび前記保持部の間に接続された第1の出力用給電線と、
前記複数のモジュールに含まれ、かつ、前記第1のモジュールと隣り合う第2のモジュールおよび前記保持部の間に接続された第2の入力用給電線と、
前記第2のモジュールおよび前記保持部の間に接続された第2の出力用給電線と
を具備し、
前記第1モジュールおよび前記第2モジュールの間に位置する所定の線に対して、前記第1の入力用給電線および前記第2の出力用給電線は互いに線対称の位置関係にあり、かつ、前記第1の出力用給電線および前記第2の入力用給電線は互いに線対称の位置関係にある
アレイアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイアンテナ装置において、
前記複数のモジュールは、複数のグループに分割され、
前記複数のグループの各々において、
前記グループに含まれる複数のモジュールは、前記モジュール又は前記モジュールに接続される配線が発生する電磁波を互いに打ち消すように配置される
アレイアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置において、
前記複数のモジュールは、2種類のモジュールを備え、
前記2種類のモジュールは、互いに線対称又は点対称に配置される
アレイアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置において、
前記複数のモジュールのうちの行列状に配置された4個のモジュールは、前記4個のモジュールの入力用の給電線及び出力用の給電線の位置が、前記行列状の配置の中心点に対して互いに点対称の関係になるように、配置される
アレイアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のアレイアンテナ装置において、
前記複数のモジュールのうちの隣り合う二個のモジュールは、前記二個のモジュールの内部の入力用の給電線及び出力用の給電線の位置が、互いに逆の関係になるように、配置される
アレイアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナ装置が知られている。アレイアンテナ装置は、主要な構成の一つとして、複数の送受信モジュールを備えている。各送受信モジュールを同一部品・同一配線とすることで、コストの低減や補用品の確保の確実性の向上を図っている。しかし、各送受信モジュールを同一部品・同一配線とすると、動作時に、各送受信モジュールから放射される意図しない電磁波の方向が同一となると考えられる。そうなると、各送受信モジュールから放射される意図しない電磁波が重ね合わされて、意図する電磁波に重畳してしまい、スプリアスの原因となることが考えられる。
【0003】
関連する技術として、特許第4844554号公報(特許文献1)にアンテナ装置が提案されている。このアンテナ装置は、複数配置された素子アンテナと、複数個の平板形状アンテナユニットと、複数個の平板形状アンテナユニットに電源、RF信号、および制御信号を分配供給するマザーボードとを備えている。複数個の平板形状アンテナユニットを並べて直方体形状アンテナユニットを構成する。直方体形状アンテナユニットを複数個配列してアレーアンテナを形成する。図1は、このアンテナ装置の平板形状アンテナユニットを示す斜視図である。複数個の平板形状アンテナユニットは、アンプ部107と、電源部109と、給電制御部108と、冷却部110とを具備している。アンプ部107は、素子アンテナ106の各々に接続されている。電源部109は、複数個のアンプ部107に電源を供給する。給電制御部108は、複数個のアンプ部107に高周波信号と制御信号を供給し、電源部109に制御信号を供給すると共に、RF(Radio Frequency)信号の通過位相を制御する。冷却部110は、アンプ部107と電源部109からの発熱を放熱する。
【0004】
この特許文献1では、冷却部110の両側にアンプ部(送受信モジュール)107が取り付けられている。しかし、アンプ部(送受信モジュールに相当)107は冷却部110によって隔てられているので、アンプ部(送受信モジュールに相当)107が同一部品・同一配線である限りは、結局、意図しない電磁波が重ね合わされて増大し、意図する電磁波に重畳してしまうと考えられる。
【0005】
また、このような意図しない電磁波が重ね合わされて増大して意図する電磁波に重畳してしまう現象は、送受信モジュールだけでなく、他の様々なモジュールにおいても発生しうる。そのようなモジュールとしては、例えば、送信モジュール、受信モジュール、アンテナモジュール、電源モジュール、位相器モジュールのような電磁ノイズを発生させる可能性のある機器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4844554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、意図しない電磁波の影響を抑制可能なアレイアンテナ装置を提供することにある。スプリアスを抑制可能なアレイアンテナ装置を提供することにある。
【0008】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアレイアンテナ装置は、保持部と、保持部の一方の面に配置された複数のモジュールとを具備している。保持部は、複数のモジュールを保持する。複数のモジュールは、モジュール又はモジュールに接続される配線が発生する電磁波を互いに打ち消すように配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、アレイアンテナ装置では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。また、本発明により、アレイアンテナ装置では、スプリアスを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、特許文献1のアンテナ装置の平板形状アンテナユニットを示す斜視図である。
図2A図2Aは、第1の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
