特許第6207986号(P6207986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207986
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】膜分離装置の吊り上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/00 20060101AFI20170925BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20170925BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B01D65/00
   B01D63/08
   C02F1/44 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-243429(P2013-243429)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100746(P2015-100746A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡島 康信
(72)【発明者】
【氏名】新開 忠雄
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−319511(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/118785(WO,A1)
【文献】 特開2013−233484(JP,A)
【文献】 特開2011−255305(JP,A)
【文献】 特開2003−24752(JP,A)
【文献】 特開2012−148230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液中に浸漬して配置され、ろ過膜を透過した透過液を取り出す膜分離装置の吊り上げ方法であって、
膜分離装置の所定領域にガスを注入して、注入されたガスによって発生する浮力によって膜分離装置を被処理液中で浮上させ、浮上した膜分離装置の上部に備えた被係合部に吊り上げ装置の係合部を係合させて吊り上げるように処理され、
前記所定領域として、ろ過膜を透過した透過液の通流路をなす空間が用いられることを特徴とする膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項2】
膜分離装置は、ろ過膜を備える複数の膜エレメントと、並列配置される前記複数の膜エレメントの側部と連結して配置され膜エレメントの透過液の通流路と連通する集水空間を備えた集水ケースからなる膜モジュールを備え、
前記所定領域は、膜モジュールの透過液の通流路をなす空間であることを特徴とする請求項記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項3】
膜分離装置は、ろ過膜を備えた複数の膜エレメントを備え、膜エレメントは、ろ過膜を透過した透過液の通流路内を加圧することでろ過膜が膨出して通流路の容積が増大する平膜型の膜エレメントであり、前記所定領域へのガスの注入を膜エレメントのろ過膜が膨出することで吸収することを特徴とする請求項記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項4】
前記所定領域にガスを加圧供給することで、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を、ろ過膜を通じて被処理液中へ排出してガスと置換することを特徴とする請求項1または2記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項5】
前記所定領域の少なくとも1箇所を大気開放しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を吸引排出してガスと置換することを特徴とする請求項1または2記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項6】
前記所定領域にガスを加圧供給しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を吸引排出してガスと置換することを特徴とする請求項1または2記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【請求項7】
