(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207963
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】屈曲撮像光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 15/167 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
G02B15/167
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-214525(P2013-214525)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-79047(P2015-79047A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】野村 博
(72)【発明者】
【氏名】多田 英二郎
【審査官】
森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−18277(JP,A)
【文献】
特開2011−138047(JP,A)
【文献】
特開2008−96559(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0180183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面を、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして非円形としたこと、
上記大径非円形レンズの有効光学面は、上記屈曲後光軸に沿って見て、屈曲前光軸と平行な光束入射側に向かう方向と反対方向を“L方向”、屈曲前後の光軸を含む面と直交する方向を“H方向”とし、上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でH方向における最も外側の点と光軸との距離を“RH”としたとき、L方向を除いてRHを半径とする円形をなしており、上記L方向においては、上記屈曲前後の光軸を含む面と直交し、屈曲後光軸と平行な辺を有していること、及び
上記有効光学面形状は、次の条件式(1)及び(2)を満足すること、
を特徴とする屈曲撮像光学系。
(1)RU>RL
(2)(RU+RL)<2RH
但し、屈曲後光軸に沿って見て、屈曲前光軸と平行な光束入射側に向かう方向を“U方向”としたとき、
RU:上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でU方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL:上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でL方向における最も外側の点と光軸との距離。
【請求項2】
請求項1記載の屈曲撮像光学系において、さらに次の条件式(3)を満足する屈曲撮像光学系。
(3)0.5<{(RU+RL)/2RH}<0.9
【請求項3】
請求項1または2記載の屈曲撮像光学系において、
上記屈曲素子の被写体側に負または正のレンズ群を備えている屈曲撮像光学系。
【請求項4】
被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面を、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして非円形としたこと、及び
上記屈曲撮像光学系は、全体として、物体側から順に、負レンズ群、正レンズ群が位置するレトロフォーカスタイプからなり、上記大径非円形レンズは、その正レンズ群中に含まれていること、を特徴とする屈曲撮像光学系。
【請求項5】
被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面を、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして非円形としたこと、及び
上記大径非円形レンズは、該屈曲撮像光学系の入射瞳形状が、該大径非円形レンズの有効光学面の形状と相似形になる位置に配置されていること、
を特徴とする屈曲撮像光学系。
【請求項6】
被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後レンズ系中のレンズ群のうち、軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面の外形を上記屈曲後光軸方向から見たとき非円形の大径異形レンズとしたこと、及び
上記屈曲撮像光学系の入射瞳形状は、次の条件式(1’)及び(2’)を満足すること、
を特徴とする屈曲撮像光学系。
(1’)RU’>RL’
