(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208013
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】無機アミンをビニル−カルボン酸ポリマーと組み合わせて使用して水性懸濁物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20170925BHJP
C09C 1/02 20060101ALI20170925BHJP
C09C 3/10 20060101ALI20170925BHJP
C01F 11/18 20060101ALI20170925BHJP
D21H 21/00 20060101ALI20170925BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20170925BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170925BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20170925BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20170925BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/02
C09C3/10
C01F11/18 G
D21H21/00
C09D201/00
C09D7/12
C08L101/00
C08K3/26
C08K9/04
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-539355(P2013-539355)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-502298(P2014-502298A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】IB2011002724
(87)【国際公開番号】WO2012066410
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】10014783.4
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/415,907
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリツク・エイ・シー
(72)【発明者】
【氏名】ブリ,マテイアス
(72)【発明者】
【氏名】レンチユ,サミユエル
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/122994(WO,A1)
【文献】
特開2004−225036(JP,A)
【文献】
特開2006−282760(JP,A)
【文献】
特表2009−523882(JP,A)
【文献】
特開平10−110015(JP,A)
【文献】
特開平11−217534(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01979420(EP,A1)
【文献】
国際公開第2007/083208(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104312210(CN,A)
【文献】
韓国特許第10−2008−0090514(KR,B1)
【文献】
国際公開第1999/023185(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第1242794(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0222484(US,A1)
【文献】
特開平02−243517(JP,A)
【文献】
特開昭63−248839(JP,A)
【文献】
特開昭57−065317(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/081785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C01F 11/18
C09C 1/02
C09C 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物の水性懸濁物を調製する方法であって:
a)少なくとも1つの無機物であって、無機物が、天然、合成または沈降炭酸カルシウム、タルク、カオリンおよびこれの混合物より選択されるものを使用可能にする段階、
b)段階a)の少なくとも1つの無機物を含む水性懸濁物を調製する段階、
c)段階b)の水性懸濁物の無機物を粉砕する段階、
d)場合により段階c)の水性懸濁物を選択および/または濃縮してから、得られた濃縮物を分散させる段階を含み、
少なくとも1つのアミン、およびアミン以外の中和剤によって完全に中和されたビニル−カルボン酸ポリマーを、段階a)および/もしくはb)および/もしくはc)または段階c)の間または段階c)の後で得られた濃縮物の分散の間もしくは後に添加すること、および
アミン:カルボン酸−ビニルポリマーの重量比が0.05:1〜0.35:1の間であること
を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、アミン:カルボン酸−ビニルポリマーの重量比が0.10:1〜0.25:1の間であることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、アミンがジメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミド[1,2−a]アゼピン(DBU、CAS番号6674−22−2)、2,2−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO;CAS番号280−57−9)から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、
アミンが、式(I):
NR1R2R3 (I)
[式中、R1、R2、R3は同一であるかまたは異なり:
・1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルまたはオキシアルキル基、
