特許第6207999号(P6207999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6207999電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6207999
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20170925BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20170925BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02M7/48 M
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-264307(P2013-264307)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-122840(P2015-122840A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】明田 淳
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−213264(JP,A)
【文献】 特開昭61−35159(JP,A)
【文献】 特開2004−201379(JP,A)
【文献】 特開2013−66299(JP,A)
【文献】 特開2013−132131(JP,A)
【文献】 特開2000−358377(JP,A)
【文献】 特開2008−109846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータによって交流電力から変換された直流電圧を検知する電圧検知手段と、
前記電圧検知手段によって検知された直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かを、前記交流電力の周波数の仮定値に応じた時間間隔で判定する電圧判定手段と、
前記仮定値に応じた時間範囲内に、前記電圧判定手段によって直流電圧が前記基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、前記仮定値の正否を判定する周波数判定手段と、
を備える電源周波数判定装置。
【請求項2】
前記基準電圧範囲は、予め定められた基準電圧を判定値とし、該判定値の許容幅を前記直流電圧のリプル幅の所定割合とした範囲である請求項1記載の電源周波数判定装置。
【請求項3】
前記電圧検知手段は、交流電力を直流電力に変換するコンバータと直流電力を変換してモータに供給するインバータとの間に備えられ、
前記電圧判定手段は、前記モータの回転数が一定とされている間に、判定を行う請求項1又は請求項2記載の電源周波数判定装置。
【請求項4】
コンバータによって交流電力から変換された直流電圧を検知する第1工程と、
検知した直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かを、前記交流電力の仮定周波数に応じた時間間隔で判定する第2工程と、
前記周波数に応じた時間範囲内に、検知した直流電圧が前記基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、前記仮定値の正否を判定する第3工程と、
を含む電源周波数判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気調和装置等に用いられるモータの制御として、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御が行われている。
【0003】
PAM制御では、入力電流の高調波成分を低減するために、交流電力の周波数に応じたパルスを出力する。このため、PAM制御では、交流電力の周波数を正しく判定する必要がある。
【0004】
交流電力の周波数を検知する周波数検知回路の例として、特許文献1には、脈動電圧検知手段の検知に係る脈動電圧に基づいて1周期の時間を算出し、例えば6倍して逆数をとった値を電源周波数とすることが開示されている。
【0005】
このような周波数検知回路は、空気調和装置等の交流電力が供給される装置への交流電力の供給と同時に交流電力のゼロクロスの間隔を計測することにより、交流電力の周波数、例えば50Hz又は60Hzの判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−66299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
周波数検知回路は、分圧抵抗によって構成されている。このため、周波数検知回路は、周波数を検知しない待機状態であっても、分圧抵抗に電圧が印加される。このため、周波数検知回路は、待機状態であっても、分圧抵抗によって電力が消費される。
【0008】
このため、周波数検知回路の待機電力を低減させるために、装置に対する電源の投入と同時に周波数検知回路による交流電力の周波数の検知を行っていた。そして、周波数の判定後に、周波数検知回路をリレーによって切断することで、周波数検知回路による電力消費を防止していた。
このように、周波数検知回路を用いた交流電力の周波数判定には、装置の交流電力の供給時に複雑な処理を必要としている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、周波数検知回路を別途備えることなく、交流電力の周波数を判定できる、電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法は以下の手段を採用する。
【0011】