図2B図2Bは、第1の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の他の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、第2の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、第3の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、第4の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、第5の実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るアレイアンテナ装置について説明する。
ここでは、意図しない電磁波が重ね合わされて増大して意図する電磁波に重畳してしまう機器として、送受信モジュールを例にして説明する。しかし、本発明はその例に限定されるものではなく、他の様々なモジュール(例示:送信モジュール、受信モジュール、アンテナモジュール、電源モジュール、位相器モジュール)に対しても同様に適用可能である。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成について説明する。
図2Aは、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却配管などの構成については記載を省略している。アレイアンテナ装置1は、アレイアンテナとして機能する。アレイアンテナ装置1は、複数の送受信モジュール7(7A、7A、7B、7B)と、電源回路8と、冷却部9とを備えている。
【0014】
冷却部9は、例えば板状の形状を有し、その+z側の面において電源回路8に接している。冷却部9は、電源回路8の熱を放散し、電源回路8を−z側から冷却する。冷却部9は、内部を貫通する複数の配管を有し、それら複数の配管に冷却媒体が流通する構造に例示される(図示されず)。
【0015】
電源回路8は、例えば板状の形状を有し、その+z側の面において複数の送受信モジュール7に接している。電源回路8は、送受信モジュール7へ制御信号を供給する。また、この図の例では、電源部(図示されず)からの電力(電流)が、電源回路8を貫通して、送受信モジュール7の下側(−z側)から送受信モジュール7へ供給される。この場合、電源回路8は、複数の送受信モジュール7を保持する保持部と見ることもできる。また、電源回路8を別の箇所に設けて、複数の送受信モジュール7を保持する保持部として冷却部9を用いてもよい。
【0016】
送受信モジュール7は、例えば薄型形状又は直方体形状を有し、電源回路8上において行列状に配置されている。ただし、送受信モジュール7の形状は、上記の薄型形状だけでなく、棒型形状その他の従来知られた任意の形状を採用してもよい。
【0017】
送受信モジュール7としては、A型(送受信モジュール7A)と、A型と線対称なB型(送受信モジュール7B)の2種類を設ける。ただし、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは厳密に線対称である必要はない。少なくとも不要な意図しない電磁波が、線対称に発生すればよい。例えば、意図しない電磁波の放射の主な原因となる、電力(電流)を供給する配線(給電線)のみ線対称(例示:互いに逆向き)の配置としてもよい。言い換えると、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、線対称の配置又は点対称の配置で互いに近傍に配置されたとき、それぞれが発生する意図しない電磁波が線対称又は点対称に発生して打ち消されような形状(構造)であればよい。
【0018】
送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとを交互に対称配置する。言い換えると、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとを千鳥格子状に配置する。ただし、対称線に対して、一方の側に送受信モジュールAを配置し、他方の側に送受信モジュールBを配置しても良い。あるいは中心点に対して、点対称となるように、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとを配置してもよい。
【0019】
この図の例では、薄型形状の4個の送受信モジュール7A、7A、7B、7Bが代表として示されている。すなわち、x方向を列方向(列に沿った方向)とし、y方向を行方向(行に沿った方向)とすると、(行、列)=(1、1)=7A、(1、2)=7B、(2、1)=7B、(2、2)=7A、である。ただし、送受信モジュール7A、7Aは同一の構成を有し(以下、送受信モジュール7Aともいう)、送受信モジュール7B、7Bは同一の構成を有する(以下、送受信モジュール7Bともいう)。送受信モジュール7A、7Bは、電源回路8から制御信号を供給され、電源部(図示されず)から電源回路8を介して電力を供給される。そして、送信信号をアンテナ(図示されず)へ出力し、そのアンテナから受信信号を受信する。
【0020】
各送受信モジュール7A、7Bにおいて、矢印Iは下側(−z側)から送受信モジュール7A、7Bへ供給される電流Iを示し、矢印Iは下側(−z側)へ向かって送受信モジュール7A、7Bから送出される電流Iを示している。すなわち、送受信モジュール7A、7Bはその底面を介してこの電流I及び電流Iの供給及び送出を行う。この電流I及び電流Iにより、送受信モジュール7A、7B近傍に電流誘起の磁界が発生する。例えば、送受信モジュール7A、7Aでは、−y側の電流I(+z方向)と+y側の電流I(−z方向)とにより、両電流の間に−x方向の磁界HA1、HA2が発生する。同様に、送受信モジュール7B、7Bでは、−y側の電流I(−z方向)と+y側の電流I(+z方向)とにより、両電流の間に+x方向の磁界HB1、HB2が発生する。これらの磁界は電流変化により変動して電磁波として送受信モジュール7や電源回路8や配線(給電線)に作用する。
【0021】
このとき、送受信モジュール7A、7Bと送受信モジュール7B、7Aとの間を通る対称線C2を基準とし、各送受信モジュール7A、7B、7B、7Aの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界HA1、HB2、HB1、HA2を評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界HA1と送受信モジュール7Bの磁界HB1とは大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界HA1と磁界HB1とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。同様に、送受信モジュール7Bの磁界HB2と送受信モジュール7Aの磁界HA2とは大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界HB2と磁界HA2とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0022】