・3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・1〜6個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル基
から選ばれ、但し:
・R2基またはR3基の最大1つの基が水素であり、
・R1基、R2基、R3基の少なくとも1つがOH基を含有し、
・R1基、R2基、R3基の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む]
を有することを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、式(I)において、R1が水素であり、R2およびR3が同一であるかまたは異なり:
・1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルまたはオキシアルキル基、
・3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・1〜6個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル基
から選ばれ、但し:
−R2またはR3の最大でも1つの基がOH基を含有し、
−R2基またはR3基の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、式(I)において、各アルキルまたはシクロアルキルまたはオキシアルキル基が3〜10個の炭素原子を含有することを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項4に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、式(I)において、OH基を含有する1つ以上の基が2または3個の炭素原子を有することを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項4に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、式(I)において、R1が水素であり、R2およびR3が同一であるかまたは異なり:
・3〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルまたはオキシアルキル基、
・6〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・2〜3個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル基
から選ばれ、但し:
−R2基またはR3基の少なくとも1つがOH基を含有し、
−R2基またはR3基の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項4〜8の一項に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、
アミンが:
・N−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
・N−(1,3−ジメチルブチル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
・N−(1−エチル−3−メチルペンチル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
・N−(3,3’,5−トリメチルシクロヘキシル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
・N−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、ビニル−カルボン酸ポリマーが、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/もしくは酸化カルシウム、酸化マグネシウムより、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムならびにこれらの混合物より選択される、少なくとも1つの中和剤によって完全に中和されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、ビニル−カルボン酸ポリマーが、アクリル酸のホモポリマーまたはアクリル酸と別のモノマーとのコポリマーであることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、
アクリル酸と別のモノマーとのコポリマーについて、この他のモノマーが、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アルキレングリコールの(メタ)アクリレートのリン酸エステル、および式(II):
【化1】
[式中、m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、qは0より大きく、ならびにm、nおよびpの中の少なくとも1つの整数はゼロではなく、Rは重合性不飽和官能基を持つ基であり、R
1およびR
2は同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、R’は水素もしくは1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基、またはイオンとなり得る基を表す]の非イオン性モノマー
