(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを着脱自在に固定するワーク固定部と、直交するXY方向のいずれか一方を回転軸とする回転方向に前記ワーク固定部を第1回転駆動歯車により回転駆動させる第1回転駆動機構と、前記第1回転駆動歯車の回転を抑制する第1ブレーキ機構とを備えるポジショナであって、
前記第1回転駆動機構は、
前記ワーク固定部に回転力を付与する第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の出力軸に取り付けられた第1回転駆動機構側減速機と、前記第1回転駆動機構側減速機の出力軸に取り付けられ、前記第1回転駆動歯車と噛合する第1回転駆動機構側歯車とを有し、
前記第1ブレーキ機構は、
前記第1回転駆動歯車に噛合された第1ブレーキ機構側歯車と、前記第1ブレーキ機構側歯車が出力軸に取り付けられた第1ブレーキ機構側減速機と、前記第1ブレーキ機構側減速機の入力軸に取り付けられた第1ブレーキとを有し、
前記第1回転駆動機構には、バックラッシの調整可能な長穴が形成され、
前記第1ブレーキ機構側減速機の入力軸には、外部から回転駆動力が付与される第1被駆動部が形成されている、
ことを特徴とするポジショナ。
前記直交するXY方向の他方を回転軸とする回転方向に、前記ワーク固定部と共に前記第1回転駆動機構及び前記第1ブレーキ機構を第2回転駆動歯車により回転駆動させる第2回転駆動機構と、前記第2回転駆動歯車の回転を抑制する第2ブレーキ機構とをさらに備え、
前記第2回転駆動機構は、
前記第1回転駆動機構及び前記第1ブレーキ機構に回転力を付与する第2回転駆動源と、前記第2回転駆動源の出力軸に取り付けられた第2回転駆動機構側減速機と、前記第2回転駆動機構側減速機の出力軸に取り付けられ、前記第2回転駆動歯車と噛合する第2回転駆動機構側歯車とを有し、
前記第2ブレーキ機構は、
前記第2回転駆動歯車に噛合された第2ブレーキ機構側歯車と、前記第2ブレーキ機構側歯車が出力軸に取り付けられた第2ブレーキ機構側減速機と、前記第2ブレーキ機構側減速機の入力軸に取り付けられた第2ブレーキとを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のポジショナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポジショナでより重いワークを保持しようとした場合、すなわち、ワークの重量を増大させた場合に、以下の2点の問題が発生する。
【0009】
第1に、ディスクブレーキの大型化及び高価格化の問題がある。ディスクブレーキの保持力は、ディスクの外径×ディスクブレーキの個数×ブレーキ1つあたりの保持力で決まる。偏荷重が大きくなって過大なトルクが生じる場合、落下の危険を回避するために、ディスクブレーキの保持トルクを大きく保たなければならないが、そのためには、ディスクの外径を大きくするか、又はディスクブレーキの個数を増加させる必要がある。しかし、ディスクの外径を大きくするとスペースの確保が困難になり、かつ高価になるという問題があった。また、ディスクブレーキを複数個用いると高価になるという問題があった。尚、ここで言う保持力とは、外力のかかる物体を静止させておくための力であり、押し付ける力に静止摩擦係数を乗じたものを示す。
【0010】
第2に、バックラッシの確認についての問題がある。バックラッシの確認は、前記説明した通り、ポジショナの大歯車を手動で直接動作させる必要がある。その為、ポジショナ自体の重量が大きくなればなる程、より大きな負荷を大歯車に付与する必要がある。この場合、人の手で揺動させる手法は、作業者の技能に大きく依存するので、容易かつ精度の良いバックラッシの調整ができないという問題があった。
【0011】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、ブレーキ構造の小型化及び大歯車を直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができるポジショナ及び当該ポジショナのバックラッシ確認方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係るポジショナは、ワークを着脱自在に固定するワーク固定部と、直交するXY方向のいずれか一方を回転軸とする回転方向に前記ワーク固定部を第1回転駆動歯車により回転駆動させる第1回転駆動機構と、前記第1回転駆動歯車の回転を抑制する第1ブレーキ機構とを備えるポジショナであって、前記第1回転駆動機構が、前記ワーク固定部に回転力を付与する第1回転駆動源と、前記第1回転駆動源の出力軸に取り付けられた第1回転駆動機構側減速機と、前記第1回転駆動機構側減速機の出力軸に取り付けられ、前記第1回転駆動歯車と噛合する第1回転駆動機構側歯車とを有し、前記第1ブレーキ機構が、前記第1回転駆動歯車に噛合された第1ブレーキ機構側歯車と、前記第1ブレーキ機構側歯車が出力軸に取り付けられた第1ブレーキ機構側減速機と、前記第1ブレーキ機構側減速機の入力軸に取り付けられた第1ブレーキとを有
