(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として示す熱交換器の概略斜視図、
図2は正面図、
図3は側面図(
図2のA−A矢視図)、
図4は
図2のB−B断面図、
図5は平面図(
図2のC−C矢視図)、
図6は
図2のD−D断面図、
図7は
図2のE−E断面図である。
【0012】
本実施形態の熱交換器10は、蒸発器であり、空気(空調用空気)の通流方向(
図1中AIRの矢印方向)において、前後に並べて配置された2つの熱交換ユニット100、200を有している。ここで、2つの熱交換ユニット100、200のうち、通流方向の上流側に位置する熱交換ユニット100は、冷媒出口パイプ110を有する冷媒出口側の熱交換ユニットであり、通流方向の下流側に位置する熱交換ユニット200は、冷媒入口パイプ210を有する冷媒入口側の熱交換ユニットである。
【0013】
熱交換ユニット100は、互いに平行に配置される上下一対の円筒状のヘッダタンク101、102と、これらのヘッダタンク101、102を並列に連通する複数の扁平チューブ103と、扁平チューブ103間に配置されるアウターフィン104とから構成され、これらはろう付けにより接合される。
【0014】
扁平チューブ103は、アルミ材(アルミニウムあるいはアルミニウム合金)により中空扁平形状に形成され、中空部は冷媒流路をなす。
アウターフィン104は、波板形状で、隣合う扁平チューブ103、103の扁平面間に挿入配置され、空気の通流方向に空気流路を形成する。
【0015】
上側のヘッダタンク101は、その下側の円筒面に、複数の扁平チューブ103の上端部が連通している。尚、ヘッダタンク101には、前記扁平チューブ103を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、上側のヘッダタンク101の左右の両端部は閉塞されている。
【0016】
下側のヘッダタンク102は、その上側の円筒面に、複数の扁平チューブ103の下端部が連通している。尚、ヘッダタンク102にも、前記扁平チューブ103を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、下側のヘッダタンク102の左右の両端部のうち、一方(図で右方)は閉塞されるが、他方(図で左方)には冷媒出口パイプ110が接続されている。そして、下側のヘッダタンク102の長手方向中間部には、タンク内空間を第1及び第2のタンク内空間102a、102bに仕切る仕切壁105が設けられる。尚、仕切壁105は、円板状に形成され、ヘッダタンク102に予め形成したスリットを介して挿入し、接合する。
【0017】
下側のヘッダタンク102において、仕切壁105により仕切られる一端側のタンク空間(第1のタンク空間)102aは、冷媒の流出側のタンク空間となり、他端側のタンク空間(第2のタンク空間)102bは、接続部材300を介して他の熱交換ユニット200と連通するタンク空間となる。
【0018】
熱交換ユニット200は、熱交換ユニット100と同様、互いに平行に配置される上下一対の円筒状のヘッダタンク201、202と、これらのヘッダタンク201、202を並列に連通する複数の扁平チューブ203と、扁平チューブ203間に配置されるアウターフィン204とから構成され、これらはろう付けにより接合される。
【0019】
扁平チューブ203は、扁平チューブ103と同様、アルミ材により中空扁平形状に形成され、中空部は冷媒流路をなす。
アウターフィン204は、アウターフィン104と同様、波板形状で、隣合う扁平チューブ203、203の扁平面間に挿入配置され、空気の通流方向に空気流路を形成する。
【0020】
上側のヘッダタンク201は、その下側の円筒面に、複数の扁平チューブ203の上端部が連通している。尚、ヘッダタンク201には、前記扁平チューブ203を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、上側のヘッダタンク201の左右の両端部は閉塞されている。
【0021】
下側のヘッダタンク202は、その上側の円筒面に、複数の扁平チューブ203の下端部が連通している。尚、ヘッダタンク202にも、前記扁平チューブ203を嵌合するため、スリットが予め形成されている。そして、下側のヘッダタンク202の左右の両端部のうち、一方(図で右方)は閉塞されるが、他方(図で左方)には冷媒入口パイプ210が接続されている。そして、下側のヘッダタンク202の長手方向中間部には、タンク内空間を第1及び第2のタンク内空間202a、202bに仕切る仕切壁205が設けられる。尚、仕切り壁205は、円板状に形成され、ヘッダタンク202に予め形成したスリットを介して挿入し、接合する。
