特許第6208026号(P6208026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208026印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208026
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20170925BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20170925BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B41J2/01 305
   B41J2/01 129
   B41J2/15
   B05C13/02
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-11849(P2014-11849)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-136932(P2015-136932A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】津田 英介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 峻平
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−214262(JP,A)
【文献】 特開2007−136764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B05C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタが透光性を有する材料で構成されたワークの表面を印刷する際に、前記ワークを位置決めする印刷用治具であって、
前記インクジェットプリンタは、前記ワークに対向してインクを吐出するプリンタヘッドと、前記ワークに吐出されたインクに対して紫外線を照射可能な紫外線照射器を有するキャリッジと、を有し、
前記キャリッジは、主走査方向に移動しながら、前記プリンタヘッドにより前記ワークの表面に印刷を行っており、
記紫外線照射器から照射された前記紫外線が、前記ワークの表面から入射すると共に、前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記プリンタヘッドに向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする印刷用治具。
【請求項2】
前記ワークを位置決めする位置決め用治具と、
前記位置決め用治具に設置される規制用治具と、を備え、
前記規制用治具は、前記ワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷用治具。
【請求項3】
前記位置決め用治具の厚みは、前記ワークの厚みよりも薄く形成され、
前記規制用治具は、前記位置決め用治具により位置決めされた前記ワークの前記外側面間に配置される前記ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部を備えることを特徴とする請求項2に記載の印刷用治具。
【請求項4】
前記ワーク間侵入部の厚みは、前記ワークの前記位置決め用治具の表面からの突出量以上で、かつ、前記位置決め用治具と前記吐出部との間隔よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の印刷用治具。
【請求項5】
前記ワーク間侵入部は、前記規制用治具に前記ワークの平面形状と同形状に形成されて、内側に前記ワークを収容する収容用孔の内側面であることを特徴とする請求項4に記載の印刷用治具。
【請求項6】
前記規制用治具の厚みは、前記ワークの前記位置決め用治具の表面からの突出量と等しいことを特徴とする請求項5に記載の印刷用治具。
【請求項7】
前記位置決め用治具は、前記紫外線が、前記位置決め用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の端面から前記吐出部に向けて出射されることを規制する出射規制手段を、備えたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項8】
前記出射規制手段は、前記位置決め用治具の前記端面に取り付けられた遮光部材であることを特徴とする請求項7に記載の印刷用治具。
【請求項9】
前記位置決め用治具は、前記インクジェットプリンタの主走査範囲の内側から前記主走査範囲の外側へ延在しており、前記位置決め用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の両端面が、前記インクジェットプリンタの前記主走査範囲よりも外側に位置していることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項10】
前記位置決め用治具は、非透光性を有する材料で構成されたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項11】
前記規制用治具は、前記紫外線が、前記規制用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の端面から前記吐出部に向けて出射されることを規制する規制用出射規制手段を、備えたことを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項12】
前記規制用出射規制手段は、前記規制用治具の前記端面に取り付けられた規制用遮光部材であることを特徴とする請求項11に記載の印刷用治具。
【請求項13】
前記規制用治具は、前記インクジェットプリンタの主走査範囲の内側から前記主走査範囲の外側へ延在しており、前記規制用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の両端面が、前記インクジェットプリンタの前記主走査範囲よりも外側に位置していることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項14】
前記規制用治具は、非透光性を有する材料で構成されたことを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項15】
透光性を有する材料で構成されたワークを印刷用治具に位置決めして、インクジェットプリンタを用いて、前記ワークの表面を印刷する印刷方法であって、
前記インクジェットプリンタは、前記ワークに対向してインクを吐出するプリンタヘッドと、前記ワークに吐出されたインクに対して紫外線を照射可能な紫外線照射器を有するキャリッジと、を有し、
前記キャリッジは、主走査方向に移動しながら、前記プリンタヘッドにより前記ワークの表面に印刷を行っており、