し、前記第1回転駆動機構には、バックラッシの調整可能な長穴が形成され、前記第1ブレーキ機構側減速機の入力軸には、外部から回転駆動力が付与される第1被駆動部が形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、ポジショナは、第1ブレーキが発生させる保持力を第1ブレーキ機構側減速機で増幅することができる。したがって、本発明に係るポジショナによれば、増幅した保持力を用いて、第1回転駆動歯車の回転を抑制することができる。その為、ポジショナでより重いワークを保持しようとした場合、すなわち、ワークの重量を増大させた場合でも、第1ブレーキを小型化することができる。
また、かかる構成によれば、ポジショナは、第1ブレーキ機構側減速機に外部からトルクを付与し、さらに付与されたトルクを増幅することができる。したがって、本発明に係るポジショナによれば、増幅したトルクを用いて、第1回転駆動歯車を回転することができる。その為、第1回転駆動歯車を直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
【0016】
また、本発明に係るポジショナは、前記直交するXY方向の他方を回転軸とする回転方向に、前記ワーク固定部と共に前記第1回転駆動機構及び前記第1ブレーキ機構を第2回転駆動歯車により回転駆動させる第2回転駆動機構と、前記第2回転駆動歯車の回転を抑制する第2ブレーキ機構とをさらに備え、前記第2回転駆動機構が、前記第1回転駆動機構及び前記第1ブレーキ機構に回転力を付与する第2回転駆動源と、前記第2回転駆動源の出力軸に取り付けられた第2回転駆動機構側減速機と、前記第2回転駆動機構側減速機の出力軸に取り付けられ、前記第2回転駆動歯車と噛合する第2回転駆動機構側歯車とを有し、前記第2ブレーキ機構が、前記第2回転駆動歯車に噛合された第2ブレーキ機構側歯車と、前記第2ブレーキ機構側歯車が出力軸に取り付けられた第2ブレーキ機構側減速機と、前記第2ブレーキ機構側減速機の入力軸に取り付けられた第2ブレーキとを有する、ことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、ポジショナは、第2ブレーキが発生させる保持力を第2ブレーキ機構側減速機で増幅することができる。したがって、本発明に係るポジショナによれば、増幅した保持力を用いて、第2回転駆動歯車の回転を抑制することができる。その為、ポジショナでより重いワークを保持しようとした場合、すなわち、ワークの重量を増大させた場合でも、第2ブレーキを小型化することができる。
【0018】
また、本発明に係るポジショナは、前記第2回転駆動機構には、バックラッシの調整可能な長穴が形成され、前記第2ブレーキ機構側減速機の入力軸には、外部から回転駆動力が付与される第2被駆動部が形成されている、ことを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ポジショナは、第2ブレーキ機構側減速機に外部からトルクを付与し、さらに付与されたトルクを増幅することができる。したがって、本発明に係るポジショナによれば、増幅した回転力を用いて、第2回転駆動歯車を回転することができる。その為、第2回転駆動歯車を直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
【0020】
また、本発明に係るポジショナのバックラッシ確認方法は、前記第1被駆動部に回転駆動力を付与し、前記第1ブレーキ機構側減速機で増幅した前記回転駆動力を用いて前記第1回転駆動歯車を容易に回転させる工程を有し、ダイヤルゲージを歯上に当て、歯車間を揺動させることで、法線方向に噛み合う歯車間の隙間を測定し、適正基準値に調整することを特徴とする。第2回転駆動歯車についても、前記と同様の工程を経て、バックラッシを確認する。
【0021】