(2’)(RU’+RL’)<2RH’
但し、
屈曲前光軸に沿って見て、屈曲後光軸と平行な撮像素子側に向かう方向を“L’方向”、その反対方向を“U’方向”、屈曲前後の光軸を含む面と直交する方向を“H’方向”としたとき、
RU’:上記入射瞳のU’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL’:上記入射瞳のL’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RH’:上記入射瞳のH’方向における最も外側の点と光軸との距離。
【請求項7】
請求項6記載の屈曲撮像光学系において、
入射瞳形状は、さらに次の条件式(3’)を満足する屈曲撮像光学系。
(3’)0.5<{(RU’+RL’)/2RH’}<0.9
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲光学系を含む撮像光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の主として撮影を目的とした携帯電子機器や、カメラ付き携帯電話機や携帯情報端末といった付随的に撮影機能を備えた携帯電子機器が広く普及しており、こうした携帯電子機器に搭載される撮像ユニットの小型化が求められている。撮像ユニットの小型化の手段として、プリズムやミラーなどの反射素子(屈曲素子)の反射面を用いて光束を反射(屈曲)させる屈曲光学系によって撮像用の光学系を構成したものが知られている。屈曲光学系を含む撮像光学系(以下屈曲撮像光学系)は、特に被写体からの入射光の進行方向における撮像ユニットの薄型化を実現するのに有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−267391号公報
【特許文献2】特開2010−243763号公報
【特許文献3】特開2013−105049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、薄型化が可能な屈曲撮像光学系においても、より明るい小F値化が要求されている。小F値化は、一般的にはレンズ径を増大させるため、薄型化の要求と相容れない。特に最も物体側のレンズ群中に反射面(屈曲素子)が存在する屈曲撮像光学系は、屈曲後光軸上に位置するレンズ群中に、軸上光束有効径(軸上光束径)が大径の光束を透過させるレンズ群が存在するため、小F値化を図ると、このレンズ群も大径化し、薄型化の阻害要因となる。
【0005】
従来、レンズ(群)の小型化(小径化)を図るために、円形レンズ(群)の周縁一部をカットした非円形レンズが知られている(特許文献1ないし3)。しかし、これらの非円形レンズは、該非円形レンズを含む結像光学系の結像面(撮像素子)が矩形(非円形)であることから、結像面の外側に到達する光束のみが通過する部分を除去するという技術思想に基づくものであった。つまり、従来の非円形レンズは、軸上光束有効半径(光軸上の物点を発し、その光学系を透過して光軸上の像点に到達する光線群(光束)のうち、レンズ最周縁部を通過する光線とレンズ光学面の交点と光軸を結ぶ垂線の長さ)の外側の、結像面外側に到達する軸外光線のみが通過する部分を除去しているに過ぎないため、小径化(小型化)が不十分であり、屈曲撮像光学系に採用しても十分な薄型化を図ることができない。
【0006】
本発明は、以上の技術背景に基づき、屈曲撮像光学系において、小F値化とさらなる薄型化を両立させることのできる屈曲撮像光学系を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸上光束有効半径を基準として、該軸上光束有効半径内のレンズの有効光学面(結像に関与する光束が通過する面)の特定の部分を切除する(つまり、結像に関与する光束の一部をカットする)ことで、屈曲撮像光学系のさらなる薄型化を図ったものである。
【0008】
本発明は、屈曲撮像光学系の屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面の形状に着目し、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への有効光学面の長さを、軸上光束有効半径より小さくして異形(非円形)とし、かつ該大径異形レンズの被写体側への長さと、その反対側への長さの比を一定の範囲に抑えれば、画像処理により光学性能の劣化を抑えつつ、薄型化を図ることができるという着眼に基づいてなされたものである。大径レンズの有効光学面を非円形とすると、撮像面に入射する光束が非対称となるため、理論上は方位毎(縦横)の解像力差が生じるが、十分に収差補正がなされていれば実使用上の不具合はなく、周辺光量が非対称となる問題についても画像処理によって補正可能である。また、屈曲撮像光学系では、屈曲素子の前方(被写体側)に負または正のレンズを配置することが一般的であることから、屈曲後光学系中のレンズ群の光軸から被写体側への長さは犠牲にする必要がないという事情もある。