前記印刷用治具は、
前記ワークを位置決めするものであって、
記紫外線照射器から照射された前記紫外線が、前記ワークの表面から入射すると共に、前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記プリンタヘッドに向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項16】
ワークを位置決めする印刷用治具と、
前記ワークに対向してインクを吐出するプリンタヘッドと、前記ワークに吐出されたインクに対して紫外線を照射可能な紫外線照射器を有するキャリッジと、を備えたインクジェットプリンタであって、
前記印刷用治具は、
記紫外線照射器から照射された前記紫外線が、前記ワークの表面から入射すると共に、前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記プリンタヘッドに向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインクジェットプリンタを用いて、ワークの表面に所定の図形を印刷する際には、ワークを位置決めする治具が用いられることがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−136764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に示された治具を用いて、特に、透光性を有する材料で構成されたワークに紫外線を照射することで硬化するUV硬化型インクで所定の図形を印刷する際に、インクの液滴が所望の方向からずれた方向に吐出して、ワークの表面に所定の図形が印刷できないことがあった。特に、黒色、赤色、青色などに印刷すべき箇所に、微細な白色のしぶきが付着して、所謂白しぶきが発生することがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷用治具は、インクジェットプリンタが透光性を有する材料で構成されたワークの表面を印刷する際に、前記ワークを位置決めする印刷用治具であって、前記インクジェットプリンタの紫外線照射器から照射されて前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記インクジェットプリンタの吐出部に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする。
【0007】
即ち、本発明の発明者らは、白しぶきの発生原因を複数想定し、各想定された発生原因の真偽を一つ一つ検証した。そして、本発明の発明者らが、白しぶきの原因が、透光性を有する材料で構成されたワーク内を伝搬した紫外線がワークの外側面からインクジェットプリンタの吐出部に向けて出射されて、吐出部内のインクが硬化することであることを見出すことで、本発明は、初めて創作された発明であります。即ち、本発明は、白しぶきの発生原因が紫外線の迷光により吐出部内のインクが硬化することであることを見出すことで、初めて創作された発明であります。このように、本発明は、透光性を有する材料で構成されたワークに印刷する際の白しぶきの発生を抑制するために、初めて創作されたものであって、印刷用治具にワークの外側面を覆う部分を単に設けたものではありません。
【0008】
具体的には、本発明の発明者らは、透光性を有する材料で構成されたワークを印刷する際に発生する白しぶきの発生原因が、ワーク表面上の静電気であること、ワークを位置決めする治具の表面から反射された紫外線であることを想定した。白しぶきの発生原因がワーク表面上の静電気であるか否かを検証するために、本発明の発明者らは、透明な平板の紙の表面を周知のイオナイザで除電した後、印刷したが、白しぶきが発生した。本発明の発明者らは、白しぶきの発生原因がワーク表面上の静電気ではないことを明らかにした。
【0009】
また、白しぶきの発生原因が治具の表面から反射された紫外線であるか否かを検証するために、本発明の発明者らは、透明な材料で構成された治具に位置決めされたワークと、黒色の治具に位置決めされたワークに印刷した。黒色の治具に位置決めされたワークの場合、白しぶきの発生が減少するものの完全には白しぶきの発生を抑制することができなかった。なお、この場合では、ワークの厚みは、治具の厚みよりも大きいので、ワークが治具から突出した状態で位置決めされる。こうして、本発明の発明者らは、白しぶきの発生原因が治具の表面から反射された紫外線以外に白しぶきの発生原因があることを明らかにした。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、白しぶきの発生原因が透光性を有する材料で構成されたワーク自体が紫外線を伝搬する光路となることと想定した。そして、さらに検証するために、本発明の発明者らは、透明な材料で構成された治具から突出した状態で位置決めされたワークと、黒色の治具から突出した状態で位置決めされたワークと、透明な平板とから出射される紫外線の積算光量を測定した。本発明の発明者らは、透明な平板から出射された紫外線の積算光量が、透明な材料で構成された治具から突出した状態で位置決めされたワークから出射された紫外線の積算光量の約56分の1であり、黒色の治具から突出した状態で位置決めされたワークから出射された紫外線の積算光量の約11分の1であることを明らかにした。
【0011】
また、本発明の発明者らは、透明な平板に印刷すると白しぶきが発生しないことを確認した。このように、透明な材料で構成された治具から突出した状態で位置決めされたワークに印刷すると白しぶきが発生し、黒色の治具から突出した状態で位置決めされたワークに印刷すると白しぶきの発生が減少するものの完全には白しぶきの発生を抑制することができず、透明な平板に印刷すると白しぶきが発生しないとともに、前述した積算光量の測定結果から、本発明の発明者らは、積算光量が少ないと白しぶきの発生を抑制でき、積算光量が多いと白しぶきが発生することを明らかにした。こうして、本発明の発明者らは、白しぶきの発生原因が、数ある想定される原因のうち、透光性を有する材料で構成されたワーク自体が光路となっている、という原因を究明し、本発明を創作した。
【0012】
前述したように、本発明では、ワーク内を伝搬する紫外線がワークの外側面から吐出部に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えているので、紫外線照射器から照射されてワーク内を伝搬する紫外線が、吐出部内のインクに照射されることを抑制でき、吐出部内のインクが増粘(固まり気味となって、粘度が上昇すること)することを抑制できる。したがって、吐出部から液滴として吐出されるインクが増粘していないので、吐出部からインクの液滴を所望の方向に吐出することができる。この結果、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる。
【0013】