膜分離装置は、被処理液中に立設されたガイド部材に沿って上下方向に移動自在に構成され、前記所定領域にガスを注入することにより、前記ガイド部材に沿って浮上させることを特徴とする請求項1からの何れかに記載の膜分離装置の吊り上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液中に浸漬して配置され、ろ過膜を通じて透過液を取り出す膜分離装置の吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、処理槽に配置される膜分離装置等の水処理機器には吊り上げ用のチェーンが設けられており、吊り上げ装置に備えたフックを水面上に出た当該チェーンに係合した後に、吊り上げ装置を昇降操作していた。
【0003】
特許文献1には、処理槽内に吊り上げ装置を位置決めするための基準となる基準部が備えられ、水処理機器を伴って昇降可能な本体部と、水処理機器の吊り部に着脱可能な接続部と、基準部に本体部を位置決めして接続部を水処理機器の吊り部に対応させる位置決め部を備えた吊り上げ装置を用いた吊り上げ方法が開示されている。
【0004】
当該吊り上げ装置によれば、被処理液中に没して目視することのできない状態の膜分離装置を処理槽外から正確に操作することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−255305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した吊り上げ方法では、被処理液中に没して目視することのできない状態で、膜分離装置に備えた係合部に吊り上げ装置のフック等を係合させるために、吊り上げ装置に複雑な機構が必要になり、吊り上げ装置のイニシャルコストやメンテナンスコストが嵩む虞があった。
【0007】
また、従来のように手動で係合させる場合には非常に手間がかかる困難な作業が要求されるという問題があり、処理槽の液位を下げて膜分離装置を液面から露出させる場合には、そのための別途の吸液機構や貯液機構が必要になるという問題もあった。
【0008】
さらに、膜分離装置に備えたチェーン等も本体と同様に被処理液中に浸漬されるために長期の使用によって液面との境界付近で腐食する虞があり、腐食した状態のチェーンで吊り上げると適切に吊り上げることができなくなるという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した事情に鑑み、処理槽の液位を下げることなく、目視可能な状態で吊り上げ可能な膜分離装置の吊り上げ方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による膜分離装置の吊り上げ方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、被処理液中に浸漬して配置され、ろ過膜を透過した透過液を取り出す膜分離装置の吊り上げ方法であって、膜分離装置の所定領域にガスを注入して、注入されたガスによって発生する浮力によって膜分離装置を被処理液中で浮上させ、浮上した膜分離装置の上部に備えた被係合部に吊り上げ装置の係合部を係合させて吊り上げるように処理され、前記所定領域として、ろ過膜を透過した透過液の通流路をなす空間が用いられる点にある。
【0011】
膜分離装置が被処理液に浸漬された状態で膜分離装置の所定領域にガスを注入すると、その浮力によって膜分離装置が浮上するので、被処理液の液位を低下させなくても、少なくとも膜分離装置の上部の状態を目視確認することができる。そのような状態であれば、極めて容易に膜分離装置の上部に備えた被係合部に吊り上げ装置の係合部を係合させることができる。そして、ガスが注入される所定領域として、ろ過膜を透過した透過液の通流路をなす空間を好適に用いることができる。
【0012】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第の特徴構成に加えて、膜分離装置は、ろ過膜を備える複数の膜エレメントと、並列配置される前記複数の膜エレメントの側部と連結して配置され膜エレメントの透過液の通流路と連通する集水空間を備えた集水ケースからなる膜モジュールを備え、前記所定領域は、膜モジュールの透過液の通流路をなす空間である点にある。
【0013】
上述の構成によれば、ろ過膜から集水空間までの広い空間をガス注入空間として利用できるようになり、仮に膜分離装置がある程度の重量であっても容易に浮上させることができるようになる。
【0014】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第の特徴構成に加えて、膜分離装置は、ろ過膜を備えた複数の膜エレメントを備え、膜エレメントは、ろ過膜を透過した透過液の通流路内を加圧することでろ過膜が膨出して通流路の容積が増大する平膜型の膜エレメントであり、前記所定領域へのガスの注入を膜エレメントのろ過膜が膨出することで吸収する点にある。