かかる構成によれば、ポジショナのバックラッシ確認方法は、第1ブレーキ機構側減速機に外部からトルクを付与し、さらに付与されたトルクを増幅することができる。したがって、本発明に係るポジショナのバックラッシ確認方法によれば、増幅したトルクを用いて、第1回転駆動歯車を回転することができる。その為、第1回転駆動歯車を直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ブレーキ構造の小型化及び大歯車を直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施形態]
以下、本発明の実施するための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0025】
≪実施形態に係るポジショナの構成≫
ポジショナは、溶接の対象物となるワークの位置決めを行うものである。本実施形態では、ポジショナが垂直軸回り及び水平軸回りの双方にワークを回転させる「2軸ポジショナ」である場合を例に挙げて説明を行う。最初に、
図1を参照して、本実施形態に係るポジショナ1の概要を説明し、その後に、他の図面を参照してポジショナ1の詳細な構成を説明する(適宜
図1も参照)。
【0026】
本実施形態に係るポジショナ1は、
図1に示すように、溶接ロボットシステムSの構成要素をなすものである。ポジショナ1は、制御装置Cに接続される。この制御装置Cは、ポジショナ1の他にマニピュレータM及び教示ペンダントPに接続される。制御装置Cは、教示ペンダントPから入力されたコマンドに基づいて、ポジショナ1及びマニピュレータMを制御する。
【0027】
ポジショナ1は、ワークWを載置固定する板状のステージ2(ワーク固定部)と、水平面内での回転(垂直軸Y回りの回転α)可能にステージ2を支持する正面視コの字形状(U字形状)の傾斜フレーム3と、鉛直面内での回転(水平軸X回りの回転β)可能に両端面から傾斜フレーム3を支持する一対の昇降部4A,4Bと、昇降部4A,4Bを上下方向(鉛直方向)に昇降可能に支持する一対の支持フレーム5A,5Bと、を備えて構成される。
【0028】
ここで、ステージ2は、傾斜フレーム3に設置されている水平回転駆動機構20(第1回転駆動機構)で発生する回転駆動力が、回転軸旋回ベアリング10(第1回転駆動歯車)を介して伝達されることで回転する。また、ステージ2は、傾斜フレーム3に設置されている水平ブレーキ機構30(第1ブレーキ機構)で発生する保持力が、回転軸旋回ベアリング10を介して伝達されることで回転が抑制される。
【0029】
また、傾斜フレーム3は、昇降部4Aに設置されている鉛直回転駆動機構50(第2回転駆動機構)で発生する回転駆動力が、傾斜軸旋回ベアリング40A(第2回転駆動歯車)を介して伝達されることで回転する。また、傾斜フレーム3は、昇降部4Aに設置されている鉛直ブレーキ機構60(第2ブレーキ機構)で発生する保持力が、傾斜軸旋回ベアリング40Aを介して伝達されることで回転が抑制される。
【0030】
また、昇降部4A,4Bは、各支持フレーム5A,5Bの内部に設置されている昇降駆動機構80A,80Bで発生する回転駆動力が、ボールネジ70A,70Bを介して伝達されることで昇降する。
【0031】
<ステージ>
図2A,
図2Bなどに示すステージ2は、図示しない治具を用いてワークWを上部に固定するものである。ステージ2は、回転軸旋回ベアリング10の上に設置されている。
【0032】
<傾斜フレーム>
図2A,
図2B,
図3Aなどに示す傾斜フレーム3は、ステージ2を水平面内での回転(垂直軸Y回りの回転α)可能に支持するものである。傾斜フレーム3は、矩形状の台枠3aの長手方向の両端部に、一対の略L字形状の側枠3bが固定されている。
【0033】
台枠3aの中央部には、ステージ2の水平面内での回転に用いられる回転軸旋回ベアリング10(第1回転駆動歯車)が設置されている(
図3A参照)。この回転軸旋回ベアリング10は、外輪11が傾斜フレーム3にボルト11aを用いて固定され、内輪12がステージ2にボルト12aを用いて固定されている。回転軸旋回ベアリング10の内輪12には内歯が形成されている。
【0034】
また、台枠3aの中央部には、回転軸旋回ベアリング10を介してステージ2を水平面内で回転駆動させる水平回転駆動機構20(第1回転駆動機構)と、回転軸旋回ベアリング10を介してステージ2の水平面内での回転を抑制する水平ブレーキ機構30(第1ブレーキ機構)とが回転軸旋回ベアリング10の周上に対向配置されている。
【0035】
(水平回転駆動機構)
水平回転駆動機構20は、
