(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
室外機から導出されている高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管の3本の冷媒配管系を備え、前記高圧ガス配管と前記低圧ガス配管との間に切換弁を有する複数台の分流コントローラが接続され、その分流コントローラの前記切換弁と前記高圧液配管との間に室内機が複数台並列に接続されている冷暖フリーマルチ形空気調和機の前記3本の前記高圧ガス配管、前記低圧ガス配管および前記高圧液配管を既設の冷媒配管系を再利用し、それに新しい室外機、室内機を接続して更新する際、前記冷媒配管系を洗浄する冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、
前記室外機に接続されている前記低圧ガス配管に、前記3本の冷媒配管系内に残留している油を冷媒と共に回収する油回収タンクと、該油回収タンク内に回収された冷媒を加熱蒸発させ、前記圧縮機に吸込ませる加熱手段とを備えた油回収装置を、操作弁を介して着脱自在に接続し、
この状態で前記冷暖フリーマルチ形空気調和機を冷房サイクルにより運転し、まず前記高圧ガス配管に圧縮機から吐出された過熱ガスを流すことにより、その流速で前記高圧ガス配管内に残留している油を液冷媒等と共に回収し、その間、前記油回収装置の加熱手段を機能させて冷媒を蒸発させる準備運転を行い、
その後、前記室内機の電子膨張弁を開き気味にして液バック運転状態とし、前記3本の前記高圧ガス配管、前記低圧ガス配管および前記高圧液配管の洗浄運転を行うことを特徴とする冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法。
前記準備運転は、前記高圧ガス配管の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量と、前記事前運転時に前記分流コントローラを経て低圧ガス配管に戻される冷媒流量とに基づいて予め設定された時間だけ運転され、その後、前記洗浄運転に切換えられることを特徴とする請求項1に記載の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法。
前記分流コントローラには、前記高圧ガス配管の前記切換弁の入口側に、第1電磁弁と固定絞りとの並列回路が接続され、前記高圧ガス配管と前記低圧ガス配管との間に、前記切換弁および前記並列回路をバイパスする第2電磁弁および固定絞りを備えた油戻し運転用バイパス回路が接続されており、前記各回路の前記第1電磁弁および前記第2電磁弁が前記準備運転時に閉、前記洗浄運転時に開とされることを特徴とする請求項1または2に記載の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法。
前記油回収装置の加熱手段は、前記圧縮機からのホットガス冷媒が電磁弁を介して循環可能な構成とされ、少なくとも前記準備運転時、前記電磁弁が開とされ、ホットガス冷媒が導入されることにより前記油回収タンクに油と共に回収された冷媒が加熱可能とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1により提供されたものは、冷房運転と暖房運転とに切換えできる一般的なマルチ形空気調和機に関するものであり、かかる技術を、室外機と複数台の室内機とが高圧ガス配管、低圧ガス配管および高圧液配管の3本の配管を介して接続されている冷暖房同時運転が可能な冷暖フリーマルチ形空気調和機に適用した場合、高圧ガス配管内の残留油を回収するため、圧縮機から吐出された過熱ガスを高圧ガス配管内に流し、その流速により冷媒と共に油を油回収装置側に押し流す必要がある。
【0006】