【0015】
所定領域であるろ過膜を透過した透過液の通流路をなす空間が透過液で満たされていた場合であっても、ガスを注入するとろ過膜が膨出して適切な浮力が発生するようになる。
【0016】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記所定領域にガスを加圧供給することで、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を、ろ過膜を通じて被処理液中へ排出してガスと置換する点にある。
【0017】
上述の構成によれば、加圧供給されたガスの圧力によって所定領域、例えばろ過膜と透過液の通流路とで仕切られる空間に残留する透過液がろ過膜を通じて膜分離装置外部に排出され、その空間がガスに置換されるようになる。
【0018】
同第の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記所定領域の少なくとも1箇所を大気開放しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を吸引排出してガスと置換する点にある。
【0019】
上述の構成によれば、所定領域に残留する透過液を吸引排出すると所定領域に負圧が生じ、大気開放された1箇所からガス(空気)が流入してその空間がガス(空気)に置換されるようになる。
【0020】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記所定領域にガスを加圧供給しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を吸引排出してガスと置換する点にある。
【0021】
上述の構成によれば、所定領域に残留する透過液が吸引排出されると同時に所ガスが加圧供給されるので、透過液で満たされていた空間が速やかにガスに置換され、膜分離装置を速やかに浮上させることができるようになる。
【0022】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、膜分離装置は、被処理液中に立設されたガイド部材に沿って上下方向に移動自在に構成され、前記所定領域にガスを注入することにより、前記ガイド部材に沿って浮上させる点にある。
【0023】
上述の構成によれば、ガイド部材に沿って膜分離装置が浮上するので、浮上する際に膜分離装置の姿勢が不安定にならず、安定姿勢で浮上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、処理槽の液位を下げることなく、目視可能な状態で吊り上げ可能な膜分離装置の吊り上げ方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a),(b)は本発明による膜分離装置の吊り上げ方法の説明図
図2】処理槽に浸漬配置された膜分離装置の説明図
図3】(a)は吊り上げ装置の平面図、(b)は同正面図、(c)は同側面図
図4】(a)から(d)は吊り上げ動作の説明図
図5】(a)は膜分離装置の一例の説明図、(b)は膜エレメントの説明図
図6】(a)は膜分離装置の他の例の説明図、(b)は膜モジュールの説明図
図7】(a),(b)は膜分離装置に備えた膜分離装置の浮上用のガスを注入する専用領域の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による膜分離装置の吊り上げ方法の実施形態を説明する。
【0027】
図1(a)及び図2に示すように、水処理設備1は、槽体である処理槽2と、処理槽2の内部に充填された被処理水に浸漬配置された膜分離装置3と、膜分離装置3を吊り上げる吊り上げ装置4とを備えて構成されている。
【0028】
膜分離装置3は、上下が開口したケーシングの内部に多数の板状の平膜型の膜エレメントが、各膜面が縦姿勢となるように一定間隔を隔てて配列された膜モジュールと、膜モジュールの下方に設置された散気装置を備えた浸漬型の膜分離装置3で、処理槽2にはこのような膜分離装置3が複数台浸漬設置されている。
【0029】
そして、定期的なメンテナンスや膜エレメントの交換時に、膜分離装置3を吊り上げて処理槽2の内外に移動させるために吊り上げ装置4が設置されている。
【0030】
処理槽2の底部には、各膜分離装置3を位置決めするためのガイド部材として2本の案内バー8が立設固定され、膜分離装置3の側壁に設けられた被案内部30がその案内バー8に係合状態で摺動しながら浸漬される。2本の案内バー8は平面視で膜分離装置3の一対の対角の近傍に配置され、また案内バー8に対向する膜分離装置3の各側壁の上部には、それぞれ左右一対の板状突起で案内バー8を挟む被案内部30が取り付けられている。