図4に示すように、回転駆動力を発生するモータ21と、モータ21の出力側に取り付けられた減速機22と、減速機22の出力側に取り付けられるピニオンギヤ23と、水平回転駆動機構20を傾斜フレーム3に固定するためのベースプレート24と、を備えている。水平回転駆動機構20の仕様は、ワークWやステージ2による最大偏荷重等を考慮して決定するのがよい。以下では、その一例を示す。
【0036】
モータ21は、AC(Alternate Current)サーボモータであり、精密な位置決め制御が可能である。モータ21は、例えば、定格トルクが「35N・m」、定格回転数が「1500rpm」であり、ブレーキ(DC24V)が付いたものを用いる。モータ21の出力側には、ボルト24aを用いてベースプレート24が取り付けられている。
【0037】
減速機22は、RV(Rotary Vector)減速機である。減速機22の入力側には、ボルト24bを用いてモータ21と一体となったベースプレート24が取り付けられると共に、モータ21の出力軸21aが挿入されている。また、減速機22の出力側には、ボルト25aを用いてブラケット25が取り付けられている。減速機22は、例えば、減速比が「1/192.4(実減速比7/1347)」であるものを用いる。これにより、例えば、減速後の回転数は「1500rpm×7/1347=7.8rpm」、トルクは「5300N・m」となる。
【0038】
ピニオンギヤ23は、平歯車である。ピニオンギヤ23は、ボルト25bを用いて減速機22と一体となったブラケット25に取り付けられている。このピニオンギヤ23は、回転軸旋回ベアリング10の内輪12(
図3A参照)に形成される内歯と噛合する。
【0039】
ベースプレート24は、水平回転駆動機構20を傾斜フレーム3に固定するものである。ベースプレート24は、水平回転駆動機構20を傾斜フレーム3に図示しないボルトを用いて固定するための長穴24cが四隅に形成されている。この長穴24cの向きは、長手方向がポジショナ1の傾斜フレーム3の長手方向(X軸方向)になっている。その為、水平回転駆動機構20は、長穴24cの長穴方向にスライドさせることで、取り付け位置の調整が可能である。これにより、回転軸旋回ベアリング10とピニオンギヤ23とのバックラッシを調整することができる。
【0040】
この構成により、モータ21が回転軸旋回ベアリング10の内輪12の内歯を介して回転駆動力を付与することで、ステージ2は、回転軸旋回ベアリング10の内輪12と一体になって垂直軸回りに回転する。
【0041】
(水平ブレーキ機構)
水平ブレーキ機構30は、
図5に示すように、保持力を発生するブレーキ31と、ブレーキ31の出力側に取り付けられた減速機32と、減速機32の出力側に取り付けられるピニオンギヤ33と、水平ブレーキ機構30を傾斜フレーム3に固定するためのベースプレート34と、を備えている。水平ブレーキ機構30の仕様は、ワークWやステージ2による最大偏荷重等を考慮して決定するのがよい。以下では、その一例を示す。
【0042】
ブレーキ31は、モータ21が停止している場合には、ステージ2が回転しないように保持力を発生させ、モータ21が駆動している場合には、解放されて保持力を発生しない。ブレーキ31は、例えば、静摩擦トルク「200N・m」を発生することができる無励磁作動ブレーキである。また、減速機32の入力軸となるブレーキ31のシャフト(出力軸31a)の端部には、六角レンチを取り付ける六角穴31b(第1被駆動部)が形成されている。この六角穴31bは、バックラッシの確認において、六角レンチを差し込んで外部から回転駆動力を付与するものである。バックラッシの確認については後記する。
【0043】
減速機32は、RV(Rotary Vector)減速機である。この減速機32は、水平回転駆動機構20の減速機22と同様のものであってもよい。減速機32の入力側には、ボルト34bを用いてモータ31と一体となったベースプレート34が取り付けられると共に、モータ31の出力軸31aが挿入されている。また、減速機32の出力側には、ボルト35aを用いてブラケット35が取り付けられている。減速機32は、例えば、減速比が「1/192.4(実減速比7/1347)」であるものを用いる。
【0044】
ピニオンギヤ33は、平歯車である。このピニオンギヤ33は、水平回転駆動機構20のピニオンギヤ23と同様のものであってもよい。ピニオンギヤ33は、ボルト35bを用いて減速機32と一体となったブラケット35に取り付けられている。このピニオンギヤ33は、回転軸旋回ベアリング10の内輪12(
図3A参照)に形成される内歯と噛合する。
【0045】