しかしながら、高圧ガス配管側に冷媒が寝込んでいた場合、特に冷媒が凝縮し易い低外気温条件では多量の液冷媒が寝込んでいる可能性があり、この場合、高圧ガス配管が過熱ガスにより過熱されるまでの間、溜まり込んでいた液冷媒がそのまま低圧ガス配管を経て油回収装置の油回収タンク内に流れ込んでしまうため、液冷媒により油回収タンクがオーバーフローし、回収した油が再流出してしまう等の課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷暖フリーマルチ形空気調和機を既設の冷媒配管系を再利用して更新する際、高圧ガス配管に多量の液冷媒が寝込んでいた場合でも、洗浄運転により安定的に冷媒配管系内の残留油を回収することができる冷媒配管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、室外機から導出されている高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管の3本の冷媒配管系を備え、前記高圧ガス配管と前記低圧ガス配管との間に切換弁を有する複数台の分流コントローラが接続され、その分流コントローラの前記切換弁と前記高圧液配管との間に室内機が複数台並列に接続されている冷暖フリーマルチ形空気調和機の前記3本の前記高圧ガス配管、前記低圧ガス配管および前記高圧液配管を既設の冷媒配管系を再利用し、それに新しい室外機、室内機を接続して更新する際、前記冷媒配管系を洗浄する冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記室外機に接続されている前記低圧ガス配管に、前記3本の冷媒配管系内に残留している油を冷媒と共に回収する油回収タンクと、該油回収タンク内に回収された冷媒を加熱蒸発させ、前記圧縮機に吸込ませる加熱手段とを備えた油回収装置を、操作弁を介して着脱自在に接続し、この状態で前記冷暖フリーマルチ形空気調和機を冷房サイクルにより運転し、まず前記高圧ガス配管に圧縮機から吐出された過熱ガスを流すことによって、その流速で前記高圧ガス配管内に残留している油を液冷媒等と共に回収し、その間、前記油回収装置の加熱手段を機能させて冷媒を蒸発させる準備運転を行い、その後、前記室内機の電子膨張弁を開き気味にして液バック運転状態とし、前記3本の前記高圧ガス配管、前記低圧ガス配管および前記高圧液配管の洗浄運転を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、既設の高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管を再利用し、それに新しい室外機、室内機を接続して冷暖フリーマルチ形空気調和機を更新するため、3本の高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管内に残留している旧冷媒対応の油を、冷媒を流して洗浄する際、3本の配管を同時に洗浄運転すると、高圧ガス配管内に多量の液冷媒が寝込んでいた場合、その冷媒が圧縮機からの過熱ガスにより高圧ガス配管が過熱されるまでの間、液冷媒のままで低圧ガス配管を経て油回収装置に流れ込み、油回収タンクがオーバーフローするリスクがあることから、まず準備運転で高圧ガス配管に圧縮機からの過熱ガスを流すことにより、その流速で高圧ガス配管内に残留している油を液冷媒と共に油回収タンク内に回収し、その間、油回収装置の加熱手段を機能させて冷媒を蒸発させることにより油回収タンクのオーバーフローを防止する。その後、高圧ガス配管内の液冷媒が追い出された段階で洗浄運転に切換え、室内機側の電子膨張弁を開き気味にして液バック運転状態とすることにより、3本の高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管内に残留している旧冷媒対応の油を液バックされる冷媒および高圧過熱冷媒によって洗浄し、油回収装置の油回収タンク内に回収することができる。従って、油回収装置の油回収タンク内に液冷媒が溜り込み、オーバーフローに至るリスクを回避して残留油を回収し、再利用する冷媒配管を確実に洗浄することにより、更新された冷暖フリーマルチ形空気調和機の安定的な運転を確保することができる。特に、冷媒が凝縮し易い低外気温下においても、安定した運転により着実に残留油を回収することができる。
【0010】