本発明の第一態様に係る電源周波数判定装置は、コンバータによって交流電力から変換された直流電圧を検知する電圧検知手段と、前記電圧検知手段によって検知された直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かを、前記交流電力の周波数の仮定値に応じた時間間隔で判定する電圧判定手段と、前記仮定値に応じた時間範囲内に、前記電圧判定手段によって直流電圧が前記基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、前記仮定値の正否を判定する周波数判定手段と、を備える。
【0012】
本構成によれば、コンバータによって交流電力から変換された直流電圧が、電圧検知手段によって検知される。交流電力から変換された直流電圧は、所定のリプル幅で変動している。
【0013】
そして、電圧判定手段によって、変動している直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かが、交流電力の周波数の仮定値に応じた時間間隔で判定される。例えば、周波数の仮定値が50Hzの場合、10msecの時間間隔で電圧判定手段による判定が行われる。直流電圧は、所定のリプル幅で変動しているので、基準電圧範囲内に入る場合と入らない場合がある。
さらに、周波数の仮定値に応じた時間範囲内で、電圧判定手段による判定が仮定値に応じた時間間隔毎に繰り返される。例えば、周波数の仮定値が50Hzの場合、100msecの時間範囲内で、10msec毎に電圧判定手段による判定が行われる。すなわち、電圧判定手段による判定が10回行われる。
【0014】
上記時間範囲が終了すると周波数の仮定値の正否が、直流電圧が基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、周波数判定手段によって判定される。例えば、周波数の仮定値を50Hzとする。この場合、100msecの時間範囲内に、直流電圧が5回以上基準電圧範囲内に入ると、実際の交流電力も50Hzであると判定される。なお、基準電圧範囲が広いと直流電圧が基準電圧範囲内に入る回数も増える。このため、基準電圧範囲の広さに応じて、周波数の仮定値を正しいとする上記回数が予め定められる。
一方、周波数の仮定値を50Hzと仮定しても、実際の交流電力の周波数は60Hzであるとする。この場合、周波数の仮定値を50Hzとした時間間隔では、直流電圧が基準電圧範囲内に入る回数が少なくなる。この理由は、直流電圧のリプルは60Hzの周期で変動するので、直流電圧を判定する時間間隔と直流電圧のリプルの変動周期とがずれるためである。このため、交流電力は50Hzでないと判定される。
【0015】
このように、本構成は、予め交流電力の周波数を仮定し、その仮定した周波数の正否を、交流電圧から変換された直流電圧に基づいて判定する。従って、本構成は、周波数検知回路を別途備えることなく、交流電力の周波数を判定できる。
【0016】
上記第一態様では、前記基準電圧範囲が、予め定められた基準電圧を判定値とし、該判定値の許容幅を前記直流電圧のリプル幅の所定割合とした範囲であることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、予め定められた基準電圧±リプル幅の所定割合を基準電圧範囲とする。なお、所定割合とは、例えばリプル幅の10から20%である。従って、本構成は、基準電圧範囲を変動している直流電圧に応じた適正な値とできる。
【0018】
上記第一態様では、前記電圧検知手段が、交流電力を直流電力に変換するコンバータと直流電力を変換してモータに供給するインバータとの間に備えられ、前記電圧判定手段が、前記モータの回転数が一定とされている間に、判定を行うことが好ましい。
【0019】
本構成によれば、モータの回転数が一定の場合は、モータへの入力電圧の上昇又は下降は生じず、入力電流も安定した状態である。このため、本構成は、より正確に交流電力の周波数を判定できる。
【0020】
本発明の第二態様に係る電源周波数判定方法は、コンバータによって交流電力から変換された直流電圧を検知する第1工程と、検知した直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かを、前記交流電力の周波数の仮定値に応じた時間間隔で判定する第2工程と、前記周波数に応じた時間範囲内に、検知した直流電圧が前記基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、前記仮定値の正否を判定する第3工程と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、周波数検知回路を別途備えることなく、交流電力の周波数を判定できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るモータの電源装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る電源周波数判定機能の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る電源周波数判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る仮定周波数が正しい場合における直流電圧の変動を示したグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る仮定周波数が正しくない場合における直流電圧の変動を示したグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る周波数判定タイミングを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る電源周波数判定装置及び電源周波数判定方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1を参照して、本実施形態に係る電源装置10について説明する。