また、上記印刷用治具において、前記ワークを位置決めする位置決め用治具と、前記位置決め用治具に設置される規制用治具と、を備え、前記規制用治具は、前記ワーク側出射規制手段を備えることが好ましい。
【0014】
この発明では、印刷用治具が位置決め用治具と規制用治具とで構成されるので、規制用治具を位置決め用治具から取り外すと、位置決め用治具からワークが突出して、ワークを位置決め用治具に容易に着脱することができる。また、規制用治具が、ワーク側出射規制手段を備えているので、規制用治具が、ワーク内を伝搬する紫外線が吐出部に向けて出射されることを確実に規制することができる。
【0015】
また、上記印刷用治具において、前記位置決め用治具の厚みは、前記ワークの厚みよりも薄く形成され、前記規制用治具は、前記位置決め用治具により位置決めされた前記ワークの前記外側面間に配置される前記ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部を備えることが好ましい。
【0016】
この発明では、位置決め用治具の厚みがワークの厚みよりも薄いので、規制用治具を位置決め用治具から取り外すと、位置決め用治具からワークが突出して、ワークを位置決め用治具に容易に着脱することができる。また、規制用治具が、隣り合うワークの外側面間に配置されるワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部を備えているので、規制用治具が、ワーク内を伝搬する紫外線が吐出部に向けて出射されることを確実に規制することができる。
【0017】
また、上記印刷用治具において、前記ワーク間侵入部の厚みは、前記ワークの前記位置決め用治具の表面からの突出量以上で、かつ、前記位置決め用治具と前記吐出部との間隔よりも小さいことが好ましい。
【0018】
この発明では、ワーク間侵入部の厚みが、ワークの位置決め用治具の表面からの突出量以上であるので、ワーク間侵入部が、ワーク内を伝搬する紫外線が吐出部に向けて出射されることを確実に規制することができる。
【0019】
また、上記印刷用治具において、前記ワーク間侵入部は、前記規制用治具に前記ワークの平面形状と同形状に形成されて、内側に前記ワークを収容する収容用孔の内側面であることが好ましい。
【0020】
この発明では、ワーク間侵入部が、ワークの平面形状と同形状の収容用孔の内側面であるので、ワーク間侵入部とワークの外側面とを極力近づけることができる。したがって、ワーク間侵入部とワークの外側面との間からワーク内を伝搬する紫外線が、吐出部に向けて出射されることを抑制することができる。
【0021】
また、上記印刷用治具において、前記規制用治具の厚みは、前記ワークの前記位置決め用治具の表面からの突出量と等しいことが好ましい。
【0022】
この発明では、規制用治具を位置決め用治具に設置すると、規制用治具とワークとが面一となるので、ワーク内を伝搬した紫外線がワークの外側面から印刷用治具外に出射されることを確実に抑制することができる。
【0023】
また、上記印刷用治具において、前記位置決め用治具は、前記紫外線が、前記位置決め用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の端面から前記吐出部に向けて出射されることを規制する出射規制手段を備えたことが好ましい。
【0024】
この発明では、位置決め用治具が透光性を有する材料で構成されても、紫外線が主走査方向の端面から吐出部に向けて出射されることを規制する出射規制手段を備えているので、仮に、紫外線照射器からの紫外線が、位置決め用治具内に入射して端面に向けて伝搬しても、端面から吐出部に向けて出射することを抑制できる。したがって、吐出部から液滴として吐出されるインクが増粘することを抑制でき、インクの液滴を所望の方向に吐出することを可能とすることができる。この結果、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる。
【0025】
また、上記印刷用治具において、前記出射規制手段は、前記位置決め用治具の前記端面に取り付けられた遮光部材であることが好ましい。
【0026】
この発明では、出射規制手段が端面に取り付けられた遮光部材であるので、遮光部材が、紫外線が端面から吐出部に向けて出射することを確実に抑制できる。
【0027】
また、上記印刷用治具において、前記位置決め用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の両端面が、前記インクジェットプリンタの主走査範囲よりも外側に配置されるまで、前記位置決め用治具の両端部は、延在していることが好ましい。
【0028】
この発明では、位置決め用治具の両端面が、主走査範囲の外側に配置されているので、位置決め用治具内を伝搬する紫外線が端面から吐出部に向けて出射することを確実に抑制できる。
【0029】
また、上記印刷用治具において、前記位置決め用治具は、非透光性を有する材料で構成されたことが好ましい。
【0030】
この発明では、位置決め用治具が非透光性を有する材料で構成されているので、紫外線が端面から出射されることを規制することができる。
【0031】
また、上記印刷用治具において、前記規制用治具は、前記紫外線が、前記規制用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の端面から前記吐出部に向けて出射されることを規制する規制用出射規制手段を備えたことが好ましい。
【0032】
この発明では、規制用治具が透光性を有する材料で構成されても、紫外線が主走査方向の端面から吐出部に向けて出射されることを規制する規制用出射規制手段を備えているので、紫外線照射器からの紫外線が、規制用治具内に入射して端面に向けて伝搬しても、端面から吐出部に向けて出射することを抑制できる。したがって、吐出部から液滴として吐出されるインクが増粘することを抑制でき、インクの液滴を所望の方向に吐出することを可能とすることができる。この結果、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる。
【0033】
また、上記印刷用治具において、前記規制用出射規制手段は、前記規制用治具の前記端面に取り付けられた規制用遮光部材であることが好ましい。
【0034】
この発明では、規制用出射規制手段が端面に取り付けられた遮光部材であるので、遮光部材が、規制用治具内を伝搬する紫外線が端面から吐出部に向けて出射することを確実に抑制できる。
【0035】
また、上記印刷用治具において、前記規制用治具の前記インクジェットプリンタの主走査方向の両端面が、前記インクジェットプリンタの主走査範囲よりも外側に配置されるまで、前記規制用治具の両端部は、延在していることが好ましい。
【0036】
この発明では、規制用治具の両端面が、主走査範囲の外側に配置されているので、規制用治具内を伝搬する紫外線が端面から吐出部に向けて出射することを確実に抑制できる。
【0037】