また、本発明の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、上記の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記準備運転は、前記高圧ガス配管の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量と、前記事前運転時に前記分流コントローラを経て低圧ガス配管に戻される冷媒流量とに基づいて予め設定された時間だけ運転され、その後、前記洗浄運転に切換えられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、高圧ガス配管の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量と、事前運転時に分流コントローラを経て低圧ガス配管に戻される冷媒流量とに基づいて予め設定された時間だけ準備運転され、その後、洗浄運転に切換えられるため、準備運転を行うことによる配管洗浄運転時間の徒な長期化を回避することができる。つまり、高圧ガス配管の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量は、その配管の長さと径から計算により算出することができる一方、準備運転時に分流コントローラを経て低圧ガス配管に戻される冷媒流量は、その経路に設けられている固定絞り(キャピラリチューブ)等の流量を求めることにより算出できることから、高圧ガス配管の主管内に溜り込んでいる液冷媒を完全に追い出すことが可能な時間を予め予測することができる。従って、その時間を準備運転時間に設定し、洗浄運転に切換えることにより、洗浄運転時間の徒な長期化を回避しつつ、安定的に配管洗浄運転を実施することができる。
【0012】
さらに、本発明の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、上述のいずれかの冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記分流コントローラには、前記高圧ガス配管の前記切換弁の入口側に、第1電磁弁と固定絞りとの並列回路が接続され、前記高圧ガス配管と前記低圧ガス配管との間に、前記切換弁および前記並列回路をバイパスする第2電磁弁および固定絞りを備えた油戻し運転用バイパス回路が接続されており、前記各回路の前記第1電磁弁および前記第2電磁弁が前記準備運転時に閉、前記洗浄運転時に開とされることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、分流コントローラにおいて、高圧ガス配管の切換弁の入口側に、第1電磁弁と固定絞りとの並列回路が接続され、高圧ガス配管と低圧ガス配管との間に、切換弁および並列回路をバイパスする第2電磁弁および固定絞りを備えた油戻し運転用バイパス回路が接続されており、各回路の第1電磁弁および第2電磁弁が準備運転時に閉、洗浄運転時に開とされるため、高圧ガス配管内に寝込んでいる可能性がある多量の液冷媒を残留油と共に回収する準備運転時、液冷媒を第1電磁弁と並列に接続されている固定絞りにより調整して少量ずつ低圧ガス配管に戻すことにより、一度に多量の液冷媒が戻されることによる油回収タンクのオーバーフロー等を防止することができる。つまり、分流コントローラ内には、切換弁の高差圧下での切換えによる切換音を防止するため、その入口側に第1電磁弁と固定絞りとの並列回路を設け、更に暖房運転時の油戻し運転を効率よく行うとともに、その際の冷媒流動音を防止するため、高圧ガス配管と低圧ガス配管との間に第2電磁弁と固定絞りとを備えた油戻し運転用バイパス回路が設けられており、各回路に設けられている第1電磁弁および第2電磁弁を利用し、冷媒配管を洗浄する際の準備運転時および洗浄運転時に、その第1および第2電磁弁を開閉することにより、高圧ガス配管からの冷媒の戻り量を適正にコントロールすることができる。従って、高圧ガス配管に溜り込んでいた液冷媒が一度に多量に油回収装置に流れ込むことによる油回収タンクのオーバーフローを防止し、準備運転を含む配管洗浄運転を安定化することができる。
【0014】