より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、分散後および/または粉砕後の水性懸濁物が、10%〜82%の間の、懸濁物の総重量に対する無機物の乾燥重量%として表される固体含有率を有することを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、水性懸濁物が、0.01%〜5.00%の間の、無機物の総乾燥重量に対するビニル−カルボン酸ポリマーの乾燥重量による含有率を有することを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の水性懸濁物を調製する方法であって、無機物が、天然、合成または沈降炭酸カルシウムおよびこれらの混合物より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1〜15に記載の無機物の水性懸濁物を調製する方法であって、天然炭酸カルシウムが、石灰石、大理石、方解石、チョーク、ドロマイトおよびこれらの混合物より選択されることを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項1〜16に記載の一項で得られる無機物の水性懸濁物の、紙充填剤および紙コーティング、塗料ならびにプラスチックの分野での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤条件にて無機物の粉砕を分散または補助するために使用される薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この薬剤によって、専門家は、このように製造される無機物の水性懸濁物の安定性および乾燥抽出分を変化させることなく、これらの操作で一般に使用されるビニル−カルボン酸ポリマーの量を最小化することができる。本発明は、前記ビニル−カルボン酸ポリマーと組み合わされたアミンの利用に基づいている。驚くべきことに、および好都合には、本発明者らは、本発明によって規定された条件下でアミンを添加することなく得られるレベルに少なくとも等しいレベルで上の特性を維持しながら、利用するビニル−カルボン酸ポリマーの量を減少させることができる。
【0003】
無機工業は、化学薬品を消費する主要な産業である。無機物質に対して行われる変換/修飾/調製の多様な段階で化学薬品が使用される。このため、天然または合成炭酸カルシウムの場合、当業者は、乾燥媒体もしくはより頻繁には湿潤媒体中での「粉砕」(粒径の減少)、または「分散」(液体中での粒子の懸濁)と呼ばれる多くの操作を行う。
【0004】
これらの2つの操作は、粉砕助剤および分散剤をそれぞれ使用することによって、より容易になる。粉砕剤の役割は、粉砕ミルの生産性を向上させるために、粉砕操作中の懸濁物の降伏点を最小化することである。このようにして、粒子の機械的な摩耗および断片化の作用が促進される。分散剤については、分散剤は、無機物質が導入されるときに、懸濁物の粘度を許容される範囲内に維持することを補助する。このことによって、沈降のリスクを伴わずに粘度レベルを懸濁物の取り扱いおよび貯蔵のために十分に低く維持しながら、固体含有率を上昇させることができる。
【0005】
従来技術では、このような添加剤がとりわけ豊富である。長年にわたり、アクリル酸のホモポリマーが炭酸カルシウムの分散および湿式粉砕を補助するために有効な薬剤であることが知られてきた。参考のために、これらのホモポリマーの多くの変形をホモポリマーの分子量および中和によって示している文献FR 2539137 A1、FR 2683536 A1、FR 2683537 A1、FR 2683538 A1、FR 2683539 A1およびFR 2802830 A1、FR 2818165 A1を参照されたい。
【0006】
同じ種類の用途では、アクリル酸をメタクリル酸もしくはマレイン酸などの別のカルボン酸モノマー(これについては、EP 0850 685 A1およびFR 2903618 A1を参照。)および/または(メタ)アクリル酸エステルなどのカルボン酸官能基を持たない他のエチレン系不飽和モノマーと共重合することも興味深い。後者の変形は、前の段落で引用した文献に記載されている。
【0007】
法律要件および環境要件の観点から、使用するポリマーの量を減少させることが当分野にとっての優先事項であるという意味になるが、ただしこのことがこれまでに得られたのと同等の性能レベルに適応できるという条件である。これらの性能のうち、異なる時点にブルックフィールド(商標)粘度測定によって決定されたような水性懸濁物の安定性と、懸濁物の総重量に対する無機物の乾燥重量%で表された最終固体含有率がとりわけ強調される。
【0008】
この点に関して、文献FR 2894846 A1は、従来技術のポリアクリレートを用いたフッ化化合物の利用と、これによって無機物の分散および粉砕方法におけるこの化合物の用量の減少を教示している。しかし、フッ化化合物はなお入手難で高価な生成物であり、ひいては環境に悪影響をもたらすことがある。
【0009】
アクリル系ポリマーの多分散指数の低下によって、ポリマーに分散および粉砕助剤の特性の改善がもたらされることも知られている。多分散指数を低下させるための1つの手法は、EP 0499267 A1に記載されているように、溶媒の存在下で静的または動的分離技法によって、所与のポリマーについて、ある分子量の鎖を単離することである。別の方法は、「制御」基重合(CRP)の利用に基づく。この用語は、特異的な連鎖移動剤、例えばキサンテートまたはトリチオカーボネートの使用に基づく合成技法を指す(EP 1529065 A1およびEP 1377615を参照。)。
【0010】
産生されたアクリル系ポリマーの多分散指数を低下させることによって、水中で無機物を分散させる、または無機物の粉砕を促進するアクリル系ポリマーの能力が向上する。このことは文献「Dispersion of calcite by poly(sodium acrylate)Prepared by Reversible Addition−Fragmentation chain Transfer(RAFT)polymerization」(Polymer(2005),46(19),pp.8565−8572)および「Synthesis and Characterization of Poly(acrylic acid)Produced by RAFT Polymerization.Application as a Very Efficient Dispersant of CaCO 3,Kaolin,and TiO 2」(Macromolecules(2003),36(9),pp.3066−3077)に記載されている。
【0011】
しかし、分離技法またはCRPに基づく最近の解決策は、実行が困難な場合がある。これらの解決策は、いずれの工業施設も必ず備えているとは限らない、特殊な設備を必要とする。最後に、仏国特許出願FR 2940141は、ポリマーの量を減少させて炭酸カルシウムの水中で分散させるおよび/または粉砕を促進することができる、ポリアクリレートの水酸化リチウムによる中和に関する。しかし、特許出願WO 2010/063757の主題でもある水酸化リチウムは、なお極めて高価な化合物であり、深刻な環境問題をもたらす(この化合物のリサイクルについての規定を参照。)。