このように、互いに逆向きの磁界を発生する二つの送受信モジュール7を、対称線C2に対して、線対称の位置に配置することで、それらの磁界を打ち消して、磁界の影響を抑制することができる。したがって、この場合、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとが向かい合い、送受信モジュール7Bと送受信モジュール7Aとが向かい合っていれば、送受信モジュールが対称線C2のどちら側に配置するかは任意である。
【0023】
一方、送受信モジュール7A、7Bと送受信モジュール7B、7Aとの間を通る対称線C1を基準とし、各送受信モジュール7A、7B、7B、7Aの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界HA1、HB1、HB2、HA2を評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界HA1と送受信モジュール7Bの磁界HB2とは大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界HA1と磁界HB2とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。同様に、送受信モジュール7Bの磁界HB1と送受信モジュール7Aの磁界HA2とは大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界HB1と磁界HA2とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0024】
このように、この場合でも、互いに逆向きの磁界を発生する二つの送受信モジュール7を、対称線C1に対して、線対称の位置に配置することで、それらの磁界を打ち消して、磁界の影響を抑制することができる。したがって、この場合、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとが向かい合い、送受信モジュール7Bと送受信モジュール7Aとが向かい合っていれば、送受信モジュールが対称線C1のどちら側に配置するかは任意である。
【0025】
すなわち、いずれの考え方を取っても、送受信モジュール7A、7A、7B、7Bで発生する磁界は互いに打ち消し合うように働くので、それらの磁界の影響は小さくなると考えらえる。すなわち、このアレイアンテナ装置1では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。すなわち、それら意図しない磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0026】
特に、この図の例では、送受信モジュール7A、7A、7B、7Bが中心点C0に対して点対称に配置されているので、磁界は互いに打ち消し合い、磁界の影響は極めて小さくなると考えられ、意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することが可能となる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。
【0027】
この図の例では、4個の送受信モジュール7に関して説明している。すなわち、4個の送受信モジュール7のグループ(2個の送受信モジュール7のグループでも可)において、上述のような構成とすることで、そのグループ内で意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。したがって、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7(2個の送受信モジュール7でも可)のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁は影響を大幅に抑制することができる。
【0028】
なお、アンテナ3(と誘電体4)は、例えば、図中に破線で示すように、送受信モジュール7上に設けられていても良い。あるいは、アンテナは、例えば、図1に示すように、送受信モジュール(アンプ部)から離れて設けられていても良い。アンテナ3及び誘電体4は従来と同様であり、その詳細については省略される。
【0029】
上記図2Aの例では、電流I、Iの向きはz方向であったが、電流I、Iの向きがx方向やy方向であっても、同様の考え方で、磁界の影響を小さくすることができる。以下では、電流I、Iの向きがx方向の場合について説明する。
【0030】
図2Bは、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の他の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却配管などの構成については記載を省略している。この図では、電流I、Iの向きがx方向である点で、図2Aの場合と相違している。以下、相違点について主に説明する。
【0031】
各送受信モジュール7A、7Bにおいて、電源部(図示されず)からの電力、すなわち電流Iは右側(+x側)から送受信モジュール7A、7Bへ供給され、電流Iは左側(−x側)へ向かって送受信モジュール7A、7Bから送出される。すなわち、送受信モジュール7A、7Bはその右側(+x側)側面を介してこの電流I及び電流Iの供給及び送出を行う。この電流I及び電流Iにより、送受信モジュール7近傍に電流誘起の磁界が発生する。例えば、送受信モジュール7A、7Aでは、−y側の電流I(−x方向)と+y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に−z方向の磁界HA1、HA2が発生する。同様に、送受信モジュール7B、7Bでは、−y側の電流I(+x方向)と−y側の電流I(−x方向)とにより、両電流の間に+z方向の磁界HB1、HB2が発生する。これらの磁界は電流変化により変動して電磁波として送受信モジュール7や電源回路8や配線(給電線)に作用する。
【0032】