【0022】
下側のヘッダタンク202において、仕切壁205により仕切られる一端側のタンク空間(第1のタンク空間)202aは、冷媒の流入側のタンク空間となり、他端側のタンク空間(第2のタンク空間)202bは、接続部材300を介して他の熱交換ユニット100と連通するタンク空間となる。
【0023】
尚、熱交換ユニット100のアウターフィン104と、熱交換ユニット200のアウターフィン204とは、熱交換ユニット100、200を連結するように一体構造となっている。
また、熱交換ユニット100、200の上側のヘッダタンク101、201の両端部は、前後一体のキャップ106、107により閉止されている。熱交換ユニット100、200の下側のヘッダタンク102、202の一方(右側)の端部は、前後一体のキャップ108により閉止されている。熱交換ユニット100、200の下側のヘッダタンク102、202の他方(左側)の端部は、前後一体のキャップ109を介して、パイプ110、210が接続されている。
また、熱交換ユニット100、200の両側部は補強板111、112により補強されている(
図2参照)。
【0024】
ここにおいて、熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の第2のタンク内空間102bと、熱交換ユニット200の下側のヘッダタンク202の第2のタンク内空間202bとは、接続部材300により接続される。
接続部材300は、ヘッダタンク102の円筒面とヘッダタンク202の円筒面との間に挿入配置されて一体にろう付けされるもので、第2のタンク内空間102bと202bを連通する連通孔を有している。
【0025】
以上のように構成された熱交換器10での冷媒の流れは
図8の矢印に示すようになる。
冷媒は、後側の熱交換ユニット200の冷媒入口パイプ210から下側のヘッダタンク202内の仕切板205により仕切られた第1のタンク内空間202aに流入し、第1のタンク内空間202aに連通している扁平チューブ203の一群(第1パスP1)を上向きに流れ、上側のヘッダタンク201内に流入する。
上側のヘッダタンク201内に流入した冷媒は、扁平チューブ203の他群(第2パスP2)を下向きに流れ、下側のヘッダタンク202内の仕切板205により仕切られた第2のタンク内空間202bに流入する。
【0026】
冷媒は、その後、後側の熱交換ユニット200の下側のヘッダタンク202の第2のタンク空間202bから、接続部材300を介して、前側の熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の仕切壁105により仕切られた第2のタンク内空間102bに流入する。
前側の熱交換ユニット100の下側のヘッダタンク102の第2のタンク内空間102bに流入した冷媒は、第2のタンク内空間102bに連通している扁平チューブ103の一群(第3パスP3)を上向きに流れ、上側のヘッダタンク101内に流入する。
上側のヘッダタンク101内に流入した冷媒は、扁平チューブ103の他群(第4パスP4)を下向きに流れ、下側のヘッダタンク102内の仕切板105により仕切られた第1のタンク内空間102aに流入し、冷媒出口パイプ110より流出する。
【0027】
かかる流れ構造では、空気の通流方向に対し、後側の熱交換ユニット200が冷媒の流れ方向で上流側、前側の熱交換ユニット100が冷媒の流れ方向で下流側となり、冷媒の流れ方向と空気の通流方向とが対向する、いわゆるカウンターフローとなる。これにより、空気の通流方向での空気と冷媒との温度差を均一化でき、熱交換効率を向上させることができる。
【0028】
次に本実施形態での扁平チューブ103、203の詳細構造について
図9〜
図14を参照して説明する。
図9は扁平チューブの全体図、
図10は扁平チューブ(及びインナーフィン)の断面図(
図9のX−X断面図)、
図11は扁平チューブの他の箇所での断面図(
図9のY−Y断面図)、
図12は扁平チューブの更に他の箇所での断面図(
図9のZ−Z断面図)、
図13はインナーフィンの平面図、
図14はインナーフィンの小突起と扁平チューブ外面に形成される突起痕とを示す一部破断斜視図である。尚、
図10〜
図12は