ベースプレート34は、水平ブレーキ機構30を傾斜フレーム3に固定するためのものである。ベースプレート34は、水平ブレーキ機構30を傾斜フレーム3に図示しないボルトを用いて固定するための長穴34cが四隅に形成されている。この長穴34cの向きは、長手方向がポジショナ1の傾斜フレーム3の長手方向(X軸方向)になっている。その為、水平ブレーキ機構30は、長穴34cの長穴方向にスライドさせることで、取り付け位置の調整が可能である。これにより、回転軸旋回ベアリング10とピニオンギヤ33とのバックラッシを調整することができる。
【0046】
この構成により、ブレーキ31が回転軸旋回ベアリング10の内輪12に対して保持力を付与することで、ステージ2は、垂直軸回りの回転が抑制される。
【0047】
<昇降部>
図2A,
図2C,
図3Bなどに示す一対の昇降部4A,4Bは、傾斜フレーム3(ステージ2を含む)を鉛直面内での回転傾斜可能に両端面から支持するものである。
各昇降部4A,4Bには、傾斜フレーム3の垂直面内での回転(傾斜)に用いられる各々の傾斜軸旋回ベアリング40A,40B(第2回転駆動歯車)が設置されている。この傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bは、同様の構成である。その為、
図3Bを参照して傾斜軸旋回ベアリング40Aについて説明する。
傾斜軸旋回ベアリング40Aは、外輪41Aがボルト41Aaを用いて昇降部4Aに固定され、内輪42Aがボルト42Aaを用いて傾斜フレーム3に固定されている。傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aには内歯が形成されている。
【0048】
また、昇降部4Aには、傾斜軸旋回ベアリング40Aを介して傾斜フレーム3を鉛直面内で回転駆動させる鉛直回転駆動機構50(第2回転駆動機構)と、傾斜軸旋回ベアリング40Aを介して傾斜フレーム3の鉛直面内での回転を抑制する鉛直ブレーキ機構60(第2ブレーキ機構)とが設置されている。なお、本実施形態では、ポジショナ1として傾斜フレーム3を回転動作させる駆動側と駆動側に従動して動作する従動側とがある場合を想定している。その為、昇降部4Bには、鉛直回転駆動機構50及び鉛直ブレーキ機構60が設置されていないが、昇降部4Bにも同様に鉛直回転駆動機構50及び鉛直ブレーキ機構60が設置されていてもよい。
【0049】
(鉛直回転駆動機構)
鉛直回転駆動機構50の構成は、水平回転駆動機構20と同様であってよい。つまり、鉛直回転駆動機構50は、
図6に示すように、回転駆動力を発生するモータ51と、モータ51の出力側に取り付けられた減速機52と、減速機52の出力側に取り付けられると共に傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aに噛合するピニオンギヤ53と、鉛直回転駆動機構50を昇降部4Aに固定するためのベースプレート54と、を備えて構成されている。鉛直回転駆動機構50の仕様は、ワークW、ステージ2及び傾斜フレーム3の最大偏荷重等を考慮して決定するのがよい。以下では、その一例を示す。
【0050】
モータ51は、AC(Alternate Current)サーボモータであり、精密な位置決め制御が可能である。モータ51は、例えば、定格トルクが「95.5N・m」、定格回転数が「1500rpm」であり、ブレーキ(DC24V)が付いたものを用いる。
減速機52は、遊星減速機である。減速機52の入力側には、モータ51が取り付けられている。また、減速機52の出力側には、ピニオンギヤ53が取り付けられている。減速機52は、例えば、減速比が「1323/625600」であるものを用いる。
【0051】
ピニオンギヤ53は、平歯車である。このピニオンギヤ53は、傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42A(
図3B参照)の内歯に噛合する。ベースプレート54は、鉛直回転駆動機構50を昇降部4Aに固定するためのものである。ベースプレート54は、鉛直回転駆動機構50を昇降部4Aにボルト54dを用いて固定するための長穴54cが6つ形成されている。この長穴54cの向きは、長手方向が昇降部4Aの上下方向(Y軸方向)になっている。その為、鉛直回転駆動機構50は、長穴54cの長穴方向にスライドさせることで、取り付け位置の調整が可能である。これにより、傾斜軸旋回ベアリング40Aとピニオンギヤ53とのバックラッシを調整することができる。
【0052】