また、上記印刷用治具において、前記規制用治具は、非透光性を有する材料で構成されたことが好ましい。
【0038】
この発明では、規制用治具が非透光性を有する材料で構成されているので、紫外線が端面から出射されることを規制することができる。
【0039】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷方法は、透光性を有する材料で構成されたワークを印刷用治具に位置決めして、インクジェットプリンタを用いて、前記ワークの表面を印刷する印刷方法であって、前記印刷用治具は、前記ワークを位置決めするものであって、前記インクジェットプリンタの紫外線照射器から照射されて前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記インクジェットプリンタの吐出部に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする。
【0040】
この発明では、上記印刷用治具を用いてワークの表面を印刷するので、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる。
【0041】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、ワークを位置決めする印刷用治具と、インクを吐出する吐出部と紫外線を照射する紫外線照射器とを主走査方向に移動させながら前記ワークの表面を印刷するキャリッジと、を備えたインクジェットプリンタであって、前記印刷用治具は、前記インクジェットプリンタの紫外線照射器から照射されて前記ワーク内を伝搬する紫外線が、前記ワークの外側面から前記インクジェットプリンタの吐出部に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えることを特徴とする。
【0042】
この発明では、上記印刷用治具を用いてワークの表面を印刷するので、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタは、ワークの表面に所定の図形を確実に印刷することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、実施形態にかかるインクジェットプリンタの概略の構成を示す概略構成図である。
図2図2は、図1に示されたインクジェットプリンタにより表面に所定の図形が印刷されるワークの平面図である。
図3図3は、実施形態に係る印刷用治具の斜視図である。
図4図4は、図3に示された印刷用治具の分解斜視図である。
図5図5は、図3に示された印刷用治具の要部の断面図である。
図6図6は、図3に示された印刷用治具内の紫外線の伝搬状態などを示す図である。
図7図7は、実施形態の変形例1にかかる印刷用治具の規制用治具の斜視図である。
図8図8は、実施形態の変形例1にかかる印刷用治具の要部の断面図である。
図9図9は、実施形態の変形例2にかかる印刷用治具の要部の断面図である。
図10図10は、実施形態の変形例3にかかる印刷用治具の要部の断面図である。
図11図11は、実施形態の変形例4にかかる印刷用治具の要部の断面図である。
図12図12は、実施形態の変形例5にかかる印刷用治具の要部の断面図である。
図13図13は、本発明品1の実験を模式的に示す図である。
図14図14は、本発明品2の実験を模式的に示す図である。
図15図15は、比較例の実験を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明に係る印刷用治具、印刷方法及びインクジェットプリンタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0046】
〔実施形態〕
図1は、実施形態にかかるインクジェットプリンタの概略の構成を示す概略構成図である。図2は、図1に示されたインクジェットプリンタにより表面に所定の図形が印刷されるワークの平面図である。
【0047】
図1に示すインクジェットプリンタ100は、図2に示すワークWの表面WSに、紫外線が照射されることで硬化するインクを吐出し、ワークWの表面WSに紫外線を照射してインクを硬化させて、ワークWの表面WSに所定の図形F(図2中に平行斜線で示す)を印刷するものである。ワークWは、アクリル樹脂などの透光性を有する材料で構成され、かつ平面形状が所定形状の平板状に形成されている。なお、本発明でいう透光性を有する材料とは、インクを露光する際に用いられる紫外線を伝搬できる材料をいい、透明であることが望ましいが、紫外線を伝搬可能であれば、透明であることに限らない。
【0048】
インクジェットプリンタ100は、図1に示すように、主走査方向に設けたYバー101と、インクタンク102と、キャリッジ103と、制御装置104と、印刷用治具1とを備える。インクタンク102は、図示しないテーブル上に載置され、印刷用治具1により位置決めされたワークWの表面WSに吐出するインクを貯留するものである。ここでは、インクタンク102は、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクを別々に貯留する。インクタンク102に貯留されるインクは、紫外線が照射されて露光することで硬化度が変化するインクである。
【0049】
キャリッジ103は、Yバー101に沿って主走査方向に主走査範囲R内を往復移動可能になっている。キャリッジ103は、インクを吐出する吐出部109と紫外線を照射する紫外線照射器108を主走査方向に移動させながらワークWの表面WSを印刷するものである。キャリッジ103は、ワークWの印刷搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に移動制御される。また、キャリッジ103は、ホルダー107と、ホルダー107の主走査方向の両側に設けた露光部としての一対の紫外線照射器108とを有している。
【0050】
キャリッジ103が有するホルダー107には、吐出部109が配置されている。吐出部109は、複数の吐出ノズル(図示せず)を備え、複数の吐出ノズルがインクタンク106に貯留されたM(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、K(ブラック)のいずれかの色のインクを吐出することができるように設けられている。吐出部109は、印刷する内容に応じた色のインクを吐出ノズルから吐出する。なお、吐出部109から吐出する色の組み合わせは、これ以外のものでもよい。吐出部109の吐出ノズルは、例えば、ワークWに対向してインクを吐出するプリンタヘッド、インクタンク102とプリンタヘッドとを接続する各種インク流路、インク流路上に設けられるレギュレータ及びポンプ等を含んで構成される。
【0051】
ここでは、プリンタヘッドは、少なくともインクを吐出するヘッド部を含んで構成され、インク流路を介してインクタンク102に接続されている。吐出部109の吐出ノズルは、ポンプが駆動することで、プリンタヘッドの各ヘッド部からインクタンク102のインクを所定の吐出量でワークWに向けてインクジェット方式で吐出することができる。