このとき、図2Aの場合と同様に、対称線C2を基準とすると、磁界HA1と磁界HB1とは互いに打ち消し合い、磁界HB2と磁界HA2とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。また、対称線C1を基準とすると、磁界HA1と磁界HB2とは互いに打ち消し合い、磁界HB1と磁界HA2とは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。よって、いずれの考え方を取っても、送受信モジュール7A、7A、7B、7Bで発生する磁界は互いに打ち消し合うように働くので、それらの磁界の影響は小さくなると考えらえる。すなわち、このアレイアンテナ装置1では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0033】
特に、この図の例でも、送受信モジュール7A、7A、B、7Bが中心点C0に対して点対称に配置されているので、磁界は互いに打ち消し合い、磁界の影響は極めて小さくなると考えられ、意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7(2個の送受信モジュール7でも可)のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。
【0034】
本実施の形態により、アレイアンテナ装置における意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置におけるスプリアスを抑制することが可能となる。
【0035】
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明された送受信モジュール7A、7Bの線対称の配置の一例について詳細に説明する。
【0036】
本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成について説明する。
図3は、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却系やアンテナなどの構成については記載を省略している。アレイアンテナ装置1は、アレイアンテナとして機能する。アレイアンテナ装置1は、複数の送受信モジュール7(7A、7B)と、電源回路8とを備えている。
【0037】
電源回路8は、例えば板状の形状を有し、その+z側の面において複数の送受信モジュール7に接している。電源回路8は、送受信モジュール7へ制御信号を供給する。また、後述されるように、この図の例では、電源部(図示されず)からの電力(電流)が、電源回路8上に設けられた配線11を介して、送受信モジュール7へ供給される。また、送受信モジュール7から出力された電流が、電源回路8上に設けられた配線12を介して、電源部(図示されず)へ送出される。
【0038】
送受信モジュール7は、例えば厚板状又は直方体状の形成を有し、電源回路8上において行列状に配置されている。この図の例では、4個の送受信モジュール7A、7A、7B、7Bが代表として示されている。すなわち、x方向を列方向(列に沿った方向)とし、y方向を行方向(行に沿った方向)とすると、(行、列)=(1、1)=7A、(1、2)=7A、(2、1)=7B、(2、2)=7B、である。言い換えると、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、両者の間を通る対称線C2を挟んで、対向するように、線対称に配置されている。送受信モジュール7Aと、送受信モジュール7Bとは、その構造が対称的であり、対称線C2に対して線対称な構造を有している。送受信モジュール7A、7Bは、電源回路8から制御信号を供給され、電源部(図示されず)から配線11を介して電力(電流)を供給され、電源部へ配線12を介して電流を送出する。そして、送信信号をアンテナ(図示されず)へ出力し、そのアンテナから受信信号を受信する。
【0039】
配線(入力用の給電線)11は、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間に、対称線C2と平行に配置されている。配線11は、送受信モジュール7A、7Bへ電流Iを供給する(矢印で表示)。具体的には、配線11の途中に設けられた分岐線が、送受信モジュール7A、7Bの入力端子24に接続されている。そして、電流Iは、配線11−配線11の分岐線−入力端子24を通り、送受信モジュール7A、7B内の内部配線21を介して電子部品20へ供給される。
【0040】
配線(出力用の給電線)12は、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間に、対称線C2及び配線11と平行に配置されている。配線12は、送受信モジュール7A、7Bから電流Iを受け取る(矢印で表示)。具体的には、配線12の途中に設けられた分岐線が、送受信モジュール7A、7Bの出力端子25に接続されている。そして、電流Iは、送受信モジュール7A、7B内の内部配線21を介して、出力端子25−配線12の分岐線−配線12を通り、電子部品20から送出される。
【0041】
ここで、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、対称線C2に関して線対称の位置に配置されている。また、送受信モジュール7A用の配線11、12の分岐線と送受信モジュール7B用の配線11、12の分岐線とは、対称線C2に関して線対称の位置に配置されている。それにより、後述されるように、磁界を打ち消す効果を奏することができる。更に、送受信モジュール7Aの内部の電子部品20や入力端子24や出力端子25や内部配線21と送受信モジュール7Bの内部の電子部品20や入力端子24や出力端子25や内部配線21とは、対称線C2に関して線対称の位置に配置されていることが好ましい。それにより、磁界を打ち消す効果をより高めることができる。
【0042】
各送受信モジュール7Aにおいて、配線11の分岐線−(入力端子24−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子25−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7A近傍(主に配線11の分岐線と配線12の分岐線との間)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、送受信モジュール7Aでは、−y側の電流I(−x方向)と+y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に−z方向の磁界Hが発生する。