【0012】
言及したように、水性媒体中での無機物の分散剤および粉砕助剤としての従来技術のポリアクリレートの性能を改善するための簡単な解決策を提案するために、量を性能同等レベルにまで十分に減少できるようにすることは、これまでに解決されていない問題である。
【0013】
出願人は、当分野での研究を続けて、少なくとも1つのアミンおよび少なくとも1つのビニル−カルボン酸ポリマーの存在下で、前記ポリマーの量を減少させる薬剤として、分散および/または粉砕によって無機物の水性懸濁物を産生する方法の開発に成功し、ポリマーはアミン以外の薬剤によって完全に中和される。
【0014】
このため全く予想しなかったように、アミンとビニル−カルボン酸ポリマーの組合せによって、アミンなしで使用したアクリル系ポリマーよりも効果的な、無機物の水性媒体中への分散および/または粉砕の促進が可能となる。本発明者らは、少なくとも同等の(乾燥抽出分および所与の粒径について10回/分で測定したブルックフィールド(商標)粘度に関する)性能レベルで、使用するビニル−カルボン酸ポリマーの量を本発明に従って減少できることを証明する。
【0015】
本発明によるアミンの利用例は、AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、CAS# 124−68−5)である。この他に、本発明の好ましい実施形態により、アミンによって、以下で説明する具体的な式(I)が利用される。次に本発明者らは、アミンが上で言及したパラメータに従って、AMPよりも効率的に分散剤の有効性を改善することを示す。式(I)のアミンは、すでに公知であり、例えば塗料の色の濃さを発現させる薬剤であることも示されている(WO 2009/087330 A1を参照。)。
【0016】
従来技術において、AMPはアクリル系ポリマーと共に、無機物を分散させるために用いられてきた。炭酸カルシウムを分散させるための幾つかのアルカノールアミンとアクリル系ポリマーの組合せを教示しているUS 4370171 A1を参照されたい。この文献の実施例1により、本発明者らには、請求される組合せが実際には中和されていないアクリル系分散剤とアルカノールアミンとの事前混合であることがわかる。この意味で、分散剤の酸はアルカノールアミンによって中和される。このことは、アクリル系ポリマーがアミンとは異なる薬剤によって完全に中和されている本発明者らの発明には当てはまらない。
【0017】
さらにUS 4370171 A1には、記載されたアルカノールアミンが分散剤系の性能に影響を及ぼさずにアクリル系ポリマーの量を減少させることを示唆する記載はない。加えて、この文献ではアルカノールアミンと分散剤の質量比は0.5:1と1.5:1との間である。この文献は、0.05:1と0.35:1の間である本発明者らの発明の好ましい比について記載または示唆していない。最後に、従来技術で開示または示唆されていない本発明者らの発明の別の好ましい実施形態により、式(I)の化合物は、作製された水性懸濁物の固体含有率およびレオロジーの点で、特に興味深い性能をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2539137号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2683536号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2683537号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2683538号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2683539号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第2802830号明細書
【特許文献7】仏国特許出願公開第2818165号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0850685号明細書
【特許文献9】仏国特許出願公開第2903618号明細書
【特許文献10】仏国特許出願公開第2894846号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0499267号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第1529065号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第1377615号明細書
【特許文献14】仏国特許出願公開第2940141号明細書
【特許文献15】国際公開第2010/063757号
【特許文献16】国際公開第2009/087330号
【特許文献17】米国特許第4370171号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Polymer(2005),46(19),pp.8565−8572
【非特許文献2】Macromolecules(2003),36(9),pp.3066−3077
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
また、本発明の第1の
主題は、無機物の水性懸濁物を調製する方法であって:
a)少なくとも1つの無機物を使用可能にする段階、
b)段階a)
の少なくとも
1つの無機物を含む水性懸濁物を調製する段階、
c)段階b)の水性懸濁物
の無機物を粉砕する段階、
d)ならびに場合により段階c)の水性懸濁物を選択および/または濃縮してから、得られた濃縮物を分散させる段階
を含み、
少なくとも1つのアミン
、およ
びアミン
以外の中和剤によって完全に中和された1つのビニル−カルボン酸ポリマーを、段階a)および/もしくはb)および/もしくはc)の間にまたは段階c)の間にまたは段階c)の後で得られた濃縮物の分散の間もしくは後に添加することを特徴とする、方法である。
【0021】
「少なくとも無機物を含む水性懸濁物を調製すること」は、本特許出願において、懸濁物の総重量に対して10%から82%の間の無機物の乾燥重量%として表される乾燥抽出分が得られるまで、分散剤を添加してまたは添加せずに撹拌される水中への無機物の添加によって「水性懸濁物を生成すること」を意味する。
【0022】