【0052】
各紫外線照射器108は、ワークWに吐出されたインクに対して露光可能なものである。各紫外線照射器108は、例えば、紫外線を照射可能なLEDモジュール等により構成される。また、インクジェットプリンタ100は、ワークWを載せるテーブル等と共に、キャリッジ103に対してワークWを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させる搬送装置を備えている。
【0053】
制御装置104は、吐出部109、各紫外線照射器108等を含むインクジェットプリンタ100の各部を制御するものである。制御装置104は、機能概念的に、吐出制御部104a、露光制御部104b、パターン変換部104c等を含んで構成されている。また、制御装置104は、演算装置、メモリ等のハードウェア及びこれらの所定の機能を実現させるプログラムから構成されている。
【0054】
制御装置104が有する吐出制御部104aは、吐出部109の各吐出ノズルのポンプ等を制御し、吐出ノズルから吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御するものである。露光制御部104bは、各紫外線照射器108等を制御し、当該各紫外線照射器108から照射する紫外線の強度、露光タイミング、露光期間等を制御するものである。パターン変換部104cは、制御装置104に有線/無線で接続されるPC、種々の端末等の入力装置200から入力される入力情報に応じて、吐出制御量や露光制御量を設定するものである。
【0055】
パターン変換部104cには、入力情報として、例えば、入力装置200等を介して入力された画像情報であって、ワークWの表面WSに印刷したい所定の図形F(文字、絵柄、模様等)等の画像情報等が入力される。パターン変換部104cは、この入力情報に基づいて、ワークWの表面WSに印刷したい所定の図形Fとなる印刷パターンを生成し、当該生成した印刷パターンを実現可能な吐出制御量、露光制御量に変換する。そして、吐出制御部104aは、パターン変換部104cが算出した吐出制御量に基づいて吐出部109の吐出ノズルによる吐出を制御し、露光制御部104bは、パターン変換部104cが算出した露光制御量に基づいて各紫外線照射器108による露光を制御する。
【0056】
これらのように構成されるインクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、ワークWに対してキャリッジ103を主走査方向に往復移動させつつ、ワークWの表面WSに対して吐出部109によって所定の印刷幅でインクを吐出する。そして、インクジェットプリンタ100は、制御装置104による制御に応じて、各紫外線照射器108が所定のタイミングで、紫外線を照射し露光することでワークWに着弾したインクを硬化させる。
【0057】
インクジェットプリンタ100は、上記所定の印刷幅に応じてキャリッジ103に対してワークWを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させながら、これを繰り返し、所定の図形FをワークWの表面WSに印刷していく。この間、制御装置104は、吐出制御部104aが吐出部109の各吐出ノズルから吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御し、露光制御部104bが各紫外線照射器108から照射する紫外線の強度等を制御する。これにより、インクジェットプリンタ100は、パターン変換部104cが生成した印刷パターンに応じて、ワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷することができる。このように、前述したインクジェットプリンタ100を用いた印刷方法は、ワークWを印刷用治具1に複数位置決めして、ワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷する方法である。なお、ワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷する際には、ワークWが透光性を有する材料で構成されているために、紫外線照射器108からの紫外線が少なくともワークW内に入射する。
【0058】
印刷用治具1は、インクジェットプリンタ100がワークWの表面WSを印刷する際に、複数のワークWをテーブル上に位置決めするものである。また、印刷用治具1は、紫外線照射器108から照射されてワークW内を伝搬する紫外線が、ワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を備えるものである。図3は、実施形態に係る印刷用治具の斜視図である。図4は、図3に示された印刷用治具の分解斜視図である。図5は、図3に示された印刷用治具の要部の断面図である。図6は、図3に示された印刷用治具内の紫外線の伝搬状態などを示す図である。
【0059】
印刷用治具1は、図3及び図4に示すように、ワークWを位置決めする位置決め用孔11(位置決め手段に相当)を複数有して、複数のワークWを位置決めする位置決め用治具10と、位置決め用治具10に設置される規制用治具20とを備える。
【0060】
位置決め用治具10及び規制用治具20は、アクリル樹脂などの透光性を有する材料で構成され、かつ平面形状が矩形状に形成されている。このために、位置決め用治具10及び規制用治具20は、ワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷する際に、紫外線照射器108からの紫外線が入射する。位置決め用治具10及び規制用治具20に入射した紫外線は、ワークWに入射した紫外線とともに、ワークW、位置決め用治具10及び規制用治具20内を主走査方向の位置決め用治具10及び規制用治具20の端面10a,20aに向けて伝搬する。
【0061】
位置決め用治具10は、厚みT1(図5に示す)が一定の平板状に形成され、厚みT1が、ワークWの厚みTW(図5に示す)よりも薄く形成されている。位置決め用孔11は、位置決め用治具10を貫通した孔であって、平面形状が、ワークWの外形に沿って形成されて、ワークWの平面形状と等しく形成されている。位置決め用孔11は、主走査方向と副走査方向との双方に沿って複数並べられている。位置決め用孔11は、内側にワークWを収容して、ワークWの表面WSがキャリッジ103に対向するように位置決めする。
【0062】
規制用治具20は、前記ワーク側出射規制手段を備えるものである。規制用治具20は、厚みT2(図5に示す)が一定の平板状に形成され、厚みT2が、位置決め用治具10の厚みT1よりも薄く形成されている。位置決め用治具10の厚みT1と規制用治具20の厚みT2とを合わせた厚みは、ワークWの厚みTWと等しく形成されている。このために、規制用治具20の厚みT2は、ワークWの位置決め用治具10の表面からの突出量P(図5に示す)と等しくなっている。