【0043】
同様にして、各送受信モジュール7Bにおいて、配線11の分岐線−(入力端子24−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子25−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7B近傍(主に配線11の分岐線と配線12の分岐線との間)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、送受信モジュール7Bでは、−y側の電流I(+x方向)と+y側の電流I(−x方向)とにより、両電流の間に+z方向の磁界Hが発生する。
【0044】
このとき、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間を通る対称線C2を基準とし、各送受信モジュール7A、7Bの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界H、Hを評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界Hと送受信モジュール7Bの磁界Hとは、各構成(送受信モジュール、分岐線など)の配置の対称性から、大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界Hと磁界Hとは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0045】
このように、互いに逆向きの磁界を発生する二つの送受信モジュール7を、対称線C2に対して、対称の位置に配置することで、それらの磁界を打ち消して、磁界の影響を抑制することができる。すなわち、このアレイアンテナ装置1では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。なお、この場合、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとが向かい合っていれば、送受信モジュール7A、7Bを対称線C2のどちら側に配置するかは任意である。
【0046】
この図の例では、4個の送受信モジュール7に関して説明している。すなわち、4個の送受信モジュール7のグループ(2個の送受信モジュール7のグループでも可)において、上述のような構成とすることで、そのグループ内で意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。したがって、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7(2個の送受信モジュール7でも可)のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。
【0047】
本実施の形態により、アレイアンテナ装置における意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置におけるスプリアスを抑制することが可能となる。
【0048】
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明された送受信モジュール7A、7Bの点対称の配置の一例について詳細に説明する。
【0049】
本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成について説明する。
図4は、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却系やアンテナなどの構成については記載を省略している。アレイアンテナ装置1は、アレイアンテナとして機能する。アレイアンテナ装置1は、複数の送受信モジュール7(7A、7B)と、電源回路8とを備えている。
【0050】
電源回路8は、第2の実施の形態と同様である。
【0051】
送受信モジュール7について、この図の例では、4個の送受信モジュール7A、7B、7A、7Bが代表として示されている。すなわち、x方向を列方向(列に沿った方向)とし、y方向を行方向(行に沿った方向)とすると、(行、列)=(1、1)=7A、(1、2)=7B、(2、1)=7A、(2、2)=7B、である。言い換えると、送受信モジュール7A及び送受信モジュール7Bは、それぞれ中心点C0に対して、点対称の位置に配置されている。更に、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、両者の間を通る対称線C2かつ対称線C1を挟んで、対向するように配置されている。送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、その構造が対称的であり、線対称な構造を有している。その他については、第2の実施の形態と同様である。
【0052】
配線(入力用の給電線)11は、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間に、対称線C2と概ね平行に配置されている。ただし、配線11は、中心点C0に対して点対称な配置となるように、中心点C0の位置で配線12と交差している。その他については、第2の実施の形態と同様である。
【0053】
配線(出力用の給電線)12は、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間に、対称線C2及び配線11と概ね平行に配置されている。ただし、配線12は、中心点C0に対して点対称な配置となるように、中心点C0の位置で配線11と交差している。その他については、第2の実施の形態と同様である。
【0054】
ここで、送受信モジュール7A及び送受信モジュール7Bは、それぞれ中心点C0に関して点対称の位置に配置されている。言い換えると、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、両者の間を通る対称線C2かつ対称線C1に関して線対称の位置に配置されている。また、送受信モジュール7A用の配線11、12の分岐線及び送受信モジュール7B用の配線11、12の分岐線は、それぞれ中心点C0に関して点対称の位置に配置されている。言い換えると、送受信モジュール7A用の配線11、12の分岐線及び送受信モジュール7B用の配線11、12の分岐線とは、対称線C2かつ対称線C1に関して線対称の位置に配置されている。それにより、後述されるように、磁界を打ち消す効果を奏することができる。更に、送受信モジュール7Aの内部の電子部品20や入力端子24や出力端子25や内部配線21及び送受信モジュール7Bの内部の電子部品20や入力端子24や出力端子25や内部配線21は、それぞれ中心点C0に関して点対称の位置に配置されていることが好ましい。それにより、磁界を打ち消す効果をより高めることができる。