さらに、本発明の冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法は、上述のいずれかの冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法において、前記油回収装置の加熱手段は、前記圧縮機からのホットガス冷媒が電磁弁を介して循環可能な構成とされ、少なくとも前記準備運転時、前記電磁弁が開とされ、ホットガス冷媒が導入されることにより前記油回収タンクに油と共に回収された冷媒が加熱可能とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、油回収装置の加熱手段が、圧縮機からのホットガス冷媒が電磁弁を介して循環可能な構成とされ、少なくとも準備運転時、電磁弁が開とされ、ホットガス冷媒が導入されることにより油回収タンクに油と共に回収された冷媒が加熱可能とされているため、油回収装置では電磁弁を介して加熱手段に、圧縮機から吐出されたホットガス冷媒の一部を導入することにより、それを熱源として冷媒を加熱、蒸発させることができる。従って、準備運転時における液冷媒による油回収タンクのオーバーフローを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、配管洗浄時、まず準備運転で高圧ガス配管に圧縮機からの過熱ガスを流すことにより、その流速で高圧ガス配管内に残留している油を冷媒と共に油回収タンク内に回収し、その間、油回収装置の加熱手段を機能させて冷媒を蒸発させることにより油回収タンクのオーバーフローを防止する。その後、高圧ガス配管内の液冷媒が追い出された段階で洗浄運転に切換え、室内機側の電子膨張弁を開き気味にして液バック運転状態とすることにより、3本の高圧ガス配管、低圧ガス配管、高圧液配管内に残留している旧冷媒対応の油を液バックされる冷媒および過熱冷媒ガスによって洗浄し、油回収装置の油回収タンク内に回収することができるため、油回収装置の油回収タンク内に液冷媒が溜り込み、オーバーフローに至るリスクを回避して残留油を回収し、再利用する冷媒配管を確実に洗浄することにより、更新された冷暖フリーマルチ形空気調和機の安定的な運転を確保することができる。特に、冷媒が凝縮し易い低外気温下においても、安定した運転により着実に残留油を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る冷暖フリーマルチ形空気調和機の冷媒配管洗浄方法に用いる冷暖フリーマルチ形空気調和機の構成図が示されている。
冷暖フリーマルチ形空気調和機1は、1台の室外機(室外ユニット)2と、室外機2に対して並列に接続される複数台の室内機(室内ユニット)3とから構成されている。ここでは、2台の室内機(室内ユニット)3が図示され、それぞれ室内機3A,3Bとされているが、更に多くの室内機3が接続可能とされていることは云うまでもない。
【0019】
室外機(室外ユニット)2は、内部に圧縮機、オイルセパレータ、冷暖房切換用の四方切換弁、室外熱交換器、電子膨張弁、レシーバ、過冷却熱交換器、アキュームレータ等の室外機側機器が各1台ないし必要により複数台設置され、それらが冷媒配管を介して接続されることにより室外側冷媒回路が構成されたものであり、このような室内機2自体は公知のものである。
【0020】
上記室外機2からは、四方切換弁の上流側で分岐されている吐出配管から操作弁を経て圧縮機により圧縮された高温高圧の過熱冷媒ガスを導出する高圧ガス配管4と、四方切換弁およびアキュームレータを経て圧縮機に連なる吸入配管から操作弁を介して導出される低圧ガス配管5と、室外熱交換器によって凝縮され、レシーバ、過冷却熱交換器等を経た高圧液冷媒を室内機3側に操作弁を介して導出する高圧液配管6の3本の冷媒配管が導出されている。
【0021】
室外機2から導出されている3本の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6には、高圧ガス配管4と低圧ガス配管5との間に、複数台の分流コントローラ7が接続され、更にその複数台の分流コントローラ7と高圧液配管6との間に、複数台の室内機3が並列に接続された構成とされている。なお、これらの分流コントローラ7および室内機3は、3本の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5、高圧液配管6がそれぞれ分岐管を介して分岐された分岐配管に対して並列に接続されている。以下において、分岐前の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6を主管、分岐後の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5、高圧液配管6を分岐配管と称することがある。