【0063】
規制用治具20は、位置決め用治具10上に重ねられて、位置決め用治具10に設置される。規制用治具20は、位置決め用治具10に設置された際に、位置決め用孔11と連通する収容用孔21を複数有している。
【0064】
収容用孔21は、規制用治具20にワークWの平面形状と同形状に形成された規制用治具20を貫通した孔である。収容用孔21の平面形状は、ワークWの平面形状と等しく形成されている。収容用孔21は、主走査方向と副走査方向との双方に沿って複数並べられ、規制用治具20が位置決め用治具10に設置されると、位置決め用孔11と一致する位置に設けられている。収容用孔21は、位置決め用治具10に位置決めされたワークWを内側に収容する。
【0065】
また、収容用孔21の内側面21aは、位置決め用治具10により位置決めされ、かつ隣り合うワークWの外側面WG間に配置される前記ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部に相当する。ワーク間侵入部に相当する収容用孔21の内側面21aは、ワークW内を伝搬し、かつワークWの外側面WGから出射する紫外線が入射する。収容用孔21の内側面21aは、ワークWの外側面WGから出射される紫外線を規制用治具20内に入射させ、入射させた紫外線を規制用治具20の端面20aに向けて規制用治具20内を伝搬させることで、紫外線がワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制する。
【0066】
前述した構成の位置決め用治具1は、インクジェットプリンタ100がワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷する際には、図5に示すように、位置決め用治具10と規制用治具20とが重ねられて設置され、位置決め用孔11及び収容用孔21内にワークWを収容して、複数のワークWをテーブル上に位置決めする。そして、インクジェットプリンタ100は、吐出部109及び紫外線照射器108を主走査方向に往復移動させるとともに、吐出部109及び紫外線照射器108に対してワークWを副走査方向に相対移動させながら、印刷パターンにしたがって吐出部109からインクを吐出しつつ紫外線照射器108から紫外線を照射する。
【0067】
このとき、紫外線照射器108から照射されてワークW等に入射した紫外線は、図6に一点鎖線で示す矢印のようにワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射されることなく、図6に実線で示すようにワークWの外側面WGから規制用治具20に入射して、規制用治具20、ワークW及び位置決め用治具10内を端面10a,20aに向けて伝搬する。
【0068】
以上の実施形態に係る印刷用治具1は、ワークW内を伝搬する紫外線が、外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段を有する規制用治具20を備えているので、紫外線照射器108から照射されてワークW内を伝搬する紫外線が吐出部109内のインクに照射されることを抑制でき、吐出部109内のインクが増粘(固まり気味となって、粘度が上昇すること)することを抑制できる。したがって、吐出部109から液滴として吐出されるインクが増粘していないので、インクの液滴を所望の方向に吐出することができ、ワークWの表面WSに所定の図形Fを確実に印刷することができる。
【0069】
また、印刷用治具1は、位置決め用治具10の厚みT1がワークWの厚みTWよりも薄いので、規制用治具20を位置決め用治具10から取り外すと、位置決め用治具10からワークWが突出して、ワークWを位置決め用治具10に容易に着脱することができる。また、規制用治具20が、隣り合うワークW間に配置されたワーク間侵入部を備えているので、規制用治具20のワーク間侵入部が、ワークW内を伝搬する紫外線が吐出部109に照射されることを確実に規制することができる。
【0070】
印刷用治具1は、ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部がワークWの平面形状と同形状に形成された収容用孔21の内側面21aであるので、ワーク間侵入部である内側面21aとワークWの外側面WGとを極力近づけることができ、ワーク間侵入部である内側面21aとワークWの外側面WGとの間からワークW内を伝搬する紫外線が、吐出部109に向けて出射されることを抑制することができる。
【0071】
また、印刷用治具1は、規制用治具20を位置決め用治具10に設置すると、規制用治具20とワークWとが面一となるので、ワークWの外側面WGからワークW内を伝搬した紫外線が印刷用治具1外に出射されることを確実に抑制することができる。
【0072】
なお、前述した実施形態では、印刷用治具1は、位置決め用治具10と規制用治具20との二つの部品で構成したが、本発明では、規制用治具20を位置決め用治具10に一体に設置して、印刷用治具1を構成してもよい。
【0073】
〔変形例1〕
次に、前述した実施形態の変形例1にかかる印刷用治具1−1を説明する。図7は、実施形態の変形例1にかかる印刷用治具の規制用治具の斜視図である。図8は、実施形態の変形例1にかかる印刷用治具の要部の断面図である。なお、図7及び図8において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
変形例1にかかる印刷用治具1−1(図8に示す)は、規制用治具20−1(図7に示す)の構成が実施形態と異なり、他の構成が実施形態と等しい。規制用治具20−1は、図7に示すように、収容用孔21−1の平面形状が、矩形状に形成され、かつワークWの平面形状よりも大きく形成されている。規制用治具20−1は、全体として、直線状の部材22−1が格子状に配置されて構成されている。規制用治具20−1は、非透光性の材料で構成されている。なお、本発明でいう非透光性の材料とは、インクを露光する際に用いられる紫外線を伝搬しない材料であるとともに、紫外線を反射しにくい材料をいう。例えば、規制用治具20−1は、アクリル樹脂などの合成樹脂に例えば黒色の色材などが混入されて構成することができる。
【0075】
規制用治具20−1を構成する直線状の部材22−1は、図8に示すように、位置決め用治具10により位置決めされたワークWの外側面WG間に配置される前記ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部をなしている。直線状の部材22−1の厚みTLは、位置決め用治具10の表面WSからのワークWの突出量Pよりも大きく、位置決め用治具10の表面WSと吐出部109との間隔Dよりも小さい。このように、本発明では、ワーク間侵入部の厚みは、位置決め用治具10の表面WSからのワークWの突出量P以上で、かつ、位置決め用治具10の表面WSと吐出部109との間隔Dよりも小さければよい。また、直線状の部材22−1は、位置決め用治具10により位置決めされたワークWの外側面WGから間隔をあける。