【0055】
各送受信モジュール7Aにおいて、配線11の分岐線−(入力端子24−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子25−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7A近傍(配線11の分岐線と配線12の分岐線との間)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、(1、1)の位置の送受信モジュール7Aでは、−y側の電流I(−x方向)と+y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に−z方向の磁界Hが発生する。また、(2、2)の位置の送受信モジュール7Aでは、+y側の電流I(+x方向)と−y側の電流I(−x方向)とにより、両電流の間に−z方向の磁界Hが発生する
【0056】
同様にして、各送受信モジュール7Bにおいて、配線11の分岐線−(入力端子24−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子25−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7B近傍(配線11の分岐線と配線12の分岐線との間)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、(2,1)の位置の送受信モジュール7Bでは、−y側の電流I(+x方向)と+y側の電流I(−x方向)とにより、両電流の間に+z方向の磁界Hが発生する。(1,2)の位置の送受信モジュール7Bでは、+y側の電流I(−x方向)と−y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に+z方向の磁界Hが発生する。
【0057】
このとき、対称線C2を基準とし、各送受信モジュール7A、7Bの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界H、Hを評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界Hと送受信モジュール7Bの磁界Hとは、各構成(送受信モジュール、分岐線など)の配置の対称性から、大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界Hと磁界Hとは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0058】
同様に、対称線C2と垂直な対称線C1を基準とし、各送受信モジュール7A、7Bの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界H、Hを評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界Hと送受信モジュール7Bの磁界Hとは、各構成(送受信モジュール、分岐線など)の配置の対称性から、大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界Hと磁界Hとは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0059】
このように、互いに逆向きの磁界を発生する二つの送受信モジュール7を対称線C2/対称線C1に対して線対称に配置すること(すなわち、送受信モジュール7A、7Bをそれぞれ中心点C0に対して点対称に配置すること)で、それらの磁界を打ち消して、磁界の影響を抑制することができる。すなわち、このアレイアンテナ装置1では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。
【0060】
この図の例では、4個の送受信モジュール7に関して説明している。すなわち、4個の送受信モジュール7のグループにおいて、上述のような構成とすることで、そのグループ内で意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。したがって、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁は影響を大幅に抑制することができる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。
【0061】
本実施の形態により、アレイアンテナ装置における意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置におけるスプリアスを抑制することが可能となる。
【0062】
(第4の実施の形態)
本実施の形態では、第1の実施の形態において説明された送受信モジュール7A、7Bの線対称の配置の他の一例について詳細に説明する。
【0063】
本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成について説明する。
図5は、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却系やアンテナなどの構成については記載を省略している。アレイアンテナ装置1は、アレイアンテナとして機能する。アレイアンテナ装置1は、複数の送受信モジュール7(7A、7B)と、電源回路8とを備えている。
【0064】
電源回路8は、第2の実施の形態と同様である。
【0065】
送受信モジュール7について、この図の例では、4個の送受信モジュール7A、7A、7B、7Bが代表として示されている。すなわち、x方向を列方向(列に沿った方向)とし、y方向を行方向(行に沿った方向)とすると、(行、列)=(1、1)=7A、(1、2)=7A、(2、1)=7B、(2、2)=7B、である。言い換えると、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、両者の間を通る対称線C2を挟んで、対称な位置に配置されている。送受信モジュール7A、7Bは、いずれも同じ側(+x側)から配線11を介して電力(電流)を供給され、配線12を介して電流を送出する。ただし、送受信モジュール7A、7Bは、内部配線(内部の給電線)21の経路が互いに相違している。すなわち、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、その構造は同じであるが、内部配線21の経路が逆(略xy平面で反時計回りと時計回り)となる構造を有している。その他については、第2の実施の形態と同様である。