「選択する」とは、本特許出願において、ふるいまたはピッカーの利用を含む、当分野で公知のいずれかの手段によって、「45ミクロンを超える粒径を有する粗粒を除去すること」を意味する。
【0023】
「集中させる(Focus)」とは、本特許出願において、例えば遠心分離もしくはフィルタプレスもしくはプレスチューブもしくはこれらの組合せの利用による機械濃縮、または蒸発などの熱濃縮、または機械濃縮と熱濃縮の組合せなどの、従来技術で公知の濃縮手段の結果として、本特許出願に関連して得られた濃縮物が当分野によって認識されるように、「段階c)で得られた水性懸濁物からの乾燥無機物の含有率を向上させること」を意味する。このように得られた濃縮物は、「ケーキ」または「フィルタケーキ」という同義語によっても公知である。
【0024】
この方法は、アミン:ビニル−カルボン酸ポリマーの重量比が0.05:1と0.35:1の間であり、好ましくは0.10:1と0.30:1の間であることを特徴とする。
【0025】
第1の変形形態において、本方法は、アミンがジメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミド[1,2−a]アゼピン(DBU;CAS番号6674−22−2)、2,2−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO;CAS番号280−57−9)から選択されることを特徴とする。
【0026】
第2の好ましい変形形態において、方法は、アミンが式(I):
NR
1R
2R
3 (I)
(R
1、R
2、R
3は同一であるかまたは異なり:
−1から12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルまたはオキシアルキル基、
−3から12個の炭素原子を有するシクロアルキル基
−1から6個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル
から選ばれ、ただし:
−R
2またはR
3の最大でも1つの基が水素であり、
−R
1基、R
2基、R
3基の少なくとも1つがOH基を含有し、
−R
1、R
2、R
3の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む。)
を有することも特徴とする。
【0027】
本変形形態において、本方法は、式(I)において、R
1が水素であり、R
2およびR
3が同一であるかまたは異なり:
−1から12個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルもしくはオキシアルキル基または分枝基、
−3から12個の炭素原子を有するシクロアルキル基
−1から6個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル基
から選ばれ、
ただし:
−R
2またはR
3の最大でも1つの基がOH基を含有し、
−R
2基またはR
3基の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む
ことを特徴とする。
【0028】
本変形形態において、本方法は、式(I)において、各アルキルまたはシクロアルキルまたはオキシアルキル基が3から10個の、好ましくは3から8個の炭素原子を含有することも特徴とする。
【0029】
本変形形態において、本方法は、式(I)において、OH基を保持する1つ以上の基が2または3個の、好ましくは2個の炭素原子を有することも特徴とする。
【0030】
本変形形態において、本方法は、式(I)において、R
1が水素であり、R
2およびR
3が同一であるかまたは異なり:
−3から8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキルまたはオキシアルキル基、
−6から10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
−2から3個の、好ましくは2個の炭素原子を有する直鎖ヒドロキシルアルキル基
から選ばれ、
ただし:
−R
2基またはR
3基の少なくとも1つがOH基を含有し、
−R
2基またはR
3基の少なくとも1つが窒素原子に対してα位に少なくとも1つの分枝を含む
ことも特徴とする。
【0031】
本変形形態において、本方法は、アミンが:
−N−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
−N−(1,3−ジメチルブチル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
−N−(1−エチル−3−メチルペンチル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
−N−(3,3’,5−トリメチルシクロヘキシル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
−N−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)
より選択されることも特徴とする。
【0032】
他のアミンも用いることができる。他のアミンとしては、重質ポリアミン(heavy polyamines)、例えば置換または非置換ピペラジン、置換または非置換アミノエチルピペラジン、アミノエチルエタノールアミン、ポリエーテルアミン、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレングリコールとの第1級アミン、例えば2−(ジエチルアミノ)エチルアミンなどのエチレンアミン、2−(ジイソプロピルアミノ)エチルアミン、またはペンタメチルジエチレントリアミンもしくは同様にN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、例えばN3−アミン(3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルアミンなどのプロピレンアミン、1,3−ジアミノプロパン、例えばN−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンなどの置換モルホリンが挙げられる。他のアミンとしては、アルケマ(Arkema)グループによってAlpamine(商標)ブランドで販売されている製品、特にAlpamine(商標)N72も挙げることができる。