【0031】
吊り上げ装置4は、スリングベルトやチェーン等の索体5を介してホイストクレーン等の揚重機6に昇降自在に懸垂支持されている。揚重機6は上方に設置された走行用のレール7に支持され、当該レール7に沿って水平方向に移動可能に設置されている。
【0032】
図3(a),(b),(c)に示すように、吊り上げ装置4は、鋼板製の一対のサイドフレーム42,42と、サイドフレーム42,42を連結するセンターフレーム43で構成されるフレームを備え、フレームのうちサイドフレーム42,42に対して、上部が回動自在に枢支ピンPで支持固定されて垂設された係合部44が取り付けられている。
【0033】
当該係合部44は、二枚の長円状の板材の下端が膜分離装置3の被係合部32と係合する係合ピン44aで連結され、上端が上述の枢支ピンPでサイドフレーム42,42に揺動自在に取り付けられている。枢支ピンPの一端側には螺子部が形成され、ナットで締付け固定可能に構成されている。
【0034】
詳述すると、サイドフレーム42,42の左右側部には、係合部44を取付け可能な左右一対の孔部47,48が形成されている(図3(c)参照)。内側の孔部48に枢支ピンPを挿入して係合部44を取り付けると処理槽2内に配置された膜分離装置3を吊り上げるための第1操作状態となり、外側の孔部47に枢支ピンPを挿入して係合部44を取り付けると膜分離装置3を吊り上げた状態から処理槽2内に配置するための第2操作状態となる。つまり、係合部44は第1操作状態と第2操作状態との間で取付け状態を適宜変更可能に構成されている。
【0035】
さらに、センターフレーム43の中央部には、揚重機6と連結する索体5の取付け部46が設けられ、サイドフレーム42,42には、それぞれ一端側に案内バー8,8と係合する被案内部40が設けられている。被案内部40も左右一対の板状突起で案内バー8を挟むように構成されている。
【0036】
処理槽2に浸漬配置された膜分離装置3を取り出す膜分離装置の吊り上げ方法を説明する。
図1(b)に示すように、先ず、膜分離装置3の所定領域にガス(本実施形態では空気)を注入して、当該領域で発生する浮力によって膜分離装置3を処理槽2の被処理液中に浮上させる。
【0037】
次に、第1操作状態となるように内側の孔部48に係合部44が取り付けられた吊り上げ装置4を、各被案内部材40,40と案内レール8,8とが係合するように位置決めして、揚重機6を繰り出し作動させることにより降下させる。
【0038】
図4(a)に示すように、吊り上げ装置4が降下すると、吊り上げ装置4の係合部材44が上方から膜分離装置3の被係合部32に接触し、図4(b)に示すように、さらに吊り上げ装置4が降下すると、係合部44が被係合部32の傾斜辺部32aに沿って外方に揺動、つまり枢支ピンP回りに係合部材44が揺動する。
【0039】
図4(c)に示すように、さらに吊り上げ装置4が降下すると、係合ピン44aが被係合部32の傾斜辺部32aを通過して、枢支ピンP回りに垂設状態へ戻る方向に回動するため、係合部44の係合ピン44aと被係合部32とが係合する。
【0040】
図4(d)に示すように、この状態で、揚重機6を巻き上げ作動させて吊り上げ装置4を上昇させると、処理槽2から膜分離装置3が引き揚げられる。
【0041】
本発明による膜分離装置3の吊り上げ方法に用いられる吊り上げ装置4や膜分離装置3の被係合部32の構造は上述の例に限るものではなく、適宜構成することができる。例えば、膜分離装置3の被係合部32として、図5(a)等に示すようなアイボルト32を用いてもよく、そのアイボルト32と係合するようなフックを吊り上げ装置4に備えた構造であってもよい。
【0042】
以下に、ガスが注入される所定領域について詳述する。
図5(a)には、膜分離装置3の一例が示され、図5(b)には当該膜分離装置3に組み込まれる膜エレメント11が示されている。この例では、膜分離装置3の被係合部32として装置上面四隅にそれぞれに設置されたアイボルト32が用いられている。
【0043】
当該膜分離装置3は、上下が開口した膜ケース9の内部に100枚の板状の膜エレメント11が、各膜面が縦姿勢となるように、かつ6mmから10mm程度(本実施形態では8mm)の一定間隔を隔てて並列配置されており、膜ケース9の下方に散気装置10を備えている。
【0044】
膜エレメント11には集水管17を介して槽外に設置された差圧発生機構としてのポンプ18が接続され、槽内の被処理水が膜エレメント11の膜面を透過するように吸引濾過される。
【0045】
図5(b)に示すように、膜エレメント11は平膜型であって、縦1000mm×横490mmのABS樹脂等の熱可塑性樹脂製のろ板12の表裏両面にろ過膜13が配置され、ろ過膜13の周縁の接合部14がろ板12に超音波や熱で融着接合され、または接着剤等を用いて接着接合されて構成されている。