【0066】
配線(入力用の給電線)11は、送受信モジュール7A及び送受信モジュール7Bの各々ごとに、それらの+x側に、対称線C2と平行に配置されている。配線(出力用の給電線)12は、送受信モジュール7A及び送受信モジュール7Bの各々ごとに、それらの+x側に、対称線C2及び配線11と平行に配置されている。その他については、第2の実施の形態と同様である。
【0067】
ここで、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとは、対称線C2に関して線対称の位置に配置されている。また、送受信モジュール7Aの内部配線21(領域22Aで表示)と、送受信モジュール7Bの内部配線21(領域22Bで表示)とは、領域22Aで形成される磁場と、領域22Bで形成される磁場とが、互いに打ち消すように設けられている。
【0068】
各送受信モジュール7Aにおいて、配線11の分岐線−(入力端子26−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子27−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7Aの内部配線21の近傍(領域22A)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、送受信モジュール7Aでは、+y側の電流I(−x方向)と−y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に+z方向の磁界Hが発生する。
【0069】
同様にして、各送受信モジュール7Bにおいて、配線11の分岐線−(入力端子26−)内部配線21−電子部品20を流れる電流Iと、電子部品20−内部配線21−(出力端子27−)配線12の分岐線を流れる電流Iとにより、送受信モジュール7Bの内部配線21の近傍(領域22B)に電流誘起の磁界Hが発生する。例えば、送受信モジュール7Bでは、−y側の電流I(−x方向)と+y側の電流I(+x方向)とにより、両電流の間に−z方向の磁界Hが発生する。
【0070】
このとき、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとの間を通る対称線C2を基準とし、各送受信モジュール7A、7Bの電流I、Iが概ね等しいと仮定して、磁界H、Hを評価すると、以下のように考えられる。送受信モジュール7Aの磁界Hと送受信モジュール7Bの磁界Hとは、各構成(送受信モジュール)の配置の対称性から、大きさが概ね同じになり、その向きが互いに反対の方向となる。したがって、磁界Hと磁界Hとは互いに打ち消し合うので、それらの磁界の影響は抑制されると考えられる。すなわち、それら磁界に基づく電磁波の影響は抑制される。
【0071】
特に、本実施の形態では、配線11、12に関しては、送受信モジュール7A、7Bとも同じ構成とし、送受信モジュール7の内部配線21のループを、電流が互いに逆向きに流れるように相違させている。その結果、送受信モジュール7A、7Bの内部配線21のループ内を流れる電流により、互いに逆向きの磁界を発生することができる。
【0072】
このように、互いに逆向きの磁界を発生する二つの送受信モジュール7を、対称線C2に対して、対称の位置に配置することで、それらの磁界を打ち消して、磁界の影響を抑制することができる。すなわち、このアレイアンテナ装置1では、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。なお、この場合、送受信モジュール7Aと送受信モジュール7Bとが向かい合っていれば、送受信モジュール7A、7Bを対称線C2のどちら側に配置するかは任意である。
【0073】
この図の例では、4個の送受信モジュール7に関して説明している。すなわち、4個の送受信モジュール7のグループ(2個の送受信モジュール7のグループでも可)において、上述のような構成とすることで、そのグループ内で意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。したがって、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7(2個の送受信モジュール7でも可)のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁は影響を大幅に抑制することができる。
【0074】
本実施の形態により、アレイアンテナ装置における意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置におけるスプリアスを抑制することが可能となる。
【0075】
(第5の実施の形態)
本実施の形態では、1種類の送受信モジュール7を用いる点で、2種類の送受信モジュールを用いる第1の実施の形態と相違する。以下、その相違点について主に説明する。
【0076】
本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成について説明する。
図6は、本実施の形態に係るアレイアンテナ装置の構成例の一部を模式的に示す斜視図である。ここでは、電源配線や冷却系やアンテナの構成については記載を省略している。アレイアンテナ装置1は、アレイアンテナとして機能する。アレイアンテナ装置1は、複数の送受信モジュール7と、電源回路8とを備えている。
【0077】
本実施の形態では、送受信モジュール7は1種類である。ただし、表面、裏面いずれの面からも給電可能である。そして、薄型形状の4個の送受信モジュール7として、表面から給電可能な送受信モジュール7−3、7−4と、裏面から給電可能な送受信モジュール7−1、7−2とを2枚ずつ電源回路8上に配置している。ただし、(行、列)=(1、1)=7−1、(1、2)=7−3、(2、1)=7−2、(2、2)=7−4、である。このときの各送受信モジュール7同士の互いの向きの関係を、図中に、各送受信モジュール7における互いに直交する単位ベクトルa、単位ベクトルb、単位ベクトルcの向きとして示している。