【0025】
本実施形態に係る電源装置10は、空気調和器の圧縮機12が備えるモータ14へ電力を供給する。そして、電源装置10は、コンバータ20、インバータ22、電圧検知部24、及び空調器制御装置26を備える。
【0026】
コンバータ20は、一端が交流電源28に接続され、他端がインバータ22に接続される。そして、コンバータ20は、交流電源28から供給される交流電力(単相交流電力)を直流電力に変換し、インバータ22へ送る。
【0027】
インバータ22は、一端がコンバータ20に接続され、他端にモータ14が接続される。インバータ22は、コンバータ20から出力される直流電力を三相交流電力に変換して、モータ14へ供給する。
【0028】
電圧検知部24は、コンバータ20によって交流電力から変換された直流電圧を検知する。コンバータ20によって変換された直流電圧は、所定のリプル幅で変動している。
【0029】
空調器制御装置26は、インバータ22や空気調和器の各種制御を行う。
空調器制御装置26は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」ともいう。)であり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成される。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0030】
空調器制御装置26は、インバータ22の制御として、モータ14の回転数を上位の制御装置(図示略)から与えられるモータ回転数指令に一致させるようなゲート駆動信号(PWM信号)を相毎に生成する。そして、ゲート駆動信号が、インバータ22の各相に対応するスイッチング素子に与えられることで、インバータ22が制御され、所望の三相交流電圧がモータ14に供給される。
なおモータ14の回転数の制御として、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御が行われる。
【0031】
また、本実施形態に係る空調器制御装置26は、電源周波数判定装置30(電源周波数判定機能)を備えている。
【0032】
図2は、電源周波数判定装置30の機能ブロック図である。
電源周波数判定装置30は、電圧判定部32、周波数判定部34、及び設定値記憶部36を備える。
【0033】
電圧判定部32は、電圧検知部24によって検知された直流電圧がA/D変換され、入力される。そして、電圧検知部24は、変動している直流電圧が所定の基準電圧範囲内に入るか否かを、交流電力の周波数の仮定値(以下「仮定周波数」という。)に応じた時間間隔で判定する。すなわち、電源周波数判定機能は、交流電力の周波数が分からないため、予め交流電力の周波数を仮定し、仮定した周波数の正否を判定する。
以下の説明において、仮定周波数に応じた時間間隔を電圧判定時間間隔という。
【0034】
周波数判定部34は、電圧判定時間間隔内に、電圧判定部32によって直流電圧が基準電圧範囲内に入ったと判定された回数に基づいて、仮定周波数の正否を判定する。
なお、以下の説明において、仮定周波数に応じた時間範囲を、周波数判定時間範囲という。
【0035】
設定値記憶部36は、仮定周波数、基準電圧範囲、電圧判定時間間隔、及び周波数判定時間範囲等の各種設定値を記憶している。なお、設定値記憶部36は、空調器制御装置26が備える記録媒体の所定領域である。
【0036】
電圧判定時間間隔及び周波数判定時間範囲は、表1の例に示されるように仮定周波数に応じて予め定められている。
【表1】
基準電圧範囲は、予め定められた基準電圧を判定値とし、判定値の許容幅を直流電圧のリプル幅の所定割合とした範囲である。所定割合とは、例えばリプル幅の10〜20%である。すなわち、基準電圧範囲は、例えば基準電圧±リプル幅の10〜20%となる。
なお、本実施形態では、一例として仮定周波数を50Hzとする。
【0037】
図3は、空調器制御装置26によって実行される電源周波数判定処理の流れを示すフローチャートである。電源周波数判定処理に関するプログラムは空調器制御装置26が備える記録媒体の所定領域に予め記憶されている。
【0038】
電源周波数判定処理は、予め交流電力の周波数を仮定し、その仮定した周波数(仮定周波数)の正否を、交流電圧から変換された直流電圧に基づいて判定する。なお、電源周波数判定処理は、所定のタイミング(以下「周波数判定タイミング」という。)において実行される。周波数判定タイミングは、後述する。
【0039】
電圧検知部24は、電源周波数判定処理が開始されて終了するまで、直流電圧を検知し続け、検知した直流電圧を空調器制御装置26へ出力し続ける。また、電源周波数判定処理の開始と共に、設定値記憶部36から各種設定が読み出される。
【0040】
まず、ステップ100では、最初の電圧判定が行われる。最初の電圧判定は、一例として、電源周波数判定処理が開始されてから、一番初めに直流電圧が基準電圧範囲内に入ったタイミングとする。
【0041】
次のステップ102では、次の電圧判定時間に到達したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ104へ移行する。次の電圧判定時間に到達した場合とは、前回の電圧判定から電圧判定時間間隔が経過した場合である。
【0042】
ステップ104では、変動している直流電圧が基準電圧範囲内に入るか否か判定する電圧判定を行う。
例えば、仮定周波数が50Hzの場合、10msecの電圧判定時間間隔で、電圧判定が行われる。直流電圧は、所定のリプル幅で変動しているので、基準電圧範囲内に入る場合と入らない場合がある。電圧判定では、直流電圧が基準電圧範囲内に入った回数(以下「検知回数」という。)をカウントする。