【0009】
本発明は、被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後レンズ系中のレンズ群のうち、軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面の外形を上記屈曲後光軸方向から見たとき非円形とし
たこと、
上記大径非円形レンズの有効光学面は、上記屈曲後光軸に沿って見て、屈曲前光軸と平行な光束入射側に向かう方向と反対方向を“L方向”、屈曲前後の光軸を含む面と直交する方向を“H方向”とし、上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でH方向における最も外側の点と光軸との距離を“RH”としたとき、L方向を除いてRHを半径とする円形をなしており、上記L方向においては、上記屈曲前後の光軸を含む面と直交し、屈曲後光軸と平行な辺を有していること、及び
上記有効光学面形状は、次の条件式(1)及び(2)を満足すること、を特徴としている。
(1)RU>RL
(2)(RU+RL)<2RH
但し、屈曲後光軸に沿って見て、屈曲前光軸と平行な光束入射側に向かう方向を“U方向”としたとき、
RU:上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でU方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL:上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でL方向における最も外側の点と光軸との距離、
である。
条件式(1)及び(2)を満足しないと、薄型化の効果が得られない。
上記大径非円形レンズの有効光学面の軸上光束有効半径内でH方向における最も外側の点と光軸との距離RHは、屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径である。
上記大径非円形レンズの有効光学面は、上記L方向を除いて軸上光束有効半径の円形をなしており(RU=RHであり)、上記L方向においては、上記屈曲前後の光軸を含む面と直交し、屈曲後光軸と平行な辺を有するDカット形状を有している。
【0011】
本発明は、さらに次の条件式(3)を満足することが好ましい。
(3)0.5<{(RU+RL)/2RH}<0.9
条件式(3)の下限を超えると、縦横の解像力差が大きくなり、画質が悪化する。
条件式(3)の上限を超えると、薄型化の効果が不十分となる。
【0013】
本発明の屈曲撮像光学系は、一つの態様では、上記屈曲素子の被写体側に負または正のレンズ群を備えている。
【0014】
本発明の屈曲撮像光学系は、別の態様では、被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面を、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして非円形としたこと、及び
上記屈曲撮像光学系は
、全体として、物体側から順に、負レンズ群、正レンズ群が位置するレトロフォーカスタイプから
なり、上記大径
非円形レン
ズは、その正レンズ群中に含まれている
こと、を特徴としている。
【0015】
本発明の屈曲撮像光学系
は、さらに別の態様では、被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後光軸上に位置する軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面を、この大径レンズの屈曲前後の光軸を含む平面と直交し屈曲後光軸を含む面内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして非円形としたこと、及び
上記大径非円形レンズは、該屈曲撮像光学系の入射瞳形状が、該大径非円形レンズの有効光学面の形状と相似形になる位置に配置されていること、を特徴としている。
一般的に、開口絞りは、軸外の主光線が光軸と交わる位置に配置され、その面積は撮像面に到達する光量を変化させるが、その光軸方向から見た形状(円、四角、三角等)は撮像面の光量分布を変化させない。これに対し、本発明における
大径非円形レンズ(大径異形レンズ
)は、開口絞りに近い位置であって、屈曲撮像光学系の入射瞳形状を定める位置(入射瞳形状に影響を与える位置)に配置されていて、その有効光学面の形状は撮像面の光量分布にも影響を与える。
【0016】
本発明の屈曲撮像光学系は、別言すると、所望の明るさ(F値)を得るための円形の入射瞳面積を基準として、異形の入射瞳形状の面積がこの基準の円形入射瞳面積と等しくなるように大径異形レンズの光学有効面形状を設定することにより、薄型化を実現しつつ、明るさを犠牲にすることなく、所望の明るさを得ている。つまり、『円形開口の軸上光束瞳面積=異形開口の軸上光束瞳面積』を満足することにより、円形射出瞳と同じ明るさの光学系を得ることができる。ちなみに、異形開口の光学系でF値の定義を用いるには、『F値=焦点距離/入射瞳径』なので、上記基準円形入射瞳径からF値を算出する。