この構成により、モータ51が傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aの内歯を介して駆動力を付与することで、傾斜フレーム3は、傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bの内輪42A,42B(42Bは図示せず)と一体になって水平軸回りに回転する。
【0053】
(鉛直ブレーキ機構)
鉛直ブレーキ機構60の構成は、水平ブレーキ機構30と同様であってよい。つまり、鉛直ブレーキ機構60は、
図7に示すように、保持力を発生するブレーキ61と、ブレーキ61の出力側に取り付けられた減速機62と、傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aに噛合すると共に減速機62の出力側に取り付けられるピニオンギヤ63と、鉛直ブレーキ機構60を昇降部4Aに固定するためのベースプレート54と、を備えて構成されている。鉛直ブレーキ機構60の仕様は、ワークW、ステージ2及び傾斜フレーム3による最大偏荷重等を考慮して決定するのがよい。以下では、その一例を示す。
【0054】
ブレーキ61は、モータ51が停止している場合には、傾斜フレーム3が回転(傾斜)しないように保持力を発生させ、モータ51が駆動している場合には、開放されて保持力を発生しない。ブレーキ61は、例えば、静摩擦トルク「200N・m」を発生する無励磁作動ブレーキである。また、減速機62の入力軸となるブレーキ61のシャフト(図示せず)の端部には、六角レンチを取り付ける六角穴61b(第2被駆動部)が形成されている。この六角穴61bは、バックラッシの確認において、六角レンチを差し込んで外部から回転駆動力を付与するものである。バックラッシの確認については後記する。
【0055】
減速機62は、遊星減速機である。この減速機62は、鉛直回転駆動機構50の減速機52と同様のものであってもよい。減速機62の入力側には、ブレーキ61が取り付けられている。また、減速機62の出力側には、ピニオンギヤ63が取り付けられている。減速機62は、例えば、減速比が「1323/625600」であるものを用いる。
【0056】
ピニオンギヤ63は、平歯車である。このピニオンギヤ63は、鉛直回転駆動機構50のピニオンギヤ53と同様のものであってもよい。このピニオンギヤ63は、傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aの内歯に噛合する。ベースプレート64は、鉛直ブレーキ機構60を昇降部4Aに固定するためのものである。ベースプレート64は、鉛直ブレーキ機構60を昇降部4Aにボルト64dを用いて固定するための長穴64cが6つ形成されている。この長穴64cの向きは、長手方向が昇降部4Aの上下方向(Y軸方向)になっている。その為、鉛直ブレーキ機構60は、長穴64cの長穴方向にスライドさせることで、取り付け位置の調整が可能である。これにより、傾斜軸旋回ベアリング40Aとピニオンギヤ63とのバックラッシを調整することができる。
【0057】
この構成により、ブレーキ61が傾斜軸旋回ベアリング40Aの内輪42Aに対して保持力を付与することで、傾斜フレーム3は、水平軸回りの回転が抑制される。
以上で、実施形態に係るポジショナ1の構成についての説明を終了する。
【0058】
これまで説明したように、ポジショナ1は、鉛直回転駆動機構50(第2回転駆動機構)が発生する回転駆動力を傾斜軸旋回ベアリング40A(第2回転駆動歯車)に伝達することにより、傾斜フレーム3が傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bの内輪42A,42B(42Bは図示せず)と一体になって水平軸回りに回転する。
また、ポジショナ1は、水平回転駆動機構20(第1回転駆動機構)が発生する回転駆動力を回転軸旋回ベアリング10(第1回転駆動歯車)に伝達することにより、ステージ2が回転軸旋回ベアリング10の内輪12と一体になって垂直軸回りに回転する。
また、ポジショナ1は、昇降駆動機構80A,80Bが発生する回転駆動力をボールネジ70A,70Bに伝達することにより、昇降部4A,4Bが昇降する。
【0059】
≪実施形態に係るポジショナのバックラッシ確認方法≫
続いて、
図8,
図9を参照して、ポジショナ1のバックラッシ確認方法について説明する。ここでは、回転軸旋回ベアリング10(第1回転駆動歯車)、水平回転駆動機構20(第1回転駆動機構)、及び水平ブレーキ機構30(第1ブレーキ機構)を例に挙げて説明を行う。傾斜軸旋回ベアリング40A(第2回転駆動歯車)、鉛直回転駆動機構50、及び鉛直ブレーキ機構60(第2ブレーキ機構)についても同様である。