【0022】
分流コントローラ7は、各室内機3を冷房運転状態または暖房運転状態に任意に切換えるための室内側四方切換弁(切換弁)8を備えている。室内側四方切換弁8は、各室内機3の室内熱交換器16に接続されているガス配管と高圧ガス配管4の分岐配管または低圧ガス配管5の分岐配管との連通状態を切換え、高圧ガス配管4からの高温高圧冷媒ガスを各室内機3に導いて暖房に供するか、もしくは冷房時に各室内機3の室内熱交換器16で蒸発ガス化された低圧冷媒ガスを低圧ガス配管5側に導くためのものである。また、冷房時、高圧ガス配管4側に導かれた一部の高圧冷媒ガスをキャピラリチューブ等の固定絞り9により減圧して低圧ガス配管5側に導く機能を備えた構成とされている。
【0023】
また、分流コントローラ7内には、高圧ガス配管4の分岐配管における室内側四方切換弁8の入口側に第1電磁弁(SVH)10と、キャピラリチューブ等からなる固定絞り11との並列回路12が接続されている。この並列回路12は、高差圧下において室内側四方切換弁8を切換えると、切換音が発生するため、室内側四方切換弁8を切換える際、第1電磁弁(SVH)10を閉とし、固定絞り11で高圧ガス配管4の分岐配管側の圧力を減圧することにより切換音の発生を抑制するためのものである。
【0024】
さらに、分流コントローラ7内には、高圧ガス配管4の分岐配管と低圧ガス配管5の分岐配管との間に、上記並列回路12および室内側四方切換弁8をバイパスして高圧ガス配管4の分岐配管側から低圧ガス配管5の分岐配管側に冷媒を流すことができる、第2電磁弁(SVG)13とキャピラリチューブ等からなる固定絞り14とを備えた油戻し運転用バイパス回路15が接続されている。この油戻し運転用バイパス回路15は、暖房運転時に圧縮機から冷媒ガスと共に吐出された油が高圧ガス配管4内に滞留し、圧縮機が油不足に陥らないように油戻し運転を行う際に用いられる回路であり、並列回路12および室内側四方切換弁8に対して流路圧損が小さくされるとともに、冷媒流動音の発生を防止するため、固定絞り14が設けられた構成とされている。
【0025】
上記した分流コントローラ7の構成は、本出願人に出願した特願2004−316343(特開2006−125762号公報)により公知のものである。
また、上記室内機3は、室内熱交換器16と、室内熱交換器16を通して室内空気を流通させる送風ファン17と、室内熱交換器16に接続される高圧液配管6の分岐配管からの液配管中に設けられている電子膨張弁18とを備えており、冷房時、室内熱交換器16で室内空気を冷却して冷房に供し、暖房時、室内熱交換器16で室内空気を加熱して暖房に供するものである。各室内機3A,3Bは、それぞれ個別に冷房または暖房が行えるようになっている。
【0026】
上記の冷暖フリーマルチ形空気調和機1を既設の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6を再利用し、新しい室外機2、室内機3等を接続して更新する際、既設の冷媒配管系である高圧ガス配管4、低圧ガス配管5、高圧液配管6を洗浄するため、低圧ガス配管5に対して油回収装置(リフレッシュキット)19が着脱自在に接続される構成とされている。
【0027】
油回収装置(リフレッシュキット)19は、所定容量の油回収タンク20と、その油回収タンク20に接続されている油および冷媒の入口配管21および出口配管22と、油回収タンク20内に設けられた加熱手段23と、油回収タンク20から油を抜くためのドレン弁付きドレン配管24とを備えた構成とされている。加熱手段23には、室外機2内の圧縮機から吐出されたホットガス冷媒が配管25および電磁弁(SV12)26を介して循環可能とされている。
【0028】