【0046】
ろ過膜13は、例えばPET製の不織布でなる支持体に多孔性を有する樹脂が塗布及び含浸され、平均孔径が約0.2μmの微多孔性膜が形成された有機濾過膜である。
【0047】
ろ板12の表面には長手方向に沿って深さ2mm、幅2mm程度の溝部12bが複数本形成され、その上端部には各溝部12bを連通する水平溝部12cが形成されている。表裏両面に形成された水平溝部12cが連通孔12dを介して連通され、膜支持体9の上縁部に形成されたノズル12aに連通されている。
【0048】
各ノズル12aは、チューブ16を介して集水管17に接続され、集水管17にはポンプ18が接続され、ポンプ18で吸引された透過水が処理水槽に移送されるように構成されている。
【0049】
このような膜分離装置3における所定領域とは、ろ過膜13と透過液の通流路である溝部12b及び水平溝部12cとで仕切られる空間である。
【0050】
所定領域にガスを注入するため、集水管17にはブロワ19がポンプ18に併設されており、ポンプ18及びブロワ19の夫々にバルブ18a、19aが設けられている。
【0051】
膜分離装置3を浮上させる際には、バルブ18aを閉塞した上でバルブ19aを開放し、ブロワ或いはコンプレッサ19から集水管17及びチューブ16を通じて所定領域にガスを加圧供給する。このとき、ガスの圧力によって所定領域内の透過液の一部がろ過膜13を通じて膜分離装置3の外部の被処理液中に排出されてガスと置換されるとともにろ過膜13が膨出し、所定領域に浮力を発生させる。尚、透過液を外部に排出しなくても、ろ過膜13の膨出特性を利用して、ガスを供給することによってろ過膜を膨出させるだけで浮力を発生させることも可能である。
【0052】
また、膜分離装置3を浸漬設置する際にはバルブ19aを閉塞し、ブロワ19を停止させるとともに、ポンプ18を作動させてバルブ18aを開放することで所定領域からガスが排気され、浮力が失われる。
【0053】
図6(a)には、本発明による吊り上げ方法が適用される膜分離装置3の他の例が示され、図6(b)には当該膜分離装置3に組み込まれる膜モジュール20が示されている。
【0054】
当該膜分離装置3は、膜モジュール20が縦に8段積層設置された膜モジュール群が、横に5列並設されるように枠体27内に収容されて構成されている。
【0055】
枠体27は、処理槽に浸漬配置された状態で各膜モジュール20を安定姿勢で保持するとともに、各膜モジュール20を収容した状態で一体的に生物反応槽に浸漬し、或は取り出すため、十分な強度を確保する観点等から金属製の下部フレーム27a、横フレーム27b、上部フレーム27c等を備えている。
【0056】
最下段の膜モジュール20の下方に散気用給気管28が設置され、当該散気用給気管28から給気された散気エアにより、各膜モジュール20に縦姿勢で水平方向に並設された複数の膜エレメント21間に生物処理槽内の被処理液の上昇流が発生し、各膜エレメント21の膜面を透過した透過液が集液管29を通じて槽外へ導出される。
【0057】
集液管29には生物処理槽の外部に設置された処理液槽に到る処理液導出管(図示されていない)が連通され、その管路途中にポンプ装置が介装されている。散気用給気管28にはブロワやコンプレッサなどの給気源が連通されている。
【0058】
各膜モジュール20は、前後一対の集液部22と左右一対のカバー部材23と、複数の膜エレメント21を備え、前後一対の集液部22と左右一対のカバー部材23で区画される空間内に各膜エレメント21の膜面が対向するように、一定間隔を隔てて縦姿勢で並列配置されて構成されている。
【0059】
膜エレメント21は平膜型であり、膜支持体としての平板状のろ板と分離膜で構成され、ろ板の表裏両面に分離膜が配置されている。
【0060】
集液部22は中空状の集水空間を備えた集水ケースとして形成され、分離膜を透過した処理液がろ板に形成された集水路を通じて集液部22の内部に導かれるように構成されている。
【0061】
ろ板はABS樹脂やポリプロピレン等で形成され、分離膜は基材となる不織布に多孔性樹脂が塗布及び含浸されて構成されている。尚、ろ板はABS樹脂等の剛性を有する材質に限らず、シート状の不織布やネット等の可撓性を有する材質を使用して構成してもよい。
【0062】
集液部22とカバー部材23は、ABS樹脂やポリプロピレン等の射出成形で得られる。集液部22は、分離膜の破損等による汚泥の集液部22への流入を確認し易いように、透光性を有するように構成されることが好ましい。
【0063】