【0033】
使用するポリマーの分子量は、高すぎないという条件であれば重要ではないが、高すぎる場合には、ポリマーは環境下で増粘剤として作用する。この分子量の最大値は、およそ300000g/molであり得る。加えて、専門家は、この分子量を制御および調整する方法を知っている。無機物の粉砕または水中への分散を促進するために使用する各種のアクリル系ポリマーについて、本出願の始めに引用した文献を特に参照されたい。
【0034】
本方法は、ビニル−カルボン酸ポリマーが、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムおよび/もしくは酸化カルシウム、酸化マグネシウムより、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムならびにこれらの混合物より選択される少なくとも1つの中和剤によって完全に中和されることも特徴とする。
【0035】
本方法は、さらに前記ビニル−カルボン酸ポリマーがアクリル酸のホモポリマーまたはアクリル酸と別のモノマーとのコポリマーであることを特徴とする。
【0036】
本方法は、アクリル酸と別のモノマーとのコポリマーについて、このような別のモノマーがメタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アルキレングリコールの(メタ)アクリレートのリン酸エステルおよび式(II):
【0037】
【化1】
(式中、m、n、pおよびqは整数であり、m、n、pは150未満であり、qは0より大きく、ならびにm、nおよびpの中の少なくとも1つの整数はゼロではなく、Rは重合性不飽和官能基を持つ基であり、R
1およびR
2は同一であるかまたは異なり、水素原子またはアルキル基を表し、R’は水素もしくは1から40個の炭素原子を有する炭化水素基、またはイオン基もしくはイオン
となり得る基を表す。)の非イオン性モノマーより選択されることも特徴とする。
【0038】
本方法は、分散および/または粉砕後の前記水性懸濁物が、10%から82%の間の、好ましくは50%から81%の間の、最も好ましくは65%から78%の間の、懸濁物の総重量に対する無機物の乾燥重量%として表される固体含有率を有することをさらに特徴とする。
【0039】
本方法は、前記水性スラリーが0.01%から5.00%の間の、好ましくは0.01%から2.00%の間の、最も好ましくは0.05%から1.00%の間の、無機物の総乾燥重量に対するアクリル系ポリマーの乾燥重量による含有率を有することも特徴とする。
【0040】
本方法は、無機物が合成または沈降炭酸カルシウム、タルク、カオリンおよびこれらの混合物より、好ましくは天然、合成または沈降炭酸カルシウムおよびこれらの混合物より選択され、好ましくは天然炭酸カルシウムであることをさらに特徴とする。
【0041】
本天然炭酸カルシウムは、好ましくは石灰石、大理石、方解石、チョーク、ドロマイトおよびこれらの混合物より選択される。
【0042】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を例証する。
【実施例】
【0043】
表示したすべての粒径分布および直径は、マイクロメトリックス(商標)が販売しているセディグラフ5100(商標)によって決定する。
【0044】
すべての試験において、乾燥生成物のppmは、使用した無機物の乾燥重量によって表示する。
【0045】
[実施例1]
本実施例は、単独のまたは特定のアミンと組み合わせたアクリル酸のホモポリマーを粉砕段階の間に利用するための、水中での炭酸カルシウム(フランス、オルゴンからの方解石)の粉砕について記載する。
【0046】
粉砕は、実験用装置のダイノーミルタイプ、KDL(商標)タイプで行い、粉砕チャンバの容積が1.4リットルであり、粉砕体は、直径0.6から1mmの間のコランダムボール2500グラムで構成されている。
【0047】
実際に、本発明者らは最初にアクリル系ポリマーを、次にアミンを導入し、続いて粉砕操作を進める。
【0048】
加えて、当業者に周知であり、とりわけFR 2539137 A1、FR 2683536 A1、FR 2683537 A1、FR 2683538 A1、FR 2683539 A1およびFR 2802830 A1 およびFR 2818165 A1に記載されている技法を使用して、粉砕を行う。
【0049】
試験番号1−a
本試験は従来技術を示し、70mol%のカルボキシル部位がナトリウムイオンによって、30%がカルシウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、3500ppmのアクリル酸のホモポリマーを用いる。
【0050】
試験番号1−b
本試験は従来技術を示し、すべてのカルボキシル部位が2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールで特定のアミンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、3500ppmのアクリル酸のホモポリマーを用いる。本試験は、分散剤が最初にアルカノールアミンによって中和される場合、上述ですでに議論されたUS 4370171 A1に記載されているように従来技術を示す。
【0051】
試験番号2
本試験は本発明を示し、70mol%のカルボキシル部位がナトリウムイオンによって、30%がカルシウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、3300ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンと組み合わせて用いる。
【0052】
試験番号3
本試験は本発明を示し、70mol%のカルボキシル部位がナトリウムイオンによって、30%がカルシウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、3150ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンと組み合わせて用いる。
【0053】
各試験番号1−3について、固体含有率(SC)、2ミクロン未満の直径を有する粒子の重量%(%<2ミクロン)ならびにt=0(BK10 t0)およびt=振盪後8日(BK10 t8)の25℃および10回転/分におけるブルックフィールド(商標)粘度の測定値を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