上記油回収装置(リフレッシュキット)19は、低圧ガス配管5に対して操作弁キット27を介して接続可能とされている。この操作弁キット27は、低圧ガス配管5に接続される操作弁28と、油回収装置19からの入口配管21および出口配管22が接続される操作弁29,30とを備えており、油回収装置19を低圧ガス配管5に接続する際、まず操作弁キット27を低圧ガス配管5に接続し、その操作弁キット27の操作弁29,30に入口配管21および出口配管22を接続することにより、油回収装置19が接続可能な構成とされている。
【0029】
以上に説明の構成において、既設の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6等の冷媒配管系を再利用して冷暖フリーマルチ形空気調和機1を更新する際、それらの冷媒配管系を洗浄し、再利用する冷媒配管系内に残留している旧冷媒対応の油や劣化した油を除去する必要がある。この冷媒配管の洗浄に際して、
図1に示すように、低圧ガス配管5に対して操作弁キット27を介して油回収装置(リフレッシュキット)19を接続するとともに、油回収装置19の加熱手段23に対して圧縮機からホットガス冷媒を循環させるためのホットガス冷媒配管25を接続する。
【0030】
この状態に配管洗浄運転を行うが、本実施形態においては、配管洗浄運転を2段階に分けて行うようにしている。以下にその具体的方法について詳しく説明する。
配管洗浄運転は、通常、冷暖フリーマルチ形空気調和機1を冷房サイクルに切換えて運転し、圧縮機温度および吐出ガス温度を管理する一方で各室内機3の電子膨張弁18を開き気味とすることにより、意図的に液バック運転状態を作り出し、冷媒配管内に残っている油を冷媒により洗い流すのが一般的である。
【0031】
しかし、この場合、高圧液配管6系から各室内機3を経て低圧ガス配管5に流出する冷媒に加え、高圧ガス配管4系内に寝込んでいた液冷媒が圧縮機からの過熱ガスにより追い出されて低圧ガス配管5に流れ込み、油と共に多量の液冷媒が同時に油回収装置19の油回収タンク20内に流入する。これにより、油回収タンク20がオーバーフローし、回収した油が再流出するリスクが生じる。つまり、高圧ガス配管4系内に溜り込んでいた液冷媒は、圧縮機からの過熱ガスによって加熱されたとしても、直ぐに全ての液冷媒が蒸発されるわけではなく、高圧ガス配管4が過熱状態となるまでは、液冷媒のままで低圧ガス配管5に流れ込み、油回収装置19の油回収タンク20内に流入することなる。
【0032】
このような事態を回避するため、本実施形態においては、配管洗浄運転を2段階に分けて行うようにしている。
まず、洗浄運転の開始時、冷房サイクルにより通常の冷房運転と同様、室内機3の電子膨張弁18を過熱度制御し、室内熱交換器16で冷媒を蒸発させてその出口過熱度が一定となるように制御する。この際、
図2に示すように、分流コントローラ7内に設けられている第1電磁弁(SVH)10および第2電磁弁(SVG)13を閉、油回収装置19の加熱手段23に繋がるホットガス冷媒配管25に設けられている電磁弁(SV12)26を開とし、洗浄運転前の準備運転を開始する。
【0033】
これによって、室内機3側から分流コントローラ7を経て低圧ガス配管5に流出する冷媒量は制限される。一方、圧縮機から吐出された過熱冷媒ガスの一部は、高圧ガス配管4に流れる。この過熱ガスの流速によって高圧ガス配管4内に寝込んでいた液冷媒が追い出され、液冷媒のまま分流コントローラ7内の固定絞り11、室内側四方切換弁8、固定絞り9を経て低圧ガス配管5に流出し、高圧ガス配管4内に残留していた油と共に低圧ガス配管5を経て油回収装置19の油回収タンク20内に回収される。この液冷媒量は、2つの固定絞り11,9により絞られた量とされ、また油回収タンク20内で加熱手段23により加熱、蒸発されることから、オーバーフローするリスクは解消される。
【0034】
準備運転は、高圧ガス配管4内に寝込んでいた液冷媒を追い出すための運転であり、予め設定された時間だけ継続される。この時間は、以下により設定することができる。
高圧ガス配管4は、長いものの場合、100mを超えるものもあるが、その内部に溜り込む液冷媒の量は、例えば主管の長さと径から主管容積を計算し、それと外気温(=冷媒温度)および冷媒密度から、高圧ガス配管4内に溜り込む可能性がある最大冷媒量を算出することができる。なお、液冷媒の寝込み量は、冷媒が凝縮し易い低外気温下で多くなるのは当然である。