【0060】
ポジショナ1のバックラッシ確認方法は、「水平回転駆動機構20と回転軸旋回ベアリングとの間のバックラッシの確認」及び「水平ブレーキ機構30と回転軸旋回ベアリング10との間のバックラッシの確認」の2段階で構成される。以下では、各段階に分けてバックラッシの確認方法を説明する。
【0061】
(水平回転駆動機構と回転軸旋回ベアリングとの間のバックラッシの確認)
最初に、ポジショナ1のバックラッシを調整する者(以下では、「調整者」とよぶ)は、モータ21を停止させ、モータ21内部の図示しないブレーキを作動させる。これにより、ピニオンギヤ23が固定される。そして、調整者は、回転軸旋回ベアリング10の内歯上のいずれかにダイヤルゲージを当てると共に、ブレーキ31を解放する。
【0062】
続いて、調整者は、ブレーキ31の六角穴31b(
図5参照)に六角レンチTを挿入し(
図8(a)参照)、六角レンチTを回転させ、減速機32の入力軸に回転駆動力を付与する(
図8(b)参照)。回転軸旋回ベアリング10の内輪12は、減速機32で増幅した回転駆動力により回転する。調整者は、回転軸旋回ベアリング10の内歯がピニオンギヤ23に当接するまでの隙間をダイヤルゲージで測定し、法線方向のバックラッシを測定する。
【0063】
続いて、調整者は、読み取ったバックラッシが判定基準範囲内であれば確認を終了する。一方、調整者は、読み取ったバックラッシが判定基準範囲内でなければ、ベースプレート24に形成される長穴24cの中で水平回転駆動機構20の取り付け位置を調整する(
図8(c)参照)。これにより、水平回転駆動機構20と回転軸旋回ベアリング10との間のバックラッシが調整される。なお、このバックラッシの調整を繰り返し行ってもよい。
【0064】
(水平ブレーキ機構と回転軸旋回ベアリングとの間のバックラッシの確認)
次に、調整者は、モータ21内部の図示しないブレーキを作動させると共に、ブレーキ31を解放した状態のまま、ピニオンギヤ33の歯上のいずれかにダイヤルゲージを当てる。そして、調整者は、ブレーキ31の六角穴31b(
図5参照)に六角レンチTを挿入し(
図9(a)参照)、六角レンチTを回転させ、減速機32の入力軸に回転駆動力を付与する(
図9(b)参照)。ピニオンギヤ33は、減速機32で増幅した回転駆動力により回転する。調整者は、ピニオンギヤ33の歯が回転軸旋回ベアリング10に当接するまでの隙間をダイヤルゲージで測定し、法線方向のバックラッシを測定する。
【0065】
続いて、調整者は、読み取ったバックラッシが判定基準範囲内であれば確認を終了する。一方、調整者は、読み取ったバックラッシが判定基準範囲内でなければ、ベースプレート34に形成される長穴34cの中で水平ブレーキ機構30の取り付け位置を調整する(
図9(c)参照)。これにより、水平ブレーキ機構30と回転軸旋回ベアリング10との間のバックラッシが調整される。なお、このバックラッシの調整を繰り返し行ってもよい。
【0066】
このバックラッシ確認方法であれば、調整者は、水平ブレーキ機構30の減速機32の入力軸または鉛直ブレーキ機構60の減速機62に外部から回転力を付与し、減速機32,62で増幅した回転力を用いて、回転軸旋回ベアリング10や傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bを回転させる。その為、調整者は、小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
また、このバックラッシ確認方法であれば、モータ21,51内部のブレーキが常に作動している。その為、バックラッシの確認を行う場合に、ステージ2や傾斜フレーム3が回転することがない。特に、傾斜軸側(傾斜軸旋回ベアリング40A、鉛直回転駆動機構50、及び鉛直ブレーキ機構60)のバックラッシの確認を行う場合に、傾斜フレーム3が重力方向に回転することがないので、調整者は安全に作業をすることができる。
以上で、実施形態に係るポジショナ1のバックラッシ確認方法についての説明を終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るポジショナ1は、ブレーキ31,61が発生させる保持力を減速機32,62で増幅することができる。したがって、ポジショナ1によれば、増幅した保持力を用いて、回転軸旋回ベアリング10や傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bの回転を抑制することができる。その為、ポジショナ1でより重いワークWを保持しようとした場合(すなわち、ワークWの重量を増大させた場合)でも、ブレーキ31,61を小型化することができる。