【0043】
次のステップ106では、周波数判定時間範囲が終了したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する。一方、否定判定の場合はステップ102へ戻り、周波数判定時間範囲が終了するまで電圧判定を繰り返す。
例えば、仮定周波数が50Hzの場合、100msecの時間範囲内で、10msec毎に電圧判定が行われる。すなわち、電圧判定が10回行われる。
【0044】
ステップ110では、仮定周波数の正否を判定する周波数判定が行われる。
【0045】
図4,5の例を参照して周波数判定について説明する。図4は、50Hzとした仮定周波数と実際の交流電力の周波数とが一致している場合である。図5は、仮定周波数を50Hzとしたものの、実際の交流電力の周波数は60Hzであった場合である。すなわち、図4は仮定周波数が正しい例であり、図5は仮定周波数が正しくない例である。
【0046】
仮定周波数が50Hzの場合、100msecの周波数判定時間範囲内に、直流電圧が5回以上基準電圧範囲内に入ると、仮定周波数は正しく、実際の交流電力も50Hzであると判定される。図4の例では、10回の電圧判定で直流電圧が全て基準電圧範囲内に入っている。しかし、これは直流電力が理想的なリプル幅で変動している場合である。直流電圧は、必ずしも電圧判定の度に理想的なリプル幅で変動するとは限らない。このため、仮定周波数は正しくても、直流電圧が基準電圧範囲内に入らない場合もある。
なお、基準電圧範囲が広いと検知回数も増える。このため、基準電圧範囲の広さに応じて、仮定周波数が正しいとする検知回数が予め定められる。本実施形態では、上述のように、一例として、直流電圧が5回以上基準電圧範囲内に入った場合、仮定周波数は正しいと判定される。
【0047】
一方、図5に示されるように、仮定周波数を50Hzとても、実際の交流電力は60Hzであるとする。この場合、仮定周波数を50Hzとした電圧判定時間間隔では、直流電圧が基準電圧範囲内に入る回数が少なくなる。この理由は、直流電圧のリプルは60Hzの周期で変動するので、図6に示されるように、電圧判定時間間隔の周期と直流電圧のリプルの変動周期とがずれるためである。このため、検知回数は仮定周波数が正しいとされる回数未満となり、交流電力は50Hzでないと判定される。
【0048】
なお、図4,5共に電圧判定のタイミングが、直流電圧が下降するタイミングで行われているが、これに限らず、直流電圧が上昇するタイミングで行われてもよい。
【0049】
このように、電源周波数判定処理は、仮定周波数に応じた電圧判定時間間隔毎に電圧判定を周波数判定時間範囲内で行う。そして、電源周波数判定処理は、直流電圧が基準電圧範囲内に入った検知回数に基づいて、仮定周波数の正否を判定する。従って、電源周波数判定処理は、周波数検知回路を別途備えることなく、交流電力の周波数を判定できる。
【0050】
また、電源装置10が、交流電力のゼロクロスの間隔を計測することにより交流電力の周波数を検知する従来の周波数検知回路を備え、周波数検知回路と併用することで、交流電力の周波数判定の精度を向上させてもよい。
【0051】
また、仮定周波数が正しくないと判定された場合に、異なる周波数を仮定周波数として設定し、再び電源周波数判定処理を行ってもよい。
【0052】
図6は、周波数判定タイミングを示した図である。
電源周波数判定処理は、圧縮機12の回転数が一定とされている間に行われる。
圧縮機12の回転数が一定の場合は、圧縮機12が備えるモータ14への入力電圧の上昇又は下降は生じず、入力電流も安定した状態である。このため、電源周波数判定処理は、より正確に交流電力の周波数を判定できる。
【0053】
なお、周波数の判定は、モータ14への入力電流が小さい状態が好ましい。この理由は、圧縮機12の消費電力が少ないので、電源周波数判定処理の消費電力を少なくできるためである。
例えば、図6に示される期間Aに、電源周波数判定処理が行われることが好ましい。期間Aは、圧縮機12の起動制御の期間であって、負荷に応じて回転数制御が行われる通常制御の前における回転数が一定の期間である。
【0054】
また、通常制御であっても、期間Bのように他の制御変更のために回転数を一定とする期間に電源周波数判定処理が行われてもよい。
また、通常制御であっても、期間Cのように電源周波数判定処理を行うために回転数を一定とする期間が設けられてもよい。
【0055】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
例えば、上記実施形態では、本発明を圧縮機12のモータ14に電力を供給する電源装置10の空調器制御装置26に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、交流電力の周波数を判定する必要がある他の装置に適用される形態としてもよい。
【0057】
例えば、上記実施形態では、仮定周波数を50Hz又は60Hzとする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、仮定周波数を他の周波数とする形態としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態で説明した電源周波数判定処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 電源装置
12 圧縮機
14 モータ
20 コンバータ
24 電圧検知部
26 空調器制御装置
32 電圧判定部
34 周波数判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6