【0076】
変形例1にかかる印刷用治具1によれば、前述した実施形態の効果にくわえ、ワーク間侵入部としての直線状の部材22−1の厚みTLが位置決め用治具10の表面WSからのワークWの突出量P以上であるので、規制用治具20のワーク間侵入部としての直線状の部材22−1が、ワークW内を伝搬する紫外線が吐出部109に向けて出射されることを確実に規制することができる。
【0077】
〔変形例2〕
次に、前述した実施形態の変形例2にかかる印刷用治具1−2を説明する。図9は、実施形態の変形例2にかかる印刷用治具の要部の断面図である。なお、図9において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
変形例2にかかる印刷用治具1−2は、図9に示すように、位置決め用治具10−2が遮光部材12−2(出射規制手段に相当)を備え、規制用治具20−2が規制用遮光部材22−2(規制用出射規制手段に相当)を備え、他が前述した実施形態と構成が等しい。
【0079】
遮光部材12−2は、位置決め用治具10−2内を伝搬する紫外線が、位置決め用治具10−2の主走査方向の端面10aから吐出部109に向けて出射されることを規制するものである。遮光部材12−2は、位置決め用治具10−2の端面10aに取り付けられ、かつ位置決め用治具10−2内を伝搬する紫外線を反射する反射層で構成されている。遮光部材12−2を構成する反射層は、紫外線を反射する部材などで構成されてもよく、紫外線を反射する塗料などで構成されてもよい。
【0080】
規制用遮光部材22−2は、規制用治具20−2内を伝搬する紫外線が、規制用治具20−2の主走査方向の端面20aから吐出部109に向けて出射されることを規制するものである。規制用遮光部材22−2は、規制用治具20−2の端面20aに取り付けられ、かつ規制用治具20−2内を伝搬する紫外線を反射する反射層で構成されている。規制用遮光部材22−2を構成する反射層は、紫外線を反射する部材などで構成されてもよく、紫外線を反射する塗料などで構成されてもよい。
【0081】
変形例2にかかる印刷用治具1−2によれば、前述した実施形態の効果にくわえ、位置決め用治具10−2が透光性を有する材料で構成されても、紫外線が主走査方向の端面10aから吐出部109に出射されることを規制する出射規制手段に相当する遮光部材12−2を備えている。このために、印刷用治具1−2は、仮に、紫外線照射器108からの紫外線が位置決め用治具10−2内に入射して端面10aに向けて伝搬しても、端面10aから吐出部109に向けて出射されることを抑制できる。したがって、吐出部109から液滴として吐出されるインクが増粘することを抑制でき、インクの液滴を所望の方向に吐出することを可能とすることができ、ワークWの表面WSに所定の図形Fを確実に印刷することができる。
【0082】
また、規制用治具20−2が透光性を有する材料で構成されても、紫外線が主走査方向の端面20aから吐出部109に出射されることを規制する規制用遮光部材22−2を備えている。このため、印刷用治具1−2は、紫外線照射器108からの紫外線が規制用治具20−2内に入射して端面20aに向けて伝搬しても、端面20aから吐出部109に向けて出射されることを抑制できる。
【0083】
また、印刷用治具1は、出射規制手段が端面10aに取り付けられた遮光部材12−2であり、規制用出射規制手段が端面20aに取り付けられた規制用遮光部材22−2であるので、遮光部材12−2,22−2が、位置決め用治具10−2及び規制用治具20−2内を伝搬する紫外線が端面10a,20aから吐出部109に向けて出射されることを確実に抑制できる。なお、変形例2では、遮光部材12−2,22−2の双方を設けたが、本発明では、遮光部材12−2,22−2の少なくとも一方を設ければよい。また、変形例2では、両端面10a,20aに遮光部材12−2,22−2を設けたが、本発明では、位置決め用治具10−2の少なくとも一方の端面10aに遮光部材12−2を設ければよく、規制用治具20−2の少なくとも一方の端面20aに規制用遮光部材22−2を設ければよい。
【0084】
〔変形例3〕
次に、前述した実施形態の変形例3にかかる印刷用治具1−3を説明する。図10は、実施形態の変形例3にかかる印刷用治具の要部の断面図である。なお、図10において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
変形例3にかかる印刷用治具1−3は、図10に示すように、位置決め用治具10−3と規制用治具20−3との双方が非透過性の材料で構成され、他が前述した実施形態と構成が等しい。
【0086】
変形例3にかかる印刷用治具1−3によれば、前述した実施形態の効果にくわえ、位置決め用治具10−3と規制用治具20−3との双方が非透過性を有する材料で構成されているので、紫外線照射器108から照射された紫外線が位置決め用治具10−3と規制用治具20−3との双方に入射しない。したがって、印刷用治具1−3は、紫外線が端面10a,20aから吐出部109に向けて出射されることを確実に規制することができる。なお、変形例3では、位置決め用治具10−3と規制用治具20−3との双方を非透過性を有する材料で構成したが、本発明では、位置決め用治具10−3と規制用治具20−3との少なくとも一方を非透過性を有する材料で構成すればよい。
【0087】
〔変形例4〕
次に、前述した実施形態の変形例4にかかる印刷用治具1−4を説明する。図11は、実施形態の変形例4にかかる印刷用治具の要部の断面図である。なお、図11において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0088】
変形例4にかかる印刷用治具1−4は、図11に示すように、位置決め用治具10−4と規制用治具20−4との双方の両端面10a,20aが、主走査方向の紫外線照射器108及び吐出部109の主走査範囲Rよりも外側に配置されるまで、位置決め用治具10−4と規制用治具20−4の両端部が延在しており、他が前述した実施形態と構成が等しい。
【0089】
変形例4にかかる印刷用治具1−4によれば、前述した実施形態の効果にくわえ、位置決め用治具10−4と規制用治具20−4の双方の両端面10a,20aが主走査範囲Rの外側に配置されているので、位置決め用治具10−4及び規制用治具20−4内を伝搬する紫外線が、端面10a,20aから吐出部109に向けて出射されることを確実に抑制できる。なお、変形例4では、位置決め用治具10−4と規制用治具20−4との双方の両端面10a,20aを主走査範囲Rの外側に配置したが、本発明では、位置決め用治具10−4の両端面10aと、規制用治具20−4の両端面20aのうちの少なくとも一方を主走査範囲Rの外側に配置すればよい。
【0090】
〔変形例5〕