【0068】
また、本実施形態に係るポジショナ1は、減速機32,62に外部からトルクを付与し、さらに付与されたトルクを増幅することができる。したがって、ポジショナ1によれば、増幅したトルクを用いて、回転軸旋回ベアリング10や傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bを回転することができる。その為、回転軸旋回ベアリング10や傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bを直接動作させるよりも小さい負荷でバックラッシを確認することができる。
【0069】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に示す。
【0070】
(ポジショナの構成)
実施形態に係るポジショナ1は、
図1に示すように、垂直軸回り及び水平軸回りの双方にワークWを回転させる「2軸ポジショナ」であった。しかしながら、本発明に係るポジショナは、2軸ポジショナに限定されるものではなく、垂直軸回り及び水平軸回りの何れか一方にワークWを回転させる「1軸ポジショナ」であってもよい。
【0071】
(六角レンチを取り付ける穴)
実施形態に係るポジショナ1は、減速機32の入力軸となるブレーキ31のシャフト(出力軸31a)に、六角レンチを取り付ける六角穴31b(第1被駆動部)が形成されていた。しかしながら、減速機32の入力軸に回転駆動力を付与できるものであれば、六角レンチを取り付ける六角穴31bに限定されるものではない。例えば、六角レンチ以外の形状の他のレンチやスパナと取り付ける凹部や凸部が形成されてもよい。なお、六角レンチを取り付ける六角穴61b(第2被駆動部)についても同様である。
【0072】
(回転駆動機構とブレーキ機構との位置関係)
実施形態に係るポジショナ1は、水平回転駆動機構20と水平ブレーキ機構30との位置が、
図3Aに示すように対向していた。しかしながら、
図10(a)に示すように、水平回転駆動機構20と水平ブレーキ機構30との位置は、隣り合っていてもよい。なお、鉛直回転駆動機構50と鉛直ブレーキ機構60との位置関係についても同様である。
【0073】
(回転駆動機構及びブレーキ機構の数)
また、実施形態に係るポジショナ1は、回転軸旋回ベアリング10に対して各一つずつの水平回転駆動機構20及び水平ブレーキ機構30を有していた。しかしながら、水平回転駆動機構20及び水平ブレーキ機構30の数は特に限定されるものではない。例えば、
図10(b)に示すように、回転軸旋回ベアリング10に対して水平回転駆動機構20及び水平ブレーキ機構30を二つずつ有していてもよい。なお、鉛直回転駆動機構50及び鉛直ブレーキ機構60との数についても同様である。
【0074】
(旋回ベアリングの構成)
また、実施形態に係るポジショナ1は、回転軸旋回ベアリング10の内輪12に内歯が形成されていた。言い換えると、内輪12が内歯車(内歯歯車)であった。しかしながら、内輪12に内歯が形成される代わりに、回転軸旋回ベアリング10の外輪11に外歯が形成されていてもよい。その場合、
図10(c)に示すように、回転軸旋回ベアリング10の外輪11側に水平回転駆動機構20及び水平ブレーキ機構30を配置する。なお、傾斜軸旋回ベアリング40A,40Bの構成についても同様である。
【0075】
(水平回転駆動機構20と水平ブレーキ機構30とが一つの構成要素)
また、実施形態に係るポジショナ1は、水平回転駆動機構20と水平ブレーキ機構30とを別々の構成要素としていた。しかしながら、
図11に示すように、ブレーキ31の入力側にモータ21を備える構成にしてもよい。この場合、減速機32の入力軸に回転駆動力を付与する手段は、限定されるものではない。
【0076】
図11では、ブレーキ31とモータ21とは、ボルトを介して所定の隙間を空けて固定されている。円盤形状のプレート101は、ブレーキ31とモータ21との間の隙間に挟み込むようにして、減速機32の入力軸(モータ21の出力軸)に固定されている。また、プレート101には、円周上にネジ穴が形成されていて、ロッド102を取り付け可能である。この構成では、ロッド102を用いてプレート101を回転させることで、減速機32の入力軸に回転駆動力を付与し、減速機32で増幅した回転駆動力により回転軸旋回ベアリング10の内輪12が回転する。これにより、ポジショナ1のバックラッシを確認する。