これらの結果は、1つのアミンを添加することによって、比較可能なおよび経時的に安定なブルックフィールド(商標)粘度の値について、使用するアクリル系分散剤の量が減少することを示している。
【0056】
[実施例2]
本実施例は、アクリル酸のホモポリマーおよび場合によりアミンの存在下における、水中での天然炭酸カルシウム(フランス、オルゴンからの方解石)の粉砕について記載する。
【0057】
粉砕は、アミンが粉砕後に懸濁物に導入される試験番号8を除いて、前の実施例に記載されたものと同じ条件下で行う。
【0058】
試験番号4
本試験は従来技術を示し、ナトリウムイオンによって完全に中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、4500ppmのアクリル酸のホモポリマーを用いる。
【0059】
試験番号5
本試験は本発明を示し、ナトリウムイオンによって完全に中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、4500ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンと組み合わせて用いる。
【0060】
試験番号6
試験は本発明を示し、ナトリウムイオンによって完全に中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、4500ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)と組み合わせて用いる。
【0061】
試験番号7
本試験は本発明を示し、ナトリウムイオンによって完全に中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、4000ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンと組み合わせて用いる。
【0062】
試験番号8
本試験は本発明を示し、ナトリウムイオンによって完全に中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、4500ppmのアクリル酸のホモポリマーを粉砕段階の間に用いる。次に800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンを粉砕後に懸濁物中に導入した。
【0063】
各試験番号4−8について、固体含有率(SC)、2ミクロン未満の直径を有する粒子の重量%(%<2ミクロン)ならびにt=0(BK10 t0)およびt=振盪後8日(BK10 t8)の25℃および10回転/分におけるブルックフィールド(商標)粘度の測定値を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
試験番号5、6および8による結果は、試験番号4によって得られた結果と比較して、1つのアミンの添加により、同じ用量のアクリル系分散剤に対するブルックフィールド(商標)粘度の値が減少することを示している。
【0066】
試験番号7は、これに対して、1つのアミンを添加することによって、アクリル系分散剤の量を減少させると共に、ブルックフィールド(商標)粘度の値も減少させられることを示している。
【0067】
最後に、試験番号5で用いた式(I)のアミンによって、試験番号6によるAMPよりも良好な結果が提供される。この結果は、試験7および8による式(I)のアミンの場合に、アクリル系分散剤の用量がより低いことでも確認されている。
【0068】
[実施例3]
本実施例は、単独のまたは特定のアミンと組み合わせたアクリル酸のホモポリマーを粉砕段階の間に利用するための、水中での天然炭酸カルシウム(フランス、オルゴンからの方解石)の粉砕について記載する。
【0069】
粉砕は、実施例1に記載されたものと同じ条件下で行う。
【0070】
試験番号9
本試験は従来技術を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、6500ppmのアクリル酸のホモポリマーを用いる。
【0071】
試験番号10
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、6500ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)と組み合わせて用いる。
【0072】
試験番号11
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)と組み合わせて用いる。
【0073】
試験番号12
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンと組み合わせて用いる。
【0074】
試験番号13
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2−アミノエタノール(エタノールアミン、CAS番号141−43−5)と組み合わせて用いる。
【0075】
試験番号14
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2,2’−イミノビス−(ジエタノールアミン、CAS番号111−42−2)と組み合わせて用いる。
【0076】
試験番号15
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2,2’,2”−ニトリロトリス−(トリエタノールアミン、CAS番号102−71−6)と組み合わせて用いる。
【0077】
試験番号16
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミド[1,2−a]アゼピン(DBU;CAS番号6674−22−2)と組み合わせて用いる。
【0078】
試験番号17
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、800ppmの2,2−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO;CAS番号280−57−9)と組み合わせて用いる。
【0079】
試験番号18