【0035】
一方、1台当たりの分流コントローラ7から低圧ガス配管5に流出される時間当たりの冷媒流出量は、キャピラリチューブ等で構成されている固定絞り11,9の径と長さおよび外気温(=冷媒温度)とから求めることができ、これと接続されている室内機3の台数とから時間当たりの冷媒流出量を算出することができる。この冷媒流出量と上記した高圧ガス配管4内に溜り込む可能性がある最大冷媒量との関係から、高圧ガス配管4内に溜り込んでいた液冷媒を全て追い出すのに要する時間を予測することでできる。但し、高圧ガス配管4内に全冷媒が凝縮して溜まり込むことはあり得ないので、この点を加味して準備運転時間を設定すればよい。
【0036】
高圧ガス配管4から寝込んでいた冷媒を追い出すための準備運転は、上記の如く予め設定された時間だけ行われ、その時間が経過後、各室内機3の電子膨張弁18を開き気味とすることによって液バック運転状態を作り出し、配管洗浄運転に移行する。この配管洗浄運転では、圧縮機温度および吐出ガス温度を管理する一方で残油の回収効率を向上するため、電子膨張弁18を開き気味にして液バック運転させるようにしている。
【0037】
この際、
図2に示されるように、油回収装置19の加熱手段23に繋がるホットガス冷媒配管25中の電磁弁(SV12)26を閉、分流コントローラ7内に設けられている第1電磁弁(SVH)10および第2電磁弁(SVG)13を開とし、分流コントローラ7内の冷媒流路圧損を小さくすることにより、高圧ガス配管4内に残留している油が過熱ガスにより押し流しされ易くしている。
【0038】
こうして、予め設定された時間だけ、洗浄運転を続けることによって、3本の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6内に残留していた油を冷媒と共に油回収装置19の油回収タンク20内に回収することができる。そして、油回収タンク20内に残った油は、ドレン配管24から開閉弁を開くことによって回収することができる。
【0039】
斯くして、本実施形態によると、以下の効果を期待し得る。
室外機2から導出されている3本の高圧ガス配管4、低圧ガス配管5、高圧液配管6内に残留している旧冷媒対応の油や劣化油を、冷媒を流して洗浄する際、3本の配管を同時に洗浄運転すると、高圧ガス配管4内に多量の液冷媒が寝込んでいた場合、その冷媒が圧縮機からの過熱ガスにより高圧ガス配管4が過熱されるまでの間、液冷媒のままで低圧ガス配管5を経て油回収装置(リフレッシュキット)19に流れ込み、油回収タンク20が液冷媒によりオーバーフローするリスクがある。
【0040】
そこで、まず準備運転を設定された時間行い、高圧ガス配管4に圧縮機からの過熱ガスを流すことにより、その流速で高圧ガス配管4内に残留している油を冷媒と共に油回収タンク20内に回収し、その間、油回収装置19の加熱手段23を機能させて冷媒を蒸発させることにより油回収タンク20のオーバーフローを防止する。その後、高圧ガス配管4内の液冷媒が追い出された段階で洗浄運転に切換え、圧縮機温度および吐出ガス温度を管理する一方で室内機3側の電子膨張弁18を開き気味にして液バック運転状態とすることにより、高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6内に残留している旧冷媒対応の油を液バックされる冷媒および高圧過熱冷媒により洗浄し、油回収装置19の油回収タンク20内に回収することができる。
【0041】
これによって、油回収装置19の油回収タンク20内に液冷媒が溜り込み、オーバーフローに至るリスクを回避して冷媒配管内に残留していた油を回収し、再利用する高圧ガス配管4、低圧ガス配管5および高圧液配管6等を確実に洗浄することにより、更新された冷暖フリーマルチ形空気調和機1の安定的な運転を確保することができる。特に、冷媒が凝縮し易い低外気温下においても、安定した運転により着実に冷媒配管内の残留油を回収することができる。
【0042】