次に、前述した実施形態の変形例5にかかる印刷用治具1−5を説明する。図12は、実施形態の変形例5にかかる印刷用治具の要部の断面図である。なお、図12において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
変形例5にかかる印刷用治具1−5は、図12に示すように、実施形態における位置決め用治具10と規制用治具20とが一体に形成されている。印刷用治具1−5は、アクリル樹脂などの透光性を有する材料で構成され、かつ平面形状が矩形状に形成されている。このために、印刷用治具1−5は、ワークWの表面WSに所定の図形Fを印刷する際に、紫外線照射器108からの紫外線が入射する。印刷用治具1−5に入射した紫外線は、ワークWに入射した紫外線とともに、ワークW及び印刷用治具1−5内を主走査方向の印刷用治具1−5の端面に向けて伝搬する。
【0092】
印刷用治具1−5は、厚みTA(図12に示す)が一定の平板状に形成され、厚みTAが、ワークWの厚みTW(図12に示す)と等しく形成されている。印刷用治具1−5には、位置決め用孔30を複数有している。位置決め用孔30は、印刷用治具1−5を貫通した孔であって、平面形状が、ワークWの外形に沿って形成されて、ワークWの平面形状と等しく形成されている。位置決め用孔30は、主走査方向と副走査方向との双方に沿って複数並べられている。位置決め用孔30は、内側にワークWを収容して、ワークWの表面WSがキャリッジ103に対向するように位置決めする。
【0093】
また、位置決め用孔30の内側面30aは、印刷用治具1−5により位置決めされ、かつ隣り合うワークWの外側面WG間に配置される前記ワーク側出射規制手段としてのワーク間侵入部に相当する。ワーク間侵入部に相当する位置決め用孔30の内側面30aは、ワークW内を伝搬し、かつワークWの外側面WGから出射する紫外線が入射する。位置決め用孔30の内側面30aは、ワークWの外側面WGから出射される紫外線を印刷用治具1−5内に入射させ、入射させた紫外線を印刷用治具1−5の端面に向けて印刷用治具1−5内を伝搬させることで、紫外線がワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制する。
【0094】
変形例5にかかる印刷用治具1−5は、ワークW内を伝搬する紫外線が、外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制するワーク側出射規制手段としての位置決め用孔30の内側面30aを備えているので、紫外線照射器108から照射されてワークW内を伝搬する紫外線が吐出部109内のインクに照射されることを抑制でき、吐出部109内のインクが増粘(固まり気味となって、粘度が上昇すること)することを抑制できる。したがって、吐出部109から液滴として吐出されるインクが増粘していないので、インクの液滴を所望の方向に吐出することができ、ワークWの表面WSに所定の図形Fを確実に印刷することができる。
【0095】
次に、本発明の発明者らは、本発明の効果を実験により確認した。図13は、本発明品1の実験を模式的に示す図である。図14は、本発明品2の実験を模式的に示す図である。図15は、比較例の実験を模式的に示す図である。なお、図13図15では、前述した実施形態、変形例1〜変形例5の各構成要素と対応する部分に同一符号を付してしている。結果を以下の表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
実験では、図13図15に示すように、アクリル樹脂で構成されかつ厚みが2mmの透明な平板300の表面300Sに紫外線照射器108から紫外線を照射して、平板300の適宜箇所における5分間の積算光量を積算光量計400で測定した。なお、紫外線照射器108として、株式会社ミマキエンジニアリング社製のものを用い、積算光量計400として、浜松ホトニクス株式会社製のC9536−02を用いた。
【0098】
図15に示す比較例では、積算光量計400は、平板300の端面300aと相対する位置に配置されて、端面300aから出射される紫外線の積算光量を測定した。図13に示す本発明品1では、積算光量計400は、平板300の表面300Sと相対しかつ紫外線照射器108からの距離が200mmとなる位置に配置されて、表面300Sで反射される紫外線の積算光量を測定した。図14に示す本発明品2では、平板300の端面300aに遮光部材12−2を取り付けて、積算光量計400は、平板300の端面300aと相対する位置に配置されて、端面300aから出射される紫外線の積算光量を測定した。
【0099】
表1では、比較例の積算光量を100%として、本発明品1、本発明品2の積算光量を示している。表1の結果によれば、本発明品1の積算光量が、比較例の積算光量の9.0%である。このために、例えば、ワークWの表面WSを規制用治具20の表面などと面一にするなどして、紫外線がワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射されることを規制することで、紫外線がワークWの外側面WGから吐出部109に向けて出射される場合と比較して、吐出部109に照射される紫外線の量を大きく抑制できることが明らかとなった。
【0100】
また、表1の結果によれば、本発明品2の積算光量が、比較例の積算光量の17.3%である。このために、例えば、出射規制手段としての遮光部材12−2,22−2を端面10a,20aに取り付けるなどして、紫外線が端面10a,20aから吐出部109に向けて出射されることを規制することで、紫外線が端面10a,20aから吐出部109に向けて出射される場合と比較して、吐出部109に照射される紫外線の量を大きく抑制できることが明らかとなった。
【0101】
前述したように、本発明の実施形態、変形例1〜変形例5を説明したが、本発明は、これらに限定されない。本発明では、実施形態、変形例1〜変形例5をその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせの変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0102】
1,1−1,1−2,1−3,1−4,1−5 印刷用治具
10,10−2,10−3,10−4 位置決め用治具
10a 端面
12−2 遮光部材(出射規制手段)
20,20−1,20−2,20−3,20−4 規制用治具
20a 端面
21 収容用孔
21a 内側面(ワーク間侵入部、ワーク側出射規制手段)
22−1 直線状の部材(ワーク間侵入部、ワーク側出射規制手段)
22−2 規制用遮光部材(規制用出射規制手段)
30a 内側面(ワーク間侵入部、ワーク側出射規制手段)
100 インクジェットプリンタ
103 キャリッジ
108 紫外線照射器
109 吐出部
D 間隔
F 所定の図形
P 突出量
R 主走査範囲
T1 位置決め用治具の厚み
T2 規制用治具の厚み
TW ワークの厚み
W ワーク
WS 表面
WG 外側面
図1
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