【0017】
本発明は、別の表現によると、被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、
上記屈曲後レンズ系中のレンズ群のうち、軸上光束有効半径が最大となる大径レンズの有効光学面の外形を上記屈曲後光軸方向から見たとき非円形として大径異形レンズとしたこと、及び
上記屈曲撮像光学系の入射瞳形状は、次の条件式(1’)及び(2’)を満足すること、
を特徴としている。
(1’)RU’>RL’
(2’)(RU’+RL’)<2RH’
但し、
屈曲前光軸に沿って見て、屈曲後光軸と平行な撮像素子側に向かう方向を“L’方向”、その反対方向を“U’方向”、屈曲前後の光軸を含む面と直交する方向を“H
’方向”としたとき、
RU’:上記入射瞳のU’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL’:上記入射瞳のL’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RH’:上記入射瞳のH’方向における最も外側の点と光軸との距離、
である。
【0018】
入射瞳形状は、さらに次の条件式(3’)を満足することが好ましい。
(3’)0.5<{(RU’+RL’)/2RH’}<0.9
【発明の効果】
【0019】
本発明は、被写体光束を屈曲させる屈曲素子と、この屈曲素子による屈曲後の光軸上に配置する屈曲後レンズ系と、同屈曲後レンズ系による被写体像を結像させる撮像素子とを有する屈曲撮像光学系において、屈曲後レンズ系中のレンズ群のうち、軸上光束有効半径が最大となる大径異形レンズ群の有効光学面の外形を、上記屈曲後光軸方向から見たとき非円形としたので、小F値化と薄型化を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用する撮像ユニットの外観斜視図である。
【
図2】撮像ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【
図3】撮像ユニットの長手方向に沿う側断面図である。
【
図4】本発明を適用した屈曲撮像光学系の光学構成図である。
【
図5】
図4の屈曲撮像光学系中の大径異形レンズの光学有効面の形状例を示す
図4のV-V線に沿う正面図である。
【
図6】
図4の屈曲撮像光学系の入射瞳の形状例を示すVI-VI線に沿う正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る屈曲撮像ユニット(屈曲撮像装置)10について説明する。なお以下の説明における前後、左右、及び、上下の各方向は図中に記載した矢線方向を基準としており、被写体(物体)側が前方となる。
図1に外観形状を示すように、屈曲撮像ユニット10は前後方向に薄く左右方向に長い横長形状をなしている。
【0022】
図2と
図3に示すように、屈曲撮像ユニット10の撮像光学系は、第1群(前方レンズ群)G1、第2レンズ群(後方レンズ群)G2、第3レンズ群(後方レンズ群)G3、第4レンズ群(後方レンズ群)G4を有し、第1群G1に含まれる第1プリズム(屈曲素子)L11と第4レンズ群G4の右方(像側)に位置する第2プリズムL12でそれぞれ略直角に光束を反射させる屈曲光学系となっている。
図3に示すように、第1群G1は、第1プリズムL11の入射面L11−aの前方(被写体側)に位置する第1レンズ(前方レンズ)L1と、第1プリズムL11と、第1プリズムL11の出射面L11−bの右方(像側)に位置する第2レンズL2とから構成される。第2レンズ群G2から第4レンズ群G4はそれぞれ、プリズムなどの反射素子を含まないレンズ群である。
【0023】
図3に示すように、前方から後方に向かう第1光軸(屈曲前光軸)O1に沿って第1レンズL1に入射した被写体からの光束は、入射面L11−aを通して第1プリズムL11に入り、第1プリズムL11内の反射面L11−cによって第2光軸O2に沿う方向(左方から右方)に反射されて出射面L11−bから出射される。続いて光束は、第2光軸(屈曲後光軸)O2上に位置する第2レンズL2と第2レンズ群G2から第4レンズ群G4までの各レンズを通り、入射面L12−aを通して第2プリズムL12に入り、第2プリズムL12内の反射面L12−cによって第3光軸O3に沿う方向(後方から前方に向かう方向)に反射されて出射面L12−bから出射され、撮像センサISの撮像面上に結像される。第1光軸O1と第3光軸O3は略平行であり、第2光軸O2と共に同一の平面内に位置する。第1光軸O1と第2光軸O2と第3光軸O3を含む仮想の平面(屈曲前光軸と屈曲後光軸を含む平面)を基準平面P1(