また、上記の準備運転は、概ね高圧ガス配管4の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量と、事前運転時に分流コントローラ7を経て低圧ガス配管5に戻される冷媒流量とに基づいて予め設定された時間だけ運転され、その後、洗浄運転に切換えられるため、準備運転を行うことによる洗浄運転時間の徒な長期化を回避することができる。
【0043】
つまり、高圧ガス配管4の主管内に溜り込む可能性がある最大冷媒量は、その配管の長さと径から計算により算出することができる一方、準備運転時に分流コントローラ7を経て低圧ガス配管に戻される冷媒流量は、その経路に設けられている固定絞り(キャピラリチューブ)11および9等の流量を求めることにより算出できることから、高圧ガス配管4の主管内に溜り込んでいる液冷媒を完全に追い出すことが可能な時間を予め予測することができる。このため、その時間を準備運転時間に設定し、準備運転時間の経過後、洗浄運転に切換えることにより、洗浄運転時間の徒な長期化を回避しつつ、安定的に配管洗浄運転を実施することができる。
【0044】
さらに、分流コントローラ7には、高圧ガス配管4の切換弁(室内側四方切換弁)8の入口側に、第1電磁弁(SVH)10と固定絞り11との並列回路12が接続され、高圧ガス配管4と低圧ガス配管5との間に、切換弁(室内側四方切換弁)8および並列回路12をバイパスする第2電磁弁(SVG)13および固定絞り14を備えた油戻し運転用バイパス回路15が接続されており、この回路13,15に設けられている第1電磁弁(SVH)10および第2電磁弁(SVG)13を準備運転時に閉、洗浄運転時に開とするようにしている。このため、高圧ガス配管4内に寝込んでいる可能性がある多量の液冷媒を残留油と共に回収する準備運転時、液冷媒を第1電磁弁(SVH)10と並列に接続されている固定絞り11により調整して少量ずつ低圧ガス配管5に戻すことにより、一度に多量の液冷媒が戻されることによる油回収タンク20のオーバーフロー等を防止することができる。
【0045】
これは、分流コントローラ7内に、切換弁(室内側四方切換弁)8の高差圧下での切換えによる切換音を防止するため、その入口側に第1電磁弁(SVH)10と固定絞り11との並列回路12を設け、更に暖房運転時の油戻し運転を効率よく行うとともに、その際の冷媒流動音を防止するため、高圧ガス配管4と低圧ガス配管5との間に第2電磁弁(SVG)13と固定絞り14とを備えた油戻し運転用バイパス回路15を設けている。これらの回路12,15に設けられている第1電磁弁(SVH)10および第2電磁弁(SVG)13を利用し、冷媒配管を洗浄する際の準備運転時および洗浄運転時に、その第1および第2電磁弁10,13を開閉することにより、高圧ガス配管4からの冷媒の戻り量を適正にコントロールすることができる。
【0046】
これによって、高圧ガス配管4に溜り込んでいた液冷媒が一度に多量に油回収装置19に流れ込むことによる油回収タンク20のオーバーフローを防止し、準備運転を含む配管洗浄運転を安定化することができる。
【0047】
また、本実施形態では、油回収装置19の加熱手段23が、圧縮機からのホットガス冷媒が電磁弁(SV12)26を介して循環可能な構成とされ、少なくとも準備運転時、電磁弁(SV12)26が開とされ、ホットガス冷媒が導入されることにより油回収タンク20内に油と共に回収された冷媒が加熱可能な構成とされている。このため、油回収装置19では電磁弁(SV12)26を介して加熱手段23に、圧縮機から吐出されたホットガス冷媒の一部を導入することにより、それを熱源として冷媒を加熱、蒸発させることができる。従って、準備運転時における液冷媒による油回収タンク20のオーバーフローを防止することができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、準備運転後の配管洗浄運転において、圧縮機温度および吐出ガス温度を管理する一方で全室内機3の電子膨張弁18を開き気味とし、液バック運転状態として洗浄運転するようにした例について説明したが、洗浄運転は、前述した特許文献1の特開2012−225614号公報(特願2011−95238)に記載されているように、全室内機3を液バック運転確保グループと、安定運転確保グループに分けて運転するようにしてもよい。