図13のインナーフィンのX−X、Y−Y、Z−Z部の断面と一致する。
扁平チューブ103と203は同一構造であるので、扁平チューブ103について代表して説明する。
【0029】
扁平チューブ103は、板材を中間部でU字状に折り返し(折り返し部400)、板材の端縁部同士を接合することで、中空扁平形状に形成される。板材としては、アルミを母材として、一方の面(内面側となる面)にろう材を積層したクラッド材が用いられる。板厚は0.2mm程度である。
また、扁平チューブ103の接合側(折り返し部400の反対側)には、端縁部同士が互いに接近してろう付けされる接合部401と、該接合部401より外側で互いに離間する拡開部402とが形成される。拡開部402は「ハ」字状に拡開する。
拡開部402を設けることにより、この拡開部402を介して、接合部401の合わせ面の状態を見ることができ、ろう付け状態のチェックが容易となる。
【0030】
扁平チューブ103内には波板形状のインナーフィン500が挿入配置される。
インナーフィン500は、板厚0.1mm程度のアルミの板材を波板形状に成形したものである、従って、インナーフィン500は、両面にそれぞれ複数の凸条部501A、501Bを有し、凸条部501A、501Bにて扁平チューブ103の内面に接合される。
【0031】
波板形状のインナーフィン500の両面の凸条部501A、501Bには、その延在方向に所定の間隔で、当該凸条部501A、501Bの左右の凹溝502A、502Bを連通させるくぼみ部(押し潰し部)503A、503Bが形成される。くぼみ部503A、503Bは、複数の凸条部501A、501Bに跨がって、インナーフィン500を横断する方向に連続的に形成される。
【0032】
インナーフィン500の凸条部501A、501Bにより、これを仕切壁として、扁平チューブ103の延在方向に複数の冷媒通路を形成した熱交換器では、空気の通流方向の上流側に位置する冷媒通路を流れる冷媒と、下流側に位置する冷媒通路を流れる冷媒とで、空気との熱交換量に差異が生じるため、熱交換器全体としての熱交換効率が悪化する場合がある。
このため、空気の通流方向で上流側の冷媒通路と下流側の冷媒通路とを連通させて、冷媒を混合することにより、各冷媒通路を流れる冷媒の熱交換量を均一化することが可能となる。
また、上記の連通により、乱流を生じさせることができ、これによって熱交換を促進することができる。
【0033】
インナーフィン500には、
図13及び
図14に示すように、扁平チューブ103の内面と接合される凸条部501A、501Bに小突起(突起部)504A、504Bが形成される。
小突起504A、504Bは、各凸条部501A、501Bにおいて、くぼみ部503A、503B間に、1つずつ形成される。小突起504A、504Bは、また、円錐状に形成され、突出高さは0.05mm程度である。但し、円錐状に限らず、半球状などであってもよい。
尚、小突起付きのインナーフィン500は、2工程で成形可能である。すなわち、第1プレス工程で波板形状に成形し、第2プレス工程でくぼみ部503A、503Bと小突起504A、504Bとを同時成形する。
【0034】
扁平チューブ103は、インナーフィン500を挿入後、
図15に示されるように、ロール加工又はプレス加工により、扁平チューブ103の両面から押圧処理(押し潰し処理)される。これにより、
図14に示されているように、扁平チューブ103の外面に、インナーフィン500の小突起504Aに起因する突起痕505が形成される。尚、裏面側には小突起504Bに起因する突起痕が形成されるが、裏側の突起痕は図示されていない。
【0035】
従って、扁平チューブ103とインナーフィン500とのアッセンブリ後に、扁平チューブ103の両面から押圧することにより、小突起504A、504Bは潰れるものの、扁平チューブ103がわずかに変形し、その外面に小突起504A、504Bに起因する突起痕505が残る。逆に扁平チューブ103の浮きなどにより、扁平チューブ103とインナーフィン500とが正しく接触していない場合は、突起痕505が形成されない。従って、扁平チューブ103の外面に正しく突起痕505が形成されているか否かを目視で検査することにより、扁平チューブ103とインナーフィン500との接触状態を検査でき、突起痕505が形成されていないものを不良品として排除できる。
【0036】
次にろう付けについて説明する。