図5)とし、基準平面P1に直交し第2光軸O2を含む面を第2基準平面P2(同)とする。屈曲撮像ユニット10は第2光軸O2に沿う方向に長い形状をなしており、第1レンズL1は屈曲撮像ユニット10の長手方向の一端部(左側の端部)に近い位置に寄せて配置されている。
【0024】
図1から
図3に示すように、屈曲撮像ユニット10は第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、第2プリズムL12及び撮像センサISを保持する本体モジュール11と、第1群G1を保持する1群ブロック12を備えている。本体モジュール11は、左右方向に長く前後方向の厚みが薄い箱状体のハウジング13を有しており、ハウジング13の長手方向の一端部(左方の端部)に1群ブロック12が取り付けられ、ハウジング13の長手方向の他端部(右方の端部)側には第4レンズ群G4と第2プリズムL12と撮像センサISが固定的に保持されている。
【0025】
図2に示すように、第2レンズ群G2を保持する2群枠20と第3レンズ群G3を保持する3レンズ群枠21は、ハウジング13内に設けたロッド22、23を介して第2光軸O2に沿って移動可能に支持されている。ハウジング13には第1モータM1と第2モータM2が支持され、第1モータM1から突出する送りネジシャフトM1aを回転駆動させると、2群枠20に駆動力が伝達されて該2群枠20がロッド22、23に沿って移動され、第2モータM2から突出する送りネジシャフトM2aを回転駆動させると、3レンズ群枠21に駆動力が伝達されて該3レンズ群枠21がロッド22、23に沿って移動される。屈曲撮像ユニット10の撮像光学系は焦点距離可変であり、第2光軸O2に沿う第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の移動によってズーミング(変倍)動作が行われる。また、第2光軸O2に沿う第3レンズ群G3の移動によってフォーカシング動作が行われる。
【0026】
屈曲撮像ユニット10は、手振れなどの振動を原因とする像面上での像振れを軽減させる防振(像振れ補正)機構を備えている。この防振機構は第1群G1中の第1レンズL1を第1光軸O1と直交する平面内で駆動させるものであるが、本発明の要旨に関係がないので説明を省略する。
【0027】
図3ないし
図6は、以上の屈曲撮像光学系において第2レンズ群G2の有効光学面の正面形状にフォーカスした本発明の実施形態を示している。本実施形態は、第2レンズ群G2を異形とすることで、屈曲撮像ユニット10の極限迄の薄型化(前後方向厚の縮小)を追求したものである。
図4に示すように、第2レンズ群G2は、第2光軸O2上に位置するレンズ群のうちで、軸上光束有効半径が最大となる大径レンズであり、屈曲撮像ユニット10の薄型化の障害になる。第2レンズ群G2の有効光学面の形状は次のように定められている。
【0028】
まず、レンズの軸上光束有効半径は、「光軸上の物点を発し、その光学系を透過して光軸上の像点に到達する光線群(光束)のうち、レンズ最周縁部を通過する光線とレンズ光学面の交点と光軸を結ぶ垂線の長さ」として定義される長さである。そこで、第2レンズ群G2の有効光学面(撮像センサISに到達する光束が通過する面)は、この大径レンズの基準平面P2内における軸上光束有効半径を基準として、屈曲後光軸から被写体側とは反対側への長さを、軸上光束有効半径より小さくして異形(非円形)とし、かつ該大径異形レンズの被写体側への長さと、その反対側への長さの比を一定の範囲に抑えたものである。
【0029】
具体的には、
図4、
図5に示すように、第2光軸O2に沿って第2レンズ群G2の有効光学面を見たとき、基準平面P1内において第1光軸O1と平行な光束入射側に向かう方向を“U方向”、その反対方向を“L方向”、第2基準平面P2の方向を“H方向”としたとき、
RU:第2レンズ群G2の有効光学面の軸上光束有効半径内でU方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL:第2レンズ群G2の有効光学面の軸上光束有効半径内でL方向における最も外側の点と光軸との距離、
RH:第2レンズ群G2の有効光学面の軸上光束有効半径内でH方向における最も外側の点と光軸との距離(=基準平面P2内での軸上光束有効半径)、
と定義したとき、
該有効光学面の正面形状は、次の条件式(1)及び(2)を満足している。
(1)RU>RL
(2)(RU+RL)<2RH
【0030】
この条件式(1)及び(2)を満足することは、第2レンズ群G2の有効光学面の軸上光束有効半径を通り結像に関与する光束を犠牲にする(同光束の一部を遮る)ことを意味する。このように、第2レンズ群G2の有効光学面形状を定めると、撮像面に入射する光束が非対称となるため、理論上は方位毎(縦横)の解像力差(不利益)が生じるが、屈曲撮像ユニット10の薄型化という利益を生む。不利益は、収差補正技術によって解消可能であり、周辺光量が非対称となる問題についても画像処理によって補正可能である。
【0031】