集液部22は、上下に隣接する各膜モジュール20の集液部22間を透過液が流通するように連通する開口部24と、開口部24内壁に液密状態で嵌挿する嵌挿部25とで連結固定されている。
【0064】
嵌挿部25は、直上に積層される膜モジュール20の集液部22に形成された開口部24に液密状態で嵌挿され、上下に隣接する集液部22間が連通される。これにより、枠体27内部に積層された各膜モジュール20が上下の集液部22の対向面で接合され、開口部24と嵌挿部25との嵌合部を介して安定的に姿勢保持されながら、各膜モジュール20の膜エレメント21から集液部22に集液された透過液が液密状態で嵌合した嵌合部を介して通液することが可能となる。嵌合部を介して通液された透過液は、上部フレーム27c近傍、及び、下部フレーム27a内に配設された集液管29に導出される。
【0065】
つまり、膜分離装置3は、並列配置されるろ過膜を備えた複数の膜エレメント21と、複数の膜エレメント21の側部と連結して配置され膜エレメント21からの透過液を集水する集水空間を備えた集水ケースからなる膜モジュール20を備えている。
【0066】
そして、膜分離装置3の所定領域が、膜モジュール20の透過液の通流路をなす空間に設定されている。
【0067】
このような膜分離装置3を浮上させる方法の一つとして、集液管29を介して当該所定領域にガスを加圧供給することが挙げられる。当該所定領域に残留する透過液の少なくとも一部が、ろ過膜を通じて膜分離装置外部の被処理液中へ排出してガスと置換されるため、当該所定領域に浮力が生じる。尚、透過液を外部に排出しなくても、ろ過膜13の膨出特性を利用して、ガスを供給することによってろ過膜を膨出させるだけで浮力を発生させることも可能である。
【0068】
膜分離装置3を浮上させる別の方法として、所定領域の少なくとも1箇所、例えば集液管29aを大気開放しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を、例えば集液管29bを介して吸引排出してガスと置換することが挙げられる。
【0069】
膜分離装置3の集水管29の内、例えば下部の集水管29bから所定領域に残留する透過液を吸引排出すると所定領域に負圧が生じる。同時に上部の集水管29aを大気解放することでガス(空気)が流入する。即ち当該所定領域の一部がガス(空気)に置換されるため浮力が生じる。
【0070】
膜分離装置3を浮上させる更に別の方法として、所定領域の少なくとも1箇所からガスを加圧供給しながら、前記所定領域に残留する透過液の少なくとも一部を吸引排出してガスと置換することが挙げられる。
【0071】
膜分離装置3の集水管29の内、例えば下部フレーム27a内に配設された集水管29bから所定領域に残留する透過液を吸引排出すると所定領域に負圧が生じる。同時に上部フレーム27cの近傍の集水管29aからガスを加圧供給することで、透過液で満たされていた空間が速やかにガスに置換され、膜分離装置3を速やかに浮上させることができるようになる。
【0072】
上述の実施形態ではろ過膜を透過した透過液の通流路をなす空間を所定領域としたが、膜分離装置3の透過液の通流路と不連通な浮上用のガスを注入する専用領域を設けてもよい。
【0073】
図7(a)(b)に示す膜分離装置3は所定領域としてガスを注入する専用領域であるフロート50を備えている。膜分離装置3を被処理液中に浸漬させるときはフロート50からガスを放出させて、図7(a)に示すようにフロート50を収縮した状態とする。一方、膜分離装置3を被処理液中に浮上させるときはフロート50にガスを注入して、図7(b)に示すようにフロート50を膨出させ、浮力を発生させる。このようなフロート50は任意の態様の膜分離装置3に適用することが可能である。
【0074】
図1及び図2に示した実施形態では、処理槽2の平面視対角に立設した2本の案内バー8に沿って膜分離装置3が浮上するように構成されているが、案内バー8が1本であってもよく、3本以上立設されていてもよい。また案内バーを設けない態様であってもよい。更に案内バーの位置についても、膜分離装置3の平面視対角部位に限定されるものでもない。
【0075】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、例えば膜エレメントは平膜型以外の中空糸膜型やセラミックス膜型等でもよく、各部位のサイズ、数量、素材等といった各部の具体的構成も本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1:水処理設備
3:膜分離装置
8:ガイド部材
13:ろ過膜
20:膜モジュール
21:膜エレメント
32:被係合部
44:係合部
50:専用領域(フロート)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7