熱交換器10のヘッダタンク101、102、201、202、扁平チューブ103、203、アウターフィン104、204及び接続部材300を含む構成部品は、予め接合面側にろう材をコーティングしたり、接合面側にろう材を積層してあるクラッド材により形成したりし、組み立て後、加熱炉内で加熱して、ろう材を溶融させることにより接合する。
尚、ヘッダタンク101、102、201、202には、外周面側にろう材が積層されている。扁平チューブ103、203には、内面側にろう材が積層されている。アウターフィン104、204には、両面にろう材が積層されている。インナーフィン500については、ろう材は積層せず、扁平チューブ103、203側のろう材で接合する。
【0037】
扁平チューブ103(及び203)の接合部401についてみると、加熱炉内で、扁平チューブ103内面側のろう材が溶融して、接合される。
また、扁平チューブ103(及び203)内のインナーフィン500についても、このときに扁平チューブ103の内面とインナーフィン500の凸条部501A、501Bとの間で扁平チューブ103側のろう材が溶融して、接合される。
【0038】
このとき、インナーフィン500の凸条部501A、501Bに形成される小突起504は、扁平チューブ103とろう付けにより接合される際に、確実に接触することから、扁平チューブ103とインナーフィン500との間のろう流れの起点となり、ここから毛細管現象により凸条部501A、501Bに沿って、ろう流れを誘発でき、扁平チューブ103とインナーフィン500との隙間にろう材が充填される。従って、確実な接合を行うことができる。
【0039】
本実施形態によれば、扁平チューブ103(及び203)内に配置される波板形状のインナーフィン500は、扁平チューブ103の内面と接合される凸条部501A、501Bに小突起504A、504Bを有し、扁平チューブ103の外面に、扁平チューブ103とインナーフィン500との圧接により、前記小突起504A、504Bに起因する突起痕505が形成されるようにしたため、扁平チューブ103の内部を覗くことなく、外観からインナーフィン500との接触状態を検査できるという効果が得られる。従って、扁平チューブ103とインナーフィン500との接触状態の管理が容易となり、両者を確実に接合でき、熱交換性能の向上にもつながる。
また、インナーフィン500の凸条部501A、501Bに形成される小突起504A、504Bは、ろう付けの際のろう流れの起点となり、ここから凸条部501A、501Bに沿って、ろう流れを誘発できるので、より確実な接合を行うことができるという副次的効果を奏する。
【0040】
また、本実施形態によれば、インナーフィン500の凸条部501A、501Bには、その延在方向に所定の間隔で、当該凸条部の左右の凹溝部502A、502Bを連通させるくぼみ部(押し潰し部)503A、503Bが形成されるため、熱交換効率を向上させることができる。そして、小突起504A、504Bは、凸条部501A、501B上で、くぼみ部503A、503B間に1つずつ形成されるので、小突起504A、504Bをバランス良く配置することができる。
また、インナーフィン500をくぼみ部503A、504Bのような複雑な形状とすると、接合部が分散されるため、接合不良を生じやすくなるが、小突起504A、504Bを設けてることで、接合不良の発生を抑制することができる。
但し、インナーフィン500の波板形状は図示の実施形態に限定されるものではなく、くぼみ部503A、503Bを有しないものであってもよい。また、くぼみ部503A、503Bに代えて、連通孔を有するものであってもよい。また、波板形状は空気通路が直線状に形成されるものに限らず、蛇行したりするものであってもよい。
【0041】
また、本実施形態によれば、前記小突起504A、504Bは、円錐状に形成されるため、自らは犠牲変形により消滅するも、扁平チューブ103の外面に適度な突起痕505を残すことができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、扁平チューブ103内にインナーフィン500を挿入し、扁平チューブ103をその両面からロール加工やプレス加工により押圧処理し、小突起504A、504Bを犠牲変形させた後、扁平チューブ103の外面に突起痕505が形成されているか否かを検査し、検査後にろう付けを含む熱交換器の組み立てを行うようにすることで、熱交換器の完成度を上げることができる。
【0043】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。