第2レンズ群G2の有効光学面形状は、さらに次の条件式(3)を満足することが好ましい。
(3)0.5<{(RU+RL)/2RH}<0.9
条件式(3)の下限を超えると、縦横の解像力差が大きくなり、画質が悪化する。
条件式(3)の上限を超えると、薄型化の効果が不十分となる。
【0032】
好ましい一実施形態では、第2レンズ群G2の有効光学面は、
図5に示すように、上記L方向を除いて軸上光束有効半径の円形をなし(RU=RHであり)、上記L方向においては、第2基準平面P2と平行なDカット形状をなすようにDカット辺D1を有している。
【0033】
本実施形態は、特に第2レンズ群G2のL方向の長さRLの短縮を目的としており、U方向の長さRUは、必要であれば、軸上光束有効半径RHより長くてもよい。U方向には、第1レンズL1が存在しているため、仮に軸上光束有効半径より長くても、屈曲撮像ユニット10全体の薄型化に悪影響を与えることはない。U方向とH方向の間の放射方向についても同様である。
【0034】
また、本実施形態の屈曲撮像ユニット10では、第2レンズ群G2は、屈曲撮像光学系全体の入射瞳形状が該第2レンズ群G2の有効光学面の形状と相似形になる位置に配置されている。
図6は、屈曲撮像ユニット10の入射瞳EPの形状を示している。この入射瞳EPは、第2レンズ群G2の有効光学面形状と相似形に表れる。
図6において、P3は基準平面P1に直交し第1光軸O1を含む面として定義される。
【0035】
すなわち、この入射瞳EPは、第2レンズ群G2の有効光学面の形状と相似形であって 、次の条件式(1’)と(2’)を満足し、さらに条件式(3’)を満足している。
(1’)RU’>RL’
(2’)(RU’+RL’)<2RH’
(3’)0.5<{(RU’+RL’)/2RH’}<0.9
但し、
屈曲前光軸に沿って見て、屈曲後光軸と平行な撮像素子側に向かう方向を“L’方向”、 その反対方向を“U’方向”、屈曲前後の光軸を含む面と直交する方向を“H’方向”と したとき、
RU’:上記入射瞳のU’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RL’:上記入射瞳のL’方向における最も外側の点と光軸との距離、
RH’:上記入射瞳のH’方向における最も外側の点と光軸との距離、
である。
【0036】
一般的に、撮像光学系に設置される開口絞りは、軸外の主光線が光軸と交わる位置に配置され、その面積は撮像面に到達する光量を変化させるが、その光軸方向から見た形状( 円、四角、三角等)は撮像面の光量分布(周辺光量)を変化させない。これに対し、本実施形態では、第2レンズ群G2は、理論上の開口絞り設置位置には配置されていない。このため、第2レンズ群G2の光学有効面の形状は撮像面の光量分布を非対称とするが、この光量分布が非対称となる問題は上述の通り画像処理によって補正可能である。
【0037】
以上の実施形態の光学系は、第2プリズムL12を有しているが、本発明は、第2プリズムL12を有しない屈曲撮像光学系にも適用可能である。また第2光軸O2上に第2レンズ群G2、第3レンズ群G3及び第4レンズ群G4が設けられているが、第2光軸O2上のレンズ群が2つ以下、または4つ以上タイプの撮像光学系にも本発明は適用が可能である。
【0038】
さらに第1群G1において、第1プリズムL11の入射面L11−aの前方の第1光軸O1上に配されるレンズや、第1プリズムL11の出射面L11−bの右方の第2光軸O2上に配されるレンズの数を異ならせることが可能である。
また図示実施形態の屈曲撮像ユニット10の撮像光学系は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3を第2光軸O2に沿って移動させて変倍動作を行うズームレンズであるが、変倍機能を備えない撮像光学系を搭載した撮像装置においても本発明は適用可能である。例えば、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3がズーミング用の移動を行わないものとし、第2レンズ群G2または第3レンズ群G3がフォーカシング用の移動のみを行う態様にすることもできる。
【0039】
また、図示実施形態の第1プリズムL11の入射面L11−aは横長矩形(長方形)であるが、プリズムの入射面が正方形、台形あるいはその他の形状をなすタイプの屈曲撮像装置(光学系)にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 屈曲撮像ユニット(撮像装置)
11 本体モジュール
12 1群ブロック
13 ハウジング
20 2群枠
G2 第2レンズ群(大径異形レンズ群)
IS 撮像センサ
L11 第1プリズム(屈曲素子)
21 3レンズ群枠
30 第1レンズ枠(移動枠)
O1 第1光軸(屈曲前光軸)
O2 第2光軸(屈曲後光軸)
O3 第3光軸
P1 基準平面(屈曲前光軸と屈曲後光軸を含む面)
P2 基準平面(第2の基準平面)