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、5850ppmのアクリル酸のホモポリマーを、400ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)である式(I)のアミンおよび400ppmの2−アミノエタノール(エタノールアミン、CAS番号141−43−5)より成るアミンブレンドと組み合わせて用いる。
【0080】
試験番号9から18について、固体含有率(SC)、2ミクロン未満の直径を有する粒子の重量%(%<2ミクロン)ならびにt=0(BK10 t0)およびt=振盪後8日(BK10 t8)の25℃および10回/分におけるブルックフィールド(商標)粘度の測定値を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
等しい用量のアクリル系ポリマーでの試験9と10との比較において、本発明者らは、アミンによって、より高い固体含有率で粉砕して、同時にブルックフィールド(商標)粘度の値を低下させることができる。
【0083】
試験番号11から18は、試験番号9と比較すると、1つのアミンを添加することにより、本発明者らは、アクリル系ポリマーの量を減少させて、同時により高くない乾燥ブルックフィールド粘度の同様の値を得ることができる。
【0084】
試験番号12による式(I)のアミンによって、最良の結果が得られる。
【0085】
最後に、本発明者らはポリマーおよびアミンについて同じ用量を示す最終試験番号19を、本発明の範囲外で行った(例えばUS 4370171 A1)。
【0086】
試験番号19は、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、2900ppmのアクリル酸のホモポリマーを、2900ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)と組み合わせて使用する。
【0087】
この試験は、他の試験と同様に固体含有率77%まで粉砕して、88重量%の2ミクロン未満の直径を有する粒子を得ることができなかった。ここでの懸濁物は、粘性が高すぎることが判明した。
【0088】
[実施例4]
以下の試験では、粗炭酸カルシウム(フランス、オルゴンからの方解石)を水に20重量%の濃度で懸濁させる。本懸濁物は、沈降を防止するために撹拌され、固定シリンダおよび回転インペラを備えるグラインダー型ダイノーミル(商標)内を流れ、粉砕体は直径0.6から1mmの間のコランダムボール2900グラムで構成されている。
【0089】
この段階で、粒径分布は、これらの60重量%が1ミクロン未満の直径を有するようになっている。
【0090】
次に炭酸カルシウムは、67.5重量%の炭酸カルシウムに等しい用途に必要とされる濃度まで、当業者に公知のいずれかの手段によって濃縮される。
【0091】
濃縮によって、再分散させることが不可欠であるフィルタケーキが生成されるので、フィルタケーキが操作されるようになり、この操作はアクリル系ポリマーを単独でまたはアミンと組み合わせて用いることによる。
【0092】
「分散剤を用いない低濃度での粉砕およびこの後の再濃縮」と呼ばれる、この非常に特殊な方法は、EP 2044159で特に詳細に記載されている。
【0093】
フィルタケーキ分散のこれらの試験は、アクリル酸および無水マレイン酸ならびに場合によりアミンのコポリマーの存在下で行われる。
【0094】
試験番号20
本分散試験は従来技術を示し、1.36:1に等しいモル比のアクリル酸および無水マレイン酸より成り、19,500g/molの分子量を有し、100mol%の酸官能基がナトリウムヒドロキシドによって中和されている、3500ppmのアクリル酸および無水マレイン酸のコポリマーを用いる。
【0095】
試験番号21
本試験は本発明を示し、3500ppmの試験1と同じコポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)と組み合わせて用いる。
【0096】
試験番号22
本試験は本発明を示し、3200ppmの試験1と同じコポリマーを、800ppmのN−(1−メチルプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)と組み合わせて用いる。
【0097】
試験番号20から22について、固体含有率(SC)ならびにt=0(BK10 t0)およびt=振盪後8日(BK10 t8)の25℃および10回転/分におけるブルックフィールド(商標)粘度の測定値を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
これらの結果は、アクリル系ポリマーの一定用量において、1つのアミンを添加することによって、ブルックフィールド(商標)粘度をほぼ同一のレベルに維持しながら、得られた懸濁物のレオロジーを改善できる、またはアクリル系分散剤の量を減少できることを示している。
【0100】
[実施例5]
本実施例は、単独のまたは特定のアミンと組み合わせたアクリル酸のホモポリマーを粉砕段階の間に利用するための、水中での天然炭酸カルシウム(フランス、オルゴンからの方解石)の粉砕について記載する。粉砕は、実施例1に記載されたものと同じ条件下で行う。
【0101】
試験番号23
本試験は従来技術を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、12000ppmのアクリル酸のホモポリマーを用いる。
【0102】
試験番号24
本試験は本発明を示し、50mol%のカルボキシル部位がマグネシウムイオンによって、50%がナトリウムイオンによって中和され、GPCによって決定した分子量が5500g/molに等しい、10000ppmのアクリル酸のホモポリマーを、500ppmの2[(メチルプロピル)アミノ]エタン−1−オール(CAS番号35265−04−4)と組み合わせて用いる。
【0103】
試験23および24について、固体含有率(SC)、1ミクロン未満の直径を有する粒子の重量%(%<1ミクロン)ならびにt=0(BK100 t0)およびt=振盪前および振盪後14日(BK100 t14)の25℃および100rpm/分におけるブルックフィールド(商標)粘度(1分後の値)の測定値を表5に示す。
【0104】
【表5】
【0105】
これらの結果は、1つのアミンを添加することによって、アクリル系分散剤の量が減少(本実施例においては、アクリル系分散剤の20%の減少)して、同時にブルックフィールド(商標)粘度はほぼ同一のレベルで経時的に安定に維持されることを示している。