【0078】
すなわち、送受信モジュール7−3は、「表」の文字が示すように、表面を上側(+z側)としている。そして、送受信モジュール7−3の(a,b,c)座標系は、アレイアンテナ装置1の(x、y、z)座標系とそれぞれ(同じ向き、同じ向き、同じ向き)である。また、送受信モジュール7−4は、「表」の文字が示すように、表面を上側(+z側)としている。しかし、送受信モジュール7−3とは、y方向の向きが反対である。そのため、送受信モジュール7−4の(a,b,c)座標系は、それぞれアレイアンテナ装置1の(x、y、z)座標系と(逆向き、逆向き、同じ向き)である。
【0079】
送受信モジュール7−1は、「裏」の文字が示すように、裏面を上側(+z側)としている。そして、送受信モジュール7−1の(a,b,c)座標系は、それぞれアレイアンテナ装置1の(x、y、z)座標系と(逆向き、同じ向き、逆向き)である。また、送受信モジュール7−2は、「裏」の文字が示すように、裏面を上側(+z側)としている。しかし、送受信モジュール7−1とは、y方向の向きが反対である。そのため、送受信モジュール7−2の(a,b,c)座標系は、それぞれアレイアンテナ装置1の(x、y、z)座標系と(同じ向き、逆向き、逆向き)である。
【0080】
言い換えると、行列状に配置された四個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4では、送受信モジュール7−3は、表側を上にして配置されている。送受信モジュール7−4は、表側を上にして、送受信モジュール7−3と反対の向き(y方向が反対の向き)に配置されている。送受信モジュール7−2は、送受信モジュール7−3を裏返しに反転して(x軸を軸に180度回転して)、裏側を上にして配置されている。送受信モジュール7−1は、裏側を上にして、送受信モジュール7−2と反対の向き(y方向が反対の向き)に配置されている。
【0081】
4個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4で発生する意図しない磁界は、送受信モジュールは1種類で同じなので、いずれもほぼ同じ磁界Hとなると考えられる。その磁界Hは、その向きも含めて考えると、(a,b,c)座標系で、H=α・(単位ベクトルa)+β・(単位ベクトルb)+γ・(単位ベクトルc)、となる。この磁界Hを4個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4について、(x,y,z)座標系で足し合わせると、その合計は、ゼロ(0)となる。
【0082】
すなわち、4個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4で発生する意図しない磁界Hは、図6に示す配置により、互いに逆向きとなり打ち消し合う。そのため、それらの磁界Hの影響は抑制されると考えられ、意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することが可能となる。それにより、スプリアスを抑制することが可能となる。なお、図6における4箇所の位置に対する4個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4の配置は任意であり、図6の例に限定されない。すなわち、4個の送受信モジュール7−1、7−2、7−3、7−4の(a,b,c)座標系が、互いに異なっており、磁界Hを(x,y,z)座標系で足し合わせると合計がゼロ(0)となれば、配置に制限はない。例えば、送受信モジュール7−2の位置と送受信モジュール7−3の位置とが互いに入れ替わっていてもよい。
【0083】
この図の例では、4個の送受信モジュール7に関して説明している。すなわち、4個の送受信モジュール7のグループにおいて、上述のような構成とすることで、そのグループ内で意図しない電磁波の影響を大幅に抑制することができる。したがって、アレイアンテナ装置1をこの4個の送受信モジュール7のグループの集合体として構成すれば、送受信モジュール7の数が更に多くても、同様に、意図しない電磁は影響を大幅に抑制することができる。
【0084】
本実施の形態により、アレイアンテナ装置における意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、アレイアンテナ装置におけるスプリアスを抑制することが可能となる。
【0085】
以上説明されたように、上記各実施の形態のアレイアンテナ装置において、意図しない電磁波の影響を抑制することが可能となる。そして、スプリアスを抑制することが可能となる。各実施の形態のアレイアンテナ装置(アレイアンテナシステム)は、例えば、フェイズトアレイレーダ装置に適用可能である。
【0086】
また、各実施の形態の技術は、アレイアンテナ装置における他の様々なモジュール(例示:送信モジュール、受信モジュール、アンテナモジュール、電源モジュール、位相器モジュール)に対しても適用可能である。ただし、送信モジュールは、送受信モジュールのうちの送信機能を独立させたモジュールである。受信モジュールは、送受信モジュールのうちの受信機能を独立させたモジュールである。アンテナモジュールは、アンテナ素子と送受信モジュールを一体化したモジュールである。電源モジュールは、送受信モジュール等に電源を供給するモジュールである。位相器モジュールは、アンテナで送受信する電波の位相を調整するモジュールである。
【0087】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。なお、各実施の形態に記載された個々の技術や変形例は、技術的に矛盾が発生しない限り、他の実施の形態においても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 アンテナ装置
2、2−1、2−2、2a、2b 送受信ユニット
3 アンテナ
4 誘電体
7、7A、7A、7A、7B、7B、7B、7−1、7−2、7−3、7−4 送受信モジュール
8 電源回路
9 冷却部
11、12 配線
20 電子部品
21 内部配線
22A、22B 領域
24、26 入力端子
25、27 出力端子
H、H、HA1、HA2、H、HB1、HB2 磁界
、I 電流
C0 中心点
C1、C2 対称線
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6